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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067435
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ろ過装置の吐水管およびろ過装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20220425BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20220425BHJP
   B01D 35/027 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A01K63/04 B
B01D29/08 530A
B01D29/08 540A
B01D35/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176140
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】711001941
【氏名又は名称】古賀 圭一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100190160
【弁理士】
【氏名又は名称】隅田 俊隆
(72)【発明者】
【氏名】古賀 圭一郎
【テーマコード(参考)】
2B104
4D116
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CA03
2B104CA07
2B104CB23
2B104CB50
2B104CG07
2B104EB19
2B104EB21
2B104ED02
2B104ED05
2B104ED36
2B104ED37
4D116BA05
4D116BA06
4D116DD01
4D116DD04
4D116FF02A
4D116FF17
4D116GG09
4D116GG12
4D116HH03C
4D116KK03
4D116KK04
4D116QA02C
4D116QA02D
4D116QA04C
4D116QA04E
4D116QA06C
4D116QA29C
4D116QB17
4D116UU13
4D116VV08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】観賞魚等の飼育に用いられる水槽の水をろ過するろ過装置において、水位の管理の手間を削減できるように、ろ過水を放出する吐水口の高さ位置が常に水面付近となるように自動的に調整することができるろ過装置の吐水管およびこの吐水管を備えるろ過装置を提供すること。
【解決手段】ろ過水が通過する吐水管本体210を、第1吐水管部211と第2吐水管部212とを摺動可能に嵌合させて伸縮自在に形成するとともに、吐水管本体210を通過してきたろ過水を水槽A内に放出する吐水口220を、浮力で水面付近に浮くことができるようにする浮力付与手段223を備えて形成する。吐水管本体210の伸縮が吐水口の高さ位置の変化量と連動し、水位に変化が生じたときに吐水管本体210の長さを自動的に調整することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過水を水槽内に放出させるろ過装置の吐水管であって、
前記ろ過水が通水する吐水管本体と、該吐水管本体から前記ろ過水を前記水槽内に放出させる吐水口とを備え、
前記吐水管本体は、一端がろ過装置本体に接続される第1吐水管部と、該第1吐水管部の他端に摺動可能に嵌合される第2吐水管部とを備えて伸縮自在に形成され、
前記吐水口は、前記第2吐水管部の先端に設けられるとともに、その高さ位置を浮力によって水面付近に保持させる浮力付与手段を備えることを特徴とするろ過装置の吐水管。
【請求項2】
前記浮力付与手段は、前記吐水口の内部に空気溜まりを形成させる凹部であることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項3】
前記浮力付与手段は、前記吐水口に設けられるフロート部材であることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項4】
前記フロート部材は、固形浮力体および/または空気密封式浮力体であることを特徴とする請求項3に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項5】
前記吐水管本体は、前記第2吐水管部が前記第1吐水管部に対して回動することを規制する回動防止手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項6】
