(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067464
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】圧縮装置およびガスタービンシステム
(51)【国際特許分類】
F02C 3/30 20060101AFI20220425BHJP
F02C 7/141 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
F02C3/30
F02C7/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176179
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】内田 正宏
(57)【要約】
【課題】圧縮効率を向上させる。
【解決手段】圧縮装置110は、第1の圧縮部(高圧圧縮部114)と、水および可燃性物質を含む被処理液を第1の圧縮部(高圧圧縮部114)の吸入側、もしくは、第1の圧縮部(高圧圧縮部114)内に供給する被処理液供給部150と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧縮部と、
水および可燃性物質を含む被処理液を前記第1の圧縮部の吸入側、もしくは、前記第1の圧縮部内に供給する被処理液供給部と、
を備える圧縮装置。
【請求項2】
前記第1の圧縮部の上流に設けられる第2の圧縮部を備える請求項1に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記第1の圧縮部は、翼部を有し、
前記被処理液供給部は、前記翼部に設けられる第1供給孔を含む請求項2に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記第2の圧縮部は、翼体を有し、
前記被処理液供給部は、少なくとも一部が前記翼体内を通過し、前記第1供給孔に接続される被処理液供給路を備える請求項3に記載の圧縮装置。
【請求項5】
前記第2の圧縮部は、翼体を有し、
前記被処理液供給部は、前記翼体に設けられる第2供給孔を含む請求項2または3に記載の圧縮装置。
【請求項6】
前記第1の圧縮部は、複数の翼部で構成される翼列を有し、
前記被処理液供給部は、前記翼列における隣接する前記翼部間に前記被処理液を供給する請求項2から5のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項7】
前記第2の圧縮部は、複数の翼体で構成される翼列を有し、
前記被処理液供給部は、前記翼列における隣接する前記翼体間に前記被処理液を供給する請求項2から6のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項8】
前記被処理液供給部は、前記第1の圧縮部と前記第2の圧縮部との間に前記被処理液を供給する請求項2から7のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項9】
前記被処理液供給部は、前記被処理液の流量を調整する流量調整部を含む請求項1から8のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項10】
前記可燃性物質は、アンモニアである請求項1から9のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれか1項に記載の圧縮装置と、
前記圧縮装置に接続された燃焼器と、
前記燃焼器に接続されたタービンと、
を備えるガスタービンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮装置およびガスタービンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮装置、燃焼器、タービン、および、発電機を備えるガスタービンシステムが広く利用されている(例えば、特許文献1)。圧縮装置は、空気を圧縮して燃焼器に導く。燃焼器は、圧縮された空気で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する。タービンは、燃焼ガスを回転動力に変換する。タービンによって変換された回転動力により、圧縮装置および発電機が回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧縮装置による圧縮効率を向上させることができる技術の開発が希求されている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑み、圧縮効率を向上させることが可能な圧縮装置およびガスタービンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る圧縮装置は、第1の圧縮部と、水および可燃性物質を含む被処理液を第1の圧縮部の吸入側、もしくは、第1の圧縮部内に供給する被処理液供給部と、を備える。
