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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068165
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20220426BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20220426BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20220426BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20220426BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220426BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220426BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220426BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R11/01 501E
H01R43/00 H
H01R43/00 Z
H01B5/16
C09J7/10
C09J7/38
C09J9/02
C09J11/04
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008677
(22)【出願日】2022-01-24
(62)【分割の表示】P 2019222598の分割
【原出願日】2015-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2014072390
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
(72)【発明者】
【氏名】荒木 雄太
(57)【要約】
【課題】生産性高く製造することができ、かつショート発生率を抑制できる異方性導電フィルムを提供する。
【解決手段】絶縁性樹脂層4に導電粒子2aが分散している異方性導電フィルム1Aであって、異方性導電フィルムのフィルム厚方向zの所定の深さに導電粒子2aが分散している第1導電粒子層3aと、第1導電粒子層3aと異なる深さに導電粒子2bが分散している第2導電粒子層3bを有する。各導電粒子層3a、3bにおいて、隣り合う導電粒子2a、2bの最近接距離La、Lbは、導電粒子2a、2bの平均粒子径の2倍以上である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂層に導電粒子が分散している異方性導電フィルムであって、
異方性導電フィルムのフィルム厚の所定の深さに導電粒子が分散している第1導電粒子層と、第1導電粒子層と異なる深さに導電粒子が分散している第2導電粒子層を有し、
各導電粒子層において、隣り合う導電粒子の最近接距離が、導電粒子の平均粒子径の2倍以上である異方性導電フィルム。
【請求項2】
各導電粒子層において、導電粒子の最近接粒子間距離が、導電粒子の平均粒子径の2倍以上50倍以下である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
第1導電粒子層の導電粒子と第2導電粒子層の導電粒子とが、互いに相違している請求項1又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
第1導電粒子層の導電粒子と第2導電粒子層の導電粒子とが、平均粒子径及び/又は粒子硬さの点で互いに相違している請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
異方性導電フィルムを平面視した場合に第1導電粒子層の導電粒子と第2導電粒子層の導電粒子の位置がずれている請求項1~4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
異方性導電フィルムのフィルム厚の方向につき、第1導電粒子層の中心と第2導電粒子層の中心との距離が導電粒子の平均粒子径の1/5以上である請求項1~5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
各導電粒子層において、導電粒子が格子状に配列している請求項1~6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
第1導電粒子層と第2導電粒子層の導電粒子の配列が等しい請求項1~7のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
絶縁性樹脂層が、光重合樹脂で形成されている請求項1~8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
絶縁性樹脂層が、重合性樹脂で形成された第1絶縁性樹脂層と、重合開始剤を含有しない中間樹脂層と、重合性樹脂で形成された第2絶縁性樹脂層の積層構造を有し、
第1導電粒子層の各導電粒子は、少なくとも一部が第1絶縁性樹脂層に埋入し、
第2導電粒子層の各導電粒子は、少なくとも一部が第2絶縁性樹脂層に埋入し、
第1導電粒子層の導電粒子と、第2導電粒子層の導電粒子との間に中間樹脂層が存在する請求項1~8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
同一の導電粒子層に存在する任意の方向における導電粒子間距離が等しい請求項1~10のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品
に異方性導電接続した接続構造体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品
