(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068130
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】美容器具及び美容方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171976
(22)【出願日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020176940
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300006434
【氏名又は名称】株式会社フレキシア
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 やなぎ
(72)【発明者】
【氏名】五井野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真世
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋平
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053BB24
4C053EE17
4C053FF04
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
(57)【要約】
【課題】安定した美容効果を得やすい美容器具を提供するとともに、そのような美容器具を用いた美容方法を提供する。
【解決手段】袖ぐり21を有して上半身に着用可能な装着具11と、装着具11の内面における少なくとも乳房部上部23bに配置された導電布12と、を備えた美容器具10を用いる。通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を施術部位に塗布し、被施術者に装着具11を着用して導電布12を肌に接触させ、美容用微弱電流を給電して第1給電処理S10を行った後、施術者が装着した導電性グローブ13を被施術者に接触させて美容用微弱電流を給電する第2給電処理S20を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袖ぐりを有して被施術者の上半身に着用可能な装着具と、
前記装着具の内面における少なくとも乳房部上部に配置され、肌に接して美容用微弱電流を給電可能な導電布と、を備えていることを特徴とする美容器具。
【請求項2】
前記装着具の右肩部に一端が連結して背中側を通して配置され、左乳房部下部に他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第1矯正ベルトと、
前記装着具の左肩部に一端が連結して前記背中側を通して配置され、右乳房部下部に他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第2矯正ベルトと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の美容器具。
【請求項3】
前記装着具は、互いに分離した右半体と左半体とを備え、
前記右半体と前記左半体とが、胸部で連結されるとともに背中部で幅調整部を介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の美容器具。
【請求項4】
前記導電布と接続して前記美容用微弱電流を供給可能な電源部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の美容器具。
【請求項5】
施術者の手に着用可能で、前記電源部と接続されて前記被施術者に接触して前記美容用微弱電流を給電可能な導電性グローブを備えていることを特徴とする請求項4に記載の美容器具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の美容器具を用いた美容方法であって、
通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を前記肌に塗布する前処理と、
前記装着具を着用して前記美容用微弱電流を前記肌に給電する給電処理と、を備えることを特徴とする美容方法。
【請求項7】
請求項5に記載の美容器具を用いた美容方法であって、
前記装着具を着用して前記美容用微弱電流を前記肌に給電する第1給電処理と、
前記第1給電処理後に、前記導電性グローブを前記施術者が装着して前記被施術者に接触させて前記美容用微弱電流を給電する第2給電処理と、
を備えていることを特徴とする美容方法。
【請求項8】
請求項5に記載の美容器具を用いた美容方法であって、
