(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067895
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】運転手管理支援システム、処理装置および運転手管理支援処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220426BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20220426BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G16H50/20
G06Q50/30
A61B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176754
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】597132849
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 正己
(72)【発明者】
【氏名】小原 博利
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】左近允 晃
(72)【発明者】
【氏名】若林 洋輔
【テーマコード(参考)】
4C038
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PQ04
4C038PS00
4C038VA15
4C038VB03
4C038VC01
4C038VC05
5L049CC41
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】車両を運転する運転手の心身状態の維持管理を支援する。
【解決手段】車両に搭載され、車両を運転する運転手の画像を撮影し、画像から運転手のバイタル情報を取得するドライブレコーダー10と、バイタル情報に基づいて運転手の心身状態の不調を予測するクラウドシステム20と、運転手の不調を予測した結果に基づく情報を提示する事業者システム40とを有し、クラウドシステム20は、学習データを学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成し、該不調予測モデルを用いて運転手の心身状態の不調を予測し、事業者システム40は、予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を取得し、該実績情報を学習データとしてクラウドシステム20に提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両を運転する運転手の画像を撮影し、前記画像から前記運転手のバイタル情報を取得する車載装置と、
前記バイタル情報に基づいて前記運転手の心身状態の不調を予測する処理装置と、
前記運転手の不調を予測した結果に基づく情報を提示する管理装置と、を有し、
前記処理装置は、学習データを学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成し、該不調予測モデルを用いて前記運転手の心身状態の不調を予測し、
前記管理装置は、前記予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を取得し、該実績情報を前記学習データとして前記処理装置に提供する、
運転手管理支援システム。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記バイタル情報の指標値を所定のしきい値と比較することにより前記運転手の心身状態の不調を予測する第1予測部と、
前記バイタル情報を前記不調予測モデルに入力し、前記不調予測モデルの出力から、前記運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得する第2予測部と、
前記実績情報に基づき前記不調予測モデルによる予測精度の良否を設定し、前記予測精度が良に設定されていれば前記第2予測部による予測結果を前記管理装置に提供し、前記予測精度が不良に設定されていれば前記第1予測部による予測結果を前記管理装置に提供する予測制御部と、
を有する、
請求項1に記載の運転手管理支援システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記予測精度が不良に設定されている間にも前記第2予測部が前記不調予測モデルの出力から前記運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得し、前記第1予測部にて不調が予測されたときに得られる実績情報を、前記第2予測部による予測の結果と照合して前記予測精度の良否を設定する、
請求項2に記載の運転手管理支援システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記予測精度が不良に設定されている間にも前記第2予測部が前記不調予測モデルの出力から前記運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得し、前記第1予測部にて不調が予測されたときに得られる実績情報を、前記第2予測部による予測の結果と組み合わせて前記学習データとする、
