(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067702
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ミネラル水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20220426BHJP
C02F 1/66 20060101ALI20220426BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20220426BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220426BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20220426BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20220426BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220426BHJP
【FI】
C02F1/68 520D
C02F1/66 510A
C02F1/66 510K
C02F1/66 522B
C02F1/66 530G
C02F1/66 540D
C02F1/68 510B
C02F1/68 520B
C02F1/68 520C
C02F1/68 530A
C02F1/68 540D
C02F1/68 540Z
B01D63/02
C02F1/44 G
B01F1/00 B
B01F3/04 A
B01F5/06
C02F1/66 530P
C02F1/68 530L
C02F1/66 530L
C02F1/66 530K
C02F1/68 530K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176423
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
【テーマコード(参考)】
4D006
4G035
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA35
4D006JA53Z
4D006JA63Z
4D006JA67Z
4D006KA72
4D006KB14
4D006KE12P
4D006KE12Q
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4D006PC80
4G035AA06
4G035AB28
4G035AC26
4G035AE02
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止しながらミネラル水を効率的に製造できる、ミネラル水の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(a)、(b)を含む、ミネラル水の製造方法。
工程(a):溶解槽21内の水中で炭酸カルシウム25と、炭酸水W3から供給される二酸化炭素とを反応させ、炭酸水素カルシウムを生成し、水中に溶解した前記炭酸水素カルシウムの濃度が20℃における飽和溶解度に対して0.5%以上であるミネラル原液W4を調製する工程。
工程(b):ミネラル原液W4と脱塩水W2とを混合用ライン5上の合流点G1で混合し、ミネラル水W5を得る工程。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)、(b)を含む、ミネラル水の製造方法。
工程(a):水中で炭酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させ、炭酸水素カルシウムを生成し、水中に溶解した前記炭酸水素カルシウムの濃度が、20℃における飽和溶解度に対して0.5%以上であるミネラル原液を調製する工程。
工程(b):前記ミネラル原液と脱塩水とを混合し、ミネラル水を得る工程。
【請求項2】
前記工程(a)で炭酸濃度が500mg/L以上である炭酸水を用いて、炭酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸水は、給気膜を用いて二酸化炭素を供給して調製されたものである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記給気膜が、多孔質層と非多孔質層を有する中空糸膜である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)で、水と炭酸カルシウムとを含む混合液のpHが6.5~7となるように、前記混合液に二酸化炭素を供給する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)で、カリウム塩及びマグネシウム塩の少なくとも一方をさらに混合し、前記ミネラル原液を調製する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)の後段で、固液分離装置を用いて前記ミネラル原液から固形物を除去する固液分離工程を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水、河川水等の原水を逆浸透膜で脱塩処理することがある。