IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社 商船三井の特許一覧

特開2022-67738浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム
<>
  • 特開-浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム 図1
  • 特開-浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム 図2
  • 特開-浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム 図3
  • 特開-浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム 図4
  • 特開-浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067738
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/16 20060101AFI20220426BHJP
   B01D 24/44 20060101ALI20220426BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B01D35/16
B01D29/42 520
B63B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176498
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】菊地 将司
(72)【発明者】
【氏名】善万 泰朋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116AA20
4D116BB01
4D116FF12B
4D116GG02
4D116GG21
4D116KK04
4D116QA04C
4D116QA04E
4D116QA57B
4D116QC12
4D116QC22
4D116QC23
4D116QC29
4D116RR05
4D116RR16
4D116SS02
4D116SS04
4D116TT02
4D116UU20
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】船舶に取り込まれた環境水から浮遊汚染物質を効率的に回収できる浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システムを提供すること。
【解決手段】船舶2に取り付けられ、当該船舶2に取り入れられる環境水に含まれる浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収装置40が、環境水をろ過するろ過装置12のフィルタ120を逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインL4に配置される回収フィルタ41と、回収フィルタ41に清水を供給する清水供給手段50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収装置であって、
環境水をろ過するろ過装置のフィルタを逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインに配置される回収フィルタと、
前記回収フィルタに清水を供給する清水供給手段と、
を備える浮遊汚染物質回収装置。
【請求項2】
前記清水供給手段は、前記回収フィルタの上流側に接続され、前記回収フィルタの上流側から該回収フィルタに清水を供給する清水順洗ラインを有する請求項1に記載の浮遊汚染物質回収装置。
【請求項3】
前記清水供給手段は、
前記回収フィルタの下流側に接続され、前記回収フィルタの下流側から該回収フィルタに清水を供給する清水逆洗ラインと、
前記清水逆洗ラインから供給されて前記回収フィルタを逆洗した後の逆洗清水を排出する清水排水ラインと、
前記清水排水ラインを流通する逆洗清水を回収する回収容器と、
を有する請求項1に記載の浮遊汚染物質回収装置。
【請求項4】
前記逆洗排水ラインにおける前記回収フィルタよりも上流側に配置され、該逆洗排水ラインを流通する逆洗排水に含まれる固形物を分離するセパレータを更に備える請求項1~3のいずれかに記載の浮遊汚染物質回収装置。