前記吐水管本体は、伸長するときに前記第2吐水管部が前記第1吐水管部から離脱することを防止する離脱防止手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項7】
前記離脱防止手段は、前記第1吐水管部の前記他端に形成される第1フランジと、前記第2吐水管部に形成されて前記第1フランジと係止する第2フランジとを備えることを特徴とする請求項6に記載のろ過装置の吐水管。
【請求項8】
水槽内の水をろ過するろ過装置であって、ろ過水を前記水槽内に放出させる吐水管として、請求項1から7のいずれか一項に記載のろ過装置の吐水管を備えることを特徴とするろ過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類、爬虫類、両生類、昆虫等の水生生物や、水草等の水生植物の飼育等に用いられる水槽に設置されるろ過装置に関するものであり、特には、ろ過装置本体でろ過された水を水槽内に吐水させる吐水管と、この吐水管を備えるろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水生生物や水生植物の飼育には、水槽内の水を清浄に保つためのろ過装置が用いられている。ろ過装置としては、水槽内の底面に設置される底面設置型と、水槽の上方に設置される上部設置型とが代表的であり、いずれのタイプも装置本体でろ過された水を水槽内に放出する吐水管を備えている。
【0003】
図7および図8には、従来のろ過装置300が示されている。ろ過装置300は底面設置型の一例であって、水槽Aの底面A1に配置されて上面に砂利Gが敷かれるフィルタ310と、フィルタ310の上面側に形成される送水口311に接続される吐水管320とを備える。吐水管320は、下端がジョイントJによって送水口311に接続される第1吐水管部321と、下端がホルダ323によって第1吐水管部321の上端と接続されるとともに、上端に吐水口324が設けられる第2吐水管部322とから形成されている。さらに、吐水管320の内部には、ホースHを介してエアポンプPと接続された多孔質のエアストーンSが配置されている。
【0004】
エアポンプPを稼働させると、空気がホースHを通ってエアストーンSに向けて送られて、吐水管320内に供給される。そして、このときに発生する気泡の上昇によって、吐水管320内に揚水力が発生する。すなわち、図7および図8の矢印で示すように、エアポンプPを稼働させると、水槽A内の水は砂利Gおよびフィルタ310を通過してろ過処理され、ろ過水は吐水管320を通って揚水されて、吐水口324から水槽A内に戻される仕組みとなっている。
【0005】
揚水やエアレーションを効率良く行うためには、吐水口324の高さ位置を水面付近に設定しておくことが好ましい。しかしながら、時間が経つにつれて水槽A内の水は徐々に蒸発してしまい、その結果、水位の低下が生じることとなる。この場合、図8に示すように、吐水口324は水面よりも上方に位置してしまうため、揚水やエアレーションを十分に行えなくなってろ過能力が低下し、槽内環境が悪化する虞があった。また、吐水口324から放出される水が水面に落下することとなるため、水音が増大するという不都合もあった。このため、ユーザーは、吐水口324の高さ位置を水面付近に保持させるために、常に水槽Aの水位に注意して、必要に応じて水を補充する必要があった。
【0006】
そこで、水位に応じて吐水口の高さ位置を変更できるように、上下の2つの管部を摺動自在に嵌合させて吐水管を形成し、所望の長さで固定できるようにしたろ過装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1のろ過装置によれば、2つの管部を手で摺動させて吐水管を任意の長さとなるように伸縮させることができるので、水位に変化があった場合には、吐水口が水面付近の高さ位置となるように調整できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-36605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、水槽内の水は、ろ過装置によって循環されているとともに、照明やヒーターから発せられる熱が加わって蒸発しやすい状態にあることから水位の低下が早い。このため、特許文献1のろ過装置では、吐水口の高さ位置の調整のために、吐水管の伸縮操作を高頻度で行わなければならず、依然として管理に手間がかかるといった不都合があった。
【0010】
