(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068070
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】遠赤外線発生装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20220426BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20220426BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H05B3/14 G
H05B3/10 B
A01G7/00 604B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020186161
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】509082020
【氏名又は名称】大川 令
(71)【出願人】
【識別番号】520435935
【氏名又は名称】一越 昌史
(71)【出願人】
【識別番号】520435946
【氏名又は名称】小杉 星喚
(71)【出願人】
【識別番号】520435957
【氏名又は名称】藤井 義晴
(72)【発明者】
【氏名】一越 昌史
(72)【発明者】
【氏名】大川 令
(72)【発明者】
【氏名】小杉 星喚
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義晴
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092QA02
3K092QB16
3K092RA03
3K092SS47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動植物を育成し、また低温乾燥を実現するために、安価で軽量で持ち運びが可能な、6μm以上の遠赤外線を透過しない石英ガラス管を使用しなくて済む、また真空の維持や不活性ガスの封入をしなくて済む、メンテナンスが容易な、また取り替えが容易な動植物の育成光線に相当する遠赤外線の放射が可能な発生装置を提供する。
【解決手段】動植物の育成光線である6μm~14μmの波長域で、ピーク波長相当で0℃よりも短波長側の遠赤外線を直接発生する装置を提供するために、面状炭素繊維フェルトから紐状の炭素繊維フェルトを切り出し、それを円筒管に挿入し通電し、目的温度に高める。この時、物質固有の遠赤外線波長を吸収すなわち透過する材質の円筒管を利用し、透過した遠赤外線を動植物に直接放射できるカーボンファイバーヒーター4とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンファイバーヒーターに適用する紐状炭素繊維のフェルトは、わずかな引っ張り応力で切断され、上下左右への応力で炭素繊維が容易に剥がれる。そのため、カーボンファイバーヒーターに適用する紐状炭素繊維フェルトを補強し、同時に円筒管への挿入を容易にするために、弾性変形が容易な、電気に対し絶縁された、熱的耐性を有する、絶縁処理を施した金属線や樹脂線に、紐状炭素繊維フェルトを固定し、新たに紐状炭素繊維フェルト棒を作成し、適用することを特徴とするとするカーボンファイバーヒーター。
【請求項2】
カーボンファイバーヒーターを構成する空気で満たされた円筒の管に遠赤外線を放射する紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒を挿入する。その紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒の両端に通電し遠赤外線を発生する時、円筒の管に挿入される紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒が有する熱量を最大限に上げ、同時にまた管中の空気による遠赤外線の吸収を最小限とし同時に温度上昇時の紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒を構成する炭素繊維の酸化を抑制するために、円筒管内の空気量を減らすことを目的に、円筒管に挿入される、断線のない、角形あるいは円形の断面を有する、紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒で、円筒管断面の隙間が最小になるように、円筒管を埋めることを特徴とするカーボンファイバーヒーター。
【請求項3】
カーボンファイバーヒーターを構成する該紐状炭素繊維フェルトあるいは該紐状炭素繊維フェルト棒から放射される遠赤外線は、その波長により通過する該円筒管の材質固有の吸収率により吸収される。そのため、遠赤外線中の育成光線である6μm(資料により8μm)~14μm(資料により15μm)域の遠赤外線の波長域の中で、該円筒管の材質が高透過率で透過させることが可能な遠赤外線の波長域で、ピーク波長に相当する温度で遠赤外線の発生を可能とするように、該紐状炭素繊維フェルトあるいは該紐状炭素繊維フェルト棒の両端に印可する電圧を、設定そして制御できる、該カーボンファイバーヒーターを設置した遠赤外線発生装置。
【請求項4】
別々のカーボンファイバーヒーターにおいて、それぞれのカーボンファイバーヒーターに設けた材質の異なる円筒管内に挿入した紐状炭素繊維フェルトあるいは該紐状炭素繊維フェルト棒の両端に印可する電圧を制御し、それぞれの円筒管から別々の高透過率で透過した波長域の遠赤外線を得るとき、高透過率で透過する波長域の異なる二つあるいはそれ以上の円筒管を備え、それぞれ異なる材質の円筒管による遠赤外線の吸収域を別の材質の円筒管から高透過率で透過した遠赤外線でカバーすることを可能とする、それぞれ波長の異なる遠赤外線を放射するのカーボンファイバーヒーターを複数備えた遠赤外線装置。
【請求項5】
該カーボンファイバーヒーターを構成する、該紐状炭素繊維フェルトあるいはまた該紐状炭素繊維フェルト棒の両端に通電し、電圧を制御することにより該紐状炭素繊維フェルトあるいはまた該紐状炭素繊維フェルト棒の温度を0℃から上げ、カーボンファイバーヒーターを構成する各部材の中で、許容するもっとも低い耐熱温度に相当する短波長側のピーク波長にシフトが出来るように、電圧の上限を設定することを特徴とする遠赤外線発生装置。
【請求項6】