請求項2に記載の運転手管理支援システム。
【請求項5】
前記車載装置は、前記画像から前記バイタル情報を算出し、該バイタル情報が所定の条件を満たす場合、当該画像を保存する、
請求項1に記載の運転手管理支援システム。
【請求項6】
前記処理装置は、前記画像から前記車両の周囲の環境を特定し、前記環境と前記バイタル情報との相関に基づいて前記運転手の傾向を特定する、
請求項5に記載の運転手管理支援システム。
【請求項7】
前記運転手が操作するモバイル端末を更に有し、
前記処理装置は、前記モバイル端末からの要求に応じて前記傾向を示す傾向情報を前記モバイル端末に送信する、
請求項6に記載の運転手管理支援システム。
【請求項8】
前記処理装置がクラウド上に実現される、
請求項1に記載の運転手管理支援システム。
【請求項9】
自動車に搭載され、前記自動車を運転する運転手の動画を撮影し、前記動画から前記運転手のバイタル情報を取得する車載装置、および、前記運転手の不調を予測した結果に基づく情報を提示する管理装置と通信可能であり、前記バイタル情報に基づいて前記運転手の不調を予測する処理装置であって、
前記管理装置により取得された、前記予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を、学習データとして学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成する学習部と、
前記不調予測モデルを用いて前記運転手の不調を予測する予測部と、
を有する処理装置。
【請求項10】
自動車に搭載され、前記自動車を運転する運転手の動画を撮影し、前記動画から前記運転手のバイタル情報を取得する車載装置、および、前記運転手の不調を予測した結果に基づく情報を提示する管理装置と通信可能であり、前記バイタル情報に基づいて前記運転手の不調を予測する処理装置が実行する運転手管理支援処理方法であって、
前記管理装置により取得された、前記予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を、学習データとして学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成し、
前記不調予測モデルを用いて前記運転手の心身状態の不調を予測する、
運転手管理支援処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を運転する運転手の画像に基づいて運転手の心身状態の不調を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人物を撮影した動画からその人物の心身状態を表すバイタルサインの情報(以下、バイタル情報という)を取得する技術が考えられている(非特許文献1参照)。バイタル情報は、例えば、心拍、血圧、体温、血中酸素濃度、ストレスレベル、血中アルロール濃度などである。この技術により、それを着用した人物の心拍や体表温度を測定するセンシングウェアや、指を挟んで人物の血中酸素濃度を測定するパルスオキシメーターといった専用デバイスを用いることなく、カメラで撮影した動画から精度の高いバイタル情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】東北大学サイバーサイエンスセンター 吉沢 誠,東北大学 大学院工学研究科 杉田 典大、「血行状態モニタリング装置“魔法の鏡”の開発」、光技術コンタクト誌 2017年10月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タクシー会社、バス運行業者、運送業者などでは、業務を安全に遂行するためにも、タクシー、バス、トラックなどの自動車を運転する運転手の心身状態を良好に維持管理することが重要である。ところが、運転手の業務中の心身状態は運転手本人しか把握できない。
【0005】
非特許文献1には、そこに開示された技術を、自動車内のカメラで運転手の体調を監視することへ応用することを想定していることが記載されている。しかしながら、非特許文献1は、測定された数値を実際に健康予報に利用する手法を開示しておらず、その実現を今後の課題としている。
【0006】
本開示のひとつの目的は、車両を運転する運転手の心身状態の維持管理を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のひとつの態様による運転手管理支援システムは、車両に搭載され、前記車両を運転する運転手の画像を撮影し、前記画像から前記運転手のバイタル情報を取得する車載装置と、前記バイタル情報に基づいて前記運転手の心身状態の不調を予測する処理装置と、前記運転手の不調を予測した結果に基づく情報を提示する管理装置と、を有し、前記処理装置は、学習データを学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成し、該不調予測モデルを用いて前記運転手の心身状態の不調を予測し、前記管理装置は、前記予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を取得し、該実績情報を前記学習データとして前記処理装置に提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のひとつの態様によれば、車両を運転する運転手の心身状態の維持管理を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態による運転手管理支援システムのブロック図である。
