(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068134
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】衣服用ファンおよびそれを備えた衣服
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20220426BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F04D29/38 A
F04D25/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172669
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2020177004
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020181346
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513167304
【氏名又は名称】長信ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】関 亮華
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC25
3H130BA87C
3H130BA97C
3H130CB06
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DJ03X
3H130EA08C
3H130EA08D
3H130EB04C
3H130EB05C
(57)【要約】
【課題】送風機能を効果的に発揮しながら、着衣したときに障害とならずに良好な着心地を可能にする衣服用ファンを提供する。
【解決手段】衣服用ファン10は、ケーシング30の環状部36にプロペラファン20を収容し、プロペラファン20には、8枚の羽根20A~20Hが、ハブ21の側面21Sの周方向に沿って等間隔で配置されている。8枚の羽根20A~20Hのハブ軸方向幅Iは、ハブ21の側面21Sの軸方向長さLに応じた幅であり、翼列を展開した場合、隣り合う羽根のスペーシングが、翼弦長より大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と吐出口とを設けた筒状ケーシングと、
前記ケーシングに収容されるプロペラファンとを備え、
前記プロペラファンにおいて、8枚の羽根が、円筒状ハブの側面に周方向に沿って等間隔または不等間隔で取り付けられ、
各羽根が、前記ハブの側面の軸方向長さに応じた軸方向幅をもって取り付けられ、
翼列として展開したときの隣り合う羽根との間のスペーシングが、羽根の翼弦長より大きいことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項2】
3次元翼としての各羽根の前縁および後縁が、前記ハブの軸方向に垂直な面に沿っていることを特徴とする請求項1に記載の衣服用ファン。
【請求項3】
各羽根が、前記ハブの軸に垂直な先端面に対し、45度以下の取り付け角度で取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の衣服用ファン。
【請求項4】
各羽根が、前記ハブの軸に垂直な先端面に対し、35度~45度の範囲の取り付け角度で取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の衣服用ファン。
【請求項5】
隣り合う羽根の隙間の前記ハブの軸に垂直な面への投影サイズが、羽根の前記ハブの軸に垂直な面への投影サイズの半分より小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の衣服用ファン。
【請求項6】
前記ケーシングの吸入口および吐出口に、複数の同心円状の環状リブと、前記環状リブと交差する複数の径方向リブとを設け、
前記ハブの側面の軸方向長さが、前記吸入口および吐出口の間に介在する環状部の軸方向長さ以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の衣服用ファン。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の衣服用ファンを備えたことを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業着などの衣服に装着して外気を衣服内に送り込む衣服用ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
衣服用ファンは、衣服の背面などに装着して使用する送風機であり、ファンの回転によって外気を衣服内部に送ることで、衣服着用者の発汗を抑える。衣服用ファンは、モータに同軸配置された軸流式モータファンを備え、筒状本体(ケーシング)にモータファンを収納し、衣服に形成された取付穴の縁部分を本体に挟み込むことによって、衣服に装着させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衣服用ファンは、通常、衣服の横腹付近の背中側に装着され、身体と衣服用ファンとの距離間隔を十分確保することはできない。そのため、衣服着用者が作業を行っている間、姿勢によって身体に接触しやすくなる。また、椅子へ着座したときやスペースの狭い作業場所では、衣服用ファンが器具などに接触し、故障を招く恐れがある。
【0005】