通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を前記肌に塗布する前処理と、
前記装着具を着用して前記美容用微弱電流を前記肌に給電する第1給電処理と、
前記第1給電処理後に、前記導電性グローブを施術者が装着して前記被施術者に接触させて前記美容用微弱電流を給電する第2給電処理と、
を備えていることを特徴とする美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用微弱電流を肌に給電する美容器具と、この美容器具を用いた美容方法と、に関する。
【0002】
従来、微弱電流を肌に給電して痩身、美肌等のエステティックを行う美容器具が知らている。例えば下記特許文献1には、身体に直接に装着されて銀製繊維を有する基材と、この基材の上から身体に着用されて基材に電流を導く電極を有する着用部材と、を備えた美容システムが提案されている。この特許文献1では、基材と着用部材とを別体に構成することで、着用部材をそのまま使用しつつ基材のみを新しいものに交換できるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のような従来の美容器具では、着用部材が身体の形状を引き締めるとともに布を身体に固定するサポーターにより構成され、横方向巻回部などを身体に巻付けて締め付けることで装着されていた。
そのため装着方法等が不適切で過剰な締付力が付与されるような場合、被施術部位に変形や歪みなどが生じることがあり、様々な変形や歪みが生じた状態で美容用微弱電流が給電されて安定した美容効果を得にくくなっていた。特にバストアップなどでは、過剰な圧迫による歪みや変形が大きく生じ易く、安定した美容効果を得にくいことが明らかとなった。
【0005】
そこで本発明では、より安定した美容効果を得やすい美容器具を提供するとともに、そのような美容器具を用いた美容方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の美容器具は、袖ぐりを有して被施術者の上半身に着用可能な装着具と、装着具の内面における少なくとも乳房部上部に配置され、肌に接して美容用微弱電流を給電可能な導電布と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の美容器具では、装着具の右肩部に一端が連結して背中側を通して配置され、左乳房部下部に他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第1矯正ベルトと、装着具の左肩部に一端が連結して背中側を通して配置され、右乳房部下部に他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第2矯正ベルトと、を備えているのが好適である。
【0008】
また本発明の美容器具では、装着具が互いに分離した右半体と左半体とを備え、右半体と左半体とが、胸部で連結されるとともに背中部で幅調整部を介して連結されているのが好適である。
【0009】
さらに本発明の美容器具では、導電布と接続して美容用微弱電流を供給可能な電源部を備えているのが好適である。
【0010】
加えて本発明の美容器具では、施術者の手に着用可能で、電源部と接続されて被施術者に接触して美容用微弱電流を給電可能な導電性グローブを備えているのが好適である。
【0011】
一方、本発明の美容方法は、上述のような美容器具を用いた美容方法であって、通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を肌に塗布する前処理と、装着具を着用して美容用微弱電流を肌に給電する給電処理と、を備えることを特徴としていてもよい。
【0012】
また本発明の美容方法は、上述のような美容器具を用いた美容方法であって、装着具を着用して美容用微弱電流を肌に給電する第1給電処理と、第1給電処理後に、導電性グローブを施術者が装着して被施術者に接触させて美容用微弱電流を給電する第2給電処理と、を備えていることを特徴としていてもよい。
【0013】
さらに本発明の美容方法は、上述のような美容器具を用いた美容方法であって、通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を肌に塗布する前処理と、装着具を着用して美容用微弱電流を肌に給電する第1給電処理と、第1給電処理後に、導電性グローブを施術者が装着して被施術者に接触させて美容用微弱電流を給電する第2給電処理と、を備えていることを特徴としていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の美容器具によれば、袖ぐりを有して被施術者の上半身に着用可能な装着具の内面に、肌と接して美容用微弱電流を給電するための導電布が配置されているので、装着具を被施術者の上半身に着用することで、導電布を予め設定された被施術者の所定位置に容易且つ確実に接触させることができる。
