(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067732
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】大口径ズームレンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20220426BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176481
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】上村 豊
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA16
2H087PA12
2H087PA13
2H087PA15
2H087PA16
2H087PA20
2H087PB16
2H087PB19
2H087QA02
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA38
2H087QA39
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA44
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SB04
2H087SB15
2H087SB24
2H087SB25
2H087SB33
2H087SB35
2H087SB42
(57)【要約】
【課題】 変倍域に標準域を含み、開放F値が小さく、全長がコンパクトで、高速なオートフォーカス制御が可能な大口径ズームレンズを提供する。
【解決手段】 物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群、正の第4レンズ群、負の第5レンズ群、1つ以上のレンズ群を含む後側レンズ群からなり、第5レンズ群は無限遠物体から近距離物体への合焦の際に像面側へ移動する物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズの合焦レンズLFからなり、広角端から望遠端への変倍の際に、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は増大し、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔は減少し、第3レンズ群と第4レンズ群の間隔は減少し、第4レンズ群と第5レンズ群の間隔は変化し、第5レンズ群と後側レンズ群の間隔は増大し、所定の条件式を満たすことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1、負の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3、正の屈折力の第4レンズ群G4、負の屈折力の第5レンズ群G5、1つ以上のレンズ群を含む負の屈折力の後群レンズ群GRからなり、前記第5レンズ群G5は、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に像面側へ移動する物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる合焦レンズLFからなり、広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1レンズ群G1と前記第2レンズ群G2の間隔は増大し、前記第2レンズ群G2と前記第3レンズ群G3の間隔は減少し、前記第3レンズ群G3と前記第4レンズ群G4の間隔は減少し、前記第4レンズ群G4と前記第5レンズ群G5の間隔は変化し、前記第5レンズ群G5と前記後群レンズ群GRの間隔は増大し、以下の条件式を満たすことを特徴とする大口径ズームレンズ。
(1) -3.0<f5/f4<-1.0
ここで、
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f5:第5レンズ群G5の焦点距離
【請求項2】
広角端から望遠端への変倍の際に、前記後側レンズ群GRの最も像面側にあるレンズは像面に対して固定であることを特徴とする請求項1に記載の大口径ズームレンズ。
【請求項3】
広角端から望遠端への変倍の際に、前記第3レンズ群G3及び前記第4レンズ群G4は物体側へ移動し、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(2) 1.0<f3/f4<5.0
ここで、
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【請求項4】
広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1レンズ群G1は物体側へ移動し、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(3) -10.0<f1/f2<-3.0
ここで、
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
【請求項5】
前記第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、物体側に凸面を向けた正レンズL12、物体側に凸面を向けた正レンズL13からなり、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(4) νd1n<30.0
(5) 65.0<νd1p
(6) 3.0<νd1p/νd1n
ここで、
νd1n:負メニスカスレンズL11のアッベ数
νd1p:正レンズL12及び正レンズL13のうち最も低分散である正レンズのアッベ数
【請求項6】
前記第4レンズ群G4は、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを有し全体として正の屈折力を有するレンズ群G41、非球面を有する正レンズG42からなり、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(7) 0.3<f41/f42<0.6
ここで、
f41:レンズ群G41の焦点距離
f42:正レンズG42の焦点距離
【請求項7】
以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(8) -0.3<1/fRW<0.0
ここで、
fRW:広角端における後側レンズ群GRの焦点距離[mm]