したがって、送風機能を効果的に発揮しながら、着衣したときに障害とならない衣服用ファンを提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衣服用ファンは、衣服に装着可能なファンであって、吸入口と吐出口とを設けた筒状ケーシングと、ケーシングに収容されるプロペラファンとを備える。円筒状ハブに複数の羽根が取り付けられたプロペラファンにおいて、8枚の羽根が、円筒状ハブの側面に周方向に沿って等間隔あるいは不等間隔で取り付けられる。例えば、8枚の羽根をハブの側面に等間隔で取り付けることが可能である。例えば、ケーシングの吸入口および吐出口に、複数の同心円状の環状リブと、前記環状リブと交差する複数の径方向リブとを設けたリブ構造にし、環状部(リング)をねじ回すことによって衣服に取り付ける構成の場合、前記ハブの側面の軸方向長さが、前記吸入口および吐出口の間に介在する環状部の軸方向長さ以下にすることが可能である。
【0007】
各羽根は、ハブの側面の軸方向長さに応じた軸方向幅をもって取り付けられる。ここで、「ハブの側面の軸方向長さに応じた軸方向幅をもって」とは、羽根がハブの側面両端あるいは両端付近にまで渡って延びるような翼弦長を持つことを表す。「ハブの側面の軸方向長さに応じた軸方向幅」は、厳密に長さが同一というだけでなく、ハブ側面の先端面縁付近から下端付近までの幅に応じた軸方向幅をもつことも含まれる。言い換えれば、各羽根の先端、後端が、ハブ幅方向両端部まで、あるいは両端部付近にまで渡って延びる翼弦長を持っていることを表す。
【0008】
本発明では、複数(8枚)の羽根を翼列として展開面上に配列させた場合、隣り合う羽根との間のスペーシングが、羽根の翼弦長より大きい。8枚の羽根から構成されるプロペラファンは、ファンの薄型化を実現するとともに、軽量化、回転時の負荷の軽減、低回転速度、高回転速度両方の効果的送風を実現可能にする。
【0009】
各羽根の3次元形状は、様々な曲面形状にすることが可能である。3次元翼としての各羽根の前縁および後縁が、前記ハブの軸方向に垂直な面に沿うように、各羽根を形成することが可能である。また、各羽根は、前記ハブの軸に垂直な先端面に対し、45度以下の取り付け角度で取り付け可能である。例えば、35度~45度の範囲で取り付けられる。弦節比を調整し、8枚羽根の詰まり具合を調整することも可能である。例えば、隣り合う羽根の隙間の前記ハブの軸に垂直な面への投影サイズが、羽根の前記ハブの軸に垂直な面への投影サイズの半分より小さくなるように、羽根の形状、取り付け角度などを構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送風機能を効果的に発揮しながら、着衣したときに障害とならない衣服用ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態である衣服用ファンの吸入口側から見た斜視図である。
【
図2】衣服用ファンの吐出口側から見た分解斜視図である。
【
図5】プロペラファンを吐出口側から見た斜視図である。
【
図6】プロペラファンおよびモータハウジングを吸入口側から見た分解斜視図である。
【
図8】リングとフランジ接触部分を示す
図3の部分拡大図である。
【
図9】第2の実施形態である衣服用ファンの正面図である。
【
図10】第2の実施形態であるプロペラファンの正面図である。
【
図11】第2の実施形態であるプロペラファンの後方側から見た斜視図である。
【
図12】第3の実施形態である衣服用ファンの背面側から見た部分的斜視図である。
【
図13】第4の実施形態である衣服用ファンを背面側から見た部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態である衣服用ファンについて説明する。
図1は、第1の実施形態である衣服用ファンの吸入口側から見た斜視図である。
図2は、衣服用ファンの吐出口側から見た分解斜視図である。
図3は、衣服用ファンの側面図である。
図1~
図3を用いて、衣服用ファンの全体的構成について説明する。
【0013】
衣服用ファン10は、専用の衣服100(
図2参照)に装着可能な小型送風装置であり、衣服100の背面側に形成された取付穴100Rに着脱自在に装着される。衣服用ファン10は、プロペラ状の軸流式ファン(以下、プロペラファンという)20と、プロペラファン20を収容する筒状のケーシング30とを備え、吸入口10I側が衣服外側、吐出口10F(
図2参照)側が衣服内側となるように装着される。
【0014】
ケーシング30は、本体部32とモータ装着部34から構成される。
図2に示すように、モータ装着部34は、係合部34Tによって本体部32から取り外し可能に装着されている。本体部32は、吸入口10I側の端部にフランジ32Fを形成する環状部36を備え、環状部36は、プロペラファン20を収容する。なお、
図2では、説明の便宜上、モータを図示していない。
【0015】
本体部32の吸入口10Iは、フランジ32Fを外枠としてリブ構造のある開口部であり、円筒状の中心部31から複数の径方向リブ32R1が放射状に延びるとともに、2つの環状リブ32R2が径方向リブ32R1と交差しながら同心円状に配置されている。
【0016】
モータ装着部34は、中心部に有底筒状のモータハウジング50を備え、リブ構造によって皿状の枠体を構成し、吐出口10Fとして機能する(
図3参照)。モータハウジング50は、ブラシレスモータなどのモータ(ここでは図示せず)をその内部空間54Bに収容する。また、モータ装着部34のリブ構造は、複数の径方向リブ34R1を同心円状の環状リブ34R2を交差させて環状の枠35に繋げた構造になっている。蓋60は、モータハウジング50の係合穴54Kに差し込み可能な係合片60Tを有し、モータハウジング50を塞ぐ。
【0017】
