(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067576
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220425BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220425BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220425BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220425BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C02F1/44 A
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176359
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006JA71
4D006KA01
4D006KB01
4D006KB21
4D006PA10
4D006PB02
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4D061DC15
4D061DC17
4D061EA01
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4D061EB16
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB33
4D061EB35
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED06
4D061ED20
4D061FA01
4D061FA02
4D061FA09
4D061FA15
4D061GA05
4D061GC02
5H127AA08
5H127BB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被処理水に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や脱硫処理を可能とし、かつ電極反応効率の低下を抑制することができる水処理装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】被処理水に対する嫌気処理において、被処理水中の還元性物質を電子供与体とする電極反応を行う反応部と、反応部のカソード側において水分量を調整する水分量調整手段とを備える水処理装置及び水処理方法を提供する。本発明によれば、電極を用いた反応部を設置することで、水処理における一連の処理過程の中で効率的な発電・脱硫処理を実施することができる。また、カソード溶液中の水分量を調整することにより、電極反応で発生する水によるカソード溶液中の電極反応成分の濃度低下が抑制できる。これにより、電極反応効率の低下を抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対する嫌気処理を行う水処理装置であって、
前記被処理水中の還元性物質を電子供与体とする電極反応を行う反応部と、
前記反応部のカソード側において水分量を調整する水分量調整手段と、を備えることを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
前記水分量調整手段は、カソード溶液と気体との接触機会を増やす接触機会向上手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記接触機会向上手段は、曝気であることを特徴とする、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記接触機会向上手段は、カソード溶液を吸い上げる揮散体を備え、
前記揮散体は、吸い上げたカソード溶液中の水分を自然蒸散させることを特徴とする、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記水分量調整手段は、加温手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記水分量調整手段は、膜を用いた膜分離手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記反応部内のカソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知する検知手段を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
被処理水に対する嫌気処理を行う水処理方法であって、
前記被処理水中の還元性物質を電子供与体とする電極反応を行う反応工程と、
前記反応工程のカソード側において水分量を調整する水分量調整工程と、を備えることを特徴とする、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理水を処理する水処理としては、様々な処理方法が知られている。このような水処理は、被処理水に含まれる成分や、排出される被処理水の量などのように、被処理水自体に係る物性上の特徴や、処理効率とコストのバランスなどのように、水処理を実施するための設備や運用に係る特徴などを考慮し、処理方法が選択されている。
また、水処理においては、異なる水処理方法を複数組み合わせることで、水処理の効率化を図ることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物を含む被処理水の処理として、被処理水中に一対の電極を浸漬し、電気化学処理を行った後、被処理水を生物処理する水処理について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、電気化学処理と生物処理とを組み合わせた水処理においては、それぞれの処理ごとに反応効率のよい反応を進行させ、水処理全体としての処理効率を向上させることが可能となる。その一方で、一般的に、電気化学処理は電力消費に係るランニングコストの負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された水処理では、電気化学処理単独よりはランニングコストの低減が可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載された水処理では、水処理の系外から電気化学処理及び生物処理に係るエネルギーを供給する必要がある。したがって、水処理時における更なる省エネルギー化が求められている。
【0006】
近年、水処理時における設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、水処理の工程上でエネルギーの回収・利用が可能な技術が検討されている。
このような技術の一つとして、生物処理により発生したバイオガスを利用したエネルギーの回収が行われているが、バイオガスの貯留・精製設備や、バイオガスの燃焼により得られた熱エネルギーをガスエンジンやガスタービンを介して電気エネルギーに変換する設備など、付帯設備が必要となる。したがって、水処理において、より簡便かつ効率的にエネルギーを回収・利用する技術が求められている。
【0007】
水処理においてエネルギーを簡便かつ効率的に回収する技術としては、水処理工程上に電極を設け、電極反応により直接電気エネルギーを回収することが考えられる。このとき、電極反応に供する電子供与体として被処理水中の還元性物質を用いることで、電極反応によるエネルギー回収と同時に、被処理水に対する電気化学処理を行うことができ、水処理の効率向上と省エネルギー化の実現が期待できる。特に、嫌気処理に伴い発生する硫化水素を電子供与体として用いることにより、併せて脱硫処理を行うことも可能となる。
【0008】
一方、本発明者らは、水処理工程上に電極を設けて電極反応を行う際、カソード側に水が生成することで、電極反応成分の濃度が低下し、電極反応効率が低下するという課題があることを見出した。
【0009】
