(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067452
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】リリーフ弁およびガス収納容器
(51)【国際特許分類】
F16K 17/38 20060101AFI20220425BHJP
F16K 17/06 20060101ALI20220425BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20220425BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
F16K17/38 A
F16K17/06 D
F17C11/00 C
F17C13/04 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176165
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393004683
【氏名又は名称】株式会社目黒製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】河合 政征
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 典生
(72)【発明者】
【氏名】永長 秀男
(72)【発明者】
【氏名】目黒 剛
【テーマコード(参考)】
3E172
3H059
3H061
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC05
3E172BC07
3E172BC08
3E172DA75
3E172FA01
3E172JA05
3H059AA03
3H059BB22
3H059BB35
3H059CA20
3H059CD01
3H059CE07
3H059CF04
3H059EE01
3H059FF05
3H059FF11
3H061AA08
3H061BB02
3H061CC03
3H061CC12
3H061DD02
3H061EA32
3H061FC01
3H061GG05
3H061GG17
(57)【要約】
【課題】リリーフ弁からのガス放出を、残圧を残すことなく確実に行う。
【解決手段】ガスを収容する容器に取り付けられるリリーフ弁であって、容器内に連通する弁穴を有する弁座と、前記弁座に接して弁穴を塞ぐ弾性体と、弾性体を弁座側に押圧する押圧部と、押圧部が固定される弁本体と、弁穴から容器外に流れるガスが移動するガス放出路と、を有し、前記押圧部の一部または全部が可溶材で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを収容する容器本体に取り付けられるリリーフ弁であって、
前記容器本体内に連通する弁穴を有する弁座と、
前記弁座に接して前記弁穴を塞ぐ弾性体と、
前記弾性体を前記弁座側に押圧する押圧部と、
前記押圧部が固定される弁本体と、
前記弁穴から容器外に流れるガスが移動するガス放出路と、を有し、
前記押圧部の一部または全部が可溶材で構成されているリリーフ弁。
【請求項2】
前記容器本体がガスを直接またはガス貯蔵材料を介して収容するものである請求項1に記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記ガスが水素であり、前記ガス貯蔵材料が水素吸蔵合金である請求項2記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記押圧部が弾性材料を介することなく前記弁本体に固定されている請求項1~3のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項5】
前記弾性体は、底部に前記弁穴及び前記弁座を有する弾性体収納室に少なくとも一部が収納され、前記押圧部で押圧されることによって、前記弾性体が変形して前記弾性体収納室の周壁に圧接されて前記周壁を封止するものである請求項1~4のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項6】
前記弾性体は、ゴム状態を有するものである請求項1~5のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項7】
前記押圧部が、前記可溶材からなる第1押圧部と、前記第1の押圧部とは別体からなる第2押圧部と、を有しており、
前記押圧部の軸方向において、前記弾性体側である前方に位置して前記弾性体に当接する前記第2押圧部と、前記軸方向の後方側に位置して前記第2押圧部の後方側に当接する前記第1押圧部と、からなる請求項1~6のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項8】
