(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067433
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】包装袋および包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176138
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 梨紗
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA22
3E013BB12
3E013BB13
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF06
3E013BF23
3E013BF35
3E013BG15
(57)【要約】
【課題】電子レンジによる加熱時における破裂をさらに抑制した包装袋を提供する。
【解決手段】積層フィルム10を熱融着により接合して形成された包装袋1において、積層フィルムは、熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、内層に積層された外層と、少なくとも外層の一部が除去されかつ少なくとも内層の一部が存在する脆弱加工部40とを備える。脆弱加工部は、曲率半径2mm以上の円弧状の単位形状が複数接続された波線状の正面視形状を有し、単位形状の幅aと脆弱加工部の高さbとの比b/aが、0.5より大きく5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムを熱融着により接合して形成された包装袋であって、
前記積層フィルムは、
熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、
前記内層に積層された外層と、
少なくとも前記外層の一部が除去されかつ少なくとも前記内層の一部が存在する脆弱加工部と、
を備え、
前記脆弱加工部は、曲率半径2mm以上の円弧状の単位形状が複数接続された波線状の正面視形状を有し、前記単位形状の幅aと前記脆弱加工部の高さbとの比b/aが、0.5より大きく5以下である、
包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋に、膜状の構成を含有する内容物が充填されて封止された、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋、より詳しくは、内容物を電子レンジにより好適に加熱できる包装袋に関する。この包装袋に内容物が充填された包装体についても言及する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済みまたは半調理状態の食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装袋等の包装容器に収容し、開封せずに電子レンジで加熱して、食べられる状態にする食品が知られている。
【0003】
包装容器を開封せずに電子レンジで加熱すると、包装容器内の水分が水蒸気になり、体積が増加する。したがって、水蒸気が逃げられる隙間がないと破裂等の恐れがある。一方、内容物が半調理状態等の場合は、単に加熱するだけではなく、発生した水蒸気による蒸らし等が必要となる場合がある。この場合、蒸気が逃げる孔等が過度に大きいと、蒸らしが十分行われず、風味が落ちる等の問題がある。
【0004】
上記の用途に対応した包装袋の一つが特許文献1に記載されている。特許文献1には、内層および外層を有する積層フィルムの一部において、外層の一部を除去することにより脆弱加工部を形成し、平面視において脆弱加工部および脆弱加工部の周囲を除く領域に内層と外層とのラミネート強度を低下又は向上させる中間層を設けることが記載されている。
この積層フィルムで形成した包装袋に内容物を入れて電子レンジで加熱すると、水蒸気の発生に伴い、脆弱加工部に小孔が形成される。その結果、破裂を防ぎつつ加熱でき、蒸らしも良好に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、発明者らによってなされたものであり、多くの利点を有するが、その後の検討で、内容物によってはさらに改善の余地があることが見出された。
詳細は後述するが、発明者らは、種々の検討によりこの改善に成功し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、電子レンジによる加熱時における破裂をさらに抑制した包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、積層フィルムを熱融着により接合して形成された包装袋である。