そのため導電布を肌に接触させるために圧迫する必要がなく、施術部位が過剰に圧迫されて変形や歪みが生じた状態で美容用微弱電流が給電されることがない。これにより自然な形状で美容用微弱電流を給電することができ、安定した美容効果を得やすい。
【0015】
本発明の美容方法においては、通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を塗布する前処理後に、装着具を着用して美容用微弱電流を肌に給電する給電処理を行うと、施術部位の肌を保湿しつつ美容用微弱電流を給電できるため、肌の乾燥により美容用微弱電流の給電が阻害されることを防止でき、安定した美容効果を得やすい。
【0016】
また装着具を着用して美容用微弱電流を肌に給電する第1給電処理を行うと、装着具を着用することで導電布を被施術者の所定位置に容易且つ確実に接触できるため、施術部位に過剰に変形や歪みが生じた状態で美容用微弱電流を給電することがないため、より安定した美容効果を得やすい。
【0017】
さらに第1給電処理後に、導電性グローブを施術者が装着して被施術者に接触させて美容用微弱電流を給電する第2給電処理を行うと、被施術者の装着具を着用した部位以外の部位に、形状に拘わらず容易且つ確実に導電性グローブを接触できるため、装着具を着用した部位以外の部位を固定したり、変位、変形させたりしながら美容用微弱電流を給電することが可能で、第1給電処理による美容効果を効率よく向上させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る美容器具の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る美容器具を被施術者が装着した状態を斜め後側から示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具を示す背面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具における右半体を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具における左半体を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る美容器具の右半体と左半体とを連結する連結プレートを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具の内側面を示し、(a)は胸部側、の(b)は背中側を示す。
【
図10】本発明の実施形態に係る美容器具の装着具に矯正ベルトの一端を連結した状態を示す正面図である。
【
図11】(a)~(c)は本発明の美容方法における美容用微弱電流の波形の例を示すチャートである。
【
図12】本発明の美容方法における施術例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図14】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図15】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図16】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図17】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図18】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術例を示す写真である。
【
図19】本発明の実施形態の施術前のサーモグラフィによる測定結果と、導電性グローブを用いた施術まで実施した後のサーモグラフィによる測定結果とを左右に並べた図であり、(a)は被施術者の胸部側の測定結果を示し、(b)は被施術者の背部側の測定結果を示す。
【
図20】本発明の実施形態に係る導電性グローブを用いた施術を右側のみに実施する前後の被施術者の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態の美容器具10は、
図1及び
図2に示すように、被施術者の上半身に着用可能な装着具11と、装着具11の外面に配置された第1矯正ベルト15及び第2矯正ベルト16と、装着具11とは別体に設けられて施術者の手に着用可能な導電性グローブ13と、装着具11及び導電性グローブ13とは別体に設けられ、これらに美容用微弱電流を供給可能な電源部17と、を備えている。