脱塩処理により得られる脱塩水は、原水よりも導電率が低くなる。また、脱塩水においては、原水中の多価イオンが優先的に除去されており、1価の陰イオンと陽イオンの割合が原水と比較して高くなる。このような脱塩水はイオンバランス(ランゲリア指数、マトソン指数等)が悪く、pH緩衝塩が不足している。そのため、脱塩水をそのまま水道水として使用すると、水道配管、熱交換器等の金属を腐食させてしまうという問題がある。脱塩水中の残留塩素濃度が高い場合には、金属の腐食がさらに顕著に生じる。
【0003】
脱塩水の腐食性を抑制するためにミネラル添加、pH調整、残留塩素濃度の管理等が行われている。これらのうちミネラル添加に関して特許文献1~3では、ミネラル物質としてカルシウムを水道水等に添加してミネラル水とすることが提案されている。
特許文献1では、消石灰(Ca(OH)2)の水溶液またはスラリーを水道水に注入希釈しながら炭酸ガスを吹き込み水道水中に炭酸水素カルシウムを生成させ、ミネラル水を得ることが提案されている。この方法では、まず下式(1)の化学反応が起き、次いで、下式(2)の化学反応が起きると考えられる。
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3↓+H2O ・・・(1)
CaCO3+CO2+H2O → Ca(HCO3)2 ・・・(2)
【0004】
特許文献2では、消石灰を塩酸等の鉱酸で溶解させて得られるアルカリ性溶液を、飲料水に添加してミネラル水とすることが提案されている。また、特許文献3では、二酸化炭素を含む供給水に炭酸カルシウム(CaCO3)のスラリーを添加してミネラル水とすることが提案されている。特許文献3の方法では、供給水への炭酸カルシウムのスラリーの添加により、前記式(2)の化学反応が起きると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-138180号公報
【特許文献2】特開2005-270692号公報
【特許文献3】特表2014-520670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法においては、前記式(1)の反応で生成する炭酸カルシウム(CaCO3)が未溶解のままミネラル水に残存することを確実に防ぐために、炭酸ガスの吹き込み量を管理する必要がある。また、未溶解の炭酸カルシウムが生じた場合に備えて固液分離を行う必要がある。よって特許文献1の方法は、炭酸カルシウムの混入の防止のために手間がかかり、簡便な方法ではない。
【0007】
特許文献2の方法においては、水に対する消石灰の溶解度が低いことから、ランゲリア指数等の調整のために必要なアルカリ性溶液の使用量が多くなる。そのため、特許文献2に記載の方法は、ミネラルの添加方法として効率的ではない。
加えて、ミネラル水の腐食性を低減しながら炭酸カルシウムの沈殿を防ぐためには、アルカリ性溶液のpHの厳密な管理が求められるため、特許文献2の方法も簡便な方法ではない。
【0008】
特許文献3の方法においては、炭酸カルシウムのスラリーの水中に溶解した炭酸水素カルシウムの濃度が低い。そのため、ランゲリア指数等の調整のためにはスラリーの使用量がその分多くなり、特許文献3の方法はミネラルの添加方法として効率的ではない。
また、特許文献3に記載の方法は炭酸カルシウムのスラリーを用いるため、スラリーの添加後に炭酸カルシウムを除去するための固液分離が必要である。そのため、炭酸カルシウムの混入の防止のために手間がかかり、簡便ではない。
【0009】
本発明は、炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止しながらミネラル水を効率的に製造できる、ミネラル水の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は下記の態様を有する。
[1] 下記工程(a)、(b)を含む、ミネラル水の製造方法。
工程(a):水中で炭酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させ、炭酸水素カルシウムを生成し、水中に溶解した前記炭酸水素カルシウムの濃度が、20℃における飽和溶解度に対して0.5%以上であるミネラル原液を調製する工程。
工程(b):前記ミネラル原液と脱塩水とを混合し、ミネラル水を得る工程。
[2] 前記工程(a)で炭酸濃度が500mg/L以上である炭酸水を用いて、炭酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させる、[1]の製造方法。