該紐状炭素繊維フェルトあるいはまた該紐状炭素繊維フェルト棒を、使用時に金属円筒管の半面を開き、反射面を有した金属管の側の、外から反射面に入射した光が焦点を結ぶ位置に、金属円筒管に設けた絶縁支持棒で固定した、一本ないし複数本の紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒に通電し、発生した遠赤外線のうち、照射の目的とする対象物に向かう遠赤外線と、半円筒の金属の反射面から反射する遠赤外線とを併せ、効率良く、照射を目的とする対象物に直接放射できる、金属円筒管型カーボンファイバーヒーターを備えた遠赤外線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物の育成光線である遠赤外線を直接放射する遠赤外線発生装置に関する
【背景技術】
【0002】
赤外線としては、一般的に、近赤外線(およそ0.7~2.5μm)は赤外線カメラや赤外線通信・リモコン等に利用され、中赤外線(2.5~4μm)は天文分野や高温の熱利用(例えば、特許文献1、2参照及びカーボンヒーター:非特許文献1、2)されている。遠赤外線(4~1,000μm)の利用は、中・遠赤外線ヒーター(例えば、特許文献3)や乾燥機そして健康器具等での利用となっている。
【0003】
高温ヒーターでは、メトロ電機工業株式会社の近赤外線(ピーク波長2μm)に用いられる独自のカーボンフィラメントを使用する高出力カーボンヒーター(フィラメント温度1,300℃)等や、フェルト状の炭素繊維のフィラメントを使用する株式会社ESPの次世代のカーボンファイバーヒーター(ピーク波長2.0~3.0μm付近、フィラメント温度約827℃)を見ることが出来る(非特許文献1,2)。いずれも炭素繊維を使用した製品である。これらの製品は、近~中赤外領域の放射強度の、ウイーンの変位則による、ピーク波長(2.0~3.0μm付近)の赤外線を放射する、シール処理を設けた不活性ガスを封入したあるいは真空処理をした石英ガラスの管に、炭素繊維であるカーボンフィラメントを内蔵したヒーターである。この石英ガラスは5μm以上の遠赤外線を透過しないため、大気の窓と言われる8μmから13μmの遠赤外線の利用には不向きである。また、このカーボンファイバーヒーターやカーボンヒーターは、不活性ガスが封入されたあるいは管内が真空の石英ガラス管内に、炭素繊維であるカーボンフィラメントが設置され、炭素繊維のフィラメントの酸化を防ぎつつ高温にすることが出来るが、稼働中は、人が容易に石英ガラスに触れることも扱うことも出来ない。遠赤外線の利用に当たっては人が容易に扱える軽量な装置にする必要がある。
【0004】
遠赤外線は、4~1,000μmの波長帯であるが、その中でも大気による吸収が少ない3から5μm強及び8から13μmの波長帯は「大気の窓」と言われている。その波長のうち太陽が放射する光線で地上に達する赤外線は、大気の窓と言われる波長帯の、中赤外線では3.5μmと、遠赤外線では10μmを中心とする波長帯となっている。模式図を
図1「大気による赤外線の吸収」に示す。その中で水の吸収波長は中赤外線の3μmと、生物(有機物)の吸収波長と重なる遠赤外線の6~12μmとなっている。特に6(資料により8)~14(資料により15)μmの遠赤外線の波長帯は動植物の「育成光線」と言われている。ところがこの6(資料により8)~14(資料により15)μmの遠赤外線の波長帯の有効利用は、海産物や農産物等の加熱加工や乾燥用遠赤外線プレートヒーター(Max.130℃ 7.18μ程度)を利用)とか健康機器利用であり、さらに遠赤外線を、幅広く、容易に、有効利用が出来る新たな軽量な遠赤外線発生装置の技術開発が必要になる。
【0005】
動植物の育成光線である6(あるいは8)~14μmの波長域の遠赤外線を放射可能な、取扱いが容易で安価・軽量な遠赤外線発生装置の技術開発が必要とされるが、現状そういった装置は見当たらない。植物の育成用に設置された温室やビニールハウスは、太陽から波長が3~5μm以下の可視・近・中赤外線を取り入れるが、温室内から放射された5μm以上の遠赤外線を外部に放出しない特性を有する。しかし、外気の温度が下がった場合は熱伝導等により温室内やビニールハウス内の温度が徐々に下がるため、その熱放出に見合ったエネルギーを、化石燃料や電気による暖房機を使用し、熱供給を行っている。そこで、植物の近くで、空気に吸収されにくく、土壌や植物等の有機物を直接暖め、植物の育成を効率的に行うことが出来る、そして化石燃料の使用量を削減できる、誰でも容易に使用可能な安価で軽量な遠赤外線発生装置の実現が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2006-294337遠赤外線ヒーター
【特許文献2】特開平11-086804遠赤外線ヒーター
【特許文献3】特開2010-27224(P2010-27224A)炭素繊維ヒーター線の製造方法、炭素繊維ヒーター線及び融雪用ヒーター
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】メトロ電気工業株式会社 ピュアタンヒータ(単管ヒーター)(www.metro-co.com/product/heatertubes/prod04.html#ref_sp)遠赤黒膜ヒーター(黒膜塗装)(www.metro-co.com/product/heatertubes/prod07.html)
【非特許文献2】株式会社ESP CFH~カーボンファイバーヒーター~(esp-kanagawa.co.jp/cfh.html)次世代のカーボンファイバーヒーター p.3/11,p10/11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
空気中で植物の育成に遠赤外線を利用するためには、
図1に示したように、動植物の「育成光線」と言われ6(資料により8)~14(資料により15)μmのうち、遠赤外線が空気に吸収されにくい空気の窓(
図1)と言われる波長域を考慮に入れた、大気の窓(8μm~13μm)を有効利用出来る、
図2に模式図を示すが、ピーク波長相当の温度が0℃(相当する波長が10.6μm)以上の温度帯の放射光を利用する必要がある。本発明の目的は、ピーク波長で6(資料により8)μm~10.6μの波長帯の遠赤外線を有効に動植物や土壌に直接照射できるカーボンファイバーヒーターを備えた遠赤外線発生装置を実現し提供することにある。
【0009】