【0007】
また、第1の圧縮部の上流に設けられる第2の圧縮部を備えてもよい。
【0008】
また、第1の圧縮部は、翼部を有し、被処理液供給部は、翼部に設けられる第1供給孔を含んでもよい。
【0009】
また、第2の圧縮部は、翼体を有し、被処理液供給部は、少なくとも一部が翼体内を通過し、第1供給孔に接続される被処理液供給路を備えてもよい。
【0010】
また、第2の圧縮部は、翼体を有し、被処理液供給部は、翼体に設けられる第2供給孔を含んでもよい。
【0011】
また、第1の圧縮部は、複数の翼部で構成される翼列を有し、被処理液供給部は、翼列における隣接する翼部間に被処理液を供給してもよい。
【0012】
また、第2の圧縮部は、複数の翼体で構成される翼列を有し、被処理液供給部は、翼列における隣接する翼体間に被処理液を供給してもよい。
【0013】
また、被処理液供給部は、第1の圧縮部と第2の圧縮部との間に被処理液を供給してもよい。
【0014】
また、被処理液供給部は、被処理液の流量を調整する流量調整部を含んでもよい。
【0015】
また、可燃性物質は、アンモニアであってもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るガスタービンシステムは、上記圧縮装置と、圧縮装置に接続された燃焼器と、燃焼器に接続されたタービンと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、圧縮効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係るガスタービンシステムを説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るガスタービンシステムおよび比較例のガスタービンシステムにおけるガスの温度推移を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の変形例に係る被処理液供給部を説明する図である。
【
図5】
図5は、第2の変形例に係る被処理液供給部を説明する図である。
【
図6】
図6は、第3の変形例に係る被処理液供給部を説明する図である。
【
図7】
図7は、第4の変形例に係る被処理液供給部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
[ガスタービンシステム100]
図1は、本実施形態に係るガスタービンシステム100を説明する図である。なお、
図1中、実線の矢印は、気体、および、液体の流れを示す。
【0021】
図1に示すように、ガスタービンシステム100は、圧縮装置110と、燃料供給部120と、燃焼器130と、タービン140と、被処理液供給部150とを含む。
【0022】
圧縮装置110は、空気を所定の圧力に圧縮して圧縮空気を生成する。圧縮空気は、後述する燃焼器130に供給される。圧縮装置110は、低圧圧縮部112(第2の圧縮部)および高圧圧縮部114(第1の圧縮部)を含む。低圧圧縮部112は、吸入側が、空気の供給源(外気)に接続される。低圧圧縮部112は、吐出側が高圧圧縮部114の吸入側に接続される。つまり、低圧圧縮部112は、高圧圧縮部114の上流に設けられる。高圧圧縮部114は、吐出側が、送気路116を通じて燃焼器130に接続される。
【0023】
燃料供給部120は、燃料を燃焼器130に供給する。燃料は、例えば、天然ガス、水素等の気体燃料、重油等の液体燃料である。ここでは、燃料が気体燃料である場合を例に挙げる。本実施形態において、燃料供給部120は、燃料圧縮機122と、燃料冷却器124とを含む。燃料圧縮機122は、吸入側が、燃料吸入管122aを通じて燃料の供給源に接続される。燃料圧縮機122は、吐出側が、燃料供給管122bを通じて燃焼器130に接続される。燃料圧縮機122は、燃料を所定の圧力に圧縮して圧縮燃料を生成する。燃料圧縮機122は、モータによって駆動される。
【0024】
燃料冷却器124は、燃料供給管122bに設けられる。燃料冷却器124は、燃料供給管122bを通過する圧縮燃料を冷却する。燃料冷却器124は、例えば、圧縮燃料と冷却水とを熱交換させる熱交換器である。冷却された圧縮燃料は、燃料供給管122bを通じて、燃焼器130に供給される。
【0025】
燃焼器130は、圧縮空気に含まれる酸素で、圧縮燃料、および、後述する可燃性物質を燃焼させて、燃焼ガスを生成する。燃焼器130によって生成された燃焼ガスは、燃焼ガス供給路132を通じて、タービン140に供給される。
【0026】
