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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067717
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】刃具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
B23Q17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176451
(22)【出願日】2020-10-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日刊工業新聞、令和1年10月23日 メカトロテックジャパン2019、令和1年10月23日~同月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】直井 克也
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029EE07
(57)【要約】
【課題】ホルダに装着される刃具の交換作業及びホルダに装着した刃具の突出長さの調整作業を自動化することを可能にした刃具交換装置、を提供する。
【解決手段】刃具Cが装着されたホルダ1を着脱自在に保持するスピンドル2と、スピンドル2の回転駆動装置3と、スピンドル2の回転軸Eの方向に沿ってスライダー5を変位させる昇降装置4と、スライダー5に搭載されていてホルダ1のナット部1Aを把持するスパナ6と、刃具Cの突出長さを調整する突出長さ調整機構20と、ホルダ1の参照情報に基づいてスライダー5の位置及び回転駆動装置3により与えられるスピンドル2の回転数又はトルクを制御すると共に、突出長さ調整機構20により与えられる刃具Cの刃先の位置を制御する制御装置8とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、該スピンドルの回転駆動装置と、前記スピンドルの回転軸方向に沿ってスライダーを変位させる昇降装置と、前記スライダーに搭載されていて前記ホルダのナット部を把持するスパナと、前記刃具の突出長さを調整する突出長さ調整機構と、前記ホルダの参照情報に基づいて、前記スライダーの位置及び前記回転駆動装置により与えられる前記スピンドルの回転数又はトルクを制御すると共に、前記突出長さ調整機構により与えられる前記刃具の刃先の位置を制御する制御装置とを備えることを特徴とする刃具交換装置。
【請求項2】
前記突出長さ調整機構は、前記スライダーに搭載されていて前記刃具の刃先を検出するセンサと、前記スピンドルの回転軸上に昇降可能に構成される一方で前記ホルダの内部であって前記刃具の下部に配置された調整ネジを回転させるレンチと、該レンチを前記スピンドルの回転軸方向に沿って変位させるシリンダーと、前記レンチを回転駆動する駆動装置とを有することを特徴とする請求項1に記載の刃具交換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記刃具の突出長さが前記ホルダの参照情報に基づく指定突出長さになるまで前記調整ネジが回転するように前記シリンダーの変位量及び前記駆動装置の回転数を制御することを特徴とする請求項2に記載の刃具交換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記センサが前記ホルダの参照情報に基づく前記刃具の指定突出長さに対応する位置に移動するように前記スライダーの位置を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の刃具交換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記スパナが前記スピンドルに取り付けられた前記ホルダのナット部を把持した状態を維持できるように前記スピンドルの回転に応じて変位する前記ナット部の位置に合わせて前記スライダーの位置を制御することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の刃具交換装置。
【請求項6】
前記スパナが一対の可動アームを有し、該一対の可動アームがそれぞれの先端部に前記ナット部に形成された溝に嵌合する爪部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の刃具交換装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記爪部と前記ナット部との嵌合状態を解除するために前記スピンドルが所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように前記回転駆動装置を制御することを特徴とする請求項6に記載の刃具交換装置。
