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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068059
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】弁装置とこれを用いた減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20220426BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20220426BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G05D16/06 B
F16K17/30 A
F16K51/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177002
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北邑 有希雄
【テーマコード(参考)】
3H060
3H066
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB10
3H060CC35
3H060DA01
3H060DA03
3H060DC05
3H060DD04
3H060DD17
3H060DF08
3H060HH08
3H066AA01
3H066AA07
3H066BA38
5H316AA11
5H316BB04
5H316DD17
5H316EE02
5H316EE10
5H316JJ01
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】スケールの堆積を防止する弁装置およびこれを用いた減圧弁を提供する。
【解決手段】弁装置34は、流体Sの流入路62と流出路68との間を開閉する円筒形の弁体32と、弁体32をばね力によって弁シート40に着座させる第1のばね体44と、弁体32を開弁方向に押圧して弁シート40から離間させるシャフト部材42とを備えている。弁体40の外周面に、開弁したときの流体Sの流れによって弁体32を軸心周りに回転させる羽根45が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と流出路との間を開閉する円筒形の弁体と、
前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、
前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材とを備え、
前記弁体の外周面に、開弁したときの前記流体の流れによって前記弁体を軸心周りに回転させる羽根または溝が設けられている弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、閉弁時に前記弁体の平坦な頂面が前記弁シートに接触する弁装置。
【請求項3】
請求項1に記載の弁装置において、閉弁時に前記弁体の頂部の外周に設けられた傾斜面が前記弁シートに接触する弁装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の弁装置において、前記羽根または前記溝は、前記弁体の径方向から見て湾曲している弁装置。
【請求項5】
流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記主通路を開閉する主弁体と、
前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットと、を備え、
前記パイロット弁ユニットが、請求項1から4のいずれか一項に記載の弁装置と、
前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記ボール形弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有し、
前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有し、
さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、
前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している減圧弁。
【請求項6】
流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記主通路を開閉する請求項1から4のいずれか一項に記載の弁装置と、
前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記ボール形弁体を前記弁シートから離間させる弁駆動部とを備え、
前記弁駆動部は、前進して前記シャフト部を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる圧力付加部材とを有し、
前記主通路の一次側と二次側がそれぞれ前記弁装置の流入路と流出路を形成している減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に設けられて通路の開閉により通路の圧力を調節する弁装置とこれを用いた減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の通路には、通路内の圧力を調節するために種々の弁装置が配置される。そのような弁装置は、弁体を弁シートに対して着座および離間させることで閉弁および開弁を行う。弁体は、ばね体(通常、コイルばね)により弁シートに圧接される。その際、弁体は常に同じリング状の接触部で弁シートと接触する。その結果、弁体と弁シートまたはばね体との接触箇所に、図6に示すように、リング状にスケール80が堆積していた。このスケール80が弁体と弁シート間に噛み込むと、流体漏れが発生する恐れがある。