[3] 前記炭酸水は、給気膜を用いて二酸化炭素を供給して調製されたものである、[2]の製造方法。
[4] 前記給気膜が、多孔質層と非多孔質層を有する中空糸膜である、[3]の製造方法。
[5] 前記工程(a)で、水と炭酸カルシウムとを含む混合液のpHが6.5~7となるように、前記混合液に二酸化炭素を供給する、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記工程(a)で、カリウム塩及びマグネシウム塩の少なくとも一方をさらに混合し、前記ミネラル原液を調製する、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記工程(a)の後段で、固液分離装置を用いて前記ミネラル原液から固形物を除去する固液分離工程を有する、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止しながらミネラル水を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係るミネラル水の製造方法に用いる処理システムの概略図である。
【
図2】第2の実施形態に係るミネラル水の製造方法に用いる処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「略飽和溶解度」とは、溶存物質の濃度が飽和溶解度と一致するかまたは飽和溶解度よりわずかに低いことを意味する。測定誤差や第三者が飽和溶解度を意図的に回避することに起因して、濃度が飽和溶解度と厳密に一致しない場合が想定されることから、このような場合が「略飽和溶解度」の語句の意味内容に含まれるようにすることを目的としている。ここで、本発明における飽和溶解度の基準は20℃とする。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0014】
本実施形態に係るミネラル水の製造方法は、下記工程(a)、(b)を含む。
工程(a):水中で炭酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させ、水中に溶解した炭酸水素カルシウムの濃度が、20℃における飽和溶解度に対して0.5%以上であるミネラル原液を調製する工程。
工程(b):ミネラル原液と脱塩水とを混合し、ミネラル水を得る工程。
【0015】
本実施形態に係るミネラル水の製造方法は、前記工程(a)、(b)に加えて、下記工程(c)、(d)をさらに含むことができる。
工程(c):被処理水を脱塩処理し、脱塩水を調製する工程。
工程(d):硫酸イオンを含む硫酸イオン調製水と、工程(b)で得たミネラル水とを混合する工程。
【0016】
本実施形態に係るミネラル水の製造方法では、被処理水を脱塩処理した脱塩水とミネラル物質としてカルシウムを混合してミネラル水を得る。
被処理水は特に限定されない。例えば、被処理水として、地下水、河川水、湖沼水、工場排水が挙げられる。ただし、被処理水はこれらの例示に限定されない。
【0017】
以下、本実施形態に係るミネラル水の製造方法について、実施形態例を挙げ、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。また、以下の実施形態例の説明において、共通する構成については、同一の語句及び符号を付しその説明を省略する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るミネラル水の製造方法に用いる処理システムの概略図である。
図1に示す処理システム10Aは、脱塩処理部1とミネラル原液調製部2Aとミネラル混合部3とイオンバランス調整部4と混合用ライン5を備える。
【0019】
(脱塩処理部1)
脱塩処理部1は、被処理水W1が流れる被処理水ライン11と、被処理水W1の脱塩処理を行う逆浸透膜モジュール12と、逆浸透膜モジュール12の濃縮水W8が流れる濃縮水ライン13を有する。脱塩処理部1は、逆浸透膜12を用いて被処理水W1を脱塩処理して脱塩水W2とし、混合用ライン5に脱塩水W2を供給する。
逆浸透膜モジュール12は、被処理水W1に脱塩処理を施すことができればよく、特に限定されない。
【0020】
(ミネラル原液調製部2A)
ミネラル原液調製部2Aは、脱塩水W2が流れる脱塩水ライン20と、脱塩水ライン20と接続された溶解槽21と、二酸化炭素の供給源としてのガスボンベ22と、二酸化炭素の供給に使用する給気膜モジュール23と、ミネラル原液W4を貯留するミネラル原液タンク24を有する。
【0021】
脱塩水ライン20は、第1の端部が図示略の脱塩水W2の供給源と接続され、第2の端部が溶解槽21と接続されている。脱塩水ライン20は脱塩水W2を溶解槽21に供給する。
溶解槽21の底部にはミネラル物質として炭酸カルシウム25が収容されている。炭酸カルシウム25の形態は特に限定されず、粒子状でもよく、粉状でもよい。