【請求項8】
前記スパナが前記ホルダのナット部に嵌合する嵌合部を有し、該嵌合部が前記ホルダのナット部の外周面に対応する形状をなしていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の刃具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃具交換装置に関し、更に詳しくは、ホルダに装着される刃具の交換作業及びホルダに装着した刃具の突出長さの調整作業を自動化することを可能にした刃具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用の切削工具の形状や寸法を予め調整するために、ツールプリセッタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。切削工具(ツール)のプリセット作業を効率的に進めるために、刃具交換装置の自動化が求められているが、従来の刃具交換装置では装置全体を自動化するには至っていない。
【0003】
従来の刃具交換装置では、ホルダから刃具を取り外して別の刃具を取り付ける作業は部分的に刃具交換装置を用いて行われるものの、作業者によって手作業で行う必要があるため、多大な労力と時間が掛かっていた。特に、交換後の刃具において突出長さに指定がある場合、ハイトゲージやスケールを使用して刃先が指定突出長さになるように調整することが必要である。しかしながら、このような調整作業は手作業で行われるため、更なる労力と時間を要することになる。また、突出長さの調整作業は、作業者によって計測誤差が生じる可能性があり、安定した測定精度を保つことは容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-083723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ホルダに装着される刃具の交換作業及びホルダに装着した刃具の突出長さの調整作業を自動化することを可能にした刃具交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の刃具交換装置は、刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、該スピンドルの回転駆動装置と、前記スピンドルの回転軸方向に沿ってスライダーを変位させる昇降装置と、前記スライダーに搭載されていて前記ホルダのナット部を把持するスパナと、前記刃具の突出長さを調整する突出長さ調整機構と、前記ホルダの参照情報に基づいて、前記スライダーの位置及び前記回転駆動装置により与えられる前記スピンドルの回転数又はトルクを制御すると共に、前記突出長さ調整機構により与えられる前記刃具の刃先の位置を制御する制御装置とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の刃具交換装置では、刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、スピンドルの回転駆動装置と、スピンドルの回転軸方向に沿ってスライダーを変位させる昇降装置と、スライダーに搭載されていてホルダのナット部を把持するスパナと、刃具の突出長さを調整する突出長さ調整機構と、ホルダの参照情報に基づいてスライダーの位置及び回転駆動装置により与えられるスピンドルの回転数又はトルクを制御すると共に、突出長さ調整機構により与えられる刃具の刃先の位置を制御する制御装置とを有しているので、従来、作業者によって手作業で行われていた刃具の交換作業及び刃具の突出長さの調整作業を自動化することが可能になる。これにより、刃具の交換作業及び刃具の突出長さの調整作業の効率化を図ることができる。また、上述した自動化に伴って、従来の作業者による調整作業で生じていた測定誤差がなくなり、安定した測定精度を保つことができる。
【0008】
本発明の刃具交換装置において、突出長さ調整機構は、スライダーに搭載されていて刃具の刃先を検出するセンサと、スピンドルの回転軸上に昇降可能に構成される一方でホルダの内部であって刃具の下部に配置された調整ネジを回転させるレンチと、レンチをスピンドルの回転軸方向に沿って変位させるシリンダーと、レンチを回転駆動する駆動装置とを有すると良い。
【0009】
制御装置は、刃具の突出長さがホルダの参照情報に基づく指定突出長さになるまで調整ネジが回転するようにシリンダーの変位量及び駆動装置の回転数を制御することが好ましい。これにより、交換後の刃具において安定した測定精度を保つことができる。
【0010】
制御装置は、センサがホルダの参照情報に基づく刃具の指定突出長さに対応する位置に移動するようにスライダーの位置を制御することが好ましい。これにより、交換後の刃具において安定した測定精度を保つことができる。
【0011】