モータハウジング50の開口部付近には、径方向に突出する接続部55が形成されている。バッテリと接続する電源ケーブル(ともに図示せず)は、モータハウジング50の接続口55に設けられた入力端子54Mに接続される。プロペラファン20は、ケーシング30に同軸配置されるモータの出力シャフトに取り付けられ、モータの駆動によって回転する。衣服用ファン10は、出力電圧を変更することが可能なバッテリと接続可能であり、例えば4段階で出力電圧を段階的に調整することができる。プロペラファン20は、出力電圧に応じた風量を吐出口10F側へ送る。
【0018】
リング40は、本体部32のフランジ32Fとの間に衣服100(取付穴100Rの周縁部)を挟み込む保持部材であり、本体部32の環状部36と螺合する(
図2参照)。リング40は、環状部36の外周面に形成された雄ネジ36Mに沿って回転し、リング40の吐出口側端部に形成されたフランジ40Fが本体部32のフランジ32Fと接触するまで回転可能である。ここでは、リング40の側面に凹凸が形成されているが、凹凸を設けずに筒状に構成してもよい。
【0019】
ユーザは、リング40を外した状態でケーシング30をモータ装着部34側から衣服100の取付穴100Rに挿入する。そして、衣服内側からリング40をケーシング30周りに回転させて締め付ける。これによって、衣服用ファン10が衣服100に装着、固定される。本体部32のフランジ32Fの側面32Sは、フランジ32Fが一度で掴みやすい滑らかな波型形状であり、指が引っ掛かるような凸部やエッジが形成されていない。なお、フランジ32Fは、波型形状以外の形状にすることも可能であり、例えば円状に形成してもよい。
【0020】
本実施形態の衣服用ファン10は、ファン軸E方向に沿った幅の狭い薄型ファン(
図3参照)であり、プロペラファン20の構成によって実現している。また、バッテリにおいて出力電圧を増加させた場合などにおいても、モータの過熱を防ぐモータハウジング50の構成になっている。さらに、リング40をケーシング30周りに締め付けるとき、リング40の緩む方向への回転を規制する構成になっている。以下、これらについて詳述する。
【0021】
まず、
図4、5を用いて、プロペラファン20の構成について説明する。
図4は、吸入口10I側(正面側)から見たプロペラファン20の平面図である。
図5は、吐出口10F側から見たプロペラファン20の斜視図である。軸流式のプロペラファン20は、円筒状ハブ21に8枚の羽根(以下では、必要に応じて翼ともいう)20A~20Hを取り付けた羽根車であり、ハブ21の先端面21T2の中央部には、円筒状突出部21T1が形成されている。ハブ21の中心軸はケーシング30の軸(モータの軸)Eと一致する(以下、ハブの軸もEで表す)。
【0022】
衣服用ファン10は、吸入口10I側を正面とした単段軸流式ファンであり、モータの出力シャフトに取り付けられたハブ21が回転することによって、吸入口10Iから吐出口10F(背面側)へ空気が送り出される。羽根20A~20Hの形状、取付角度などといった翼プロファイルは、この流れを作り出すように定められている。プロペラファン20は、吐出口10F(背面側)から見て時計回りに回転する。
【0023】
8枚の羽根20A~20Hの3次元翼形状、取付角度θは、ここではいずれも同じである。取付角度θは、ハブ21の軸Eに垂直な先端面21T2(
図4参照)、面に対する傾斜角度として定められる。例えば、羽根20Bの場合、ハブ21の側面21Sに対する付け根部分の翼前縁K2と翼後縁K1とを結ぶ直線の先端面21T2に対する傾斜角度として表される。ここでの取付角度θは、45°以下の角度に定められている。例えば、取付角度θは、35°~45°の範囲に定められる。
【0024】
本実施形態では、8枚の羽根20A~20Hが、ハブ21の側面21Sに周方向に沿って等間隔で取り付けられている。すなわち、隣り合う羽根同士を、中心からの角度α=45°だけ離れた角度位置に定めている。角度αは、ハブ21の軸Eに垂直な面で規定される角度であり、例えば、羽根20A、20Bの翼の最も外側(最外遠)の翼辺に当たる前縁部分K3、K5、後縁部分K4、K6との間の角度αは、ハブ21の軸Eに垂直な面を基準にするといずれも45°になる。
【0025】
8枚の羽根20A~20Hは、ハブ21の側面(以下、ハブ側面といもいう)21Sの軸方向全体に渡るように延びる長さ(翼弦長)をもって取り付けられている。すなわち、羽根20A~20Hのハブ側面21Sにおける軸方向幅Iが、ハブ側面21Sの軸方向長さLに対応している。例えば、羽根20Bの場合、取付部分(付け根)の翼後縁K1は、ハブ21の下端21P付近に位置し、翼前縁K2は、ハブ21の先端面21T2の縁21N付近に位置する。
【0026】
また、8枚の羽根20A~20Hでは、ハブ21の側面に沿った取付部分(付け根)から径方向最遠端までの翼前縁(羽根20Bの場合、翼前縁K2から翼後縁K4まで沿った翼辺)は、ハブ21の軸Eに垂直な面に沿っている。翼後縁についても同じである(羽根20Bの場合、翼前縁のK1から翼後縁K3までの翼辺)。したがって、3次元翼としての各羽根は、その前縁と後縁が互いに平行な面に沿うように形成されている。さらに、各羽根は、前縁および後縁でエッジのある翼形状になっている(羽根20Bの場合、K3およびK4参照)。
【0027】
一方、羽根20A~20Hの3次元翼形状を径方向に沿って見ると、ハブ21の下端21P付近の翼辺(羽根20Bの場合、K2~K1の翼辺)と比べ、ハブ21の先端面縁21N付近の翼辺(羽根20Bの場合、K4~K3の翼辺)の湾曲度合がより大きく、ハブ21の先端面縁21Nに近いほどひねりのある曲面形状となっている。そのため、ハブ21に対する取り付け部分(付け根)付近の翼弦長(羽根20Bの場合、K1とK2を結ぶ直線の長さに対応)よりも、径方向最外遠の翼辺の翼弦長(羽根20Bの場合、K3とK4を結ぶ直線の長さに対応)の方が長い。
【0028】
