(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068022
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】形成方法、形成材料、及び新規化合物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20220426BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176939
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】509182010
【氏名又は名称】気相成長株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】町田 英明
(72)【発明者】
【氏名】石川 真人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義治
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA14
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA15
4M104BB05
4M104DD43
(57)【要約】
【課題】Ni系材が形成される方法を提供することである。
【解決手段】Ni系材が形成される方法であって、Ni[i-C
3H
7NC(n-C
3H
7)N-i-C
3H
7]
2で表される化合物が、原料容器から気化器に輸送され、気化器によって気化してキャリアガスと共に室に輸送され、前記室に輸送された前記化合物が、アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤と反応し、基板上にNi系材が形成される方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni系材が形成される方法であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物が室に輸送され、
前記室に輸送された前記化合物が、アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤と反応し、
基板上にNi系材が形成される方法。
【請求項2】
Ni系材が形成される方法であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物が、原料容器から気化器に輸送され、気化器によって気化してキャリアガスと共に室に輸送され、
前記室に輸送された前記化合物が、アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤と反応し、
基板上にNi系材が形成される方法。
【請求項3】
前記Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物の原料容器から気化器までの輸送経路が30~40℃の温度に加熱されている
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項4】
Ni系材を形成する為の材料であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物を有する
Ni系材形成材料。
【請求項5】
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される
新規化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば膜形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
Ni(金属ニッケル(例えば、膜))は、半導体の分野で、ニッケルシリサイドとして、コンタクト部分に使われている。
前記Niは磁性材料である。従って、前記NiはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の分野で求められている。
前記Niは、例えば次世代メモリ(例えば、MRAM)の材料として用いられている。
前記Niは、腐食耐性が高く、光学反射膜として活用されている。
前記Niは、触媒として活用されている。
前記Niは、電池の材料として活用されている。
酸化ニッケルは、光の可変吸収、エレクトロクロミック表示素子などの分野において活用されている。
【0003】
原子層制御成長方法(ALD法)によって、Ni系膜(例えば、Ni膜、酸化ニッケル膜など)が、細かな構造体に、低温で、形成される。この場合、原料物質として、例えばβ-ジケトナートニッケル錯体、シクロペンタジエニル系ニッケル錯体が提案されている。
【0004】
Ni[i-C3H7NC(CH3)N-i-C3H7]2{ビス(N,N’-ジイソプロピルアセトアミジネート)ニッケル}が提案(非特許文献1)されている。
【0005】
Nickel
η3-2-methylallyl N,N′-diisopropylacetamidinateが提案(特許文献1)されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Booyong S. Lim, Antti Rahtu, Jin-Seong Park, and Roy G. Gordon,Inorganic Chemistry., 2003, 42, 7951-7958)
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記β-ジケトナートニッケル錯体が用いられた場合、ALD法による膜形成は困難であった。金属ニッケル膜は成膜できなかった。
【0009】
前記シクロペンタジエニル系ニッケル錯体は、分解温度が高い。従って、C(炭素原子)が膜の内部に入り込む恐れが有った。
【0010】