【
図2】
図1に示したドライブレコーダーのデータ保存領域の一構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示したクラウドシステムのデータ保存領域の一構成例を示す図である。
【
図4】
図1に示したクラウドシステムのメモリに保存された運転手の属性情報25の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示したクラウドシステムの運転手不調予測部30の一構成例示す図である。
【
図6】
図1に示した運転手管理支援システムのドライブレコーダーにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示したクラウドシステムにて運転手の心身状態の不調を判断して事業者システムに通知する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図1に示したクラウドシステムにて運転手の心身状態の不調を判断して事業者システムに通知する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図1に示した事業者システムにて運転手のバイタル情報を確認する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図1に示した事業者システムの労務状況管理部の制御によってディスプレイなどに表示される情報の一例を示す図である。
【
図11】
図1に示した事業者システムの労務状況管理部の制御によってディスプレイなどに表示される情報の一例を示す図である。
【
図12】
図1に示したクラウドシステムから事業者システムに運転手の心身状態の不調が通知された後の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図1に示したモバイル端末においてバイタル傾向を確認する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の運転手管理支援システムのブロック図である。
【0012】
図1に示すように、ド運転手管理支援システムは、ライブレコーダー10と、クラウドシステム20と、事業者管理システム40と、モバイル端末50とを有している。ドライブレコーダー10、事業者管理システム40およびモバイル端末50はそれぞれ、クラウドシステム20と通信可能に構成されている。
【0013】
ドライブレコーダー10は、車載装置であって、トラックやタクシー、バス、その他の自動車、あるいは鉄道などを含めた車両に搭載される。ドライブレコーダー10は、カメラ11とCPU12とメモリ13とを有している。
【0014】
カメラ11は、搭載される車両の車外および運転手を含めた車内の画像を撮影する。
【0015】
CPU12は、ドライブレコーダー10の動作を制御するものであって、動画バイタル制御部14とカメラ画像制御部15とクラウド通信制御部16とを有している。動画バイタル制御部14は、カメラ11にて撮影された運転手の画像から、運転手の心身状態を表すバイタル情報を取得する。また動画バイタル制御部14は、予め決められたしきい値を用いて、取得したバイタル情報が所定の条件を満たすかどうかを判断する。カメラ画像制御部15は、動画バイタル制御部14にて取得したバイタル情報が所定の条件を満たす場合に、カメラ11にて撮影された運転手やその周辺の画像をメモリ13内のデータ保存領域17に保存することを指示する。クラウド通信制御部16は、カメラ11にて撮影した運転手の画像と動画バイタル制御部14にて取得したバイタル情報とを、通信回線(不図示)を介してクラウドシステム20に送信する。
【0016】
メモリ13には、動画バイタル制御部14にて指示された画像が保存されたデータ保存領域17が設けられている。
【0017】
図2は、
図1に示したドライブレコーダー11のデータ保存領域17の一構成例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、
図1に示したドライブレコーダー11のデータ保存領域17には、カメラ11にて撮影された動画による動画ファイルと、静止画による静止画ファイルとが、その撮影日時が付与されて登録されている。
【0019】
クラウドシステム20は、処理装置を構成するものであって、クラウド上に実現されている。クラウドシステム20は、ドライブレコーダー通信制御部21とメモリ22とCPU23とを有している。
【0020】
ドライブレコーダー通信制御部21は、ドライブレコーダー11から送信された画像とバイタル情報と通信回線を介して受信する。
【0021】
メモリ22には、データ保存領域24が設けられているとともに、運転手の属性情報25が保存されている。
【0022】
図3は、
図1に示したクラウドシステム20のデータ保存領域24の一構成例を示す図である。
【0023】
図3に示すように、
図1に示したクラウドシステム20のデータ保存領域24には、ドライブレコーダー10から送信されてきた静止画ファイルとバイタル情報とが、クラウドシステム20における受信日時およびこれらの情報を送信したドライブレコーダー10のIDが付与されて保存されている。バイタル情報としては、例えば