に異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの電子部品の実装に異方性導電フィルムは広く使用されており、近年では、高実装密度への適用の観点から、導電粒子捕捉効率や接続信頼性を向上させ、ショート発生率を低下させるために、転写型を用いて導電粒子を単層に配列させることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
この異方性導電フィルムの製造方法では、まず、多数の孔部を有する転写型の該孔部に導電粒子を保持させ、その上から転写用の粘着層が形成された粘着フィルムを押し当て、粘着層に導電粒子を一次転写させる。次に、粘着層に付着した導電粒子に対し、異方性導電フィルムの構成要素となる高分子膜を押し当て、加熱加圧して導電粒子を高分子膜表面に二次転写させる。次に、導電粒子が二次転写された高分子膜の導電粒子側表面に、導電粒子を覆うように接着層を形成する。こうして、導電粒子の配置ピッチが9μm程度の異方性導電フィルムを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-33793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の異方性導電フィルムの製造方法によっても、導電粒子の配置ピッチをさらに狭めると、転写型の通りに導電粒子を保持させることや、保持させた導電粒子を確実に転写させることが難しく、異方性導電フィルムの生産性が低下する。また、異方性導電フィルムの製造工程や、異方性導電フィルムを電子部品の実装に使用した場合に、導電粒子が3個以上連なることがあり、それによってショートが発生し易くなるという問題も生じた。
【0006】
本発明の課題は、高密度実装に対応するために、異方性導電フィルムにおける導電粒子の配置ピッチを狭めても異方性導電フィルムを生産性高く製造することができ、異方性導電フィルムを電子部品の実装に使用した場合のショート発生率を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、転写型を用いて導電粒子が絶縁性樹脂層に分散した異方性導電フィルムを製造するに当たり、転写型を用いて導電粒子を分散させた第1及び第2の絶縁性樹脂層を互いに貼り合わせると、導電粒子の配置ピッチが狭い異方性導電フィルムを、高い生産性で製造でき、また、導電粒子の不用意な連なりを制御できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
即ち、本発明は、絶縁性樹脂層に導電粒子が分散している異方性導電フィルムであって、異方性導電フィルムのフィルム厚の所定の深さに導電粒子が分散している第1導電粒子層と、第1導電粒子層と異なる深さに導電粒子が分散している第2導電粒子層を有し、各導電粒子層において、隣り合う導電粒子の最近接距離が、導電粒子の平均粒子径の2倍以上である異方性導電フィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、上述の異方性導電フィルムを製造することのできる方法であって、複数の凹部が形成された第1転写型の凹部に導電粒子を入れる工程A、
第1転写型内の導電粒子が絶縁性樹脂層に転着している第1絶縁性樹脂層を形成する工程B、
複数の凹部が形成された第2転写型の凹部に導電粒子を入れる工程C、
第2転写型内の導電粒子が絶縁性樹脂層に転着している第2絶縁性樹脂層を形成する工程D、
第1絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面と、第2絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面とを対向させ、これらを積層一体化する工程E、
を有し、
各転写型において、隣り合う凹部の最近接距離が、該転写型に入れる導電粒子の平均粒子径の2倍以上である製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異方性導電フィルムは、転写型を用いて導電粒子を分散させた第1及び第2の絶縁性樹脂層を貼り合わせることにより製造することができる。したがって、貼り合わせる前の転写型による導電粒子のピッチを、異方性導電フィルムにおける導電粒子のピッチよりも広くすることができ、異方性導電フィルムの生産性を高めることができる。
【0011】
また、異方性導電フィルムの製造時、又は異方性導電フィルムを電子部品の実装に使用したときに、第1導電粒子層に含まれる第1の導電粒子と、第2導電粒子層に含まれる第2の導電粒子とがフィルム面の方向に連なったとしても、第1導電粒子層及び第2導電粒子層のそれぞれにおいて、隣り合う導電粒子の最近接距離が導電粒子の平均粒子径の2倍以上となっているので、連なっている第1の導電粒子と第2の導電粒子に加えて、第3の導電粒子がさらに連なることはほぼ無い。したがって、ショートの発生率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、実施例の異方性導電フィルム1Aの断面図である。
図1B図1Bは、実施例の異方性導電フィルム1Aの、導電粒子の配置を示す平面図である。
図2A図2Aは、実施例の異方性導電フィルム1Bであって、第1導電粒子層の導電粒子と第2導電粒子層の導電粒子とが連なった態様の断面図である。
図2B図2Bは、実施例の異方性導電フィルムの、第1導電粒子層の導電粒子と第2導電粒子層の導電粒子とが連なった態様の平面図である。
図3A】異方性導電接続時における実施例の異方性導電フィルム1Bの導電粒子捕捉性の説明図である。
図3B】異方性導電接続時における実施例の異方性導電フィルム1Bの導電粒子捕捉性の説明図である。
図4図4は、実施例の異方性導電フィルム1Cの、導電粒子の配置を示す平面図である。
図5図5は、実施例の異方性導電フィルム1Dの、導電粒子の配置を示す平面図である。
図6図6は、導電粒子の配置ピッチの小さい異方性導電フィルム1Xの断面図である。