【0003】
また、弁体は、ばね体とも同じリング状の接触箇所で接触する。その理由は、ばね体の先端部が弁体との接触を安定させるために平面となるようにカットされているので、弁体との接触面がリング状となるからである。その結果、弁体とばね体との接触箇所にもリング状のスケールが堆積する。なお、弁装置および減圧弁の先行技術として下記のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-029872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このようなスケールの堆積を防止する弁装置およびこれを用いた減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置は、流体の流入路と流出路との間を開閉する円筒形の弁体と、前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材とを備えている。前記弁体の外周面に、開弁したときの前記流体の流れによって前記弁体を軸心周りに回転させる羽根または溝が設けられている。
【0007】
この構成によれば、円筒形の弁体の外周面に羽根または溝が設けられており、開弁したときの流体の流れがこの羽根または溝に作用することにより、弁体が軸心周りに回転する。したがって、開弁するたびに、弁体は回転する。これにより、弁体と弁シートとの接触箇所および弁体とばね体との接触箇所が変化するので、このような接触箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。
【0008】
本発明の弁装置において、閉弁時に前記弁体の平坦な頂面が前記弁シートに接触してもよい。または、閉弁時に前記弁体の頂部の外周に設けられた傾斜面が前記弁シートに接触してもよい。
【0009】
本発明の弁装置において、前記羽根または前記溝は、前記弁体の径方向から見て湾曲していてもよい。ここで、「羽根または溝が弁体の径方向から見て湾曲している」とは、羽根または溝の一端と他端とを結ぶ直線を内側にして外側に膨らむように滑らかに曲がっていることをいう。
【0010】
本発明の第1構成に係る減圧弁は、パイロット作動式と呼ばれるもので、流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、前記主通路を開閉する主弁体と、前記主弁体を開閉作動させるパイロット弁ユニットとを備えている。前記パイロット弁ユニットは、本発明の弁装置と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記ボール形の弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有している。前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有している。さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している。
【0011】
本発明の第2構成に係る減圧弁は、直動式と呼ばれるもので、流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、前記主通路を開閉する本発明の弁装置と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記ボール形の弁体を前記弁シートから離間させる弁駆動部とを備えている。前記弁駆動部は、前進して前記シャフト部を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有している。前記主通路の一次側と二次側がそれぞれ前記弁装置の流入路と流出路を形成している。
【0012】
第1構成および第2構成の減圧弁によれば、上述のように、弁体と弁シートとの接触箇所および弁体とばね体との接触箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弁装置および減圧弁によれば、スケールの堆積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る弁装置を備えた減圧弁を示す縦断面図である。
図2】同減圧弁の減圧前の状態を模式的に示す縦断面図である。
図3】同減圧弁の圧力調整状態を模式的に示す縦断面図である。
図4】同減圧弁の減圧保持状態を模式的に示す縦断面図である。
図5】同弁装置を示す縦断面図である。
図6】従来の弁装置を示す縦断面図である。
図7】同弁装置の弁体と弁シートとの接触箇所にスケールが堆積した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る弁装置を示す縦断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る弁装置を示す縦断面図である。
図10】本発明の弁装置を備えた減圧弁の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明するのに先立って、蒸気通路に用いる減圧弁について説明する。様々な産業において、コスト、利便性、安全性の観点から、蒸気は、熱媒体として用いられている。その最大のメリットとして、単位重量当たりの潜熱量が大きいこと、圧力をコントロールすれば温度も一定に保持できることがあげられる。
【0016】
蒸気を使用する場合、必要な圧力ごとに蒸気を発生させるのではなく、ボイラーで高圧の蒸気を発生させておいて、その蒸気を生産物や用途に応じて必要な圧力に下げて使用する。その場合、蒸気の圧力をほぼ一定に保つ自動弁が減圧弁である。圧力を下げる目的は、蒸気温度を下げて所望の加熱温度に保つためである。
【0017】