タービン140は、燃焼ガス供給路132を通じて、燃焼器130に接続される。タービン140は、燃焼器130から供給された燃焼ガスを回転動力に変換する。本実施形態において、タービン140は、圧縮装置110および発電機142と同軸(回転軸146)で接続されている。したがって、タービン140によって生成された回転動力(出力)は、圧縮装置110および発電機142に伝達される。圧縮装置110および発電機142は、タービン140の回転動力によって駆動される。
【0027】
タービン140によって動力が回収された後の燃焼ガスは、燃焼ガス排気路144を通じて外部に排気される。
【0028】
被処理液供給部150は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に被処理液を供給する。つまり、被処理液供給部150は、高圧圧縮部114の吸入側に被処理液を供給する。本実施形態において、被処理液は、水およびアンモニア(可燃性物質)を含む。つまり、被処理液は、アンモニア水である。被処理液は、例えば、ガスタービンシステム100が設置される工場で生じた廃液であってもよい。
【0029】
被処理液供給部150は、タンク152と、ポンプ154と、被処理液供給管156と、流量調整部160とを含む。タンク152は、被処理液を貯留する。ポンプ154は、吸入側が、接続管152aを通じてタンク152に接続される。ポンプ154は、吐出側が、被処理液供給管156に接続される。流量調整部160は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に供給する被処理液の流量を調整する。流量調整部160は、例えば、流量調整弁または遮断弁と、制御部とを含む。本実施形態において、流量調整部160は、外気温、タービン140の回転数、タービン140の出力、および、タンク152内の被処理液の残量のうち、いずれか1または複数に基づいて、被処理液の流量を調整する。
【0030】
図2は、圧縮装置110の断面図である。
図2に示すように、圧縮装置110は、ケース202を備える。ケース202は、円筒形状である。タービン140に連続する回転軸146は、ケース202内に設けられる。
【0031】
低圧圧縮部112は、動翼体210および静翼体220で構成される段を複数備える。動翼体210は、回転軸146に設けられる。動翼体210は、回転軸146から径方向外方に突出する。静翼体220は、ケース202に設けられる。静翼体220は、ケース202から回転軸146に向かって突出する。
【0032】
高圧圧縮部114は、静翼部250および動翼部260で構成される段を複数備える。静翼部250は、ケース202に設けられる。静翼部250は、ケース202から回転軸146に向かって突出する。動翼部260は、回転軸146に設けられる。動翼部260は、回転軸146から径方向外方に突出する。
【0033】
つまり、本実施形態において、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114は、多段の軸流式圧縮部である。
【0034】
また、本実施形態において、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間には、空隙204が形成される。
【0035】
本実施形態において、低圧圧縮部112の静翼体220のうち、最も下流に配される静翼体220内には、被処理液供給路158が形成される。つまり、低圧圧縮部112における空隙204を形成する静翼体220内には、被処理液供給路158が形成される。また、被処理液供給路158が形成される静翼体220の面222には、1または複数の供給孔158a(第2供給孔)が形成される。面222は、高圧圧縮部114の動翼部260に臨む。供給孔158aは、被処理液供給路158に連通する。また、被処理液供給路158は、被処理液供給管156に連通する。なお、被処理液供給路158は、回転軸146の周方向(空気の流れと直交する方向)に複数設けられる1の静翼体220内に形成されてもよいし、複数の静翼体220内に設けられてもよい。また、被処理液供給路158は、回転軸146の周方向(空気の流れと直交する方向)に均等に複数設けられてもよい。
【0036】
したがって、被処理液供給部150のポンプ154が駆動されると、タンク152に貯留された被処理液は、被処理液供給管156、被処理液供給路158を通じて、供給孔158aから空隙204に供給(噴霧)される。つまり、被処理液供給部150は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に形成される空隙204に被処理液を供給する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る圧縮装置110は、被処理液供給部150を備える。被処理液供給部150は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に被処理液を供給する。これにより、被処理液供給部150は、低圧圧縮部112によって圧縮された高温の空気を、被処理液の熱容量および蒸発潜熱によって冷却することができる。したがって、被処理液供給部150は、高圧圧縮部114に吸気される空気の温度を低下させることができ、高圧圧縮部114の圧縮効率を向上させることが可能となる。これにより、圧縮装置110を備えるガスタービンシステム100は、圧縮効率の増加分、燃焼器130に供給される燃料の流量を低減することができる。