【0020】
装着具11は、
図3乃至
図5に示すように、被施術者の胸に対応する胸部23と、肩に対応する肩部24と、背中に対応する背中部25と、脇下に対応する脇下部26と、を備え、被施術者の腕の付根乃至肩が配置される袖ぐり21と、首乃至デコルテが配置される襟ぐり22と、が設けられている。胸部23には乳房に対応する乳房部23cと、その下側の乳房部下部23aと、その上側の乳房部上部23bと、が設けられている。
胸部23の乳房部上部23bと肩部24と背中部25とは連続するとともに、胸部23と脇下部26と背中部25とは連続している。
【0021】
装着具11は、
図6(a)(b)及び
図7(a)(b)に示すように、互いに分離した右半体11aと左半体11bとを有している。右半体11aと左半体11bとは、胸部23でファスナ27により連結されている。また背中部25で幅調整部28を介して連結されている。
幅調整部28は、右半体11a又は左半体11bの一方における背中側縁部に、上下に配列してフック部28aが設けられ、他方における背中側縁部付近に、フック部28aを係脱可能なリング部28bが上下に配列して設けられ、このリング部28bの配列が左右に間隔を開けて複数列設けられている。
【0022】
本実施形態の幅調整部28は、さらに
図8(a)(b)に示すような連結プレート28cを備えている。連結プレート28cは長方形形状に設けられ、背中部25の上下方向長さに対応する上下方向長さを有している。
連結プレート28cの一方側の側縁には上下に配列してフック部28aが設けられ、連結プレート28cの表面には、フック部28aを係脱可能なリング部28bが上下に配列して設けられ、さらに左右に間隔を開けて複数列設けられている。
【0023】
幅調整部28では、胸部23のファスナ27により右半体11aと左半体11bとが連結された状態で、背中部25における右半体11a又は左半体11bの一方に配列されたフック部28aを他方の適宜選択されたリング部28bに係止したり、右半体11aと左半体11bとの間に連結プレート28cを介在させ、右半体11a又は左半体11bの一方に配列されたフック部28aを連結プレート28cの適宜選択されたリング部28bに係止するとともに連結プレート28cのフック部28aを右半体11a又は左半体11bの他方の適宜選択されたリング部28bに係止することで、装着具11の周長を調整して一体化することができる。
【0024】
装着具11は、袖ぐり21に被施術者の腕を挿通するとともに襟ぐり22に首を挿通した状態でウエストより上方に着用することで、胸部23、肩部24、背中部25、脇下部26がそれぞれ対応する部位に位置決めされる。また装着具11の全体の適度な伸縮性により、各部の内面側が被施術者の対応する部位に締め付けることなくフィットする。
【0025】
この装着具11は
図9(a)(b)に示すように、装着具本体の左右半体11a、11bの内面にそれぞれ導電布12が縫着などにより積層一体化されている。
外面を構成する装着具本体は、適度な伸縮性を有する織布又は不織布等により形成されている。
一方、内面を構成する導電布12は、美容用微弱電流を通電可能な導電性を有する布からなり、面に沿って略均等な導電性を有している。導電布12としては、例えば銀繊維若しくは銀コーティング繊維等の導電性繊維と、ポリウレタン繊維やポリエステル繊維等の弾力性を有する非導電性繊維と、からなる織布などを用いてもよい。導電布12は装着具本体よりも伸縮性が大きい布により形成されている。
【0026】
導電布12は、装着具11の内面における少なくとも乳房部上部23bに配置されている。ここでは乳房部上部23bに加えて背中部25に配置されるのが好ましく、乳房部上部23b及び背中部25に加えて乳房部下部23aに配置されるのがより好ましい。本実施形態では、導電布12は乳房部23cを除く略全ての内面の肌に接する位置に配置されている。
【0027】
装着具11の外面側には、左右の肩部24に対応する位置と乳房部下部23aとには第1矯正ベルト15及び第2矯正ベルト16を連結するための面ファスナ29a,29bが設けられている。
また装着具11の外面側における左右の乳房部上部23bには、後述する電源部17の接続コード17bの接続端部17dと離接可能な突起形状の被接続部17cがそれぞれ設けられていて、幅調整部28等により絶縁された左右半体11a、11bの導電布12間に美容用微弱電流に適した電圧を印加可能となっている。
【0028】
第1矯正ベルト15及び第2矯正ベルト16は、
図2及び
図10に示すように、装着具11の外面側に装着される。第1及び第2矯正ベルト15,16は弾性を有する帯材などにより形成され、両端には面ファスナ15a,15b,16a,16bが設けられている。
