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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067903
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/513 20060101AFI20220426BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220426BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20220426BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61F13/513
A61F13/496
A61F13/511 300
A61F13/511 400
A61F13/511 200
A61F13/53 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176763
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520410079
【氏名又は名称】レンゴー・ノンウーブン・プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴永 華帆
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】北村 充啓
(72)【発明者】
【氏名】川野 華紀
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA06
3B200BB05
3B200BB22
3B200BB24
3B200CA03
3B200DA14
3B200DA21
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】液透過性及び液戻り性に優れるとともに、体液がトップシートに残留しても、雑菌の繁殖やアンモニア臭の発生が顕著に抑制されるパンツ型吸収性物品の提供。
【解決手段】腹側部13の腹側帯部材30と、背側部15の背側帯部材40と、これらの間の股部14の股部帯部材50と、腹側帯部材30及び背側帯部材40の各両端部接合で形成されるウエスト開口部11及び脚開口部12とを備え、吸収性本体20の長手方向両端が腹側帯部材30及び背側帯部材40の各肌側面に接合され、腹側帯部材30、背側帯部材40及び股部帯部材50は、内装不織布シートと外装不織布シートと複数の弾性伸縮部材とを備え、吸収性本体20中トップシート21は、耐久親水性繊維を含む第1繊維層211と、一般親水性繊維と抗菌性繊維とを含む第2繊維層212とを備え、耐久親水性繊維、一般親水性繊維、抗菌繊維がそれぞれ所定の坪量である、パンツ型吸収性物品。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側部に配される腹側帯部材と、前記着用者の背側部に配される背側帯部材と、前記腹側帯部材と前記背側帯部材との間に介在して前記着用者の股部に配され、吸収性本体を支持する股部帯部材と、前記腹側帯部材の幅方向両端部と前記背側帯部材の幅方向両端部とを接合することにより形成されたウエスト開口部及び脚開口部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体と、を備え、長手方向両端がそれぞれ前記腹側帯部材の肌側面、及び前記背側帯部材の肌側面に接合され、
前記腹側帯部材、前記背側帯部材及び前記股部帯部材は、肌側面側に位置する内装不織布シートと非肌側面に位置する外装不織布シートと、前記内装不織布シートと前記外装不織布シートとの間に配置される複数の弾性伸縮部材と、を備え、
前記トップシートは、耐久親水性繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌当接面に隣接し、一般親水性繊維と抗菌性繊維とを含む第2繊維層と、を備え、前記第1繊維層の肌当接面は前記トップシートの肌当接面を構成し、前記第2繊維層の非肌当接面は前記トップシートの非肌当接面を構成し、
前記第1繊維層の前記耐久親水性繊維の坪量は3g/m以上15g/m以下であり、前記第2繊維層の前記一般親水性繊維の坪量は7g/m以上25g/m以下であり、前記抗菌繊維の坪量は1g/m以上6g/m以下であることを特徴とする、パンツ型吸収性物品。
但し、前記一般親水性繊維と前記耐久親水性繊維とは、繊維を含む坪量20g/mのエアスルー不織布の同一の位置に、30秒ごとに100μLの0.9%食塩水を滴下したとき、滴下した食塩水が前記エアスルー不織布に浸透せず、前記エアスルー不織布上で液滴となったときの滴下回数を見た親水性評価によって定義したものであり、親水性評価が1回以上8回以下である前記エアスルー不織布に含まれる前記繊維を一般親水性繊維、親水性評価が9回以上である前記エアスルー不織布に含まれる前記繊維を耐久親水性繊維とする。
【請求項2】
前記トップシートが、エアスルー不織布であることを特徴とする、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートの坪量が、18g/m以上30g/m以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性本体が前記トップシートと前記吸収体との間に配置される吸収体被覆シートを更に備え、前記吸収体被覆シートがパルプ繊維を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記第1繊維層に含まれる前記耐久親水性繊維はひまし油誘導体で処理され、前記第2繊維層に含まれる前記一般親水性繊維はアニオン性界面活性剤で処理されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、紙おむつ、軽度失禁製品やペットシーツ等の吸収性物品に抗菌・消臭機能を付与するニーズが非常に高くなっている。抗菌機能は、例えば、排尿後にアンモニア産生菌等の雑菌の繁殖を抑える。このようなニーズから、抗菌機能及び/又は消臭機能が付与された吸収性物品が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、消臭剤や抗菌剤を塗工したキャリアシートで吸収体を包み、さらに全体を表面シートで包んだ吸収性物品が開示されている(請求項1、請求項7)。
