(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067417
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】果実収穫用ハンド
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176112
(22)【出願日】2020-10-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】520409497
【氏名又は名称】株式会社アイナックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】稲員 重典
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JD11
2B075JD20
2B075JD21
2B075JF05
2B075JF06
2B075JF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】果実の茎を果実の近くで正確に切断して収穫することが可能な果実収穫用ハンドを提供する。
【解決手段】収穫する果実の茎を茎保持部に挟み込んで保持する茎保持チャック2と、茎保持部に茎を保持した状態で、茎保持チャック2の上方位置において茎を切断する第1刃3と、茎保持チャック2の下部に配置された第2刃であり、重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降した後、茎を切断する第2刃とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫する果実の茎を茎保持部に挟み込んで保持する茎保持チャックと、
前記茎保持部に前記茎を保持した状態で、前記茎保持チャックの上方位置において前記茎を切断する第1刃と、
前記茎保持チャックの下部に配置された第2刃であり、重力の作用により前記茎に沿って前記果実の近くまで下降した後、前記茎を切断する第2刃と
を有する果実収穫用ハンド。
【請求項2】
前記第2刃は、前記果実のヘタに当接することにより下降を停止して前記茎を切断するものである請求項1記載の果実収穫用ハンド。
【請求項3】
前記茎保持部を開く方向に加圧する第1バネと、
前記第1刃を前記茎保持部から離れた位置に保持する板バネと、
前記第1刃を前記茎保持部へ進出させる方向へ前記板バネを引っ張るとともに前記茎保持部を閉じる方向へ引っ張る第1ワイヤーであり、引っ張ることにより、最初に前記茎保持部が閉じる第1段階から、前記茎保持部が閉じた後に前記第1刃が前記茎保持部へ進出する第2段階へと動作させる第1ワイヤーと
を有する請求項1または2に記載の果実収穫用ハンド。
【請求項4】
前記第2刃を重力の作用に抗して前記茎保持チャックの下部に保持する第2ワイヤーであり、緩めることにより重力の作用により前記第2刃を下降させる第2ワイヤーと、
前記第2刃を開く方向に加圧する第2バネと、
前記第2刃を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤーと
を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の果実収穫用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ、ミカン、トマト、キュウリやナス等の果実を収穫するための果実収穫用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴ等の果実を収穫する際、果実に手を触れたり、あるいは長く余らせてしまった茎が他の果実に接触したりして、果実を傷めてしまうことがある。特に、イチゴは他の果実と比較して小粒で柔らかいため傷つきやすく、熟練した作業者と初心者とで品質の差が生じやすい。
【0003】