本発明の課題は、被処理水に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や脱硫処理を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる水処理装置及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、被処理水を嫌気処理する際に、被処理水中の還元性物質を電子供与体として電極反応を行うことにより、効率的なエネルギーの回収・利用や脱硫処理が可能となること、及び、電極反応におけるカソード側の水分量を調整することで、電極反応におけるカソード側の電極反応成分の濃度低下を抑制し、電極反応の効率低下を抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水処理装置及び水処理方法である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の水処理装置は、被処理水に対する嫌気処理を行う水処理装置であって、被処理水中の還元性物質を電子供与体とする電極反応を行う反応部と、反応部のカソード側において水分量を調整する水分量調整手段と、を備えるという特徴を有する。
【0012】
本発明の水処理装置は、水処理装置に電極を用いた反応部を設置することで、水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、カソード溶液中の水分量を調整する手段を設けることにより、電極反応で発生する水によるカソード溶液中の電極反応成分の濃度低下を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0013】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、水分量調整手段は、カソード溶液と気体との接触機会を増やす接触機会向上手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、比較的簡易な構造により、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、カソード溶液中の水分量を調整するにあたり、必要とするエネルギーが少ないため、水処理装置のランニングコストを低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、接触機会向上手段は、曝気であるという特徴を有する。
この特徴によれば、簡易な構造により、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、曝気量の制御は比較的容易に行うことができるため、カソード溶液中の水分量調整を容易かつ適切に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、接触機会向上手段は、カソード溶液を吸い上げる揮散体を備え、揮散体は、吸い上げたカソード溶液中の水分を自然蒸散させるという特徴を有する。
この特徴によれば、簡易な構造により、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、カソード溶液中の水分量を調整するにあたり、動力を必要としないため、水処理装置のランニングコストを大幅に低減することが可能となる
【0016】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、水分量調整手段は、加温手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、カソード溶液中の水分量を効率的に調整することが可能となる。また、水処理に伴い発生する熱を用いることで、カソード溶液中の水分量調整に係るランニングコストを低減させることも可能となる。
【0017】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、水分量調整手段は、膜を用いた膜分離手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、膜を介してカソード溶液中の水分の一部を排出することで、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、カソード溶液に対して外部から与える影響を最小限として水分量を調整することができ、カソード溶液中の電極反応成分への影響を少なくすることが可能となる。
【0018】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、反応部内のカソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知する検知手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、カソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知する検知手段を設けることで、カソード溶液中の水分量が適切であるか否かの判断を行うことが可能となる。また、この判断に基づき、水分量調整手段を作動させることで、カソード溶液中の水分量を適切に調整し、電極反応効率の低下をより効果的に抑制することが可能となる。
【0019】
また、上記課題を解決するための本発明の水処理方法としては、被処理水に対する嫌気処理を行う水処理方法であって、被処理水中の還元性物質を電子供与体とする電極反応を行う反応工程と、反応工程のカソード側において水分量を調整する水分量調整工程と、を備えるという特徴を有する。
本発明の水処理方法は、水処理において電極を用いた電極反応工程を設けることで、水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、カソード溶液中の水分量を調整する水分量調整工程を設けることにより、電極反応で発生する水によるカソード溶液中の電極反応成分の濃度低下を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理水に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や脱硫処理を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる水処理装置及び水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施態様における水処理装置の概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様の水処理装置における水分量調整手段を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様の水処理装置における水分量調整手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様の水処理装置における水分量調整手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様の水処理装置における水分量調整手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施態様における水処理装置の概略説明図である。
【
図7】本発明の第3の実施態様における水処理装置の概略説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施態様における水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
【
図9】本発明の第4の実施態様における水処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水処理装置及び水処理方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における水処理方法は、本発明における水処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する水処理装置及び水処理方法については、本発明に係る水処理装置及び水処理方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の水処理装置において、処理対象である被処理水は、還元性物質を含むものであれば特に限定されない。なお、還元性物質は、水処理装置に導入する前の被処理水に含有されているものであってもよく、水処理装置における処理経過に伴って生成され、被処理水中に存在するものであってもよい。具体的な被処理水の例としては、例えば、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や、下水などの生活排水などが挙げられる。なお、以下の実施態様においては、被処理水として、処理を経ることで還元性物質が生成するものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明において、被処理水中に含まれる還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0025】
