(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068076
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】変流器及び零相変流器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/30 20060101AFI20220426BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01F38/30
H01F41/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020187594
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 恭典
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【テーマコード(参考)】
5E044
5E081
【Fターム(参考)】
5E044AD07
5E081AA06
5E081BB03
5E081CC07
5E081DD01
5E081EE04
5E081FF04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外ケース側壁における成形樹脂との接合界面において、耐電圧特性の向上が図れる変流器及び零相変流器を提供する。
【解決手段】変流器及び零相変流器において、外ケース1は、外側円筒3に外ケース1の金型を作成する上で支障のない大きさである任意形状である外ケース1の天面から底面へ至る筒状構造8を成形樹脂との接合界面と沿う箇所に有する。筒状構造8は、外ケース1の内部(成形樹脂充填領域側)へと通じる天面から底面方向の成形樹脂が充填される深さより深いスリット16を有し、天面側に接合界面6と同様の深さの鉤状構造7を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを、底面及び二重円筒状壁を有するケースに収納し、加熱流動化した成形樹脂を成形金型注入口から前記ケースに注ぎ込み前記コイルと一体に加圧成形した変流器及び零相変流器であって、
前記ケースは、前記二重円筒状壁の少なくとも一方の側壁において、成形樹脂との界面部に、ケース天面から底面まで至る筒状構造を備えることを特徴とする変流器及び零相変流器。
【請求項2】
前記ケースに備えられた筒状構造であって、成形樹脂充填領域へと通じる天面から底面方向の前記成形樹脂が充填される深さより深いスリットを設け、ケース天面側に成形樹脂との継手として機能する鉤状構造を有することを特徴とする請求項1記載の変流器及び零相変流器。
【請求項3】
前記筒状構造部に備えられた鉤状構造であって、前記ケースの側壁と同程度の肉厚を有し、前記筒状構造の中心軸を基準とした場合に前記スリットの中心線から鉤状構造の先端までが180°以上であり、成形樹脂との接合界面と同様の深さを有することを特徴とする請求項2記載の変流器及び零相変流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流または、直流が重畳した交流電流、例えば半波正弦波交流電流を計測するための変流器、もしくは漏洩電流を計測するための零相変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の一般的な変流器を示す概略図である。従来の変流器は、環状の磁心20からなる閉磁路に2次巻線24が巻回されており、計測対象の電流の流れる1次巻線22が閉磁路の中央開口を貫通している。その動作は、1次巻線22に1次電流21が流れると、電磁誘導によって1次電流21の大きさに対応した2次電流23が2次巻線24に発生する。このとき2次巻線24に負担抵抗を接続することによって、電圧信号が出力され、その結果、1次巻線22に流れる1次電流21を電圧信号として計測することが可能になる。
【0003】
また従来の変流器の製造方法としては、金属の型を用意し、少なくとも一つの巻線を備えた磁心すなわちコイルを外ケースに組み込んだ状態で型内に挿入し、型を閉鎖して、加熱流動化した成形樹脂を加圧下で型に充填することにより、加圧成形し一体に封止成形する方法がある。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は従来の変流器の加圧成形方法の説明図である。
図4のアイソメ図(a)、上面図(b)に示すように、外ケース1にコイル12及びコイル12に電気的に接続されたリード線11を組み込んだものを、金型(下型)18にセットし、金型(上型)17を閉じて、加熱流動化した成形樹脂を金型(上型)17のゲート9から注ぎ込み加圧成形してコイル12を封止している。
【0006】
上記の手順にてコイル12を成形樹脂にて封止する変流器であって、