【請求項5】
前記回収フィルタのろ過精度は、200μm~800μmである請求項1~4のいずれかに記載の浮遊汚染物質回収装置。
【請求項6】
船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収システムであって、
環境水を前記船舶に取り入れる取水ラインと、
前記取水ラインに配置される取水ポンプと、
前記取水ラインの下流側に配置され、該取水ラインを流通する環境水をろ過するフィルタを有するろ過装置と、
前記ろ過装置においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンクと、
前記ろ過装置と前記処理水貯留タンクとを接続する処理水ラインと、
前記ろ過装置に前記フィルタのろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインと、
上流側が前記ろ過装置における前記フィルタよりも上流側に接続され、前記逆洗ラインから前記ろ過装置に供給された逆洗後の処理水である逆洗排水を排出する逆洗排水ラインと、
前記逆洗排水ラインに配置される回収フィルタ及び前記回収フィルタに清水を供給する清水供給手段を有する浮遊汚染物質回収装置と、
を備える浮遊汚染物質回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境水から浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物船やタンカー等において船体姿勢や喫水を安全な状態に維持するために使われるバラスト水は、有害水生生物の越境移動による海洋生態系のかく乱を引き起こし、大きな環境問題となっている。バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する技術として例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、バラスト水処理システムの構成とは独立したモジュールで構成されるバラスト水濾過処理装置により、逆洗水を船外に排出することが可能なバラスティング時の1次濾過だけでなく、逆洗水を船外に排出することができないデバラスティングの際にも2次濾過及び差圧解消のための逆洗が行われるようにして海洋微生物の最終濾過率を高めることができることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2や3は、取得された環境水から水生生物を取得する技術を開示している。例えば、特許文献2には、大きな貯留タンクを設ける必要がなく、容易に且つ連続してバラスト水を採取し、バラスト水中に含まれる水生生物を生きたままサンプリングできるとする、船舶バラスト水のサンプリングシステムが記載されている。特許文献3には、試料水を貯水する貯水部を前記試料水の供給側と排出側に仕切るフィルタが、前記供給側の面に鉛直方向下向きの力が作用しない配置とすることにより、微生物が大きなダメージを受けることがなく、該微生物の多くを生きたまま回収できるとする、微生物濃縮器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-153795号公報
【特許文献2】特開2009-115500号公報
【特許文献3】特開2015-14516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチック汚染は海洋ごみのかなりの部分を占め、ますます大きな脅威となりつつある。特にマイクロプラスチック等を含む浮遊汚染物質による海洋の汚染に対処することは、喫緊の課題となっている。船舶では、冷却用水及びバラスト水として大量の環境水が取水され排水されるものの、環境水に含まれる浮遊汚染物質を効果的に回収し、処理することは行われていない。
【0007】
本発明は、船舶に取り込まれた環境水から浮遊汚染物質を効率的に回収できる浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収装置であって、環境水をろ過するろ過装置のフィルタを逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインに配置される回収フィルタと、前記回収フィルタに清水を供給する清水供給手段と、を備える浮遊汚染物質回収装置に関する。
【0009】