溶解槽21内には、炭酸カルシウム25以外にもミネラル物質として、カリウム塩及びマグネシウム塩の少なくとも一方がさらに収容されていてもよい。
【0022】
溶解槽21には、内部の貯留水を循環させて攪拌するための循環ライン26と、二酸化炭素の供給のための給気ライン27が設けられている。また、溶解槽21には内部の水位を測定するための水位計C1が設けられている。
循環ライン26は、第1の端部が溶解槽21の側面部分と接続され、第2の端部が溶解槽21の底面部分と接続されている。循環ライン26には、循環ポンプP1、pH計28が第1の端部から第2の端部に向かってこの順に設けられている。
循環ライン26は、循環ポンプP1によって溶解槽21内の貯留水の一部を溶解槽21の外に取り出した後、再び溶解槽21内に戻し、溶解槽21内の貯留水を循環させて攪拌する。そのため、pH計28は、溶解槽21内の貯留水のpHを正確に測定できる。
【0023】
給気ライン27は、溶解槽21内の貯留水の一部を溶解槽21の外に取り出し、次いで二酸化炭素を供給して炭酸水W3として溶解槽21内に戻すことができる。給気ライン27は、第1の端部が溶解槽21の底部付近の側面と接続され、第2の端部が溶解槽21の内部の水に浸漬されている。給気ライン27には、循環ポンプP2、給気膜モジュール23が溶解槽21の外で第1の端部から第2の端部に向かってこの順に設けられている。
給気ライン27は、循環ポンプP2により溶解槽21内の貯留水の一部を給気膜モジュール23に供給できる。
【0024】
給気膜モジュール23は、給気ライン27から供給される貯留水に、炭酸ガスライン29から供給される二酸化炭素を給気して炭酸水W3を調製する。給気膜モジュール23は、炭酸ガスライン29を介してガスボンベ22と接続されている。また、炭酸ガスライン29にはバルブV1が設けられている。ここで、給気膜モジュール23が備える膜の外側に二酸化炭素が供給され、膜の内側を流れる貯留水に二酸化炭素が給気されるように、給気膜モジュール23は炭酸ガスライン29と接続されている。
【0025】
給気膜モジュール23は、炭酸水W3を調製できる形態であれば特に限定されない。給気膜モジュール23の給気膜としては、中空糸膜が好ましく、多孔質層と非多孔質層を有する中空糸膜がより好ましい。多孔質層と非多孔質層を有する中空糸膜としては、例えば、多孔質の外層と、多孔質の内層と、外層と内層との間に設けられた非多孔質の中間層とを有する中空糸膜、すなわち、三層複合中空糸膜が挙げられる。三層複合中空糸膜の市販品としては、例えば、ステラポアー(商品名、三菱ケミカル社製)が挙げられるが、三層複合中空糸膜は、この例示に限定されない。三層複合中空糸膜の詳細及び好ましい態様については、特開2019-188303号公報に記載の内容を本明細書に援用できる。
【0026】
ミネラル原液タンク24は、ミネラル原液ライン30を介して給気ライン27と接続されている。ミネラル原液ライン30は、第1の端部が循環ポンプP2と給気膜モジュール23の間の部分の給気ライン27と接続され、第2の端部がミネラル原液タンク24と接続されている。また、ミネラル原液ライン30にはバルブV2が設けられている。
ミネラル原液ライン30は、溶解槽21で調製されたミネラル原液W4が流れ、ミネラル原液W4をミネラル原液タンク24に供給する。
【0027】
ミネラル原液タンク24は、ミネラル原液W4を貯留する。ミネラル原液タンク24には内部の水位を測定するための水位計C2が設けられている。ミネラル原液タンク24には、ミネラル原液W4の炭酸水素カルシウム濃度を測定する濃度計、ミネラル原液W4の色度、濁度を測定する色度計、濁度計等をさらに設けてもよい。ただし、溶解するミネラルを考慮すると色度が出ない可能性があるため、濁度計のみミネラル原液タンク24にさらに設けてもよい。
【0028】
ミネラル原液W4は、水に炭酸水素カルシウムが溶解した水溶液を含む。温度を20℃に調整したミネラル原液W4においては、水中に溶解した炭酸水素カルシウムの濃度が飽和溶解度に対して0.5%以上であるため、ミネラル水W5の製造に要するミネラル原液W4の使用量を少なくすることができ、ミネラル水W5の製造効率がよくなる。
ここで、飽和溶解度は、ミネラル原液W4の温度における飽和溶解度とする。炭酸水素カルシウムの濃度は、飽和溶解度に対して5%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、略飽和溶解度が最も好ましい。
【0029】
(ミネラル混合部3)
ミネラル混合部3は、ミネラル原液注入ライン31とミネラル原液注入ライン31に設けられた注入ポンプP3を有する。ミネラル原液注入ライン31の第1の端部はミネラル原液タンク24内のミネラル原液W4に浸漬され、ミネラル原液注入ライン31の第2の端部は混合用ライン5と合流点G1で接続されている。
ミネラル混合部3は、ミネラル原液注入ライン31、注入ポンプP3を用いてミネラル原液W4をミネラル原液タンク24から混合用ライン5に注入する。このように、ミネラル混合部3は、ミネラル原液W4と脱塩水W2とを合流点G1で混合できる。