制御装置は、スパナがスピンドルに取り付けられたホルダのナット部を把持した状態を維持できるようにスピンドルの回転に応じて変位するナット部の位置に合わせてスライダーの位置を制御することが好ましい。これにより、刃具の交換時において、スパナがナット部を把持した状態を確実に保つことができる。
【0012】
スパナは一対の可動アームを有し、該一対の可動アームはそれぞれの先端部にナット部に形成された溝に嵌合する爪部を有することが好ましい。これにより、スパナはホルダのナット部を強固かつ確実に把持することができる。
【0013】
制御装置は、爪部とナット部との嵌合状態を解除するためにスピンドルが所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように回転駆動装置を制御することが好ましい。これにより、刃具の交換時において、爪部とナット部との嵌合状態を確実に解除することができる。
【0014】
スパナはホルダのナット部に嵌合する嵌合部を有し、該嵌合部はホルダのナット部の外周面に対応する形状をなしていることが好ましい。これにより、刃具の交換時において、スパナはホルダのナット部を強固かつ確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示す斜視図である。
図2図1の刃具交換装置の要部を示す斜視図である。
図3図1の刃具交換装置を示す側面図である。
図4図1の刃具交換装置を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態からなる刃具交換装置に取り付けられる刃具が装着されたホルダを拡大して示す断面図である。
図6】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を用いて刃具を交換する際のフローチャートの一例を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を用いて刃具を交換する際のフローチャートの変形例を示す説明図である。
図8】(a)は本発明の実施形態からなる刃具交換装置に取付可能なスパナの変形例を示す平面図であり、(b)は該スパナがスライダーに取り付けられた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図5は本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示すものである。
【0017】
図1図5に示すように、刃具交換装置10の機台10Aには、刃具Cが装着されたホルダ1を着脱自在に保持するスピンドル2と、このスピンドル2の回転駆動装置3と、スピンドル2の回転軸方向に沿ってスライダー5を変位させる昇降装置4と、刃具Cの突出長さを調整する突出長さ調整機構20と、回転駆動装置3及び昇降装置4の動作を制御する制御装置8とが搭載されている。
【0018】
ホルダ1は、図3に示すように、刃具Cを締め付けてホルダ本体に固定する環状のナット部1Aを有している。このナット部1Aの外周面には、ナット部1Aの軸方向に沿って複数本の溝1Bが形成されている。ホルダ1として、例えばコレットホルダやミーリングホルダを用いることができ、ホルダ1の種類や大きさによりナット部1Aの位置(ホルダ1におけるナット部1Aの軸方向高さ)は異なる。また、ホルダ1には、ツール管理を簡便にするためにツールID(例えば、二次元コード)が付与されている。このツールIDは、少なくともホルダ1の識別番号を有しており、その他にホルダ1の直径や長さ等を含んでいてもよい。
【0019】
ホルダ1の内部には、図5に示すように、刃具Cの下部に調整ネジ100が配置されている。この調整ネジ100は、刃具Cの突出長さLを調整するためのネジである。刃具Cの突出長さLは、例えばスピンドル2の端面(所謂、ゲージライン)から刃具Cの刃先までの長さである。調整ネジ100の下端面は、後述するレンチ22に嵌合する形状(例えば6角形)を有している。
【0020】
スピンドル2は、回転軸Eの廻りに正転方向又はそれとは逆方向(逆転方向)に回転自在に構成されている。回転駆動装置3は、刃具交換装置10の機台10Aの内部に配設され、スピンドル2を回転駆動する。回転駆動装置3として、例えばサーボモータなどの電動式のモータを用いることができ、スピンドル2の回転速度及びトルクを自在に変更することができる。本実施形態では、回転駆動装置3の動力は複数の平歯車30を介してスピンドル2に伝達されている。
【0021】
昇降装置4は、例えばボールネジ41とステッピングモータ42とを組み合わせて構成することができる。この昇降装置4には、スピンドル2の回転軸Eの方向に沿って変位するスライダー5が配設されている。このスライダー5は、ホルダ1のナット部1Aを把持するスパナ6を有している。スパナ6は、スライダー5からスピンドル2に向かって突出する一対の可動アーム61を有し、水平方向に開閉可能に構成されている。各可動アーム61の先端部には、ホルダ1のナット部1Aに形成された溝1Bに嵌合する爪部7が設けられている。爪部7はスパナ6の延在方向に対して略直交する方向に突出している。このような爪部7を有することで、スパナ6はホルダ1のナット部1Aを指定された締め付けトルクで強固かつ確実に把持することができる。