前記清水供給手段は、前記回収フィルタの上流側に接続され、前記回収フィルタの上流側から該回収フィルタに清水を供給する清水順洗ラインを有することが好ましい。
【0010】
前記清水供給手段は、前記回収フィルタの下流側に接続され、前記回収フィルタの下流側から該回収フィルタに清水を供給する清水逆洗ラインと、前記清水逆洗ラインから供給されて前記回収フィルタを逆洗した後の逆洗清水を排出する清水排水ラインと、前記清水排水ラインを流通する逆洗清水を回収する回収容器と、を有することが好ましい。
【0011】
前記浮遊汚染物質回収装置は、前記逆洗排水ラインにおける前記回収フィルタよりも上流側に配置され、該逆洗排水ラインを流通する逆洗排水に含まれる固形物を分離するセパレータを更に備えることが好ましい。
【0012】
前記回収フィルタのろ過精度は、200μm~800μmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる浮遊汚染物質を回収する浮遊汚染物質回収システムであって、環境水を前記船舶に取り入れる取水ラインと、前記取水ラインに配置される取水ポンプと、前記取水ラインの下流側に配置され、該取水ラインを流通する環境水をろ過するフィルタを有するろ過装置と、前記ろ過装置においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンクと、前記ろ過装置と前記処理水貯留タンクとを接続する処理水ラインと、前記ろ過装置に前記フィルタのろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインと、上流側が前記ろ過装置における前記フィルタよりも上流側に接続され、前記逆洗ラインから前記ろ過装置に供給された逆洗後の処理水である逆洗排水を排出する逆洗排水ラインと、前記逆洗排水ラインに配置される回収フィルタ及び前記回収フィルタに清水を供給する清水供給手段を有する浮遊汚染物質回収装置と、を備える浮遊汚染物質回収システムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶に取り込まれた環境水から浮遊汚染物質を効率的に回収できる浮遊汚染物質回収装置及び浮遊汚染物質回収システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る浮遊汚染物質回収システムを示す模式図である。
図2】本実施形態の浮遊汚染物質回収装置の清水順洗処理の一例を示すフローチャートである。
図3】本実施形態の浮遊汚染物質回収装置の清水逆洗処理の一例を示すフローチャートである。
図4】第1変形例の浮遊汚染物質回収システムを示す模式図である。
図5】第2変形例の浮遊汚染物質回収システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る浮遊汚染物質回収システム1を示す模式図である。
【0017】
浮遊汚染物質回収システム1は、船舶2に取り付けられる。浮遊汚染物質回収システム1は、船舶2が海、河川、湖、沼等の環境から取得した水(以下、環境水)から浮遊汚染物質を回収する機能を有する。本実施形態において船舶2が海、河川、湖、沼等の環境から取得する水は、例えばバラスト水である。また、浮遊汚染物質は、環境基準や排水基準でいう浮遊物質(2mmのふるいを通過し1μmのろ過材上に残留する物質)、2mm以上のプラスチックや5mm以下又は1mm以下等を対象とするマイクロプラスチック等を含むものとする。
【0018】
<全体構成>
浮遊汚染物質回収システム1の全体的な構成について説明する。なお、以下の説明において「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0019】
図1に示すように、浮遊汚染物質回収システム1は、取水ラインL1と、取水ポンプ11と、ろ過装置12と、処理水ラインL2と、処理水貯留タンク13と、逆洗ラインL3と、処理水逆洗用開閉弁31と、逆洗ポンプ32と、逆洗排水ラインL4と、浮遊汚染物質回収装置40と、制御装置100と、を備える。
【0020】
取水ラインL1は、船舶2の外側にある環境水(例えば、海水、汽水、淡水)を船舶2の内側に取り入れるラインである。取水ラインL1の一側の端部(上流側の端部)に配置される取水口は、環境水を取得できる位置、例えば海面よりも下側に位置する。取水ラインL1の他側の端部(下流側の端部)は、ろ過装置12に接続される。
【0021】
