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  • 特開-タッチパネル及びタッチデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068084
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】タッチパネル及びタッチデバイス
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
G06F3/041 450
G06F3/041 430
G06F3/041 420
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029829
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】202011129434.3
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ユー チエンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ディン ジージュン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ユングオ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジアンフア
(72)【発明者】
【氏名】ルー リーデー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タッチパネルの接触検知電極層と周辺回路層との電気的な重なり安定性を向上させる狭幅ベゼル製品を提供する。
【解決手段】タッチパネルは、基板110、隆起構造120、接触検知電極層130及び周辺回路層140を含む。基板は、可視領域VRと、可視領域VRを囲む境界領域BRとを有する。隆起構造120は、基板110上に配置され、隆起構造120と基板110とが段差領域を構成する境界領域BRに配置される。接触検知電極層130は、可視領域VRに配置され、隆起構造120を超えて段差領域を覆うように一部が境界領域BRまで延在する。周辺回路層140は、境界領域BRに配置され、少なくとも隆起構造120及び段差領域上で接触検知電極層130と重なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域及び前記可視領域を取り囲む境界領域を有する基板と、
前記基板上に配置され、前記境界領域に配置された隆起構造であって、前記隆起構造及び前記基板が段差領域を構成する前記隆起構造と、
前記可視領域に配置され、前記隆起構造を超えて前記段差領域を覆うように一部が前記境界領域まで延在する接触検知電極層と、
前記境界領域に配置され、少なくとも前記隆起構造及び前記段差領域上で前記接触検知電極層と重なる周辺回路層と、
を備えたタッチパネル。
【請求項2】
前記接触検知電極層は、マトリクスと、前記マトリクス内に分散された複数の金属ナノ構造とを含む、
請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記隆起構造は、金属材料を含み、前記金属材料の反応性は、前記金属ナノ構造の反応性よりも高い、
請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記隆起構造は、中央領域及び前記中央領域を取り囲む周辺領域を有し、前記中央領域の垂直方向厚さは、前記周辺領域の垂直方向厚さよりも大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記接触検知電極層は、第1部分及び第2部分を有し、前記第1部分は、前記隆起構造の前記中央領域を覆い、前記第2部分は、前記隆起構造の前記周辺領域及び前記段差領域を覆い、前記第1部分は、前記第2部分に接続される、
請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記接触検知電極層の前記第2部分は、前記段差領域で前記基板と接触している、
請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記接触検知電極層は、複数の金属ナノ構造を含み、
前記接触検知電極層の前記第2部分における前記金属ナノ構造の密度は、前記第1部分における前記金属ナノ構造の密度よりも大きい、
請求項5または6に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記接触検知電極層の前記第1部分における前記金属ナノ構造の密度は、10%から50%の間であり、
前記接触検知電極層の前記第2部分における前記金属ナノ構造の密度は、前記接触検知電極層の前記第1部分における前記金属ナノ構造の密度よりも7%から18%だけ大きい、
請求項7に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記隆起構造の最大垂直方向厚さは、2μmから8μmの間である、
請求項1~8のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記基板は、保護カバーであり、
前記隆起構造は、遮光構造の少なくとも一部である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記接触検知電極層は、前記隆起構造上にコンフォーマルに延びる、
請求項1~10のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記接触検知電極層は、前記周辺回路層とオーバーラップするオーバーラップ領域を画定する、
