(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067484
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ケーブル支持具
(51)【国際特許分類】
H02G 9/00 20060101AFI20220425BHJP
H02G 9/08 20060101ALI20220425BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H02G9/00
H02G9/08
F16L3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176209
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000148276
【氏名又は名称】株式会社浅羽製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤生
(72)【発明者】
【氏名】市川 直至
(72)【発明者】
【氏名】山内 康弘
【テーマコード(参考)】
3H023
5G369
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB07
3H023AD08
3H023AD54
5G369AA12
5G369BA05
5G369CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業性を損なわない信頼性の高いケーブル支持具を提供する。
【解決手段】トンネル等の壁面Wに取付けた支持金具15に対して背板部3と側面視で略円弧状のケーブル受け部4からなるケーブル受け具2を組み付けてケーブル支持具1を構成する。ケーブル受け部4の前部に第一挿通口5と第二挿通口6を結ぶ前部挿通路9a、後部に第三挿通口7と第四挿通口8を結ぶ後部挿通路9bを形成し、後部挿通路9bに樹脂バンド11を挿通・締結可能な2つのロッキングヘッド部12、13を同一の挿通方向に設ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定される支持金具とケーブル受け具から構成され、前記ケーブル受け具は、前記支持金具に固定される背板部と、この背板部の前面から突出してケーブルを受持するケーブル受け部からなり、前記ケーブル受け部の前部及び後部に樹脂バンドの挿通路が設けられていること、前記前部挿通路もしくは後部挿通路のいずれか一方の挿通路に樹脂バンドを挿通・締結可能な2つのロッキングヘッド部が同一の挿通方向に設けられていること、を特徴とするケーブル支持具。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル支持具であって、前記ケーブル受け部は側面視略円弧状に形成されているケーブル支持具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のケーブル支持具であって、前記支持金具は、縦長の矩形状であって、前面の左右両端にガイド板部、このガイド板部の側面上部に抜け止め孔、前記ガイド板部間にスリット部、このスリット部の下方にストッパー部が設けられた支持金具本体部と、この本体部の上下両端に設けられたボルト孔を有する支持金具片部からなるケーブル支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内等における信号・通信ケーブルや電力ケーブル等の布設工事の際に用いられるケーブル支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内におけるケーブル等の布設に当たっては、トンネル内側壁面に間隔をおいて設置される支持具にケーブル受座を嵌着し、この受座上にケーブルを載置してトンネル内の側壁面に沿いケーブルを支持布設するケーブル支持具が公知である(特許文献1)。
しかし、このような発明では、樹脂バンドの両端を受け皿体内に搭載された各1個のロッキングヘッドによって固定するが、どちらか一方のロッキングヘッドが故障した際に、樹脂バンドの押さえがきかなくなるため、トンネル内の風圧や振動によりケーブルが受け皿体から外れてしまう。
また、ケーブルの交換や点検時に樹脂バンドを切断した場合、先端部側の樹脂バンドは矢印方向へ引っ張ることにより受け皿体から取り外すことは出来るが、根端部側の樹脂バンドは容易に取り外すことができない。