図7A図7Aは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7B図7Bは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7C図7Cは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7D図7Dは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7E図7Eは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7F図7Fは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図7G図7Gは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図8図8は、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図9A図9Aは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図9B図9Bは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図10A図10Aは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図10B図10Bは、異方性導電フィルムの製造方法の工程説明図である。
図11図11は、異方性導電フィルムの断面図である。
図12図12は、異方性導電フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の異方性導電フィルムの一例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表わしている。
【0014】
<<異方性導電フィルムの全体構成>>
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム1Aの断面図であり、図1Bは、その異方性導電フィルム1Aの、導電粒子の配置を示す平面図である。この異方性導電フィルム1Aは、絶縁性樹脂層4に導電粒子2a、2bが分散しているものであって、異方性導電フィルム1Aのフィルム厚方向zの所定の深さに導電粒子2a(図中、濃色で示す)が分散している第1導電粒子層3aと、第1導電粒子層3aと異なる深さに導電粒子2b(図中、淡色で示す)が分散している第2導電粒子層3bを有している。
【0015】
図1Bに示すように、各導電粒子層3a、3bにおいて、導電粒子2a、2bはそれぞれ正方配列しており、第2導電粒子層3bの導電粒子2bの配列は、第1導電粒子層3aの導電粒子2aの配列に対して、第1導電粒子層3aの配列方向xに、配列格子の半ピッチ分ずれた配置となっている。
【0016】
ここで、第1導電粒子層3aの導電粒子2aが分散しているフィルム厚方向zの深さと、第2導電粒子層3bの導電粒子2bが分散しているフィルム厚方向zの深さが異なるとは、フィルム面に平行な導電粒子2aの中心線Paと、フィルム面に平行な導電粒子2bの中心線Pbとの距離Sが、導電粒子2a、2bの平均粒子径の1/5以上離れていることを言う。この距離Sは、好ましくは導電粒子2a、2bの平均粒子径の1/2以上、より好ましくは1/2~5倍である。ここで、導電粒子2a、2bの平均粒子径は、導電粒子2a、2b全体の平均粒子径である。
【0017】
この異方性導電フィルム1Aにおいて、第1導電粒子層3a内で隣り合う導電粒子の最近接距離Laは、第1導電粒子層3aにおける導電粒子2aの平均粒子径Daの2倍以上、好ましくは2倍以上50倍以下である。第2導電粒子層3b内で隣り合う導電粒子の最近接距離Lbも、第2導電粒子3bにおける導電粒子2bの平均粒子径Dbの2倍以上、好ましくは2倍以上50倍以下である。このように各導電粒子層3a、3bにおいて、隣り合う導電粒子の最近接距離La、Lbを導電粒子2a、2bの平均粒子径Da、Dbの2倍以上とすることにより、異方性導電フィルムの製造工程で、第1導電粒子層3aと第2導電粒子層3bの互いの配置にずれが生じ、図2A図2Bに示す異方性導電フィルム1Bのように、第1導電粒子層3aの導電粒子2aと第2導電粒子層3bの導電粒子2bが2個連なり、異方性導電フィルムの平面視における最近接導電粒子間距離Lcがゼロになったとしても、狭ピッチの転写型を使用した場合のように導電粒子が3個以上連なることはない。そのため、異方性導電フィルム1Bを電子部品の異方性導電接続に使用した場合のショートの発生を抑制することができる。
【0018】
また、第1導電粒子層3aの導電粒子2aと第2導電粒子層3bの導電粒子2bとが2個連なった異方性導電フィルム1Bを異方性導電接続時に用いると、図3Aに示すように、2個連なった導電粒子2a、2bが、電子部品20の端子21のエッジと、電子部品22の端子23のエッジの間に挟まれることがあるが、端子21、23のエッジに位置する導電粒子は1個の場合よりも2個連なっている場合の方が、図3Bに示すように、異方性導電接続の加熱加圧後に端子21、23に捕捉されやすい。したがって、本発明の異方性導電フィルムによれば、異方性導電接続における導電粒子捕捉性も向上させることができる。
【0019】
一方、図6に示す異方性導電フィルム1Xのように、2層の導電粒子層3a、3bを有するものでも、各導電粒子層における導電粒子2a、2bの配置ピッチが小さく、各導電粒子層3a、3bにおいて隣り合う導電粒子2a、2bの最近接距離La、Lbが導電粒子2a、2bの平均粒子径Da、Dbの2倍未満であると、異方性導電フィルムを使用して異方性導電接続をした場合にショートが発生し易くなるので好ましくない。
【0020】
本発明の異方性導電フィルムにおいて、導電粒子2a、2bは、各導電粒子層3a、3bにおける導電粒子の最近接距離が導電粒子の平均粒子径の2倍以上となっている限り、種々の配置をとることができる。例えば、図4に示す異方性導電フィルム1Cのように、第1導電粒子層3aの導電粒子2aの配列と、第2導電粒子層3bの導電粒子2bの配列とがそれぞれ正方配列であり、第2導電粒子層3bの導電粒子2bの配列が、第1導電粒子層3aの導電粒子2aの配列に対して、斜め方向に配列格子の半ピッチ分ずれたものとすることができる。各導電粒子層における導電粒子配列は、正方配列に限られず、三方配列でもよく、ランダムでもよい。ランダムなものは、例えば延伸可能なフィルムに配置し、そのフィルムを延伸させて導電粒子間に所定の距離を持たせるように作製してもよい。