前記第2押圧部は平板状に形成され、前記第2押圧部の中央部側に前記弾性体に当接する突部を有し、前記突部の周囲に、前記弁座よりも前記軸方向後方に位置する第2弁座に着座する着座部を有し、さらに、前記第2押圧部は、前記着座部の内周側に、厚さ方向に貫通して前記ガス放出路の一部を構成する第2押圧部貫通孔が設けられている請求項7に記載のリリーフ弁。
【請求項9】
前記第1押圧部が、中央部側に前記ガス放出路の一部を構成する第1押圧部貫通孔を有する筒形状に形成されており、筒壁が前記第1押圧部の着座部上に位置し、かつ、前記第1押圧部貫通孔が前記第2押圧部貫通孔と重ならない孔の大きさを有している請求項8記載のリリーフ弁。
【請求項10】
前記弁本体が、前記押圧部に当接して前記押圧部を前記弁座側に押さえて前記押圧部を固定している請求項1~9のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項11】
前記放出路に、前記弁本体側に取り付けられて外部に伸張する放出配管が接続されている請求項1~10のいずれか1項に記載のリリーフ弁。
【請求項12】
前記弁本体の中央部側に前記ガス放出路の一部を構成する弁本体貫通穴を有しており、前記弁本体貫通穴に前記放出配管が接続されている請求項11記載のリリーフ弁。
【請求項13】
前記放出配管は、前記容器を覆う外郭容器の外方に伸張するものである請求項11または12に記載のリリーフ弁。
【請求項14】
容器本体と、容器本体に取り付けられた複数のリリーフ弁とを有し、
前記リリーフ弁の少なくとも一つが、
前記容器本体内に連通する弁穴を有する弁座と、
前記弁座に接して前記弁穴を塞ぐ弾性体と、
前記弾性体を前記弁座側に押圧する押圧部と、
前記押圧部が固定される弁本体と、
前記弁穴から容器外に流れるガスが移動するガス放出路と、を有し、
前記押圧部の一部または全部が可溶材で構成されているガス収納容器。
【請求項15】
前記容器本体が長尺形状を有し、直径と長さの比(D/L)が0.2未満である請求項14に記載のガス収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスを収納する容器に設けられ、容器内のガスを安全に放出することを可能にするリリーフ弁および前記リリーフ弁を有するガス収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを収納する容器では、容器内の圧力を安全に放出するためにリリーフ弁を設けている。例えば、特許文献1では、ばねを使用せず弾性体を使用した構造のリリーフ弁が開示されており、水素吸蔵合金又はガス又は液体が内蔵された容器と、容器に形成された凹部と、凹部の底面に形成され容器の内部と連通する穴と、穴の外面に設けられ穴を塞ぐための弾性体と、弾性体を穴側へ付勢する押え板と、を備えている。
【0003】
また、容器が高温状態に置かれた場合に容器内のガスを放出できるように溶栓式のリリーフ弁が開示されている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、ハウジングの内部に入口路と弁室とガス放出路とを順に備え、弁室の入口路側に弁座を備え、弁室内に安全部材を接離可能に挿入し、ハウジング内の合金収容室に低融点合金を配置し、閉弁バネを低融点合金と安全部材の間に配置し全部材を閉弁バネで弁座側へ弾圧し、その反力を固相状態の低融点合金で受け止める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-180250号公報
【特許文献2】特開2009-058088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水素などをそのまま収容している容器では、安全性を確保するため飛行機などで運搬することは不可になっている。しかし、水素を水素吸蔵合金に吸蔵した状態で収容した容器では、ISOで示される火炎試験をクリアすることができ、飛行機などによる運搬が可能になっている。
水素吸蔵合金を通常の小型のボンベに収納している場合、火炎状態になってもリリーフ弁から水素を円滑に放出することができ、問題にはならないが、長尺な形状などの容器では、特許文献1に示されるようなリリーフ弁では、リリーフ弁から離れた位置にある容器の底部付近などで水素を十分に抜くことができず残圧が残ってしまう。
そのため、特許文献2に示されるように、溶栓式のリリーフ弁を用いることが考えられる。
【0006】
しかし、溶栓式の関連技術では。装置が複雑になり、質量増になったり、動作の確実性が低下したりする問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、単純な構造で動作を単純にすることで、軽量化を可能にし、確実な動作が確保されるリリーフ弁およびガス収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のリリーフ弁のうち第1の形態は、