石英ガラス管内に設けた炭素繊維に通電し1,000℃前後の温度を生み出すヒーターが実用されているが、炭素繊維は空気中で熱するとき、炭素繊維の性状とか品質にもよるが、低いものでは150℃以上で徐々に酸化するため、高温ヒーターのように高温を必要とする場合は、石英ガラス管内を真空にするか石英ガラス管内に不活性ガスを封入し、炭素繊維の酸化を防止している。しかし用いられている石英ガラスは5μm以上の遠赤外線を透過できない。従って遠赤外線を透過させ、有効利用するためには、石英ガラス管や光を透過しない金属管を用いることは出来ない。そのため、本発明の目的は、紐状炭素繊維フェルトを管内に設置して5μm以上の、特に動植物の「育成光線」と言われ6(あるいは8)~14μmの遠赤外線の波長帯の遠赤外線を透過させるようにするため、遠赤外線が透過できる材質を使用した管の適用を実現し、提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、動植物の育成用や、保温用そして低温乾燥用装置として実現するために、同時に誰もが容易に使用を可能にするために、安価で軽量で持ち運びが可能な、5μm以上の遠赤外線を透過しない石英ガラス管を使用しなくて済む、また真空の維持や不活性ガスの封入をしないで済む、メンテナンスが容易な、また取り替えが容易な安価な遠赤外線発生装置を実現し、提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、高電気抵抗の、
図3に示す面状炭素繊維のフェルト1から切り取った紐状炭素繊維のフェルト2は、わずかな引っ張り応力で切断され、上下左右への引っ張り応力で紐状炭素繊維のフェルトから炭素繊維のフィラメントが容易に剥がれるため、面状炭素繊維のフェルトから切り取り紐状炭素繊維フェルトを作成するとき、その幅にむらが出来ないように、また紐状炭素繊維のフェルトに通電して使用するとき安定的に使用出来るように、炭素繊維フェルトを切断し、切断した紐状炭素繊維フェルトを提供するすることにある。
【0012】
前述の紐状炭素繊維フェルト2を内蔵する管は、その管の材料となる物質に関し、さまざまな材料の管が考えられるが、それぞれ管の材料それぞれが、指紋領域(1,300(7.69μm)~650cm-1(15.38μm))と言われる周波数帯で物質固有の吸収スペクトルがある。本発明の目的は、紐状炭素繊維フェルト2を内蔵する管から透過した遠赤外線を放射するに当たり、動植物が必要とする領域の遠赤外線の吸収率の低いすなわち透過率の高い材料で製造された管を提供することにある。
【0013】
円筒管に内蔵された紐状炭素繊維フェルト2から、紐状炭素繊維フェルト2の温度に基づくピーク波長を有する遠赤外線が放射され、その遠赤外線のうち目的とする動植物に到達する遠赤外線は、円筒管の物質固有の遠赤外線の波長に従った透過率に従って円筒管を透過した波長の遠赤外線になる。すなわち、本発明の目的は、円筒管に内蔵された紐状炭素繊維フェルト2の温度によるピーク波長を有する遠赤外線と、円筒管の特有の遠赤外線の透過率という二つのパラメータを考慮して、動植物の育成や保温用そして低温乾燥に有効な遠赤外線を照射出来るカーボンファイバーヒーター4を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、空気中で紐状炭素繊維フェルト2に通電するとき炭素繊維が酸化されない温度域と、紐状炭素繊維フェルト2を内蔵する円筒管の耐熱温度とを考慮してカーボンファイバーヒーター4を設計・製造し、温調器5や交流電力調整器6と合わせ、
図4に示す遠赤外線発生装置を提供することにあるある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係わる遠赤外線発生装置は、動植物の「育成光線」と言われ6(資料により8)~14(資料により15)μmのうち、大気の窓(8μm~13μm)を有効利用して、ピーク波長相当の温度で0℃相当の波長10.6μmよりも短波長側の遠赤外線を放射し、直接動植物に放射を可能とする装置を形成する。そのため、稠密な炭素繊維の積層された面状炭素繊維フェルト1から最適な幅の紐状炭素繊維フェルト2を切り出し、円筒管の中に設置した、その紐状炭素繊維フェルト2に通電し、酸化温度以下の温度で求める温度に上昇させ、遠赤外線を発生させる。この時、円筒管に挿入する紐状炭素繊維フェルト2の形状、円筒管の材質による赤外線の波長による透過率を勘案して、動植物の育成や保温用及び低温乾燥用に必要な遠赤外線を放射が可能なカーボンファイバーヒーター4を有する遠赤外線発生装置を形成する。
【発明の効果】
【0016】
現在実用化されている真空そして不活性ガスで満たされた石英管を用いた高温ヒーターでは5μm以上の波長の遠赤外線を透過しないし、それに対し高温源を金属等のコーティングに当て遠赤外線を発生させる間接的な手法では必要とするコストが高い。本発明では、大気中で遠赤外線の透過率が高い大気の窓と言われる波長帯(8μm~13μm)の遠赤外線を有効利用して、同時に動植物を育成する土壌や動植物に有効な「育成光線」と言われる6(資料により8)~14(資料により15)μmの遠赤外線を放射し、動植物の育成や保温、低温乾燥用に使用することを可能とする。そのために、空気で満たされた円筒管の中に紐状炭素繊維フェルト2を、安定的に使用するために内蔵し、紐状炭素繊維フェルト2の両端に通電し遠赤外線を発生させる。ただ、円筒管の内部で遠赤外線を放射するため、円筒管を透過できる遠赤外線は、波長ごとに、円筒管の材料により、多寡が生じる。そこで、紐状炭素繊維の温度を制御し発生する遠赤外線の波長と、円筒管の材質により透過率の高い波長域を勘案して、さらに使用する部材の耐熱温度等を考慮に入れて、軽量で容易な取扱いで、同時に安価な装置で、土壌や動植物に育成光線の直接照射を、更に保温や低温乾燥を、可能にする装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】大気による赤外線の吸収(模式図、日本機械学会熱工学部門講習会2009年7月29-30日「熱設計を支援する熱流体計測技術」赤外線放射温度計の基礎 中村 元氏 から曲線部分を採取)
【
図2】物体の温度と放射エネルギーの関係(ウィーンの変位則)(模式図、赤外線工学 オーム社より一部を採取)
【
図3】面状炭素繊維フェルトと紐状炭素繊維フェルト
【
図5】紐状炭素繊維フェルトと紐状炭素繊維フェルトを内蔵したカーボンファイバーヒーターを構成する円筒管の縦断図と横断図
【
図6】紐状炭素繊維フェルト棒と紐状炭素繊維フェルト棒を内蔵したカーボンファーバーヒーターを構成する円筒管の縦断図と横断図