そのため、作業現場においては、切断後の根端部側の樹脂バンドを壁面側へ押し込み支持金具と基台部間に落とすことで受け皿体から取り外す、という手段が取られているが、このような方法を繰り返していては支持金具と基台部間に樹脂バンドが溜り続けるため作業に支障をきたすし、溜った樹脂バンドを取り除くために複数の受け皿体を複数の支持金具から取り外すのは大変手間のかかる作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、作業性を損なわない信頼性の高いケーブル支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ケーブル支持具において、壁面に固定される支持金具とケーブル受け具から構成され、前記ケーブル受け具は、前記支持金具に固定される背板部と、この背板部の前面から突出してケーブルを受持するケーブル受け部からなり、前記ケーブル受け部の前部及び後部に樹脂バンドの挿通路が設けられていること、前記前部挿通路もしくは後部挿通路のいずれか一方の挿通路に樹脂バンドを挿通・締結可能な2つのロッキングヘッド部が同一の挿通方向に設けられていること、を特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブル支持具であって、前記ケーブル受け部は側面視略円弧状に形成されていること、を特徴とするものである。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のケーブル支持具であって、前記支持金具は、縦長の矩形状であって、前面の左右両端にガイド板部、このガイド板部の側面上部に抜け止め孔、前記ガイド板部間にスリット部、このスリット部の下方にストッパー部が設けられた支持金具本体部と、この本体部の上下両端に設けられたボルト孔を有する支持金具片部からなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つのロッキングヘッドを同一の挿通方向に配置することにより、仮に一方のロッキングヘッドが故障した場合でも他方のロッキングヘッドによって樹脂バンドの締結が維持されるため、従来品と比較して故障確率が低下し、製品としての信頼性が向上する。
また、樹脂バンドをケーブル受け具の壁面側又は前部側の一方に挿入し一筆書きのように固定することができるため、経験の少ない作業者でも確実かつ効率的にケーブルをケーブル支持具に固定することができる。
また、樹脂バンドをケーブル支持具から取り外すのが容易なため、ケーブルの交換・点検時に作業効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係るケーブル受け具の側面図である。
【
図2】実施例1に係るケーブル受け具の正面図である。
【
図3】(A)支持金具の正面図である。(B)支持金具の側面図である。
【
図5】ケーブル支持具を用いてケーブルを支持している状態を示す説明図である。
【
図6】実施例2に係るケーブル受け具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~6を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例0011】
図1は、ケーブル支持具1を構成し、難燃性の合成樹脂材を用いて成形されたケーブル受け具2の側面図、
図2はケーブル受け具2の正面図であって、符号の3は背板部、4は背板部3の前面から突出した側面視略円弧状のケーブル受け部、5はケーブル受け部4の底面前部に形成された第一挿通口、6はケーブル受け部4の前部に形成された第二挿通口、7はケーブル受け部4の後部に形成された第三挿通口、8はケーブル受け部4の底面略中央部であってケーブル受け具2正面側に向けて形成された第四挿通口、9aは第一挿通口5と第二挿通口6間を結ぶ前部挿通路、9bは第三挿通口7と第四挿通口8間を結ぶ後部挿通路である。
【0012】
符号の10はケーブル支持具2に支持されるケーブル、11はケーブル10をケーブル受け部4に載置した状態で締着する樹脂バンドであり、樹脂バンド11の根端側11bは幅広に形成されている。
【0013】
符号の12、13は後部挿通路9bに設けられたロッキングヘッド部であり、このロッキングヘッド部12、13は同一の挿通方向に配置され、樹脂バンド11を挿通するための挿通部12a、13a、挿通後の樹脂バンド11を締結可能なロック爪12b、13bを有し、ケーブル受け部4の側面に形成された側孔部14より嵌め込んでケーブル受け具2に固定されている。
なお、本実施例においてロッキングヘッド部12、13は略連続して設けられているが、これらの位置は特に限定されるものではなく、例えば、ロッキングヘッド部13は第四挿通口8付近に設けてもよい。
【0014】
次に、樹脂バンド11を用いてケーブル10をケーブル受け具2に締着・固定する手順について説明する。
【0015】
先ず、ケーブル受け具2のケーブル受け部4へケーブル10を載置した後、樹脂バンド11の先端側11aを前部挿通路9a(第一挿通口5から第二挿通口6)に挿通する。
ここで、第一挿通口は、ケーブルを把持できる構造であれば良い。例えば、