さらに、羽根20A~20Hは、ハブ21の先端面21T2側でひねりのある翼形をもつように、径方向に最外遠となる翼辺の前縁と後縁とを結ぶ直線のハブ軸Eに垂直な先端面21T2に対する傾斜角度(羽根20Bの場合、K3とK4を結ぶ直線の傾斜角度)が、取付部分の傾斜角度(羽根20Bの場合、K2とK1とを結ぶ直線のハブ軸Eに垂直な先端面21T2に対する傾斜角度)よりも小さい。
【0029】
このような羽根20A~20Hの翼曲面形状に従い、隣り合う羽根との間にスペースが確保される (
図4参照)。例えば、羽根20Bの前縁K4から軸Eに沿って延びる直線を規定した場合、その直線は隣の羽根20Aと重ならない。
【0030】
ここで、羽根20A~20Hを翼列として平面上に展開させたとき、隣り合う羽根との間の間隔を表すスペーシングsは、翼弦長lよりも大きい。また、翼列展開したときの翼傾きを表す食い違い角(stagger angle)ξ、すなわち軸Eに対する翼傾斜角度は、上述したように取り付け角度θが45度以下であるため、その絶対値は45度より大きくなる。ただし、翼列方向からの傾斜角度を食い違い角として表す場合、取り付け角度は同じになる。なお、スペーシング、翼弦長については当業者にとって技術常識であるため、翼列の展開図をここでは省略している。
【0031】
例えば、隣り合う羽根20A、20Bの場合、最外遠翼辺の後端距離間隔であるスペーシングs(羽根20A、羽根20Bの場合、K5とK3の周方向に沿った距離間隔に相当)は、翼弦長l(羽根20AのK6とK5を結ぶ直線、あるいは羽根20BのK4とK3を結ぶ直線)よりも大きい(s>l)。
【0032】
一方、スペーシングsと翼弦長lとの比、すなわち弦節比(ソリディティ)σ(=l/s)は、隣り合う羽根同士がそれほど詰まることがないように定められている。
図4に示すように、隣り合う羽根の隙間を、軸E方向から見た時の投影サイズ、すなわち、ハブ21の軸Eに垂直な面に投影した時のエリアの大きさは、各羽根の投影サイズより小さいが、1/2より大きくなるように定められている。
【0033】
このように、8枚という多翼でありながら、ハブ軸方向から見た時に隣り合う羽根との間のスペースを適切に確保する翼形状にすることによって、以下説明するように、衣服用ファン10の薄型化、静粛性、ファン運転時の送風機能の安定性を実現することができる。
【0034】
従来では、翼枚数が偶数枚の場合、共振などが生じやすくなり、騒音などの悪影響が生じると考えられ、扇風機や自動車のラジエータ冷却ファン、コンピュータの小型冷却ファンなどでは、通常、翼の枚数が奇数に定められている(扇風機の場合、3枚、5枚あるいは7枚)。すなわち、各羽根の対向する位置からオフセットした位置に羽根が取り付けられている。
【0035】
しかしながら、衣服用ファン10が使用される作業現場やイベント会場では、ある程度の騒音、雑音の発生が必然的な使用環境であり、翼枚数による騒音への影響は比較的小さい。それよりも、衣服用ファン10の場合、ケーシング30の吸入口10I、吐出口10Fに形成されるリブ構造に起因する風切り音が、騒音に大きく影響する。このリブ構造は、ケーシング30の強度維持、プロペラファン20の外部器具との接触防止などを理由として必要な構造である。
【0036】
一方、衣服用ファン10は、コンピュータ用の冷却ファン、自動車の冷却ファンなどと違い、運転中その位置が同じ場所になく、衣服着用者の動きによって位置や姿勢が大きく変化する。この場合、対向する位置に羽根を設けた偶数枚のプロペラファン20は、回転対称だけでなく線対称となるため、より重心バランスが良好となり、姿勢変化や力を受けたとき羽根の耐性が優れたものとなる。さらに、バッテリにより出力電圧を段階的に調整する場合、対向位置に羽根があるため、プロペラファン20の回転速度を瞬間的に上げやすい。
【0037】
一方、羽根を偶数枚で構成する場合、翼枚数を少なくして必要な風量を得ようとすると、羽根をできる限り寝かせた状態(ハブ先端面21T2に沿わせた状態)でハブ21に取り付け、翼幅を大きくする必要がある。しかしながら、取付角度θをできるだけ小さくして翼幅の広い羽根で構成すると、羽根の根元部分にかかる力が大きくなり、ハブ強度の観点からハブの側面の軸方向長さを十分確保しなければならない。ハブの軸方向長さが増すことによって、ファン薄型化を実現することができない。
【0038】
8枚という比較的多翼化された羽根20A~20Hで構成される単式のプロペラファン20では、羽根20A~20H各々の受ける力が、翼枚数をより少なくした場合に比べて小さくなる。また、8枚の羽根20A~20Hとの間で翼列展開したときのスペーシングsと翼弦長lとの関係は、ハブ21の側面21Sの軸方向長さLを十分抑えることでスペーシングsを確保する一方、弦節比σは1/2より大きい。各羽根を寝かせ過ぎないようにしながら羽根面積の確保を図ることによって、羽根付け根部分に過度な力がかからない。
【0039】
そのため、ハブ21の側面21Sの軸方向長さLに応じた軸方向幅Iをもつ羽根20A~20Hを構成しても、ハブ21の強度が十分確保される。その結果、ハブ21の側面21Sの軸方向長さLをケーシング30の環状部36の軸方向長さW(
図3参照)より短くする、すなわち、羽根20A~20Hの回転区域を環状部36に収めることができる。このことは、衣服用ファン10の軸方向幅を短くする(薄くする)ことに繋がる。
【0040】
なお、8枚の羽根20A~20Hのスペーシングが比較的大きく、取付角度θが比較的大きい(羽根がそれほど寝ていない)構成であっても、衣服100に装着される衣服用ファン10は身体近くに位置するため、扇風機のようにファン軸方向に沿って遠方まで送風する必要はなく、逆に、周囲に流れていく方向に送風するのが好ましい。
【0041】
プロペラファン20の高さがケーシング30の環状部36に収まることで、径方向最外遠の翼辺(羽根20Bの場合、K3~K4の翼辺)付近を流れていく空気は、最も回転速度が早い翼部分の影響を受け、リブ構造であるモータ装着部34の枠35付近から吐出される。その結果、効果的流れを衣服内に作り出すことができる。