【0004】
特許文献2には、銀イオン、銅イオン又は亜鉛イオンを担持したゼオライトを含有する合成繊維を含む、皮膚に接する側の表面材、前記ゼオライト及び消臭剤を有する繊維を含んだ、吸収体に相当する内部繊維シート、及び高吸収性ポリマー内層を備えるオムツが開示されている(請求項1)。前記ゼオライトを含有する合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が用いられる(段落0007)。また、内部繊維シートを構成する繊維としては、ポリエステル繊維等が用いられる(段落0009)。
【0005】
特許文献3には、セルロース繊維の内部にゼオライトを担持させると共にゼオライト内にAg、Cu等を担持させた抗菌性セルロース繊維(商品名:セルガイア(登録商標)、レンゴー(株)製)及び該抗菌性セルロース繊維を含む織物、不織布、紙が開示されている。例えば、該セルロース繊維を抄紙することで紙自体に消臭機能を付与することができる。また、該セルロース繊維を含む織物、不織布又は紙を、紙おむつの素材として利用できることが記載されている(段落0018)
【0006】
特許文献4には、トップシートと、バックシートと、これらの間に配置される吸収体と、吸収体とバックシートとの間の領域、及び吸収体の周囲のトップシートとバックシートとの間の領域に配置される親水性制臭シートと、を備え、該親水性制臭シートが特許文献3に記載の抗菌性セルロース繊維を含む、吸収性物品が開示されている(請求項1、段落0026)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-089322号公報(請求項1、請求項7)
【特許文献2】特開平05-161671号公報(請求項1、段落0007、0009)
【特許文献3】特許第4149066号公報(請求項1、段落0018)
【特許文献4】特開2008-48775号公報(請求項1、段落0026)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近の吸収性物品では複数回の体液の排泄を吸収することが求められ、一つの吸収性物品を長時間着用する機会が多いことから、種々の雑菌が繁殖し易い環境下にあると考えられる。特に、体液の排泄量が比較的多い要介護者はパンツタイプの紙おむつ(パンツ型吸収性物品)を着用することが多く、その場合には、紙おむつが着用者の身体に密着しつつ、長時間着用者の体温に晒されることから、雑菌の繁殖及びアンモニア臭等の異臭の発生が促進される環境が形成されやすくなる。特許文献1~4に記載の吸収性物品は、一定の抗菌機能が付与されているものの、着用対象者の肌に当接するトップシートには抗菌剤が含まれていない。そのため、トップシートに残留する体液に対しては抗菌作用(菌繁殖の抑制作用等)を効果的に及ぼすことができない。
【0009】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、液透過性及び液戻り性に優れるとともに、体液がトップシートに残留しても、雑菌の繁殖やアンモニア臭の発生が顕著に抑制されるパンツ型吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、トップシートが抗菌性繊維を含む2層の繊維層を備え、トップシートの肌側に位置する第1繊維層は耐久親水性繊維を含み、トップシートの非肌側に位置する第2繊維層は抗菌性繊維と一般親水性繊維とを含み、第1繊維層と第2繊維層を特定の割合で配置することで上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下のパンツ型吸収性物品に係る。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、着用者の腹側部に配される腹側帯部材と、前記着用者の背側部に配される背側帯部材と、前記腹側帯部材と前記背側帯部材との間に介在して前記着用者の股部に配され、吸収性本体を支持する股部帯部材と、前記腹側帯部材の幅方向両端部と前記背側帯部材の幅方向両端部とを接合することにより形成されたウエスト開口部及び脚開口部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体と、を備え、長手方向両端がそれぞれ前記腹側帯部材の肌側面、及び前記背側帯部材の肌側面に接合され、
前記腹側帯部材、前記背側帯部材及び前記股部帯部材は、肌側面側に位置する内装不織布シートと非肌側面に位置する外装不織布シートと、前記内装不織布シートと前記外装不織布シートとの間に配置される複数の弾性伸縮部材と、を備え、
前記トップシートは、耐久親水性繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌当接面に隣接し、一般親水性繊維と抗菌性繊維とを含む第2繊維層と、を備え、前記第1繊維層の肌当接面は前記トップシートの肌当接面を構成し、前記第2繊維層の非肌当接面は前記トップシートの非肌当接面を構成し、
前記第1繊維層の前記耐久親水性繊維の坪量は3g/m以上15g/m以下であり、前記第2繊維層の前記一般親水性繊維の坪量は7g/m以上25g/m以下であり、前記抗菌繊維の坪量は1g/m以上6g/m以下であることを特徴とする、パンツ型吸収性物品である。