第1矯正ベルト15は、一端の面ファスナ15aを右肩部24の面ファスナ29aに連結し、背中側を通して配置し、他端の面ファスナ15bを左乳房部下部23aの面ファスナ29bに連結することで、右肩部24と左乳房部下部23aとの間を背中側で引張方向に付勢することができる。
【0029】
第2矯正ベルト16は、一端の面ファスナ16aを左肩部24の面ファスナ29aに連結し、背中側を通して配置し、他端の面ファスナ16bを右乳房部下部23aの面ファスナ29bに連結することで、右肩部24と左乳房部下部23aとの間を背中側で引張方向に付勢することができる。
【0030】
導電性グローブ13は、施術者が両手に着用して被施術者と接触するもので、
図1に示すように、装着具11とは別体に設けられている。この導電性グローブ13は、施術者が着用した状態で被施術者に接触させることで、美容用微弱電流を被施術者に給電可能である。
【0031】
各導電性グローブ13は、導電性を有するとともに手にフィットする伸縮性を有する布により形成されていて、施術者が被施術者の各部位の形状に合わせて押さえたり、掴んだりする動作を行っても手にフィットした状態を保つことが可能である。このような導電性グローブ13を構成する導電性の布は、例えば銀繊維若しくは銀コーティング繊維等の導電性繊維が一緒に織り込まれることで導電性を有する織布でもよく、また装着具11の導電布12と同様の布及び層構成であってもよい。この布は面に沿って略均等な導電性を有するのが好適である。
【0032】
導電性グローブ13の外面には、装着具11と同様に、後述する電源部17の接続コード17bの接続端部17dと離接可能な突起形状の被接続部17cがそれぞれ設けられている。この被接続部17cは導電性グローブ13の導電性の布と電気的に接続されていて、両導電性グローブ13、13間に美容用微弱電流に適した電圧を印加可能となっている。
この導電性グローブ13は施術者が装着した状態で、手を適宜変形させて被施術者の肩、腕、手等の各部を支持したりあてがったりすることで、各部に容易に接触させることができる。
【0033】
電源部17は、
図1に示すように、美容用微弱電流を生成可能な電流制御部17aと、電流制御部17aからの接続コード17bと、を備えている。接続コード17bの先端は、装着具11及び導電性グローブ13の被接続部17cと離接可能な接続端部17dを有している。
【0034】
電流制御部17aは、各種の美容効果を得る目的で人体の肌に給電される微弱な交流を出力する装置であり、プラス側及びマイナス側についての波形、繰返しパターン、出力周波数、出力電流及び出力電圧、並びにこれらの変化などが所定期間規定されることで、予め複数の出力パターンとして設定されている。
本実施形態の電流制御部17aでは、例えば出力周波数が最大5Hz、出力電流が最大3.4mA、10kΩ負荷時の出力電圧が最大3.88Vとしていてもよい。
【0035】
このような電流制御部17aでは、被施術者、施術部位、施術内容などの各種の条件に応じて適切な出力パターン、強度、時間等の通電条件を選択して出力することが可能となっている。例えば
図11(a)~(c)に示すような3種類の出力パターンの美容用微弱電流を出力してもよい。
【0036】
これらでは基準電位を中心にプラス側レベルの電位とマイナス側レベルの電位とを有する複数の異なるパターンの交流方形波を連続的に組合わせて出力していて、一方のレベルの電位と他方のレベルの電位とを交互に1回示す単独パターンや複数回連続する連続パターンなどの繰返しパターンが、所定のポーズを介して連続させた出力パターンとして出力している。
【0037】
電源部17では、電流制御部17aに接続された接続コード17bを装着具11の左右半体11a、11b又は左右の導電性グローブ13と接続することで、このような美容用微弱電流を装着具11の導電布12と導電性グローブ13との一方又は双方に給電することが可能である。
【0038】
以上のような美容器具10によれば、袖ぐり21を有して被施術者の上半身に着用可能な装着具11の内面に、肌と接して美容用微弱電流を給電するための導電布12が配置されているので、袖ぐり21に腕を挿通させて装着具11を被施術者の上半身に着用することで、導電布12を被施術者の予め設定された部位に容易且つ確実に接触させることができる。
【0039】
その際、装着具11を着用することで導電布12を所定部位の肌に接触できるため、施術部位に導電布12を圧迫する必要がなく、施術部位が過剰に圧迫されて変形や歪みが生じた状態で美容用微弱電流が給電されるようなことがない。そのため自然な形状で美容用微弱電流を給電することができ、より安定した美容効果を得ることが可能である。
【0040】