そこで、本発明は、管理の手間を削減できるように、吐水口の高さ位置が常に水面付近となるように自動的に調整することができるろ過装置の吐水管およびこの吐水管を備えるろ過装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明が採った第一の手段は、ろ過水を水槽内に放出させるろ過装置の吐水管であって、前記ろ過水が通水する吐水管本体と、該吐水管本体から前記ろ過水を前記水槽内に放出させる吐水口とを備え、前記吐水管本体は、一端がろ過装置本体に接続される第1吐水管部と、該第1吐水管部の他端に摺動可能に嵌合される第2吐水管部とを備えて伸縮自在に形成され、前記吐水口は、前記第2吐水管部の先端に設けられるとともに、その高さ位置を浮力によって水面付近に保持させる浮力付与手段を備えることを特徴とするろ過装置の吐水管、である。
【0012】
本発明に係るろ過装置の吐水管(以下、便宜上単に吐水管という)は、ろ過水が通過する吐水管本体と、この吐水管本体を通過してきたろ過水を水槽内に放出する吐水口とを備えている。吐水管本体は、第1吐水管部と第2吐水管部とを備えており、両者を摺動可能に嵌合させて伸縮が自在に行われるように形成される。吐水口は、第2吐水管部の先端に設けられて、浮力で水面付近に浮くことができるようにする浮力付与手段を備える。このように形成される吐水管本体と吐水口とを組み合わせて吐水管を構成することによって、吐水口の高さ位置を常に水面付近に保てるようになる。すなわち、伸縮自在な吐水管本体と、浮力付与手段の作用で常に水面付近に止まろうとする吐水口とを連動させることによって、水位に変化が生じたときでも吐水管本体の長さを自動的に調整できるようにしている。
【0013】
こうすることで、水槽内の水位が変化した場合でも、吐出口の高さ位置が水面付近となるように自動的に調整されるので、従来のように水位を気にして吐出管の長さを手動で調整する必要がなくなって、管理の手間を削減することができる。
【0014】
また、前記浮力付与手段は、前記吐水口の内部に空気溜まりを形成させる凹部であってもよい。こうすることで、エアポンプから吐出管内に供給される空気を吐出口の内部に保持できるようになるので、この空気溜まりの浮力を利用して吐水口を水面付近に浮かせることができるようになる。
【0015】
また、前記浮力付与手段は、前記吐水口に設けられるフロート部材であってもよい。吐水口にフロート部材を設けることで、このフロート部材から生じる浮力を利用して吐水口を水面付近に浮かせることができるようになる。
【0016】
前記フロート部材は、固形浮力体および/または空気密封式浮力体であってもよい。固形浮力体としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、スチロール等の発泡体が挙げられ、空気密封浮力体としては、例えば、樹脂で形成されたフィルム等で気室を作り、その中に気体を封入したものを挙げることができる。
【0017】
また、前記吐水管本体は、前記第2吐水管部が前記第1吐水管部に対して回動することを規制する回動防止手段を備えてもよい。上記のように、吐水管本体は、第1吐水管部と第2吐水管部とが摺動可能に嵌合されて形成される。このため、特に、管の断面が円形の場合には、吐水管内を通過するろ過水の水流やエアレーション等が影響して第2吐水管部が回動してしまう虞がある。そうすると、第2吐水管部の先端に設けられた吐水口も一緒に回動してしまうため、ろ過水の放出方向が一定とならない不都合が生じうる。そこで、回動防止手段を設けておくことで、こうした不都合が生じるのを防止できるようになる。
【0018】
また、前記吐水管本体は、伸長するときに前記第2吐水管部が前記第1吐水管部から離脱することを防止する離脱防止手段を備えてもよい。上記のように、吐水管本体は、第1吐水管部と第2吐水管部とが摺動可能に嵌合されて形成され、第2吐水管部に設けた吐水口の高さ位置に応じて伸縮する。このため、吐水口の高さ位置の変化量が、吐水管本体の伸長範囲を超えたときには、第2吐水管部が第1吐水管部から離脱して、ろ過機能に影響が及ぶことも想定しうる。そこで、第2吐水管部が第1吐水管部から外れないように離脱防止手段を設けておくことで、こうした不都合を防止できるようになる。
【0019】
前記離脱防止手段は、前記第1吐水管部の前記他端に形成される第1フランジと、前記第2吐水管部に形成されて前記第1フランジと係止する第2フランジとを備えてもよい。こうすることで、吐水管本体の伸長が最大に達したときに、第1吐水管部に設けた第1フランジと第2吐水管部に設けた第2フランジとが係止するので、第2吐水管部が第1吐水管部から離脱するのを防止することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明が採った第二の手段は、水槽内の水をろ過するろ過装置であって、ろ過水を前記水槽内に放出させる吐水管として、上記第一の手段のろ過装置の吐水管を備えることを特徴とするろ過装置、である。
【0021】