積層フィルムは、熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、内層に積層された外層と、少なくとも外層の一部が除去されかつ少なくとも内層の一部が存在する脆弱加工部とを備える。
脆弱加工部は、曲率半径2mm以上の円弧状の単位形状が複数接続された波線状の正面視形状を有し、単位形状の幅aと脆弱加工部の高さbとの比b/aが、0.5より大きく5以下である。
【0009】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る包装袋に、膜状の構成を含有する内容物が充填されて封止された包装体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る包装袋は、電子レンジによる加熱時における破裂がさらに抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装袋の正面図である。
【
図3】同包装袋の脆弱加工部およびその周辺を示す拡大正面図である。
【
図4】電子レンジ加熱により変形した同脆弱加工部およびその周辺を示す拡大正面図である。
【
図6】(a)ないし(d)は、実験に供した脆弱加工部の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る包装袋1を示す正面図である。包装袋1は、少なくとも一方の面が熱融着可能な積層フィルム10を用いて袋状に形成されている。本実施形態では、2枚の積層フィルム10を、熱融着層を対向させて配置し、周縁部を熱融着により接合することで形成されている。積層フィルム10を袋状に形成する手順や方法には特に制限はなく、他の方法がとられても構わない。
【0013】
図2は、積層フィルム10の層構成を示す図であり、
図1のI-I線における断面を示している。積層フィルム10は、包装袋1の外面を形成する外層20と、包装袋1の内面を形成し、熱融着可能な内層30とが積層されて構成されている。外層20および内層30は、いずれも樹脂からなる。外層20と内層30との間には、内容物に関する情報や絵柄などを形成するインキ層50が印刷により形成されている。
【0014】
外層20を形成する樹脂としては、内容物を保護する観点から、比較的剛性の高いものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)などを挙げることができ、これらには限られない。外層20には、印刷や蒸着等の二次加工を施すことにより、意匠性を高めたり、各種情報が表示されたりしてもよい。このような二次加工は、外層20のいずれの面に行われてもよい。
【0015】
内層30は、製袋時に熱融着により接合される。内層30を形成する樹脂としては、熱融着可能な熱可塑性樹脂である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いている。内層30の衝撃破壊質量は100グラム(g)以上800g以下が好ましく、100g以上700g以下がより好ましい。なお、本発明においては、衝撃破壊質量は、JIS K7124「プラスチックフィルムおよびシート-自由落下のダート法による衝撃試験方法」に準じて測定した値と定義する。
【0016】
図1および
図2に示すように、包装袋1の外面の一部には、外層20の少なくとも一部が除去された脆弱加工部40が設けられている。本実施形態における脆弱加工部40は、外層20の除去により他の部位よりも薄くなった部分であり、脆弱加工部40では、外層20が概ねすべて除去されている。
【0017】
脆弱加工部40では、外層20が除去されることにより、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)が積層フィルム10の他の部位に比べて低く、裂けやすくなっている。具体的には、脆弱加工部40のヤング率は、JIS K 7127に準拠した測定において2.0ギガパスカル(GPa)以下であることが好ましい。内層30を形成する樹脂としてLLDPEを用いる場合、脆弱加工部40のヤング率は、JIS K 7127に準拠した測定において2.8ギガパスカル(GPa)未満であることが好ましい。
脆弱加工部40のヤング率の下限値は特に限定されないが、脆弱加工部40が内層単層のヤング率を下回った場合は、落下などの衝撃により脆弱加工部が破断するおそれがあり好ましくない。