減圧の基本原理は、絞り現象と呼ばれるもので、蒸気が管内を流れるとき、蒸気が流れる通路を絞ると、絞られた箇所よりも下流側の蒸気圧力が低くなる。これが蒸気の減圧である。単に絞るだけであれば、バルブを中間開度に固定したり、オリフィスプレートを設けたりする方法があるが、この方法では、流量が変化した際に圧力も変わるという問題がある。そこで、流量や、一次側の圧力(絞り箇所の上流側の圧力)が変わっても、二次側の圧力(絞り箇所の下流側の圧力)が変動しないように、弁を通過する流体のエネルギーを直接利用して自動的に弁開度が変化するように設定されたバルブが減圧弁である。
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る弁装置を用いたパイロット作動式の減圧弁を示す。図1において、減圧弁は流体の一種である蒸気Sが流れる主通路1に配置されている。減圧弁PRVのケーシング2は、本体ケース4と、上ケース6と下ケース8とを連結してなる。本体ケース4の内部に、一次側通路10と、二次側通路12と、その間にある弁室14とが形成されている。一次側通路10および二次側通路12が、弁蒸気Sが流れる主通路1の一部を形成する。弁室14には、弁ホルダ16と、その内部を摺動する主弁体18とが配置されている。弁ホルダ16は、その上部が本体ケース4にねじ連結により支持されている。
【0019】
主弁体18は、コイルスプリングからなる主ばね体20により、弁ホルダ16に形成された主弁シート22に接触して閉弁する方向にばね力が付加されている。弁室14の上方には、主弁体18を駆動する主弁駆動部24が配置されている。この主弁駆動部24は、主弁体18に当接するピストン26が、本体ケース4に支持されたシリンダ28に摺動自在に挿入されている。ピストン26の上方が、後述する主弁体駆動室27となっている。ピストン26には主弁体駆動室27の圧力を逃がす逃がし孔29が設けられている。
【0020】
上ケース6の上部に、パイロット弁ユニット30が配置されている。つまり、上ケース6が、パイロット弁ユニット30のケーシングを形成する。このパイロット弁ユニット30は、円筒形の弁体32を含む弁装置34と、この弁装置34を開閉させる弁駆動部36とを有する。弁装置34は、弁座ブロック37を有し、その先端部(図1の左端部)に弁シート40が形成されている。弁シート40の中央部に、弁体32により開閉される弁口41が開口している。
【0021】
弁座ブロック37に、シャフト部材42が前後方向(図1の左右方向)に貫通して挿入されている。シャフト部材42の先端部42aが弁体32に接触し、後端部42bが弁駆動部36の後述する先端板38に対向している。弁体32は、コイルスプリングからなる第1のばね体44によって弁シート40に押し付けられている。つまり、閉弁時に円筒形の弁体32の平坦な頂面32aが弁シート40に接触し、弁体32の平坦な底面32bと、上ケース6に設けた第1のばね受け48との間に第1のばね体44が介装されている。
【0022】
弁駆動部36は、先端(図1の左端)の押圧板38が、後方(図1の右方)から前方(図1の左方)へ向かって、コイルスプリングからなる第2のばね体54によって押圧されている。第2のばね体54は、押圧板38に接触する先端部材56と、カバー部材50の内側に配置された第2のばね受け58との間に介装されている。カバー部材50は、上ケース6(ケーシング)にねじ連結されている。カバー部材50と先端部材56との間にプッシュロッド60が配置され、このプッシュロッド60は第2のばね体54の内側空間を通っている。
【0023】
弁駆動部36は、圧力調整手段49を有している。圧力調整手段49は、前記押圧板38とベローズ43とを有し、第2のばね体54を閉弁方向(右方向)に後退させる。つまり、圧力調整手段49は、第2のばね体54をそのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材を構成する。
【0024】
押圧板38にベローズ43の先端部43aが接続されており、ベローズ43の基端部43bが、上ケース6とカバー部材50との間で固定支持されている。カバー部材50に、圧力調整用の調整ハンドル52が回動自在にねじ連結されている。
【0025】
弁装置34の前側(左側)には第1のばね体44を収納するパイロット室62が配置されている。このパイロット室62に、一次導通路64を介して一次側通路10が連通している。パイロット室62には、異物除去用のスクリーン66が配置されている。また、弁装置34における弁体32の下流側に、弁口41に連通する貫通路68が形成されている。これらパイロット室62と貫通路68とが、パイロット弁ユニット30に対する流入路と流出路をそれぞれ形成している。他方、圧力付加手段49が収納されている圧力導入室70には、二次導通路72を介して二次側通路12が連通している。
【0026】
つぎに上記構成の作動を説明する。
[減圧前]
図2は減圧動作の開始前を示し、主弁体18が閉弁状態にある。この減圧弁に蒸気Sが通気されると、蒸気Sは一次側通路10から一次導通路64を通ってパイロット室62に達する。
【0027】
[圧力調整]
調整ハンドル52を減圧方向(左回り)に回転させると、図3に示すように、圧力付加手段49のプッシュロッド60が前方(左方向)へ移動する。これに伴い、ベローズ43が伸長して先端板38によりシャフト部材42を前方(左方向)へ移動させ、弁体32を開く。これにより、流出路(貫通路)68に蒸気Sが流れ、ピストン26を押し下げて主弁体18を開弁させる。このとき、圧力付加手段49の先端の押圧板38と弁座ブロック37の背面との間には若干の隙間Gが存在する。主弁体18の開弁により、一次側通路10内の蒸気Sが二次側通路12に流入して減圧される。
【0028】
[減圧の保持]
二次側通路12に流入した蒸気Sの一部が、図4に示すように、二次導通路72を通って圧力導入室70に達する。圧力導入室70内の蒸気圧力によって圧力付加手段49のベローズ43が押し縮められ、先端板38が右方向へ後退する。これにより、シャフト部材42の後方(右方向)への移動を許容して弁体32を閉弁方向に移動させる。このようにして主弁体駆動室27の圧力が調整されることで、主弁体18の開度が調整され、二次側通路12の圧力が一定に保たれる。