【0021】
また、第1導電粒子層3aと第2導電粒子層3bで配列パターンとそのピッチは、等しくても異なっていても良いが、配列パターンとそのピッチが等しい場合は貼り合わせ後の導電粒子の分散状態の良否の判定が容易になるという製造上の利点がある。例えば、図5に示す異方性導電フィルム1Dは、第1導電粒子層3aの導電粒子2aが正方配列で、第2導電粒子層3bの導電粒子2bが斜方配列であり、第2導電粒子層3bの導電粒子2bが、常に第1導電粒子層3aの導電粒子2aと横並びになるようにしたものである。この場合、第2導電粒子層3bの導電粒子2bと第1導電粒子層3aの導電粒子2aとが横並びになっていない部分があると、その部分で導電粒子が意図した配列になっていないことが容易にわかる。
【0022】
<<導電粒子>>
導電粒子2a、2bとしては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0023】
導電粒子の平均粒子径としては、配線の高さのばらつきを吸収しやすくして抵抗が高くならないようにし、また、ショートの原因とならないようにするために、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~6μmである。第1導電粒子層3aの導電粒子2aの平均粒子径と、第2導電粒子層3bの導電粒子2bの平均粒子径は、同じでも異なっていても良い。
【0024】
導電粒子が金属被覆樹脂粒子である場合、樹脂コア粒子の粒子硬さ(20%K値;圧縮
弾性変形特性K20)は、良好な接続信頼性を得るために、好ましくは100~1000
kgf/mm2、より好ましくは200から500kgf/mm2である。また、第1導
電粒子層3aの導電粒子2aの粒子硬さと、第2導電粒子層3bの導電粒子2bの粒子硬
さは、同じでも異なっていても良い。
【0025】
そのような樹脂コアとしては、圧縮変形に優れるプラスチック材料からなる粒子を用いることが好ましく、例えば(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ポリエステル樹脂等で形成することができる。ここで、“(メタ)アクリレート”は、アクリレートとメタクリレートとを包含する。
【0026】
樹脂コアは、上述の(メタ)アクリレート系樹脂またはポリスチレン系樹脂のいずれかの樹脂単独で形成されていてもよく、これらの樹脂のブレンド組成物から形成されていてもよい。また、後述する(メタ)アクリレート系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体から形成されていてよい。
【0027】
(メタ)アクリレート系樹脂は、(メタ)アクリレート系モノマーと、さらに必要によりこれと共重合可能な反応性二重結合を有する化合物(例えば、ビニル系モノマー、不飽和カルボン酸モノマー等)および二官能あるいは多官能性モノマーとの共重合体であることが好ましい。ここで、モノマーには、加熱や紫外線照射等により重合するものであれば、2個以上のモノマーの重合体であるオリゴマーも含まれる。
【0028】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロピル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボロノル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
一方、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーと、さらに必要によりこれと共重合可能な反応性二重結合を有する化合物(例えば、ビニル系モノマー、不飽和カルボン酸モノマー等)および二官能あるいは多官能性モノマーとの共重合体であることが好ましい。ここで、モノマーには、加熱や紫外線照射等により重合するものであれば、2個以上のモノマーの重合体であるオリゴマーも含まれる。
【0030】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘブチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウドスチレンおよびクロロメチルスチレンなどのハロゲン化スチレン;ならびに、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレンを挙げることができる。
【0031】
樹脂コアを構成する好ましい(メタ)アクリレート系樹脂の一例として、ウレタン化合物と、(メタ)アクリレート系モノマーとの重合体で構成される場合が挙げられる。ウレタン化合物としては、多官能ウレタンアクリレートを使用することができ、例えば2官能ウレタンアクリレート等を使用することができる。ここで、モノマー100重量部に対し、前記ウレタン化合物は5重量部以上含有されることが好ましく、25重量部以上含有されることがより好ましい。
【0032】
なお、導電粒子2a及び導電粒子2bは、異方性導電接続すべき二つの電子部品の対向電極間距離がほぼ一定である場合(例えば、ICチップのバンプ高さが均一である場合)には、実用的にはサイズや硬さや材質等の点で同じであることが好ましい。これにより、異方性導電接続の際に接続すべき対向電極間に存在する導電粒子を均一に潰れさせることができるので、初期導通抵抗値を低減させ、導通信頼性を改善させ、ショートの発生率を低減させることができる。
【0033】