請求項1~11のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のタッチパネルを含むタッチデバイス。
【請求項14】
前記タッチデバイスは、ディスプレイ、携帯電話、ノートブック、タブレット、ウェアラブル機器、自動車機器または偏光子を含む、
請求項13に記載のタッチデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチパネル及びタッチデバイスに関するものであり、特に、オーバーラップ構造を有するタッチパネル及びタッチデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、携帯電話、ノートブックコンピュータ、衛星ナビゲーションシステム及びデジタル視聴覚プレーヤーなどの携帯型電子製品において、ユーザと電子デバイスとの間の情報通信チャネルとして機能するために広く使用されている。
【0003】
タッチパネルは、接触電極と周辺回路を含み、接触電極と周辺回路とは、通常、周辺領域で互いに接触して、導電経路またはループを形成し、接触インピーダンスがタッチパネルの信号伝送及び応答速度に影響を及ぼす。接触インピーダンスは、接触電極と周辺回路の間で重なり合う重なり面積に依存する。一般に、重なり面積が大きくなると、接触インピーダンスは低くなる。ただし、重なり面積は、タッチパネルの周辺領域の大きさに直接影響する。狭幅ベゼル製品の需要が徐々に高まる中で、周辺領域のサイズ要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすことができるタッチパネルが検討されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示のいくつかの実施形態によれば、タッチパネルは、基板、隆起構造、接触検知電極層及び周辺回路層を備える。基板は、可視領域及び可視領域を取り囲む境界領域を有する。隆起構造は、基板上に配置され、隆起構造及び基板が段差領域を構成するように境界領域に配置される。接触検知電極層は、可視領域に配置され、隆起構造を超えて段差領域を覆うように、一部が境界領域まで延在する。周辺回路層は、境界領域に配置され、少なくとも隆起構造及び段差領域上で接触検知電極層と重なる。
【0005】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層は、マトリックスと、マトリックス内に分散された複数の金属ナノ構造とを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、隆起構造は、金属材料を含み、金属材料の反応性は、金属ナノ構造の反応性よりも高い。
【0007】
いくつかの実施形態では、隆起構造は、中央領域及び中央領域を取り囲む周辺領域を有し、中央領域の垂直方向厚さは、周辺領域の垂直方向厚さよりも大きい。
【0008】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層は、第1部分及び第2部分を有し、第1部分は、隆起構造の中央領域を覆い、第2部分は、隆起構造の周辺領域及び段差領域を覆い、第1部分は、第2部分に接続される。
【0009】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層の第2部分は、段差領域で基板と接触している。
【0010】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層は、複数の金属ナノ構造を含み、接触検知電極層の第2部分における金属ナノ構造の密度は、接触検知電極層の第1部分における金属ナノ構造の密度よりも大きい。
【0011】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層の第1部分における金属ナノ構造の密度は、10%から50%の間であり、接触検知電極層の第2部分における金属ナノ構造の密度は、接触検知電極層の第1部分における金属ナノ構造の密度よりも7%から18%だけ大きい。
【0012】
いくつかの実施形態では、隆起構造の最大垂直方向厚さは、2μmから8μmの間である。
【0013】
いくつかの実施形態では、基板は保護カバーであり、隆起構造は、遮光構造の少なくとも一部である。
【0014】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層は、隆起構造上にコンフォーマルに延びる。
【0015】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層は、周辺回路層とオーバーラップするオーバーラップ領域を画定する。
【0016】
本開示の他のいくつかの実施形態によれば、タッチデバイスは、前述のタッチパネルを含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態では、タッチデバイスは、ディスプレイ、携帯電話、ノートブック、タブレット、ウェアラブル機器、自動車機器または偏光子を含む。
【0018】
本開示の前述の実施形態によれば、本開示のタッチパネルは、基板と接触検知電極層との間に配置された隆起構造を有するため、接触検知電極層と周辺回路層との重なり面積を大きくすることができ、接触検知電極層と周辺回路層との接触インピーダンスを小さくすることができる。したがって、接触検知電極層と周辺回路層との間の電気的な重なり安定性を向上させることができ、重なりに要する横方向のスペースを小さくすることができる。その結果、タッチパネルの境界領域の横幅を狭くして、狭幅ベゼル製品に対するユーザのニーズを満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示は、以下の添付の図面を参照しながら、実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
