(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068067
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】鋼管被覆コンクリート杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
E02D5/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177015
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】木谷 好伸
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041CB06
2D041DB05
2D041DB13
2D041DB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構造で、鋼管の保持する引張力を負担して、かつ作用する圧縮力により鋼管が座屈することを防止し、更に通常同様1回の遠心成形で製造可能な鋼管被覆コンクリート杭を提供する。
【解決手段】コンクリート製の杭本体4の外側面を鋼管(11,21)で覆った鋼管被覆コンクリート杭60で、鋼管は上部鋼管11と下部鋼管21とを間隙20で分割してある。内面側から間隙20を塞ぐプレート固定具30と外側面側の連結プレート40とを、挟んでボルト47で緊結して固定してある。連結プレート40は上部鋼管11の上係止凸条13に係止し、かつ下部鋼管21の下係止凸条23に係止して、間隙20が広がる方向の引張力に対抗して、圧縮力を受け入れて間隙20を縮めるようにして鋼管(11,21)の座屈を防止した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の鋼製端板を設けたコンクリート製の杭本体の側面に鋼管を取り付けた鋼管被覆コンクリート杭であって、以下のように構成したことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭。
(1) 前記鋼管を上部鋼管と下部鋼管とに分割して、前記上部鋼管の下端との間に間隙を形成し、
(2) 前記間隙を塞ぐ平面円弧状の連結プレートを複数枚配置し、
(3) 「前記連結プレートの上端部と前記上部鋼管の下端部とを密着し、かつ前記連結プレートの上端部と前記上部鋼管の下端部とを前記杭本体の長さ方向で相対位置を変更可能とし」
および/または、
「前記連結プレートの下端部と前記下部鋼管の上端部とを密着し、かつ前記連結プレートの下端部と前記下部鋼管の上端部とを前記杭本体の長さ方向で相対位置を変更可能とし」た。
【請求項2】
上部鋼管と杭本体との当接面、下部鋼管と杭本体との当接面、を摺動可能としたことを特徴とする請求項1記載の鋼管被覆コンクリート杭。
【請求項3】
上下の鋼製端板を設けたコンクリート製の杭本体の側面に鋼管を取り付けた鋼管被覆コンクリート杭であって、以下のように構成したことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭。
(1) 前記鋼管を上部鋼管と下部鋼管とに分割して、前記上部鋼管の下端との間に間隙を形成し、
(2) 前記杭本体で、前記間隙の位置にプレート固定具を埋設し、
前記プレート固定具の上端部外面を前記上鋼管の下端部内面に密着し、かつ摺動可能に形成し、さらに、
前記プレート固定具の下端部外面を前記下鋼管の上端部内面に密着し、かつ摺動可能に形成し、
(3) 前記上部鋼管の下端部外周に水平方向の上係止凸条を形成し、前記下部鋼管の上端端部外周に水平方向の下係止凸条を形成し、
(4) 前記間隙を塞ぐ幅を有する連結プレートの複数枚を、平面環状に配置し、
前記連結プレートの内面は、平面視で前記鋼管の円弧と略同一の円弧状に形成し、さらに
前記連結プレートの内面上端部に前記上係止凸条の上側と係止できる上受け凸条を形成し、かつ
前記連結プレートの内面下端部に前記下係止凸条の下側と係止できる下受け凸条を形成し、
(5) 前記連結プレートと前記プレート固定具とを、前記杭本体の軸方向および放射方向に移動を規制して固定した。
【請求項4】
上部鋼管と杭本体との当接面、下部鋼管と杭本体との当接面、および上部鋼管とプレート固定具との当接面、下部鋼管とプレート固定具との当接面を摺動可能としたことを特徴とする請求項3記載の鋼管被覆コンクリート杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の杭本体の外側面に鋼管を巻いたいわゆるSC杭で、鋼管を2つに分割して、また、鋼管の内面と杭本体の外側面とを移動可能とした鋼管被覆コンクリート杭に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の杭本体の外面を鋼管で巻いた鋼管被覆コンクリート杭(SC杭)が、作られており、コンクリート杭が負担する引張力を増強した構造であり、大きな水平荷重を負担できるために主に地面付近で使用されていた。したがって、SC杭では、生じた引張力は主に鋼管が負担し、圧縮力は主にコンクリートが負担すると考えられている。