そこで、近年、イチゴ収穫ロボットに関する研究が多くなされている。イチゴ収穫ロボットでは、画像処理によりイチゴの実の位置を検出し、ロボットのハンドを移動させて摘採するものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、開閉駆動される一対のフィンガーの対向面の上部および下部に一対の摘採刃および調製刃をそれぞれ設けた果菜収穫用摘採ハンドを果菜収穫用ロボットの手首先端に装着し、果菜収穫用ロボットシステムに設けた位置センサーにより検出した果柄部にフィンガーを移動させ、果柄部を把持し、摘採刃により果柄の根元側を切断し、フィンガーで果柄を持ったままロボットを移動させて果菜を収納箱へ運び、調製刃により把持している果柄のがく側を切断して果菜を収納箱内に置くことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の果菜収穫用摘採ハンドでは、一対のフィンガーの対向面の上部および下部にそれぞれ設けられた一対の摘採刃および調製刃の上下の間隔が一定であり、果柄部を把持したときに調製刃により切断する果柄の切断位置が決定される。したがって、この果菜収穫用摘採ハンドでは、余分な果柄を極力残さないように切断するために、位置センサーによる検出精度を上げる必要がある。しかしながら、実際には果実が斜めになっていたり、葉などの障害物があったりするため、正確な位置を検出することは難しい。
【0007】
そこで、本発明においては、果実の茎を果実の近くで正確に切断して収穫することが可能な果実収穫用ハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の果実収穫用ハンドは、収穫する果実の茎を茎保持部に挟み込んで保持する茎保持チャックと、茎保持部に茎を保持した状態で、茎保持チャックの上方位置において茎を切断する第1刃と、茎保持チャックの下部に配置された第2刃であり、重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降した後、茎を切断する第2刃とを有するものである。
【0009】
本発明の果実収穫用ハンドによれば、収穫する果実の茎を茎保持チャックにより茎保持部に挟み込み、茎を保持した状態で第1刃により茎保持チャックの上方位置において茎を切断すると、茎の途中で果実が切断され、果実を移動させることが可能となる。その後、第2刃が重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降した後、茎が切断される。
【0010】
第2刃は、果実のヘタに当接することにより下降を停止して茎を切断するものであることが望ましい。第2刃が重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降する際、果実のヘタに当接して下降を停止することで、果実のヘタを残した状態でヘタの上部のギリギリの位置で茎を切断することが可能となる。
【0011】
本発明の果実収穫用ハンドは、茎保持部を開く方向に加圧する第1バネと、第1刃を茎保持部から離れた位置に保持する板バネと、第1刃を茎保持部へ進出させる方向へ板バネを引っ張るとともに茎保持部を閉じる方向へ引っ張る第1ワイヤーであり、引っ張ることにより、最初に茎保持部が閉じる第1段階から、茎保持部が閉じた後に第1刃が茎保持部へ進出する第2段階へと動作させる第1ワイヤーとを有することが望ましい。
【0012】
これにより、第1ワイヤーを引っ張るだけで、最初に茎保持部が閉じて果実の茎を挟み込んで保持し、次に第1刃が茎保持部へ進出することで、茎保持チャックの上方位置において茎が切断される。
【0013】
本発明の果実収穫用ハンドは、第2刃を重力の作用に抗して茎保持チャックの下部に保持する第2ワイヤーであり、緩めることにより重力の作用により第2刃を下降させる第2ワイヤーと、第2刃を開く方向に加圧する第2バネと、第2刃を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤーとを有することが望ましい。
【0014】
これにより、第1刃により茎保持チャックの上方位置において茎を切断した後、第2ワイヤーを緩めることで重力の作用により第2刃が茎に沿って果実の近くまで下降し、次に、第3ワイヤーを引っ張ることで、第2刃が閉じて果実の近くで茎が正確に切断される。