他方、異方性導電接続すべき二つの電子部品の対向電極間距離にバラツキが存在する場合(例えば、ICチップのバンプの高さのバラツキがある場合)には、導電粒子2a及び導電粒子2bとしてサイズや硬さや材質等の点で同じのものを使用すると不都合が生じる場合がある。例えば、導電粒子として比較的小さいサイズのものだけを使用すると、相対的に広い電極間距離の対向電極間で導電粒子が十分に潰れないために、異方性導電接続時に圧痕が不均一となり製品検査時に不良判定されたり、初期導通抵抗が上昇したり、導通信頼性が低下したりすることがあり得る。また、導電粒子として比較的粒子硬さが高いものだけを使用すると、相対的に狭い電極間距離の対向電極間で強い圧痕が出現する一方で粒子そのものが十分に潰れないために、初期導通抵抗値が上昇し、導通信頼性が低下することがあり得る。従って、異方性導電接続すべき二つの電子部品の対向電極間距離にバラツキが存在する場合には、導電粒子2a及び導電粒子2bとして、そのバラツキをキャンセルできるように、サイズや粒子硬さ等の点で、互いに相違するものを使用することが好ましい。この場合、導電粒子の配列パターンは、異方性導電接続すべき二つの電子部品の対向電極間距離のバラツキをキャンセルできるようなパターンとすることが好ましい。
【0034】
絶縁性樹脂層4における、第1導電粒子層3aの導電粒子2aと第2導電粒子層3bの導電粒子2bの合計の粒子量は、少なすぎると導電粒子捕捉数が低下して異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートすることが懸念されるので、好ましくは1平方mm当たり50~50000個、より好ましくは200~50000個である。
【0035】
<<絶縁性樹脂層>>
絶縁性樹脂層4としては、公知の異方性導電性フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光重合性樹脂から形成した樹脂層、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱重合性樹脂から形成した樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱重合性樹脂から形成した樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱重合性樹脂から形成した樹脂層等を使用することができる。光ラジカル重合開始剤を使用する場合に、光ラジカル重合開始剤に加えて、熱ラジカル重合開始剤を使用してもよい。また、絶縁性樹脂層4を、複数の樹脂層から形成してもよい。
【0036】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の光重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。本発明においては、異方性導電接続時に絶縁性樹脂層を熱硬化できるように、(メタ)アクリレート系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することが好ましい。
【0037】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等の公知の重合開始剤が挙げられる。
【0038】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリレート化合物100質量部に対し、少なすぎると重合が十分に進行せず、多すぎると剛性低下の原因となるので、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。
【0039】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0040】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0041】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0042】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0043】
熱アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により塩基を発生する脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、特に温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。
【0044】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0045】
絶縁性樹脂層4を、複数の樹脂層から形成する態様としては、第1導電粒子層3aを保持する絶縁性樹脂層と第2導電粒子層3bを保持する絶縁性樹脂層とを別個の樹脂層から形成することができる。また、第1導電粒子層3aを保持する絶縁性樹脂層と第2導電粒子層3bを保持する絶縁性樹脂層との間に、これらを接着するために中間樹脂層を設けても良く、また、この中間樹脂層に、異方性導電フィルムの巻き取り時、巻出時、搬送時、異方性導電接続工程のフィルムの引き出し時等に導電粒子に加わる応力を緩和する機能をもたせてもよい。また、この絶縁性樹脂層4の片面に、導電粒子を含有していない比較的厚い絶縁性バインダ層を設けてもよい(図示せず)。
【0046】
中間樹脂層に応力緩和機能を持たせる場合、中間樹脂層は、重合開始剤を含有しない樹脂から形成することができる。この場合の中間樹脂層の形成樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0047】
<<異方性導電フィルムの製造方法>>
(i)概要
図1A図1Bに示した異方性導電フィルム1Aは、概略、次のようにして製造することができる。
まず、図7Aに示すように、平面に複数の凹部11が開口した第1転写型10aの該凹部11に、導電粒子2aを入れる(工程A)。次に、第1転写型10a内の導電粒子2aを絶縁性樹脂層に転着させた第1絶縁性樹脂層4aを形成する(工程B)(図7B図7E)。
【0048】
同様にして、複数の凹部が形成された第2転写型の凹部に導電粒子を入れ(工程C)、その第2転写型内の導電粒子を絶縁性樹脂層に転着させた第2絶縁性樹脂層を形成する(工程D)。