ガスを収容する容器本体に取り付けられるリリーフ弁であって、
前記容器本体内に連通する弁穴を有する弁座と、
前記弁座に接して前記弁穴を塞ぐ弾性体と、
前記弾性体を前記弁座側に押圧する押圧部と、
前記押圧部が固定される弁本体と、
前記弁穴から容器外に流れるガスが移動するガス放出路と、を有し、
前記押圧部の一部または全部が可溶材で構成されている。
第2の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記容器がガスを直接またはガス貯蔵材料を介して収容するものである。
第3の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、前記ガスが水素であり、前記ガス貯蔵材料が水素吸蔵合金である。
第4の形態のリリーフ弁は、前記形態の発明において、
前記押圧部が弾性材料を介することなく前記弁本体に固定されている。
第5の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記弾性体は、底部に前記弁穴及び前記弁座を有する弾性体収納室に少なくとも一部が収納され、前記押圧部で押圧されることによって、前記弾性体が変形して前記弾性体収納室の周壁に圧接されて前記周壁を封止するものである。
第6の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記弾性体は、ゴム状態を有するものである。
第7の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記押圧部が、前記可溶材からなる第1押圧部と、前記第1の押圧部とは別体からなる第2押圧部と、を有しており、
前記押圧部の軸方向において、前記弾性体側である前方に位置して前記弾性体に当接する前記第2押圧部と、前記軸方向の後方側に位置して前記第2押圧部の後方側に当接する前記第1押圧部と、からなる。
第8の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記第2押圧部は平板状に形成され、前記第2押圧部の中央部側に前記弾性体に当接する突部を有し、前記突部の周囲に、前記弁座よりも前記軸方向後方に位置する第2弁座に着座する着座部を有し、さらに、前記第2押圧部は、前記着座部の内周側に、厚さ方向に貫通して前記ガス放出路の一部を構成する第2押圧部貫通孔が設けられている。
第9の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記第1押圧部が、中央部側に前記ガス放出路の一部を構成する第1押圧部貫通孔を有する筒形状に形成されており、筒壁が前記第1押圧部の着座部上に位置し、かつ、前記第1押圧部貫通孔が前記第2押圧部貫通孔と重ならない孔の大きさを有している。
第10の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記弁本体が、前記押圧部に当接して前記押圧部を前記弁座側に押さえて前記押圧部を固定している。
第11の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、
前記放出路に、前記弁本体側に取り付けられて外部に伸張する放出配管が接続されている。
第12の形態のリリーフ弁は、前記形態の発明において、前記弁本体の中央部側に前記ガス放出路の一部を構成する弁本体貫通穴を有しており、前記弁本体貫通穴に前記放出配管が接続されている。
第13の形態のリリーフ弁の発明は、前記形態の発明において、前記放出配管は、前記容器を覆う外郭容器の外方に伸張するものである。
【0009】
本発明のガス収納容器のうち第1の形態は、
容器本体と、容器本体に取り付けられた複数のリリーフ弁とを有し、
前記リリーフ弁の少なくとも一つが、前記容器本体内に連通する弁穴を有する弁座と、
前記弁座に接して前記弁穴を塞ぐ弾性体と、
前記弾性体を前記弁座側に押圧する押圧部と、
前記押圧部が固定される弁本体と、
前記弁穴から容器外に流れるガスが移動するガス放出路と、を有し、
前記押圧部の一部または全部が可溶材で構成されている。
第2の形態のガス収納容器の発明は、前記形態の発明において、
前記容器本体が長尺形状を有し、直径と長さの比(D/L)が0.2未満である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単純な構造を有するリリーフ弁が得られ、弁の軽量化と動作の確実性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態のリリーフ弁およびガス収納容器を示す一部断面図である。
【
図2】同じく、実施形態のリリーフ弁の断面図を示す図である。
【