〔第1の実施態様〕
[水処理装置]
図1は、本発明の第1の実施態様における水処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における水処理装置1Aは、
図1に示すように、処理槽2と、反応部3と、反応部3のカソード側における水分量調整手段4とを備えるものである。また、水処理装置1Aは、処理槽2に被処理水Wを導入する導入配管L1と、処理槽2と反応部3を接続し、処理槽2で被処理水Wが処理された後の処理水W1を反応部3に供給する接続配管L2と、電極反応後の処理水W2を反応部3から排出する排出配管L3とを備えている。
【0026】
(処理槽)
処理槽2は、被処理水Wに対して処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理水W中に含まれる処理対象に合った処理であり、処理後の処理水W1中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、嫌気的な環境下での生物処理(嫌気処理)として、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。また、生物処理の他の例としては、好気的な環境下での生物処理(好気処理)として、活性汚泥を用いる活性汚泥処理などが挙げられるが、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入のメリットが高いことから、本実施態様の処理槽2で行う処理は嫌気処理が好ましい。さらに、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。
【0027】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理水Wを処理した後の処理水W1中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0028】
処理槽2で処理された被処理水Wは還元性物質を含有する処理水W1となり、接続配管L2を介して、反応部3へ導入される。
【0029】
(反応部)
反応部3は、処理水W1中の還元性物質を電子供与体とした電極反応を行うためのものである。また、反応部3では、この電極反応によって発電や脱硫処理を行うことができる。
以下、本実施態様の反応部3の構造について、発電に係る観点から説明する。なお、本実施態様の反応部3による脱硫処理の詳細については後述する。
【0030】
本実施態様の反応部3は、
図1に示すように、処理槽2の後段に設けられ、第1のセル31a及び第2のセル31bと、セル31a、31bの間を仕切るように設けられたイオン交換体35と、セル31a、31bにそれぞれ配置された電極33a、33bとを備えている。ここで、第1のセル31aは、処理槽2から接続配管L2を介して導入された処理水W1が電極33aに接触するように形成されており、第1のセル31aに配置された電極33aはアノードとして機能する。一方、第2のセル31bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル31bに配置された電極33bはカソードとして機能する。また、電極33a、33bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、反応部3において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0031】
第1のセル31aは、電極33aを備え、処理水W1が電極33aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、
図1に示すように、接続配管L2を介して処理水導入口32aから導入された処理水W1を一時的に貯留可能なスペースを有し、電極33aに接触した後の処理水W2を処理水排出口32bから排出するための排出配管L3を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、処理水W1中の還元性物質は電子供与体として電極33aに電子を供与した後、排出配管L3を介して速やかに排出される。
なお、接続配管L2及び/又は排出配管L3に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33aに接触させる処理水W1の量及び流速を調整し、電極33aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0032】
排出配管L3を介して排出された処理水W2は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L3の後段に、処理水W2を更に処理するための処理設備を設け、処理水W2を処理した後、系外へ排出するものとしてもよい。このような処理設備としては、処理水W2が系外あるいは河川への放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0033】
第2のセル31bは、電極33bを備え、処理水W1中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0034】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよいが、本実施態様における電子受容体の形態は、液体とすることが好ましい。これにより、本発明による電極反応効率の低下抑制という効果を十分に発揮することが可能となる。
なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
特に、電子受容体の溶液を用い、電極33bを配置する第2のセル31b内を満たすことが挙げられる。これにより、後述する水分量調整手段4による電極反応効率の低下を抑制する機能が効果的に発揮される。
【0035】
本実施態様において電子受容体の具体的な例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、電極反応効率をより向上させることができるという利点がある。なお、電極反応効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0036】
第2のセル31bとしては、例えば、
図1に示すように、第2のセル31bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けることが挙げられる。
これにより、電極33aからの電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極33aと電極33bの間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口34bを介して速やかに反応部3の外部に排出される。
【0037】
また、本実施態様における第2のセル31bは、
図1に示すように、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを介し、後述する水分量調整手段4のリザーバー40と接続されている。
【0038】
図1において、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを複数設けるものとしてもよい。例えば、電極33bにおける反応に伴い、第2のセル31b内に気体と液体が存在する場合等に対応するため、電子受容体排出口34bを複数設け、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けること等が挙げられる。