【0003】
この場合、地面付近で曲げ応力が生じた場合、SC杭の直径方向の一側で引張力が生じ、反対側で圧縮力が生じていた。過度の圧縮力を受けた部分で、鋼管に座屈が生じるおそれがあり、座屈防止のために、必要以上に鋼管の厚さを厚くすることは経済的ではないため、座屈防止のために種々の工夫が提案されていた。
例えば、鋼管の内側に引張強度を強化した第一コンクリート層を形成し、さらにその内側に通常の第二コンクリート層を形成したSC杭が提案されている(特許文献1)。また、SC杭のコンクリート層の内側に隙間を空けて別の鋼管やコンクリート層を形成するSC杭が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-265702号公報
【特許文献2】特開2016-223207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常のSC杭は、鋼管の中空部にコンクリート(モルタル)を打設して鋼管を回転しながら遠心成形して所定の養生をして製造していた。したがって、前記従来のSC杭では、コンクリートの中空部にさらに、コンクリート層を形成するため、外側のコンクリート層が固化した後に、再度遠心や鋼管を形成して、内側のコンクリート層などの養生日数を要するために、製造工程が煩雑で日数を要する問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋼管の内側のコンクリートは現状のままで、外周の鋼管を分割して、特殊な連結したので、問題を解決した。
【0007】
即ちこの発明は、上下の鋼製端板を設けたコンクリート製の杭本体の側面に鋼管を取り付けた鋼管被覆コンクリート杭であって、以下のように構成したことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭である。
(1) 前記鋼管を上部鋼管と下部鋼管とに分割して、前記上部鋼管の下端との間に間隙を形成し、
(2) 前記間隙を塞ぐ平面円弧状の連結プレートを複数枚配置し、
(3) 「前記連結プレートの上端部と前記上部鋼管の下端部とを密着し、かつ前記連結プレートの上端部と前記上部鋼管の下端部とを前記杭本体の長さ方向で相対位置を変更可能とし」
および/または、
「前記連結プレートの下端部と前記下部鋼管の上端部とを密着し、かつ前記連結プレートの下端部と前記下部鋼管の上端部とを前記杭本体の長さ方向で相対位置を変更可能とし」た。
【0008】
また、前記発明において、上部鋼管と杭本体との当接面、下部鋼管と杭本体との当接面、を摺動可能としたことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭である。
【0009】
また、他の発明は、上下の鋼製端板を設けたコンクリート製の杭本体の側面に鋼管を取り付けた鋼管被覆コンクリート杭であって、以下のように構成したことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭である。
(1) 前記鋼管を上部鋼管と下部鋼管とに分割して、前記上部鋼管の下端との間に間隙を形成し、
(2) 前記杭本体で、前記間隙の位置にプレート固定具を埋設し、
前記プレート固定具の上端部外面を前記上鋼管の下端部内面に密着し、かつ摺動可能に形成し、さらに、
前記プレート固定具の下端部外面を前記下鋼管の上端部内面に密着し、かつ摺動可能に形成し、
(3) 前記上部鋼管の下端部外周に水平方向の上係止凸条を形成し、前記下部鋼管の上端端部外周に水平方向の下係止凸条を形成し、
(4) 前記間隙を塞ぐ幅を有する連結プレートの複数枚を、平面環状に配置し、
前記連結プレートの内面は、平面視で前記鋼管の円弧と略同一の円弧状に形成し、さらに
前記連結プレートの内面上端部に前記上係止凸条の上側と係止できる上受け凸条を形成し、かつ
前記連結プレートの内面下端部に前記下係止凸条の下側と係止できる下受け凸条を形成し、
(5) 前記連結プレートと前記プレート固定具とを、前記杭本体の軸方向および放射方向に移動を規制して固定した。
【0010】
また、前記発明において、上部鋼管と杭本体との当接面、下部鋼管と杭本体との当接面、および上部鋼管とプレート固定具との当接面、下部鋼管とプレート固定具との当接面を摺動可能としたことを特徴とする鋼管被覆コンクリート杭である。
【0011】