【0020】
図1】本開示のいくつかの実施形態によるタッチパネルを示す概略上面図である。
【0021】
図2図1のタッチパネルの領域R1を示す概略部分拡大図である。
【0022】
図3】本開示のいくつかの実施形態による、図2のタッチパネルを線a~a‘に沿って示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本開示の本実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、同じまたは類似の部品を参照するために、図面及び説明で同じ参照番号が使用される。
【0024】
さらに、図に示すように、「下」または「底」及び「上」または「頂上」などの相対的な用語を使用して、ある要素と別の要素との間の関係を説明することができる。相対的な用語は、図に示されているもの以外のデバイスの異なる方向を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、ある図のデバイスをひっくり返した場合、他の要素の「下」側にあると説明されている要素は、他の要素の「上」側に向けられる。したがって、例示的な用語「下」は、図面の特定の向きに応じて、「下」及び「上」の向きを含み得る。同様に、1つの図のデバイスをひっくり返すと、他の要素の「下」にある要素は、他の要素の「上」に配置される。したがって、例示的な用語「下」は、「上」及び「下」の向きを含むことができる。
【0025】
本開示は、基板と接触検知電極層との間に配置された隆起構造を有するタッチパネルを提供する。このように隆起構造を構成することにより、接触検知電極層と周辺回路層との電気的な重なり安定性を向上させることができ、タッチパネルの境界領域の横幅を小さくすることができ、狭幅ベゼル製品に対するユーザのニーズに応えることができる。
【0026】
図1は、本開示のいくつかの実施形態によるタッチパネル100を示す概略上面図である。図2は、図1のタッチパネル100の領域R1を示す概略部分拡大図である。図3は、図2のタッチパネル100を線a~a‘に沿って示す概略断面図である。図1から図3を参照する。タッチパネル100は、基板110、隆起構造120、接触検知電極層130及び周辺回路層140を備える。基板110は、水平面(例えば、X軸とY軸によって形成される平面)に沿って延び、可視領域VR及び可視領域VRを取り囲む境界領域BRとを有する。本実施形態における接触検知電極層130は、X軸に延びる電極を含むように示されているが、接触検知電極層130は、また、実際の設計において、Y軸に延びる電極を含み得る。さらに、接触検知電極層130の電極パターンは、本開示に限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態では、基板110は、例えば、剛性の透明な基板または可撓性の透明な基板であり得る。いくつかの実施形態では、基板110の材料は、ガラス、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無色ポリイミドなどの透明材料またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前処理ステップは、基板110の表面上で実行され得る。例えば、表面改質プロセスが実行されるか、または接着層または樹脂層が、基板110と他の層(例えば、基板110上の隆起構造120及び/または接触検知電極層130)との間の接着を強化するために基板110の表面上方に追加的にコーティングされる。
【0028】
いくつかの実施形態では、隆起構造120は、基板110上に配置され、境界領域BRに配置される。隆起構造120は垂直方向に(例えば、Z軸に沿って)隆起し、隆起構造120と基板110との間に高低差が存在する。このような高低差は、段差領域Sを構成し得る。接触検知電極層130は、基板110上の可視領域VRに配置され、一部が境界領域BRまで延び、隆起構造120を越えて段差領域Sを覆うようになっている。周辺回路層140は、基板110上に配置され、境界領域BRに位置し、少なくとも隆起構造120及び段差領域S上で接触検知電極層130と重なる。いくつかの実施形態では、隆起構造120、接触検知電極層130及び周辺回路層140は、基板110上に順次積み重ねられて、境界領域BRに位置するオーバーラップ構造200を形成する。
【0029】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層130は、周辺回路層140とオーバーラップしてオーバーラップ領域を画定し、オーバーラップ領域は、重なり合う面積を有する。本実施形態では、オーバーラップ領域は、上面図(すなわち、図2の視野角)における四辺形領域である。より具体的には、この実施形態におけるオーバーラップ領域は、上面図において長さL1及び幅W1によって形成される四辺形領域である。
【0030】
タッチパネル100の動作時には、可視領域VRに位置する接触検知電極層130は、ユーザのタッチ運動を検知して接触検知信号を生成することができ、境界領域BRに位置する周辺回路層140に、オーバーラップ構造200における接触検知電極層130と周辺回路層140との間の重なり合う接触を介して、接触検知信号をさらに送信して、後続の信号処理を行うことができる。以下の説明において、本開示のオーバーラップ構造200をより詳しく説明する。
【0031】