【0039】
イオン交換体35は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極33a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極33a(アノード側)から電極33b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極33bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、電極反応効率を向上させることができる。また、イオン交換体35は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極33b(カソード側)に供給される電子受容体(特に酸素)が電極33a側に移動することを抑制し、電極33aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、
図1において、イオン交換体35は、電極33a及び電極33bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極33a及び/又は電極33bを一体とすること等が挙げられる。これにより、反応部3全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0040】
電極33aは、処理水W1中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33aは、処理槽2で処理された後の処理水W1と接触するように第1のセル31a内に配置されている。
【0041】
電極33aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33aとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33aとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0042】
電極33bは、電極33aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33bは、第2のセル31b内に配置されている。
【0043】
電極33bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33bとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33bとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0044】
以下、
図1に基づき、本発明の第1の実施態様の水処理装置における電極反応に係る反応及び工程を説明する。
本実施態様の水処理装置1Aにおける電極反応に係る反応及び工程は、被処理水Wを嫌気処理することで生成した還元性物質を電子供与体として用い、酸化剤や酸素を含む溶液を電子受容体として用いるものについて説明するものである。
なお、
図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における電極反応の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から反応部3に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1、排出配管L3など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S3の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0045】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理水Wは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理される(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0046】
処理槽2で処理され、還元性物質を含む処理水W1は、接続配管L2を介して反応部3における第1のセル31a内に導入される(工程S2)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極33aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極33aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極33aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0047】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0048】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、処理槽2で処理された後の処理水W1に含まれる硫化水素は電極33aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の水処理装置1Aは、発電とともに、脱硫処理・脱臭処理が可能となる。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0049】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極33aにおける反応が進行した後、電子は電極33aから導線を介して電極33bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極33aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体35を介して第2のセル31b側へ移動する(反応R3)。
【0050】
一方、第2のセル31bには、電子受容体供給口34aから電子受容体(溶液)を導入する(工程S3)。ここで、反応R2により、電極33aから電極33bに移動した電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体35を介して第2のセル31b側に移動した水素イオンも電子受容体と反応する。このときの電極33bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。なお、式3における酸素が、電子受容体に相当する。
【数3】
【0051】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S3に基づき、電極33aと電極33bの間に電流が流れる。これにより、被処理水W中の還元性物質(処理水W1に含まれる還元性物質)を電子供与体とする反応が進行し、本実施態様の水処理装置1Aにおける発電及び脱硫処理が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極33a及び電極33bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、水処理装置の設備駆動に用いるものであってもよく、水処理装置外で利用するものであってもよい。
【0052】
本実施態様の水処理装置における電極反応では、上述したように、反応R3によりカソード側に水素イオン(H+)が移動することで、式3に基づく反応R4が進行する。このとき、カソード溶液中に水(H2O)が増加するため、カソード溶液中の電子受容体の濃度が低下する。これにより、電極反応効率が低下するという問題が生じる。このため、本実施態様における水処理装置1Aに、反応部3におけるカソード側の水分量を調整するための手段を設けることが好ましい。
【0053】
(水分量調整手段)
水分量調整手段4は、カソード側の水分量を調整することができるものであればよく、特に限定されない。水分量調整手段4としては、例えば、第2のセル31b内のカソード溶液中の水分量を調整する手段を含むものが挙げられる。このとき、第2のセル31b内にてカソード溶液中の水分量を直接調整することのほか、第2のセル31bから一度排出されたカソード溶液中の水分量を調整することなどが挙げられる。