【0042】
特に、3次元翼としての各羽根が、その前縁と後縁が互いに平行な面に沿うように形成されているため、各羽根の隙間を空気が通過するときに3次元的な乱れが増加するのを抑えるとともに、翼後縁側全体が回転速度の速い翼部分を形成しているため、より効果的な流れを作り出すことができる。一方で、8枚の羽根20A~20Hの取付角度θが比較的大きく、翼幅が抑えられているため、各羽根の騒音が抑え得られる。
【0043】
さらに、8枚の羽根20A~20Hでプロペラファン20を構成する場合、出力電圧が低く設定された回転速度が低速になったとき、吐出口10F側との比較で吸入口10I側での負圧が保たれる。そのため、同一回転速度の場合、翼枚数の少ないプロペラファンと比べて効率よく送風するこができる。
【0044】
8枚より翼枚数を多くして羽根を構成する場合、10枚、12枚の羽根で構成することが比速度(形式数)の観点から可能である。しかしながら、翼列展開におけるスペーシングsを確保することが難しくなり、羽根にかかる力が大きくなって高速回転に不向きとなるため、8枚の羽根20A~20Hで構成することが適切となる。なお、羽根に関して線対称性があると許容できる範囲であれば、不等間隔で偶数枚の羽根をハブに取り付けてもよい。スペーシングの確保を考慮すれば、線対称性をもつ不等間隔で8枚の羽根を取り付けることが可能である。衣服用ファンとしては、リング40を用いたねじ回しによる取付構造だけでなく、係止、嵌合によって取り付ける構成も可能である。
【0045】
次に、
図2、6を用いて、モータの過熱を防ぐモータハウジング50の構造について説明する。モータハウジング50は、先端面52Kを有する円筒部52と、円筒部52の下端から延びるスカート部54から構成される。先端面52Kには、モータ70の出力シャフトを通す穴が形成され、モータ70が先端面52Kの裏面52B(
図2参照)に接する位置でモータハウジング50内に固定されている。
【0046】
プロペラファン20のハブ21は、モータハウジング50の円筒部52を収容可能なサイズを有し、円筒部52がハブ21に覆われる(取り囲まれる)。このとき、ハブ21の下端21Pの位置は、ハウジング軸方向に沿って開口部52Mの位置を超える(
図6の破線L´参照)。ハブ21の内周面21M(
図5参照)と円筒部52の側面52Sの間には、隙間が形成されている。
【0047】
円筒部52には、先端面52Kの縁部から軸方向に沿って複数の開口部52Mが形成されている。ここでは、6つの矩形状開口部52Mが、ハウジング周方向に沿って等間隔で形成されている。また、6つの開口部52Mのうち4つの開口部52Mは、蓋60との係合穴54Kから軸方向に沿って離れた位置に形成されている。
【0048】
このような開口部52Mを形成することで、モータ70の過熱を抑えることができる。すなわち、モータ70の回転中、モータ70の温度が上昇し、特に、ハブ21に近いモータ70の先端側の温度が上昇する。これは、バッテリの出力電圧を増加させた場合に顕著になる。しかしながら、モータ70の熱は、開口部52Mを通じてモータハウジング50とハブ21との隙間に放出されることで、モータ70の温度上昇が抑えられる。
【0049】
すなわち、モータハウジング50のモータ70先端付近で暖められた空気は、温度が高いため、開口部52Mから流れ出てモータハウジング50とハブ21との隙間から外部に流出しやすい。この流れによって比較的温度の低い空気がモータハウジング50内に流れ込む気流を作り出す。また、開口部52Mからハウジング軸方向に沿って離れた位置に係合穴54Kが設けられていることにより、熱をもつ空気がモータハウジング50とハブ21との間の隙間から流れ出る気流が作り出されやすくなる。
【0050】
ところで、衣服用ファン10は、送風によって発汗を抑えることが本来の機能であり、モータ70の放熱によって暖められた空気が衣服100内に送風されるのは好ましくない。しかしながら、開口部52Mがハブ21によって覆われているため、ハブ21とモータハウジング50との隙間から流れ出る空気は、スカート部54の表面付近に沿って吐出口10F側へ流れていく。
【0051】
プロペラファン20の羽根20A~20Hは翼端ほど回転速度が大きく、衣服用ファン10の風量は、翼端付近を流れる空気に大きく影響される。したがって、モータハウジング50に沿って放出される熱がそのまま衣服100内に送り込まれる空気に影響を与えるのを抑えることができる。
【0052】
開口部52Mの形状、位置などの構成は、上述した構成に限定されず、ハウジング径方向に沿って延びる開口部を形成し、あるいは、不等ピッチで開口部を形成することも可能である。また、モータハウジング50の円筒部52の側面52Sから先端面52Kに渡って開口部を形成してもよく、先端面52Kだけに独立した開口部を形成してもよい。一方、ハブ21が開口部を部分的に覆う構成(
図6の符号L´が開口部52Mの途中に位置する)でもよく、先端面52Kの縁から離れてハウジング軸方向に沿って吐出口10F側に開口部を形成してもよい。
【0053】
次に、
図2、7、8を用いて、リング40のねじ回しによる衣服用ファン10への装着について説明する。リング40の内周面には、雌ネジ40Mが形成されており(
図7参照)、リング40は本体部32のフランジ32Fと接触するまでねじ回し可能である。そして、リング40とフランジ32Fとの接触する面には、リング40の緩む方向への回転を規制する互いに相補的なプロファイルを周方向に沿って形成している。
【0054】
図2、7、8には、そのプロファイルの一例として、凸部が互いの面に形成された構成を示している。
