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特開2022-68068経皮的全内視鏡用椎間板ヘルニア把持鉗子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068068
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】経皮的全内視鏡用椎間板ヘルニア把持鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177016
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】経皮的全内視鏡で使用する把持鉗子は,顎口面が小さく把持力が十分ではなく,椎間板ヘルニアを引き出す際に滑ってなかなか引き出せないことがよくある.
【解決手段】当発明の器具は可動顎先端の突出歯とその分欠切された固定顎により,椎間板ヘルニアを顎部全体で把持しながら引き出しの際に突出歯が椎間板をせき止める壁となり滑りにくくなり摘出しやすくなる.突出歯は鋭くないため神経や神経周囲の膜を損傷するリスクが増えることはない.可動顎が構造的に弱くならない.
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的全内視鏡用の把持鉗子において,その先端側は可動顎と固定顎から構成され,可動顎と固定顎の先端部は曲線的で,可動顎と固定顎の顎口面には陥凹があって匙形状となっており,顎口面辺縁は先端以外では側方から見て直線もしくは小鋸歯形状で,
可動顎の先端に一つの突出歯があり,その突出歯は曲線的に固定顎側に突出して突出歯の内壁は可動顎長軸に対して垂直の部分と直角以上の角度の返し部分を有し,突出の長さが鉗子直径の15%以上と外見上顕著であり,突出歯の先端は正面から見て曲線もしくは鈍角となっており鋭い部分がなく,
固定顎の先端は,正面から見て前記突出歯の分だけ欠削された形であることを特徴とする把持鉗子.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脊椎経皮的全内視鏡下手術で使用する椎間板ヘルニア等の軟部組織を摘出するための把持鉗子に関するものである.
【背景技術】
【0002】
低侵襲脊椎手術において脊椎経皮的全内視鏡を用いる方法がある.脊椎経皮的全内視鏡900とは図1図2のように体内に挿入する部分である本体部分901は外径約6mm弱から7mm弱程の細長い円柱で,そのなかで鏡筒902と光源路903と潅流水路904と作業用内腔905が一体となったものである.皮膚切開部Sから体内に外筒906を挿入し,その中に本体部分901を挿入して,潅流水路904から水を流して対象周囲を洗い流しながら,接続されたカメラからの画像をモニターに拡大して写して,作業用内腔905に挿入した鉗子100等の器具にて脊椎Bや椎間板D等に対して操作する.作業用内腔905に挿入できる器具は外径2.5mmから4mmほどで長さ200mmから400mm程の細長い円柱形を基本外形とするものにハンドル等が付属している器具である.
【0003】
経皮的全内視鏡下椎間板ヘルニア切除術において,通常では図3で示す経皮的全内視鏡用の把持鉗子が用いられている.先端側Tには固定顎110と可動顎120があり,細長いシャフト930があり,その中にロッド940がある.手元側Hにはハンドル950があり,ハンドル操作でシャフト930内をロッド940が摺動し,ロッド940と接続している可動顎120が開閉する(図4aが最大開状態,図4bが閉状態).図4,5のように,固定顎110と可動顎120のそれぞれの顎口面111,121は陥凹して辺縁が鈍刃状となった匙形状(図5の点線が陥凹底112,122を示している)となっている.器種によっては図6のように,辺縁は鈍刃ではなく角張った小突起が複数並んだ小鋸歯構造113,123のものもある.手術では,椎間板ヘルニアを鏡視しながら,可動顎をハンドル操作により閉じて椎間板ヘルニアを把持して手元側Hへ引き出す.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-21346
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経皮的全内視鏡で使用する把持鉗子は,上記のように細いものであるため,その固定顎110と可動顎120の顎口面の面積が小さく把持力が十分であるとはいえない.椎間板ヘルニアは軟らかくて湿潤であり滑りやすく,さらに周囲と係留されており,引き出す際に滑ってなかなか引き出せないことがよくある.
【0006】
脊椎経皮的全内視鏡用ではない内視鏡用器具では,把持力の向上のために特許文献1の図7のような顎口辺縁の鋸歯が大きく外見上顕著なものが既にある.その大きな鋸歯はその先端を組織に深く食い込ませて把持力を得ている.しかし,それでは脊椎手術では重大なリスクを伴うことになる.すなわち,脊椎手術では切除対象のすぐそばに神経や神経を保護する膜があり,それらを損傷するリスクがあり,避けなくてはならない.
また,脊椎経皮的全内視鏡手術では微小な器具ながら負荷もかかるため強度が必要となるが,大きな鋸歯構造ではギザギザの凹部分が脆弱となり,そこで歪みが生じやすく,咬合が悪くなってしまう.
図6のように,小さくて多数の鋸歯構造を顎口縁に有する鉗子は神経傷害のリスクは増えないが,軟らかくて滑りやすい椎間板ヘルニアに対して十分な把持力を発揮できない.