但し、前記一般親水性繊維と前記耐久親水性繊維とは、繊維を含む坪量20g/mのエアスルー不織布の同一の位置に、30秒ごとに100μLの0.9%食塩水を滴下したとき、滴下した食塩水が前記エアスルー不織布に浸透せず、前記エアスルー不織布上で液滴となったときの滴下回数を見た親水性評価によって定義したものであり、親水性評価が1回以上8回以下である前記エアスルー不織布に含まれる前記繊維を一般親水性繊維、親水性評価が9回以上である前記エアスルー不織布に含まれる前記繊維を耐久親水性繊維とする。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のパンツ型吸収性物品であって、前記トップシートが、エアスルー不織布であることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のパンツ型吸収性物品であって、前記トップシートの坪量が、18g/m以上30g/m以下であることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(1)乃至(3)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体が前記トップシートと前記吸収体との間に配置される吸収体被覆シートを更に備え、前記吸収体被覆シートがパルプ繊維を含むことを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)乃至(4)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、前記第1繊維層に含まれる前記耐久親水性繊維はひまし油誘導体で処理され、前記第2繊維層に含まれる前記一般親水性繊維はアニオン性界面活性剤で処理されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液透過性及び液戻り性に優れるとともに、体液がトップシートに残留しても、雑菌の繁殖やアンモニア臭の発生が顕著に抑制されるパンツ型吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品の外観を示す模式斜視図である。
図2図1に示すパンツ型吸収性物品の模式展開図である。
図3図2に示すX-X切断線におけるパンツ型吸収性物品の幅方向模式断面図である。
図4】吸収性本体の変形例を示す幅方向模式断面図である。
図5】トップシートの構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、パンツ型吸収性物品の着用とは、体液吸収前後を問わず、パンツ型吸収性物品を身体に装着した状態をいう。パンツ型吸収性物品において、長手方向とはパンツ型吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る図中Yで示す方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する図中Zで示す方向である。また、肌当接面(以下単に「肌面」又は「肌側面」とも呼ぶ)とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面(以下単に「非肌面」又は「非肌側面」とも呼ぶ)とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<パンツ型吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のパンツ型吸収性物品1について説明する。図1及び図2はパンツ型吸収性物品1の外観を示す模式斜視図、及び模式展開図を示す。図3は、図2の吸収性本体20のX-X断面図、図4は、別の実施形態の吸収性本体26を示す。図5は、トップシート21を示す。これらの図面はパンツ型吸収性物品1中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
パンツ型吸収性物品1は、図1に示すように、着用者の腹側部13に主に当接するように配される腹側帯部材30と、着用者の背側部15に主に当接するように配される背側帯部材40と、腹側帯部材30と背側帯部材40との間に介在して着用者の股部14に主に当接するように配され、吸収性本体20を支持する股部帯部材50と、腹側帯部材30の幅方向両端部と背側帯部材40の幅方向両端部とを接合することにより形成されたウエスト開口部11及び一対の脚開口部12と、を備える。ここで、吸収性本体20は、着用者の股部14を身体の前後から覆う前後方向に細長い形態を有している。ウエスト開口部11は腹側部13及び背側部15の上部に位置し、一対の脚開口部12は腹側部13及び背側部15の間の股部14の左右両側に形成されている。なお、本実施形態では、腹側帯部材30から股部帯部材50を介して背側帯部材40に至る一体化した外装体によりパンツ型吸収性物品1が構成されているが、これに限定されず、腹側帯部材30、及び背側帯部材40を別体とし、これらを吸収性本体20により連結して一体化したパンツ型吸収性物品1としてもよい。
【0017】
また、吸収性本体20中トップシート21は、着用者肌側に位置する第1繊維層211と、着用者非肌側に位置する第2繊維層212と、を含む。第1繊維層211は、耐久親水性繊維を主に含み、第2繊維層212は、抗菌性繊維と一般親水性繊維とを主に含む。本実施形態によれば、前述の各構成を有する第1繊維層211と第2繊維層212とを所定の割合で配置することで、吸収性本体20の体液透過性が改善され、抗菌性に優れ、体液がトップシート21に残留しても、雑菌の繁殖やアンモニア臭の発生等が顕著に抑制されるパンツ型吸収性物品を得ることができる。
【0018】
以下、各構成部材について、腹側帯部材30、背側帯部材40、股部帯部材50、及び吸収性本体20の順で、更に詳しく説明する。
【0019】
<腹側帯部材、背側帯部材及び股部帯部材>
腹側帯部材30及び背側帯部材40は、吸収体本体20の前側端部(腹側端部)及び後方端部(背側端部)に、非肌面側から複数の不織布を重ねて形成されたものである。また、股部帯部材50は、腹側帯部材30と背側帯部材40との間に介在し、これらと同様に、非肌面側から複数の不織布を重ねて形成されたものである。
【0020】