前記β-ジケトナート金属錯体(又は前記シクロペンタジエニル金属錯体)は、基体表面の水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2)と反応し難かった。従って、前記化合物はALD法には不適であった。
【0011】
金属アミジネート錯体は、基体上の水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2)との反応性が良かった。従って、前記金属アミジネート錯体はALD法には好適であった。
【0012】
前記提案のビス(N,N’-ジイソプロピルアセトアミジネート)ニッケル{Ni[i-C3H7NC(CH3)N-i-C3H7]2}は固体(融点:約69℃)であった。加熱・融解した前記化合物の蒸気が成膜室に輸送される。この時、配管(蒸気輸送用の配管)は70℃以上(少なくとも69℃以上)に加熱されなければならなかった。配管が前記温度に加熱されていない場合、前記化合物は前記配管内で固化・堆積してしまった。配管が閉塞された。前記の如きの融点(69℃)の場合、研究室レベル(小規模)での成膜では余り問題が起きないかも知れない。しかし、工場での量産レベルでは問題が大きくなる。例えば、前記配管に冷えた個所が在ると、その個所では前記化合物は固化する。配管に閉塞が起きる。製造ラインがストップする。量産レベルでは一連の工程を経ていることから、多くのウエハが無駄になる。損失は大きくなる。近年の半導体量産工場では、原料化合物は大量に反応室に送り込まれる。ダイレクト・リキッド・インジェクションと謂われるシステムが採用されている。この方法は、原料が気化室に液体として直接送り込まれる。前記気化室で気化した化合物(ガス)は成膜反応室に送られる。前記固体(融点:69℃)は、70℃以上(少なくとも69℃以上)に加熱されると、液体になる。これには多くの熱エネルギーが必要であった。配管内の固化閉塞も懸念された。装置が配置された室全体を高温にすることも考えられる。しかし、室温(全体)を69℃以上にする事は消費エネルギーが大きい。コストが高くなる。作業性が悪い。半導体工場向けには高純度品が必要である。高純度品を得る為には蒸留が不可欠である。前記固体(融点:69℃)の精製には昇華法が用いられた。しかし、昇華精製では高純度品が得られなかった。
【0013】
金属のアミジネート錯体は基体上の水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2)との反応性が良い。従って、前記金属のアミジネート錯体はALD法には好適である。基体(基体表面の水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2))に化学吸着した金属のアミジネート錯体は、水(又はアンモニア)と反応する。次のサイクルで導入される金属アミジネート錯体と反応可能な末端が形成される。例えば、金属に配位する有機基の一つがアミジネート基で、金属に配位する残りの有機基の全てがアミジナート基以外であった場合、1回目のサイクルで供給された金属錯体のアミジナート基は基体上の水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2)と反応する。しかし、前記-OH(又は、-NH2)に化学吸着した金属錯体は、次のステップにおいて反応可能なアミジネート基が、もはや、無い。従って、次に供給された水やアンモニアと反応できない。すなわち、次のサイクルで導入される金属錯体と反応可能な終端基が形成されない。よって、ALDが進行しない。前記特許文献1の化合物はこの類の化合物であった。従って、前記特許文献1の化合物を用いた場合にはALDを用いる事が出来ない。前記特許文献1の化合物を用いた場合にはプラズマ法を用いなければならない。しかし、アンモニアプラズマ(水素プラズマ)は前記基体に化学吸着した前記化合物(特許文献1の化合物)の中間体構造を壊してしまう。この結果、C,Nが膜内に混入してしまう恐れがあった。よって、金属の配位子(有機基)は全てがアミジネート基であることが望ましい事が判った。
【0014】
上述理由により、成膜にALD法が用いられた場合、原料化合物としては液体(固体であるにしても、融点が35℃~40℃程度)のNiアミジネート錯体が要望されるであろう事が理解できるであろう。すなわち、原料化合物を原料容器から成膜室まで輸送するに際して、前記経路(配管)における高温加熱が不要(加熱が必用にしても、加熱温度は40℃以下)なNiアミジネート錯体が要望されるであろう事が理解できるであろう。例えば、25℃(1気圧)で液体(又は、融点が40℃以下の固体)のNiアミジネート錯体が要望されるであろう事が理解できるであろう。
【0015】
前記条件が満たされたNiアミジネート錯体は、蒸留操作によって、高純度品が、簡単に得られるであろう事も理解できるであろう。
【0016】
しかし、上記条件が満たされたNiアミジネート錯体(全ての配位子がアミジネート基)は、現在までは、提案されていない。そもそも、如何なる構造のものであれば、25℃(1気圧)で液体(又は、融点が40℃以下の固体)のNiアミジネート錯体かが判っていない。
【0017】
従って、本発明は前記課題を解決することである。
例えば、高品質なNi材(例えば、膜)を簡単に提供できる技術を提供することである。例えば、40℃で液体のNiアミジネート錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題を解決する為の検討・研究が、鋭意、推し進められて行った。
その結果、今回合成された新規化合物{Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2}は融点が約33℃であった。
前記化合物は、蒸留操作によって、高純度品が簡単に得られた。
前記化合物が用いられてALD法によって成膜が行われた場合、高品質な膜が得られた。
【0019】
斯かる知見に基づいて本発明が達成された。
【0020】
本発明は、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される