図3の線a~a‘に沿った断面は、本開示のオーバーラップ構造200の断面であることを理解されたい。すなわち、図3は、図2のタッチパネル100のオーバーラップ構造200を示す概略断面図である。図3を参照する。いくつかの実施形態では、隆起構造120は、中央領域122及び中央領域122を取り囲む周辺領域124を有し、Z軸に沿った中央領域122の厚さT1(垂直方向厚さT1とも呼ばれる)は、Z軸に沿った周辺領域124の厚さT2(垂直方向厚さT2とも呼ばれる)よりも大きい。例えば、隆起構造120の厚さは、中央領域122から周辺領域124まで徐々に減少し、厚さ減少の程度は、中央領域122から周辺領域124まで徐々に増加する。このような厚さの変化は、隆起構造120の上面を凸状の曲面として形成することができる。いくつかの実施形態では、隆起構造120の最大垂直方向厚さTは、2μmから8μmの間であってもよく、これにより、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性が改善され、それによって、タッチパネル100の境界領域BRの横方向幅W2が減少する(以下で詳細に説明する)。いくつかの実施形態では、隆起構造120の上面121は、例えば、(図3に示されるように)滑らかな曲面であってもよい。いくつかの他の実施形態では、隆起構造120の上面121は、例えば、階段状または波形を有するような規則的/不規則な表面であってもよい。隆起構造120の中央領域122の垂直方向厚さT1が隆起構造120の周辺領域124の垂直方向厚さT2よりも大きい限り、上面121の任意の輪郭は、本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、基板110がタッチパネル100の保護カバーとして機能する場合には、隆起構造120は、タッチパネル100の遮光構造の少なくとも一部であってもよく、例えば、暗色または不透明なフォトレジスト材料から形成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層130は、X軸に沿って隆起構造120全体を横方向に超える。言い換えれば、オーバーラップ構造200において、基板110上の接触検知電極層130の垂直投影は、例えば、基板110上の隆起構造120の垂直投影を完全に覆うことができる。具体的には、図2に示されるように、オーバーラップ構造200において、接触検知電極層130は、第1部分132及び第1部分を横方向に取り囲む第2部分134を有し、第1部分132は、隆起構造120の中央領域122を覆い、第2部分134は、隆起構造120の周辺領域124及び段差領域Sを覆う。第1部分132は、第2部分134に接続され、第1部分132の最高位置(例えば、上面)は、第2部分134の最高位置よりも高い。さらに、接触検知電極層130の第2部分134は、段差領域Sで基板110と接触している。
【0033】
いくつかの実施形態では、隆起構造120上に配置された接触検知電極層130は、隆起構造120の上面121の輪郭によって変動し得る。言い換えれば、オーバーラップ構造200において、接触検知電極層130の輪郭は、隆起構造120の上面121の輪郭に依存し得る。いくつかの実施形態では、接触検知電極層130は、隆起構造120及び基板110上にコンフォーマル(共形的)に延びることができる。すなわち、オーバーラップ構造200において、接触検知電極層130は、隆起構造120の上面121に対して、均一で一定の厚さT3を有することができ、基板110に接触する接触検知電極層130もまた、基板110の上面111に対して、均一で一定の厚さT3を有することができる。いくつかの実施形態では、接触検知電極層130の厚さT3は、30nmから120nmの間であってもよく、その結果、接触検知電極層130及び周辺回路層140の間に必要な電気的重なり安定性を維持することができ、タッチパネル100の光学特性への悪影響を抑制することができる。具体的には、接触検知電極層130の厚さT3が30nm未満である場合には、表面抵抗が過大となり、信号伝送に影響を及ぼす恐れがある。接触検知電極層130の厚さT3が120nmより大きい場合には、タッチパネル100の光学特性に影響を及ぼす可能性がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層130は、マトリックス136と、マトリックス136内に分布する複数の金属ナノワイヤ(金属ナノ構造とも呼ばれる)138とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス136は、ポリマーまたはそれらの混合物を含み得る。これにより、接触検知電極層130に特定の化学的、機械的、及び、光学的特性を与える。例えば、マトリックス136は、接触検知電極層130と隆起構造120との間、及び、接触検知電極層130と基板110との間に、良好な接着を提供することができる。別の例として、マトリックス136は、接触検知電極層130に良好な機械的強度を提供することができる。いくつかの実施形態では、マトリックス136は、接触検知電極層130が引っかき傷及び摩耗に対するさらなる表面保護を有し、それによって、接触検知電極層130の表面強度を高めるように、特定のポリマー、例えば、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ(シリコン-アクリル酸)、ポリシロキサン、ポリシラン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、マトリックス136は、架橋剤、重合阻害剤、安定剤(例えば、抗酸化剤または紫外線安定剤を含むがこれらに限定されない)、界面活性剤、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよく、それにより、接触検知電極層130の抗紫外線特性を改善し、耐用年数を延長させる。