【発明の効果】
【0015】
(1)収穫する果実の茎を茎保持部に挟み込んで保持する茎保持チャックと、茎保持部に茎を保持した状態で、茎保持チャックの上方位置において茎を切断する第1刃と、茎保持チャックの下部に配置された第2刃であり、重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降した後、茎を切断する第2刃とを有する果実収穫用ハンドによれば、第2刃がその重力の作用により茎に沿って果実の近くまで下降して、茎を切断することができ、果実に触れることなく果実の茎を果実の近くで正確に切断して収穫することが可能となり、茎が他の果実に接触して傷めてしまうことを防止することができ、収穫初心者であっても品質を損なうことなく、果実を収穫することが可能となる。
【0016】
(2)第2刃が、果実のヘタに当接することにより下降を停止して茎を切断するものであることにより、果実のヘタを残した状態でヘタの上部のギリギリの位置で茎を切断することが可能となり、余分な茎を極力残すことなく果実を収穫することが可能となるとともに、第2刃はヘタに接触するだけであるため、果実への影響がなく、果実の品質を損なうことなく収穫することが可能となる。
【0017】
(3)茎保持部を開く方向に加圧する第1バネと、第1刃を茎保持部から離れた位置に保持する板バネと、第1刃を茎保持部へ進出させる方向へ板バネを引っ張るとともに茎保持部を閉じる方向へ引っ張る第1ワイヤーであり、引っ張ることにより、最初に茎保持部が閉じる第1段階から、茎保持部が閉じた後に第1刃が茎保持部へ進出する第2段階へと動作させる第1ワイヤーとを有する構成により、第1ワイヤーを引っ張るだけの簡単な操作により茎保持部による茎の保持と、切断とが段階的に行われるようになり、装置が簡素化される。
【0018】
(4)第2刃を重力の作用に抗して茎保持チャックの下部に保持する第2ワイヤーであり、緩めることにより重力の作用により第2刃を下降させる第2ワイヤーと、第2刃を開く方向に加圧する第2バネと、第2刃を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤーとを有する構成により、第2ワイヤーを緩めて第3ワイヤーを引っ張るだけの簡単な操作により重力の作用により第2刃が茎に沿って果実の近くまで下降し、第2刃が閉じて果実の近くで茎が正確に切断されるようになり、装置が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態における果実収穫用ハンドの斜視図である。
【
図2】
図1の果実収穫用ハンドを背面側からみた斜視図である。
【
図11】茎保持部により茎を保持した状態を示す説明図である。
【
図12】第1刃により茎を切断する様子を示す説明図である。
【
図13】果実を収穫場所へ移動する様子を示す説明図である。
【
図14】第2刃を果実の近くまで下降させる様子を示す説明図であって、(A)は正面からみた図、(B)は側面からみた図である。
【
図15】第2刃によりヘタ部分で切断する様子を示す説明図である。
【
図16】本発明の別の実施形態を示す果実収穫用ハンドの斜視図である。
【
図17】
図16の果実収穫用ハンドを底面側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態における果実収穫用ハンドの斜視図、
図2は背面側からみた斜視図、
図3は平面図、
図4は側面図、
図5は底面図、
図6は
図4のVI-VI断面図、
図7は茎保持部を閉じた状態を示す平面図、
図8は第2刃が下降した状態を示す斜視図、
図9は
図8の側面図、
図10は第2刃を閉じた状態を示す底面図である。
【0021】
図1~
図6に示すように、本発明の実施の形態における果実収穫用ハンド1は、収穫する果実Fの茎S(
図11参照。)を茎保持部2Aに挟み込んで保持する茎保持チャック2と、茎保持チャック2の上方位置において茎Sを切断する第1刃3と、茎保持チャック2の下部に配置された第2刃4(