【
図7】樹脂の遠赤外線の透過率例(資料:遠赤外線ヒーター 発光ハイレックス カタログより)
【発明を実施するための形態】
【0018】
市販されているカーボンヒーターは、数百Wから1kW以上の電力で、真空に維持されたあるいはまた不活性ガスに満たされた石英ガラス管に内蔵された、例えば炭素繊維フェルトやフィラメントを用いた場合で、製品目的に従って、ピーク波長として、炭素繊維フェルトやフィラメントの温度が1,000℃前後の、近赤外線や中赤外線を放射する。しかし、石英ガラスは5μm以上の赤外線を透過しない。遠赤外線を放射する場合は、高温に熱せられた金属管の表面にコーティングを施して、間接的に遠赤外線を放射する遠赤外線発生装置が用いられる。それに対し、本発明は、低使用電力で、遠赤外線を動植物に直接照射出来そして保温そして低温乾燥用に使用出来る、ピーク波長で約6μm~10.6μmまでの遠赤外線を照射できるカーボンファイバーヒーター4を備えた遠赤外線発生装置。
【実施例0019】
商品化されている高出力カーボンヒーターは、カーボンフィラメントや炭素繊維(フェルト)フィラメントを、石英ガラス管の中に設置し、通電し、1,000℃前後の高温を発することが出来る。この時、カーボンフィラメントや炭素繊維(フェルト)フィラメントを内蔵する石英管は、不活性ガスの封入や真空を維持して、炭素繊維の酸化を防いでいる。ただ、石英ガラスは、5μ以上の遠赤外線を透過しない。そこで新たな遠赤外線発生装置では、高出力カーボンヒーターがカバーできない5μ以上の遠赤外線を放射するため、炭素繊維の酸化温度(例えば酸化温度が低い炭素繊維で150℃程度)以下の温度域で、コーティングと言った間接的な物質を使わずに直接遠赤外線を発生する、透過率が波長ごとに相違する樹脂やゴム系の円筒の管を利用したカーボンファイバーヒーター4である。すなわち、5μm以上の遠赤外線を放射しない石英ガラスを用いず、石英ガラス管内を真空に維持することや不活性ガスを充填する手法を用いず、そしてコーティングを用いないで、動植物や動植物を育成する土壌に直接遠赤外線を照射出来、保温や低温乾燥にも適用出来るカーボンファイバーヒーター4を備えた遠赤外線発生装置。
【0020】
赤外線は、波長によってさまざまな分類がなされている。例えば、近赤外線(0.7~2.5μm)中赤外線(2.5~4μm)遠赤外線(4~1,000μm)他の分類がある。この中で、大気の赤外線の透過率が高い(大気による赤外線の吸収の低い)波長帯(3~5μm、8~13μm)は「大気の窓」と呼ばれている(
図1)。そして、人も6μm~14μmの遠赤外線を出しており、人間の細胞内にあるミトコンドリアは8~14μm遠赤外線を放射している。そして、6(資料によっては8)~14(資料によっては15)μmは動植物の育成光線と呼ばれる。また、化学物質の同定にも用いられ、物質固有の吸収スペクトルが現れる波数1,300(7.69)~650cm
-1(15.38μm)は指紋領域と呼ばれている。本発明の、遠赤外線発生装置を構成するカーボンファイバーヒーター4は、動植物の育成に有効な育成光線を発生し、動植物に直接放射するヒーターである。
【0021】
本発明の、カーボンファイバーヒーター4は、紐状炭素繊維フェルトを内蔵する円筒管、円筒管に内蔵された通電したとき遠赤外線を発生する紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた炭素繊維フェルト棒12、そして必要とする付属品とから構成される。
【0022】
本発明に使用する紐状炭素繊維フェルト2は、面状炭素繊維フェルト1から、必要とする仕様そして寸法・形状を有する紐状炭素繊維フェルト2を切りとり製作する。紐状炭素繊維フェルト2を利用し、カーボンファイバーヒーター4の仕様を満たす紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を製作する。なお、紐状炭素繊維フェルト2は、引っ張り応力に弱く、ちぎれやすく、剥がされやすいため、外部からの影響を受けにくくするために、管に挿入して使用する。
【0023】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する管は、遠赤外線に対し、使用するいずれの物質とも、物質固有の吸収スペクトルを有する。その紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12に通電し、空気の窓と言われる領域の波長の遠赤外線を放射するとき、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維棒8を外部からの与えられる引っ張り等の影響を受けないように安定的に使用出来、四方に遠赤外線をむらなく放射するために、円筒管を使用する。
【0024】
物質から放射される電磁波のピーク波長(エネルギーの一番高いところ)は、すなわち黒体の単色放射光が最大となる波長は、λ=2,897/T(μm)(ウイーンの変位則、T絶対温度=物体のセルシウス度+273)であり、例えば体温が36℃の人は約9.4μmをピーク波長とする遠赤外線を放射している。そこで、円筒管内の紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の両端に通電して、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の温度が0℃以上(0℃相当のピーク波長(10.6μm))で放射される遠赤外線を利用するカーボンファイバーヒーター4である。本願では、説明を容易にするために、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の置かれた温度とその温度に相当するピーク波長とで記述する。
【0025】
実施形態に係わる