【0022】
制御装置8は、刃具交換装置10の機台10Aの内部に搭載されている。制御装置8は、刃具Cの交換の際、ホルダ1の参照情報に基づいて、昇降装置4に配設されたスライダー5の位置及び回転駆動装置3により与えられるスピンドル2の回転数又はトルクを制御すると共に、突出長さ調整機構20により与えられる刃具Cの刃先の位置を制御する。ここで、ホルダ1の参照情報とは、外部から制御装置8に入力され、例えば、ナット部1Aの位置及びトルク値と、ホルダ1に装着される刃具Cの指定突出長さとを含む情報である。刃具交換装置10(制御装置8)を外部のデータベースサーバと通信可能に接続することで、ホルダ1に関する情報を参照することができる。或いはホルダ1の各種情報が記録されたツールIDを読取装置で読み取って参照してもよい。
【0023】
制御装置8は、例えば、刃具Cの交換時において回転駆動装置3を正転方向又は逆転方向に回転させる通常の回転制御や、スパナ6がスピンドル2に取り付けられたホルダ1のナット部1Aを把持した状態を維持できるように、スピンドル2の回転に応じて変位するナット部1Aの位置に合わせてスライダー5の位置を変位させる位置制御、更には、スパナ6の爪部7とホルダ1のナット部1Aとの嵌合状態を解除するために、スピンドル2が所定の回転量で逆転方向へ回転するように回転駆動装置3を回転させる回転制御、突出長さ調整機構20により与えられる刃具Cの刃先の位置制御等を実行するものである。
【0024】
突出長さ調整機構20は、ホルダ1に装着された刃具Cの刃先を検出するセンサ21と、調整ネジ100を回転させるレンチ22と、レンチ22を変位させるシリンダー23と、レンチ22を回転駆動する駆動装置24とを有している。
【0025】
センサ21は、スライダー5に搭載されており、スパナ6の上部に取り付けられている。センサ21として、例えば透過型の高性能レーザセンサを用いることができる。
【0026】
レンチ22は、スピンドル2の回転軸E上に昇降可能に構成されると共に、スピンドル2の回転軸E廻りに回転自在に構成されている。刃具Cの突出長さLの調整時には、レンチ22が調整ネジ100の下端面に嵌合した状態で回転することにより、調整ネジ100が昇降するようになっている。レンチ22として、例えば6角レンチを用いることができる。
【0027】
シリンダー23は、レンチ22をスピンドル2の回転軸Eの方向に沿って変位させる。シリンダー23によりレンチ22が上下移動して、任意の高さに位置決めすることができる。このようにシリンダー23によりレンチ22の上端面が調整ネジ100の下端面に当接するように位置決めすることができる。シリンダー23として、例えば電動式のシリンダーを用いることができる。これにより、任意の位置での位置決めが可能となる。
【0028】
駆動装置24は、レンチ22を回転駆動可能なモータであれば特に限定されるものではないが、例えばステッピングモータを用いると良い。このような駆動装置24でレンチ22を回転させることにより、刃具Cの突出長さLが指定突出長さになるように調整することができる。
【0029】
上述した刃具交換装置10を用いてホルダ1に装着された刃具Cを交換する場合、予め、ホルダ1の参照情報を外部のデータベースサーバに登録し、該ホルダ1の参照情報を適宜読み出せる状態にしておく。
【0030】
図6に示すように、ステップS1において、データベースサーバからホルダ1の参照情報を適宜読み出す。ステップS2において、刃具Cが装着されたホルダ1をスピンドル2に取り付ける。ステップS3において、スパナ6がデータベースサーバから読み出されたホルダ1の参照情報に基づいてナット部1Aの位置(溝1Bの位置)に合わせて移動する。ステップS4において、スパナ6がホルダ1のナット部1Aを把持する。その際、スパナ6がエアーの力により閉じる方向に作用しつつスピンドル2が回転することで、スパナ6の爪部7が自動的にナット部1Aの溝1Bに嵌まるようになっている。ステップS5において、スパナ6の爪部7とナット部1Aの溝1Bとが嵌合した状態で、スピンドル2が所定の回転数で逆転方向に回転する。これにより、ホルダ1のナット部1Aが緩まる。その際、ナット部1Aの位置はスピンドル2の回転に応じて徐々に高くなるが、その変位量(上昇量)に応じてスライダー5も同じく上昇するので、ナット部1Aを緩めている間、スライダー5に配設されたスパナ6はナット部1Aを把持した状態を保つことができる。このようにしてナット部1Aを緩め、ホルダ1に装着された刃具Cを取り外すことが可能になる。なお、スピンドル2に対するホルダ1の装着作業(ステップS2)は、作業者による手動又は搬送装置による自動のいずれでも行うことができる。