上記および下記において、コンクリートは、コンクリート系材料の意味で、粗骨材を含まない各種モルタルやセメントミルクも含む概念である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、鋼管を上部鋼管と下部鋼管に分割した間隙を覆うように、連結プレートとプレート固定具とで上部鋼管の下端部と下部鋼管の上端部とを挟んで、間隙が縮む方向へ上部鋼管と下部鋼管を移動可能としたので、通常の鋼管被覆コンクリート杭の引張方向の強度を確保できる。さらに、圧縮方向の荷重に対しても上部鋼管と下部鋼管の移動を可能として、鋼管の座屈を防止できる。
また、分割して連結した鋼管は通常の鋼管と同様に取り扱えるので、通常の鋼管被覆コンクリート杭と同様に、鋼管内にコンクリートを打設して通常の1回の遠心成形で製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の鋼管被覆コンクリート杭で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はA-A端面図、(d)はB-B端面図、を表す。
【
図3】この発明の鋼管被覆コンクリート杭で、連結プレートを取り付ける前の正面図、を表す。
【
図4】この発明の鋼管被覆コンクリート杭で、(a)は
図3のD-D拡大端面図で連結プレートを配置した状態を現し、(b)はE-E拡大端面図で、左側の一部が連結プレート取付後、右側が連結プレート取付前を表した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づきこの発明の実施形態を説明する。ここで、各部材の内面は鋼管被覆コンクリートの材軸8側、外面は材軸8から放射側を指す(
図1(a)(c)(d))。
【0015】
1.鋼管被覆コンクリート杭60
【0016】
(1) 上下に上端板1および下端板2を固定した鋼管10の内側に、従来のコンクリ―トを充填して遠心成形し、所定の養生後に鋼管10の内側にコンクリート層からなる杭本体4を形成して、鋼管被覆コンクリート杭60を構成する(
図1)。すなわち、コンクリート製の杭本体4の外側面に鋼管10を取り付けて被覆した構成である。
【0017】
(2) 鋼管10は、上部鋼管11と下部鋼管21に分割して、上部鋼管11の下端12aと下部鋼管21の上端22aとに間に高さH0の間隙20を形成する(
図2、
図4(b))。
上部鋼管11の上端11aは上端板1に固定され、上部鋼管11の下端12aから若干距離を空け、上部鋼管11の外面11bに略水平方向の上係止凸条13を形成する。また、下部鋼管21の下端22bは下端板2に固定し、下部鋼管21の上端22aから若干距離を空け、下部鋼管21の外面21bに略水平方向の下係止凸条23を形成する。上係止凸条13は上部鋼管11の全周に形成し、下係止凸条23は下部鋼管21の全周に形成してある(
図3、
図1)。
【0018】
(3) 鋼管10(上部鋼管11、下部鋼管21)の内径(内面11a、21a)と外径(外面31a)がほぼ一致し、高さ(長さ)H1の鋼管(環状、筒状)からなるプレート固定具30を配置する(
図2)。プレート固定具30は、間隙20を内面側(杭本体4側)から覆い、かつプレート固定具30の上端32aは上部鋼管11の上係止凸条13の上端12aよりも上方に位置し、プレート固定具30の下端32bは下部鋼管21の下係止凸条23の下端22bよりも下方に位置する(
図2)。
プレート固定具30の外面31bで、上下方向で略中央(間隙20の上下方向で略中央)に、螺孔34を水平向に配置したナット材33を多数固定する。ここでは、ナット材33、33は水平面内において同一間隔で24個を環状に配してある(
図4(a))。
なお、前記において、ナット材33はプレート固定具30に水平方向の螺孔34を形成できれば、他の構造でも可能である。例えば、プレート固定具30にボルトが通過できる透孔を形成して、透孔に対応してプレート固定具30の内面31a側にナット材33を固定することもできる(図示していない)。さらに、ナット材33を省略してプレート固定具30の材厚を厚くしてプレート固定具30の厚さ内に螺孔34を形成することもできる(図示していない)。
【0019】
(4) また、間隙20を外面側から覆うことができ、かつ上部鋼管11と下部鋼管21とを連結する連結プレート40を配置する。連結プレート40は、高さH2の鋼管を水平面内で、3分割した構造で、これを3枚使用する(
図4、
図2)。
連結プレート40は、その上端部で内面40aに、上部鋼管11の上係止凸条13の上端13aに係止する上受け凸条41を備え、かつ連結プレート40の下端部で内面40aに、下部鋼管21の下係止凸条23の下端23aに係止する下受け凸条43を備えている(
図2、
図4)。
また、上受け凸条41が上部鋼管11の上係止凸条13の上端13aに係止し、かつ下受け凸条43が下部鋼管21の下係止凸条23の下端23bに係止した際に、ナット材33の螺孔34と連通できるように各連結プレート40、40に透孔45、45を形成する。したがって、螺孔34、34の位置および大きさに対応させて、透孔45、45を形成する(