本実施形態では、腹側帯部材30、背側帯部材40及び股部帯部材50は、それぞれ、着用者の非肌側に位置する外装不織布シート301、401、501と、着用者の肌側に位置する内装不織布シート302、402、502と、これらの間の所定の位置に配置される複数の弾性伸縮部材(不図示)と、を備える。
外装不織布シート301、401、501及び内装不織布シート302,402、502は、吸収体本体20が内側となるように吸収体本体20の中心線で二つ折りにされ、腹側部13及び背側部15の両側縁が重なり部を有して接続されている。これにより、外装不織布シート301、401、501は、伸縮性のウエスト開口部11と、一対の脚開口部12とを形成し、パンツ型吸収性物品1を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。そして、パンツ型吸収性物品1を着用すると、腹側部13が着用者の腹側で腰部を覆い、背側部15が着用者の背側で腰部を覆う。
【0021】
外装不織布シート301、401、501の内側には、内装不織布シート302、402、502が積層されており、腹側帯部材30及び背側帯部材40の強度を高めるようになっている。外装不織布シート301、401、501及び内装不織布シート302、402、502には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む不織布を使用できる。該不織布の具体例としては、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。不織布の坪量は、例えば、18g/m以上40g/m以下の範囲である。
【0022】
腹側帯部材30の内装不織布シート302の長手方向寸法は、例えば、40mm以上80mm以下の範囲であり、背側帯部材40の内装不織布シート402の長手方向寸法は、例えば、50mm以上100mm以下の範囲である。腹側帯部材30の内装不織布シート302と吸収体本体20とは長手方向寸法で例えば20mm以上30mm以下の範囲で重複し、背側帯部材40の内装不織布シート402と吸収体本体20とは長手方向寸法で例えば20mm以上40mm以下の範囲で重複する。内装不織布シート302、402、502の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、背側部15の領域も含めて、パンツ型吸収性物品1の通気性や、不織布シートの肌触りを良好なものとなる。
【0023】
<弾性伸縮部材>
パンツ型吸収性物品1には、ウエスト開口部11の周縁、脚開口部12の周縁、腹側部13、背側部15、股部14等の所定の領域に、外装不織布シート301、401、501と内装不織布シート302、402、502との間に、複数の弾性伸縮部材(不図示)が配置され、外装不織布シート301、401、501及び内装不織布シート302、402、502に接合されている。弾性伸縮部材は、伸長した状態で、例えば、内装不織布シート302、402、502の凹凸のエンボスパターンの底部に接合されている。この構成によれば、パンツ型吸収性物品1を着用した状態で、内装不織布シート302、402、502に対して、凹凸のエンボスパターンに沿った襞が形成され、着用者とパンツ型吸収性物品1の内装不織布シート302、402、502との間に間隙が保持されるので、パンツタイプ吸収性物品1の通気性が良好に維持される。なお、内装不織布シート302、402、502と弾性伸縮部材とは、例えば、弾性伸縮部材のみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されていることが好ましい。弾性伸縮部材を構成する弾性部材としてはこの分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のもの等が挙げられ、その太さは例えば620dtex以下の範囲である。
【0024】
<第1実施形態の吸収性本体>
吸収性本体20は、図3に示すように、肌側から非肌側に向けて積層した、トップシート21、吸収体22、及びバックシート23を基本単位とするものである。本実施形態の吸収性本体20は、必要に応じて、トップシート21の肌側面の幅方向両端付近に、長手方向に延びる一対の立体ギャザー24を有している。吸収性本体20には公知の種々の改変を施すことができる。以下、トップシート21、吸収体22、バックシート23、及び立体ギャザー24の順に各部材の構成をさらに詳しく説明する。
【0025】
<トップシート>
トップシート21は、図5に示すように、着用者の肌側に位置する第1繊維層211と、着用者の非肌側に位置する第2繊維層212とを含む。したがって、第1繊維層211の肌側面がトップシート21の肌側面になり、第2繊維層212の非肌面がトップシート21の非肌側面になる。第1繊維層211は耐久親水性繊維を含み、第2繊維層212は抗菌性繊維と一般親水性繊維とを含む。第1繊維層211は、耐久親水性繊維からなるものでもよく、耐久性親水性繊維と共に、耐水親水性繊維の効果を損なわない範囲で、他の繊維を含んでいてもよい。第2繊維層212は、一般親水性繊維と抗菌性繊維とからなるものでもよく、これらの繊維の効果を損なわない範囲で、他の繊維を含んでいてもよい。第1繊維層211及び第2繊維層212における前述の他の繊維としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿、セルロース繊維等の天然繊維等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
第1繊維層211及び第2繊維層212としては、例えば、シート、フィルム等の形態の基材を使用できる。該基材の具体例としては、液透過性の観点から、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、液透過性の観点から、不織布が好ましく、エアスルー不織布がより好ましい。
【0027】