【0030】
(イオンバランス調整部4)
イオンバランス調整部4は、硫酸イオン調整水W6が貯留された硫酸イオンタンク41と、第1の端部が硫酸イオンタンク41内の硫酸イオン調整水W6に浸漬された硫酸イオン注入ライン42と、硫酸イオン注入ライン42に設けられた注入ポンプP4を有する。硫酸イオン注入ライン42の第2の端部は、合流点G1より下流側の合流点G2で混合用ライン5と接続されている。硫酸イオンタンク41には、内部の水位を測定するための水位計C3が設けられている。
【0031】
イオンバランス調整部4は、硫酸イオン注入ライン42、注入ポンプP4を用いて硫酸イオンタンク41内の硫酸イオン調整水W6を混合用ライン5に注入できる。そのため、イオンバランス調整部4は、硫酸イオン調整水W6とミネラル水W5とを合流点G2で混合できる。硫酸イオンタンク41内の硫酸イオン調整水W6は、硫酸イオンを含む水溶液であればよく、特に限定されない。
【0032】
以下、本実施形態に係るミネラル水の製造方法について説明する。本実施形態に係るミネラル水の製造方法は、下記の脱塩処理工程とミネラル原液調製工程とミネラル混合工程とイオンバランス調整工程を有する。
脱塩処理工程:被処理水W1を脱塩処理し、脱塩水W2を調製する工程。
ミネラル原液調製工程:溶解槽21内の水中で炭酸カルシウム25と二酸化炭素とを反応させ、生成された炭酸水素カルシウムを含むミネラル原液W4を調製する工程。
ミネラル混合工程:ミネラル原液W4と脱塩水W2とを混合し、ミネラル水W5を得る工程。
イオンバランス調整工程:ミネラル水W5と硫酸イオン調整水W6とを混合し、処理水W7を得る工程。
【0033】
これらの工程うち、ミネラル原液調製工程が本実施形態の工程(a)の一例に該当し、ミネラル混合工程が本実施形態の工程(b)の一例に該当する。そして、脱塩処理工程が本実施形態の工程(c)の一例に該当し、イオンバランス調整工程が本実施形態の工程(d)の一例に該当する。
以下、脱塩処理工程、ミネラル原液調製工程、ミネラル混合工程、イオンバランス調整工程について詳細に説明する。
【0034】
(脱塩処理工程)
脱塩処理工程では、被処理水ライン11を流れる被処理水W1が逆浸透膜モジュール12で脱塩処理される。この脱塩処理により被処理水W1から多価イオンが優先的に除去され、脱塩水W2が得られる。脱塩水W2は逆浸透膜モジュール12から混合用ライン5に流出する。また、脱塩処理の際に発生した濃縮水W8は、逆浸透膜モジュール12から濃縮水ライン13に流出する。
【0035】
処理水W7を飲料水とする場合、脱塩処理工程で逆浸透膜を用いて、処理水W7の水質が厚生労働省の水道水水質基準を満たすように脱塩水W2の水質を調整することが好ましい。日本国以外の他の国または地域においては、当該国または地域の水質基準を満たすように脱塩水W2の水質を調整することが好ましい。
【0036】
(ミネラル原液調製工程)
ミネラル原液調製工程では、給気膜を用いて二酸化炭素を供給することが好ましい。例えば、本実施形態ではバルブV1を開き、バルブV2を閉じた状態で、循環ポンプP1、循環ポンプP2を同時に稼働する。すると、給気ライン27では、溶解槽21の貯留水の一部が給気膜モジュール23に供給される。給気膜モジュール23の給気膜の内側で貯留水と二酸化炭素が混合され、炭酸水W3が得られる。炭酸水W3は、給気膜を用いて二酸化炭素を供給して調製されたものである。
炭酸水W3は二酸化炭素を含むため、炭酸水W3が給気ライン27から溶解槽21内に流入することで、溶解槽21内の水中で炭酸カルシウム25と二酸化炭素とを反応させることができる。そして、炭酸水素カルシウム25が溶解して炭酸水素カルシウムが生成する。
【0037】
炭酸水W3の炭酸濃度が高ければ高いほど、効率よく炭酸カルシウム25が溶解し、ミネラル原液W4の炭酸水素カルシウムの濃度を高くすることができる。よって、ミネラル原液調製工程では炭酸濃度が500mg/L以上である炭酸水を用いて、炭酸カルシウム25と二酸化炭素とを反応させることが好ましい。炭酸水W3の炭酸濃度は800mg/L以上がより好ましく、900mg/L以上がさらに好ましく、1000mg/L以上が特に好ましく、略飽和溶解度であることが最も好ましい。ここで、飽和溶解度は、炭酸水W3の温度における飽和溶解度とする。
【0038】
一方、バルブV1を開き、バルブV2を閉じた状態で、循環ポンプP1、循環ポンプP2を同時に稼働すると、循環ライン26によって溶解槽21内の貯留水を循環させ、pH計28でpHを監視しながら貯留水を攪拌できる。
ここで、ミネラル原液調製工程では、溶解槽21内の貯留水、すなわち、水と炭酸カルシウム25とを含む混合液のpHが6.5~7となるように、当該混合液に二酸化炭素を供給することが好ましい。貯留水のpHが6.5~7の範囲内であると、貯留水中の二酸化炭素の存在量が多く、炭酸カルシウム25が溶解しやすい。そのため、ミネラル原液W4中の炭酸水素カルシウムの濃度がさらに高くなり、さらに効率的にミネラル水を製造できる。
