(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067793
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ガス充填システム
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20220426BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20220426BHJP
B67D 7/32 20100101ALI20220426BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301Z
B67D7/32 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176589
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】瀧 小緒里
【テーマコード(参考)】
3E083
3E172
【Fターム(参考)】
3E083AB15
3E083AD30
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172EA14
3E172EA24
3E172EA35
3E172KA33
(57)【要約】
【課題】水素ステーションのスタッフ又は顧客が入力せずとも車載容器の検査有効期限を正しく判断することができ、水素ガス等の燃料ガスを車両の燃料タンク等に安全に充填することができるガス充填システムを提供する。
【解決手段】車両Vの自動車登録番号標を撮影するカメラ4と、予め個々の車両の自動車登録番号と車載容器の検査有効期限データとを関連付けて記録し、カメラで撮影された自動車登録番号標に記載された自動車登録番号に対応する車載容器の検査有効期限データと、計時手段で計時された現在時刻データとを比較し、現在時刻が有効期限内の場合に充填可能信号を出力するサーバ5と、サーバからの充填可能信号を受けてガス充填を行うガス充填装置2とを備えるガス充填システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動車登録番号標を撮影するカメラと、
予め個々の車両の自動車登録番号と該車両の車載容器の検査有効期限データとを関連付けて記録し、前記カメラで撮影された自動車登録番号標に記載された自動車登録番号に対応する車載容器の検査有効期限データと、計時手段で計時された現在時刻データとを比較し、現在時刻が有効期限内の場合に充填可能信号を出力するサーバと、
該サーバからの充填可能信号を受けてガス充填を行うガス充填装置とを備えることを特徴とするガス充填システム。
【請求項2】
前記車両の自動車登録番号と、該車両の車載容器の検査有効期限データは、携帯端末より前記サーバへ出力され、
該車両の自動車登録番号及び車載容器の検査有効期限データを受けた前記サーバは、前記車載容器の検査有効期限データと、計時手段で計時された現在時刻データとを比較し、現在時刻が有効期限内の場合に前記携帯端末に充填可能データを出力し、現在時刻が有効期限外の場合に前記携帯端末に充填不可データを出力することを特徴とする請求項1に記載のガス充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス等の燃料ガスを車両の燃料タンク等に充填するガス充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題に対応する車両として、燃料電池車(FCV)の開発が活発に行われている。燃料電池車のさらなる普及に向け、燃料ガスを供給する水素ステーションの規制が緩和され、条件を満たしたドライバーが自ら水素充填を行う「セルフ式」が解禁され、安全かつコンパクトなガス充填装置の開発が望まれていた。そこで、本出願人は安全かつコンパクトで、表示ユニットのデザイン度の高いガス充填装置を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、燃料電池車には車載容器が搭載されており、この車載容器は一定期間ごとに検査を受け、合格したものでないと燃料の充填が禁止されている。車載容器検査有効期限は、燃料充填口近くに記載されており、水素ステーションのスタッフ又は顧客が目視で有効期限を確認し、ガス充填システムに入力していた。
【0005】
しかし、目視での確認のため、見間違いが発生したり、手入力のため、入力ミスが生じてしまったりすると、本来は有効期限が過ぎているにも拘わらず、燃料の充填が許可されてしまう恐れがあった。また、人間が入力しているため、故意に車載容器検査有効期限が延ばされてしまうことを防止できなかった。有効期限が切れている車載容器への燃料の充填は、燃料の漏洩や火災・爆発を招き、重大な事故につながりかねない。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、水素ステーションのスタッフ又は顧客が入力せずとも車載容器の検査有効期限を正しく判断することができ、水素ガス等の燃料ガスを車両の燃料タンク等に安全に充填することができるガス充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ガス充填システムであって、車両の自動車登録番号標を撮影するカメラと、予め個々の車両の自動車登録番号と該車両の車載容器の検査有効期限データとを関連付けて記録し、前記カメラで撮影された自動車登録番号標に記載された自動車登録番号に対応する車載容器の検査有効期限データと、計時手段で計時された現在時刻データとを比較し、現在時刻が有効期限内の場合に充填可能信号を出力するサーバと、該サーバからの充填可能信号を受けてガス充填を行うガス充填装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車載容器の検査有効期限をシステムが正しく判断することができるため、検査有効期限を水素ステーションのスタッフ又は顧客が入力せずとも安全なガス充填が可能となる。また、車両の自動車登録番号と車載容器の検査有効期限を紐づけしているため、車両の運転者に関わらずガス充填が可能になる。さらに、なりすまし防止策としてのパスワード入力が不要となるなど、来店時のガス充填作業時間と手間を軽減することができる。