図4(b))。
【0020】
(5) ナット材33の螺孔34に螺合でき、連結プレート40の透孔45に挿入できるボルト47、47を用意する。
上部鋼管11と下部鋼管21の間隙20を外面側から塞ぐように、各連結プレート40、40を配置して、連結プレート40の上受け凸条41を上部鋼管11の上係止凸条13の上端13aに係止し、連結プレート40の下受け凸条43を下部鋼管21の下係止凸条23の下端23bに係止する(
図4)。この状態を保ち、各連結プレート40、40の各透孔45からボルト47を挿入して、プレート固定具30の螺孔34(ナット材33)にボルト47を螺合緊結して、連結プレート40、上部鋼管11の下端部および下部鋼管21の上端部およびプレート固定具30を一体に固定する。したがって、この状態で上部鋼管11と下部鋼管21は、間隙20がプレート固定具30でふさがれた状態で、材軸8方向、放射方向で隙間なく一体の鋼管10を構成する(
図4、
図2)。なお、連結プレート40は3枚に分割したので、隣接する連結プレート40、40の間には、多少の間隙46が形成されている(
図1)。
【0021】
(6) また、上部鋼管11の内面11aと杭本体4およびプレート固定具30の上部には剥離剤などの塗布や剥離シートを貼った剥離処理面51を形成してあり、密着した面が移動可能としてある。同様に、下部鋼管21の内面21aと杭本体4およびプレート固定具30の下部にも剥離剤などの塗布や剥離シートを貼った剥離処理面52を形成して、密着した面が移動可能としてある(
図2、
図1(d)、
図4(d))。なお、剥離処理面51は杭本体4の上端と上部鋼管11の上端12aまで施してあり、剥離処理面52は杭本体4の下端と下部鋼管21の下端22bまで施してある。
【0022】
(7) 以上のようにして、この発明の鋼管被覆コンクリート杭60を構成する(
図1)。
【0023】
2.鋼管被覆コンクリート杭60の製造
【0024】
(1) この鋼管被覆コンクリート杭60を製造する際には、まず、上記構造の鋼管10(すなわち、上部鋼管11と下部鋼管21とを、間隙20を塞いで、プレート固定具30と連結プレート40とで挟んで一体とした構造)を組み上げる(
図1(b)(d)、
図4(b))。また、前記のように、上部鋼管11の内面11aと下部鋼管21の内面21aは、材軸8方向の全長に渡り、剥離剤などの液体の塗布、剥離シートの接着などによる剥離処理面51、52を形成してある(
図1(d)、
図4(b)、
図2)。
【0025】
(2) 次に、上部鋼管11と下部鋼管21が連結された鋼管10を、従来と同様に、遠心成形機に取り付ける。
続いて、鋼管10内にコンクリートを投入して従来と同様の遠心成形をして、所定の養生をすれば、鋼管被覆コンクリート杭60が製造される。
したがって、コンクリート製の杭本体4で、プレート固定具30の位置には、プレート固定具30の外形(内面31a側)に合わせた形状の凹部6が形成される(
図2、
図4(b))。
【0026】
(3) 鋼管被覆コンクリート杭60の鋼管10では、上部鋼管11と下部鋼管21とが、高さが低い(材軸8方向の長さ方向が短い)鋼管からなるプレート固定具30と連結プレート40.40とをボルト47で固定して、挟んであるので、プレート固定具30と連結プレート40は、通常の使用状態で、材軸8方向および材軸8の放射方向で移動が規制された状態となっている。
【0027】
3.鋼管被覆コンクリート杭60の使用
【0028】
(1) このように構成した鋼管被覆コンクリート杭60は従来と同様に、必要本数を埋設した既製杭(下杭)61の最上部(地上付近)で使用する(
図1(b))。
【0029】
(2) 鋼管被覆コンクリート杭60に作用する地上構造物の重量などによる垂直下方の荷重は、主にコンクリート製の杭本体4が負担し、杭本体4の外周を鋼管10で拘束するのでより大きな荷重を負担できる。
また、鋼管被覆コンクリート杭60に作用する引抜方向の荷重については通常と同様に、主に鋼管10が負担する。この際、上部鋼管11と下部鋼管21との間に間隙20を形成してあるが、ボルト47で固定したのでプレート固定具30および連結プレート40により、一体の鋼管10として作用できる。
【0030】
(3) また、鋼管被覆コンクリート杭60に、地震や風など水平方向の突発的に過度の荷重が作用した場合には、一側に大きな圧縮力、他側に大きな引張力が生じる。
過度の引張力に対しては、上部鋼管11と下部鋼管21が離れる方向(間隙20が広がる方向)に荷重が作用するが、連結プレート40の上受け凸条41と上部鋼管11の上係止凸条13とが係止し、かつ連結プレート40の下受け凸条43と下部鋼管21の下係止凸条23とが係止し、さらに連結プレート40とプレート固定具30とが、上部鋼管11の下部と下部鋼管21の下端部を挟んで密着するので、上記係止が維持され、従来の鋼管と同様に材料の特性に応じた効果を果たすことができる。