ここで、第2のセル31bにおける電極反応への影響を抑制するという観点から、本実施態様における水分量調整手段4としては、第2のセル31bから一度排出したカソード溶液に対して水分量調整を行うものについて主に説明する。
【0054】
以下、本実施態様における水分量調整手段4の具体例について説明する。なお、以下に示す水分量調整手段4に係る説明は、本実施態様における水分量調整手段4の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0055】
図2は、本実施態様の水分量調整手段4に係る概略説明図である。なお、
図2は、水処理装置1Aにおける反応部3及び水分量調整手段4周辺の拡大図であり、処理槽2については図示を省略している。
【0056】
図2に示すように、水分量調整手段4としては、第2のセル31bと接続されたリザーバー40と、リザーバー40内のカソード溶液と気体との接触機会を増やす接触機会向上手段4aとを備えるものが挙げられる。ここで、電子受容体排出口34bとリザーバー40を接続する配管L4を介し、第2のセル31bからカソード溶液を回収するとともに、電子受容体供給口34aとリザーバー40を接続する配管L5を介し、水分量調整後のカソード溶液を第2のセル31bに返送する。これにより、リザーバー40内のカソード溶液中に含まれる水分量を調整し、適切な水分量となったカソード溶液を第2のセル31b内に再度返送することで、反応部3における電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0057】
本実施態様におけるリザーバー40は、第2のセル31bから一度排出したカソード溶液を貯留することができる貯留槽としての構造を有するものであればよく、さらに上部が開放されている構造を有することが好ましい。これにより、接触機会向上手段4aによりカソード溶液内から排出される水分が効果的にリザーバー40外に放出され、カソード溶液中の水分量を適切に調整することが可能となる。なお、本実施態様における水処理装置1Aは、第2のセル31bに対するカソード溶液の供給源を別途設けるものとしてもよいが、リザーバー40をカソード溶液の供給源として機能させることが好ましい。これにより、水処理装置1Aに係る設備コストを低減させることが可能となる。
【0058】
本実施態様における接触機会向上手段4aは、リザーバー40内のカソード溶液と気体との接触機会を増やすことで、カソード溶液中の水分をカソード溶液外に放出するものである。
【0059】
接触機会向上手段4aの具体的な例としては、
図2に示すように、リザーバー40に対し、気体を供給する給気口41を設け、給気口41には、ブロワーなどの気体供給源(不図示)から気体を供給するための配管42を接続することが挙げられる。
ここで、給気口41及び配管42は、気体の供給・移送に係る公知の構成を用いることができる。より具体的には、曝気(散気)に係る構造を用い、給気口41から微細気泡を供給することが挙げられる。これにより、給気口41から供給された気体とカソード溶液とが効率的に接触し、簡易な構造により、カソード溶液中の水分量を効率的に調整(低減)することが可能となる。
なお、気体供給源から供給される気体については特に限定されない。例えば、空気のように曝気(散気)処理において通常用いられる気体を供給することが挙げられる。
【0060】
接触機会向上手段4aとしては、
図2に示すように、曝気に係る構造を設けるものに限定されない。
図3は、本実施態様の水分量調整手段4における接触機会向上手段4aの別の態様を示す概略説明図である。なお、
図3は、
図2と同様に、水処理装置1Aにおける反応部3及び水分量調整手段4周辺の拡大図であり、処理槽2については図示を省略している。
【0061】
図3に示すように、接触機会向上手段4aの他の例としては、リザーバー40内にカソード溶液を吸い上げる揮散体43を備えるものが挙げられる。
揮散体43は、カソード溶液を吸い上げるとともに、吸い上げたカソード溶液中の水分を自然蒸散させるものである。より具体的には、揮散体43は、溶液を吸い上げる機能を有するとともに、吸い上げた溶液と大気中の空気とが揮散体43表面で接触し、溶液中の水分が大気中に自然蒸散する機能を有する材質あるいは構造からなるものである。なお、本実施態様における揮散体43の具体例としては、不織布やスポンジ状の構造を有する構造体が挙げられる。
【0062】
この揮散体43の一部をリザーバー40内のカソード溶液に浸漬させるように配置する。そして、リザーバー40内のカソード溶液は揮散体43に吸い上げられ、大気に面した揮散体43の表面から水分が自然蒸散する。これにより、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、カソード溶液中の水分量を調整するにあたり、動力を必要としないため、水処理装置1Aのランニングコストを大幅に低減することが可能となる。
【0063】
また、本実施態様の水分量調整手段4としては、接触機会向上手段4a以外の手段を設けるものとしてもよい。
図4及び
図5は、本実施態様の水分量調整手段4の別の態様を示す概略説明図である。なお、
図4及び
図5は、
図2と同様に、水処理装置1Aにおける反応部3及び水分量調整手段4周辺の拡大図であり、処理槽2については図示を省略している。
【0064】
本実施態様における水分量調整手段4の別態様の一つとしては、
図4に示すように、加温手段4bを設けることが挙げられる。
加温手段4bにより、カソード溶液を加温することで、カソード溶液中の水分を排出(蒸散)させることができる。これにより、カソード溶液中の水分量を効率的に調整することが可能となる。
【0065】
加温手段4bとしては、カソード溶液を加温することができるものであればよく、構造や配置については特に限定されない。例えば、
図4に示すように、配管L4上に加温部44を設けることが挙げられる。また、他の例としては、リザーバー40に加温部を設けることが挙げられる。
加温部44は、公知の加温装置を用いることのほか、水処理装置1A内の他の処理工程で利用される加温設備を用いることが挙げられる。特に、水処理に伴い発生する熱を用いることで、カソード溶液中の水分量調整に係るランニングコストを低減させることも可能となる。
【0066】
また、本実施態様における水分量調整手段4の別態様の一つとしては、
図5に示すように、膜を用いた膜分離手段4cを設けることが挙げられる。
膜分離手段4cにより、カソード溶液中の水分を一部分離することができる。これにより、カソード溶液中の水分量を調整することが可能となる。また、カソード溶液に対して外部から与える影響を最小限として水分量を調整することができ、カソード溶液中の電極反応成分への影響を少なくすることが可能となる。
【0067】
膜分離手段4cとしては、膜を用いてカソード溶液中の水分を一部分離することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、
図5に示すように、配管L4上に、半透膜45で仕切られた空間46a、46bを備える膜分離部46を設け、配管L4側の空間46aにカソード溶液を導入し、半透膜45を介して空間46bにカソード溶液中の水分を一部透過させることが挙げられる。これにより、空間46aから排出され、リザーバー40に導入されるカソード溶液について、水分量を調整することが可能となる。
【0068】
半透膜45としては、空間46a内のカソード溶液から溶媒(水)を空間46b側へ透過させることができるものであればよく、正浸透膜、逆浸透膜のいずれであってもよい。例えば、半透膜45として正浸透膜を用いる場合、空間46bにカソード溶液よりも高濃度の溶液を満たすことで、カソード溶液中の水分を空間46b側に透過させる。一方、半透膜45として逆浸透膜を用いる場合、空間46bにカソード溶液よりも低濃度の溶液を持たすことで、カソード溶液中の水分を空間46b側に透過させる。これにより、カソード溶液中の水分量の調整が可能となる。
【0069】
本実施態様の水分量調整手段4は、接触機会向上手段4a、加温手段4b、膜分離手段4cのうち、いずれか一つとしてもよく、複数を組み合わせるものとしてもよい。
【0070】