取水ポンプ11は、取水ラインL1に配置される。取水ポンプ11が駆動することにより、環境水が取水ラインL1を通じて船舶2の外側から内側に取り入れられる。
【0022】
ろ過装置12は、取水ラインL1を流通する環境水をろ過するフィルタ120と、当該フィルタ120を保持するろ過塔本体121と、を有する。環境水は、ろ過装置12を通過することによりろ過処理された処理水となる。なお、ろ過装置12には、種々の方式のものを採用することができる。例えば、ろ過装置12は、ろ過処理とともに逆洗処理を並行して行ってフィルタ120の目詰まりを解消する方式のバラスト水処理装置であってもよい。
【0023】
処理水ラインL2は、ろ過装置12で処理された処理水が流通するラインである。処理水ラインL2の一側の端部(上流側の端部)はろ過装置12に接続され、処理水ラインL2の他側の端部(下流側の端部)は処理水貯留タンク13に接続される。
【0024】
処理水貯留タンク13は、ろ過装置12でろ過処理された処理水を貯留する。この処理水貯留タンク13には、ろ過装置12のフィルタ120を逆洗処理するための逆洗ラインL3が接続されている。なお、図1では図示していないが、処理水貯留タンク13には、船舶2の外側に処理水を排出する処理水排出ラインが接続されていてもよい。
【0025】
逆洗ラインL3は、ろ過装置12のフィルタ120のろ過方向の逆方向に当該フィルタ120に処理水を供給するラインである。逆洗ラインL3の一側の端部(上流側の端部)は、処理水貯留タンク13に接続される。逆洗ラインL3の他側の端部(下流側の端部)は、ろ過装置12において、環境水をろ過するろ過方向の流れにおいてフィルタ120よりも下流側(処理水の出口側)に接続される。
【0026】
処理水逆洗用開閉弁31は、逆洗ラインL3に配置される。処理水逆洗用開閉弁31は、フィルタ120の逆洗処理を行わない場合は閉状態である。フィルタ120の逆洗処理を行う場合は、処理水逆洗用開閉弁31が閉状態から開状態に移行する。
【0027】
逆洗ポンプ32は、逆洗ラインL3に配置される。逆洗ポンプ32が駆動することにより、ろ過方向と逆方向から当該フィルタ120に逆洗ラインL3を通じて処理水が供給される。
【0028】
逆洗排水ラインL4は、フィルタ120を逆洗した後の処理水である逆洗排水が流通するラインである。逆洗排水ラインL4の一側の端部(上流側の端部)は、ろ過装置12において、環境水をろ過するろ過方向の流れにおいてフィルタ120よりも上流側(取水ラインL1側、環境水入口側)に接続される。この逆洗排水ラインL4を通じてろ過装置12を逆洗した後の処理水が船舶2の外側に排出される。
【0029】
サイクロン35は、水の流れを利用した固液分離を行うことにより、逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水に含まれる固形物を分離する。ろ過装置12から排出された逆洗排水は、サイクロン35で分離された後に浮遊汚染物質回収装置40に到達する。なお、サイクロン35には、内部に溜まった排水を連続又は間欠的に排出される排出ライン(図示省略)が設けられる。
【0030】
浮遊汚染物質回収装置40は、マイクロプラスチック等の浮遊汚染物質を回収するためのものであり、逆洗排水ラインL4におけるサイクロン35の下流側に配置される。
【0031】
本実施形態の浮遊汚染物質回収装置40は、浮遊汚染物質を捕捉するための回収フィルタ41と、浮遊汚染物質を保管するための回収容器42と、回収フィルタ41を保持するフィルタハウジング43と、回収フィルタ41に清水を供給するための清水供給手段50と、を備える。
【0032】
回収フィルタ41は、浮遊汚染物質を回収可能なろ過精度のものが使用される。例えば、回収フィルタ41のろ過精度は200μm~800μmであることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、ろ過精度300μm~500μmの金属製のメッシュフィルタが回収フィルタ41に用いられる。なお、当該構成に限定されるわけではなく、スプリングフィルタや他の方式のフィルタを回収フィルタ41に用いることができる。例えば、ろ過装置12のフィルタ120のろ過精度と回収フィルタ41のろ過精度を同じにしてもよいし、海洋でのマイクロプラスチックサンプリングに使用されるニューストンネット(目開き0.3mm)にあわせて目開き0.3mmの金属メッシュフィルタとしてもよい。なお、本実施形態において、ろ過精度は、表示孔径値の粒子の粒子除去効率が99%以上捕集できることを示すものとする。