図5及び6に示すカーボンファイバーヒーター4は、両端を通電し遠赤外線を発生出来る紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を備えるが、本段落では紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の原材料として製作される紐状炭素繊維フェルト2に基づき説明する。面状の炭素繊維フェルト1は、それぞれは短い炭素繊維を稠密に密集させ、面状に製造されている。その面状の炭素繊維フェルト1を、紐状炭素繊維フェルト8としてあるいは又紐状炭素繊維フェルト棒12に見合った適切な仕様で切断し紐状炭素繊維フェルト2を製造する。この紐状炭素繊維フェルト2を管に挿入し、紐状炭素繊維フェルト8としてあるいは又補強したものを紐状炭素繊維フェルト棒12として使用する。本段落では、紐状炭素繊維フェルト2として記述する寸法・面積、そして紐状炭素繊維フェルト2の両端に電圧を印加するときの熱量W、電圧V、電流I、抵抗R、係数kは、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を使用した場合にも、そのまま当てはめることができるものとする。紐状炭素繊維フェルト2の両端に電圧を印可し通電するとき、炭素繊維フェルト2の断面の炭素繊維の面積、炭素繊維フェルト2長さによって電気抵抗が決定される。それぞれの炭素繊維は短く、短い繊維間の通電には抵抗があるため、紐状炭素繊維フェルト2の両端には大きな抵抗が生じる。その紐状炭素繊維フェルト2の両端間の高抵抗を利用し電圧を印加したときの電流値を抑える。R(紐状炭素繊維フェルト2の両端の抵抗)、k(定数)、L(紐状炭素繊維フェルト2の長さ)、S(紐状炭素繊維フェルト2の炭素繊維部分の断面積)、a(紐状炭素繊維フェルト2の厚さ)、b(紐状炭素繊維フェルト2の幅)とするとき、R=k(L/S)=k(L/a・b)となる。電流値Iは, I=V/R=V・S/k・L=V・a・b/k・Lで表される。この時、紐状炭素繊維フェルト2に生じる熱量Wは、電圧V、電流Iとするとき、V=IR=I・k・L/a・bであり、W=I
2R=V
2/R=V
2・S/k・L=V
2・a・b/k・Lで表される。ここで、印加電圧Vを決め、紐状炭素繊維フェルト2の厚さaが事前に決まり、紐状炭素繊維フェルト2の長さLが設計するカーボンファイバーヒーター4の設計で決めるとき、またkが紐状炭素繊維フェルト2の定数であるとき、熱容量Wは、紐状炭素繊維フェルト2の断面積Sに比例する。従い、カーボンファイバーヒーター4の熱容量Wを増やすためには、紐状炭素繊維フェルト2の断面積Sを、管に挿入可能な寸法として、最大限大きくする必要がある。そのため、紐状炭素繊維フェルト2の厚みaと幅bを同じ正方形として断面積の対角線3を円筒管の内径にする。なお、紐状炭素繊維フェルト2を内蔵する管は、管から遠赤外線をむらなく四方に放射するために円筒であることが求められる。そして熱量Wを増やすためには、円筒管の直径を大きくし、紐状炭素繊維フェルト2の断面積Sを大きくする必要がある。そのためには円筒管は内蔵する紐状炭素繊維フェルト2で満たす必要がある。そこでさらに隙間をさらに細い紐状炭素繊維フェルト、例えば9,で埋めることで可能とする。そして紐状炭素繊維フェルト2の温度を上げピーク波長を短波長側に移すためには紐状炭素繊維の両端に印可する電圧Vをあげる必要がある。同時に、空気の窓の波長域でも若干の遠赤外線の吸収があるため、管内を紐状炭素繊維フェルトで埋め、管内の空気量を減少させることが有効である。
【0026】
0℃(10.6μm)以上で炭素繊維フェルト8の炭素繊維の酸化が生じるまでの間の温度帯で使用されるカーボンファイバーヒーター4で、ピーク波長(エネルギーの一番高いところ)で遠赤外線を放射する放射体である紐状炭素繊維フェルト8の放射エネルギー量は、紐状炭素繊維フェルト8が保有する熱量による。そのため、カーボンファイバーヒーター4が発生する遠赤外線量を上げるために、紐状炭素繊維フェルト8を内蔵する円筒管の直径・長さといった仕様を設定するとき、紐状炭素繊維フェルト8の断面が角形の場合は、断面における炭素繊維部分の面積を増やすために、紐状炭素繊維フェルト8の厚みを紐状炭素繊維フェルト8の断面の幅と同じ寸法として、すなわち紐状炭素繊維フェルト8の断面を正方形としてその対角線の長さを該円筒管の内径と同じかあるいはできるだけ近い寸法として、紐状炭素繊維フェルト8の断面積を該円筒管の断面積にちかづけるように、紐状炭素繊維フェルト8の断面の形状を設定する必要がある。そして紐状炭素繊維フェルト8のピーク波長相当の波長を短波長側に移すため、紐状炭素繊維フェルト8の発生熱量が印加電圧の二乗に比例するため、印加電圧を上げピーク波長を放射する温度を上げる必要がある。すなわち紐状炭素繊維フェルト8の断面の正方形の対角線の長さは、紐状炭素繊維フェルト8を内蔵する該円筒管の内径を上限とする。また、1本の紐状炭素繊維フェルト8で、内蔵する該円筒管の内径側を可能な限り埋めるためには、紐状炭素繊維フェルト8を内蔵する円筒管の内径と、内蔵する紐状炭素繊維の幅と厚みの関係において、内蔵する紐状炭素繊維フェルト8の厚みと幅が同じ寸法で、すなわち紐状炭素繊維フェルト8の断面を正方形としその対角線の長さを該円筒管の内径と同一とするように、面状フェルト1から切り取り、
図5に示すように必要に応じて更に細い紐状炭素繊維フェルト9を加え隙間を埋め、できるだけ管内を炭素繊維で満たし空気部分を減らした、そして紐状炭素繊維フェルト8の酸化温度以下で使用し、紐状炭素繊維フェルト8を内蔵した円筒の管7の材料の耐熱温度以下で、紐状炭素繊維フェルト8に通電する電圧を制御して、ピーク波長相当の紐状炭素繊維フェルト8の温度の設定が出来ることを特徴とするカーボンファイバーヒーター4。なお、紐状炭素繊維フェルト8を円筒管に挿入するとき、挿入を容易にするため、紐状炭素繊維フェルト8の断面の対角線の寸法を必要に応じ小さくしても良い。紐状炭素繊維フェルト8の断面が円形の場合は、その直径を該円筒管の内径とする。なお、紐状炭素繊維フェルト8を円筒管に挿入するとき、挿入を容易にするため、紐状炭素繊維フェルト8の断面の円の直径を必要に応じ小さくしても良い。
【0027】