【0009】
上記ガス充填システムにおいて、前記車両の自動車登録番号と、該車両の車載容器の検査有効期限データは、携帯端末より前記サーバへ出力され、該車両の自動車登録番号及び車載容器の検査有効期限データを受けた前記サーバは、前記車載容器の検査有効期限データと、計時手段で計時された現在時刻データとを比較し、現在時刻が有効期限内の場合に前記携帯端末に充填可能データを出力し、現在時刻が有効期限外の場合に前記携帯端末に充填不可データを出力することができる。これによって、携帯端末で充填可能か否かが判り、充填不可(検査が必要)の場合には、充填前に検査を受けるなどの対応が可能になる。また、ガスステーションに来店する前に自動車登録番号及び車載容器の検査有効期限データを登録することができるため、来店した際の登録作業が不要となりガス充填時の充填準備が簡略化される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、水素ステーションのスタッフ又は顧客が入力せずとも車載容器の検査有効期限を正しく判断することができ、水素ガス等の燃料ガスを車両の燃料タンク等に安全に充填することなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るガス充填システムの一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示すガス充填システムにおける事前登録の説明図である。
【
図3】
図1に示すガス充填システムの事前登録動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示すガス充填システムのガス充填ステーション来店時の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示すガス充填システムの充填動作を示すフローチャートである。
【
図8】「充填終了後の操作説明」画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明に係るガス充填システムによって、燃料電池車に水素ガスを充填する場合を例にとって説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るガス充填システムの一実施の形態を示し、このガス充填システム1は、ガス充填装置2と、ガス充填装置2に載置される屋外データ入出力装置3と、燃料電池車Vの自動車登録番号標(以下「ナンバープレート」という。)を撮影するカメラ4と、屋外データ入出力装置3及びカメラ4と通信するサーバ5とで構成される。
【0014】
ガス充填装置2は、水素ガスを予め所定の圧力で貯蔵した供給タンクに供給管路を介して接続される充填ノズルと、供給管路に接続された流量計測手段、流量調整弁等を備え、燃料電池車Vの車載容器と供給タンクとの差圧を利用し、屋外データ入出力装置3からの出力で水素ガスを充填する。
【0015】
屋外データ入出力装置3は、ガス充填設定データの入出力を制御するために設けられ、ガス充填作業に付帯する各種設定、料金精算等を行う。また、この屋外データ入出力装置3には、ガス充填に関する操作案内や注意事項を表示する表示手段が設けられる。
【0016】
カメラ4は、燃料電池車Vのナンバープレートを撮影するために設けられ、撮影画像をサーバ5に出力する。
【0017】
クラウドを構成するサーバ5は、カメラ4から入力される撮影画像から燃料電池車Vのナンバープレートを抽出し、抽出したナンバープレートに記載の自動車登録番号(以下「車両ナンバー」という。)から燃料電池車Vの車載容器検査有効期限が有効期限内か否かを判断するために設けられる。
【0018】
次に、上記構成を有するガス充填システム1の動作について説明する。尚、以下のフローチャートにおいて、ルートが分岐するステップにおいては、下方向がYes、横方向がNoに対応する。
【0019】
図2及び
図3に示すように、顧客は水素ステーションを利用する前に事前登録を行う。顧客が所有する携帯端末6により、燃料電池車Vの車載容器検査有効期限とナンバープレートを撮影し(ステップS1)、撮影データをサーバ5に出力する(ステップS2)。
【0020】
サーバ5は、ステップS11において、携帯端末6から撮影データが入力されると(ステップS11;Yes)、撮影データから車両ナンバーと車載容器検査有効期限を抽出し、これらを関連付けて保存する(ステップS12)。次に、ステップS13において、現在時刻が車載容器検査有効期限内か否かを判定し、判定結果を携帯端末6に出力する(ステップS14、S15)。
【0021】
携帯端末6のステップS3において、サーバ5から車載容器検査有効期限内/外データが入力されると(ステップS3;Yes)、その内容を表示する(ステップS4)。ここで、表示する内容は、車両ナンバー、車載容器検査有効期限、及び期限内/外の判定結果であり、期限外である場合には検査を受けなければ充填不可であり、検査を促すメッセージも表示する。
【0022】
次に、上記事前登録後、顧客の燃料電池車Vが水素ステーションに来店した場合について説明する。
図4のカメラ4のステップS21において、燃料電池車Vが停車すると(ステップS21;Yes)、燃料電池車Vのナンバープレートを撮影し、撮影データをサーバ5に出力し(ステップS22)、カメラ4の動作を終了する。