【請求項8】
前記後側レンズ群GRは1つのレンズ群からなり、前記後側レンズ群GRは、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズユニットRF1、負の屈折力を有するレンズユニットRR1からなり、前記レンズユニットRF1は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、前記レンズユニットRR1は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の大口径ズームレンズ。
(9) -2.0<fRF1/fRR1<0.0
ここで、
fRF1:レンズユニットRF1の焦点距離
fRR1:レンズユニットRR1の焦点距離
【請求項9】
前記後側レンズ群GRは2つのレンズ群からなり、広角端から望遠端への変倍の際に、前記2つのレンズ群の間隔が増大することを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の大口径ズームレンズ。
【請求項10】
前記後側レンズ群GRの前記2つのレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群RF2、負の屈折力を有するレンズ群RR2であり、前記レンズ群RF2は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、前記レンズ群RR2は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項9に記載の大口径ズームレンズ。
(10) -2.0<fRF2/fRR2<0.0
(11) 0.5<RWD/RTD<1.0
ここで、
fRF2:レンズ群RF2の焦点距離
fRR2:レンズ群RR2の焦点距離
RWD:広角端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
RTD:望遠端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大口径ズームレンズに関する。特に、変倍域に標準域を含み、開放F値が小さく、全長がコンパクトで、高速なオートフォーカス制御が可能な大口径ズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開放F値が小さい大口径ズームレンズには、高い結像性能を得るために変倍域の全域で諸収差が良好に補正され、光学系全体が小型化され、高速なオートフォーカス制御を可能とするためにフォーカスレンズ群が軽量化されることが要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群からなるズームレンズであって、比較的バックフォーカスの長いズームレンズが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群、又は、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群からなるズームレンズであって、比較的バックフォーカスの長いズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-128361号公報
【特許文献2】特開2012-123156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献に開示されたズームレンズには次の課題がある。
【0007】
特許文献1に開示されたズームレンズの従来例では、フォーカスレンズ群は多くの枚数のレンズで構成され、その重量は大きい。したがって、高速なオートフォーカス制御を可能とするためには、フォーカスレンズ群の軽量化が不十分である。
【0008】
また、像高が21.63mm相当となる所謂フルサイズの撮像素子を搭載するカメラに特許文献1に開示されたズームレンズを適用させようとすると、光学系全体が大型化することにともなって、バックフォーカスが長くなり、全長が長くなる。したがって、特に、光学ファインダへ像を反射させるためのミラーを搭載せず、カメラシステム全体として小型軽量化されたミラーレスカメラへの適用には不向きである。
【0009】
特許文献2に開示されたズームレンズの従来例では、特許文献1に開示されたズームレンズと同様にフォーカスレンズ群の軽量化が不十分である。
【0010】
また、フルサイズの撮像素子を搭載する一眼レフカメラに適用はできるが、比較的バックフォーカスが長く、全長も長いため、やはりミラーレスカメラへの適用には不向きである。
【0011】
本発明は、従来例の上記課題に鑑みてなされたものであり、変倍域に標準域を含み、開放F値が小さく、全長がコンパクトで、高速なオートフォーカス制御が可能な大口径ズームレンズを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明を実施の大口径ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1、負の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3、正の屈折力の第4レンズ群G4、負の屈折力の第5レンズ群G5、1つ以上のレンズ群を含む負の屈折力の後群レンズ群GRからなり、前記第5レンズ群G5は、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に像面側へ移動する物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる合焦レンズLFからなり、広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1レンズ群G1と前記第2レンズ群G2の間隔は増大し、前記第2レンズ群G2と前記第3レンズ群G3の間隔は減少し、前記第3レンズ群G3と前記第4レンズ群G4の間隔は減少し、前記第4レンズ群G4と前記第5レンズ群G5の間隔は変化し、前記第5レンズ群G5と前記後群レンズ群GRの間隔は増大し、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(1) -3.0<f5/f4<-1.0
ここで、
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f5:第5レンズ群G5の焦点距離