【0035】
金属ナノワイヤ138は、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。より具体的には、本明細書で使用される「金属ナノワイヤ138」という用語は、集合名詞であり、これは、複数の金属元素、金属合金、または金属化合物(金属酸化物を含む)を含む金属ワイヤの集合を指す。いくつかの実施形態では、単一の金属ナノワイヤの断面サイズ(例えば、断面の直径)は、500nm未満、好ましくは、100nm未満、より好ましくは50nm未満でもよい。いくつかの実施形態では、単一の金属ナノワイヤ138は、大きなアスペクト比(すなわち、長さ:断面の直径)を有する。具体的には、単一の金属ナノワイヤのアスペクト比は、10から100,000の間でもよい。より詳細には、単一の金属ナノワイヤのアスペクト比は、10より大きく、好ましくは、50より大きく、より好ましくは、100より大きくてもよい。さらに、絹、繊維、または管のような他の用語も、同様に本開示の範囲内に入る上記の断面寸法及びアスペクト比を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、隆起構造120上の周辺回路層140は、X軸に沿って接触検知電極層130を横方向に横切る。換言すれば、オーバーラップ構造200において、周辺回路層140は、接触検知電極層130の直上に位置し、接触検知電極層130を覆い、接触検知電極層130と電気的に接続されてもよい。接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的オーバーラップにより、タッチパネル100内で接触検知信号を支障なく送信することができる。いくつかの実施形態では、周辺回路層140の底面143は、接触検知電極層130の上面131の輪郭とともに変動してもよい。すなわち、周辺回路層140の底面143の輪郭は、接触検知電極層130の上面131の輪郭に依存してもよい。いくつかの実施形態では、周辺回路層140は、位置によって変化する垂直方向の厚さT4を有してもよい。具体的には、周辺回路層140の垂直方向の厚さT4は、オーバーラップ構造200の中心から周辺に向かって横方向に徐々に増加してもよい。他のいくつかの実施形態では、隆起構造120に対応する周辺回路層140の領域も接触検知電極層130の上面131に対して均一で一定の厚さT4を有してもよい。いくつかの実施形態では、周辺回路層140は、例えば、銅、銀、銅-銀合金、または他の適切な導電性材料を含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性は、隆起構造120の物理的特性(例えば、隆起構造120の形状、垂直方向の厚さなど)に依存し得る。換言すれば、隆起構造120の物理的特性を調整することにより、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性を向上させることができる。具体的には、隆起構造120上に接触検知電極層130を配置すると、隆起構造120は中間凸状構造を有するので、接触検知電極層130を「アーチ橋」に類似した形状に形成することができる。したがって、接触検知電極層130と周辺回路層140との間に形成される重なり面積(例えば、長さL1及び幅W1で規定される重なり面積)を変化させない前提として、実際の重なり面積を大きくすることができる。さらに、接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138を、重力のために段差領域Sに集まるように沈降させることができる。その結果、接触検知電極層130(特に、接触検知電極層130の第2部分134)と周辺回路層140との間の接触インピーダンスを低減することができ、それにより、接触検知電極層130及び周辺回路層140間の電気的重なり安定性を改善する。
【0038】
上記のように、隆起構造120の最大垂直厚さTは、2μmから8μmの間でもよいので、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性を向上させることができ、タッチパネル100の境界領域BRの横幅W2を小さくすることができる。具体的には、隆起構造120上に接触検知電極層130を配置した場合において、隆起構造120の最大垂直厚さTが2μm未満の場合には、接触検知電極層130は、「アーチ橋」と同様の形状を形成できない場合がある。したがって、接触検知電極層130は、基板110上に平面に近い形で配置され、その結果、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の実際の重なり面積を、効果的に増加させることができず、金属ナノワイヤ138は、適切な量だけ段差領域Sに沈降して集まることができない。その結果、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の接触インピーダンスは、設計要件を満たすことができず、より大きなサイズの重なり面積を有するように設計され、タッチパネル100の境界領域BRの横幅W2を小さくすることができない。一方、接触検知電極層130が隆起構造120上に配置されている場合において、隆起構造120の最大垂直厚さTが8μmより大きい場合には、接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138は、過度に沈降して集まる。その結果、接触検知電極層130の第1部分132と周辺回路層140との間の電気的重なりが不安定になり、接触検知電極層130がより高い高さまで上昇する必要があり、それによって、電気的故障につながる。