【0038】
また、圧縮装置110は、被処理液、ならびに、圧縮空気を冷却することで生じたアンモニアのガスおよび水蒸気を含む混合気体を燃焼器130に供給する。これにより、燃焼器130は、燃焼ガスに加えて、被処理液由来水蒸気をタービン140に供給することができる。
【0039】
従来、タービン140の出力を増加させる場合、燃焼器130への燃料の供給量を増加させて、タービン140に供給される燃焼ガスの流量を増加させる。この際、燃料の増加に伴って、燃焼器130およびタービン140の温度が上昇する。
【0040】
このため、被処理液供給部150を備えない従来技術では、燃焼器130およびタービン140の耐熱温度までしか燃料を増加することができなかった。つまり、従来技術では、燃焼器130およびタービン140の耐熱温度に基づいて決定される燃料の供給量の上限値までしか、発電出力を増加させることができなかった。なお、発電出力は、タービン140の出力と、圧縮装置110、回転軸146、および、発電機142の機械損失との差分である。
【0041】
これに対し、本実施形態のガスタービンシステム100は、上記のとおり圧縮効率を増加させることができるため、燃料流量を減少させることが可能となるとともに、燃料由来の燃焼ガスに加えて、被処理液由来の燃焼ガスおよび水蒸気をタービン140に供給することができる。被処理液中のアンモニアの燃焼で得られる発熱量が、被処理液の蒸発熱と混合気体の温度上昇に要する熱量との加算値以下(被処理液中のアンモニアの燃焼で得られる発熱量≦被処理液の蒸発熱+混合気体の温度上昇に要する熱量)である場合(例えば、被処理液中のアンモニアが12質量%以下である場合)、ガスタービンシステム100において、燃料流量を一定に保持した状態で、被処理液の流量を増加させていくと、アンモニアの燃焼ガスおよび水蒸気の分だけ、タービン140の出力が増加するが、燃焼器130およびタービン140の温度は低下する。
【0042】
また、被処理液中のアンモニアの燃焼で得られる発熱量が、被処理液の蒸発熱と混合気体の温度上昇に要する熱量との加算値を上回る(被処理液中のアンモニアの燃焼で得られる発熱量>被処理液の蒸発熱+混合気体の温度上昇に要する熱量)場合、ガスタービンシステム100において、燃料流量を一定に保持した状態で、被処理液流量を増加させていくと、アンモニアの燃焼ガスおよび水蒸気の分だけ、タービン140の出力(タービン出力)を増加させることができる。このとき、ガスタービンシステム100において、燃焼器130およびタービン140の温度は上昇するものの、従来技術を用いて同じタービン出力を得る場合と比較して、温度上昇を低く抑えることができる。
【0043】
したがって、タービン140の出力を従来技術と同程度とする場合、ガスタービンシステム100は、従来技術と比較して燃料の供給量を削減できる。これにより、ガスタービンシステム100は、従来技術と比較して、発電端効率を向上させることが可能となる。また、ガスタービンシステム100は、タービン140の出力を従来技術と同程度とする場合であっても、燃焼器130およびタービン140の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0044】
また、燃料を上限値まで供給した場合に、ガスタービンシステム100は、従来技術と比較して、タービン140の最大出力、つまり、発電出力の最大値を増加させることが可能となる。
【0045】
また、上記したように、被処理液供給部150は、可燃性物質としてアンモニアを燃焼器130に供給する。燃焼器130がアンモニアを燃焼させることにより、アンモニアを無害化しつつ、アンモニアからエネルギーを回収することができる。また、上記したように、被処理液が、廃液である場合、ガスタービンシステム100は、廃液の処理に要するコストを削減することが可能となる。
【0046】
[ガスタービンシステム100におけるガスの温度推移]
図3は、本実施形態に係るガスタービンシステム100および比較例のガスタービンシステムにおけるガスの温度推移を説明する図である。
図3中、実線は、ガスタービンシステム100におけるガスの温度推移を示す。また、
図3中、破線は、比較例のガスタービンシステムにおけるガスの温度推移を示す。なお、比較例のガスタービンシステムは、ガスタービンシステム100と比較して被処理液供給部150を備えない点のみが異なる。
【0047】