バストアップのための施術では、装着具11により乳房を締め付けて過剰に圧迫することがなくて変形や歪みを生じさせないため、自然な形状で美容用微弱電流を給電できる。そのため美容用微弱電流による刺激で細胞の活性化やコラーゲンの生成によりクーパー靭帯が修復或いは強化された場合、自然な形状の乳房に適したものとなり、施術者や装着具11の装着状態などによる差が生じ難く、安定した美容効果を得られる。
特に乳房部上部23bに接するように導電布12を配置しているため、乳房の上部における美容効果で効率のよいバストアップの施術が可能である。
【0041】
本実施形態の美容器具10によれば、装着具11の右乳房部上部23bの上側における右肩部に一端が連結して背中側を通して配置され、左乳房部下部23aに他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第1矯正ベルト15と、装着具11の左乳房部上部23bにおける上側の左肩部に一端が連結して背中側を通して配置され、右乳房部下部23aに他端が連結されて両端間が引張方向に付勢された第2矯正ベルト16と、を備えている。
【0042】
そのため各肩部と反対側の乳房部下部23aとの間を互いに交差方向に背中側へ引張ることができ、被施術者の背中の前方への曲がりを矯正した状態で美容用微弱電流を給電すること、例えば背中側の脂肪を前側に移動させるような美容効果を期待できる。
【0043】
本実施形態の美容器具10によれば、装着具11が互いに分離した右半体11aと左半体11bとを有し、右半体11aと左半体11bとが胸部23で連結されるとともに背中部25で幅調整部28を介して連結されている。
そのため、右半体11aと左半体11bとを前側又は背中側の何れか一方側で連結した状態で、被施術者が袖ぐり21に腕を通した後で他方側を連結することで、被施術者に装着具11を着用することができる。
【0044】
これにより装着具11を被施術者の前側からでも後側からでも着用させることができ、着脱の自由度を向上できて使い勝手がよい。
しかも背中側で幅調整部28を介して右半体11aと左半体11bとを連結するので、装着具11の施術部位に対応する領域の内面を適度にフィットさせて着用できる。
【0045】
本実施形態の美容器具10によれば、導電布12と接続して美容用微弱電流を供給可能な電源部17を備えているので、電源部17により生成した美容用微弱電流を導電布12に給電するため、施術に適した美容用微弱電流を生成可能な電源部17を用いることで、所望の施術効果を得易くできる。
【0046】
本実施形態の美容器具10によれば、施術者の手に着用可能で、電源部17と接続されて被施術者に接触して美容用微弱電流を給電可能な導電性グローブ13を備えている。そのため装着具11を着用して美容用微弱電流を給電する施術と、装着具11を着用した部位とは異なる腕や肩などの部位に美容用微弱電流を給電する施術と、を複合して行うことができる。
特に、導電性グローブ13のため被施術者の各部の形状に対応させて押さえたり把持したりしつつ美容用微弱電流を給電できるため、美容効果を容易に向上させ易い。
【0047】
次に、本実施形態の美容器具10を用いた美容方法について説明する。ここではバストアップのための施術を行う例を用いる。
この美容方法では、
図12に示すように、被施術者の上半身に前処理S1を施した後に、被施術者の上半身に装着具11を着用して美容用微弱電流を給電する第1給電処理S10を施し、その後に導電性グローブ13を用いて美容用微弱電流を給電する第2給電処理S20を施す。
【0048】
まず前処理S1では、被施術者の上半身に適宜マッサージを施して美容用薬剤を塗布する。
使用する美容用薬剤は、通電成分及び保湿成分を含有するゲル剤などであり、装着具11の導電布12が接する部位となる被施術者の肌のより広い範囲、好ましくは全面に塗布する。
【0049】
次に、第1給電処理S10では、ステップS11で装着具11を被施術者の上半身に着用する。装着具11を被施術者自身で着用する場合、先に右半体11aと左半体11bとを背中側で幅調整部28を介して連結しておき、左右の袖ぐり21に両腕を挿通してファスナ27により胸部23側で連結する。
【0050】
施術者が着用させる場合には、先に右半体11aと左半体11bとをファスナ27により胸部23側で連結しておき、左右の袖ぐり21に両腕を挿通して背中側で幅調整部28を介して連結する。
いずれにおいても、装着具11が被施術者ウエストサイズ及びバストサイズに適した周長となるように、幅調整部28により調整して右半体11aと左半体11bとを連結する。
【0051】
装着具11を着用後、ステップS12で第1矯正ベルト15と第2矯正ベルト16とを装着具11の外面に装着する。
第1矯正ベルト15は、装着具11の右乳房部上部23bの上側における右肩部24に設けられた面ファスナ29aに一端側の面ファスナ15aを連結し、背中側を傾斜して通して配置し、左乳房部下部23aに設けられた面ファスナ29bに他端側の面ファスナ15bを連結する。