新規化合物を提案する。
【0021】
本発明は、
Ni系材を形成する為の材料であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物を有する
Ni系材形成材料を提案する。
【0022】
本発明は、
Ni系材が形成される方法であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物が室に輸送され、
前記室に輸送された前記化合物が、アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤と反応し、
基板上にNi系材が形成される方法を提案する。
【0023】
本発明は、
Ni系材が形成される方法であって、
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物が、原料容器から気化器に輸送され、気化器によって気化してキャリアガスと共に室に輸送され、
前記室に輸送された前記化合物が、アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤と反応し、
基板上にNi系材が形成される方法を提案する。
【0024】
本発明は、前記方法であって、前記Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物の原料容器から気化器までの輸送経路が30~40℃の温度に加熱されている方法を提案する。
【0025】
本発明はALD法で行われる前記方法を提案する。
【発明の効果】
【0026】
Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物はは融点が約32~33℃である。従って、原料容器から気化器までの輸送経路(配管)の加熱エネルギーは少なくて済む。半導体量産工場で採用されているシステム、即ち、ダイレクト・リキッド・インジェクションの採用に大きな問題が起きない。成膜コストが低廉である。前記化合物は35℃~40℃で液体であるから、蒸留操作で高純度品が簡単に得られた。ALD法によって、高品質な材が低廉なコストで得られた。成膜効率が良い。例えば、高品質な金属Ni膜(Ni合金膜)が効率良く形成された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の本発明は新規化合物である。前記化合物はNi[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2で表される化合物である。前記化合物は下記の[式1]で表される。前記化合物(Niアミジネート錯体)は全ての配位子がアミジネート基であった。前記化合物(錯体)は融点が32~33℃であった。前記化合物の高純度品が、蒸留操作によって、簡単に得られた。Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2の蒸気圧(90℃)は0.5Torrであった。前記蒸気圧の測定には気体飽和法が用いられた。蒸気圧が高いから、ALD法による成膜が容易であった。
【0029】
【0030】
第2の本発明は形成材料である。Ni系材を形成する為の材料である。例えば、Ni金属膜である。例えば、Ni酸化膜である。前記物質に限られない。前記材は膜には限られない。膜の概念より厚いものでも良い。前記材料は前記化合物Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2)を有する。前記化合物が用いられた場合、ALD法によって、高品質な膜が効率良く得られた。
【0031】
第3の本発明は方法である。前記方法はNi系材が形成される方法である。前記方法は、前記化合物{Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2}が成膜室に輸送され、前記輸送された前記化合物(錯体)が基板上で反応して基板上に前記Ni系材が設けられる方法である。例えば、前記化合物が室に輸送され、前記室に輸送された前記化合物が反応剤(アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤)と反応し、基板上に前記Ni系材が設けられる方法である。例えば、前記化合物が、原料容器から気化器に輸送され、気化器によって気化してキャリアガスと共に室に輸送され、前記室に輸送された前記化合物が反応剤(アンモニア、水素、水、酸素、オゾン、亜酸化窒素の群の中から選ばれる一種または二種以上の反応剤)と反応し、基板上にNi系材が形成される方法である。前記反応剤は前記化合物とは別に(例えば、別経路または時を違えて)前記室に輸送される。前記化合物の原料容器から気化器までの輸送経路(配管)は、例えば30~40℃(約33℃以上。例えば、約35℃程度)の温度に加熱されている。前記方法は、例えば前記化合物が室に輸送される工程を具備する。前記方法は、前記室に輸送された前記化合物の反応により基板上に前記Ni系材が設けられる工程を具備する。前記方法はALD法が採用される。前記室は、例えば成膜室(反応室とも称される)である。
【0032】
上記のようにして得られた前記Ni系材(例えば、膜)は、C(不純物成分)量が極めて少ないものであった。すなわち、純度が高かった。
【0033】
成膜過程においては、支障が起き難いものであった。例えば、前記化合物(原料(X(g))の気化・反応により、成膜が行われた。前記原料の0.7・X(g)が消費された後、成膜作業が停止された。原料容器と成膜室とを連結する配管の内部が観察された。前記配管の内部の閉塞(前記原料の固化による閉塞)は認められなかった。
【0034】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0035】
[実施例1]