図3に示すように、心拍、血中酸素濃度、血圧、体温、ストレスレベル、血中アルコール濃度が挙げられる。これらの情報は、運転手の心身状態を判別できるものである。
【0024】
図4は、
図1に示したクラウドシステム20のメモリ22に保存された運転手の属性情報25の一例を示す図である。
【0025】
図4に示すように、
図1に示したクラウドシステム20のメモリ22には、本システムにて管理される運転手の氏名、性別、生年月日、病歴が運転手の属性情報25として保存されている。
【0026】
CPU23は、クラウドシステム20の動作を制御するものであって、労務管理制御部26と運転手不調予測部30と事業者通信制御部27と運転手向け情報提供制御部28と運転手通信制御部29とを有している。労務管理制御部26は、ドライブレコーダー10から送信されてきたバイタル情報による数値を予め決められたしきい値と比較することで、運転手のバイタル情報のチェックを行う。また労務管理制御部26は、事業者システム40からの要求に応じて、メモリ22のデータ保存領域24に保存されている画像やバイタル情報を提供する。事業者通信制御部27は、労務管理制御部26から提供される画像やバイタル情報を、通信回線(不図示)を介して事業者システム40に送信する。また事業者通信制御部27は、労務管理制御部26におけるチェック結果や、運転手不調予測部30における予測結果に応じて、運転手の心身状態の不調を事業者システム40に通知する。運転手向け情報提供制御部28は、モバイル端末50からの要求に応じて、メモリ22のデータ保存領域24に保存される過去のバイタル情報や画像によって判断される天候などの環境から運転手の傾向を抽出する。運転手通信制御部29は、運転手向け情報提供制御部28にて抽出された運転手の傾向を、通信回線を介してモバイル端末50に送信する。運転手不調予測部30は、ドライブレコーダー10から送信されてきてデータ保存領域24に保存されたバイタル情報に基づいて運転手の心身状態の不調を予測する。
【0027】
図5は、
図1に示したクラウドシステム20の運転手不調予測部30の一構成例示す図である。
【0028】
図5に示すように、
図1に示したクラウドシステム20の運転手不調予測部30は、予測制御部31と第1予測部32と第2予測部33と学習部34とを有している。
【0029】
第1予測部32は、ドライブレコーダー10から送信されてきてデータ保存領域24に保存されたバイタル情報の指標値を所定のしきい値と比較することにより運転手の心身状態の不調を予測する。第2予測部33は、ドライブレコーダー10から送信されてきてデータ保存領域24に保存されたバイタル情報を不調予測モデル35に入力し、不調予測モデル35の出力から、運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得する。予測制御部31は、事業者システム40から提供された実績情報に基づき不調予測モデル35による予測精度の良否を設定し、予測精度が良に設定されていれば第2予測部33による予測結果を事業者システム40に提供し、予測精度が不良に設定されていれば第1予測部32による予測結果を事業者システム40に提供する。学習部34は、予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報を学習データとして学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成する。
【0030】
本システムは、運転手の心身状態の不調の予測を主な対象としている。そのような運転手の不調が日常的に発生するようなものでないため、必ずしも十分な学習データが早期に得られるとは限らない。そこで、本形態では、そのような事情を考慮し、不調予測モデルの予測精度が十分でない場合も想定した構成としている。具体的には、本システムは、不調予測モデルの予測精度の良否を管理し、その予測精度が良ければ不調予測モデルによる予測結果を利用し、予測精度が良くなければバイタル情報の指標値をしきい値と比較することによる予測結果を利用する。
【0031】
これにより、不調予測モデルにより十分な予測精度が得られる場合とそうでない場合のいずれにおいても、適切な予測を可能にする。また、本形態では、運転者の心身状態の不調を画像から直接予測するのではなく、一旦バイタル情報を算出し、そのバイタル情報に基づいて不調を予測するので、バイタル情報の指標値をしきい値と比較する比較的単純な予測手法の方も、バイタル情報と運転手の状態との関係に関する既存の知見を利用して実用に十分な精度の予測が可能である。
【0032】
事業者システム40は、管理装置を構成するものであって、クラウド通信制御部41とデータ保存領域42と労務状況管理部43と業務管理システム44とを有している。
【0033】
クラウド通信制御部41は、クラウドシステム20に対して、バイタル情報や画像の送信の要求、またはこれらを受信したり、運転手の心身状態の不調発生予測を受信したり、予測された不調が実際に起こったか否かを示す実績情報を送信したりする。データ保存領域42には、クラウド通信制御部41にて受信した情報や労務状況管理部43にて管理される情報が保存されている。労務状況管理部43は、クラウドシステム20に対して、バイタル情報や画像の送信を要求したり、クラウドシステム20から送信されてきてデータ保存領域42に保存されたバイタル情報を表示したり、予測された不調が実際に起こったか否かを示す実績情報を収集したりする。業務管理システム44は、運転手の業務を管理する。