【0034】
フィルタハウジング43は、回収フィルタ41を着脱自在に保持する。着脱自在の構成としては、例えばカートリッジ形式等、適宜の方式を採用できる。
【0035】
回収容器42は、清水供給手段50によって回収フィルタ41に供給される清水による逆洗によって得られる浮遊汚染物質を含む液体を保管する容器である。回収容器42における浮遊汚染物質を含む液体の回収方法の詳細については、後述する。
【0036】
清水供給手段50は、回収フィルタ41に清水を供給する装置である。本実施形態の清水供給手段50は、清水タンク51と、清水共通ラインL5と、清水ポンプ52と、清水順洗ラインL6と、順洗用開閉弁53と、清水逆洗ラインL7と、清水逆洗用開閉弁54と、清水排水ラインL8と、を備える。
【0037】
清水タンク51は、所定量の清水を貯留できるタンクである。清水タンク51に貯留される清水は、船舶2に取り入れられる海水や汽水に比べ、塩分濃度が充分低い水(真水)であることが好ましい。例えば、船舶2内の造水装置で製造された水であってもよい。
【0038】
清水共通ラインL5は、清水タンク51に貯留された清水を回収フィルタ41に供給するためのラインである。清水共通ラインL5の一側の端部(上流側の端部)は清水タンク51に接続され、清水共通ラインL5の他側の端部(下流側の端部)は清水順洗ラインL6と清水逆洗ラインL7に分岐している。
【0039】
清水ポンプ52は、清水共通ラインL5に配置される。清水ポンプ52が駆動することにより、清水が清水共通ラインL5から清水順洗ラインL6又は清水逆洗ラインL7を通じて回収フィルタ41に送られる。
【0040】
清水順洗ラインL6は、ろ過装置12の(逆洗排水)のろ過方向と同じ方向で回収フィルタ41に清水を供給するラインである。清水順洗ラインL6の一側の端部(上流側の端部)は、清水共通ラインL5を介して清水タンク51に接続される。清水順洗ラインL6の他側の端部(下流側の端部)は、浮遊汚染物質回収装置40における回収フィルタ41の上流側(ろ過装置12側又はサイクロン35側)に接続される。
【0041】
順洗用開閉弁53は、清水順洗ラインL6に配置される。以下、清水順洗ラインL6を通じて回収フィルタ41に清水を供給する処理を清水順洗処理とする。回収フィルタ41の清水順洗処理を行わない場合は順洗用開閉弁53が閉状態である。回収フィルタ41に対して清水順洗処理を行う場合は、順洗用開閉弁53が閉状態から開状態に移行する。
【0042】
清水逆洗ラインL7は、ろ過装置12の(逆洗排水)のろ過方向と逆方向で回収フィルタ41に清水を供給するラインである。清水逆洗ラインL7の一側の端部(上流側の端部)は、清水共通ラインL5を介して清水タンク51に接続される。清水逆洗ラインL7の他側の端部(下流側の端部)は、浮遊汚染物質回収装置40における回収フィルタ41の下流側(逆洗排水ラインL4の出口側)に接続される。
【0043】
清水逆洗用開閉弁54は、清水逆洗ラインL7に配置される。以下、清水逆洗ラインL7を通じて回収フィルタ41に清水を供給する処理を清水逆洗処理とする。回収フィルタ41の清水逆洗処理を行わない場合は清水逆洗用開閉弁54が閉状態である。回収フィルタ41に対して清水逆洗処理を行う場合は、清水逆洗用開閉弁54が閉状態から開状態に移行する。
【0044】
清水排水ラインL8は、清水逆洗処理で回収フィルタ41を逆洗した後の逆洗清水を回収容器42に送るラインである。清水排水ラインL8の一側の端部(上流側の端部)は回収フィルタ41の上流側(ろ過装置12側又はサイクロン35側)に接続され、他側の端部(下流側の端部)は回収容器42に接続される。
【0045】
本実施形態の清水供給手段50は、制御装置100によって清水を供給するための処理が制御される。
【0046】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM及び記憶装置等からなるコンピュータである。制御装置100は、ろ過装置12、処理水逆洗用開閉弁31、逆洗ポンプ32、浮遊汚染物質回収装置40、清水ポンプ52、順洗用開閉弁53及び清水逆洗用開閉弁54に電気的に接続されており、各種制御を実行する。また、制御装置100は、ろ過装置12の制御と、それ以外(処理水逆洗用開閉弁31、逆洗ポンプ32、浮遊汚染物質回収装置40、清水ポンプ52、順洗用開閉弁53及び清水逆洗用開閉弁54等)の制御を連携する別々の制御装置としても良い。