〔Ni[i-C3H7NC(n-C3H7)N-i-C3H7]2:ビス(N,N’-ジイソプロピルブタンアミジネート)ニッケル〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.29molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドが、0.28molのノルマルプロピルリチウムを含有するジエチルエーテル溶液250mlに、ゆっくり、滴下された。この後、室温で4時間の撹拌が行われた。この反応混合液が、0.12molの塩化ニッケルジメトキシエタン付加体(NiCl2・DME)が100mlのテトラヒドロフランに懸濁した溶液に、徐々に、滴下された。この後、24時間の撹拌が行われた。溶媒留去後、500mlのノルマルヘキサンが加えられた。不溶物が濾過された。溶媒留去後、減圧(0.1torr)蒸留が行われた。ビス(N,N’-ジイソプロピルブタンアミジネート)ニッケルが収率80%で得られた。
【0036】
得られた前記化合物の減圧蒸留(精製)が行われた。気化したビス(N,N’-ジイソプロピルブタンアミジネート)ニッケル(蒸気)は、空冷管を通る間に液化し、受器に捕集された。この時、空冷管は35℃~40℃に加熱されていた。98%の回収率であった。
【0037】
前記精製品(ビス(N,N’-ジイソプロピルブタンアミジネート)ニッケル)が、冷却により、結晶化した。この結晶化した化合物が徐々に温められた。32℃~33℃で融解した。油回転式真空ポンプによる減圧蒸留において、沸点は92℃であった。
【0038】
前記精製品の純度は高かった。金属不純物分析(ICP-MS)による分析値(単位はwt.ppm)は、次の通りであった。Na<0.1,Mg<0.1,Fe=0.4,Zn=0.3,Ti<0.1,Cu=0.1,Cd<0.1,Mn<0.1,Co=0.1,Pb<0.1
【0039】
[実施例2]
図1の成膜装装置が用いられて成膜作業が行われた。
図1は成膜装置の概略図である。
図1中、1は原料容器である。2は基板加熱器(基板を保持して加熱)である。3は成膜チャンバー(分解反応炉)である。4は基板である。5は流量制御器である。6はシャワーヘッドである。7はキャリアガス(Ar,又はN
2など不活性ガス)である。10は、成膜時に成膜チャンバー3内に導入される添加ガス(例えば、Ar,N
2などの不活性ガス、及びH
2,NH
3などの還元性ガス)である。
【0040】
図1の装置が用いられて成膜作業が行われた。前記精製品(前記Niアミジネート錯体)が原料容器1内に入れられた。原料容器1に取り付けられたヒーターにより、原料容器1が80℃に加熱された。窒素ガス(キャリアガス)が20ml/分の割合で供給された。バブリングが行われた。これにより、5秒間に亘って、前記化合物(前記Niアミジネート錯体)が、窒素ガスと共に、成膜チャンバー3内に導かれた。ポンプにより、12秒間に亘って、成膜チャンバー3内が排気された。所定量の添加ガス(Arガス40sccm、NH
3ガス20sccm、H
2ガス80sccm)10が、成膜チャンバー3内に、5秒間に亘って、供給された。ポンプにより、12秒間に亘って、成膜チャンバー3内が排気された。再び、前記化合物が、窒素ガスと共に、成膜チャンバー3内に、5秒間に亘って、導かれた。このサイクルが100回繰り返された。基板加熱器2により、基板4は加熱(200~250℃)されている。基板4上に膜(金属Ni薄膜)が形成された。
【0041】
上記のようにして形成された膜は穴(開口部100nm、深さ1μm)の内壁に均一に施されていた。段差被覆性に優れていた。前記膜がXPSで調べられた。膜中のC量は2at%以下であった。膜中のN量は1at%以下であった。
【0042】
[実施例3]
図2の成膜装装置が用いられて成膜作業が行われた。
図2は成膜装置の概略図である。
図2中、1は原料容器である。2は基板加熱器である。3は成膜チャンバー(分解反応炉)である。4は基板である。5は流量制御器である。6はシャワーヘッドである。8は気化器である。9は、原料圧送用ガス(例えば、He,Arなどの不活性ガス。原料容器1から気化器8に原料を圧送)である。10は、成膜時に成膜チャンバー3内に導入される添加ガス(例えば、Ar,N
2等の不活性ガス、及びH
2,NH
3等の還元性ガス)である。11は、原料圧送用ガス9の圧力制御器である。12は液体流量制御器(気化器8への原料液体の圧送流量を制御)である。
【0043】
図2の装置が用いられて成膜作業が行われた。前記精製品(前記Niアミジネート錯体)が原料容器1内に入れられた。35℃~40℃に加熱された。原料圧送用ガス9としてN
2ガスが用いられた。前記圧力制御器11により、0.1MPaに調整された。液体流量制御器12により、前記化合物(アミジネート錯体)が圧送(圧送量は0.1mg/minに調整)された。前記化合物が気化器8に送り込まれた。前記化合物が気化器8に輸送される配管は35℃~40℃に加熱されていた。気化器8に送り込まれた前記化合物は、50sccmのArガス(キャリアガス)と共に、成膜チャンバー3内に、5秒間に亘って、導かれた。ポンプにより、12秒間に亘って、成膜チャンバー3内が排気された。所定量の添加ガス(Arガス40sccm、NH
3ガス20sccm、H
2ガス80sccm)10が、成膜チャンバー3内に、2秒間に亘って、供給された。ポンプにより、12秒間に亘って、成膜チャンバー3内が排気された。再び、前記化合物が、キャリアガスと共に、成膜チャンバー3内に、5秒間に亘って、導かれた。このサイクルが100回繰り返された。原料容器1から気化器までの前記化合物が輸送される配管は35℃~40℃に加熱されていた。基板加熱器2により、基板4は加熱(200~250℃)されている。基板4上に膜(金属Ni薄膜)が形成された。
【0044】
上記のようにして形成された膜は面内均一性に優れていた。前記膜がXPSで調べられた。膜中のC量は2at%以下であった。膜中のN量は1at%以下であった。
【符号の説明】
【0045】
1 原料容器
2 基板加熱器
3 成膜チャンバー
4 基板
5 流量制御器
6 シャワーヘッド
7 キャリアガス
8 気化器
9 原料圧送用ガス
10 成膜時添加ガス
11 原料圧送用ガス圧力制御器
12 液体流量制御器