なお、JIS K 7127では、試験片の大きさが定められているため、脆弱加工部のみのヤング率をJIS K 7127にしたがって測定することは困難である。そこで、本発明では、JIS K 7127に定める大きさに切り出された積層フィルムの長手方向中央に、幅方向にわたって延びるように脆弱加工部が形成された試験片を用いてJIS K 7127にしたがって測定したヤング率をもって、脆弱加工部のヤング率と定義する。なお、試験片のヤング率算出に用いる断面積は、脆弱加工部の厚みを用いて算出する。
【0018】
脆弱加工部における外層除去の程度や加工深さには特に制限はない。例えば、脆弱加工部の全面にわたって薄く外層が残存することにより内層が露出していなくてもよいし、外層のみならず内層の一部が除去されていてもよい。ただし、電子レンジによる加熱前の内容物の漏れを防ぐため、脆弱加工部は内層30を貫通しないように形成される。
本実施形態において、脆弱加工部40は、前側の積層フィルム10の下部に形成されている。
図2に示すように、インキ層50は、脆弱加工部40およびその周囲の一定範囲を避けて設けられている。
【0019】
脆弱加工部40を形成する手段としては、レーザー照射によるレーザー加工が好適である。レーザー加工を用いると、レーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、脆弱加工部の形状や加工深さを比較的容易に調節することができる。ただし、形成手段はレーザー加工には限られず、他の方法を用いることも可能である。
【0020】
内容物を充填して封止した本実施形態の包装袋1を電子レンジに入れて加熱すると、内容物に含まれる水分が水蒸気となって膨張し、包装袋1の内圧が上昇する。内圧の上昇により、脆弱加工部40に裂け目が生じて、積層フィルムを厚さ方向に貫通する孔が形成されるが、脆弱加工部40は全体にわたって裂けず、互いに離間した多数の小孔を形成する。
【0021】
脆弱加工部40に複数の小孔が形成されるため、包装袋1の内部に発生した水蒸気は、一気に包装袋1の外部に逃げず、内圧の上昇に応じて随時破裂を防ぐ程度に逃げ続ける。これにより、電子レンジによる加熱時も破裂等を起こさず、かつ包装袋1内に残留する水蒸気による蒸らしも好適に行われる。
【0022】
以上の作用効果は、上述した特許文献1にも記載されており、公知である。
発明者らは、特許文献1に記載の包装袋を改良するにあたり、内容物の態様によっては、水蒸気が脆弱加工部からうまく抜けない現象が発生することを見出した。
【0023】
例えば、煮込まれた玉ねぎのような、薄く柔らかい膜状の物体を含む内容物が充填されている場合、これが包装袋の内側から脆弱加工部に貼り付くことにより脆弱加工部から水蒸気が逃げにくくなる現象が観察された。脆弱加工部から水蒸気が逃げにくくなると、内圧に耐えられなくなった包装袋が大きく裂けて内容物が漏れる等の不具合の原因となる。
【0024】
発明者らは、脆弱加工部の寸法を膜状の物体よりも大きくすることでこの現象の抑制を試みた。その結果、後述するように、脆弱加工部の寸法を大きくするだけでは必ず解決できるわけではないことも明らかになった。
発明者らは、種々の検討を重ねた結果、脆弱加工部の正面視形状を変更することにより、この現象の抑制に成功した。
【0025】
図3は、包装袋1の正面視における脆弱加工部40およびその周辺の拡大図である。脆弱加工部40は、半円の円弧状の単位形状が複数接続された正面視形状を有する。本実施形態においては、複数の単位形状40aが、正面視上側に凸の状態と正面視下側に凸の状態とを交互に繰り返しながら複数接続されている。これにより、脆弱加工部40は、上下に振動する波型に形成され、全体として包装袋1の左右方向に延びている。
【0026】
脆弱加工部40は、波型に形成されることにより、上側と下側に、概ね左右方向に延びる第一領域41を有し、各第一領域41間に、概ね上下方向に延びる第二領域42を有する。
【0027】
包装袋1の内圧が上昇すると、包装袋1を形成する積層フィルム10に力が加わるが、積層フィルムは、延伸された方向には伸びにくく、延伸されていない方向には伸びやすい。
本実施形態の包装袋1においては、積層フィルムを左右方向に繰り出しながらレーザーヘッドを上下方向に振りつつ脆弱加工部を形成しているため、積層フィルムの延伸方向と脆弱加工部40の延びる方向とが一致している。
【0028】
包装袋1に生じた内圧は、積層フィルムにおいて、脆弱加工部40の上側に位置する外層20と下側に位置する外層20とを離間させるように加わる。このとき、脆弱加工部40は、上下方向に延びる第二領域42を有するため、各第二領域42を挟む一方の外層20が上方に移動し、他方の外層20が下方に移動するスライド移動が好適に行われる。その結果、脆弱加工部が左右方向に延びる直線状であるときに比べて、脆弱加工部40の上側の外層と下側の外層とが好適に離間する。