【0047】
<清水順洗処理による回収制御>
次に、清水順洗ラインL6を通じて回収フィルタ41に清水を供給する清水順洗処理によって浮遊汚染物質を回収する制御について説明する。図2は、本実施形態の浮遊汚染物質回収装置40の清水順洗処理の一例を示すフローチャートである。
【0048】
制御装置100は、ユーザの操作又は予め設定されるスケジュール等により浮遊汚染物質を回収する指令を受信すると、逆洗排水制御を開始する(ステップS1)。この逆洗排水制御において、制御装置100は、処理水逆洗用開閉弁31が閉状態から開状態に移行するとともに、逆洗ポンプ32を駆動する処理を実行する。
【0049】
ステップS1の処理が実行されることにより、ろ過装置12のフィルタ120が処理水によって逆洗される。フィルタ120を逆洗した後の逆洗排水は、逆洗排水ラインL4に配置されるサイクロン35を通過した後、回収フィルタ41を通過して船舶2の外側に排出される。回収フィルタ41では、逆洗排水に含まれる浮遊汚染物質が捕捉される。本実施形態では、フィルタ120の逆洗排水の全量が、浮遊汚染物質回収装置40の回収フィルタ41を通過することになる。
【0050】
ステップS1の処理の後、制御装置100は清水順洗制御を開始する(ステップS2)。この清水順洗制御において、制御装置100は、順洗用開閉弁53を開状態に制御するとともに清水逆洗用開閉弁54の閉状態を維持する。そして、清水ポンプ52を駆動して回収フィルタ41に順方向(逆洗排水のろ過方向と同じ方向)で清水を供給する。回収フィルタ41を順方向で通過した清水は、そのまま逆洗排水ラインL4を通じて船舶2の外側に排出されることになる。
【0051】
ステップS2の処理が実行されることにより、回収フィルタ41及びろ過物は清水によって塩分を除去され、塩分を含む順洗後の水は船舶2の外に排出される。
【0052】
ステップS2の処理の後、制御装置100は清水順洗制御が終了したか否かを所定の条件に基づいて判定する(ステップS3)。洗浄に充分な清水が回収フィルタ41に供給された場合、処理はステップS4に移行する。洗浄に充分な清水が回収フィルタ41に供給されていない場合は清水供給制御を継続する。所定の条件はタイマによって定められた所定時間でもよいし、回収フィルタ41の下流側に水質センサ(電気伝導率センサ等)を配置し、当該水質センサの検出値に基づいて処理が完了したか否かを判定してもよい。
【0053】
処理がステップS4に移行すると、制御装置100は、浮遊汚染物質回収装置40から回収フィルタ41を取り外すために清水の供給を停止する制御を行う。本実施形態では、順洗用開閉弁53を開状態から閉状態に移行させるとともに、清水ポンプ52の駆動を停止する。これによって塩分が除去された回収フィルタ41を浮遊汚染物質回収装置40から回収できる状態となる。ユーザは、フィルタハウジング43から浮遊汚染物質を捕捉した回収フィルタ41を取り出すことで、焼却処理等、適宜の方法で浮遊汚染物質の廃棄処理を行う。
【0054】
<清水逆洗処理による回収制御>
次に、清水逆洗ラインL7を通じて回収フィルタ41に清水を供給する清水逆洗処理によって浮遊汚染物質を回収する制御について説明する。図3は、本実施形態の浮遊汚染物質回収装置40の清水逆洗処理の一例を示すフローチャートである。
【0055】
制御装置100は、ユーザの操作又は予め設定されるスケジュール等により浮遊汚染物質を回収する指令を受信すると、逆洗排水制御を開始する(ステップS21)。このステップS21の逆洗排水制御は、図2のフロー中におけるステップS1と同様の処理である。
【0056】
ステップS21の処理の後、制御装置100は清水順洗制御を開始する(ステップS2)。この清水順洗制御において、制御装置100は、順洗用開閉弁53を開状態に制御するとともに清水逆洗用開閉弁54の閉状態を維持する。そして、清水ポンプ52を駆動して回収フィルタ41に順方向(逆洗排水のろ過方向と同じ方向)で清水を供給する。回収フィルタ41を順方向で通過した清水は、そのまま逆洗排水ラインL4を通じて船舶2の外側に排出されることになる。ステップS22の処理が実行されることにより、回収フィルタ41及びろ過物は清水によって塩分を除去され、塩分を含む順洗後の水は船舶2の外に排出される。
【0057】