図5参照。)とを有する。また、果実収穫用ハンド1は、茎保持チャック2および第1刃3を動作させるための第1ワイヤー8と、第3部品11を動作させるための第2ワイヤー13と、第2刃4を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤー16とを有する。
【0022】
茎保持チャック2は、第1部品5と、第1部品5に対して回転軸6B(
図5参照。)により回転可能に軸支された第2部品6とから構成される。回転軸6Bは茎保持チャック2の開閉方向(
図3の上下方向)に対して直交する方向(
図4の上下方向)を中心とする軸である。茎保持部2Aは、第1部品5の茎保持面5Aと、この茎保持面5Aに対向する第2部品6の茎保持面6Aとから構成される。第1部品5と第2部品6との間には、茎保持部2Aを開く方向に加圧する第1バネ7(
図6参照。)を備えている。
【0023】
第1部品5には、第2部品6が回転軸6Bを中心として回転した際、茎保持部2Aを閉じたときに第2部品6の背面6Cが当接することにより第2部品6の回転角度を規制する第1当接面5Bと、茎保持部2Aを開いたときに第2部品6の背面6Cが当接することにより第2部品6の回転角度を規制する第2当接面5Cとが形成されている。なお、本実施形態においては、第1当接面5Bは第1部品5の背面5Dと平行とし、第2当接面5Cは第1部品5の背面5Dに対して勾配を設けている。また、第1部品5には、中空ボルト7Aが螺合されるネジ穴5Eが設けられている。第1バネ7は中空ボルト7Aにより第2部品6側へ押圧される。第1ワイヤー8は、第1バネ7内および中空ボルト7Aの中空部内に挿通されている。
【0024】
第2部品6内には、茎保持チャック2および第1刃3を動作させるための第1ワイヤー8が通る第1ワイヤー路9が設けられている。第1ワイヤー路9の第2部品6の背面6C側の端部には第1バネ7を受ける凹部6Eが形成されている。第1刃3は、第2部品6の茎保持面6Aとは反対側の外側面6Dに固定された板バネ10の先端部に設けられている。板バネ10は、後端側(
図3の右側)が外側面6Dと接触し、先端側(
図3の左側)が外側面6Dから離れた位置にあるように屈曲した形状であり、第1刃3を茎保持部2Aから離れた位置に保持する。
【0025】
第1ワイヤー8は、第1刃3を茎保持部2Aへ進出させる方向へ板バネ10を引っ張るとともに茎保持部2Aを閉じる方向へ引っ張るものである。板バネ10は第1バネ7よりもバネ定数が大きく設定されている。これにより、第1ワイヤー8により第1ワイヤー路9を通じて板バネ10の先端側を引っ張った際に、
図7に示すように板バネ10よりも先に第1バネ7が弾性変形して最初に茎保持部2Aが閉じ(第1段階)、茎保持部2Aが閉じた後に板バネ10が弾性変形して第1刃3が茎保持部2Aへ進出する(第2段階)。一方、第1ワイヤー8を緩めた際には、板バネ10が弾性復帰して第1刃3が茎保持部2Aから退避した後、第1バネ7が弾性復帰し、第1バネ7の押圧力により茎保持部2Aが開いた状態となる。
【0026】
なお、茎保持部2Aは、茎Sを押しつぶすことなく保持できるように、
図7に示すように閉じた状態においても茎保持面5Aと茎保持面6Aとの間に一定の間隔が空く構成とすることが望ましい。また、果実Fの種類に応じて茎保持部2Aにクッション材、微小突起や凹凸を設置したり、表面形状を変更したりすることも可能である。
【0027】
また、第1部品5には、第3部品11が回転軸11Aを中心として回転可能に軸支されている。回転軸11Aは、前述の回転軸6Bに直交する方向(
図3の上下方向)を中心とする軸である。第3部品11には、第4部品12が回転軸12Aを中心として回転可能に軸支されている。回転軸12Aは回転軸11Aに直交する方向(
図3に表れる面に垂直な方向)を中心とする軸である。
【0028】
第2刃4は、第4部品12の回転軸12Aから遠い方の先端部に設けられている。第3部品11と第4部品12との間には、第2刃4を開く方向に加圧する第2バネ15(
図5参照。)を備えている。第3ワイヤー16は、第2バネ15内に挿通されている。この第3ワイヤー16を引っ張ることで、