第1繊維層211及び第2繊維層212には、液透過性を向上させるために、公知の方法に従って、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。また、第1繊維層211及び第2繊維層212には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート21には、吸水性能を損なわない程度で、弱酸性薬液として、クエン酸、グルタミン酸、リンゴ酸等の有機酸を塗布してもよい。
【0028】
第1繊維層211に含まれる耐久親水性繊維、及び第2繊維層212に含まれる一般親水性繊維は、次の親水性試験の結果に基づいて定義されたものである。
(親水性試験)
親水性繊維を用いて坪量20g/mのエアスルー不織布を作製し、得られたエアスルー不織布の同一の位置に、30秒ごとに100μLの0.9%食塩水を滴下する。そして、滴下した食塩水がエアスルー不織布に浸透せず、エアスルー不織布上で液滴となる滴下回数を測定する。滴下回数が1回以上8回以下であるエアスルー不織布に含まれる親水性繊維を一般親水性繊維、滴下回数が9回以上であるエアスルー不織布に含まれる親水性繊維を耐久親水性繊維とする。
【0029】
耐久親水性繊維及び一般親水性繊維は、それぞれ、天然繊維や合成繊維を所定の親水化処理剤で処理することで、所定の親水性を付与したものである。ここで、親水化処理剤による処理とは、例えば、親水化処理剤を合成樹脂に添加し、該合成樹脂を紡糸する方法、親水化処理剤を水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤等の適切な溶媒に溶解又は分散させて得られる親水化処理液中に天然繊維や合成樹脂を所定時間浸漬し、乾燥する方法、天然繊維又は合成樹脂に親水化処理剤又は親水化処理剤を水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤等の適切な溶媒に溶解又は分散させて得られる親水化処理液を塗布する方法等が挙げられる。天然繊維としては特に限定されないが、例えば、木綿繊維、セルロース繊維等が挙げられる。合成繊維としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。また、後述する親水性樹脂を紡糸した繊維を用いてもよい。
【0030】
一般親水性繊維に使用される親水化処理剤としては、例えば、ラウリルスルホン酸ナトリウム塩やラウリルリン酸エステルカリウム塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、親水性の観点から、ラウリルリン酸エステルカリウム塩が好ましい。耐久親水性繊維に使用される処理剤としては、例えば、ひまし油誘導体が挙げられる。ひまし油誘導体の具体例としては、例えば、ひまし油や硬化ひまし油等の天然油脂のポリオキシアルキレン鎖付加物、あるいはその脂肪酸エステル体、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、水溶性変性シリコン等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、ポリオキシエチレン硬化ひまし油が好ましい。
【0031】
第2繊維層212に含まれる抗菌性繊維としては、抗菌性を有しかつ吸収性物品1の素材に適した繊維であれば特に限定されないが、内部及び/又は表面に抗菌性を示す金属イオンを担持した繊維が好ましい。金属イオンを含む金属化合物を無機多孔体に担持させて用いてもよい。担持方法としては、例えば、物理的吸着、化学的吸着、イオン交換、蒸着や表面薄膜形成、機械的担持等が挙げられる。抗菌性を示す金属イオンとしては特に限定されず、例えば、銀、銅、亜鉛等の各イオンが挙げられる。これらの中でも、極微量でも抗菌効果を発揮する銀イオンが好ましい。無機多孔体としては、例えば、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、粘土鉱物類、アルミナ、シリカ、ベントナイト等が挙げられる。また、抗菌性の有機化合物(抗菌剤)を用いてもよい。抗菌剤としては特に限定されないが、例えば、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、トリクロサン等が挙げられる。抗菌性金属イオン及び抗菌剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。以下、抗菌性金属イオン及び抗菌剤を抗菌成分と総称することがある。
【0032】
抗菌性繊維は、例えば、抗菌成分の1種又は2種以上を含む溶液又は分散液である抗菌液に繊維を浸漬及び乾燥し、繊維表面に抗菌成分を固着する方法、抗菌液を繊維表面に塗布及び乾燥し、繊維表面に抗菌成分を固着する方法、溶融状態にある合成樹脂に抗菌成分の1種又は2種以上を添加した後、該合成樹脂を紡糸する方法等により作製できる。ここで、繊維としては、例えば、セルロース繊維、合成繊維等が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、例えば、パルプ繊維、木綿繊維、麻繊維、ケナフ繊維等の天然セルロース繊維、エチルセルロース含有繊維、ヒドロキシエチルセルロース含有繊維、ヒドロキシプロピルセルロース含有繊維、メチルセルロース含有繊維、エチルヒドロキシエチルセルロース含有繊維、カルボキシメチルセルロース含有繊維等の化学修飾セルロース含有繊維、再生セルロース繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、架橋型ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルホルマール等の親水性樹脂を紡糸した合成繊維や、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維等の合成繊維等が挙げられる。また、抗菌液の溶媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶媒等を、適宜選択して使用できる。
【0033】