【0013】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、広角端から望遠端への変倍の際に、前記後側レンズ群GRの最も像面側にあるレンズは像面に対して固定であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、広角端から望遠端への変倍の際に、前記第3レンズ群G3及び前記第4レンズ群G4は物体側へ移動し、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(2) 1.0<f3/f4<5.0
ここで、
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【0015】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1レンズ群G1は物体側へ移動し、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(3) -10.0<f1/f2<-3.0
ここで、
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
【0016】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、前記第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、物体側に凸面を向けた正レンズL12、物体側に凸面を向けた正レンズL13からなり、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(4) νd1n<30.0
(5) 65.0<νd1p
(6) 3.0<νd1p/νd1n
ここで、
νd1n:負メニスカスレンズL11のアッベ数
νd1p:正レンズL12及び正レンズL13のうち最も低分散である正レンズのアッベ数
【0017】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、前記第4レンズ群G4は、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを有し全体として正の屈折力を有するレンズ群G41、非球面を有する正レンズG42からなり、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(7) 0.3<f41/f42<0.6
ここで、
f41:レンズ群G41の焦点距離
f42:正レンズG42の焦点距離
【0018】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(8) -0.3<1/fRW<0.0
ここで、
fRW:広角端における後側レンズ群GRの焦点距離[mm]
【0019】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、前記後側レンズ群GRは1つのレンズ群からなり、前記後側レンズ群GRは、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズユニットRF1、負の屈折力を有するレンズユニットRR1からなり、前記レンズユニットRF1は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、前記レンズユニットRR1は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(9) -2.0<fRF1/fRR1<0.0
ここで、
fRF1:レンズユニットRF1の焦点距離
fRR1:レンズユニットRR1の焦点距離
【0020】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、前記後側レンズ群GRは2つのレンズ群からなり、広角端から望遠端への変倍の際に、前記2つのレンズ群の間隔が増大することを特徴とする。
【0021】
また、本発明を実施の大口径ズームレンズは、好ましくは、前記後側レンズ群GRの前記2つのレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群RF2、負の屈折力を有するレンズ群RR2であり、前記レンズ群RF2は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、前記レンズ群RR2は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
(10) -2.0<fRF2/fRR2<0.0
(11) 0.5<RWD/RTD<1.0
ここで、
fRF2:レンズ群RF2の焦点距離
fRR2:レンズ群RR2の焦点距離
RWD:広角端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
RTD:望遠端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
【発明の効果】
【0022】
本発明を実施の大口径ズームレンズによれば、変倍域に標準域を含み、開放F値が小さく、全長がコンパクトで、高速なオートフォーカス制御が可能な大口径ズームレンズを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の大口径ズームレンズの実施例1に係るレンズ構成図である。
【
図2】実施例1の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図3】実施例1の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図4】実施例1の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図5】実施例1の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図6】実施例1の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図7】実施例1の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図8】本発明の大口径ズームレンズの実施例2に係るレンズ構成図である。
【