図3A】同じく、リリーフ弁取付部を示す断面図である。
【
図3B】同じく、リリーフ弁取付部を示す平面図である。
【
図6A】同じく、弁本体の構造を示す断面図である。
【
図6B】同じく、弁本体の構造を示す平面図である。
【
図7A】同じく、配管スペーサの構造を示す断面図である。
【
図7B】同じく、配管スペーサの構造を示す平面図である。
【
図8】同じく、リリーフ弁の組み立て工程図である。
【
図9】実施形態における開閉弁取付部周辺の構造を示す断面図である。
【
図10】実施例における火炎試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明のガス収納容器1は、断面筒状で、両端が閉じられた容器本体1Aを有している。容器本体1Aは、長尺な形状を有しており、外径15~55mm、長さが300~600mmの形状を有している。外径と長さの比(D/L)は0.025~0.183で、0.2未満になっている。容器本体1Aの材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅などが用いられる。ただし、容器本体1Aの材質としては軽量で強度の高いものが望ましいが、本発明としては、容器本体1Aの材質が特定のものに限定されるものではない。
容器本体1A内には、図示しない水素吸蔵合金粒が収納される。その際には、好適には40~60%の充填率で合金粒が収納される。ただし、本実施形態としては水素吸蔵合金粒の充填率が限定されるものではない。また、水素吸蔵合金粒の粒径は、好適には平均で100~1000μmのものが例示される。ただし、本実施形態としてはこの粒径に限定されない。水素吸蔵合金としては種々のものを用いることができ、既知のものを用いることができる。
【0013】
容器本体1Aの底部1Bには、リリーフ弁10が取り付けられている。リリーフ弁10は、
図2、
図3A、Bに示すように、中央に凹部を有するリリーフ弁取付部11を有し、該リリーフ弁取付部11は、前記凹部の開口側を軸方向外側に向けて底部1Bの開口にねじ込み固定され、リリーフ弁取付部11の軸方向外側の鍔部11Aが容器本体の底部1B外面上に当接している。底部1Bの開口外側縁との間には、Oリングが設けられる。リリーフ弁取付部11の軸方向に沿った凹部の底部中央に、容器本体1A内に貫通する弁穴12が形成されており、弁穴12の容器内部側において、弁穴12を覆う金網シート3が積層されている。金網シート3は、容器本体1A内の水素吸蔵合金(図示は省略している)による目詰まりを防止している。
【0014】
リリーフ弁取付部11の底部側には、弁穴12の軸方向外側に隣接して、リリーフ弁取付部11の凹部内径よりも小サイズとした凹部からなる弾性体収納室13を有しており、弾性体収納室13の内周壁に外部形状が略沿っている弾性体14が収納されている、弾性体収納室13の内周形状および弾性体14の外部形状は特に限定されるものではないが、円形、楕円形、多角形形状などを採用することができる。この実施形態では、外周形状として四角形を採用している。弾性体14は、弾性体収納室13に収納されることで、弁穴12の周囲であって、弾性体収納室13の底部に位置する弁座15に当接することができる。
なお、弾性体として天然ゴム又はエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム天然ゴム又はエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴムなど、ゴム状態を有するものを採用することができる。
【0015】
弾性体収納室13の軸方向外側であって、弾性体収納室13よりも周方向大きさを大サイズとした凹部11Bの底面には、弾性体収納室13の外周側に位置する第2弁座となる弁座16を有しており、この弁座16の軸方向外側に蓋板17が設置されている。
蓋板17は、
図4A、Bに示すように、平板円盤状であって、中央に突部17Aを有しており、外周側に弁座16上に位置する平板部17Bを有している。平板部17Bの外周縁の軸方向内側には面取り17Dが形成されている。平板部17Bは、本発明の着座部に相当する。突部17Aは、弾性体収納室13側に向けて位置して弾性体14を弁穴12側に押圧することができ、平板部17Bは弁座16上に位置し、外周側が凹部11Bの側壁に移動が拘束されて位置ずれが防止される。突部17Aの突起量により、弾性体14に対する押圧力を調整することができる。また、平板部17Bから突部17Aの外周側一部にかけて2つの貫通孔17Cが形成されている。蓋板17は、本発明の第2押圧部を構成し、貫通孔17Cは、本発明の第2押圧部貫通孔に相当する。第2押圧部貫通孔は、本発明のガス放出路の一部を構成している。
【0016】
蓋板17の軸方向外側には、
図5A、Bに示すように、蓋板17と外形形状を略同じにし、貫通孔17Cの外周端から外側に位置する平板部17Bの幅と略同じ幅の筒壁を有する座金18を有している。