このろ過装置は、ろ過水を水槽内に放出させる吐出管として第一の手段の吐水管を備えるものであり、水槽内の水位が変化した場合でも、吐水口の高さ位置を常に水面付近に設定できるようにしたろ過装置である。本発明に係るろ過装置は、吐水管を必要とする底面設置型や上部設置型等の各種形態に構成することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るろ過装置の吐水管によれば、第1吐水管部と、これに摺動可能に嵌合される第2吐水管部とを備える吐水管本体と、第2吐水管部の先端に設けられて浮力付与手段を備える吐水口とを有するので、水槽内の水位が変化したときであっても、吐水口が浮力の作用で水面付近に留まろうとするのと連動して吐水管本体が自動的に伸縮するので、吐水口を常に水面付近の高さ位置で保持させることができる。これにより、水槽の水位を常時気にしたり、吐水管本体の長さを手動で調整したりする必要がなくなるので、管理の手間を削減することができるとともに、ろ過装置のろ過性能の低下や水音の増大を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係るろ過装置によれば、上記吐水管を備えるので、水槽内の水位が変化したときであっても、吐水口が浮力によって水面付近に留まろうとするのに連動して、吐水管本体が自動的に伸縮するので、吐水口を常に水面付近の高さ位置で保持させることができる。これにより、水槽の水位を気にしたり、吐水管本体の長さを手動で調整したりする必要がなくなるので、管理の手間を削減することができるとともに、ろ過性能の低下や水音の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置の断面図である。
図2】実施例1に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置であって、水面高さが図1に示す状態より低下したときの状態を示す断面図である。
図3】実施例2に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置を構成する吐水口の側面図である。
図4】実施例3に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置であって、図1のA-A断面図である。
図5】実施例4に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置であって、第1吐水管部と第2吐水管部との嵌合部分の拡大断面図である。
図6】実施例5に係るろ過装置の設置状態を示す正面図である。
図7】従来のろ過装置の吐水管およびろ過装置を示す断面図である。
図8】従来のろ過装置の吐水管およびろ過装置であって、水面高さが図7に示す状態より低下したときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、水槽内の水位の変化に応じて吐水口の高さ位置を自動的に調整できるようにした吐水管およびこれを備えたろ過装置である。
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例0027】
図1および図2には、実施例1に係るろ過装置の吐水管200(以下、便宜上単に吐水管200という)および吐水管200が取り付けられたろ過装置100Aが示されている。
【0028】
ろ過装置100Aは、吐水管200と、ベースフィルタ110と、エアポンプPと、エアストーンSとを備えて構成されている。ベースフィルタ110は、水槽Aの底面A1上に設置されるとともに上面に砂利Gが敷き詰められる平面部111と、平面部111の周縁に設けられる側面部112とを有して形成され、水槽Aに設置したときに、平面部111と底面A1との間に空間が形成されるようになっている。また、平面部111と側面部112には、砂利Gが入り込まない程度の小孔からなる複数の通水孔113が穿設されている。さらに、平面部111には、内部の空間と連通する開口部114が形成されている。
【0029】
吐水管200は、吐水管本体210と吐水口220とを備えて構成されている。吐水管本体210は、第1吐水管部211と、第2吐水管部212とを備えている。第1吐水管部211は、断面円形の細長筒状に形成されており、一端211aがジョイントJによってベースフィルタ110に形成された開口部114に接続されている。これにより、第1吐水管部211の内部は、ベースフィルタ110の内部空間と連通した状態となっている。
【0030】
第2吐水管部212は、断面円形の細長筒状に形成されており、内径が第1吐水管部211の外径よりもやや大きく形成されている。そして、一端212aは、第1吐水管部211の他端211bと接続される。具体的には、第2吐水管部212の一端212aの内部に、第1吐水管部211の他端211bが差し込まれて嵌合されている。このとき、第2吐水管部212の内面と、第1吐水管部211の外面との間には、両者が密着しない程度のわずかな隙間が形成される。これにより、第1吐水管部211と第2吐水管部212とは、両者間で摺動できるようになっている。