【0039】
例えば、pH計28でpHを監視しながら、溶解槽21内の貯留水のpHが6.5~7の範囲内となるように炭酸ガスライン29によって二酸化炭素を供給する。pHが6.5~7となったら、バルブV1を閉め、二酸化炭素の給気を停止すればよい。
次いで、貯留水のpHが6.3~6.8の範囲内で安定するまで循環ポンプP1、循環ポンプP2を稼働して貯留水を攪拌し、ミネラル原液W4を調製する。その後、バルブV2を開き、循環ポンプP1の稼働を停止し、ミネラル原液W4をミネラル原液タンク24に貯留する。
ミネラル水W5の製造効率の点から、ミネラル原液W4の炭酸水素カルシウムの濃度は飽和溶解度に対して0.5%以上であり、5%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、略飽和溶解度であることが特に好ましい。
【0040】
ミネラル原液調製工程では、ミネラル水W5、処理水W7のイオンバランス、水質の調整のために、カリウム塩及びマグネシウム塩の少なくとも一方をさらに混合し、ミネラル原液W4を調製してもよい。例えば、溶解槽21に、炭酸カルシウム25に加えてカリウム塩及びマグネシウム塩の少なくとも一方をさらに混合することで、ミネラル水W5、処理水W7のイオンバランス、水質を適宜調整できる。
カリウム塩、マグネシウム塩としては、特に限定されないが、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。イオンバランスの点から、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムが好ましい。
【0041】
ミネラル原液タンク24内のミネラル原液W4について、炭酸水素カルシウムの濃度を測定するとよい。例えば、ミネラル原液タンク24から別途サンプルをとり、前記サンプルの温度を20℃に調整した後に、当該サンプル(ミネラル原液W4)中の炭酸水素カルシウムの濃度を測定できる。ここから、ミネラル原液W4の飽和溶解度(20℃、16.6g/100gH2O)に対する比率を算出できる。また、ミネラル原液タンク24に濃度計が設けられている場合には、濃度計を用いて炭酸水素カルシウムの濃度を測定できる。また、ミネラル原液タンク24内のミネラル原液W4について色度、濁度を測定してもよい。ただし、溶解するミネラルを考慮すると色度が出ない可能性があるため、濁度のみ測定してもよい。ここで、ミネラル原液タンク24に設けられた濃度計を用いる場合は、ミネラル原液タンクに温度計及び/又は温度調整機構が備えられていることがより好ましい。
【0042】
(ミネラル混合工程)
ミネラル混合工程では、注入ポンプP3を稼働させ、ミネラル原液注入ライン31から混合用ライン5にミネラル原液W4を注入し、ミネラル原液W4と脱塩水W2とを混合する。合流点G1におけるミネラル原液W4と脱塩水W2の混合により、ミネラル水W5が得られる。
ミネラル混合工程では、水位計C2でミネラル原液タンク24の水位を監視しながら、ミネラル原液W4の注入量を制御する。ミネラル原液タンク24の水位が低下してミネラル水W4が不足した際には、溶解槽21でのミネラル原液W4の調製を行う。
【0043】
(イオンバランス調整工程)
イオンバランス調整工程では、ミネラル水W5と硫酸イオン調整水W6とを混合し、処理水W7を得る。硫酸イオン調整水W6をミネラル水W5に添加することで、処理水W7のpHを調整できる。
前述したミネラル原液調製工程で、カリウム塩、マグネシウム塩を溶解槽21に添加しなかった場合には、硫酸イオンタンク41に硫酸カリウム及び硫酸マグネシウムの少なくとも一方を添加してもよい。
【0044】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明した第1の実施形態に係るミネラル水の製造方法では、溶解槽21内の水中で炭酸カルシウム25と二酸化炭素とを反応させ、炭酸カルシウム25を当該水中に溶解させて得られるミネラル原液W4を用いてミネラル水W5を得る。そのため、炭酸カルシウム25に由来する固形分がミネラル水W5に混入するおそれが極めて少なく、炭酸カルシウムの混入を確実にしかも簡単に防止できる。
加えて、ミネラル原液W4中の炭酸水素カルシウムの濃度が飽和溶解度に対して0.5%以上であるから、炭酸カルシウムのスラリーを用いる場合と比較してミネラル原液W4中には高濃度の炭酸水素カルシウムが含まれることになる。また、炭酸水素カルシウムの溶解度は消石灰と比較しても高い。そのため、ミネラル原液W4の使用量を少なくすることができ、従来の方法と比較して効率よくミネラル物質としてカルシウムを脱塩水に添加できる。
このように、あらかじめ調製した高濃度の炭酸水素カルシウムを含むミネラル原液W4を用いてミネラル水W5を得るため、炭酸カルシウムの除去のための固液分離を行う必要もなくなり、二酸化炭素の供給量、pHの厳密な管理も不要となる。