【0049】
この場合、第1転写型、第2転写型において、隣り合う凹部の最近接距離を、該転写型に入れる導電粒子の平均粒子径の2倍以上とする。
【0050】
そして、第1絶縁性樹脂層4aの導電粒子2aの転着面と、第2絶縁性樹脂層4bの導電粒子2bの転着面とを対向させ、これらを積層一体化する(工程E)(図7F図7G)。
【0051】
このように導電粒子を転着させた絶縁性樹脂層同士の貼り合わせにより異方性導電フィルムを製造することで、異方性導電フィルムの生産効率を高めることができる。即ち、貼り合わせる個々の絶縁性樹脂層では、導電粒子の分散の密度を低くすることができるので、転写型における導電粒子の充填量を少なくすることができ、充填工程での歩留まりを向上させることができる。また、導電粒子を転着させた絶縁性樹脂層同士の貼り合わせをしない従来の異方性導電フィルムの製造方法では、転写型に充填する導電粒子の数が少ないために、それにより得られる異方性導電フィルムをファインピッチの配線に使用できない場合でも、本発明の製造方法によれば、その転写型を用いて、導電粒子が高密度に分散し、ファインピッチの端子に使用することのできる異方性導電フィルムを製造することが可能となる。
【0052】
(ii)転写型
第1転写型及び第2転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0053】
第1転写型、第2転写型の凹部の形状としては、円柱状、四角柱等の柱形状、円錐台、角錐台、円錐形、四角錐形等の錐体形状等を例示することができる。
【0054】
凹部の配列としては、導電粒子にとらせる配列に応じて格子状、千鳥状等とすることができる。
【0055】
凹部の深さに対する導電粒子の平均粒子径の比(=導電粒子の平均粒子径/開口の深さ)は、転写性向上と導電粒子保持性とのバランスから、好ましくは0.4~3.0、より好ましくは0.5~1.5である。なお、転写型の凹部の径と深さは、レーザー顕微鏡で測定することができる。
【0056】
凹部の開口径の導電粒子の平均粒子径に対する比(=凹部の開口径/導電粒子の平均粒子径)は、導電粒子の収容のしやすさ、絶縁性樹脂の押し込みやすさ等のバランスから、好ましくは1.1~2.0、より好ましくは1.3~1.8である。
【0057】
なお、凹部の開口径よりもその底径が小さい場合には、底径は導電粒子径の1.1倍以上2倍未満とし、開口径を導電粒子径の1.3倍以上3倍未満とすることが好ましい。
【0058】
(iii)工程A、工程C
第1転写型、第2転写型の凹部内に導電粒子2a、2bを収容する手法としては、特に限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。例えば、乾燥した導電粒子またはこれを溶媒中に分散させた分散液を、転写型の凹部の形成面上に散布または塗布し、ブラシやブレードなどを用いて凹部11の形成面をワイプすればよい。
【0059】
(iv)工程B、工程D
導電粒子2aを転着させた第1絶縁性樹脂層4aを形成する工程B、導電粒子2bを転着させた第2絶縁性樹脂層4bを形成する工程D、それらを積層一体化する工程Eは、第1絶縁性樹脂層4aや第2絶縁性樹脂層4bを構成する絶縁性樹脂の種類に応じて種々の態様を取ることができる。
【0060】
(iv-1)絶縁性樹脂を粘着性樹脂から形成する場合
例えば、工程B、工程Dにおいて、第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bをそれぞれ導電粒子に対して粘着性を有する粘着性樹脂から形成する場合、転写型に収容した導電粒子2a、2bに粘着性樹脂層を押圧し、その粘着性樹脂層を転写型から剥離するだけで導電粒子2a、2bが転着した第1、第2の絶縁性樹脂層4a、4bを得ることができる。
【0061】
(iv-2)絶縁性樹脂層を熱重合性樹脂から形成する場合
工程B、工程Dにおいて、第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bを、それぞれ熱重合性樹脂を用いて形成する場合、工程Bにおける第1の方法として、第1転写型10aに収容した導電粒子2aに熱重合性樹脂層を押圧することにより、熱重合性樹脂層に導電粒子2aを付着させ、導電粒子2aが付着した熱重合性樹脂層を転写型から剥離し、次いで熱重合性樹脂層を加熱重合して熱重合樹脂層とし、導電粒子2aを熱重合樹脂層に固定する。あるいは、第2の方法として、第1転写型10aに収容した導電粒子2aに熱重合性樹脂層を押圧し、第1転写型10aに導電粒子2aが収容されている状態で熱重合性樹脂を加熱重合し、第1転写型10aから剥離することで導電粒子2aを転着させた第1絶縁性樹脂層4aを得る。
【0062】
同様にして、工程Dにおいて熱重合性樹脂を使用し、第1の方法又は第2の方法により
導電粒子2bが転着した第2絶縁性樹脂層4bを得る。
【0063】
後述するように工程Eにおいて半硬化状態の第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層を積層して加熱硬化させることにより一体化する場合、工程B及び工程Dにおける加熱重合は、熱重合性樹脂層が半硬化状態となるように行えばよい。一方、工程Eにおいて別途中間樹脂層を介して第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層を積層一体化する場合、工程B及び工程Dにおける加熱重合では、熱重合性樹脂層を完全硬化してもよい。
【0064】
(iv-3)絶縁性樹脂層を光重合性樹脂から形成する場合
第1絶縁性樹脂層4aを、光重合性樹脂を用いて形成する場合、転写型に収容した導電粒子を転着させた第1絶縁性樹脂層を容易に製造することができるので好ましい。第1絶縁性樹脂層4aを、光重合性樹脂を用いて形成する方法としても、例えば、第1の方法として、(a1)第1転写型10a内の導電粒子2aに光重合性樹脂層を押圧することにより光重合性樹脂層に導電粒子を付着させ、(a2)その光重合性樹脂層を転写型から剥離することにより、導電粒子が転着した光重合性樹脂層を得、(a3)導電粒子が転着した光重合性樹脂層に紫外線を照射して光重合性樹脂を光重合樹脂とすることにより行う方法をあげることができる。