図9】実施例2の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図10】実施例2の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図11】実施例2の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図12】実施例2の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図13】実施例2の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図14】実施例2の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図15】本発明の大口径ズームレンズの実施例3に係るレンズ構成図である。
【
図16】実施例3の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図17】実施例3の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図18】実施例3の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図19】実施例3の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図20】実施例3の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図21】実施例3の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図22】本発明の大口径ズームレンズの実施例4に係るレンズ構成図である。
【
図23】実施例4の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図24】実施例4の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図25】実施例4の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図26】実施例4の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図27】実施例4の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図28】実施例4の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図29】本発明の大口径ズームレンズの実施例5に係るレンズ構成図である。
【
図30】実施例5の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図31】実施例5の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図32】実施例5の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図33】実施例5の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図34】実施例5の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図35】実施例5の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図36】本発明の大口径ズームレンズの実施例6に係るレンズ構成図である。
【
図37】実施例6の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図38】実施例6の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図39】実施例6の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図40】実施例6の大口径ズームレンズの広角端、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図41】実施例6の大口径ズームレンズの中間焦点距離、無限遠合焦時の横収差図である。
【
図42】実施例6の大口径ズームレンズの望遠端、無限遠合焦時の横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る大口径ズームレンズの実施例について図面を用いて詳細に説明する。本発明において、レンズユニットとは、全体として1つの光学素子を構成する単レンズ又は接合レンズのことを示す。
【0025】
図1、
図8、
図15、
図22、
図29及び
図36は、本実施例の大口径ズームレンズのレンズ構成図である。各レンズ構成図に示すとおり、本実施例の大口径ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1、負の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3、正の屈折力の第4レンズ群G4、負の屈折力の第5レンズ群G5、負の屈折力の後側レンズ群GRから構成される。後側レンズ群GRは1以上のレンズ群で構成され、最も物体側には、物体側に凸面を向けた正レンズユニットが配置され、最も像側のレンズは負レンズユニットが配置されている。
【0026】
本実施例の大口径ズームレンズは、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群G1が物体側へ移動し、第2レンズ群G2は像面に対して移動し、第3レンズ群G3は物体側へ移動し、第4レンズ群は物体側に移動し、第5レンズ群は物体側に移動する。また、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔は減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5の間隔は変化し、第5レンズ群G5と後側レンズ群GRの間隔は増大する。
【0027】
また、後側レンズ群GRが1つのレンズ群からなる場合には、後側レンズ群GRは像面に対して固定であり、後側レンズ群GRが2つのレンズ群からなる場合には、後側レンズ群GRのうち前側のレンズ群が物体側に移動し、後側のレンズ群は像面に対して固定であり、前側のレンズ群と後ろ側のレンズ群の間隔は増大する。
【0028】
また、第5レンズ群G5は、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に像面側へ移動する物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる合焦レンズLFからなる。