図10に示すように、第2刃4は、第3部品11に対し、回転軸12Aを中心として第4部品12が回転して、第3部品11の先端部と当接し、茎Sを切断する。一方、第3ワイヤー16を緩めた際には、第2バネ15が弾性復帰し、第2バネ15の押圧力により第2刃4が元の位置へと復帰する。
【0029】
また、第1部品5内には、第2ワイヤー13が通る第2ワイヤー路14が設けられている。第2ワイヤー13は、第3部品11およびこの第3部品11に支持された第4部品12を、
図4に示すように、重力の作用に抗して茎保持チャック2の下部に保持するものである。この第2ワイヤー13を緩めると、第3部品11および第4部品12の自重により、
図8および
図9に示すように回転軸11Aを中心として第3部品11が回転し、その結果として第2刃4が下降する。
【0030】
上記構成の果実収穫用ハンド1による果実の収穫手順について、
図11~
図15を参照して説明する。なお、以下の説明においては、果実Fとしてイチゴを例に説明するが、他の果実についても同様である。
【0031】
まず、果実F上部の茎Sを茎保持チャック2の茎保持部2Aの隙間に入れ、第1ワイヤー8を引っ張ることにより、
図11に示すように茎保持部2Aを閉じ、茎Sを茎保持部2Aに挟み込んで保持する。この茎保持部2Aが閉じた後、第1ワイヤー8を引っ張り続けることで、
図12に示すように、第1刃3が茎保持部2Aへ進出し、茎Sを切断する。
【0032】
次に、
図13に示すように、果実Fを茎保持部2Aに保持したまま、果実収穫用ハンド1を果実Fの収穫場所まで移動する。ここで、第2ワイヤー13を緩めると、第3部品11および第4部品12の自重により、
図14に示すように第2刃4が茎Sに沿って果実Fの近くまで下降する。このとき、第2刃4は、果実FのヘタCに当接することにより下降を停止する。
【0033】
そして、第3ワイヤー16を引っ張ると、
図15に示すように第2刃4が閉じ、茎SをヘタCの部分で切断する。その後、果実収穫用ハンド1を茎Sの排出位置へ移動させ、第3ワイヤー16を緩めて第2刃4を開き、第2ワイヤー13を引っ張って第2刃4を上昇させ、第1ワイヤー8を緩めると茎保持部2Aが開いて茎Sが排出される。
【0034】
以上のように、本実施形態における果実収穫用ハンド1によれば、収穫する果実Fの茎Sを茎保持チャック2により茎保持部2Aに挟み込み、茎Sを保持した状態で第1刃3により茎保持チャック2の上方位置において茎Sを切断すると、茎Sの途中で果実Fが切断され、果実Fを収穫場所へ移動させることが可能となる。その後、第2刃4を重力の作用により茎Sに沿って果実Fの近くまで下降させた後、茎Sを切断することができ、果実Fの茎Sを果実Fの近くで正確に切断して収穫することが可能となる。
【0035】
すなわち、本実施形態における果実収穫用ハンド1によれば、果実Fに手を触れることなく、茎Sを果実F近くで切断して収穫することができるため、茎Sが他の果実Fに接触して傷めてしまうことを防止することができ、収穫初心者であっても品質を損なうことなく、果実Fを収穫することが可能となる。
【0036】
また、収穫する果実FがヘタCを有する場合、第2刃4が、果実FのヘタCに当接することにより下降を停止して茎Sを切断するので、果実FのヘタCを残した状態でヘタCの上部のギリギリの位置で茎Sを切断することが可能となり、余分な茎Sを極力残すことなく果実Fを収穫することが可能となるとともに、第2刃4はヘタCに接触するだけであるため、果実Fへの影響がなく、果実Fの品質を損なうことなく収穫することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態における果実収穫用ハンド1は、茎保持部2Aを開く方向に加圧する第1バネ7と、第1刃3を茎保持部2Aから離れた位置に保持する板バネ10と、第1刃3を茎保持部2Aへ進出させる方向へ板バネ10を引っ張るとともに茎保持部2Aを閉じる方向へ引っ張る第1ワイヤー8であり、引っ張ることにより、最初に茎保持部2Aが閉じる第1段階から、茎保持部2Aが閉じた後に第1刃3が茎保持部2Aへ進出する第2段階へと動作させる第1ワイヤー8とを有する構成により、第1ワイヤー8を引っ張るだけの簡単な操作により茎保持部2Aによる茎Sの保持と、切断とが段階的に行われるようになり、装置が簡素化されている。