図7に示すように、リング40の底面(以下、フランジ対向面という)42Pには、複数の凸部42が所定間隔(ここでは等間隔で30個)で周方向全体に渡って形成されている。一方、本体部32のフランジ32Fの上面(以下、リング対向面という)32Pにも、複数の凸部が周方向に沿って所定間隔で形成されている。ここでは、4つの凸部33が等間隔で形成されている(
図2には2つ、
図8には1つ図示されている)。
【0055】
リング40のフランジ対向面42Pに形成された凸部42は、ここでは周方向に沿って滑らかに湾曲した断面形状を有し、その表面部分にエッジが形成されていない。一方、本体部32のリング対向面32Pに形成された凸部33は、ここでは断面台形状でエッジが形成されている。凸部42のフランジ対向面42Pからの高さは、凸部33のリング対向面32Pからの高さと略等しい。
【0056】
図8では、衣服100を挟んでない状態でリング40が最も締め付けられた位置(雌ねじ40M、雄ねじ36との関係でそれ以上リング40が回らない位置、以下、最大締め付け位置という)にあるときの凸部42と凸部33の接触状態を示している。リング40のフランジ対向面42Pに形成された凸部42の互いの周方向距離間隔は、本体部32(フランジ32F)に形成された凸部33の周方向幅より長い。リング40が最大締め付け位置にあるとき、凸部33各々は、その両側にある隣り合った凸部42の間に介在する。
【0057】
リング40を最大締め付け位置まで回転させていくと、リング40のフランジ対向面42Pは、徐々に本体部32のリング対向面32Pへ近づいていく。最大締め付け位置に到達するまでの間に、本体部32のリング対向面32Pのいくつかの凸部33は、リング40のフランジ対向面42Pの凸部42と接触し、リング40は抵抗を受けながら最終的な最大締め付け位置まで回転していく。
【0058】
ところで、リング40は、リング40とフランジ32Fとの間に衣服100を挟んだ状態で実際には締め回すことになる。衣服100の生地が非常に薄い場合、生地による影響がほとんどなく最大締め付け位置までリング40を回すことができる。したがって、一度リング40を最大締め付け位置まで回転させることで、凸部42が凸部33を乗り越えようとすると抵抗を受けるため、リング40の緩める方向への回転を規制する。
【0059】
また、衣服100の生地が比較的厚い場合でも、リング40が最大締め付け位置に到達するまでに凸部42と凸部33とが衣服100を間に挟んで互いに抵抗を受ける相補的形状を有するため、最大締め付け位置付近においても、リング40の緩める方向への回転を抑えることができる。
【0060】
さらに、凸部42と凸部33との間に挟まれた衣服が波打つことで摩擦抵抗が増加し、凸部42と凸部33とが衣服100を間に挟んで互いに抵抗を受ける前の位置でもリング40の緩める方向への回転を抑えることが可能である。
【0061】
一方、フランジ32Fの凸部33がリング40の隣り合う凸部42の間に介在するとき、凸部33のその両隣の凸部42との間に僅かな隙間がある。この隙間がリング40の僅かな微小回転を許す隙間となり、ユーザは、リング40を緩める方向へ回転させるときに勢いをつけることで、凸部33が凸部42を乗り越えリング40を緩めることを可能にする。なお、凸部33、凸部42の形状は、上記以外の形状にすることも可能であり、リング40をねじ回していくときに衣服100を挟んで互いに力を作用させ、最大締め付け位置あるいはその付近の位置までリング40を回転させることができるような高さ、断面形状であればよい。
【0062】
以上説明したように、凸部42と凸部33との接触がリング40の緩める方向への回転の規制手段となる相補的なプロファイルを形成することで、衣服用ファン10を衣服100へ確実に取り付けることができる。また、多数の凸部42を比較的短い距離間隔でフランジ対向面42Pに形成し、凸部33の周方向幅をその距離間隔より短くすることにより、フランジ対向面42Pとリング対向面32Pとの隙間間隔が周方向全体に渡って略等しくなり、衣服100の生地を周方向全体に渡って均等な力で挟みやすい。
【0063】
凸部42、凸部33の数は、上記数以外(例えば、凸部33を20~40の範囲、凸部42を2~10の範囲)に設定することが可能である。また、リング対向面32Pに凸部33、フランジ対向面32Pに凸部42を形成してもよく、一方の凸部を他方の凸部の数より大きくすればよい。また、相補的なプロファイルは互に凸部を形成する構成に限定されず、凹部と凸部の構成にしてもよい。
【0064】
次に、
図9~
図11を用いて、第2の実施形態である衣服用ファンについて説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、各羽根の面積が大きく、羽根の詰まり具合が大きくなるように構成されている。
【0065】
図9は、第2の実施形態である衣服用ファンの正面図である。衣服用ファン10’は、第1の実施形態と同様、その正面側は、放射状に延びるリブ32’R1と環状のリブ32’R2から成るリブ構造で構成されているが、隣り合うリブ32’R1間の間隔が、第1の実施形態と比べて広くなっている。
【0066】
図10は、第2の実施形態であるプロペラファンの正面図である。
図11は、第2の実施形態であるプロペラファンの後方側から見た斜視図である。
【0067】
プロペラファン20’は、8枚の羽根20’A~20’Hを備え、第1の実施形態と同様、各羽根は、ハブ21’の側面21’Sの幅方向長さL全体に渡った長さ(翼弦長)をもつように、所定の取り付け角度θで取り付けられている。ここでの取り付け角度θは、第1の実施形態よりも小さい。
【0068】
また、ハブ21’に対する取り付け部分(付け根)付近の長さ(羽根20’Bの場合、K1とK2を結ぶ直線の長さに対応)に対する、径方向最外遠の翼辺の長さ(羽根20’Bの場合、K3とK4を結ぶ直線の長さに対応)の長さは、第1の実施形態と比べてより長くなる翼曲面形状になっている。そのため、各羽根の翼面積は、第1の実施形態と比べて大きい。