【0029】
本実施例の大口径ズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時の際に正の屈折力の第1レンズ群G1と負の屈折力の第2レンズ群G2との間隔を増大させることにより主な変倍効果を得る。ここで、変倍の際の第1レンズ群G1の移動量を削減するには、屈折力配置を広角端においては逆望遠型とし、望遠端においては望遠型とすることが好ましい。このような構成により、広角端での光学系全長を短縮しつつ、第1レンズ群G1の移動量を削減することができる。
【0030】
したがって、広角端においては、正の屈折力の第1レンズ群G1と負の屈折力の第2レンズ群G2を接近させてその合成屈折力が負の屈折力となるように配置するとともに、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の合成系から像側に離れた位置に全体として正の屈折力となる第3レンズ群G3を配置し、像側にさらに離れた位置に正の屈折力となる第4レンズ群G4を配置し、第4レンズ群の後方に負の屈折力となる第5レンズ群G5を配置し、その後側に後側レンズ群GRを配置することとしている。
【0031】
一方、望遠端においては、負の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3及び正の屈折力の第4レンズ群G4及び負の屈折力の第5レンズ群G5を接近させて第1レンズ群G1より後側の合成屈折力が負の屈折力となるように配置し、正の屈折力の第1レンズ群G1との関係により全体として望遠型の屈折力配置を構成し、望遠端における光学系全長の短縮を可能としている。
【0032】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、第5レンズ群G5は、第4レンズ群に隣接し、ズーミング時には第4レンズ群G4に対して任意の位置に移動することで像面湾曲を適切に調整するためのフローティング効果があり、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に像面側へ移動する物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる合焦レンズLFである。また、下記の条件式(1)を満たす。
(1) -3.0<f5/f4<-1.0
ここで、
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f5:第5レンズ群G5の焦点距離
【0033】
軽量なレンズを移動させて高速なオートフォーカス制御を可能とするためには、合焦レンズLFを小型化することが好ましい。合焦レンズLFを小型化するためには、可能な限りその有効径を小さくすることが重要である。しかしながら、合焦レンズLFの有効径を小さくするために、合焦レンズLFを最も像面に近い最終レンズ群に配置しようとすると、マウント周辺に配置されるカメラボディとの通信等のための電装基板の配置が困難となり、また、電装基板の配置を優先すると合焦レンズLFの有効径が過度に制約されてしまうため好ましくない。
【0034】
本実施例では、第4レンズ群G4に隣接させて第5レンズ群G5を配置し、広角端から望遠端への変倍の際に、第5レンズ群G5と後群レンズ群GRの間隔を増大させることとした。これにより、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に、望遠端で移動量が大きくなる合焦レンズLFの像面側の移動スペースを十分に確保することができることとした。さらに、本実施例では、第4レンズ群G4の像面側に隣接して配置することで、合焦レンズLFの像面側の移動スペースの確保をより容易にできることとした。また、本実施例では、合焦レンズLFを物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとし、合焦の際の収差変動を抑えることができることとした。
【0035】
条件式(1)は、第4レンズ群G4の焦点距離と第5レンズ群G5の焦点距離との比を規定する式である。
【0036】
条件式(1)の上限値を超え、第5レンズ群G5の負の屈折力が大きくなると、合焦レンズLFの偏芯敏感度が増大し、合焦位置に応じて光学性能が悪化するおそれが生じてしまう。
【0037】
条件式(1)の下限値を超え、第5レンズ群G5の負の屈折力が小さくなると、近距離物体への合焦の際に合焦レンズLFの移動量が増大し、高速なオートフォーカス制御の実現が困難となってしまう。
【0038】
上述した条件式(1)について、その下限値を-2.2に、また、上限値を-1.6に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0039】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍の際に、後側レンズ群GRの最も像面側にあるレンズは像面に対して固定であることとした。これにより、最も像面側にあるレンズに可動機構等を付加する必要がないため、カメラボディのマウントの仕様に対して最も像面側にあるレンズの外径を大きくすることが容易になり、撮像素子の周辺部に結像する光束の射出角を十分に抑制することができる。
【0040】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍の際に、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4は物体側へ移動する。また、下記の条件式(2)を満たす。
(2) 1.0<f3/f4<5.0
ここで、
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【0041】
広角端から望遠端への変倍の際に第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4を物体側へ適切に移動させることにより、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔を適切に減少させ、変倍の際に変動する像面湾曲を抑制することができることとした。
【0042】
条件式(2)の下限値を超え、第3レンズ群G3の屈折力が大きくなると、変倍時に第3レンズ群G3と第4レンズ群G4のレンズ間隔を変化させ、像面湾曲を抑制する際に、第3レンズ群G3で発生する球面収差の影響から、ズーム中間域での球面収差変動が増大してしまう。
【0043】