【0023】
サーバ5のステップS31において、カメラ4から撮影データが入力されると(ステップS31;Yes)、サーバ5は撮影データから車両ナンバーを特定し、車載容器検査有効期限を抽出する(ステップS32)。ステップS33において、車載容器検査有効期限内か否かを判定し、判定結果を屋外データ入出力装置3に出力して動作を終了する。
【0024】
サーバ5から車載容器有効期限外であるとの判定結果が入力された屋外データ入出力装置3は(ステップS41;No)、車載容器検査有効期限外である旨を報知し(ステップS42)、動作を終了する。一方、屋外データ入出力装置3のステップS41において、車載容器有効期限内であるとの判定結果が入力されると(ステップS41;Yes)、充填可能であるとして、
図5の(1)へ進む。
【0025】
次に、ガス充填動作について、
図5を中心に参照しながら説明する。
【0026】
図5の屋外データ入出力装置3のステップS51において、顧客のクレジットカード等の精算カードが読み取られると(ステップS51;Yes)、ステップS52の充填準備案内に進む。
【0027】
ステップS52の充填準備案内では、
図6に示すように、「静電気除去シートにふれてから両手でノズルをとって充填を行ってください。」という充填作業の説明を表示すると共に、音声で案内を行う。そして、顧客によって動画確認ボタンが押下された場合には(ステップS53;Yes)、
図7に示すように、充填操作の動画を再生する(ステップS54)。これによって、顧客が充填時に操作の仕方に不安がある場合には、動画で操作方法を確認することで、不安なく安全に燃料電池車Vに燃料を充填することができる。
【0028】
上記充填作業の音声案内(ステップS52)及び動画再生(ステップS54)の後、ガス充填装置2において顧客が充填ノズルをノズル掛けから外し、ノズルスイッチ(SW)がONになり(ステップS71;Yes)、充填ノズルの接続が行われるまで待つための時間t1になると(ステップS72;Yes)、車載容器に充填ノズルが接続されたか否かを判断する(ステップS73)。
【0029】
充填ノズルが接続された場合には(ステップS73;Yes)、屋外データ入出力装置3にノズル接続信号を出力し(ステップS75)、充填ノズルが接続されていない場合には(ステップS73;No)、屋外データ入出力装置3にノズル接続不良信号を出力する(ステップS74)。
【0030】
次に、屋外データ入出力装置3のステップS55において、ノズル接続信号が入力された場合には(ステップS55;Yes)、ノズルが接続されたことを表示する(ステップS57)。ノズル接続不良信号が入力された場合には(ステップS55;No)、ノズル接続が不良であることを表示し(ステップS56)、ステップS55に戻る。
【0031】
ステップS57でノズルの接続が表示された後、ステップS58で顧客によって充填準備完了ボタンが押下されると(ステップS58;Yes)、ガス充填装置2に充填許可信号を出力する(ステップS59)。ガス充填装置2は、屋外データ入出力装置3から充填許可信号が入力されると(ステップS76;Yes)、帰零を行い(ステップS77)、スタートSW(スイッチ)が押下されると(ステップS78;Yes)、流量調整弁等のバルブを開く(ステップS79)。
【0032】
ステップS80において、流量計に流量パルスが入力され、ステップS81において、表示器に計数表示がなされ、流量計への流量パルスの入力が停止すると(ステップS80;No)、屋外データ入出力装置3に充填終了信号を出力する(ステップS82)。
【0033】
屋外データ入出力装置3は、ガス充填装置2からの充填終了信号の入力があると(ステップS60;Yes)、
図8に示すように、「ノズルは両手で取り扱いしてください。~」という充填終了後の作業の説明を表示すると共に、音声案内し(ステップS61)、顧客によって動画確認ボタンが押下された場合には(ステップ62;Yes)、作業内容の動画を再生する(ステップS63)。
【0034】
顧客が充填ノズルをノズル掛けに戻し、ガス充填装置2のノズルスイッチ(SW)がOFFになると(ステップS83;Yes)、流量調整弁等のバルブを閉じ(ステップS84)、屋外データ入出力装置3にノズル掛かり信号と、充填量(kg)と金額(円)を含む充填データを出力し(ステップS85)、動作を終了する。屋外データ入出力装置3は、ガス充填装置2からノズル掛かり信号及び充填データが入力されると(ステップS64;Yes)、顧客用の領収書(伝票)を発行し(ステップS65)、動作を終了する。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、水素ステーションのスタッフ又は顧客が入力せずとも車載容器の検査有効期限を正しく判断することができ、充填をする顧客が充填作業について不慣れであったとしても、間違うことなく安全に燃料電池車Vに水素ガスを充填することができる。
【0036】
また、水素ステーションの売り上げ管理に関しては記載していないが、従来通りPOSで管理してもよく、クラウドを構成するサーバ5を利用して管理することもできる。
【0037】
また、精算カード(クレジットカード、プリペイドカード、デビットカード等)を用いる場合を例示したが、現金決済にも対応することができる。さらに、満充填の場合を例示したが、金額、質量を指定するプリセット充填にも対応することができる。
【0038】
さらに、サーバ5からの充填可能信号を後方設備又はガス充填装置が受けてガス充填を行うようにしてもよい。
【0039】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0040】
1 ガス充填システム
2 ガス充填装置
3 屋外データ入出力装置
4 カメラ
5 サーバ
6 携帯端末
V 燃料電池車