第1繊維層211における耐久親水性繊維の坪量は、例えば、3g/m以上15g/m以下であり、好ましくは5g/m以上10g/m以下、排尿時の吸収速度及び液戻りの観点から、より好ましくは7g/m以上9g/m以下である。耐久親水性繊維の坪量が3g/mより小さいと吸収速度が遅くなる恐れがあり、15g/mより大きいと体液の液戻り量が増える恐れがある。
【0034】
第2繊維層212における一般親水性繊維の坪量は特に限定されないが、例えば、7g/m以上25g/m以下であり、好ましくは12g/m以上21g/m以下、液戻りの観点からより好ましくは14g/m以上18g/m以下である。一般親水性繊維の坪量が7g/mよりも小さいと液戻り量が増える恐れがあり、25g/mより大きいと、トップシート21の抗菌性が低下する恐れがある。第2繊維層212における抗菌性繊維の坪量は、例えば、1g/m以上6g/m以下であり、好ましくは2g/m以上4g/m以下である。抗菌性繊維の坪量が1g/mより小さいと抗菌性が低下する恐れがあり、6g/mより大きいと体液によって溶出された金属イオンが肌に影響を及ぼす恐れがある。
【0035】
トップシート21全体としての坪量は、例えば、15g/m以上40g/m以下であり、好ましくは19g/m以上35g/m以下、より好ましくは18g/m以上30g/m以下である。トップシート21の坪量が15g/mより小さいと液戻りが増える恐れがあり、40g/mより大きいと肌に触れる際硬さが出てしまう傾向がある。トップシート21の形状は特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体22へと誘導するために必要とされる、吸収体22の肌側面の全体又は一部を覆う形状であればよい。
【0036】
<吸収体>
吸収体22は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体22の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体22の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上480mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上160mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が50mm以上140mm以下の範囲である。吸収体22の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体22の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0037】
吸収体22は、本実施形態では、吸収体被覆シート50とバックシート23との間に介在し、例えば、トップシート21を透過してきた体液を吸収及び保持する。吸収体22は、例えば、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有する。
【0038】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収体22に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m以上800g/m以下の範囲又は325g/m以上615g/m以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0039】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体22が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0041】
吸収体22中のSAPの坪量は、例えば、240g/m以上450g/m以下の範囲、又は245g/m以上445g/m以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、吸収体22におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体22に多量の体液を吸収させることができる。また、吸収体22において、吸収体22全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/吸収体22全体の重量×100(%)は、例えば、40重量%以上の範囲、又は40重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0042】
吸収体22において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。
【0043】
<バックシート>
バックシート23は、吸収体22が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0044】
バックシート23の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m以上60g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート23には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート23に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート23にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0045】
<立体ギャザー>
立体ギャザー24は、例えば、吸収性物品1の着用者が排泄した体液の横モレを防止するために、吸収性物品1の幅方向両端付近で吸収性物品1の長手方向に沿ってトップシート21の肌側面に固定される。立体ギャザー24は、弾性伸縮部材24aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材24bと、を含む。
【0046】