条件式(2)の上限値を超え、第3レンズ群G3の屈折力が小さくなると、第4レンズ群G4の外径が大きくなり、また、第4レンズ群G4の屈折力が大きくなり過ぎるため、第4レンズ群G4内の球面収差に対する敏感度が増大してしまう。さらに偏芯敏感度が増大し、製造ばらつきを抑えることが困難になるため、生産性に悪影響を及ぼすおそれが生じてしまう。
【0044】
上述した条件式(2)について、その下限値を2.1に、また、上限値を3.4に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0045】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍の際に、第1レンズ群G1は物体側へ移動する。また、下記の条件式(3)を満たす。
(3) -10.0<f1/f2<-3.0
ここで、
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
【0046】
条件式(3)の下限値を超え、第1レンズ群G1の屈折力が大きくなると、望遠端側において球面収差及び倍率色収差の補正が困難となり十分な光学性能を得ることができない。また、第2レンズ群G2の屈折力が小さくなると、広角端においてレンズ全長が大型化してしまう。
【0047】
条件式(3)の上限値を超え、第1レンズ群G1の屈折力が小さくなると、変倍の際の第1レンズ群G1の移動量が大きくなり過ぎてしまう。また、第2レンズ群G2の屈折力が大きくなると、広角端側において収差補正が困難となり周辺部の十分な光学性能を得ることができない。
【0048】
上述した条件式(3)について、その下限値を-6.4に、また、上限値を-4.6に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0049】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、物体側に凸面を向けた正レンズL12、物体側に凸面を向けた正レンズL13からなる。また、下記の条件式(4)乃至(6)を満たす。
(4) νd1n<30.0
(5) 65.0<νd1p
(6) 3.0<νd1p/νd1n
ここで、
νd1n:負メニスカスレンズL11のアッベ数
νd1p:正レンズL12及び正レンズL13のうち最も低分散である正レンズのアッベ数
【0050】
正の屈折力を持つ第1レンズ群G1において、これを構成する負レンズのアッベ数を小さくし、正レンズのアッベ数を大きくすることにより、画角が大きくなる広角端において負レンズ及び正レンズの曲率を小さくすることが可能となり、第1レンズ群G1の全体を薄肉化することができる。さらに、第1レンズ群G1の正レンズに低分散で異常分散性の高い硝種を選択することで望遠端における軸上色収差及び倍率色収差を有効に補正することができる。
【0051】
条件式(4)の上限値を超え、負メニスカスレンズL11のアッベ数が大きくなると、高い屈折率を有する軽量な硝材を選択することができなくなる。
【0052】
条件式(5)の下限値を超え、正レンズL12及び正レンズL13のうち最も低分散である正レンズのアッベ数が小さくなると、正レンズは高分散な硝材を選択することとなるため軸上色収差及び倍率色収差の補正が困難となり、また、軽量な硝材を選択することができなくなる。
【0053】
条件式(6)の下限値を超え、正レンズL12及び正レンズL13のうち最も低分散である正レンズのアッベ数が小さくなる、又は、負メニスカスレンズL11のアッベ数が大きくなると、正レンズが高分散となる、又は、負メニスカスレンズL11が低分散となり、正レンズと負メニスカスレンズL11とのアッベ数の差が小さくなり、第1レンズ群G1を十分に薄肉化することが困難となる。これにより、レンズ全長の大型化、フィルタ径の増大、レンズ重量の増加を招くこととなり、十分な小型軽量化を実現できなくなる。
【0054】
上述した条件式(4)について、その下限値を15.0に、また、上限値を22.0に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0055】
上述した条件式(5)について、その下限値を70.0に、また、上限値を96.0に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0056】
上述した条件式(6)について、その下限値を3.8に、また、上限値を4.7に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0057】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、第4レンズ群G4は、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを有し全体として正の屈折力を有するレンズ群G41、非球面を有する正レンズG42からなる。また、下記の条件式(7)を満たす。
(7) 0.3<f41/f42<0.6
ここで、
f41:レンズ群G41の焦点距離
f42:正レンズG42の焦点距離
【0058】
条件式(7)の下限値を超え、レンズ群G41の屈折力が大きくなると、レンズ群G41と正レンズG42との相対シフト敏感度が大きくなり、製造誤差による光学性能の低下が大きくなるため、生産性に悪影響を及ぼすおそれが生じてしまう。
【0059】
条件式(7)の上限値を超え、正レンズG42の屈折力が大きくなると、非球面レンズである正レンズG42の面間シフト偏芯誤差による敏感度が大きくなり、製造ばらつきを抑えることが困難になるため、生産性に悪影響を及ぼすおそれが生じてしまう。
【0060】
上述した条件式(7)について、その下限値を0.39に、また、上限値を0.46に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0061】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、負の屈折力を有する後側レンズ群GRが下記の条件式(8)を満たす。
(8) -0.3<1/fRW<0.0
ここで、
fRW:広角端における後側レンズ群の焦点距離[mm]
【0062】
負の屈折力を有する後側レンズ群GRは、結像倍率を大きくすると、後側レンズ群GRよりも物体側に配置される各レンズ群の焦点距離を短くすることができるため、レンズ全長の小型化には有利である。
【0063】
条件式(8)の下限値を超え、後側レンズ群GRの負の屈折力が大きくなると、小型化には有利となるが、十分な光学性能を維持することが困難となる。