【0034】
モバイル端末50は、クラウド通信制御部51とフィジカルメンタル情報表示部52とを有している。クラウド通信制御部51は、運転手の操作によって、クラウドシステム20に対して運転手の傾向を要求し、クラウドシステム20から送信されてくる運転手の傾向やバイタル情報を受信する。フィジカルメンタル表示部52は、クラウド通信制御部51にて受信した運転手の傾向をディスプレイに表示する。
【0035】
以下に、上記のように構成された運転手管理支援システムにおける処理について説明する。
【0036】
まず、ドライブレコーダー10における処理について説明する。
【0037】
図6は、
図1に示した運転手管理支援システムのドライブレコーダー10における処理を説明するためのフローチャートである。
【0038】
ドライブレコーダー10においては、カメラ11にて車内および車外の画像が撮影されている(ステップS101)。この画像としては、動画および静止画が含まれている。
【0039】
ドライブレコーダー10のカメラ11にて画像が撮影されると、動画バイタル制御部14において、カメラ11にて撮影された運転手の画像から、運転手の心身状態を表すバイタル情報が算出されることで取得される(ステップS102)。
【0040】
動画バイタル制御部14においては、バイタル情報が取得されると、取得されたバイタル情報による数値が、予め決められたしきい値と比較され、取得したバイタル情報が所定の条件を満たすかどうかが判断される(ステップS103)。
【0041】
動画バイタル制御部14にて取得されたバイタル情報による数値が、予め決められたしきい値を超えている場合、カメラ画像制御部15において、カメラ11にて撮影された運転手やその周辺の画像をメモリ13内のデータ保存領域17に保存することが指示され(ステップS104)、これらの画像がメモリ13のデータ保存領域17に保存される(ステップS105)。
【0042】
その後、クラウド通信制御部16において、カメラ11にて撮影された運転手の画像と動画バイタル制御部14にて取得されたバイタル情報とが、通信回線を介してクラウドシステム20に送信される(ステップS106)。その際、画像とバイタル情報とが、ドライブレコーダー10を識別可能なドラレコIDが付与されてクラウドシステム20に送信されることになる。
【0043】
一方、動画バイタル制御部14にて取得されたバイタル情報による数値が、予め決められたしきい値以下である場合は、カメラ11にて撮影された運転手やその周辺の画像がメモリ13内に保存されずに、カメラ11にて撮影された運転手の画像と動画バイタル制御部14にて取得されたバイタル情報とが、通信回線を介してクラウドシステム20に送信される。
【0044】
このように、ドライブレコーダー10において、カメラ11にて撮影された画像から算出されたバイタル情報が所定の条件を満たす場合、その画像を保存する構成とすることで、ドライブレコーダー10のメモリ13のデータ保存領域17を有効に利用することができる。
【0045】
次に、クラウドシステム20にて運転手の心身状態の不調を判断して事業者システム40に通知する処理について説明する。
【0046】
図7は、
図1に示したクラウドシステム20にて運転手の心身状態の不調を判断して事業者システム40に通知する処理を説明するためのフローチャートであり、運転手不調予測部30における予測を利用しない場合の処理を示す。
【0047】
ドライブレコーダー10から送信されたバイタル情報と画像とがクラウドシステム20のドライブレコーダー通信制御部21にて受信されると(ステップS201)、受信したバイタル情報と画像とがメモリ22のデータ保存領域24に保存される(ステップS202)。
【0048】
また、CPU23の労務管理制御部26において、まず、運転手の属性情報25が参照され、受信されたバイタル情報による数値が予め決められたしきい値と比較されることで、運転手のバイタル情報のチェックが行われる(ステップS203)。
【0049】
そして、受信されたバイタル情報による数値が予め決められたしきい値よりも大きな場合(ステップS204)、事業者通信制御部27から運転手の心身状態の不調が事業者システム40に通知される(ステップS205)。
【0050】
その後、ステップS201におけるドライブレコーダー10からのバイタル情報と画像の受信処理に戻る(ステップS206)。
【0051】
また、受信されたバイタル情報による数値が予め決められたしきい値以下の場合は(ステップS204)、ステップS205における処理が行われずにステップS206の処理に移行する。
【0052】
なお、本形態においては、運転手不調予測部30にて運転手の心身状態の予測を行うことが基本となるが、運転手不調予測部30における予測は学習モデルを用いて行うため、一定のデータが蓄積されている必要がある。そのため、一定のデータが蓄積されるまでは、初期処理として、
図7に示した処理が行われることになる。
【0053】
図8は、
図1に示したクラウドシステム20にて運転手の心身状態の不調を判断して事業者システム40に通知する処理を説明するためのフローチャートであり、運転手不調予測部30における予測を利用する場合の処理を示す。
【0054】
ドライブレコーダー10から送信されたバイタル情報と画像とがクラウドシステム20のドライブレコーダー通信制御部21にて受信されると(ステップS301)、受信したバイタル情報と画像とがメモリ22のデータ保存領域24に保存される(ステップS302)。