弾性伸縮部材24aは、シート部材24bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材24bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材24bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート23の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート21の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材24bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート23の非肌側面、内部に吸収体22を収納したトップシート21とバックシート23との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート21の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0047】
シート部材24bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材24bの坪量は、例えば、13g/m以上20g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材24aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0048】
<第2実施形態の吸収性本体>
吸収性本体26は、図4に示すように、肌側から非肌側に向けて積層した、トップシート21、吸収体被覆シート25で包まれた吸収体22、及びバックシート23を基本単位とするものであり、必要に応じて、トップシート21の肌側面の幅方向両端付近に、長手方向に延びる一対の立体ギャザー24を有している。吸収性本体26は、吸収体22が吸収体被覆シート25で包まれている以外は、吸収性本体20と同一の構成を有する、吸収性本体20に所定の改変を施した、吸収性本体20の変形例である。吸収性本体26では、吸収性本体20と共通する構成部材については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0049】
本実施形態の吸収体被覆シート25は、その肌側面の幅方向中央部に吸収体22を載置又は接着した状態で、その幅方向両端部付近を折り曲げて、吸収体22の肌側面上方で重ね合わせた、いわゆるC折りにより、吸収体22の全体を包むシート部材である。吸収体被覆シート25は、例えば、吸収体22からのSAPの脱落防止、吸収体22の形状保持による吸収体22の強度向上及び体液吸収量の増加、吸収体22の肌側面への体液の均一供給等の機能を有する。吸収体被覆シート25の基材としては親水性を有するものであればよく、特にパルプ繊維を含むティシューや吸収紙等が好ましいが、エアレイド不織布等の親水性不織布でもよい。なお、吸収体被覆シート25は、C折りによる配置以外にも、吸収体22の肌面側及び/又は非肌面側への配置でもよい。
【0050】
<セカンドシート>
吸収性本体20及び吸収性本体26に共通の改変例としては、例えば、セカンドシート(不図示)が挙げられる。セカンドシートは、例えば、トップシート21と吸収体22又は吸収体被覆シート25との間に配置され、例えば、吸収性本体20及び吸収性本体26の液拡散性を向上させ、かつ、体液の吸収体22からの液戻りを抑制する。セカンドシートとしては、体液の透過速度がトップシート22より速く、体液を吸収体22へ素早く拡散させる液拡散性の基材を特に限定なく使用できる。該基材としては、例えば、親水性不織布等が挙げられ、それらの中でもエアスルー不織布が好ましい。
【0051】
セカンドシートは、厚さが例えば0.1mm以上の範囲であり、坪量が例えば10g/m以上60g/m以下の範囲、又は15g/m以上40g/m以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が10g/m未満若しくは60g/mより大きいと、体液が吸収体22の肌側面全体に十分拡散しない傾向がある。また、セカンドシートの形状は、特に制限はないが、体液が吸収体22に均一に拡散するように、吸収体22の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0052】
セカンドシートに対するトップシート21の坪量の比率(百分率、セカンドシートの坪量/トップシート21の坪量)は、例えば、50%以上130%以下の範囲、又は50%以上100%以下の範囲である。坪量の比率を50%以上130%以下とすることにより、トップシート21からセカンドシートに体液が透過する際の液拡散性や液透過性が向上し、セカンドシートからトップシート21へ液戻りが一層抑制される。
【0053】
<吸収性本体の製造方法>
吸収性本体20は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート21、吸収体22、及びバックシート23を厚み方向に重ね合わせ、吸収体22をトップシート21とバックシート23との間に配置する工程と、トップシート21の縁辺とバックシート23の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート23及びトップシート21の所定位置に立体ギャザー24を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収性本体26は、吸収体22を吸収体被覆シート25で包む以外は、吸収性本体20と同様にして作製できる。吸収性本体20、26には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。
【0054】
<パンツ型吸収性物品の製造方法>