【0029】
上述した外層のスライド移動に伴い、第一領域41では、脆弱加工部40の上側に位置する外層20と下側に位置する外層20との距離が広がり、脆弱加工部40の内層30が伸展されて薄くなる。その結果、進展した内層30に小孔が十分に発生し、水蒸気が好適に放出されて、包装袋1が大きく裂けるバーストの発生が抑制される。
【0030】
発明者らの検討では、脆弱加工部を構成する単位形状の寸法や数により、包装袋が膨張した際の挙動が大きく変わることも明らかになった。
まず、単位形状の曲率半径が小さすぎると、第一領域41が小さすぎることにより内層30が伸展される部位の面積が小さくなり、小孔の形成が不十分となる結果、水蒸気が十分に抜けない場合があった。この観点から、単位形状の曲率半径は2mm以上必要であり、5mm以上であることが好ましい。
【0031】
一方、曲率半径が大きすぎると、脆弱加工部を構成する単位形状の数が少なくなることによる不具合が発生しやすいことも分かった。複数の単位形状からなる脆弱加工部において両端部に位置する単位形状では、上述したスライド移動は発生するものの、接合された周縁に近いため、その移動量はわずかである。両端部の単位形状に隣接する単位形状では、両端部がわずかにスライド移動した結果、両端部よりスライド移動しやすくなり、スライド移動量はより大きくなる。このようにして、脆弱加工部40の上側に位置する外層20と下側に位置する外層20とのスライド移動による離間は、脆弱加工部40の長手方向中心に近づくほど累積されて大きくなる。
単位形状の寸法が大きすぎると、小孔の発生に十分寄与しない両端部の割合が大きくなるとともに、脆弱加工部を構成する単位形状の数が少なくなることにより、上述したスライド移動量の累積も起きにくくなるため、好ましくない。
発明者らの検討では、5つ以上の単位形状を含んで脆弱加工部が形成された場合に良好な効果が得られた。単位形状の寸法(半円弧状の場合、概ね曲率半径の2倍)の上限は、包装袋自体の寸法と、それに基づいて定まる脆弱加工部を構成する単位形状の数とに基づいて決定されるが、概ね10mm以下が好ましいと考えられた。
【0032】
本実施形態に係る包装袋1は、上述した構成を有することにより、内容物によって脆弱加工部に生じた小孔が一度に多数塞がれることがない。すなわち、脆弱加工部40において、小孔が多数形成される第一領域41は、脆弱加工部40の上側と下側に分散して配置され、かつ同じ側に配置された複数の第一領域も、互いに離間している。したがって、膜状の内容物が小孔を塞ぐ場合も、単一の膜状内容物がこれら第一領域のすべてを塞ぐことは困難であり、水蒸気を好適に逃がす部位を必ず確保してバーストの発生を抑制できる。
【0033】
本実施形態において、脆弱加工部は、単位形状と直線状の部位とを組み合わせて形成されてもよい。
図5に示す変形例の脆弱加工部は、第二領域42に直線状の部位45を有する。これにより、単位形状40aの幅aと脆弱加工部の高さbとの比b/aが1以上となっている。b/aの好適な数値範囲については、後述する実験例の説明において言及する。
【0034】
以下では、脆弱加工部の形状を様々に変更した実験結果について説明する。
外層20として、二軸延伸のナイロンフィルム(厚さ25μm)を、内層30として、厚さ60μmのLLDPEフィルムを準備した。外層20の一方の面に、脆弱加工部を形成する部位を除いてインキ層50を形成した。インキ層50を形成した面と内層30とを接着剤を用いたドライラミネーションで接合して積層フィルム10を得た。
【0035】
積層フィルムにレーザーを照射して様々な態様の脆弱加工部を形成した。レーザーの強度は、外層が概ね除去される程度とした。
脆弱加工部を形成した積層フィルムと、脆弱加工部を形成した積層フィルムとを内層を対向させて重ね、熱融着により上部を除く周縁部を接合して、上下方向寸法175mm、左右方向寸法145mmの、脆弱加工部の態様が異なる複数の包装袋を作製した。接合されたシール部の幅は、各側10mmとした。
【0036】
各包装袋に、薄切り牛肉および玉ねぎのスライスを含む牛丼の具135gを充填して上縁を熱融着により封止した後冷凍し、実験用サンプルとしての包装体を複数水準作製した。各サンプルにおいては、牛丼の具を充填後に、玉ねぎを脆弱加工部が設けられた部位の内面に配置してから封止した。
【0037】
各水準の包装体を20個準備し、一つずつ脆弱加工部が形成された積層フィルムを上側にして電子レンジで4分間加熱した。加熱後の包装体を確認し、以下の3点の発生を評価した。
・バースト(内層が断裂し、包装袋に脆弱加工部の長さ以上の裂け目を生じた状態)