ステップS22の処理の後、制御装置100は清水逆洗制御を開始する(ステップS23)。この清水逆洗制御において、制御装置100は、清水逆洗用開閉弁54を開状態に制御するとともに順洗用開閉弁53の閉状態を維持する。また、回収フィルタ41を逆方向に通過した清水が回収容器42に回収されるように、浮遊汚染物質回収装置40内の経路を切り替える処理を実行する。そして、清水ポンプ52を駆動して回収フィルタ41に逆方向(逆洗排水のろ過方向の逆方向)で清水を供給する。回収フィルタ41を逆方向に通過した清水は、回収容器42に回収される。
【0058】
ステップS23の処理が実行されることにより、ステップS21の逆洗排水制御で回収フィルタ41に捕捉された浮遊汚染物質が清水によって逆方向に押し流され、清水排水ラインL8を通じて清水とともに回収容器42に回収される。
【0059】
ステップS23の処理の後、制御装置100は清水逆洗制御が終了したか否かを所定の条件に基づいて判定する(ステップS24)。回収フィルタ41から浮遊汚染物質を回収するために充分な清水が回収フィルタ41に供給された場合、処理はステップS24に移行する。浮遊汚染物質の回収のために充分な清水が回収フィルタ41に供給されていない場合は清水逆洗制御を継続する。
【0060】
本実施形態では、ステップS21の逆洗排水制御で回収フィルタ41を順方向で通過した通水量に対し、清水逆洗制御で回収フィルタ41を逆方向で通過した通水量が300分の1以下となるように、所定の条件が設定される。なお、所定の条件はタイマによって定められた所定時間でもよいし、回収フィルタ41と回収容器42の間に水質センサを配置し、当該水質センサ(濁度センサ等)の検出値に基づいて処理が完了したか否かを判定してもよい。また、回収容器42は、1回の清水逆洗制御で回収フィルタ41に供給される清水の全量を回収できるように構成しておくことで、回収フィルタ41から浮遊汚染物質を確実に除去し、回収容器42に回収することができる。
【0061】
処理がステップS25に移行すると、制御装置100は、回収容器42に回収した清水を処理するために、清水の供給を停止する制御を行う。本実施形態では、清水逆洗用開閉弁54を開状態から閉状態に移行させるとともに、清水ポンプ52の駆動を停止する。ステップ逆洗排水制御で回収フィルタ41を順方向に通過する通水量よりも、清水逆洗制御で回収フィルタ41を逆方向に通過する通水量を小さくすることで、浮遊汚染物質を濃縮処理することができる。例えば、回収容器42に回収した浮遊汚染物質含有水を焼却する処理(蒸発処理)を行う。浮遊汚染物質含有水は逆洗排水制御で排水される逆洗排水量に比べ量が少ないので、処理量を抑制した効率的な浮遊汚染物質の廃棄処理が実現される。
【0062】
以上説明したように、浮遊汚染物質回収装置40は、以下のように構成される。即ち、浮遊汚染物質回収装置40は、環境水をろ過するろ過装置12のフィルタ120を逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインL4に配置される回収フィルタ41と、回収フィルタ41に清水を供給する清水供給手段50と、を備える。
【0063】
また、浮遊汚染物質回収システム1は、環境水を船舶2に取り入れる取水ラインL1と、取水ラインL1に配置される取水ポンプ11と、取水ラインL1の下流側に配置され、該取水ラインL1を流通する環境水をろ過するフィルタ120を有するろ過装置12と、ろ過装置12においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンク13と、ろ過装置12と処理水貯留タンク13とを接続する処理水ラインL2と、ろ過装置12にフィルタ120のろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインL3と、上流側がろ過装置12におけるフィルタ120よりも上流側に接続され、逆洗ラインL3からろ過装置12に供給された逆洗後の処理水である逆洗排水を排出する逆洗排水ラインL4と、逆洗排水ラインL4に配置される回収フィルタ41及び回収フィルタ41に清水を供給する清水供給手段50を有する浮遊汚染物質回収装置40と、を備える。
【0064】
本実施形態の浮遊汚染物質回収装置40又は浮遊汚染物質回収システム1により、ろ過装置12の逆洗水から浮遊汚染物質を効率的に回収でき、浮遊汚染物質を含む逆洗排水が船舶2の外側に排出される事態の発生を効果的に防止できる。
【0065】
また、本実施形態の清水供給手段50は、回収フィルタ41の上流側に接続され、回収フィルタ41の上流側から該回収フィルタ41に清水を供給する清水順洗ラインL6を有する。