また、過度の圧縮力に対しては上部鋼管11と下部鋼管21が過度に圧縮された場合、間隙20の高さH0が小さくなる方向に荷重が作用する。間隙20の高さH0が小さくなる場合、上部鋼管11の下端部と下部鋼21管の上端部は連結プレート40とプレート固定具30とに密着して挟まれ、かつ剥離処理面51、52が形成されているので、上部鋼管11と下部鋼管21とは杭本体4の外面5(剥離処理面51、52)に沿って摺動して、間隙20の長さH0を小さくする方向に移動して、鋼管10の座屈を防止できる。また、過度の圧縮力が解除された場合には、上部鋼管11と下部鋼管21は元に戻り、間隙20は長さH0となる。
【0031】
4.他の実施形態
【0032】
(1) 前記実施形態において、連結プレート40は3枚から構成したので、施工効率が良いが、2枚以上であれば支障なく製造することができる(図示していない)。
【0033】
(2) また、前記実施形態において、プレート固定具30は鋼管を使用して環状な形状としたが、鋼管を分割した断続的な環状とすることもできる(図示していない)。
【0034】
(3) また、前記実施形態において、プレート固定具30の外面31側にナット材33を固定したが、螺孔34が形成できれば,プレート固定具30は他の構造とすることもできる。例えば、プレート固定具30の内面31a側にナット材33を固定して、プレート固定具30に螺孔34に対応した透孔を形成することもできる(図示していない)。また、ナット材33を省略して、プレート固定具30に直接に螺孔34を形成することもできる(図示していない)。
【0035】
(4) また、前記実施形態において、上部鋼管11の外面11bに上係止凸条13、下部鋼管21の外面21bに下係止凸条23を形成したが、上部鋼管11の内面11aに上係止凸条13、下部鋼管21の内21aに下係止凸条23を形成することもできる(図示していない)。この場合、上受け凸条41、下受け凸条43を有する連結プレート40を内側(杭本体4側)に配置してプレート固定具30を外側に配置する。また、ナット材33を連結プレート40に固定する。
この場合は、内側(材軸8側)に配置される連結プレート40が一体の環状で、外側に配置されるプレート固定具30が例えば3つに分割された環状に構成する。
要は、連結プレート40およびプレート固定具は、上部鋼管11の下端部と下部鋼管21の下端部を挟んで固定して、引張力を受けた場合に、通常の鋼管として一体に引張力を負担でき、圧縮力を受けた場合に、間隙20が狭くなるように移動するが、鋼管10としての径を保ち、材軸8側や材軸8の放射側に移動しないように保てる構造であれば良い。
【0036】
(5) また、前記実施形態において、連結プレート40は、上部鋼管11の上係止凸条13および下部鋼管21の下係止凸条23の両方に係止することが好ましいが、連結プレート40の上端32aと上部鋼管11、あるいは下端32bと下部鋼管21とを係止せずに、固定することもできる(図示していない)。
【0037】
(6) また、前記実施形態において、間隙20は鋼管10の上側に形成することが好ましいが、中間部または下側に形成することもできる(図示していない)。
【0038】
(7) また、前記実施形態において、上部鋼管11の上端12aまで、下部鋼管11の下端22bまで、材軸8方向で全長に亘り、コンクリート製の杭本体4との接触面に剥離処理面51、52を形成したが、材軸8方向で断続的に、あるいは一部分に剥離処理面51、52を形成することもできる(図示していない)。
さらに、前記実施形態において、剥離処理面51、52を形成したが、ある程度の圧縮力で、上部鋼管11の内面11aと杭本体4の外面5との間の付着が切れ、あるいは下部鋼管21の内面21aと杭本体4の外面5との間の付着が切れ摺動できれば、剥離処理面51、52のいずれか一方または両方を省略することもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0039】
1 上端板
2 下端板
4 杭本体(コンクリート)
5 杭本体の外面
6 杭本体の凹部
10 鋼管
11 上部鋼管
12a 上部鋼管の上端
12b 上部鋼管の下端
13 上係止凸条
20 間隙
21 下部鋼管
22a 下部鋼管の上端
22b 下部鋼管の下端
30 プレート固定具
31a プレート固定具の内面
31b プレート固定具の外面
32a プレート固定具の上端
32b プレート固定具の下端
33 プレート固定具のナット材
33a ナット材の外面
33b ナット材の内面
34 ナット材の螺孔
40 連結プレート
41 連結プレートの上受け凸条
43 連結プレートの下受け凸条
45 連結プレートの透孔
47 ボルト
51 剥離処理面(上部鋼管側)
52 剥離処理面(下部鋼管側)
60 鋼管被覆コンクリート杭
61 他の杭(下杭)