面状炭素繊維1から切り取った紐状炭素繊維のフェルト2は、わずかな引っ張り応力で切断され、上下左右へのわずかな引っ張り応力で炭素繊維の繊維が容易に剥がれる性状があるため、紐状炭素繊維フェルト2に通電して使用するとき、より安定的に使用出来るようにするため、それらの引っ張り応力に影響を受けにくい、新たな紐状炭素繊維フェルトが求められる。そのような紐状炭素繊維フェルト2の性状をカバーするために、紐状炭素繊維フェルト2に、弾性変形が容易な、例えばポリアミドイミド繊維等の絶縁を施した金属線11やアルマイト処理をしたアルミニウムそしてテグス(釣り糸)等の細い線で補強した紐状炭素繊維フェルト棒12を製作する。なお、紐状炭素繊維フェルト棒12の取扱いは該炭素繊維フェルト8と同じである。すなわち、0℃(10.6μm)以上で炭素繊維フェルト棒12の炭素繊維の酸化が生じるまでの間の温度帯で使用されるカーボンファイバーヒーター4で、ピーク波長(エネルギーの一番高いところ)で遠赤外線を放射する放射体である紐状炭素繊維フェルト棒12の放射エネルギー量は、紐状炭素繊維フェルト棒12が保有する熱量による。そのため、カーボンファイバーヒーター4が発生する遠赤外線量を上げるために、紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する該円筒管の直径・長さといった仕様を設定するとき、紐状炭素繊維フェルト棒12の断面が角形の場合は、断面における炭素繊維部分の面積を増やすために、紐状炭素繊維フェルト棒12の厚みを紐状炭素繊維フェルト棒12の断面の幅と同じ寸法として、すなわち紐状炭素繊維フェルト棒12の断面を正方形としてその対角線の長さを円筒管の内径と同じかあるいはできるだけ近い寸法として、紐状炭素繊維フェルト棒12の断面積を該円筒管の断面積にちかづけるように、紐状炭素繊維フェルト棒12の断面の形状を設定する必要がある。そして紐状炭素繊維フェルト棒12のピーク波長相当の波長を短波長側に移すため、紐状炭素繊維フェルト棒12の発生熱量が印加電圧の二乗に比例するため、印加電圧を上げピーク波長を放射する温度を上げる必要がある。すなわち紐状炭素繊維フェルト棒12の断面の正方形の対角線の長さは、紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管の内径を上限とする。また、1本の紐状炭素繊維フェルト棒12で、内蔵する円筒管の内径側を可能な限り埋めるためには、紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒の管の内径と、内蔵する紐状炭素繊維の幅と厚みの関係において、内蔵する紐状炭素繊維フェルト棒12の厚みと幅が同じ寸法で、すなわち紐状炭素繊維フェルト棒12の断面を正方形としその対角線の長さを円筒管の内径と同一とするように、面状フェルト1から切り取り、例えば
図6に示すように必要に応じて更に細い紐状炭素繊維フェルト9を加え隙間を埋め、できるだけ管内を炭素繊維で満たし空気部分を減らした、そして紐状炭素繊維フェルト棒12の酸化温度以下で使用し、紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵した円筒管の材料の耐熱温度以下で、紐状炭素繊維フェルト棒12に通電する電圧を制御して、ピーク波長相当の紐状炭素繊維フェルト棒12の温度の設定が出来ることを特徴とするカーボンファイバーヒーター4。なお、紐状炭素繊維フェルト棒12を円筒管に挿入するとき、挿入を容易にするため、紐状炭素繊維フェルト棒12の断面の対角線の寸法を必要に応じ小さくしても良い。紐状炭素繊維フェルト棒12の断面が円形の場合は、その直径を円筒管の内径とする。なお、紐状炭素繊維フェルト棒12を円筒管に挿入するとき、挿入を容易にするため、紐状炭素繊維フェルト棒12の断面の円の直径を必要に応じ小さくしても良い。なお、紐状炭素繊維フェルト棒12を作成する場合、ポリアミドイミド繊維等の絶縁を施した金属線11やアルマイト処理をしたアルミニウムそしてテグス(釣り糸)等の細い線を、予め決められた間隔で埋め込んだ面状炭素繊維フェルト2を製造し、その面状炭素繊維フェルト1から紐状炭素繊維フェルト棒12を切り出すのが望ましい。なお、遠赤外線の放射を減少させることになるが、金属線11を紐状炭素繊維フェルト2の正方形の側面に固定し、それが円筒管と紐状炭素繊維フェルト2の隙間に相当する部分、すなわち
図6の細い紐状炭素繊維9のどれか1箇所あるいはまた複数箇所に設置し、紐状炭素繊維フェルト2の正方形の形状を損ねないように設置し、紐状炭素繊維フェルト棒12を作成しても良い。なお紐状炭素繊維フェルト棒12の断面が円形の場合、紐状炭素繊維フェルト棒12の直径は、挿入する円筒管の内径を限界とし、円筒管の内径よりも必要に応じ小さくても良い。
【0028】
[0026]に記載した紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた[0027]に記述した紐状炭素繊維フェルト棒12を、通常の大気圧の空気で満たされた、例えば樹脂やゴム等を材質とする、円筒管7の中に挿入し、防水した円筒管7の両端で、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を結束バンド14で接続端子15に固定し固定し、通電用の外部回路のリード線13と接続したことを特徴とするカーボンファイバーヒーター4。なお、このとき、ポリアミドイミド繊維等の絶縁を施した金属線11やアルマイト処理をしたアルミニウムそしてテグス(釣り糸)等の細い線には通電はされない。
【0029】
必要に応じて紐状炭素繊維フェルト8を内蔵した、あるいはまた紐状炭素繊維フェルト2を補強し固定し新たに作成した紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵した円筒管7を、等間隔に位置する結束バンドやあるいはまた金属カシメ10で、該円筒管7の外側から間接的に紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を固定したことを特徴とするカーボンファイバーヒーター4。
【0030】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を円筒管に挿入に当たり、防水を考慮する必要のない場所で使用する場合は、円筒管表面の一方を切り、切り取ったところを広げ紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を該円筒管7に挿入し、円筒管7の外側から等間隔に位置する結束バンドや金属カシメ10で円筒管7の外側から間接的に紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を固定したことを特徴とするカーボンファイバーヒーター4。
【0031】
図5に示した紐状炭素繊維フェルト8、あるいはまた、
図6に示した、必要に応じて紐状炭素繊維フェルト棒12を使用するとき、いずれの場合も、円筒管7の出入り口に接続端子15を設け、結束バンド14で接続端子15と紐炭素繊維フェルト8とあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を接続・固定し、同時に管の内部に水が入らないように防水処理を行い、