【0039】
接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138は、隆起構造120の物理的特性を受けて、接触検知電極層130の第2部分134に沈降して集まるので、接触検知電極層130の第2部分134における金属ナノワイヤ138の密度は、接触検知電極層130の第1部分132における金属ナノワイヤ138の密度よりも大きい。本明細書における「密度」という用語は、単位面積あたりの接触検知電極層130に含まれる金属ナノワイヤ138の数を指すことを理解されたい。いくつかの実施形態では、光学的及び電気的特性を満たすために、接触検知電極層130の第1部分132内の金属ナノワイヤ138の密度は、10%から50%の間、好ましくは、12%から22%の間でもよい。接触検知電極層130の第2部分134における金属ナノワイヤ138の密度は、接触検知電極層130の第1部分132における金属ナノワイヤ138の密度よりも約7%から18%だけ大きくてもよい。したがって、接触検知電極層130は、良好な導電性を確保することができ、接触検知電極層130及び周辺回路層140の電気的重なり安定性を良好にすることができる。具体的には、前述の密度は、接触検知電極層130の表面抵抗及びタッチパネル100の全体的な光学的外観に影響を与えるであろう。密度が低すぎる場合、すなわち、金属ナノワイヤ138がマトリックス136内にまばらに分布している場合には、過度の表面抵抗が生じる可能性がある。密度が高すぎる場合、すなわち、金属ナノワイヤ138がマトリックス136内に密に分布している場合には、光透過率が低下し、光学特性に影響を与える可能性がある。前述の光学特性は、可視領域VRの光学特性を指し、可視領域VRに位置する接触検知電極層130と、境界領域BRに延びる接触検知電極層130とは、タッチパネル100の製造工程中に、表面全体にコーティングされるため、境界領域BRに位置する接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138の密度(特に、接触検知電極層130の第1部分132における金属ナノワイヤ138の密度)は、可視領域VRに位置する接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138の密度と実質的に同様である。したがって、前述の接触検知電極層130全体を全面にコーティングする設計では、境界領域BRに位置する接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138の密度を考慮すると、タッチパネル100の可視領域VRの光学特性を考慮することも必要である。一方、金属ナノワイヤ138よりも導電率が高い金属材料(例えば、銅)を選択して、隆起構造120を形成することができる。オーバーラップ構造200全体が、金属材料を有する隆起構造120のために、電気的な重なり合う安定性を改善することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性は、隆起構造120の化学的特性(例えば、材料)にさらに依存してもよい。隆起構造120の化学的特性を調整することにより、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性をさらに改善することができる。より具体的には、金属ナノワイヤ138の反応性よりも高い反応性(化学反応性)を有する金属材料を選択して、隆起構造120を形成し、その結果、金属ナノワイヤ138は、接触検知電極層130内で、周辺回路層140と隆起構造120との間に、より容易に集まるようにすることができる。したがって、オーバーラップ構造200の接触検知電極層130内の金属ナノワイヤ138の密度は、増加され、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的重なり安定性は改善される。例えば、銀ナノワイヤが金属ナノワイヤ138として使用するために選択された場合には、銀の反応性よりも高い反応性を有する金属(例えば、銅)を、隆起構造120の材料として選択することができる。
【0041】
より詳細には、接触検知電極層130は、金属ナノワイヤ138を含む分散液のコーティング、硬化、及び乾燥のステップを通じて形成することができる。いくつかの実施形態では、分散液は、金属ナノワイヤ138が溶媒中に均一に分散している溶液を含む。具体的には、溶媒は、例えば、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、分散液は、金属ナノワイヤ138と溶媒との間の適合性及び溶媒中の金属ナノワイヤ138の安定性を改善するために、添加剤、界面活性剤、及び/または結合剤をさらに含んでもよい。具体的には、添加剤、界面活性剤、及び/または結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、フルオロ界面活性剤、スルホコハク酸スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ジスルホン酸塩、またはそれらの組み合わせでもよい。
【0042】