図3に示すように、比較例において、低圧圧縮部112によって空気(吸気)が圧縮されると、吸気の温度T0から温度T1まで上昇する。続いて、高圧圧縮部114によってさらに空気が圧縮されると、温度T2まで上昇する。そして、温度T2の空気が燃焼器130に供給されると、燃焼によって燃焼ガスが温度T3まで上昇する。燃焼ガスは、タービン140によって熱エネルギーが回収され、タービン140から排気される燃焼ガスは、温度T4に低下する。
【0048】
ガスタービンシステム100において、低圧圧縮部112によって空気(吸気)が圧縮されると、比較例と同様に吸気の温度T0から温度T1まで上昇する。しかし、ガスタービンシステム100は、比較例とは異なり、被処理液供給部150によって低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に被処理液が供給される。このため、
図3に示すように、低圧圧縮部112によって圧縮され、高圧圧縮部114に吸入される前の空気は、温度T1より低温となる。したがって、高圧圧縮部114によってさらに空気が圧縮されても、空気の温度は、温度T2未満となる。このため、燃焼器130によって生成される燃焼ガスの温度は、温度T3未満となる。なお、高圧圧縮部114によって圧縮された空気には、被処理液および混合気体が含まれる。したがって、高圧圧縮部114によって圧縮されたガスの温度と、燃焼器130によって生成される燃焼ガスの温度との差分(燃焼器130による温度の上昇幅)は、温度T2と温度T3との差分よりも小さくなる。
【0049】
そして、ガスタービンシステム100の燃焼器130において生成された燃焼ガスは、タービン140によって熱エネルギーが回収され、タービン140から排気される燃焼ガスは、温度T4未満に低下する。
【0050】
このように、ガスタービンシステム100は、比較例よりも、高圧圧縮部114、燃焼器130、タービン140を低温化することができる。これにより、ガスタービンシステム100は、高圧圧縮部114の圧縮効率を向上することが可能となる。また、ガスタービンシステム100は、燃焼器130およびタービン140を長寿命化することができる。
【0051】
[第1の変形例]
図4は、第1の変形例に係る被処理液供給部350を説明する図である。
図4に示すように、被処理液供給部350は、タンク152と、ポンプ154と、被処理液供給管156と、流量調整部160と、被処理液供給路358とを含む。なお、上記圧縮装置110と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
被処理液供給路358は、空隙204を形成するケース202内に設けられる。また、被処理液供給路358に連通する開口358aは、空隙204に臨む。なお、開口358aは、1つであっても複数であってもよい。また、開口358aは、ケース202の周方向(空気の流れと直交する方向)に均等に複数設けられてもよい。
【0053】
これにより、被処理液供給部350は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に形成される空隙204に被処理液を供給することができる。したがって、被処理液供給部350は、低圧圧縮部112によって圧縮された高温の空気を、被処理液の熱容量および蒸発潜熱によって冷却することができる。このため、被処理液供給部350は、高圧圧縮部114の圧縮効率を向上させることが可能となる。
【0054】
[第2の変形例]
図5は、第2の変形例に係る被処理液供給部450を説明する図である。被処理液供給部450は、タンク152と、ポンプ154と、被処理液供給管156と、流量調整部160と、被処理液供給路158、458とを含む。なお、上記圧縮装置110と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、第2の変形例において、圧縮装置110は、空隙204を備えない。
【0055】
第2の変形例において、被処理液供給路158は、低圧圧縮部112の静翼体220のうち、最も下流に配される静翼体220内に形成される。被処理液供給路158が形成される静翼体220の面222には、1または複数の供給孔158aが形成される。第2の変形例において、面222は、高圧圧縮部114の動翼部260のうち、最も上流に配される動翼部260に臨む。
【0056】
また、被処理液供給路458は、高圧圧縮部114の静翼部250のうち、最も上流に配される静翼部250内に形成される。また、被処理液供給路458が形成される面252には、1または複数の供給孔458a(第1供給孔)が形成される。面252は、高圧圧縮部114の動翼部260に臨む。供給孔458aは、被処理液供給路458に連通する。また、被処理液供給路458は、被処理液供給管156に連通する。なお、被処理液供給路458は、回転軸146の周方向(空気の流れと直交する方向)に複数設けられる1の静翼部250内に形成されてもよいし、複数の静翼部250内に設けられてもよい。また、被処理液供給路458は、回転軸146の周方向(空気の流れと直交する方向)に均等に複数設けられてもよい。