【課題を解決するための手段】
【0007】
当発明の器具は,経皮的全内視鏡用のヘルニア摘出用の把持鉗子において,図7.8,9のように,その先端側には固定顎と可動顎から構成され,可動顎と固定顎の先端部は曲線的で,それぞれの顎口面は匙形状になっている.可動顎の先端に一つの突出歯があり,その突出歯は曲線的に固定顎側に突出して突出歯の内壁は可動顎長軸に対して垂直の部分と直角以上の角度で返しとなっている部分があり,突出の長さが外見上顕著である.突出歯は正面から見ると先端は丸みを帯びた曲線の山型となっている.突出歯は刃状でもなく鋭い部分がない.固定顎の先端は前述突出歯の分だけ欠削された形となって,先端の一部が開放した匙形状となっている.
【0008】
亜型として,図9のように,突出歯は正面から見て先端が直線や鈍角の多角形突出の形状も考えられる.
【発明の効果】
【0009】
突出歯は先が鋭くない突起であり,たとえ神経を挟んだとしても,神経周膜を穿孔して深部の神経そのものを傷害するということがないため,不可逆的な障害を残しにくい.
【0010】
椎間板ヘルニアをつかんでから手元側に引く時に,椎間板ヘルニアは一般的に顎口面辺縁で挟まれた部分で摩擦力が働くほかに,歪められた椎間板ヘルニアが顎内壁に衝突することによる抗力も働く.突出歯はない場合(図5)と比べて突出歯にて椎間板ヘルニアはより歪められ,それが衝突する内壁には引く方向に正対する部分が広くなって椎間板ヘルニアをせき止める効果が増し,さらに突出歯の先端は返しとなって椎間板ヘルニアを引っかけて,より多くの抗力を生む(図9).
一方,前述の大きな鋸歯の鉗子は組織を穿孔して噛みこむことで抗力を生み出しているが,突出歯は幅があり先が鋭くない突起であるため噛みこむ力は弱く,大きな鋸歯とは異なる原理にて把持力を得ている.対象が硬いとその効力が発揮できないが,当器具の対象は椎間板ヘルニアであり軟らかいのでそのデメリットは重要ではない.そして,引く方向以外での把持力が劣ることになるが,引き出す動きがメインの脊椎経皮的全内視鏡手術では重要ではなく,それらよりも安全性が高いことの方が重要である.安全性が確保されて尚且つ引き出し時把持力を高めている.
【0011】
さらに,当発明は最も負荷がかかる可動顎に顕著な陥凹脆弱部分がないため,負荷がかかっても変形や破損が生じにくい.
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】経皮的全内視鏡下椎間板ヘルニア切除術時の腰部断面と器具の模式図.
図2】従来の経皮的全内視鏡と外筒の先端の斜視図.
図3】従来の経皮的全内視鏡用把持鉗子の側面図.
図4】従来の経皮的全内視鏡用把持鉗子の先端側側面図(aが最大開状態,bが閉状態).
図5】従来の経皮的全内視鏡用把持鉗子の先端側側面図(鋭匙タイプで陥凹底を点線で示す)
図6】従来の経皮的全内視鏡用把持鉗子の先端側側面図(顎口面辺縁が鋸歯タイプ)
図7】本発明の実施形態1の先端側の側面図(aが最大開状態,bが閉状態).
図8】本発明の実施形態1の先端正面図.
図9】本発明の実施形態1の可動顎の側面図(内壁を点線で示す).
図10】本発明の実施形態1の亜型の先端正面図.
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態1を図7,8,9を用いて説明する.先端側に固定顎210と可動顎220があり,その先端部は曲線的である.固定顎210と可動顎220それぞれの顎口面211,221は陥凹して匙形状になっており,顎口面辺縁は先端以外では側方から見て直線もしくは小鋸歯形状である.可動顎220の顎口面221辺縁が先端において,固定顎側に突出した突出歯223を一つ備えている.側面から見るとその突出歯223は曲線的に固定顎側に突出しており,突出歯の内壁222は可動顎220の長軸(図9の両矢印)に対して垂直の面と,さらに先端の方では直角以上の角度で返しとなっている部分がある.突出歯223の突出の長さが鉗子直径の15%から40%程度と外見上顕著である(図では約17%).図8のように,突出歯223は正面から見ると先端は丸みを帯びた曲線の山型となっている.突出歯には刃状でもなく鋭い部分はない.固定顎210の先端は前述突出歯223の分だけ欠削されて,先端の一部が開放部213となっている.その他は従来と同じで,図3のように外径3mmから4mmほどで長さ200mmから400mm程の細長いシャフト930があり手元側にハンドル950があり,シャフト930の内腔にロッド940が通っている.
【0014】
可動顎220を開けた状態(図7a)からハンドル操作により閉じていく(図7b)と椎間板ヘルニアは固定顎210と可動顎220の顎口の窪みの間にはさまって,顎部辺縁全周で咬み合い把持される.鉗子全体を手元側に引っ張って椎間板ヘルニアを引き出していくと突出歯223の内壁222のが引き出す方向に垂直な面を有し,それより先端はさらに返しとなっており,椎間板ヘルニアをせき止める壁となって滑りにくくなり摘出しやすい.
【0015】
本発明の実施形態1の亜型として図10のように,突出歯が正面から見て先端が直線や鈍角の多角形突出の形状も考えられる
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10