また、上記した水分量調整手段4に加え、電子受容体供給口34a、電子受容体排出口34b、配管L4、配管L5のいずれか一つあるいは全てにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル31bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極33aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0071】
本実施態様における水処理装置1Aは、被処理水W中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電を行い、エネルギーを回収・利用するものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における水処理装置1Aは電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、導入配管L1、接続配管L2及び排出配管L3の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0072】
以上のように、本実施態様の水処理装置1A及び水処理装置1Aを用いた水処理方法により、水処理における一連の処理過程の中で電極反応を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、カソード溶液中の水分量を調整する手段を設けることにより、電極反応で発生する水によるカソード溶液中の電極反応成分の濃度低下を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0073】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様における水処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る水処理装置1Bは、第1の実施態様における水処理装置1Aに対し、カソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知する検知手段5を備えるものである。なお、水分量調整手段4としては、第1の実施態様に示した水分量調整手段4のうち、いずれを適用するものであってもよく、特に限定されない。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0074】
本実施態様の水処理装置1Bは、検知手段5を設けることで、カソード溶液に含まれる水分量や溶質濃度を把握することが可能となる。また、検知手段5の結果に基づき、水分量調整手段4を制御することで、カソード溶液中の水分量を適切に維持することが可能となる。
なお、検知手段5と水分量調整手段4は自動制御可能となるように接続するものとしてもよく、検知手段5の結果を基に、作業者が水分量調整手段4を作動させるものとしてもよい。作業者の負荷を低減させるという観点からは、検知手段5と水分量調整手段4を接続し、自動制御可能とすることが好ましい。
【0075】
検知手段5は、カソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、
図6に示すように、配管L4上に検知部51を設け、検知部51と水分量調整手段4(例えば、給気口41に気体を送る給気用ブロワーB等)を制御可能に接続することが挙げられる。このとき、検知部51の具体例としては、カソード溶液の水分量あるいは溶質濃度を検知するための各種分析装置・測定装置を用いることが挙げられる。例えば、電子受容体としてフェリシアン化カリウム水溶液を用いる場合、カソード溶液の溶質濃度を検知する検知部51としては、吸光度測定装置や電気伝導率の測定装置などを用いることが挙げられる。
【0076】
検知手段5の他の例としては、反応部3における電極反応による発電効率(出力)を検知するものや、水分量調整手段4におけるリザーバー40の水位変動を検知するものなどが挙げられる。これにより、反応部3における発電効率(出力)の低下や、リザーバー40の水位上昇により、カソード溶液中に過剰な水分が含まれていると判断することができ、この判断に基づき水分量調整手段4を作動させることにより、カソード溶液中の水分量を適切に調整することが可能となる。
【0077】
また、本実施態様の水処理装置1Bにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0078】
以上のように、本実施態様における水処理装置1B及び水処理装置1Bを用いた水処理方法は、カソード溶液中の水分量又は溶質濃度を検知する検知手段を設けることで、カソード溶液中の水分量が適切であるか否かの判断を行うことが可能となる。また、この判断に基づき、水分量調整手段を作動させることで、カソード溶液中の水分量を適切に調整し、電極反応効率の低下をより効果的に抑制することが可能となる。
【0079】
本発明の水処理装置において、処理槽2の態様や、処理槽2と反応部3の位置関係については、第1及び第2の実施態様に示した水処理装置1A、1Bに限定されるものではない。
以下、本発明の水処理装置における処理槽2、反応部3の別態様について例示する。
【0080】
〔第3の実施態様〕
図7は、本発明の第3の実施態様における水処理装置を示す概略説明図である。また、
図8は、本発明の第3の実施態様における水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る水処理装置1Cは、処理槽2が、酸生成槽21とメタン発酵槽22からなるものである。また、反応部3が、処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上に設けられるものである。ここで、
図7と
図8に示す水処理装置1Cは、それぞれ反応部3の設置箇所が異なるものを示している。なお、水分量調整手段4としては、第1の実施態様に示した水分量調整手段4のうち、いずれを適用するものであってもよく、特に限定されない。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0081】
本実施態様における水処理装置1Cは、
図7及び
図8に示すように、処理槽2は、接続配管L6により接続された酸生成槽21とメタン発酵槽22からなる。また、
図7においては、酸生成槽21とメタン発酵槽22間に、循環配管L7による循環流路が形成されているものを示している。一方、
図8においては、循環配管L8によりメタン発酵槽22内における循環流路が形成されているものを示している。
なお、
図7に示す水処理装置1Cにおいては、反応部3が循環配管L7上に設けられている。一方、
図8に示す水処理装置1Cにおいては、反応部3が循環配管L8上に設けられている。
【0082】
本実施態様における処理槽2は、酸生成槽21及びメタン発酵槽22を備えるものである。また、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、内部に収容する微生物により、被処理水Wを嫌気処理するための反応槽である。なお、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、嫌気的条件の維持のために、天井を有し、閉じた空間を形成していることが好ましい。
【0083】
酸生成槽21は、導入配管L1により導入される被処理水Wに対し、内部に収容する酸生成菌(主として嫌気性の酸生成菌)により、糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成処理を行うものである。酸生成槽21で処理された被処理水Wは、接続配管L6を介してメタン発酵槽22へ供給される。
【0084】
なお、酸生成槽21は、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0085】
メタン発酵槽22は、接続配管L6により供給される酸生成槽21で処理された被処理水Wに含まれる単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等からメタンを生成するメタン発酵処理を行うものである。メタン発酵処理は、浮遊法、固定床法、流動床法、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)法等により保持されたメタン生成菌により溶存酸素のない嫌気性雰囲気で行うものである。