【0065】
より具体的には、図7Bに示すように、剥離フィルム5a上に形成された光重合性樹脂からなる第1絶縁性樹脂層4aを、第1転写型10aに収容された導電粒子2aに対向させ、図7Cに示すように、第1絶縁性樹脂層4aに圧力をかけ、凹部11内に絶縁性樹脂を押し込んで第1絶縁性樹脂層4aに導電粒子2aを埋め込み、図7Dに示すように導電粒子2aを転着させた第1絶縁性樹脂層4aを第1転写型10aから剥離し、第1絶縁性樹脂層4aにUV照射する。この場合、図7Eに示すように、導電粒子2a側から紫外線UVを照射することが好ましい。これにより、導電粒子2aを第1絶縁性樹脂層4aに固定化することができる。しかも、導電粒子2aの下方のUV照射で影になる領域Xの硬化率を、その周囲の領域Yに比べて低くすることができるので、異方性導電接続の際の導電粒子2aの押し込みが容易となる。
【0066】
第1絶縁性樹脂層4aを、光重合性樹脂を用いて形成する場合の第2の方法として、(b1)図7Cのように、第1転写型10a内の導電粒子に第1光重合性樹脂層4aを押圧した後、(b2)図8に示すように、第1転写型10a上の第1光重合性樹脂層4aに、第1転写型10a側から紫外線を照射することにより第1光重合性樹脂層4aを重合して導電粒子が保持された光重合樹脂層を形成し、(b3)導電粒子が保持された光重合性樹脂層を転写型から剥離することにより、導電粒子が転着している光重合樹脂層を形成してもよい。この場合、第1転写型10aとして紫外線透過性のものを使用する。
【0067】
同様にして、工程Dにおいて光重合性樹脂を用いて、第1の方法又は第2の方法により導電粒子2bが転着した第2絶縁性樹脂層4bを得る。
【0068】
第1の方法においても、第2の方法においても、工程Eにおいて第1絶縁性樹脂層4aと第2絶縁性樹脂層4bをそれぞれ半硬化状態で積層して光重合して一体化する場合、工程B及び工程Dにおける紫外線照射による光重合は、光重合性樹脂層が半硬化状態となるように行えばよい。一方、工程Eにおいて別途中間樹脂層を介して第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層を積層一体化する場合、工程B及び工程Dにおける光重合では光重合性樹脂層を完全硬化してもよい。
【0069】
(iv-4)絶縁性樹脂層を熱重合性及び光重合性を有する樹脂から形成する場合
第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bを、熱によっても光によっても重合する熱重合性及び光重合性の樹脂を用いて形成する場合も、上述の熱重合性樹脂又は光重合性樹脂を使用する場合に準じて導電粒子を転着させた絶縁性樹脂層を得ることができる。
【0070】
(v)工程E
(v-1)半硬化状態の絶縁性樹脂層の積層一体化
工程B又は工程Dにおいて、光重合性を有する樹脂を用いて、第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bを半硬化状態に形成した場合、工程Eでは、第1絶縁性樹脂層4aの導電粒子2aの転着面と、第2絶縁性樹脂層4bの導電粒子2bの転着面とを対向させ(図7F)、これらを積層し、紫外線照射することにより積層一体化する(図7G)。こうして得られた積層体から剥離フィルム5a、5bを剥離することにより、図1Aに示した異方性導電フィルム1Aを得ることができる。
【0071】
工程B又は工程Dにおいて、熱重合性を有する樹脂を用いて第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bを半硬化状態に形成した場合も同様に、これらを積層し、加熱重合することにより一体化する。
【0072】
(v-2)完全硬化状態の絶縁性樹脂層の積層一体化
工程B又は工程Dにおいて、光重合性を有する樹脂を用いて、第1絶縁性樹脂層4a及び第2絶縁性樹脂層4bを完全硬化状態に形成した場合、工程Eでは、図9Aに示すように、第1絶縁性樹脂層4aと第2絶縁性樹脂層4bの間に、中間樹脂層として絶縁性接着剤層6を挟むことでこれらを一体化し、異方性導電フィルムを得てもよい。この場合、絶縁性接着剤層6は、液状接着性樹脂の塗布、フィルム状接着性樹脂の貼着等により設けることができる。
【0073】
また、絶縁性接着剤層6は、第1絶縁性樹脂層4a又は第2絶縁性樹脂層4bと同種の樹脂から形成してもよい。これにより、図9Bに示すように、単層の絶縁性樹脂層中に第1導電粒子層4aと第2導電粒子層4bを設け、その第1導電粒子層4aのフィルム面方向の導電粒子2aの中心線Paと第2導電粒子層4bのフィルム面方向の導電粒子2bの中心線Pbとの距離Sを広げることができる。なお、過度に距離Sを広げると、異方性導電接続時の絶縁性樹脂の流動により、導電粒子が流れやすくなるため、距離Sは、導電粒子2a、2bの平均粒子径の好ましくは5倍以内、より好ましくは3倍以内である。
【0074】
また、工程Eにおいて、図10Aに示すように、中間樹脂層として、重合開始剤を含有しない樹脂からなる応力緩和層7を設け、図10Bに示すように積層一体化してもよい。
【0075】
なお、絶縁性樹脂層4を、第1導電粒子層3aを保持する第1絶縁性樹脂層4a、第2導電粒子層3bを保持する第2絶縁性樹脂層4b及びこれらに挟まれた中間樹脂層8(絶縁性接着剤層、応力緩和層等)の多層構成とする場合に、転写型の凹みの深さ、第1絶縁性樹脂層4aの層厚、第2絶縁性樹脂層4bの層厚等を適宜調整することにより、図11に示すように、第1導電粒子層4aを形成する導電粒子2aを、第1絶縁性樹脂層4aから突出させてもよく、同様に、第2導電粒子層3bを形成する導電粒子2bを、第2絶縁性樹脂層4bから突出させてもよい。さらに、第1絶縁性樹脂層4aから突出する第1導電粒子層3aの突出量や、第2絶縁性樹脂層4bから突出する第2導電粒子層3bの突出量を適宜調整することにより、図12に示すように、第1導電粒子層4aの導電粒子2aと、第2導電粒子層4bの導電粒子2bとが略同一面にある異方性導電フィルムを形成してもよい。