【0031】
ステップS6において、スパナ6が開き、爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を解除する。ステップS7において、調整ネジ100が所定の最下方位置まで下降する。具体的には、シリンダー23で上下方向の位置決めをしたレンチ22が駆動装置24で回転することにより、調整ネジ100が下降する方向に回転する。ステップS8において、刃具Cの突出長さLの調整が再調整ではないことを確認する。ここで、突出長さLの調整が1回目であるときは再調整ではなく(ステップS8でのYES)、2回目以降であるときは再調整である(ステップS8でのNO)。刃具Cの突出長さLの調整が再調整ではない場合、ステップS9に進み、ホルダ1から使用済みの刃具Cを取り外した後、ステップS10において、ホルダ1に交換用の刃具Cを取り付ける。一方、ステップS8において、刃具Cの突出長さLの調整が再調整である場合、ステップS11に進む(ステップS9,S10を省略する)。なお、ホルダ1に装着された刃具Cの交換作業(ステップS9,S10)は、作業者による手動又は搬送装置による電動のいずれでも行うことができる。
【0032】
なお、図7に示すように、調整ネジ100を下降させる工程は、刃具Cの突出長さLの調整が再調整ではないことを確認する工程の後に設けることもできる。図7では、ステップS7において、刃具Cの突出長さLの調整が再調整ではないことを確認する。刃具Cの突出長さLの調整が再調整ではない場合、ステップS8に進み、ホルダ1から使用済みの刃具Cを取り外した後、ステップS9において、調整ネジ100が下降する。そして、ステップS10において、ホルダ1に交換用の刃具Cを取り付ける。一方、ステップS7において、刃具Cの突出長さLの調整が再調整である場合、ステップS11に進む。図7のステップS11以降の工程は、図6に示すものと同じである。
【0033】
ステップS11において、センサ21がホルダ1の参照情報に基づく刃具Cの指定位置(指定突出長さに対応する位置)に移動する。ステップS12において、センサ21が刃具Cの刃先を検出するまで刃先を上昇させる。具体的には、駆動装置24でレンチ22が回転することにより調整ネジ100が上昇する方向に回転し、それに伴って徐々に刃具Cの刃先も上昇していく。そして、刃具Cの刃先がホルダ1の参照情報に基づく刃具Cの指定突出長さに達する。このとき、センサ21が刃具Cの刃先を検出するようになっている。このようにして突出長さ調整機構20により、ホルダ1に装着された刃具Cの突出長さLを調整することができる。なお、制御装置8は、刃具Cの突出長さLがホルダ1の参照情報に基づく指定突出長さになるまで調整ネジ100が回転するように、レンチ22の位置を決定するシリンダー23の変位量と駆動装置24の回転数とを制御する。
【0034】
ステップS13において、スパナ6がホルダ1の参照情報に基づいてナット部1Aの位置(溝1Bの位置)に合わせて移動する。これは、ステップS11においてセンサ21がホルダ1の参照情報に基づく刃具Cの指定突出長さに対応する位置に移動したことで、センサ21の下部に配設されたスパナ6の爪部7の位置がナット部1Aの溝1Bの位置と一致しなくなったためである。ステップS14において、スパナ6がホルダ1のナット部1Aを把持する。ステップS15において、刃具Cが装着されたナット部1Aを締める際には、スピンドル2が所定のトルクで正転方向に回転する。これにより、ホルダ1のナット部1Aが締まる。その際、ナット部1Aの位置はスピンドル2の回転に応じて徐々に低くなるが、その変位量(下降量)に応じてスライダー5も同じく下降するので、ナット部1Aを締めている間、スライダー5に配設されたスパナ6はナット部1Aを把持した状態を保つことができる。そして、ナット部1Aが所定のトルク値に達する(十分に締まる)までスピンドル2は回転し、スピンドル2が停止する。ステップS16において、スピンドル2は所定の回転量で逆転方向に回転し、スパナ6が開いて爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を解除する。このようにしてナット部1Aを締め、ホルダ1に新たな刃具Cを装着することが可能になる。
【0035】
ステップS17において、センサ21が刃具Cの刃先を検出する位置まで移動し、刃具Cの突出長さLが適切であるか確認する。刃具Cの突出長さLが適正である場合(刃具Cの突出長さLが指定突出長さと同等である場合)、ステップS18に進み、刃具Cが装着されたホルダ1をスピンドル2から取り外す。一方、刃具Cの突出長さLが適正でない場合は、ステップS3に戻り、再度、スパナ6がホルダ1の参照情報に基づいてナット部1Aの位置(溝1Bの位置)に合わせて移動する。なお、スピンドル2に対するホルダ1の取外し作業(ステップS18)は、作業者による手動又は搬送装置による電動のいずれでも行うことができる。