【0057】
これにより、被処理液供給部450は、低圧圧縮部112内および高圧圧縮部114内に被処理液を供給することができる。したがって、被処理液供給部450は、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114によって圧縮された高温の空気を、被処理液の熱容量および蒸発潜熱によって冷却することができる。このため、被処理液供給部150は、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114の圧縮効率を向上させることが可能となる。
【0058】
[第3の変形例]
図6は、第3の変形例に係る被処理液供給部550を説明する図である。被処理液供給部550は、タンク152と、ポンプ154と、被処理液供給管156と、流量調整部160と、被処理液供給路158、458、558とを含む。なお、上記圧縮装置110と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、第3の変形例において、圧縮装置110は、空隙204を備えない。
【0059】
第3の変形例において、被処理液供給路558は、ケース202内に設けられる。また、被処理液供給路558は、被処理液供給路158と被処理液供給路458とを連通する。また、被処理液供給路158は、被処理液供給管156に連通する。
【0060】
これにより、被処理液供給部550は、低圧圧縮部112の静翼体220、ケース202を通過させた後、被処理液を供給孔458aから高圧圧縮部114内に供給することができる。したがって、低圧圧縮部112で圧縮された高温の空気を、被処理液供給部550は、被処理液供給路158、被処理液供給路558によって間接的に冷却することができるのに加え、供給孔458aから供給した被処理液で直接冷却することができる。このため、被処理液供給部550は、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114の圧縮効率を向上させることが可能となる。
【0061】
[第4の変形例]
図7は、第4の変形例に係る被処理液供給部650を説明する図である。被処理液供給部650は、タンク152と、ポンプ154と、被処理液供給管156と、流量調整部160と、被処理液供給路658とを含む。なお、上記圧縮装置110と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、第4の変形例において、圧縮装置110は、空隙204を備えない。
【0062】
第4の変形例において、被処理液供給路658は、空間206を形成するケース202内に設けられる。空間206は、低圧圧縮部112において、複数の静翼体220で構成される1の翼列における静翼体220と静翼体220との間に形成される。被処理液供給路658に連通する開口658aは、空間206に臨む。なお、開口658aは、1つであっても複数であってもよい。また、開口658aは、ケース202の周方向(空気の流れと直交する方向)に均等に複数設けられてもよい。
【0063】
これにより、被処理液供給部650は、低圧圧縮部112の1の翼列における隣接する静翼部250間に被処理液を供給することができる。したがって、被処理液供給部650は、低圧圧縮部112によって圧縮された高温の空気を、被処理液の熱容量および蒸発潜熱によって冷却することができる。このため、被処理液供給部650は、高圧圧縮部114の圧縮効率を向上させることが可能となる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上述した実施形態において、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114が、多段の軸流式圧縮部である場合を例に挙げた。しかし、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114の段数に限定はない。例えば、低圧圧縮部112または高圧圧縮部114が1段の軸流式圧縮部であってもよい。また、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114は、遠心式の圧縮部であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、圧縮装置110が、低圧圧縮部112および高圧圧縮部114を備える場合を例に挙げた。しかし、圧縮装置110は、高圧圧縮部114のみを備えてもよい。この場合、被処理液供給部150は、高圧圧縮部114の吸気、もしくは、高圧圧縮部114内に被処理液を供給してもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、被処理液供給部150は、低圧圧縮部112と高圧圧縮部114との間に被処理液を供給する場合を例に挙げた。しかし、被処理液供給部150は、低圧圧縮部112の吸気(吸入側)に被処理液を供給してもよい。