【0031】
吐水口220は、開口部114から吐水管210を通ってきたろ過水を水槽A内に放出させるためのものである。吐水口220は、接続部221と、本体部222と、浮力付与手段としてのエアポケット223とを備えて構成されている。接続部221は、本体部222を第2吐水管部212に接続させるためのものである。接続部221は、内径が第2吐水管部212の外径と略同一の断面円形の筒状に形成されており、内部に第2吐水管部212の先端212bが嵌合される。
【0032】
本体部222は、接続部221の軸線方向と略直交する方向に口部222aが開口形成されており、この口部222aからろ過水が放出されるようになっている。
【0033】
エアポケット223は、本体部222の上部内面側に形成された凹部である。この凹部の略中央には、後述するゴムホースHが挿通される孔部223aが形成されている。
【0034】
吐水管本体210の内部には、多孔質のエアストーンSが配設される。エアストーンSは、吐水管200内に空気を送るために設けられており、吐水口220の本体部222に形成された孔部223aに挿通されたゴムホースHによって、水槽Aの外に設置されるエアポンプPと接続されている。なお、孔部223aの直径は、ゴムホースHの外径よりやや小さく形成されている。これにより、孔部223aの周縁とゴムホースHとの間は密封されることとなる。
【0035】
次に、ろ過装置100Aによるろ過処理の仕組みについて説明する。エアポンプPを稼働させると、空気がゴムホースHを通ってエアストーンSに送られて、エアストーンSの表面から吐水管200の内部に気泡となって放出される。すると、放出された気泡の上昇によって吐水管210内のろ過水が揚水されて、吐水口220から放出される。これに伴って、水槽A内の水は、砂利Gをおよびベースフィルタ110の通水孔113を通ってろ過処理されて、ろ過水が吐水管200に送水される。このようにして、水槽A内の水は、図1および図2で示す矢印方向に循環されることとなる。
【0036】
次に、本実施例に係る吐水管200の動作について説明する。図1に示すように、水が入れられた水槽A内にはろ過装置100Aが設置され、底面A1上に設置されたベースフィルタ110の開口部114に接続された吐水管210が、水面に向かって垂設された状態となっている。エアポンプPを稼働させると、エアストーンSから空気が放出される。こうして吐水管本体210内に送り込まれた空気は気泡となって吐水管本体210内を上昇し、これに伴って、矢印で示すような方向に沿って水の循環が行われる。このとき、吐水管本体210内を上昇した気泡の一部は、吐水口220に形成されたエアポケット223に捕捉され、エアポケット223の内部に空気溜まりが形成される。すると、空気溜まりの浮力が吐水口220に作用して、吐水口220は水面付近に留まることができるようなる。
【0037】
一方、吐水管本体210は、第1吐水管部211と第2吐水管部212とが摺動可能に嵌合されて自由に伸縮できるようになっている。すなわち、吐水管本体210の伸縮は、吐水口220の高さ位置の変化と連動している。
【0038】
図2では、図1と同じく、水が入れられた水槽A内に設置されたろ過装置100Aが示されているが、水の蒸発によって水位が図1のそれよりも低くなっている。このとき、吐水口220は、エアポケット223内の空気溜まりによる浮力によって水面付近に留まろうとするのと同時に、水位の低下量分だけ第2吐水管部212を押し下げて吐水管本体210を短くさせる。逆に、水槽A内に水が補充される等して水位が上昇したときには、吐水口220は上昇した水面付近で留まろうとし、同時に吐水管本体210を引き上げることとなる。このように、吐水管200は、水位の変化に応じて吐水管本体210を自動的に伸縮させ、吐水口220を常に水面付近で保持できるようにしている。
【0039】
実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aによれば、伸縮自在に形成された吐水管本体210と、浮力付与手段としてエアポケット223が形成された吐水口220とを備えるので、水槽A内の水位に変化が生じた場合でも、その変化に応じて吐水管本体210を伸縮させて吐水口220を水面付近に保持させることができる。これにより、水位や吐水口の高さ位置の管理の手間を削減することができるとともに、水位の低下に伴うろ過性能の低下および水音の増大を防止することができる。また、付随的効果として、吐水管200は簡素な構成を採用するので、作製を安価で行うことができる。さらに、吐水管200は、ろ過水を水面付近で放出させる構成を有する既設のろ過装置に取り付け可能に形成することもできるので、導入も安価で行うことができる。
【実施例0040】