図2に示すように、樹脂バンド根端側11bは前部挿通路9aよりも幅広に形成されており、樹脂バンド先端側11aを
図1の矢印方向へ引っ張ると樹脂バンド根端側11bが第一挿通口5に引っ掛かって固定されることから、正確に樹脂バンド11の挿通、締め付けを行うことができる。
【0016】
次に、樹脂バンド11をケーブル10の上部周面に掛け渡した後、樹脂バンド先端側11aを第三挿通口7に挿入し、樹脂バンド11を挿入方向へ押し込んで、後部挿通路9bに設けられたロッキングヘッド部12、13の挿通部12a、13aとロック爪12b、13bを経由させて第四挿通口8まで挿通させる。
【0017】
次に、先端側11aを
図1の矢印方向へ引っ張って樹脂バンド11による締め付け強度を確認した後、樹脂バンド11の余剰部分をカットし、回収する。
【0018】
なお、ロッキングヘッド部12、13は、樹脂バンド11の挿通時にはロック爪12b、13bの爪が樹脂バンド11の面に係止せず、
図1の矢印方向(挿入方向)へ引っ張ることはできるが、矢印方向の反対方向へ引っ張られてもロック爪12b、13bが樹脂バンド11の面に食い込んでロックされるため、締め付け後に振動や風圧等の影響で締着が緩んだり解けたりすることはない。
【0019】
以上のように、本発明によれば、ケーブル受け具2にロッキングヘッド部12、13が2つ設けられていることから、ロッキングヘッド部が1つ設けられている場合と比較してケーブル10とケーブル受け具2の固定強度が高くなり、作業の確実性や安定性が増すことになる。
また、先行技術文献に係る発明のように樹脂バンドの両端を夫々別の出口から引き出すのではなく、樹脂バンド11を第一挿通口5から第四挿通口8まで一筆書きのように通してケーブル10をケーブル受け具2に固定することができるため、経験の少ない者でもスムーズに作業することができる。
また、樹脂バンド11の出口である第四挿通口8がケーブル受け具2の正面側、つまり作業者側に向けて形成されているため、後述する支持金具15に対してケーブル受け具2を多段的に組み付けた場合、上段のケーブル受け具2の第四挿通口8から樹脂バンド11を引き出して締め付ける際に下段のケーブル10やケーブル受け具2が邪魔にならず、樹脂バンド11の回収も容易かつ完全に行うことができる。
【0020】
図3は、ケーブル支持具1を構成する支持金具15の正面図及び側面図、
図4はケーブル支持金具15の平面図であって、符号の16は縦長矩形状の支持金具本体部、17は支持金具本体部16の前面の左右両端に設けられたガイド板、18はガイド板17間に形成されたスリット部、19はスリット部18の上端に形成されたスリット開口部、20は支持金具本体部16の前面から突出し、スリット部18の下方に設けられたストッパー部、21は左右のガイド板17の側面上部であってスリット開口部19より下側に形成された抜け止め孔である。
符号の22は支持金具本体部16の上下両端に設けられた側面視略L字状の支持金具片部であり、23は支持金具片部22の略中央に形成されたボルト孔である。
【0021】
図5は、壁面Wに設置したケーブル支持具1を用いてケーブル10を支持している状態を示す説明図であって、支持金具15をトンネル等の壁面Wの長さ方向に対して所定の間隔でボルト24を用いて固定した後、スリット開口部19よりケーブル受け具2の背板部3を挿入し、ケーブル受け具2をスリット部18内のストッパー部20の位置まで落とし込み、支持金具15とケーブル受け具2を嵌合させることにより、ケーブル支持具1を壁面Wに設置する。
【0022】
ケーブル受け具2を複数用いる場合は、1つ目のケーブル受け具2を上述した手順で支持金具15と嵌合させた後、同様の手順で2つ目のケーブル受け具2を1つ目のケーブル受け具2の背板部3の上部3aと接触する位置まで落とし込み、これを繰り返すことによって、支持金具15に対してケーブル受け具2を多段的に組み付けることができる。
【0023】
そして、ケーブル受け具2をスリット部18内に落とし込んだ後、一方の抜け止め孔21から他方の抜け止め孔21まで棒状の抜け止め具(図示せず)を挿入することで、振動等によってスリット開口部19からケーブル受け具2が抜け出ることを防止する。
【0024】
また、
図5ではケーブル受け具2を3つ組み付ける例が示されているが、支持金具本体部16の長さを変更することで、組み付けるケーブル受け具2の数の増減に対応することが可能である。
【0025】
なお、実際のケーブル布設工事においては、壁面Wに固定した支持金具15にケーブル受け具2を取付けた後、ケーブル受け具2のケーブル受け部4へケーブル10を載置し、樹脂バンド11で締着・固定するのが一般的であるが、ケーブル受け具2とケーブル10を樹脂バンド11で締着・固定した後、ケーブル受け具2を壁面Wに固定した支持金具15に組み付けてもよい。
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。