【0036】
上述した刃具交換装置では、刃具Cが装着されたホルダ1を着脱自在に保持するスピンドル2と、スピンドル2の回転駆動装置3と、スピンドル2の回転軸方向に沿ってスライダー5を変位させる昇降装置4と、スライダー5に搭載されていてホルダ1のナット部1Aを把持するスパナ6と、刃具Cの突出長さLを調整する突出長さ調整機構20と、ホルダ1の参照情報に基づいてスライダー5の位置及び回転駆動装置3により与えられるスピンドル2の回転数又はトルクを制御すると共に、突出長さ調整機構20により与えられる刃具Cの刃先の位置を制御する制御装置8とを有しているので、従来、作業者によって手作業で行われていた刃具Cの交換作業及び刃具Cの突出長さLの調整作業を自動化することが可能になる。これにより、刃具Cの交換作業及び刃具Cの突出長さの調整作業の効率化を図ることができる。また、上述した自動化に伴って、従来の作業者による調整作業で生じていた測定誤差がなくなり、安定した測定精度を保つことができる。
【0037】
上記刃具交換装置において、制御装置8は、刃具Cの突出長さLがホルダ1の参照情報に基づく指定突出長さになるまで調整ネジ100が回転するようにシリンダー23の変位量及び駆動装置24の回転数を制御することが好ましい。これにより、交換後の刃具Cにおいて安定した測定精度を保つことができる。
【0038】
制御装置8は、センサ21がホルダ1の参照情報に基づく刃具Cの指定突出長さに対応する位置に移動するようにスライダー5の位置を制御することが好ましい。これにより、交換後の刃具Cにおいて安定した測定精度を保つことができる。
【0039】
また、上記刃具交換装置において、制御装置8は、スパナ6がスピンドル2に取り付けられたホルダ1のナット部1Aを把持した状態を維持できるようにスピンドル2の回転に応じて変位(上昇又は下降)するナット部1Aの位置に合わせてスライダー5の位置を制御するので、刃具Cの交換時において、スパナ6がナット部1Aを把持した状態を確実に保つことができる。
【0040】
また、刃具Cの交換の際、スパナ6がナット部1Aを把持した状態が強固であるため、爪部7とナット部1Aの溝1Bとが強く嵌合して、スパナ6が開閉し難い状態になっている。これに対して、制御装置8は、爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を解除するためにスピンドル2が所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように回転駆動装置3を制御するので、刃具Cの交換時において、爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を確実に解除することができる。
【0041】
上述した説明では、溝1Bが形成されたナット部1Aを有するホルダ1と、溝1Bに嵌合する爪部7を備えた一対の可動アーム61を有するスパナ6が設けられた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、溝の無い円形のナット部1Aを有するホルダ1を用いると共に、図8(a),(b)に示すように、該ホルダ1のナット部1Aの外周面に対応する形状(円形)をなす嵌合部62を有するスパナ6をスライダー5に取り付けることもできる。この場合も、図1の実施形態と同様に、ホルダ1に装着される刃具Cの交換作業及び刃具Cの突出長さの調整作業を行うことができると共に、スパナ6はホルダ1のナット部1Aを強固かつ確実に把持することができる。特に、嵌合部62にワンウェイクラッチを有するスパナ6を用いると良い。また、スパナ6の嵌合部は、図示の形状の他にも任意の形状のものを用いることができる。図1に示すスパナ6と図8(a)に示すスパナ6の2種類のスパナを同時にスライダー5に搭載することも可能である。このように本発明に係る刃具交換装置は、各種の形状を有するナット部1Aに対応することができる。なお、図8(a),(b)に示すスパナ6の場合、図6又は図7に示すステップS6及びステップS16でスパナ6が開く替わりに、スパナ6がナット部1Aを把持した状態を維持する、或いは、スパナ6が取り付けられたスライダー5を作業に支障がない位置まで上昇させるように構成すると良い。
【0042】
本発明に係る刃具交換装置は、ツール形状測定装置と組み合わせることにより、ツール形状測定システムを構築することができる。この場合、刃具交換装置10、ツールプリセッタ及び搬送装置を備えた構成にすると良い。
【符号の説明】
【0043】
1 ホルダ
2 スピンドル
3 回転駆動装置
4 昇降装置
5 スライダー
6 スパナ
8 制御装置
10 刃具交換装置
20 突出長さ調整機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8