【0064】
上述した条件式(8)について、その下限値を-0.004に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0065】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、後側レンズ群GRが1つのレンズ群からなり、後側レンズ群GRは、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズユニットRF1、負の屈折力を有するレンズユニットRR1からなり、レンズユニットRF1は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、レンズユニットRR1は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有する。また、下記の条件式(9)を満たす。
(9) -2.0<fRF1/fRR1<0.0
ここで、
fRF1:レンズユニットRF1の焦点距離
fRR1:レンズユニットRR1の焦点距離
【0066】
後側レンズ群GRは、最も物体側に少なくとも物体側に凸面を向けた正レンズを有し全体として正の屈折力を有するレンズユニットRF1を配置することで、後側レンズ群GRの光線径を下げることができるため、カメラボディのマウント周辺で外径が大型化することを抑えることができる。さらに、最も像側に少なくとも1枚の負レンズを有し全体として負の屈折力を有するレンズユニットRR1を配置することで、軸外光線の射出角を適切にコントロールすることができるため、像面湾曲の改善を容易にすることができる。
【0067】
条件式(9)の下限値を超え、レンズユニットRF1の正の屈折力が小さくなると、像側レンズ群GRの最も像面側にあるレンズの光線高が大きくなり過ぎるため、カメラボディのマウント周辺にレンズを配置することが困難になってしまう。また、レンズユニットRR1の負の屈折力が大きくなり過ぎるため、後側レンズ群GRの負の屈折力が大きくなり、レンズ全長の小型化には有利になるが、収差補正が困難になってしまう。
【0068】
条件式(9)の上限値を超え、レンズユニットRF1の正の屈折力が大きくなると、後側レンズ群GRの屈折力が正になり、レンズ全長の小型化が困難になってしまう。また、レンズユニットRR1の負の屈折力が小さくなると、像面湾曲の改善が困難になってしまう。
【0069】
上述した条件式(9)について、その下限値を-1.6、上限値を-1.1に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0070】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、後側レンズ群GRが2つのレンズ群からなり、広角端から望遠端への変倍の際に、2つのレンズ群の間隔が増大する。これにより、変倍域の中間領域及び望遠端領域において球面収差及び非点収差をアンダー側に変化させ、変倍の際の像面湾曲の変化を適切に補正することができる。
【0071】
本実施例の大口径ズームレンズにおいて、後側レンズ群GRの2つのレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群RF2、負の屈折力を有するレンズ群RR2であり、レンズ群RF2は、少なくとも、最も物体側に物体側に凸面を向けた正レンズを有し、レンズ群RR2は、少なくとも、最も像側に1枚の負レンズを有する。また、下記の条件式(10)及び(11)を満たす。
(10) -2.0<fRF2/fRR2<0.0
(11) 0.5<RWD/RTD<1.0
ここで、
fRF2:レンズ群RF2の焦点距離
fRR2:レンズ群RR2の焦点距離
RWD:広角端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
RTD:望遠端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚
【0072】
後側レンズ群GRは、最も物体側に少なくとも物体側に凸面を向けた正レンズを有し全体として正の屈折力を有するレンズ群RF2を配置することで、後側レンズ群GRの光線径を下げることができるため、カメラボディのマウント周辺で外径が大型化することを抑えることができる。さらに、最も像側に少なくとも1枚の負レンズを有し全体として負の屈折力を有するレンズ群RR2を配置することで、軸外光線の射出角を適切にコントロールすることができるため、変倍域の全域で像面湾曲の改善を容易にすることができる。
【0073】
条件式(10)の下限値を超え、レンズ群RF2の正の屈折力が小さくなると、像側レンズ群GRの最も像面側にあるレンズ群RR2の光線高が大きくなり過ぎるため、カメラボディのマウント周辺にレンズを配置することが困難になってしまう。また、レンズ群RR2の負の屈折力が大きくなり過ぎるため、後側レンズ群GRの負の屈折力が大きくなり、レンズ全長の小型化には有利になるが、収差補正が困難になってしまう。
【0074】
条件式(10)の上限値を超え、レンズ群RF2の正の屈折力が大きくなると、後側レンズ群GRの屈折力が正になり、レンズ全長の小型化が困難になってしまう。また、レンズ群RR2の負の屈折力が小さくなると、像面湾曲の改善が困難になってしまう。
【0075】
上述した条件式(10)について、その下限値を-1.4、上限値を-1.1に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0076】
条件式(11)の下限値を超え、変倍時のレンズ群RF2の移動量が大きくなることで望遠端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚が長くなると、至近距離物体に合焦した際の合焦レンズLFと後側レンズ群GRとの間隔が短くなり過ぎるため、合焦レンズLFを移動させるための可動機構を搭載することが困難になってしまう。
【0077】
条件式(11)の上限値を超え、広角端における後側レンズ群GRの光軸上の合成厚が長くなると、レンズ群RF2とレンズ群RR2との間隔が広角端で大きく、望遠端で小さくなることとなるため、フローティングによる像面湾曲の補正効果を得ることができなくなってしまう。
【0078】
上述した条件式(11)について、その下限値を0.85、上限値を0.95に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0079】