したがって、本実施形態に係るミネラル水の製造方法によれば、炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止しながらミネラル水を効率的に製造できる。また、炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止できるため、従来、処理システムのすぐ近くで行っていたようなオンサイトの監視の頻度も少なくすることができ、人的負担、人的コストも低減される。
【0045】
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態に係るミネラル水の製造方法に用いる処理システム10Bの概略図である。
図2に示す処理システム10Bは、脱塩処理部1とミネラル原液調製部2Bとミネラル混合部3とイオンバランス調整部4と混合用ライン5を備える。
【0046】
ミネラル原液調製部2Bは、プレフィルター32を備える固液分離装置を有する点でミネラル原液調製部2Aと異なる。プレフィルター32は、バルブV2とミネラル原液タンク24の間の部分のミネラル原液ライン30に設けられている。プレフィルター32を備える固液分離装置によってミネラル原液W4から固形物を除去する固液分離工程を有する。固液分離工程は、工程(a)の後段で行われる。
【0047】
第2の実施形態に係るミネラル水の製造方法では、ミネラル原液調製工程でプレフィルター32の固液分離装置を用いてミネラル原液W4から固形物を除去する点で、第1の実施形態の製造方法と異なる。
例えば、ミネラル原液W4の調製を大気中の開放系で行うと、大気中のほこり、ごみ等の固形物がミネラル原液W4に混入することがある。そのため、プレフィルター32の固液分離装置を用い、これらの固形物を取り除く。具体的には溶解槽21でミネラル原液W4を調製した後、バルブV2を開き、循環ポンプP2を稼働して、ミネラル原液W4をプレフィルター32に通水する。このようにして、ほこり、ごみ等の固形物をミネラル原液W4から除去できる。
プレフィルター32は、ほこり、ゴミ等の固形物を除去できる形態であればよく特に限定されない。
【0048】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明した第2の実施形態に係るミネラル水の製造方法においては、上述の第1の実施形態と同様の作用効果が得られる他、大気中から混入するほこり、ごみ等の固形物をミネラル原液W4から除去できる。
【0049】
<他の実施形態>
以上いくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
例えば、上述の実施形態では、炭酸水W3を溶解槽21に供給することで二酸化炭素を炭酸カルシウム25と反応させたが、他の実施形態においては、炭酸水を用いずに直接溶解槽21の貯留水に二酸化炭素を吹き込むなどして直接的に二酸化炭素を供給してもよい。
また、
図1、2では、脱塩水ライン20の第1の端部が図示略の脱塩水W2の供給源と接続されている形態を例示したが、他の実施形態においては、脱塩水ライン20に脱塩処理部1で得た脱塩水W2が流れるようしてもよい。この場合、混合用ライン5から分岐した分岐ラインを脱塩水ライン20と接続し、逆浸透膜モジュール12から流出する脱塩水W2の一部が溶解槽21に流れるようにしてもよい。加えて、当該分岐ラインには脱塩水W2を貯留する受水槽を設け、受水槽から溶解槽21に脱塩水W2を供給できるようにしてもよい。
他にも、
図1、2では、イオンバランス調整部4を備える処理システムを例示したが、他の実施形態では、イオンバランス調整部4を省略可能である。ただし、イオンバランス調整部4を省略する場合でも、別途調整した硫酸イオン調整水W6をミネラル原液W4に添加することで、イオンバランス調整工程を行うことは可能である。
また、
図1、2では、硫酸イオン注入ライン42の第2の端部が混合用ライン5と接続されている形態例を示したが、他の実施形態において硫酸イオン注入ライン42の第2の端部はミネラル原液注入ライン31と接続されてもよい。
このように本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の記載によって限定されない。
【0051】
<測定方法>
ミネラル原液W4の濁度は、濁度計(株式会社堀場製作所製「HU-200TB-W」)を使用して測定する。
また、炭酸水素カルシウムの溶解度は、脱塩水(RO水)1Lとミネラル原液0.55mLを混合して調製した混合液をイオンクロマトグラムによりカルシウム濃度を測定する。カルシウム濃度の測定は、日本水道協会の「上水試験方法2011版」に準拠する。その後、既知のカルシウムの飽和溶解度(20℃)及び測定したカルシウム濃度に基づき、水中に溶解したカルシウムイオン濃度の、20℃における飽和溶解度(16.6g/H2O100g)に対する比率を算出する。この値を、水中に溶解した炭酸水素カルシウム濃度の、20℃における飽和溶解度に対する比率と読み替えることで算出する。