【0055】
また、運転手不調予測部30の予測制御部31において、予測精度の設定が良否のいずれかかが判断され(ステップ303)、良い場合は、運転手不調予測部30の第2予測部33において、ドライブレコーダー10から送信されてきてデータ保存領域24に保存されたバイタル情報が不調予測モデル35に入力され、不調予測モデル35の出力から、運転手の心身状態の不調の予測の結果が取得される(ステップS304)。
【0056】
予測の結果において、運転手の心身状態の不調が予測される場合(ステップS305)、労務管理制御部26において運転手の不調が検知され(ステップS306)、運転手の心身状態の不調が事業者通信制御部27から事業者システム40に通知される(ステップS307)。
【0057】
その後、ステップS301におけるドライブレコーダー10からのバイタル情報と画像の受信処理に戻る(ステップS308)。
【0058】
一方、運転手の心身状態の不調が予測されない場合は(ステップS305)、ステップS306,S307における処理が行われずにステップS308の処理に移行する。
【0059】
また、運転手不調予測部30の予測制御部31において、予測精度の設定が不良であると判断された場合は(ステップ303)、運転手不調予測部30の学習部34において、運転手の属性情報25と、データ保存領域24に保存されているバイタル情報と、事業者システム40から通知されて労務管理制御部26にて管理されている実績情報とを学習データとして学習することにより、運転手のバイタル情報を入力とし運転手の不調の予測の結果を出力とする不調予測モデルを生成する(ステップS309)。
【0060】
その後、運転手不調予測部30の予測制御部31において、予測精度の設定が良に設定され(ステップS310)、ステップS303における処理に戻る。
【0061】
次に、事業者システム40にて運転手のバイタル情報を確認する際の処理について説明する。
【0062】
図9は、
図1に示した事業者システム40にて運転手のバイタル情報を確認する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【0063】
図1に示した事業者システム40にて運転手のバイタル情報を確認する場合はまず、事業者システム40の労務状況管理部43において、クラウド通信制御部41を介してクラウドシステム20にアクセスが行われ、バイタル情報や画像の収集が指定されると(ステップ401)、クラウドシステム20の事業者通信制御部27において、事業者システム40からのバイタル情報や画像の収集要求が受信される(ステップS402)。これは、例えば、ドライブレコーダー10のドラレコIDが指定されることで行われる。
【0064】
すると、クラウドシステム20の労務管理制御部26において、データ保存領域24に保存されているデータのうち、指定されたドラレコIDに対応するバイタル情報と画像とが抽出され(ステップS403)、事業者通信制御部27から事業者システム40に送信される(ステップS404)。
【0065】
事業者システム40においては、クラウドシステム20から送信されたバイタル情報と画像とがクラウド通信制御部41にて受信されると(ステップS405)、受信されたバイタル情報と画像とがデータ保存領域42に保存される(ステップS406)。この際、労務状況管理部43においては、業務管理システム44にて運転手とその運転手が運転する車両に搭載されたドライブレコーダーのドラレコIDとが対応づけられているため、ドラレコIDに対応する運転手のバイタル情報および画像としてデータ保存領域42に保存することができる。
【0066】
また、労務状況管理部43の制御によって、クラウドシステム20から送信されてきたバイタル情報などがディスプレイなどに表示される(ステップ407)。
【0067】
図10および
図11は、
図1に示した事業者システム40の労務状況管理部43の制御によってディスプレイなどに表示される情報の一例を示す図である。
【0068】
図10に示すように、
図1に示した事業者システム40の労務状況管理部43の制御によって、運転手のバイタル情報が経時的にグラフ表示される。また、
図11に示すように、グラフ上の所定のポイントをクリックすることで、その時点でのバイタル情報が表示されるとともに画像を表示することも考えられる。
【0069】
次に、クラウドシステム20から事業者システム40に運転手の心身状態の不調が通知された後の処理について説明する。
【0070】
図12は、
図1に示したクラウドシステム20から事業者システム40に運転手の心身状態の不調が通知された後の処理を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図7に示した処理におけるステップS205や
図8に示した処理におけるステップS307にて運転手の心身状態の不調がクラウドシステム20から事業者システム40に通知され(ステップS501)、この通知が事業者システム40のクラウド通信制御部41にて受信されると(ステップS502)、事業者システム40においてはまず、通知された運転手の不調に関する情報がデータ保存領域42に保存される(ステップS503)。
【0072】
また、事業者システム40においては、労務状況管理部43において、不調が通知された運転手に対して現在の心身状態が確認される(ステップS504)。これは、予測された不調が実際に起こったか否かを表す実績情報となる。