座金18は、低融点合金で構成されており、所定の温度で溶融する可溶材からなり、本発明の第1押圧部に相当する。第1押圧部の材料は、溶融する温度を条件や強度を条件にして適宜の材料を選定することができ、本発明としては特定のものに限定されるものではない。所定温度としては、例えば100~300℃、強度としては、15~50MPaを選択することができ、前記所定温度や強度に応じて、材料としては、Bi-In合金、Sn-Pb合金、Sn-Ag-Cu合金、などを選択することができる。また、第1押圧部の高さが特に限定されるものではないが、溶融によって弁孔12に対する押圧が確実に解除され、また、早期に押圧が解除されないように適宜の高さとするのが望ましい。すなわち、座金18は、蓋板17よりも厚く形成されている。例えば、蓋板17の厚さを0.5~0.7mmとする場合、座金18の厚さを0.8~1.0mmとすることができる。
座金18の筒穴18Aは、第1押圧部貫通孔に相当し、本発明のガス放出路の一部を構成する。
上記した第1押圧部と第2押圧部とにより、本発明の押圧部が構成される。なお、本発明としては、さらに他の押圧部を有するものであってもよい。
【0017】
座金18の軸方向外側には、
図6A、Bに示す弁本体19が設置される。弁本体19は、座金18の外周形状に略沿い、座金18よりも薄肉の筒壁19Aを軸方向内側に有しており、その外周壁に設けたねじ部を弁本体11の内周壁に設けたねじ部に螺合して、第1押圧部を軸方向内側に押圧する。筒壁19A内の筒孔19Bはガス放出路の一部を構成する。弁本体19のねじ込み量によって座金18に対する押圧力が定まる。
筒壁19Aの軸方向外側は、大きい外周サイズの大径部19Cとし、外周部をボルト形状にし、その内周側には後述する放出配管が取り付けられる筒穴19Dを有している。筒穴19D内の空間は、ガス放出路の一部を構成する。
【0018】
弁本体19の内周側には、
図7A、Bに示す筒状の配管スペーサ20が配置される。
配管スペーサ20は、軸方向外側に放出配管21が嵌め込まれる筒穴20Aを有し、筒穴20Aの軸方向内側では座金18の筒穴18Aに連なるように大径化されている。配管スペーサ20の筒穴20Aは、本発明のガス放出路の一部を構成する。放出配管21は、容器外部に伸張しており、ガス収納容器1に外郭容器100を有する場合には、外郭容器100の外側にまで伸張する。なお、ガス収納容器1の外側に外郭容器100を有しないものであってもよい。
【0019】
次に、リリーフ弁10の組み立て図を
図8に示す。
先ずガス収納容器1の底部1Bに開口を設け(
図8A)、リリーフ弁取付部11、金網3を取り付ける(
図8B)。次いで、リリーフ弁取付部11に、弾性体14、蓋板17、座金18を取り付ける(
図8C)
次いで、配管スペーサ20を取り付け(
図8D)、さらに弁本体19、放出配管21を取り付ける(
図8E)。
【0020】
ガス収納容器1は、水素吸蔵合金粒を充填率50%で充填し、小径部1Cとした頂部側に、
図9に示すように、開閉弁取付部30が取り付けられている。開閉弁取付部30には、容器本体1Aに連通する連通穴31が容器本体1Aの軸方向に沿って形成されており、容器本体1Aの内部とは、
図1に示すフィルタ2を介して連通している。フィルタ2は、水素の通過においてゴミなどを除去することができる。
【0021】
開閉弁取付部30では、通路32Aを通じて連通穴31に連なる開閉弁取付孔32が径方向に沿って形成されており、開閉弁取付孔32は、開閉弁取付部30の外周側に開口している。開閉弁取付孔32には、開閉弁35が取り付けられており、開閉弁35内のステム36のねじ移動により弁穴の開閉が行われ、ガス収納容器1と外部との水素移動のオンオフが調整される。水素吸蔵合金に水素が吸蔵されていない状態では開閉弁35を通して外部から水素を導入して容器内の水素吸蔵合金(図示しない)に貯蔵することができる。水素吸蔵合金に水素を吸蔵している際には、開閉弁35を開け、水素吸蔵合金から放出される水素をガス収納容器外に供給することができる。
【0022】
また、開閉弁取付部30には、開閉弁取付孔32とは異なる径方向において、リリーフ弁取付孔33が形成されており、リリーフ弁取付孔33に連通穴31に連通するようにリリーフ弁40が設けられている。リリーフ弁40は、連通穴31に連通する弁穴42が設けられ、弁穴42を塞ぐ弾性体44が弁穴42の軸方向外周側に配置されている。弾性体44は、リリーフ弁取付孔33の先端側に設けた弾性体収納室43に収納されている。弾性体収納室43の内周壁に外部形状が略沿った弾性体44が収納されている。
この実施形態では弾性体収納室43の外周形状および弾性体44の外部形状は円形が採用されており、弾性体収納室43の底部に位置する弁座45に当接する。