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、前側部13、後側部15、及び股部14の脚開口部12周縁において、外装不織布シート301、401、501と内装不織布シート302、402、502との間に、上述の各弾性伸縮部材を配置して接合する工程、外装体の身体側に吸収性本体20(又は吸収性本体26)を配設する工程、前側部13の幅方向両側縁部と後側部14の幅方向両側縁部とを接合する工程、の順に各工程を経ることで、パンツ型吸収性物品1が得られる。
【0055】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0056】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(一般親水性繊維及び耐水親水性繊維の作製)
ラウリルリン酸エステルカリウム塩を濃度2.0重量%の水溶液(親水化処理液A)を調整した。この親水化処理液Aにポリエチレン繊維を常温下で60分間浸漬した後、120℃の熱風で乾燥させ、上述の親水性試験(下記参照)で滴下回数が4回である一般親水性繊維を作製した。また、ポリオキシエチレンステアリルエーテルを濃度1.0重量%の水溶液(親水化処理液B)を調整した。この親水化処理液Bにポリエチレン繊維を常温下で60分間浸漬した後、120℃の熱風で乾燥させ、上述の親水性試験で滴下回数が9回である耐久親水性繊維を作製した。
【0058】
(抗菌性繊維の作製)
メタケイ酸ナトリウム4.0重量%水溶液にポリエチレン繊維を浸漬した状態で、アルミン酸ナトリウム3.0重量%水溶液及び銀イオン担持ゼオライトを一定量加え、90℃で3時間浸漬し、銀イオン担持ゼオライト担持ポリエチレン繊維を作製した。得られたポリエチレン繊維の銀イオン担持率は0.002重量%であった。
【0059】
(トップシートの作製)
上記で得られた一般親水性繊維(繊度2.6dtex、繊維長50mm)、耐久親水性繊維(繊度2.0dtex、繊維長51mm)、及び抗菌性繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)を使用し、第1繊維層に耐久親水性繊維を、第2繊維層に一般親水性繊維と抗菌性繊維を配するように、2層タイプのエアスルー不織布を作製し、トップシートとした。その組成を表1に示した。
【0060】
(パンツ型吸収性物品の作成)
吸収体としては、基材であるフラッフパルプ8.0gの中に、SAP9.0gを混合して形成したもの、トップシートとして上記で得られた2層タイプのエアスルー不織布(坪量20g/m)、液不透過性のバックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m)、立体ギャザーとしてスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(坪量15g/m)、吸収体の肌側及び非肌側を覆うキャリアシートとしてティッシュ(坪量15g/m)、外装不織布シート及び内装不織布シートとしてスパンボンド不織布(坪量17g/m)、弾性伸縮部材として紐状の天然ゴムをそれぞれ用い、吸収性本体の寸法は、長手方向が350mm、幅180mmであり、パンツ型吸収性物品の寸法は、長手方向が400mm、幅200mmである、実施例1~4、及び比較例1~3のパンツ型吸収性物品を作製した。
【0061】
実施例1~4、及び比較例1~3のパンツ型吸収性物品について、次の評価試験を実施した。結果を表1に示す。
(吸収速度)
底面積16.8cmの円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性本体の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ20mlを投下し、生理食塩水が吸収性本体に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間(秒)を計測した。
(液戻り性)
吸収性本体のトップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 No.2 ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cmの錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量(g)とし、液戻り性を評価した。液戻り量が少ないほど、液戻り性は良好である。
(抗菌性)
抗菌性はトップシートを用い、JIS L 1902法に順じて抗菌試験を実施し、黄色ブドウ球菌の標準布(綿布)の結果を用いた抗菌活性値が3以上であるものを○、2以上3未満のものを△、2未満のものを×とした。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から、実施例1~4の吸収性本体は吸収速度、液戻り、抗菌性に優れることがわかる。一方で、抗菌性繊維を3g/m含む比較例1は抗菌性を確認できるものの、吸水速度と液戻り性が悪かった。また、第2繊維層を抗菌性繊維のみとした比較例2は、抗菌性が悪く、吸収速度が遅かった。更に、比較例3は、抗菌性を示さなかった。
よって、本発明によれば、液透過性に優れ、且つ、体液の液戻り性も優れ、体液がトップシートに残留する場合であっても、抗菌性に優れた吸収性本体を用いたパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 パツ型吸収性物品
11 ウエスト開口部
12 脚開口部
13 腹側部
14 股部
15 背側部
20、26 吸収体本体
21 トップシート
211 第1繊維層
212 第2繊維層
22 吸収体
23 バックシート
24 立体ギャザー
24a 弾性伸縮部材
24b シート部材
25 吸収体被覆シート
30 腹側帯部材
301 外装不織布シート(腹側帯部材)
302 内装不織布シート(腹側帯部材)
40 背側帯部材
401 外装不織布シート(背側帯部材)
402 内装不織布シート(背側帯部材)
50 股部帯部材
501 外装不織布シート(股部帯部材)
502 内装不織布シート(股部帯部材)
図1
図2
図3
図4
図5