【0038】
また、本実施形態における果実収穫用ハンド1では、第2刃4を重力の作用に抗して茎保持チャック2の下部に保持する第2ワイヤー13であり、緩めることにより重力の作用により第2刃4を下降させる第2ワイヤー13と、第2刃4を開く方向に加圧する第2バネ15と、第2刃4を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤー16とを有する構成により、第2ワイヤー13を緩めて第3ワイヤー16を引っ張るだけの簡単な操作により重力の作用により第2刃4が茎Sに沿って果実Fの近くまで下降し、第2刃4が閉じて果実Fの近くで茎Sが正確に切断されるようになり、装置が簡素化されている。
【0039】
なお、本実施形態における果実収穫用ハンド1は、果実収穫用ロボットの手首先端部に装着し、第1ワイヤー8、第2ワイヤー13および第3ワイヤー16はアクチュエータにより駆動することにより使用することが可能であるほか、直接手に持って使用することも可能である。この場合、第1ワイヤー8、第2ワイヤー13および第3ワイヤー16を手で引いたり、第1ワイヤー8、第2ワイヤー13および第3ワイヤー16以外の手段により各部を動作させたりすることが可能である。
【0040】
次に、本発明の果実収穫用ハンドの別の実施形態について、
図16~
図21を参照して説明する。
図16は本発明の別の実施形態を示す果実収穫用ハンドの斜視図、
図17は底面側からみた斜視図、
図18は平面図、
図19は側面図、
図20は
図18のXX-XX断面図、
図21は
図18のXXI-XXI断面図である。なお、前述の果実収穫用ハンド1と共通の構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図16~
図21に示す果実収穫用ハンド1Aでは、前述の第3部品11に代えて第3部品17を、第2ワイヤー13に代えて第2ワイヤー18を備える。第2刃4が設けられた第4部品12は、第3部品17に対して回転軸12Aを中心として回転可能に軸支されている。第3部品17は、そのガイド部17Aが第1部品5に形成されたガイド孔5Fにガイドされながら、重力の作用により下降する。
【0042】
果実収穫用ハンド1Aでは、茎Sが太い場合に対応可能とするため、例えば第1部品5の茎保持面5Aを削ることで、茎保持面5Aと茎保持面6Aとの隙間を広く、すなわち、茎保持部2Aの幅を広くしている。また、第3部品17と第2刃4との隙間も広くしている。また、第1刃3がより大きく茎保持部2Aへ進出するように板バネ10と第2部品6の外側面6Dとのなす角度θを大きくしている。
【0043】
第2ワイヤー18は、第1部品5に設けられた第2ワイヤー路19を通じて第3部品17を上方へ引っ張るものである。第2ワイヤー18は、第3部品17およびこの第3部品17に支持された第4部品12を、重力の作用に抗して茎保持チャック2の下部に保持する。第2ワイヤー18を緩めると、第3部品17および第4部品12の自重により、第3部品17がガイド孔5Fにガイドされながら下降し、その結果として第2刃4が下降する。
【0044】
なお、第3部品17のガイド部17Aの上端部には、第3部品17が下降した際に第1部品5の上面に当接して第3部品17の最大下降位置を規制するストッパー部17Bが設けられている。
【0045】
また、第1部品5のガイド孔5Fは角穴であるが、
図21に示すように上面側よりも下面側が広いテーパ状に形成されている。これにより、第1部品5が下降する際、茎Sが曲がっている場合には第1部品5が茎Sに沿って移動することで、茎Sに負荷が掛からないようになっている。一方、第3部品17のガイド部17Aの下部は、
図21に示すように末広がりのテーパ状に形成されている。これにより、第3部品17が上昇する際には、第3部品のガイド部17Aがガイド孔5Fにガイドされ、ガイド部17Aの中心とガイド孔5Fの中心とが一致するようになっている。