なお、弾性体として天然ゴム又はエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴムなど、ゴム状態を有するものを採用することができる。
【0023】
弾性体収納室43の軸方向外側であって大サイズとしたリリーフ弁取付孔33の底面には、弾性体収納室43の外周側において弁座46を有しており、この弁座46の軸方向外側に蓋板47が設置されている。
蓋板47は、
図3(A)(B)の蓋板17と同様の形状を有しており、中央に突部47Aを有し、外周側に弁座46上に位置する平板部47Bを有している。
突部47Aは、弾性体収納室43側に位置して弾性体44を弁穴42側に押圧する。平板部47Bは弁座46上に位置し、外周側がリリーフ弁取付孔33の内周壁に移動が拘束されて位置ずれが防止される。また、平板部47Bから突部47Aの外周側一部にかけて2つの貫通孔47Cが形成されている。
【0024】
蓋板47の軸方向外側には、蓋板47と外形形状を同じにし、貫通孔47Cの外周端から外側に位置する平板部47Bの幅と同じ筒壁を有する座金48を有している。
【0025】
座金48の外側には、
図6A、Bに示す弁本体19と同様の形状を有する弁本体49が設置されており、開閉弁取付部30の外側端面と弁本体49の外周面との間にOリングが配置されている。
弁本体49は、座金48の外周形状にほぼ沿い、座金48よりも薄肉の筒壁49Aを軸方向内側に有しており、その外周壁に設けたねじ部をリリーフ弁取付孔33の内周壁に設けたねじ部に螺合して、座金48および蓋板47を軸方向内側に押圧し、弾性体44で弁孔42を封止することができる。
筒壁49Aの軸方向外側では、大きい外周サイズの大径部49Cとし、外周部をボルト形状にし、その内周側には後述する放出配管51が取り付けられる筒穴49Dを有している。
【0026】
弁本体49の内周側には、
図7A、Bに示す筒状の配管スペーサ20と同様の形状を有する配管スペーサ50が配置されており、配管スペーサ50の軸方向外側端と弁本体49の筒壁49Aの内周側端面との間にOリングが配置されている。
配管スペーサ50は、軸方向外側に放出配管51が嵌め込まれる筒穴を有し、筒穴の軸方向内側では座金48の筒穴に連なるように大径化されている。放出配管51は、容器外部に伸張しており、ガス収納容器1に外郭容器100を有する場合には、外郭容器100の外側にまで伸張する。
【0027】
なお、本実施形態では、リリーフ弁10とは異なり、リリーフ弁40では、押圧部には可溶材を用いないものとしたが、ガス収納容器の頂部側においても押圧部に可溶材を用いたリリーフ弁を用いることが可能である。ただし、複数のリリーフ弁を設け、リリーフの一部に可溶材を用いた構成とすることにより、ガス収納容器内のどの部分に残圧が残っていても可溶材が働くことで、容器の安全性を確保できるという利点がある。
【0028】
この実施形態のリリーフ弁では、弾性体の材質や押圧部に対する凹圧力などによって異なるものの、例えば、4MPaで圧力をリリーフすることができる。
低い圧力では水素は抜けず、2MPaを超えると少しずつリリーフされ、3.5MPa以上になると大流量でリリーフされる。
また、ISOの火炎試験(ISO16111 6.2.2 Fire test)では、初期時間まで圧力が上がり、その後、リリーフ弁が作用する。容器内では、例えば1MPa程度の残圧が残る場合がある。その後、可溶材が溶融するとリリーフ弁では、弁の封止が解かれ、容器内圧力を完全にゼロにすることができる。
残圧が残る理由としては容器長さが長いことが考えられる。例えば、外径30mm×長さ440mmのような長尺な容器形状では、長さ方向に圧力差ができて底部などに高い残圧が残りやすくなる。
また、この実施形態のリリーフ弁では、比較的厚さの薄い蓋板と可溶材からなる座金で押圧部を構成しているため、装置構造を簡略にして質量増加を軽減することができる。また、火炎の状態になった際にも可溶材の溶融によって弾性体に対する押圧力を速やかになくすことができ、バルブ開の動作を円滑に行うことができる。
【実施例0029】
次に、前記実施形態の容器について、ISO16111 6.2.2 Fire testで示される火炎試験を行った。
試験結果を
図10のグラフに示す。
グラフの横軸は経過時間(分)、左縦軸は、容器表面温度(℃)、右縦軸は容器内の圧力(MPa)を示す。
グラフで見られるように、火炎暴露開始後1分程度で3.5MPa程度で水素放出が開始するが、1MPa程度の残圧が残る。その後、可溶材の溶融により水素が放出されて容器内の水素圧力を0にまで低下させることができ、残圧がない状態を得ることができる。
【0030】
以上、本発明について、前記実施形態および上記実施例の記載に基づいて説明を行ったが、本発明はこれら記載の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは、これら記載に対する適宜の変更が可能である。