【0052】
<実施例1>
図2に示す処理システム10Bを用いて、脱塩処理工程、ミネラル原液調製工程、ミネラル混合工程、イオンバランス調整工程を行い、被処理水W1から処理水W7を得る。
ミネラル原液調製工程では、溶解槽21には、炭酸カルシウム25:1000gと脱塩水W2:10Lとを添加する。その後、溶解槽21にはさらに、塩化マグネシウム:860gと塩化カリウム:310gを添加する。ガスボンベ22と給気膜モジュール23(多層複合中空糸膜モジュール、三菱ケミカル社製「ステラポアー三層複合中空糸膜」)を連結させ、レギュレーターで二酸化炭素の圧力を0.1MPaとして炭酸水W3を溶解槽21に供給する。炭酸水W3の炭酸濃度(二酸化炭素濃度)は約1000mg/Lとする。
循環ポンプP1を5L/minで稼働し、溶解槽21内の貯留水のpHをpH計28で監視し、pHが6.5に達する時点で二酸化炭素の供給を停止する。その後5分間、貯留水を循環させながら炭酸カルシウム25を溶解させた時点で循環ポンプP1を停止する。
その後、プレフィルター33によりミネラル原液W4を簡易ろ過する。ミネラル原液W4の炭酸水素カルシウム濃度は166g/Lであり、これは、飽和溶解度(20℃)に対して100%である。ミネラル原液W4の塩化マグネシウム濃度は86g/Lであり、塩化カリウム濃度は31g/Lである。また、ミネラル原液W4の色度、濁度はいずれも0度であり、炭酸カルシウムの混入がないことを確認できる。
【0053】
ミネラル混合工程では、混合用ライン5を流れる脱塩水W2:10Lに対し、上述のミネラル原液W4:0.55mLをミネラル原液注入ライン31から添加し、ミネラル水W5を得る。
次いで、イオンバランス調整工程では、硫酸イオン調整水W6を添加し、pHが5.0となったら曝気による脱炭酸を行い、pHを7.0まで上昇させ、処理水W7を得る。
処理水W7の分析を行うと、カルシウム硬度が25mg/Lであり、マグネシウム硬度が5mg/Lであり、総硬度が30mg/Lであり、カリウムイオンを1.7mg/L含む軟水が得られると期待される。
【0054】
<実施例2>
図2に示す処理システム10Bを用いて、脱塩処理工程、ミネラル原液調製工程、ミネラル混合工程を行い、被処理水W1から処理水W7を得る。
ミネラル原液調製工程では、溶解槽21には、炭酸カルシウム25:1000gと脱塩水W2:10Lとを添加する。ガスボンベ22と給気膜モジュール23(多層複合中空糸膜モジュール、三菱ケミカル社製「ステラポアー三層複合中空糸膜」)を連結させ、レギュレーターで二酸化炭素の圧力を0.1MPaとして炭酸水W3を溶解槽21に供給する。炭酸水W3の炭酸濃度は約1000mg/Lとする。
循環ポンプP1を5L/minで稼働し、溶解槽21内の貯留水のpHをpH計28で監視し、pHが6.5に達する時点で二酸化炭素の供給を停止する。その後5分間、貯留水を循環させながら炭酸カルシウム25を溶解させた時点で循環ポンプP1を停止する。次いで、硫酸マグネシウム:1090gと硫酸カリウム:700gを脱塩水W2:10Lに溶解して得られる硫酸イオン調整水を溶解槽21に添加する。その後、プレフィルター33によりミネラル原液W4を簡易ろ過する。
ミネラル原液W4の炭酸水素カルシウム濃度は166g/Lであり、これは、飽和溶解度(20℃)に対して100%である。また、ミネラル原液W4の硫酸マグネシウム濃度は109g/Lであり、硫酸カリウム濃度は70g/Lである。また、ミネラル原液W4の色度、濁度はいずれも0度であり、炭酸カルシウムの混入がないことを確認できる。
【0055】
ミネラル混合工程では、混合用ライン5を流れる脱塩水W2:10Lに対し、上述のミネラル原液W4:5.5mLをミネラル原液注入ライン31から添加し、ミネラル水W5を得る。ミネラル水W5の分析を行うと、カルシウム硬度が250mg/Lであり、マグネシウム硬度が50mg/Lであり、総硬度が300mg/Lであり、カリウムイオンを17mg/L含む硬水が得られると期待される。
【0056】
以上説明した実施例のミネラル水製造方法によれば、炭酸カルシウムの混入を簡便かつ確実に防止しながらミネラル水を効率的に製造できると考えられる。
1…脱塩処理部、2A,2B…ミネラル原液調製部、3…ミネラル混合部、4…イオンバランス調整部、5…混合用ライン、10A,10B…処理システム、11…被処理水ライン、12…逆浸透膜モジュール、13…濃縮水ライン、20…脱塩水ライン、21…溶解槽、22…ガスボンベ、23…給気膜モジュール、24…ミネラル原液タンク、25…炭酸カルシウム、26…循環ライン、27…給気ライン、28…pH計、29…炭酸ガスライン、30…ミネラル原液ライン、31…ミネラル原液注入ライン、32…プレフィルター、41…硫酸イオンタンク、42…硫酸イオン注入ライン、C1~C3…濃度計、P1,P2…循環ポンプ、P3,P4…注入ポンプ、W1…被処理水、W2…脱塩水、W3…炭酸水、W4…ミネラル原液、W5…ミネラル水、W6…硫酸イオン調整水、W7…処理水、W8…濃縮水。