【0029】
つぎに、本発明の要部である弁装置34について説明する。図5に示すように、弁装置34のシャフト部材42は、シャフト部材42の軸心C1が弁体32の軸心CPに一致するように弁体32に接触している。弁体32の外周面に、周方向に並んで複数の羽根45が設けられている。羽根45は、弁体32の外周面から径方向外側に突出するとともに、弁体32の軸方向CPに延びている。羽根45は、弁体32が開弁したときの流体Sの流れによって弁体32を軸心周り(R1方向)に回転させる。
【0030】
本実施形態では、羽根45は、弁体32の径方向から見て湾曲している。ここで、「羽根45が弁体32の径方向から見て湾曲している」とは、羽根45の一端(前端)45aと他端(後端)45bとを結ぶ直線L1を内側にして外側に膨らむように滑らかに曲がっていることをいう。この直線L1は、前端45aが後端45bよりも回転方向R1に偏位するように傾斜している。
【0031】
このような羽根45を設けることで、弁体32が開弁したときの流体Sの流れが羽根45に作用することにより、弁体32が軸心CP周りに矢印R1方向に回転する。したがって、弁体32は、開弁するたびに回転する。これにより、弁体32と弁シート40との接触箇所および弁体32と第1のばね体44との接触箇所が変化するので、このような接触箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。
【0032】
ここで、図6に示す羽根45が設けられていない従来の弁体32は、開弁しても回動しない。そのために、弁体32は、頂面32aにおける周方向の常に同じ接触箇所CTで弁シート40に接触していた。その結果、接触箇所CTの周囲に、図7に示すように、弁体32と弁シート40との接触箇所に、リング状にスケール80が堆積していた。
【0033】
また、図6の第1のばね体44における弁体32の底面32bとの接触箇所は、リング状で、かつ弁体32における同一部位になる。その結果、やはり、接触箇所の周囲にリング状にスケール80が堆積していた。
【0034】
これに対し、図5の第1実施形態では、上述のとおり、弁体32が開弁したときの流体Sの流れが羽根45に作用することにより、弁体32が軸心CP周りに矢印R1方向に回転するので、接触箇所が一定とならず、接触箇所の周囲にスケールが堆積しない。
【0035】
図8は、第2実施形態に係る弁装置を示す。第2実施形態では、羽根45に代えて、弁体32の外周面に溝75が形成されている。溝75は、弁体32の周方向に並んで複数設けられている。溝75は、弁体32の外周面から径方向内側に凹入するとともに、径方向から見て、図5の羽根45と同様に湾曲して軸心CPの方向に延びている。
【0036】
溝75は、弁体32が開弁したときの流体Sの流れによって弁体32を軸心周りに回転方向R1に回転させる。これにより、弁体32と弁シート40との接触箇所および弁体32と第1のばね体44との接触箇所が変化するので、このような接触箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0037】
図9は、第3実施形態に係る弁装置を示す。第3実施形態では、弁体32の頂部の外周に、傾斜面82が設けられている。詳細には、弁体32の頂部が円錐台形状を有しており、この円錐台の外周面が傾斜面82を構成している。弁体32の閉弁時に、この傾斜面82が弁シート40に接触する。その他の構成は、第1実施形態と同じである。第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
本発明はパイロット作動式に限らず、図10に示す直動式の減圧弁PRV1にも適用できる。この減圧弁PRV1は、図1のパイロット弁ユニット30とほぼ同一の構造であり、同一部分に同一の符号が付されている。この減圧弁PRV1は、図5の第1実施形態の弁装置34を用いている。図10において流入路となる一次側通路10が弁体32の開弁により減圧されて、流出路である二次側通路12から流出する。
【0039】
この直動式の減圧弁PRV1の作動はつぎの通りである。
[減圧前]
第1のばね体44によって弁体32が弁シート40に押圧されて閉弁状態にある。
【0040】
[圧力調整]
ハンドル52を左に回すと、弁駆動部36の圧力調整手段49に含まれた第2のばね体54が伸長し、シャフト部材42を押し下げて弁体32を開く。これにより、一次側通路10の蒸気Sが二次側通路12に流れる。
【0041】
[減圧の保持]
二次側通路12の圧力が高くなると、ベローズ43が収縮し、シャフト部材42の上昇が許容されて、弁体32が閉弁方向(上方向)に移動する。これにより、弁体32の開度が調整される。
【0042】
上記実施形態に開示された複数の構成の組合せも本発明に含まれる。例えば、図8の第2実施形態の溝75が設けられた弁体32の底部に、図9の第3実施形態の傾斜面82が設けられてもよい。
【0043】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、図5の弁装置34を減圧弁PRVに使用したが、減圧弁PRVに限定されず、例えば、蒸気トラップに使用することもできる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
18 主弁体
24 主弁駆動部(第2の弁駆動部)
30 パイロット弁ユニット
32 ボール形の弁体
34 弁装置
36 弁駆動部(第1の弁駆動部)
40 弁シート
42 シャフト部材
44 第1のばね体(コイルスプリング)
45 羽根
49 圧力調整手段(閉弁力付加部材)
54 第2のばね体
62 パイロット室(流入路)
68 貫通路(流出路)
75 溝
82 傾斜面
PRV、PRV1 減圧弁
S 流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10