【0086】
メタン発酵槽22には、嫌気処理に適した嫌気性菌が存在するグラニュール層が形成される。そして、酸生成槽21から被処理水Wがメタン発酵槽22内に導入されると、グラニュール層に含まれる嫌気性菌によってメタン発酵が行われる。その結果、メタン発酵槽22内では、メタン及び二酸化炭素を主成分とするガスが発生するとともに、還元性物質を含む処理水W1を生成する。なお、メタン発酵槽22の内部には気固液分離手段であるセトラー23が設けられていてもよい。メタン発酵槽22内で発生したガスは槽外に放出又は回収される(不図示)。また、メタン発酵槽22で生成された処理水W3は排出配管L9を介して処理系外に排出される。
【0087】
なお、メタン発酵槽22は、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0088】
メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、メタンガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備えるものとすることが好ましい。これにより、反応部3による発電以外に、被処理水Wから有用なエネルギー源であるメタンガスを回収して有効利用することが可能となる。なお、メタンガスの活用として、ガス燃焼による発電を行う場合、このガス燃焼に用いる燃焼装置から排出される熱を、水分量調整手段4の加温手段4bに用いるものとしてもよい。これにより、水処理により生じた排出物を用いて、反応部3の電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0089】
また、メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、二酸化炭素ガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備え、反応部3における電子受容体供給口34aから第2のセル31b内へ二酸化炭素ガスを導入可能な手段を備えるものとしてもよい。これにより、二酸化炭素ガスを電子受容体として有効利用し、電子受容体の供給コストを低減させことが可能となる。また、上述した二酸化炭素を導入可能な手段は、水分量調整手段4の接触機会向上手段4aと別体で設けるものであってもよく、水分量調整手段4の接触機会向上手段4aの一部と重なるものであってもよい。これにより、第2のセル31b内には二酸化炭素が安定して供給されるため、カソード側の水分量調整を容易に行うことが可能となる。
【0090】
さらに、本実施態様におけるメタン発酵槽22は、循環配管L7及び/又は循環配管L8を備えている。循環配管L7は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wを酸生成槽21に供給するものであり、酸生成槽21とメタン発酵槽22間の循環流路を形成するものである。また、循環配管L8は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wをメタン発酵槽22下部に供給するものであり、メタン発酵槽22内における循環流路が形成されている。
【0091】
本実施態様における反応部3は、
図7及び
図8に示すように、循環配管L7及び循環配管L8により形成される循環流路上に設けられるものを例示している。
以下、本実施態様の水処理装置1Cにおけるメタン発酵槽22から反応部3への循環経路について説明する。
【0092】
図7に示すように、循環配管L7上に反応部3を設けるものについては、メタン発酵槽22からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L7を介して、酸生成槽21に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように水素イオン濃度が上昇し、pHが酸性を示す溶液となる。一般に、酸生成槽21内の反応を好適に進行させるためには、酸生成槽21内のpHは酸性寄りにあることが好ましいことが知られている。したがって、反応部3から酸生成槽21に排出される被処理水Wは、酸生成槽21内の反応を好条件下で進行するためのpH調整剤として利用するものとしてもよい。また、酸生成槽21側の循環配管L7上に、バルブなどの流量調整機構や活性炭などの吸着処理手段を設けるものとしてもよい。これにより、反応部3から排出される処理水W2が酸生成槽21内に流入することで酸生成槽21内のpH範囲が適切な範囲から外れる場合、処理水W2の流入量を制御することや酸生成槽21内の被処理水WのpHを制御することができ、酸生成槽21内の反応に対する阻害を抑制することが可能となる。
【0093】
また、
図8に示すように、循環配管L8上に反応部3を設けるものについては、メタン発酵槽22上部からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L6を介してメタン発酵槽22下部に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように溶存する硫化水素の濃度が低下した溶液となる。メタン発酵槽22内のグラニュール層に含まれるメタン菌は、硫化水素により代謝を阻害されることが知られている。このため、反応部3からメタン発酵槽22下部に供給される処理水W2は、メタン発酵を阻害することなくメタン発酵槽22内を循環することができるという効果を奏する。
【0094】
図7及び
図8における反応部3において電子受容体として用いられた後のカソード溶液は、電子受容体排出口34bから排出され、水分量調整手段4へと送られる。そして、上述した水分量調整手段4によりカソード溶液中の水分量が調整された後、再度第2のセル31bに返送される。これにより、反応部3において電極反応効率が低下することを抑制することが可能となる。
【0095】
なお、本実施態様の水処理装置1Cにおいて、排出配管L9を介して排出された処理水W3は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L9の後段に、処理設備を設けるものとしてもよい。これにより、処理設備による処理を経ることで更に被処理水Wに対する処理効率を向上させ、水処理装置1Cから被処理水Wを系外に放出することが可能となる。
【0096】
また、本実施態様の水処理装置1Cにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0097】
以上のように、本実施態様における水処理装置1C及び水処理装置1Cを用いた水処理方法は、処理槽2を酸生成槽21及びメタン発酵槽22とで構成することにより、それぞれの処理(酸生成処理及びメタン発酵)に適した条件下で水処理を行うことができるため、水処理効率をより向上させることができる。
【0098】
また、本実施態様における水処理装置1Cは、反応部3の設置箇所を処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上とすることにより、第1のセル31a側に供給された処理水W1を、反応後、もう一度処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に供給することになる。したがって、被処理水Wが繰り返し処理されることになり、反応部3から排出される処理水W2に対しても水処理を向上させることが可能となる。また、このとき反応部3から排出される処理水W2を処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に再導入することで、処理槽2における反応を好条件下で進行させることを可能とするという効果も奏する。
【0099】
〔第4の実施態様〕
図9は、本発明の第4の実施態様における水処理装置を示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る水処理装置1Dは、
図9に示すように、第1の実施態様に係る水処理装置1Aにおいて、反応部3の排出配管L3から排出された処理水W2を処理する曝気槽6を設け、曝気槽6と反応部3の第2のセル31bに設けられた電子受容体供給口34aとを接続配管L10で接続するものである。なお、本実施態様における水処理装置1Dにおける水分量調整手段4は、上述した水分量調整手段4を適宜選択することができる。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0100】