図4に示した、温度制御をするための温調器5を備えた、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の設定温度を監視する温調器5を介して交流電力調整器6で電圧を調整する回路を介して、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を構成する炭素繊維に通電する、低電力で、直接遠赤外線を、カーボンファイバーヒーター4から対象物に放射する、
図4に記載した、遠赤外線装置。
【0032】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を挿入する円筒管7に関して、可能な範囲で炭素繊維の酸化が始まる温度に近い耐熱温度の材料から製造された樹脂やゴム等の材料で作成された円筒管7を用いることが望ましく、同時に円筒管7による遠赤外線の吸収を少なくするために管厚を可能な範囲で薄くし、同時に、管の形状を、U字にしたり円形にしたり、使用者の希望に応じた形状に変形可能なカーボンファイバーヒーター4。
【0033】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を挿入する円筒管7に関して、円筒管7として選ぶ材質は、以下の遠赤外線の波長(括弧内はピーク長に相当する物体の温度)を考慮に入れて選択される。
長波長側の大気の窓:8μm(89.1℃)から13μm(-50.2℃)の波長帯
動植物の「育成光線」:6μm(209.8℃)(資料により8μm(89.1℃))~ 14μm(-66.1℃)(資料により15μm(-79.9℃))
0℃のピーク波長:10.6μm
物体の常温の放射エネルギーのピーク波長は10μm:16.7℃
人の体温36.5℃:9.36μm
ピーク波長換算100℃の時のピーク波長:7.77μm
ピーク波長換算200℃の時のピーク波長:6.12μm
従って、大気の窓の波長帯を生かし、0℃のピーク波長までをカバーできる遠赤外線発生装置が望ましい。なお、放射対象とする物体に近く、大気の影響が少ないときは、大気の窓の外の8μmよりも短波長側の放射エネルギーを発する物体の温度を達成することが望ましい。その時、8μmよりも短波長側の放射エネルギーを発する紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を構成する炭素繊維の耐熱温度そして経年劣化すなわち寿命を設定するとき、紐状炭素繊維フェルト棒12を構成する補強用絶縁を施した金属線11やテグス(釣り糸)等の細線の耐熱温度そして経年劣化すなわち寿命、そして紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管7を構成する樹脂とかゴムとかの材料の耐熱温度や経年劣化すなわち寿命の時間を考慮して、その他に円筒管7に装着される結束バンド14・金属かしめ10等の部材の耐熱温度や寿命を併せ考慮して、カーボンファイバーヒーター4の紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を設計・製作することが求められる。
【0034】
紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を構成する炭素繊維で、熱処理温度の低い汎用性タイプの製品は、空気中において150℃(ピーク長換算で6.85μm)でゆっくりと酸化が始まるものがあり、ピーク波長換算で6μm(209.8℃)の実現を望むのであれば、耐熱温度が150℃よりも高い炭素繊維で構成された炭素繊維フェルトを選択することが必要になる。紐状炭素繊維フェルト棒12を構成する補強用絶縁を施した金属線11の場合、例えば絶縁性のあるポリアミドイミド銅線を使用する場合、ポリアミドイミド繊維の耐熱温度は275℃(ピーク波長換算で5.29μM)前後とある。また、アルマイト処理の皮膜は絶縁性があるが、100℃程度でクラックを発生するので100℃(7.77μmのピーク波長程度)以下で使用する仕様になる。従い、使用する目的に従い、紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管7の仕様や、その他に使用する部材の仕様を、決める必要がある。
【0035】
使用する目的に従い、紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管7の性状を決めとき、該円筒管7の材料である、例えば樹脂の耐熱温度と樹脂を構成する材料の吸収スペクトル(
図7に例を示す)を考慮して、該円筒管7の材質の性状を考慮し、該円筒管を選択することが重要になる。例えば、動植物や植物を育成する土壌に遠赤外線を照射する場合には、四方に放射することを考え、動植物や土壌との距離を勘案して、ピーク長勘案で100℃(7.77μm)以下の温度で遠赤外線を放射することで対応が可能である。例えば、なお農作物や樹脂等の緩慢乾燥に使用する場合は、ピーク長換算で200℃(6.12μm)程度のピーク長勘案の温度までの遠赤外線の放射の使用が求められる。例えば、ピーク波長勘案で100℃(7.77μm)以下の温度で使用する場合、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の炭素繊維の劣化開始温度が一番低い150℃程度として、例えば樹脂である場合は使用温度範囲5℃~90℃の耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(H.T)(
図7に塩化ビニルの吸収スペクトルを示す)とかプラスチックの1種である使用温度範囲-60℃~100℃のポリオレフィン管といった樹脂等の中で、遠赤外線の波長によるが、透過率の高い樹脂で製作された円筒管の利用が考えられる。あるいは、また、150℃~200℃程度までの温度帯で使用する場合は、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12の炭素繊維の劣化温度が150℃~200℃以上の品質のものを選ぶものとし、紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管7の、例えば樹脂である場合は炭素繊維の劣化温度150℃~200℃以上程度かそれ以上の耐熱性のある、例えばプラスチック系の樹脂等で遠赤外線の透過率の特性を見て選択する。
【0036】
紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵する円筒管7を選択する場合は、耐熱性に加え、化学物質の同定にも用いられる、物質固有の吸収スペクトルが現れる、指紋領域(波数1,300cm-1(7.69μm)~650cm-1(15.38μm))と呼ばれる周波数領域(波長領域)に併せ、さらに放射対象とする物体に近く大気の影響が少ないときを考える時は、短波長側6μm(ピーク波長換算で209.8℃)までの領域の吸収特性も併せ考慮に加え、必要とする波長の遠赤外線の透過率の高い樹脂で製造された樹脂管を選択する。
【0037】
例えば、100℃以下の低温度で使用される、
図7に遠赤外線6μm~10.6μmにおける透過率の概略図を示した塩化ビニルの場合、その素材は、波長6μm(210℃)~約6.6μm(166℃)の間の透過率は90%を超えているが、波長が約6.6μm(166℃)~10.6μm(0℃)の間では透過率が約61%と約37%の間を上下している。また、例えば、
図7に示した天然ゴムの場合、波長が約6μm~約7.5μmの間では透過率の変化が激しいが、約7.5μm(113℃)~10.6μm(0℃)の間で透過率が高く約61%~69%の間を上下する。従って、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12から放射される遠赤外線のピーク波長相当の温度と樹脂の管の耐熱温度とを考慮するとき、塩化ビニルでは最高温度を塩化ビニルの耐熱温度相当の90℃(8μm)とするので有れば、使用出来る遠赤外線の使用範囲は遠赤外線の透過率は落ちるが、8μm(90℃)~10.6μm(0℃)の間で使用することになる。この波長の範囲は、0℃以上の大気の窓と育成光線の範囲に相当するので、動植物や植物を育成する土壌の保温には有用である。200℃(6.12μm)とか210℃(6μm)のピーク波長を有する遠赤外線を必要とする場合は、大気圧でそれなりの耐熱性を有する炭素繊維そして樹脂等の円筒管7を使用したカーボンファイバーヒーター4を設けた遠赤外線発生装置を適用する。
【0038】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12から放射される遠赤外線のさまざまな分光スペクトラムの有するエネルギー密度と、円筒管の材質によって円筒管を透過して円筒管から放射される遠赤外線のさまざまなスペクトラムのエネルギー密度との間に相違が生じる。従って、円筒管を構成する材料の特性に従って、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12から発生される遠赤外線の特定の波長の遠赤外線が円筒管に多く吸収されるため、円筒管から外部に透過するスペクトラムのエネルギー密度には円筒管の材質によって濃淡が発生する。そのため、ある材質の円筒管が存在するするとき、その円筒管と材質が相違する別の円筒管を使用することにより、一方の円筒管で透過率が低く吸収され減少した遠赤外線の波長スペクトラムを別の円筒管の波長スペクトラムでカバーすることを可能とする、材質の相違する二つの円筒管を設置したカーボンファイバーヒーターで構成された遠赤外線発生装置。あるいはまた三つあるいはそれ以上の、複数の材質の異なる円筒管で作成されたカーボンファイバーヒーター4を設置した遠赤外線発生装置。
【0039】
紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を内蔵した樹脂やゴム等を材料とする円筒管から、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12に通電して遠赤外線を放射するとき、単に円筒管7に遠赤外線が吸収されるだけではなく、円筒管7の材料を構成する物質固有の吸収スペクトルに従って遠赤外線のスペクトラムが吸収されるため、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を、円筒管内に内蔵せずすなわち円筒管等を通さず、直接空気中で遠赤外線を放射し、対象物に照射することが出来れば、遠赤外線の一部が空気に吸収されるだけで、円筒管に吸収されることはなく、照射対象の物体を直接照射することが可能となる。そこで、
図8に示したように、金属、例えば鏡面研磨したアルミニウムで製造された円筒管16で、片側をとめて金属管の半分に開くことが出来るとき、半円筒の金属の内面を反射板とし、その半円筒の焦点の部分に、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12を、FRP等の絶縁物17を支えとして設置し、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒12から放射される遠赤外線及び半円筒の内面から反射された遠赤外線を併せて目的とする対象物に効率良く直接照射出来るカーボンファイバーヒーター4を備えた遠赤外線発生装置。
【0040】
円筒管の材質は、
図5及び6では円筒樹脂管と記載したが、あるいはまた段落によって、単に円筒管と記載したが、さまざま材質の円筒管であって良い。
【0041】
以上、紐状炭素繊維フェルト8あるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒を内蔵する容器を円筒管と記載したが、ランプであっても良い。
【0042】
以上、樹脂の円筒管と記載したが、耐熱温度・遠赤外線の透過率・寿命等の性状から見て、膜であっても良い。
【0043】
なお、円筒管の材料として、製作する価格を考慮しないのであれば、物質固有の吸収スペクトルが少ない、ゲルマニウムとかフッ化バリウム等を材料とした円筒管を使用したカーボンファイバーヒーター。
【0044】
樹脂等の円筒管内に装着した紐状炭素繊維フェルト8や紐状炭素繊維フェルト棒12を、円筒管内で動かないように固定するために、円筒管の外から金属カシメ等で固定したカーボンファイバーヒーター。
安価で容易な取扱いで、しかも省エネルギーで、限定されたエリアの土壌や植物そして動物に育成光線と言われる遠赤外線の直接の照射を可能とし、また低温長時間乾燥装置として産業上の利用の可能性がある。
円筒管に内蔵される紐状炭素繊維フェルトあるいはまた紐状炭素繊維フェルト棒が複数である場合、円筒管を埋めるように、断面が円筒管に比較して小さな角形の形状のものを、積み重ねても、小さな角形の形状のものと大きい角形の形状のものを組み合わせても良い。あるいはまた紐状炭素繊維フェルトと紐状炭素繊維フェルト棒を組み合わせて内蔵しても良い。