【0073】
運転手に確認された心身状態からなる実績情報は労務状況管理部43において登録されるとともに、クラウド通信制御部41にてクラウドシステム20に送信される(ステップS505)。
【0074】
事業者システム40から送信された実績情報がクラウドシステム20の事業者通信制御部27にて受信されると(ステップS506)、まず受信された実績情報がメモリ22のデータ保存領域24に保存される(ステップS507)。
【0075】
また、運転手不調予測部30の予測制御部31において予測精度が判定される(ステップS508)。これは、ステップS501にて事業者システム40に通知された運転手の心身状態の不調を表す情報と、ステップS506にて事業者システム40から受信された実績情報とを照合することで行う。
【0076】
ステップS501にて事業者システム40に通知された運転手の心身状態の不調を表す情報と、ステップS506にて事業者システム40から受信された実績情報とがほぼ一致する場合は、予測精度が良いため予測精度が「良」に設定される(ステップS509)。
【0077】
一方、ステップS501にて事業者システム40に通知された運転手の心身状態の不調を表す情報と、ステップS506にて事業者システム40から受信された実績情報とが大きく異なる場合は、予測精度が不良であるため予測精度が「不良」に設定される(ステップS510)。
【0078】
このように、クラウドシステム20は、予測精度が不良に設定されている間にも第2予測部33が不調予測モデル35の出力から運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得し、第1予測部32にて不調が予測されたときに得られる実績情報を、第2予測部33による予測の結果と照合して予測精度の良否を設定する。これにより、第1予測部32による予測結果を用いている間に第2予測部33による予測精度を判定し、設定することができる。
【0079】
また、クラウドシステム20が、予測精度が不良に設定されている間にも第2予測部33が不調予測モデル35の出力から運転手の心身状態の不調の予測の結果を取得し、第1予測部31にて不調が予測されたときに得られる実績情報を、第2予測部33による予測の結果と組み合わせて学習データとしてもよい。これにより、第1予測部32による予測結果を用いている間に不調予測モデル35の学習を行うことができる。
【0080】
次に、運転手が自分のバイタル傾向を確認する際の処理について説明する。
【0081】
図13は、
図1に示したモバイル端末50においてバイタル傾向を確認する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【0082】
運転手が自分のバイタル傾向を確認する場合は、モバイル端末50からクラウドシステム20に対してクラウド通信制御部16にてアクセスが行われると(ステップS601)、クラウドシステム20の運転手通信制御部29において、運転手からの傾向確認要求が受信される(ステップS602)。
【0083】
すると、クラウドシステム20の運転手向け情報提供制御部28において、データ保存領域24に保存されているバイタル情報と画像が抽出され、バイタル情報やその際の天候などから運転手の傾向が抽出される(ステップS603)。例えば、雨天の場合に運転手の心身状態が不安定となるなどの傾向が抽出されることになる。このように、クラウドシステム20において、データ保存領域24に保存されている画像から車両の周囲の環境を特定し、その環境とバイタル情報との相関に基づいて運転手の傾向を特定するので、環境情報とバイタル情報との相関に基づく運転手の傾向を示す情報を得ることができる。
【0084】
抽出された運転手の傾向を示すデータは運転手通信制御部29から送信され(ステップS604)、モバイル端末50のクラウド通信制御部51にて受信される(ステップS605)。
【0085】
その後、受信された傾向情報は、モバイル端末50のフィジカルメンタル表示部52に表示されることになる(ステップS606)。
【0086】
このように、クラウドシステム20において、運転手が操作するモバイル端末50からの要求に応じて運転手の傾向を示す傾向情報をモバイル端末50に送信するので、運転手が自分の傾向情報をモバイル端末50を用いて閲覧することができる。
【0087】
上述したように、本形態は、不調予測モデルにより運転手の不調を予測し、運転手へ確認し、確認の結果を不調予測モデルの学習データとして反映するので、自動車を運転する運転手の心身の状態の維持管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
10…ドライブレコーダー、11…カメラ、12,23…CPU、13,22…メモリ、14…動画バイタル制御部、15…カメラ画像制御部、16,41,51…クラウド通信制御部、17,24,42…データ保存領域、20…クラウドシステム、21…ドライブレコーダー通信制御部、25…運転手の属性情報、26…労務管理制御部、27…事業者通信制御部、28…運転手向け情報提供制御部、29…運転手通信制御部、30…運転手不調予測部、31…予測制御部、32…第1予測部、33…第2予測部、34…学習部、40…事業者システム、43…労務状況管理部、44…業務管理システム、50…モバイル端末、52…フィジカルメンタル情報表示部