次に、本実施例の大口径ズームレンズのレンズ構成について説明する。なお、以下の説明おいて、レンズ構成について物体側から像側の順で記載する。
【実施例0080】
図1は、本発明に係る実施例1の大口径ズームレンズのレンズ構成図である。
【0081】
実施例1の大口径ズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正の屈折力の第4レンズ群G4と、負の屈折力の第5レンズ群G5で構成される。また、実施例1において後側レンズ群GRは、第6レンズ群G6から構成される。
【0082】
広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群G1は物体側へ移動し、第2レンズ群G2は像面に対して移動し、第3レンズ群G3は物体側へ移動し、第4レンズ群G4は物体側へ移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動し、第6レンズ群G6は像面に対して固定される。また、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔は減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5の間隔は減少し、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6の間隔は増大する。
【0083】
開口絞りSは第3レンズ群G3の物体側に配置され、第4レンズ群G4は、正の屈折力を有するレンズ群G41、正の屈折力を有し非球面を備えるレンズG42からなり、第5レンズ群G5は負の屈折力を有する合焦レンズLFからなり、無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、合焦レンズLFが光軸に沿って像面側へ移動する。
【0084】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と両凸レンズL2からなる接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3から構成される。
【0085】
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4と、両凹レンズL5と両凸レンズL6からなる接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7から構成される。
【0086】
第3レンズ群G3は、両凸レンズL8と、両凸レンズL9と物体側に凹面を向けた平凹レンズL10からなる接合レンズから構成される。
【0087】
第4レンズ群G4は、レンズ群G41として両凸レンズL11と、レンズG42として物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL12から構成される。
【0088】
第5レンズ群G5は合焦レンズLFとして物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13から構成される。
【0089】
第6レンズ群G6は、レンズユニットRF1として正の屈折力を有する両凸レンズL14と両凹レンズL15からなる接合レンズと、レンズユニットRR1として負の屈折力を有する両凹レンズL16から構成される。
実施例2の大口径ズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正の屈折力の第4レンズ群G4と、負の屈折力の第5レンズ群G5で構成される。また、実施例2において後側レンズ群GRは、第6レンズ群G6から構成される。
広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群G1は物体側へ移動し、第2レンズ群G2は像面に対して移動し、第3レンズ群G3は物体側へ移動し、第4レンズ群G4は物体側へ移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動し、第6レンズ群G6は像面に対して固定される。また、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔は減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5の間隔は変化し、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6の間隔は増大する。
開口絞りSは第3レンズ群G3の物体側に配置され、第4レンズ群G4は、正の屈折力を有するレンズ群G41、正の屈折力を有し非球面を備えるレンズG42からなり、第5レンズ群G5は負の屈折力を有する合焦レンズLFからなり、無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、合焦レンズLFが光軸に沿って像面側へ移動する。
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と両凸レンズL2からなる接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3から構成される。
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4と、両凹レンズL5と両凸レンズL6からなる接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7から構成される。
第3レンズ群G3は、両凸レンズL8と、両凸レンズL9と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL10からなる接合レンズ、物体側に凸面を向けた平凸レンズL11から構成される。
第4レンズ群G4は、レンズ群G41として物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13との接合レンズおよび、両凸レンズL14、レンズG42として物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL15から構成される。
第6レンズ群G6は、レンズユニットRF1として物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL17、レンズユニットRR1として物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL18と両凹レンズL19から構成される。