【0068】
また、上記実施形態および第2の変形例において、供給孔158a(第2供給孔)が静翼体220に設けられる場合を例に挙げた。しかし、供給孔158aは、低圧圧縮部112を構成する翼体に設けられていればよい。例えば、供給孔158aは、低圧圧縮部112の動翼体210に設けられていてもよい。
【0069】
また、上記第2の変形例および第3の変形例において、供給孔458a(第1供給孔)が静翼部250に設けられる場合を例に挙げた。しかし、供給孔458aは、高圧圧縮部114を構成する翼部に設けられていればよい。例えば、供給孔458aは、高圧圧縮部114の動翼部260に設けられていてもよい。
【0070】
また、上記第3の変形例において、供給孔458a(第1供給孔)が、被処理液供給路458、558を通じて、静翼体220内を通過する被処理液供給路158に接続される場合を例に挙げた。しかし、供給孔458aは、供給孔458aが設けられる静翼部250の下流の静翼部250内を通過する被処理液供給路に接続されてもよい。
【0071】
同様に、供給孔158a(第2供給孔)は、静翼部250内を通過する被処理液供給路に接続されてもよい。また、供給孔158aは、供給孔158aが設けられる静翼体220の上流の静翼体220内を通過する被処理液供給路に接続されてもよい。
【0072】
また、上記第2の変形例において、被処理液供給部450が、供給孔158aおよび供給孔458aを備える構成を例に挙げた。しかし、被処理液供給部は、供給孔158aまたは供給孔458aのいずれか一方を備えてもよい。また、供給孔158aは、複数の静翼体220に設けられてもよい。この場合、供給孔158aは、連続した段に設けられてもよいし、離れた段に設けられてもよい。同様に、供給孔458aは、複数の静翼部250に設けられてもよい。この場合、供給孔458aは、連続した段に設けられてもよいし、離れた段に設けられてもよい。
【0073】
また、上記第2の変形例において、供給孔158aと、供給孔458aとが連続した段に設けられる場合を説明した。しかし、供給孔158aと、供給孔458aとは、離れた段に設けられてもよい。
【0074】
また、上記第4の変形例において、被処理液供給部650が、低圧圧縮部112において、1の翼列を構成する複数の静翼体220のうち、隣接する静翼体220間に被処理液を供給する場合を例に挙げた。しかし、被処理液供給部650は、低圧圧縮部112を構成する1の翼列における隣接する翼部間に被処理液を供給すればよい。例えば、被処理液供給部650は、低圧圧縮部112において1の翼列を構成する複数の動翼体210のうち、隣接する動翼体210間に被処理液を供給してもよい。
【0075】
同様に、被処理液供給部650は、高圧圧縮部114を構成する1の翼列における隣接する翼部間に被処理液を供給してもよい。例えば、被処理液供給部650は、高圧圧縮部114において1の翼列を構成する複数の静翼部250のうち、隣接する静翼部250間に被処理液を供給してもよい。また、被処理液供給部650は、高圧圧縮部114において1の翼列を構成する複数の動翼部260のうち、隣接する動翼部260間に被処理液を供給してもよい。
【0076】
また、圧縮装置110は、実施形態の被処理液供給部150、第1の変形例の被処理液供給部350、第2の変形例の被処理液供給部450、第3の変形例の被処理液供給部550、および、第4の変形例の被処理液供給部650のうち複数を備えてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、可燃性物質としてアンモニアを例に挙げた。しかし、可燃性物質は、水に溶解すれば、種類に限定はない。可燃性物質は、例えば、エタノール等のアルコールであってもよい。また、可燃性物質は、常温(例えば、25℃)、常圧(例えば、1atm)で液体であってもよいし、気体であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 ガスタービンシステム
110 圧縮装置
112 低圧圧縮部(第2の圧縮部)
114 高圧圧縮部(第1の圧縮部)
130 燃焼器
140 タービン
150 被処理液供給部
158 被処理液供給路
158a 供給孔(第1供給孔)
210 動翼体(翼体)
220 静翼体(翼体)
250 静翼部(翼部)
260 動翼部(翼部)
350 被処理液供給部
358 被処理液供給路
450 被処理液供給部
458 被処理液供給路
458a 供給孔(第2供給孔)
550 被処理液供給部
558 被処理液供給路
650 被処理液供給部
658 被処理液供給路