【0069】
8枚の羽根20’A~20’Hを翼列として展開した場合、第1の実施形態と同様、スペーシングsは、翼弦長lよりも大きい(s>l)。その一方、食違い角ξは、上述したように取り付け角度θがより小さいため、第1の実施形態と比較して大きい。
【0070】
その結果、スペーシングsをある程度確保しながら、第1の実施形態と比べ、隣り合う羽根同士間隔を詰まらせた構成になっている。
図4と
図10とを比較すれば明らかなように、隣り合う羽根との間の隙間をハブ21の軸Eに垂直な面に投影した時の投影サイズは、各羽根の投影サイズより小さく、ここでは1/2より小さい。
【0071】
このようなプロペラファン20’の構成により、プロペラファン20’の軸方向に沿った薄さを維持しながら、風量をより多くすることが可能となる。一方、8枚の羽根で構成することにより、各羽根を比較的寝かせた状態で取り付けているにも関わらず、1枚の羽根の表面積がそれほど肥大化しないため、高速回転によって風量を多くする場合でも、プロペラファン20’の強度を維持しやすい。
【0072】
また、第1の実施形態と同様、3次元翼としての各羽根が、その前縁と後縁が互いに平行な面に沿うように形成されている。そのため、回転数を増加させたときに隣り合う羽根の隙間が小さいにも関わらず、その隙間を通過する空気の乱れが抑えられ、回転数増加に合わせて風量増加を実現することが可能となる。
【0073】
次に、
図12を用いて第3の実施形態である衣服用ファンについて説明する。第3の実施形態では、電源ケーブルの接続状態におけるケーブル回転が制限されている。
【0074】
図12は、第3の実施形態である衣服用ファンの背面側から見た部分的斜視図である。
【0075】
衣服用ファン10”では、第1の実施形態と同様、ケーシング30”のモータ装着部34”は、複数の径方向リブ34”R1と同心円状の環状リブ34”R2とを交差させたリブ構造となっている。また、蓋60”は、図示しないモータハウジングを塞ぐ。リング40”は、ここでは側面に凹凸のない筒状に形成されている。また、ケーシング30”の図示しないフランジについても、波型形状ではなく円状に形成されている。
【0076】
モータハウジングの開口部付近には、径方向に突出する接続部55”が形成されている。モータハウジングの接続部55”に設けられた入力端子54”Mは、蓋60”の内側に設けられており、図示しない電源ケーブルの接続端子が入力端子54”Mに差し込まれる。
【0077】
第3の実施形態では、入力端子54”Mの前方側スペースS”は、接続される電源ケーブルの回転を制限する空間領域として構成され、電源ケーブルを入力端子54”Mに差し込んだ状態で電源ケーブルをリング40”と平行な状態まで回すことができない。したがって、電源ケーブルを180°回転させることはできない。
【0078】
ハウジングの入力端子54”M付近と連結する径方向リブ39”A、39”Bは、階段状に段差のあるリブ形状であり、ここでは入力端子54”Mに関して対称的な位置にあり、同一形状になっている。この前方側スペースS”を形成する径方向リブ39”A、39”Bは、電源ケーブルの接続端子が入力端子54”Mに差し込まれた状態で、接続端子と接し、支持する高さになっている。
【0079】
モータ装着部34”のリブ構造において、周方向に沿った弧状リブ37”R2は、他の環状リブ34”R2より下方のリング40”付近に沿って形成されている。弧状リブ37”R2は、傾斜リブ38”A、38”Bを介して環状リブ34”R2と繋がっている。傾斜リブ38”A、38”Bは、差し込まれた電源ケーブルを回転させたときに接し、その回転移動量を制限する。
【0080】
第3の実施形態では、2つの段差を有する階段状の径方向リブ39”A、39”Bが、電源ケーブルの接続端子とその段差部分で接触する形状になっている。そのため、電源ケーブルは、径方向リブ39”A、39”Bによって安定して保持され、また、傾斜リブ38”A、38”Bとの接触によって位置決めされる。そのため、電源ケーブルの接続端子が入力端子54”Mから外れにくい構造になっている。
【0081】
そして、電源ケーブルの接続端子を180°移動回転させるような空間スペースを設けず、また、電源ケーブルの接続端子の接続端子が外れるのを防ぐ受け部をスペース外側のリング側面付近に設けるような構成を採用していないため、モータハウジングを全周囲に渡って支持するリブ構造を形成可能となり、特に、入力端子54”Mと連結して強度を保つリブ構造を実現している。また、必要以上にモータ装着部34”の径、すなわちケーシング30”の径を大型化する必要がない。
【0082】
このようなリブ構造は、第1、第2の実施形態で説明した構成を採用しない衣服用ファンに対しても適用することが可能である。すなわち、プロペラファンを収容するケーシングにおいて、同心円状の環状リブと放射状の径方向リブとを交差させたリブ構造を備え、電源ケーブルの接続端子が差し込まれる入力端子付近において、ケーシング頂部から底部側(ケーシング外周面側)に向けて降下し、段差(例えば2段)を有する階段状の径方向リブを形成する衣服用ファンを提供することができる。衣服用ファンとしては、リングを用いたねじ回しによる取付構造だけでなく、係止、嵌合によって取り付ける構成も可能である。例えば、2つの段差をもつ径方向リブの場合、中間部分のリブ高さは、電源ケーブルの接続端子を入力端子に差し込んだ時に径方向リブの中間部分と接触するように定めることが可能である。
【0083】
従来、電源ケーブルが衣服用ファンから抜けるのを防ぐため、入力端子付近に大きなスペースを設ける必要があり、これによってモータハウジングを支えるリブ構造に強度不足が生じることになっていたが、階段状の径方向リブを形成することにより、リブ構造の強度低下を抑えながら、電源ケーブルを安定して保持することが可能となる。