本実施態様における水処理装置1Dは、曝気槽6内の処理水W2を反応部3に供給して、反応部3における電子受容体として用いるものである。なお、接続配管L10により反応部3に供給されるもの以外の処理水W2については、処理水W3として系外へ排出する。
【0101】
曝気槽6は、曝気装置6aにより、槽内に導入された処理水W2に対し、酸素を含む気体(酸素、空気など)の曝気を行い、好気性微生物による好気処理や溶存酸素による酸化反応を進行させるものである。
本実施態様における曝気槽6は、
図9に示すように、反応部3の第1のセル31aから排出された処理水W2が導入され、導入された処理水W2に対して曝気を行うものに限定されない。曝気槽6の他の例としては、例えば、処理槽2から直接処理水W1を導入し、曝気を行うもの等が挙げられる。
【0102】
曝気装置6aは、酸素を含む気体を曝気槽6内の処理水W2に供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、曝気処理において広く用いられているものとして、ブロワーと曝気管の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
【0103】
曝気槽6内には、曝気装置6aにより酸素を含む気体が導入されるため、曝気槽6内の処理水W2は、溶存酸素を含む液体となっている。したがって、接続配管L10を介して反応部3の第2のセル31b内に導入した処理水W2は、反応部3における電子受容体となる。これにより、水処理装置1D内における処理工程で発生するものを有効活用した電極反応を行うことができる。
【0104】
また、反応部3において電子受容体として用いられた後のカソード溶液は、電子受容体排出口34bから排出され、水分量調整手段4へと送られる。そして、上述した水分量調整手段4によりカソード溶液中の水分量が調整された後、再度第2のセル31bに返送される。これにより、反応部3において電極反応効率が低下することを抑制することが可能となる。
【0105】
また、本実施態様の水処理装置1Dにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0106】
以上のように、本実施態様における水処理装置1D及び水処理装置1Dを用いた水処理方法は、水処理装置1D内で進行する処理工程で生じたものを、反応部3における電子供与体及び電子受容体として利用することができ、電極反応に係るランニングコストを低減させることが可能となる。
【0107】
なお、上述した実施態様は、水処理装置及び水処理方法の一例を示すものである。本発明に係る水処理装置及び水処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水処理装置及び水処理方法を変形してもよい。
【0108】
例えば、本実施態様における水処理装置は、複数の反応部3を備えるものとしてもよい。例えば、第3の実施態様において
図7及び
図8に示した反応部を両方備えること等が挙げられる。これにより、水処理装置内での被処理水Wの処理工程を有効活用した電極反応を複数箇所で行うことが可能となるとともに、水処理効率と電極反応効率の両方を向上させることが可能となる。
【0109】
また、例えば、本実施態様における水処理装置の水分量調整手段4は、カソード溶液中の水分量を低減させる手段を備えることだけではなく、カソード溶液に水分を添加する手段を備えるものとしてもよい。これにより、反応部3におけるカソード溶液量が不足した場合に、カソード溶液量を適切に維持することができ、電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0110】
また、例えば、本実施態様における水処理装置の電極33a及び電極33bを、電極33a及び電極33bの表面が露出した状態で筐体内に配置し、反応部3から取り出し可能とした電極ユニットとして反応部3に設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33bのメンテナンス時において、反応部3から取り出すことが容易となるため、メンテナンス作業が容易となる。
【0111】
また、例えば、本実施態様における水処理装置は、反応部3として、処理槽2(メタン発酵槽22)内のセトラー23部分に電極33a及び電極33bを設けるものとしてもよい。なお、セトラー23近傍に電極33a及び電極33bを設けるものであってもよく、セトラー23そのものを電極33a及び電極33bとして利用するものであってもよい。これにより、反応部3が処理槽2内に組み込まれる形となるため、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0112】
また、例えば、本実施態様における水処理装置は、電極33bを曝気槽6内に設け、曝気槽6が反応部3の第2のセル31bとして機能するものとしてもよい。これにより、反応部3と曝気槽6を一体化し、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0113】
また、例えば、本実施態様における水処理装置は、絶縁機構を設けるものとしてもよい。絶縁機構は、反応部3で反応する処理水W1以外の処理水(処理水W2)を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。
絶縁機構による絶縁手段としては、例えば、反応部3の電極33aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。これにより、反応部3で生成した電子が電極33a及び電極33bの間以外に流れることを防ぎ、電極反応効率を向上させるものである。
なお、本実施態様における水処理装置は、第1の実施態様に示したような水処理装置を構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、反応部3における電極反応効率を向上させることが可能となる。
【0114】
また、例えば、本実施態様における水処理装置は、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体35が挙げられる。これにより、反応部3の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル31bにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bが挙げられる。これにより、反応部3をより簡略化することが可能となる。このとき、電極33bの一面が処理水W1又はイオン交換体35に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極33b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極33b表面に付着することを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の水処理装置及び水処理方法は、被処理水を処理する水処理に利用される。特に、被処理水を処理することにより還元性物質が発生する水処理において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0116】
1A,1B,1C,1D 水処理装置、2 処理槽、21 酸生成槽、22 メタン発酵槽、23 セトラー、3 反応部、31a 第1のセル、31b 第2のセル、32a 処理水導入口、32b 処理水排出口、33a,33b 電極、34a 電子受容体供給口、34b 電子受容体排出口、35 イオン交換体、4 水分量調整手段、4a 接触機会向上手段、4b 加温手段、4c 膜分離手段、40 リザーバー、41 給気口、42 配管、43 揮散体、44 加温部、45 半透膜、46 膜分離部 46a,46b 空間、5 検知手段、51 検知部、6 曝気槽、6a 曝気装置、B ブロワー、L1 導入配管、L2,L6,L10 接続配管、L3,L9 排出配管、L4,L5 配管、L7,L8 循環配管、W 被処理水、W1,W2,W3 処理水