【0052】
第2矯正ベルト16は、装着具11の左乳房部上部23bの上側における左肩部24に設けられた面ファスナ29aに一端側の面ファスナ16aを連結し、背中側を傾斜して通して配置し、右乳房部下部23aに設けられた面ファスナ29bに他端側の面ファスナ16bを連結する。
【0053】
これにより第1及び第2矯正ベルト15,16が背中側でX字状に交差して配置され、それぞれ両端間に引張方向の付勢力が作用する。そのため被施術者が施術中に前側に湾曲した姿勢になることを防止するなどができ、背中側により美容効果を向上させることができる。
【0054】
この状態で、ステップS13として、装着具11の導電布12により被施術者の肌に美容用微弱電流を給電する。装着具11には予め電源部17の接続コード17bを接続しておき、電流制御部17aにより生成される美容用微弱電流を装着具11の導電布12に給電可能にしている。
【0055】
そして電流制御部17aにおいて、各種のデータなどに基づく最適な美容用微弱電流を生成して装着具11に給電する。このステップS13においては、美容用微弱電流の給電により例えば細胞の活性化やコラーゲンの生成等によりクーパー靭帯の修復或いは強化などのような各種の美容効果が期待でき、繰り返しの施術により所望の美容効果を実現可能である。
【0056】
美容用微弱電流の給電開始後、所定時間が経過した段階で、ステップS14として給電を停止する。この給電時間は、導電性グローブ13を用いた第2給電処理S20と組み合わせて調整することが好ましい。
美容用微弱電流の給電を停止後には、ステップS15で、装着具11を被施術者から脱衣させ、これにより第1給電処理S10を終了する。
【0057】
次に、第2給電処理S20では、ステップS21で美容器具10を装着する前に被施術者のデコルテ、肩、腕、手先等に美容用薬剤を塗布した後、ステップS22で施術者の両手に導電性グローブ13を装着し、接続コード17bにより電源部17の電流制御部17aと接続して、電流制御部17aにより生成される美容用微弱電流を導電性グローブ13に供給可能にする。
【0058】
特に限定されるものではないが、本実施形態では電源部17は第1給電処理S10で用いたものと同じものを使用していて、前記と同様の美容用微弱電流を導電性グローブ13に供給することが可能なっている。
【0059】
そしてステップS23として、導電性グローブ13を用いた施術を行う。このステップS23では、施術者の両手に装着した導電性グローブ13に美容用微弱電流を給電して導電性グローブ13を被施術者の肌に接触させつつ、被施術者の肩、腕、手などのマッサージやストレッチを行ったり、肩、腕、手などに導電性グローブ13をあてがって所定位置に保持したりする。
【0060】
より具体的には、左側のバストアップの施術の例で説明すると、被施術者を仰向けに寝かせた状態で、例えば次のような施術を行う。
(1)
図13のように、施術者の左手で被施術者の手首或いは肘を持ち、施術者の右手で被施術者の手首上から二の腕・肩先に向かって肉を内側から外側へ回すように移動させて二の腕の引き締めを行う。
(2)
図14のように、施術者の右手を被施術者の肩甲骨に添えて、施術者の左手の四指で被施術者の腕の付け根の脇下を押さえて密着させる。
(3)
図15及び
図16のように、施術者の左手の四指で被施術者の腕の付け根の脇下を押さえ、施術者の右手で被施術者の手首を支持して腕を伸ばした状態で被施術者の左肩側から頭上を通して右肩側へ大きく回転させる。
(4)
図17のように、施術者の右手で被施術者の手首を支持して施術者の左手で被施術者の肩を把持して肩先から肩裏へ筋肉の引き上げを行う。
(5)
図18のように、施術者の右手で被施術者の僧帽筋を押し下げて施術者の左手で被施術者の胸筋を持ち上げる。
【0061】
このようなステップS23では、美容用微弱電流の給電により、例えば周辺部位において組織を活性化したり、筋肉を解したり、血行を促進したりするなどのような各種の美容効果が期待でき、第1給電処理S10と組み合わせることで、胸部における美容効果を促進させることが可能である。
【0062】
例えばステップS23において上記(1)~(5)を含む施術を実施したときの血流状態をサーモグラフィにより測定したところ、血流状態が改善されていた。
図19(a)(b)は、ステップS10の開始前の測定結果と、ステップS10を実施後にステップS23において上記(1)~(5)を含む施術を左右10分間実施実施した後でサーモグラフィにより被施術者の上半身を測定した結果である。色の薄い部分程体温が高いことを示している。この測定結果から明らかなように、施術前に対して施術後には胸部及及び背部の体温が大幅に増加していて血流状態が改善されていた。