・シール後退(シール部が剥離したことにより、シール部の最小幅が9mm以下となった状態)
・液漏れ(電子レンジの内面に内容物が付着した状態)
【0038】
脆弱加工部の正面視形状は、
図6に示す4種類とした。
(a)の脆弱加工部140は、包装袋の左右方向に延びる直線状であり、以下、「タイプA」と称する。タイプAについては、長さや位置が異なる5種類の水準を設定した。
(b)の脆弱加工部240は、包装袋の左下隅に形成されたL字状であり、以下、「タイプB」と称する。タイプBは1水準のみ設定した。
(c)の脆弱加工部340は、包装袋の左下隅に形成され、中央部に向かって開くU字状であり、以下、「タイプC」と称する。タイプCについては、角部の曲率半径が異なる3種類の水準を設定した。
(d)の脆弱加工部40は、包装袋の左右方向に延びる波線状であり、
図4で示した本実施形態に係るものである。これを以下、「タイプD」と称する。タイプDについては、長さや
図5に示すb/aの値が異なる4種類の水準を設定した。
以上により、計13の水準を設定した。各水準の設定の詳細および電子レンジ加熱結果を表1に示す。なお、各水準において、上述した手順で測定した脆弱加工部のヤング率(引張速度200mm/分)は、2.8GPaであった。
【0039】
【0040】
タイプAでは、すべての水準においてバーストが発生した。バーストしたサンプルの一部では、玉ねぎが脆弱加工部に貼り付いていたり、玉ねぎが包装袋から飛び出したりしていたため、膜状の玉ねぎがバーストの一因となっていると推測された。
【0041】
タイプBは、脆弱加工部が隅にあるため、玉ねぎの貼り付きはなかったが、シール部に近いために脆弱加工部が十分に延びず、バーストが発生した。
タイプCは、バーストを生じなかったものの、液漏れが発生した。これは、隅部から水蒸気が噴出することにより包装袋が電子レンジ内で回転する結果、遠心力により内容物の液体が脆弱加工部に移動し、小孔から漏れたことによると考えられた。このような液漏れは、タイプCに加えて、タイプBでも認められた。
さらに、タイプBおよびCでは、脆弱加工部が設けられた部位に、応力が集中し、シール後退が認められた。シール後退の程度によっては、シール部の破綻による内容物の漏れも懸念された。
【0042】
タイプDでは、一つの水準をのぞき、バースト、シール後退、及び液漏れのいずれも発生せず、脆弱加工部の長さが60mmと短いものも含めて本実施形態に係る脆弱加工部の有用性が確認できた。
各水準における単位形状の数は、6または12であり、上述したスライド量の累積作用が十分発現していることも、良好な結果の一因であると考えられた。
タイプDにおいて、バーストが発生した水準13のb/aの値は0.5であった。この態様では、上下方向に延びる第二領域がほとんど存在しないため、上述した外層のスライド移動が十分に発生しなかったことが、バーストを防止できなかった一因であると考えられた。
b/aの値が5である水準12の効果は良好であったが、b/aの値が1である水準10および11と同等であった。b/aの値が大きくなるほどレーザーの走査距離が長くなり製造効率が低下するため、b/aの値は、0.5より大きく5以下であることが好ましいと考えられた。
【0043】
以上の実験結果より、本実施形態の包装袋は、電子レンジによる加熱時における破裂がさらに抑制されており、膜状の構成を含む内容物を充填した包装体となった場合も、好適に電子レンジで加熱することができることが示された。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0045】
・本発明の包装袋においてインキ層は必須ではない。他の態様として、外層と内層との接合強度が十分でない場合は、脆弱加工部が設けられる領域を除き、インキ層に代えて接合強度を向上させる中間層が設けられてもよい。
【0046】
・本発明に係る包装袋の構成には特に制限はない、例えば一枚の積層フィルムを折り曲げつつ接合して包装袋が形成されてもよいし、底フィルムを挟みつつ接合することにより、スタンディングパウチとして包装袋が形成されてもよい。
【0047】
・脆弱加工部において、単位形状は半円弧に限られない。例えば、単位形状を4分の1円弧とし、その間に直線状の部位を設けることにより、第一領域を長くすることもできる。
・脆弱加工部において、複数の単位形状が同じ姿勢で接続されてもよい。例えば、すべての単位形状が上側に凸の状態または下側に凸の状態で接続されることにより脆弱加工部が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 包装袋
10 積層フィルム
20 外層
30 内層
40 脆弱加工部
40a 単位形状