図5のように外ケース1の内外円筒部にコイル12が密着し、側壁部に成形樹脂との接合界面6が生じる場合、
図5(a)のB-B線断面図である
図5(d)にて示すように外ケース1の側壁は薄く、その断面に成形樹脂を固着できないため、外力により容易に剥離して隙間が発生し、ほかの部位と比較して外部とコイル12間の耐電圧特性が著しく低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における変流器及び零相変流器は、高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを底面及び二重円筒状壁を有するケースに収納し、加熱流動化した成形樹脂を成形金型注入口からケースに注ぎ込みコイルと一体に加圧成形する構造であって、ケースは、成形樹脂の注入口から所定の範囲内にある成形樹脂充填領域にある二重円筒状壁の少なくとも一面に、継手構造を成形樹脂との界面部に備えるものとする。なおこの継手構造は空気ベントも兼ねた構造とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記の通り、ケース側壁の外周部からコイルへと至る成形樹脂との界面部において、継手構造を備えることにより、ケースと成形樹脂の接触面積を広げて固着させることで、隙間の発生を防止し、耐電圧特性を向上させる効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図2】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図4】 一般的な変流器の加圧成形方法の説明図である。
【
図5】 側壁に成形樹脂と外ケースの界面を有する変流器及び零相変流器の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100で、
図1(a)は平面図、
図1(b)はアイソメ図、
図1(c)は正面図、
図1(d)はA-A線断面図、
図1(e)は
図1(a)におけるB-B線断面図、
図1(f)は
図1(a)における部分拡大
図C、
図1(g)はコイル12のアイソメ図を示す。
図1(g)にて示したコイル12は集磁のためのトロイダル形状の磁心15(
図1(d)に示す)と磁心15を収めるためのトロイダル形状のケース14(
図1(d)に示す)および磁心15を収めたケース14に巻き付けられた磁心15内における磁束の変化を電流に変換するための巻線13により構成される。5は巻線13とからげられ電気的に接続された引き出し用リードピンである。
図1(a)において、1はコイル12及びリードピン5の一部を収納する外ケースで、10は加圧充填されたコイル12を封止する成形樹脂である。8は成形後内部に残留する空気用のベントとして機能する通気孔用の筒状構造を示し、7は外ケースと成形樹脂の継手として機能する鉤状構造を示す。
図2はこの発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100に用いる外ケース1で、
図2(a)は平面図、
図2(b)はアイソメ図、
図2(c)は正面図、
図2(d)は
図2(a)に示した筒状構造8のA-A線断面図、
図2(e)は
図2(a)における鉤状構造7の部分拡大
図Bである。
図2(a)において4は
図1(g)のコイル12を外ケース1に収める際に
図1(g)のリードピン5を挿入し、先端を外ケース1外部に引き出すためのリードピン挿入部である。
図2(a)(b)(d)(e)において、外ケース1は外側円筒3に外ケース1の金型を作成する上で支障のない大きさである任意形状である外ケース1の天面から底面へ至る筒状構造8を成形樹脂10との接合界面6と沿う箇所に有する。
筒状構造8は外ケース1の内部(成形樹脂充填領域側)へと通じる天面から底面方向の成形樹脂が充填される深さより深いスリット16を有し、天面側に接合界面6と同様の深さの鉤状構造7を有する。鉤状構造7は外ケース1の内外円筒側壁と同程度の肉厚t(
図2(e)に示す。例えば0.5mm)であり、筒状構造8の中心を基準にスリット16の中心線から鉤状構造7の先端までの角度Mは180°以上(
図2(e)に示す。例えば270°)が望ましい。
成形樹脂充填の際に成形樹脂はスリット16から筒状構造8へ流入し、鉤状構造7の内周と接着する。これにより、
図5に示した場合と比較して、接合界面6において、外ケース1と成形樹脂10の接触面積を広く確保できるため、隙間の発生を防止し高い耐電圧特性が得られる。
【符号の説明】
【0011】
1 外ケース
2 内側円筒
3 外側円筒
4 リードピン挿入部
5 リードピン
6 接合界面
7 鉤状構造
8 筒状構造
9 ゲート(成形樹脂充填用)
10 成形樹脂
11 リード線
12 コイル
13 巻線
14 ケース
15 磁心
16 スリット
17 金型(上型)
18 金型(下型)
20 環状の鉄心
21 1次電流
22 1次巻線
23 2次電流
24 2次巻線
100 変流器及び零相変流器