実施例2は、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aと共通の基本構成を有するが、吐水口220の構成が実施例1と異なっている。よって、ここでは実施例1と相違する構成についてのみ説明する。
【0041】
図3には、実施例2に係る吐水口220が示されている。吐水口220は、浮力付与手段としてフロート部材224を備える。ここでは、フロート部材224に発泡ウレタン片を用いており、接着剤によって本体部222の表面に取り付けられている。フロート部材224は、例えば、図3(a)に示すように、本体部222の上面に設けたり、図3(b)に示すように本体部222の側面に設けたりすることができる。また、フロート部材224の形状や大きさ、数は、本体部222の形状や大きさ、吐水口220の重量等に応じて必要な浮力が得られるように適宜設定すればよい。
【0042】
実施例2によれば、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aの作用効果に加えて、浮力付与手段にフロート部材224を備えるので、吐出口220の形状や大きさ、重量等に合わせて、その形状や大きさ、数等を変更して浮力の調整を行うことができる。
【実施例0043】
実施例3は、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aと共通の基本構成を有するが、吐水管本体210が回動防止手段を備える点で実施例1と異なっている。よって、ここでは実施例1と相違する構成についてのみ説明する。
【0044】
図4には、実施例3に係る吐水管本体210における第1吐水管部211と第2吐水管部212との嵌合部分が示されている。吐水管本体210は、第2吐水管部212が第1吐水管部211に対して回動しないようにする回動防止手段を備えている。
【0045】
図3(a)に示す吐水管本体210では、回動防止手段として、第1吐水管部211の外周面に、軸方向に沿って伸びる4つのリブ211Cが形成されている。こうすることで、リブ211Cが第1吐水管部212の内周面と最小限に当接して、第2吐水管部212の回動を抑制できるようになる。
【0046】
図3(b)に示す吐水管本体210では、回動防止手段として、第2吐水管部211の外周面にシリコンゴムからなる薄肉シート材213が巻回されている。こうすることで、薄肉シート材213と第2吐水管部212との間にわずかな摩擦力が生じるので、第2吐水管部212の回動を抑制できるようになる。
【0047】
図3(c)に示す吐水管本体210では、回動防止手段として、第1吐水管部211と第2吐水管部212とを、断面楕円形の細長筒状に形成している。このように、第1吐水管部211と第2吐水管部212とを真円以外の断面形状に形成すれば、第2吐水管部212の回動を規制することができるようになる。
【0048】
実施例3によれば、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aの作用効果に加えて、吐水管本体210に回転防止手段を備えるので、吐水管200内を通過するろ過水の流れやエアレーションによって第2吐水管部212が第1吐水管部211に対して回動するのを防止することができる。これにより、吐水口220から放出されるろ過水を一定の方向に放出させることができるようになる。
【実施例0049】
実施例4は、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aと共通の基本構成を有するが、吐水管本体210が離脱防止手段を備える点で実施例1と異なっている。よって、ここでは実施例1と相違する構成についてのみ説明する。
【0050】
図5には、実施例4に係る吐水管本体210における第1吐水管部211と第2吐水管部212との嵌合部分が示されている。吐水管本体210は、第1吐水管部211と、これに摺動自在に嵌合される第2吐水管部212とを備えており、第1吐水管部211と第2吐水管部212とには、それぞれ離脱防止手段としての第1フランジ211Fと、第2フランジ212Fとを備えている。第1フランジ211Fは、第1吐水管部211の嵌合部分の端部から径方向外側に広がって形成され、第2フランジ212Fは、第2吐水管部212の嵌合部分の端部から径方向内側に広がって形成されている。そして、第1吐水管部211と第2吐水管部212とは、第1フランジ211Fを第2吐水管部212内に収容するようにして嵌合される。こうすることで、吐水管本体210が最大長さにまで伸長したときに、図5(b)に示すように、第1フランジ211Fを第2フランジ212Fに係止させることができる。これにより、第2吐水管部212が第1吐水管部211から離脱するのを防止できるようになる。
【0051】