【0063】
またステップS10を実施後に、ステップ23において上記(1)~(5)を含む施術の実施の有無による違いを確認したところ、乳房部のバストアップにより形状が改善されていることが確認できた。
図20は、被施術者の頭部側から胸部を撮影した施術前後の写真であり、左側の写真は施術を実施する前の状態であり、右側の写真は、ステップS10の施術を胸部に実施後にステップ23において被施術者の右側にのみに上記(1)~(5)を含む施術を10分間実施して左側には実施していない状態である。写真から明らかなように、左側乳房部に比べて右側乳房部の上側の膨らみやハリが向上していて、乳房部のバストアップによる形状の改善が確認できた。
【0064】
また、このようなステップS23では、被施術者や施術程度等に応じ、第1給電処理S1の給電条件と組み合わせて通電条件を調整して設定することが好適である。
例えばバストサイズがA~Eサイズの被施術者では、第1給電処理S10において導電布12に給電する美容用微弱電流の強さと第2給電処理S20において導電性グローブ13に給電する美容用微弱電流の強さとを中にして、それぞれの給電時間を10分にするとすれば、バストサイズがF~Iサイズの被施術者の場合には、第1給電処理S10において導電布12に給電する美容用微弱電流の強さと第2給電処理S20において導電性グローブ13に給電する美容用微弱電流の強さとを大にして、それぞれの給電時間を15分にすることで、各施術を行ってもよい。
【0065】
その後、所定種類の施術を行った段階で、ステップS24で導電性グローブ13への美容用微弱電流の給電を停止し、導電性グローブ13を用いた施術を停止する。
さらにステップS25として、素手による仕上げのマッサージを施すことで、第2給電処理S20を終了する。
【0066】
以上のような美容器具10を用いた本実施形態の美容方法によれば、導電布12を接触させて美容用微弱電流を給電する際、通電成分及び保湿成分を含有する美容用薬剤を塗布して行うので、施術部位の肌を保湿しつつ美容用微弱電流を給電して施術を行うことができ、肌の乾燥により美容用微弱電流の給電が阻害されることを防止して安定した美容効果を期待できる。
【0067】
また第1給電処理S10では、袖ぐり21を有して被施術者の上半身に着用可能な装着具11の内面に導電布12が配置されているので、被施術者が装着具11を着用することで、施術部位に導電布12を圧迫して接触させる必要がない。これにより施術部位が過剰に圧迫されて変形や歪みを生じた状態で美容用微弱電流が給電されるようなことがなく、より自然な形状で施術を行うことで安定した美容効果を得ることができる。
【0068】
さらに第2給電処理S20では、被施術者の腕や肩などを押さえたり把持したりしつつ美容用微弱電流を給電することで、腕や肩などを各種の形状で保持したり変形或いは変位させつつ美容用微弱電流を給電することができる。そのため施術部位における美容効果を効率よく向上させることができる。
【0069】
なお上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、電流制御部17aとして
図11(a)~(c)に示すような3種類の出力パターンの美容用微弱電流を出力する例について説明したが、美容用微弱電流は何ら限定されるものではなく、肌に給電可能で施術効果が得られる電流であれば使用可能である。
また上記実施形態では、右半体11aと左半体11bとを幅調整部28により連結した装着具11の例について説明したが、装着具11が一体に形成されて、内面の導電布12が任意の絶縁部を介して複数に分割されていてもよい。
さらに上記実施形態では、装着具11により第1給電処理S10を行った後に、連続して導電性グローブ13を用いて第2給電処理S20を行った施術例について説明したが、特に限定されるものではなく、装着具11を用いた施術だけであっても、導電性グローブ13を用いた施術だけであっても、それぞれにバストアップ等の各種の美容効果を実現することは可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 美容器具
11 装着具
11a 右半体
11b 左半体
12 導電布
13 導電性グローブ
15 第1矯正ベルト
16 第2矯正ベルト
15a,15b,16a,16b 面ファスナ
17 電源部
17a 電流制御部
17b 接続コード
17c 被接続部
17d 接続端部
21 袖ぐり
22 襟ぐり
23 胸部
23a 乳房部下部
23b 乳房部上部
23c 乳房部
24 肩部
25 背中部
26 脇下部
27 ファスナ
28 幅調整部
28a フック部
28b リング部
28c 連結プレート
29a,29b 面ファスナ