第1に、コーティング工程は、スクリーン印刷、ノズルコーティング、またはローラーコーティングを含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ロールツーロールプロセスを実行して、基板110の上面111及び隆起構造120の上面121に金属ナノワイヤ138を含む分散液を均一にコーティングしてもよい。隆起構造120は、中間凸状構造を有するので、まだ乾燥されていない分散液中の金属ナノワイヤ138は、重力によって沈降し、段差領域Sの近くの分散液に部分的に集まる。同時に、隆起構造120の材料の反応性が金属ナノワイヤ138の反応性よりも高い場合には、分散液中の金属ナノワイヤ138もまた、隆起構造120の材料の影響を受け、隆起構造120の表面に比較的近い位置に集まる。言い換えると、オーバーラップ構造200の周辺(例えば、図2に示す可視領域VR上)にコーティングされた分散液中の金属ナノワイヤ138がわずかに移動し、オーバーラップ構造200の表面と接触する位置に部分的に集まる。次に、硬化及び乾燥工程を実施し、金属ナノワイヤ138を基板110の上面111及び隆起構造120の上面121に固定して、接触検知電極層130を形成することができる。
【0043】
全体として、前述のコーティング工程において、分散液中の金属ナノワイヤ138は、隆起構造120の物理的特性(例えば、垂直方向の厚さ、形状、導電率など)及び化学的特性(例えば、材料)によって影響を受けて特定の位置に移動して集まる。硬化及び乾燥ステップが実行された後、金属ナノワイヤ138は、オーバーラップ構造200に配置された接触検知電極層130、特に、第2部分134に、段差領域Sに対応させて密に分布させることができる。したがって、接触検知電極層130(特に、接触検知電極層130の第2部分134)と周辺回路層140との間の接触インピーダンスを低減することができる。これにより、接触検知電極層130と周辺回路層140との間の電気的オーバーラップ安定性を向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、一次コーティング層は、基板110及び隆起構造120に固定された金属ナノワイヤ138上にコーティングされてもよい。次に、一次コーティング層及び金属ナノワイヤ138は、硬化することによって複合構造層に形成される。言い換えれば、硬化した一次コーティング層は、本開示のマトリックス136として機能し、複合構造層は、本開示の接触検知電極層130として機能する。より具体的には、前述のポリマーまたはその混合物は、コーティングによって金属ナノワイヤ138上に形成されてもよく、次いで、ポリマーまたはそれらの混合物は、金属ナノワイヤ138の間に浸透して充填剤を形成してもよく、次いで、充填剤は、硬化されてマトリックス136を形成する。したがって、金属ナノワイヤ138は、マトリックス136に埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、前述のポリマーまたはそれらの混合物を有する一次コーティング層は、加熱及びベーキングによってマトリックス136に形成することができる。いくつかの実施形態では、加熱及びベーキングの温度は、60℃から150℃の間でもよい。マトリックス136と金属ナノワイヤ138との間の物理的構造は、本開示を制限することを意図していないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、マトリックス136及び金属ナノワイヤ138は、2つの層の積層体でもよい。いくつかの他の実施形態では、マトリックス136及び金属ナノワイヤ138を互いに混合して、複合構造層を形成することができる。いくつかの好ましい実施形態では、金属ナノワイヤ138はマトリックス136に埋め込まれて、複合構造層を形成する。
【0045】
本開示のタッチパネル100は、タッチ機能を備えたディスプレイなどの他の電子デバイスと組み立てることができる。例えば、タッチパネル100は、表示装置(例えば、液晶表示装置または有機発光ダイオード表示装置)に結合することができ、光学接着剤または他の接着剤を使用して、タッチパネル100とディスプレイデバイスとの間を結合することができる。本開示のタッチパネル100は、携帯電話、タブレット、ノートブックなどの電子機器にさらに適用することができ、フレキシブル製品にも適用することができる。本開示のタッチパネル100は、偏光子にも適用できる。本開示のタッチパネル100は、ウェアラブル機器(例えば、時計、眼鏡、スマート衣類、及びスマートシューズ)及び自動車機器(例えば、ダッシュボード、ドライビングレコーダー、バックミラー、及びウィンドウ)に適用することができる。
【0046】
本開示のタッチパネルは、基板と接触検知電極層との間に配置された隆起構造を有するため、接触検知電極層と周辺回路層との間の重なり面積を大きくすることができ、その結果、接触検知電極層と周辺回路層との接触インピーダンスを小さくすることができる。これにより、タッチセンシング電極層と周辺回路層との間の電気的オーバーラップ安定性を改善することができ、オーバーラップに必要な横方向のスペースを減らすことができる。よって、タッチパネルの境界領域の横幅を小さくすることができ、狭幅ベゼル製品に対するユーザのニーズを満たすことができる。
【0047】
本開示は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明されてきたが、他の実施形態が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0048】
本開示の範囲または主旨から逸脱することなく、本開示の構造に対して様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。以上のことを考慮して、本開示は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることを条件として、本開示の修正及び変形をカバーすることが意図される。
図1
図2
図3