【0046】
上記構成の果実収穫用ハンド1Aにおいても、果実F上部の太い茎Sを茎保持チャック2の茎保持部2Aの隙間に入れ、第1ワイヤー8を引っ張ることにより、茎保持部2Aを閉じ、茎Sを茎保持部2Aに挟み込んで保持する。この茎保持部2Aが閉じた後、第1ワイヤー8を引っ張り続けることで、第1刃3が茎保持部2Aへ大きく進出し、太い茎Sを切断する。
【0047】
次に、果実Fを茎保持部2Aに保持したまま、果実収穫用ハンド1Aを果実Fの収穫場所まで移動し、第2ワイヤー18を緩めると、第3部品17および第4部品12の自重により、第2刃4が茎Sに沿って果実Fの近くまで下降する。このとき、第2刃4は、果実FのヘタCなどに当接することにより下降を停止する。
【0048】
そして、第3ワイヤー16を引っ張ると、第2刃4が閉じ、茎Sを切断する。その後、果実収穫用ハンド1Aを茎Sの排出位置へ移動させ、第3ワイヤー16を緩めて第2刃4を開き、第2ワイヤー18を引っ張って第2刃4を上昇させ、第1ワイヤー8を緩めると茎保持部2Aが開いて茎Sが排出される。
【0049】
以上のように、果実収穫用ハンド1Aにおいても、果実収穫用ハンド1と同様に、収穫する果実Fの茎Sを茎保持チャック2により茎保持部2Aに挟み込み、茎Sを保持した状態で第1刃3により茎保持チャック2の上方位置において茎Sを切断すると、茎Sの途中で果実Fが切断され、果実Fを収穫場所へ移動させることが可能となる。その後、第2刃4を重力の作用により茎Sに沿って果実Fの近くまで下降させた後、茎Sを切断することができ、果実Fの茎Sを果実Fの近くで正確に切断して収穫することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の果実収穫用ハンドは、イチゴ、ミカン、トマト、キュウリやナス等の果実を収穫するための装置として有用であり、特に、傷つきやすいイチゴ等の果実を傷めることなく、収穫初心者であっても品質を損なうことなく収穫可能とする装置として好適である。
【符号の説明】
【0051】
F 果実
S 茎
C ヘタ
1,1A 果実収穫用ハンド
2 茎保持チャック
2A 茎保持部
3 第1刃
4 第2刃
5 第1部品
5A 茎保持面
5B 第1当接面
5C 第2当接面
5D 背面
5E ネジ穴
5F ガイド孔
6 第2部品
6A 茎保持面
6B 回転軸
6C 背面
6D 外側面
6E 凹部
7 第1バネ
7A 中空ボルト
8 第1ワイヤー
9 第1ワイヤー路
10 板バネ
11,17 第3部品
11A 回転軸
12 第4部品
12A 回転軸
13,18 第2ワイヤー
14 第2ワイヤー路
15 第2バネ
16 第3ワイヤー
17A ガイド部
17B ストッパー部
【手続補正書】
【提出日】2021-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫する果実の茎を茎保持部に挟み込んで保持する茎保持チャックと、
前記茎保持部に前記茎を保持した状態で、前記茎保持チャックの上方位置において前記茎を切断する第1刃と、
前記茎保持チャックの下部に配置された第2刃であり、重力の作用により前記茎に沿って下降し、前記果実のヘタに当接することにより停止した後、前記茎を切断する第2刃と
を有する果実収穫用ハンド。
【請求項2】
前記茎保持部を開く方向に加圧する第1バネと、
前記第1刃を前記茎保持部から離れた位置に保持する板バネと、
前記第1刃を前記茎保持部へ進出させる方向へ前記板バネを引っ張るとともに前記茎保持部を閉じる方向へ引っ張る第1ワイヤーであり、引っ張ることにより、最初に前記茎保持部が閉じる第1段階から、前記茎保持部が閉じた後に前記第1刃が前記茎保持部へ進出する第2段階へと動作させる第1ワイヤーと
を有する請求項1記載の果実収穫用ハンド。
【請求項3】
前記第2刃を重力の作用に抗して前記茎保持チャックの下部に保持する第2ワイヤーであり、緩めることにより重力の作用により前記第2刃を下降させる第2ワイヤーと、
前記第2刃を開く方向に加圧する第2バネと、
前記第2刃を閉じる方向へ引っ張る第3ワイヤーと
を有する請求項1または2に記載の果実収穫用ハンド。