実施例4によれば、実施例1に係る吐水管200およびろ過装置100Aの作用効果に加えて、吐水管本体210を構成する第1吐水管部211と第2吐水管部212とに、それぞれ第1フランジ211Fと第2フランジ212Fとからなる離脱防止手段を備えるので、例えば、吐水口220の高さ位置の変化量が、吐水管本体210の伸長範囲を超えたときであっても、第2吐水管部が第1吐水管部から離脱して、ろ過機能に影響が及ぶのを防止することができる。
【実施例0052】
図6には、実施例5に係るろ過装置100Bが示されている。ろ過装置100Bは、実施例1のろ過装置100Aとは異なり、水槽Aの上部に設置されるタイプのものである。ろ過装置100Bは、ろ材ケース110と、吸水管115と、吐水管200とを備える。なお、本実施例において、実施例1と共通する構成については説明を省略することとする。
【0053】
ろ材ケース110は、左右両端が水槽Aの両側壁上辺に係止されて水槽Aの上部に設置されており、内部には図示しないろ材が収容されている。ケース110の左右両側には、それぞれ吸水管115と吐水管200とが設けられており、水槽A内の水は、図示しないポンプによって吸水管115の先端からろ材ケース110内へと吸い上げられてろ過された後、吐水管200を通って水槽A内に放出される。すなわち、水槽A内の水は、図6の矢印方向に沿って循環される。
【0054】
吐水管200は、吐水管本体210と吐水口220とを備えている。吐水管本体210はろ材ケース110の下面に接続される第1吐水管部211と、外径が第1吐水管部211の内径よりもやや小さく形成される第2吐水管部212とを備え、第2吐水管部212の一端が第1吐水管部211の内部に摺動可能に嵌合されている。これにより、吐水管本体200は自由に伸縮できるようになっている。吐水口220は、第2吐水管部212の先端に設けられ、水面付近で保持されるようにする浮力付与手段として、図示しない発泡ウレタン片からなるフロート部材を備えている。このようにして吐水管200を構成することで、吐水管本体210の伸縮長さと吐水口220の高さ位置の変化量とが連動するようになっている。
【0055】
実施例5に係るろ過装置100Bによれば、伸縮自在に形成された吐水管本体210と、浮力付与手段として発泡ウレタン片を設けた吐水口220とを備えるので、水槽A内の水位に変化が生じた場合でも、その変化に応じて吐水管本体210を自動的に伸縮させて吐水口220を水面付近に保持させることができる。これにより、水位や吐水口の高さ位置の管理の手間を削減することができるとともに、水位の低下に伴うろ過性能の低下および水音の増大を防止することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0057】
例えば、実施例1では、第2吐水管部211と吐水口220とを別々に形成しているが、両者を一体に形成してもよい。また、ベースフィルタ110と第1吐水管部211とをジョイントJを介して接続しているが、これを介さずに直接接続してもよい。
【0058】
また、実施例3では、回動防止手段としてのリブ211Cおよび薄肉シート材213を第1吐水管部211の外周面に設けているが、これらを第2吐水管部212の内周面に設けてもよい。また、実施例3では、回動防止手段として、吐水管本体210の断面形状を楕円形としているが、これ以外に三角形、四角形、六角形等の多角形に形成してもよい。
【0059】
また、実施例5では、浮力付与手段として発泡ウレタン片からなるフロート部材を用いているが、これに替えて、実施例1のエアポケット223のような空気溜まりを形成するための凹部を形成してもよい。
【0060】
また、実施例1では、第2吐水管部212の一端212aの内部に第1吐水管部211の他端211bを嵌合させているが、これらの内外を入れ替えて、第1吐水管部211の他端211bの内部に第2吐水管部212の一端212aを嵌合させて形成してもよい。実施例5においても同様にして形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るろ過装置の吐水管およびろ過装置は、水生生物や水生植物の飼育において、水槽内の水の浄化に用いることができるので産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0062】
100A、100B ろ過装置
110 ベースフィルタ、ろ材ケース
200 吐水管
210 吐水管本体
211 第1吐水管部
211C リブ(回動防止手段)
211F 第1フランジ(離脱防止手段)
212 第2吐水管部
212F 第2フランジ(離脱防止手段)
213 薄肉シート材(回動防止手段)
220 吐水口
223 エアポケット(浮力付与手段)
224 フロート部材(浮力付与手段)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8