【0084】
次に、
図13を用いて、第4の実施形態である衣服用ファンについて説明する。第4の実施形態では、電源ケーブルとの接続部分が、ファンケーシングの(背面側)頂部付近から径方向に延びている。
【0085】
図13は、第4の実施形態である衣服用ファンを背面側から見た部分的斜視図である。
【0086】
衣服用ファン1000では、第3の実施形態と同様、ケーシング1030のモータ装着部1034は、複数の径方向リブ1034R1と同心円状の環状リブ1034R2とを交差させたリブ構造となっている。蓋1060によって塞がれているモータハウジングの接続部55には、電源ケーブルの接続端子と接続し、可撓性のある接続部1100が設けられている。接続部1100は、入力端子部分1110とここでは直状のケーブル部分1120とを備え、モータ駆動電力が接続部1100を介して供給される。ケーブル部分1120は、ここでは可撓性のある素材で構成されている。
【0087】
接続部1100は、蓋1060からケーシング1030の径方向に延出し、長さTを有する。電源ケーブルの接続端子は、接続部1100の入力端子部分1110に差し込むことが可能である。このような突出する接続部1100を衣服用ファン1000のケーシング1030に設けることにより、電源ケーブルの長さに余裕がない場合でも、電源ケーブルを容易に衣服用ファン1000と接続させることができる。
【0088】
接続部1100の長さTは、ここではケーシング1030を超えて径方向に延び、突出しているが、ケーシング1030を超えない長さTに設定することも可能である。規格などに応じて長さTを定めてもよい。また、入力端子部分1110の形状、サイズなども、規格などに応じて定めることが可能である。また、接続部1100の入力端子部分1100を、規格などに応じて形状、サイズが異なるものを複数用意し、モータハウジングに対して取り外し可能であって、選択的に装着させる構成にしてもよい。一方、ケーブル部分1120については、途中から延びる方向を変えるようにしてもよい。
【0089】
このような電源ケーブル構造をケーシングの一部に設ける構成は、第1、第2、第3の実施形態で説明した構成を採用しない衣服用ファンに対しても適用することが可能である。すなわち、プロペラファンを収容するケーシングにおいて、プロペラファンを駆動するモータに電源供給する電源ケーブルの接続端子との接続部が、少なくともその一部がケーシングの中央付近から径方向に延びるように構成することが可能である。衣服用ファンとしては、リングを用いたねじ回しによる取付構造だけでなく、係止、嵌合によって取り付ける構成も可能である。例えば、接続部は、電源ケーブルの接続端子差し込み可能な入力端子部分をその先端部に設け、少なくとも一部が直状に延びるケーブル部分を設けるようにすればよい。
【0090】
従来のように、電源ケーブルの接続端子(ピン)を差し込む場合、衣服用ファン1000の装着時の位置(角度)が、電源ケーブルの長さ、2つの衣服用ファン取付け位置との関係などで差し込み困難な状態になる状況が生じる場合もあるが、上記接続部を設けることによって、衣服用ファンの取り付け位置に関係なく、電源ケーブルとの接続が容易となる。
【0091】
また、電源ケーブルが差し込んだ状態から引っ張られたときに従来のような入力端子に負荷が掛かってケーブル劣化およびモータハウジングの強度低下を招く恐れがあるが、本実施形態の接続部1100によれば、電源ケーブル長さに余裕が生じ、モータハウジングに対しても負荷がかかりにくくなる。
【0092】
なお、第1の実施形態で説明した8枚多翼によるプロペラファンの構成は、リングとフランジの対向面の相補的プロファイルをもたない構成、モータハウジングの放熱構造を持たない衣服用ファンにも適用することができる。同様に、モータハウジングの放熱構造は、偶数枚多翼によるプロペラファンの構成、リングとフランジと間の対向面の相補的プロファイルをもつ構成を持たない衣服用ファンに適用可能であり、リングとフランジの対向面の相補的プロファイルをもつ構成は、偶数枚多翼によるプロペラファンの構成、モータハウジングの放熱構造をもたない衣服用ファンに適用可能である。
【実施例0093】
以下では、8枚羽根のプロペラファンを備えた実施例の衣服用ファンと、6枚プロペラファンを備えた比較例の衣服用ファンの風量比較実験結果について説明する。
【0094】
実施例の衣服用ファンは、第2の実施形態に相当する8枚羽根プロペラファンを備え、ファン直径が85mm、ケーシング直径が105mmのサイズをもつ衣服用ファンとして構成される。各羽根の取り付け角度は、35度~45度の範囲に収まっている。一方、比較例の衣服用ファンは、ファン直径、ケーシング直径は実施例と同じであり、また、正面側、背面側リブ構造も略同じであり、各羽根の取り付け角度も略等しい。翼列に展開した場合、どちらもスペーシングは翼弦長より大きく、弦節比は、実施例と比較例との間で略同じとなるように構成されている。
【0095】
このような実施例と比較例の衣服用ファンに対し、以下の風量試験を行った。
【0096】
ベーン式風速計(ドイツTesto SE&Co.KGaA社製)を使用し、フローストレーナ(整流器)を用いた風量測定を行った。測定時、床面その他の影響を受けないように、ケーシングサイズの穴を形成した専用台座に衣服用ファンを設置し、空気が漏れないようにファンとフローストレーナを密着させた状態で計測した。また、衣服用ファンに対して15Vの電圧を供給して風量測定を行った。
【0097】
風量計測結果では、実施例の衣服用ファンは、風量が83(L/s)であったのに対し、比較例の衣服用ファンは、風量73.2(L/s)であった。この結果、8枚羽根の衣服用ファンの方が、6枚羽根の衣服用ファンと比べて風量増大の効果があることが確認された。