【0066】
これにより、回収フィルタ41に対して順方向で清水を通過させることにより、回収フィルタ41から塩分を除去できるので、焼却処理時のダイオキシンの発生及び塩分による焼却炉の劣化を抑制することができる。更に、ダイオキシンの発生を防止することにより、船舶2の航行中での焼却処理も可能となる。
【0067】
また、本実施形態の清水供給手段50は、回収フィルタ41の下流側に接続され、回収フィルタ41の下流側から該回収フィルタ41に清水を供給する清水逆洗ラインL7と、清水逆洗ラインL7から供給されて回収フィルタ41を逆洗した後の逆洗清水を排出する清水排水ラインL8と、清水排水ラインL8を流通する逆洗清水を回収する回収容器42と、を有する。
【0068】
これにより、逆洗排水制御における回収フィルタ41の順方向の通水量に対して清水逆洗制御にける回収フィルタ41の逆方向の通水量を低くすることにより、浮遊汚染物質を含む浮遊汚染物質含有水を濃縮することができる。また、回収容器42で浮遊汚染物質含有水を保管して試料として管理することもできるし、回収容器42に貯留された浮遊汚染物質含有水を蒸発させる処理を行って浮遊汚染物質を処理することもできる。また、回収容器42に濃縮後の浮遊汚染物質含有水を貯留しておくことができるので、清水逆洗制御後にすぐに逆洗排水制御を開始することもできる。これによって浮遊汚染物質の回収効率をより一層向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態の浮遊汚染物質回収装置40は、逆洗排水ラインL4における回収フィルタ41よりも上流側に配置され、該逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水に含まれる固形物を分離するセパレータとしてのサイクロン35を更に備える。
【0070】
これにより、サイクロン35である程度の固形物を除去することができ、回収フィルタ41の負荷が軽減され効率的に浮遊汚染物質を捕捉することができる。逆洗排水に砂等比重が大きく粒径の大きい物質が多く存在する場合であっても、サイクロン35の後段に位置する回収フィルタ41の負荷を抑制することができる。
【0071】
本実施形態の回収フィルタ41のろ過精度は、200μm~800μmである。
【0072】
これにより、自然由来の生物や有機物等によるフィルタ目詰まりを抑制しつつ、浮遊汚染物質を確実に回収することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0074】
上記実施形態の図3のフローチャートでは、清水順洗制御を行った後に清水逆洗制御を行う方式を説明したが、場合によっては清水順洗制御を省略してもよい。このように、制御の方式も適宜変更できる。
【0075】
また、上記実施形態において、サイクロン35が浮遊汚染物質回収装置40の上流側に配置される構成を説明したが、サイクロン式ではないセパレータを用いることもできる。また、場合によってはサイクロン35を省略することも可能である。このように、上記実施形態が備える各構成も適宜変更できる。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0076】
図4は、第1変形例の浮遊汚染物質回収システム1を示す模式図である。図5は、第2変形例の浮遊汚染物質回収システム1を示す模式図である。上記実施形態では、清水供給手段50が清水順洗制御及び清水逆洗制御の両方を実行する構成を説明したが、この構成に限定されるわけではない。図4に示すように、上記実施形態の清水供給手段50から清水逆洗ラインL7と、清水逆洗用開閉弁54と、清水排水ラインL8と、回収容器42と、を省略し、清水順洗制御のみを行う構成としてもよい。この場合、清水順洗後に回収フィルタ41を取り外し、フィルタ120ごと浮遊汚染物質を回収する。同様に、図5に示すように、上記実施形態の清水供給手段50から清水順洗ラインL6と、順洗用開閉弁53と、を省略し、清水逆洗制御のみを行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 浮遊汚染物質回収システム
2 船舶
11 取水ポンプ
12 ろ過装置
13 処理水貯留タンク
40 浮遊汚染物質回収装置
41 回収フィルタ
50 清水供給手段
120 フィルタ
L1 取水ライン
L2 処理水ライン
L3 逆洗ライン
L4 逆洗排水ライン

図1
図2
図3
図4
図5