【0076】
<<接続構造体>>
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。
【0077】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、例えば、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムを仮貼し(絶縁性バインダ層が形成されている場合には絶縁性バインダ層側から仮貼りし)、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、ICチップ等の第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から熱圧着することが、接続信頼性を高める点から好ましい。また、光硬化を利用して接続することもできる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0079】
実施例1~7、比較例1~4
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP-50)60質量部、エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(潜在性硬化剤)(三新化学工業(株)、SI-60L)2質量部を含有する熱重合性の絶縁性樹脂を調製し、これをフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み20μmの粘着性の絶縁性樹脂層を形成した。
【0080】
一方、表1に示す配列パターンに対応した凸部の配列パターンを有する金型を作成し、その金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させたものを流し込み、冷やして固めることで、凹部が表1に示す配列パターンの樹脂製の転写型を作製した。この転写型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、AUL704、粒径4μm)を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、熱硬化させた。そして、転写型から絶縁性樹脂層を剥離し、導電粒子を転着した第1絶縁性樹脂層を作製した。また、同様にして導電粒子を転着した第2絶縁性樹脂層を作製した。
【0081】
第1絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面と第2絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面を対向させ、これらを加熱圧着することで異方性導電フィルムを製造した。この場合、実施例3では、第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層の間に、異方性導電接続時の応力緩和作用を有する中間樹脂層として、厚さ6μmの絶縁性樹脂フィルム(フェノキシ樹脂60質量%、エポキシ樹脂40質量%)を介在させた。また、実施例4では、実施例1の転写型の凹部を浅くしたもの(転写型の深さが粒子径の0.4倍)を使用した以外は実施例1と同様にして異方性導電フィルムを製造した。
【0082】
<評価>
実施例1~7及び比較例1~4の異方性導電フィルムについて、(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)ショート発生率をそれぞれ次のように評価した。結果を表1に示す。
【0083】
(a)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、初期導通および導通信頼性の評価用ICとガラス基板の間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して各評価用接続物を得、この評価用接続物の導通抵抗を測定した。ここで、評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。
【0084】
初期導通および導通信頼性の評価用IC
外径 0.7×20mm
厚み 0.2mm
Bump仕様 金メッキ、高さ12μm、サイズ15×100μm、バンプ間ギャップ15μm
【0085】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0086】
(b)導通信頼性
(a)の評価用ICと各実施例及び比較例の異方性導電フィルムとの評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、(a)と同様に測定した。なお、この導通抵抗が5Ω以上であると、接続した電子部品の実用的な導通安定性の点から好ましくない。
【0087】
(c)ショート発生率
ショート発生率の評価用ICとして次のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))を用意した。
外径 1.5×13mm
厚み 0.5mm
Bump仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、Bump間Gap7.5μm
【0088】
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、(a)と同様の接続条件で加熱加圧して接続物を得、その接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。ショート発生率は、実用上、100ppm以下であることが望ましい。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から分かるように、実施例1~7の異方性導電フィルムは、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率の全ての評価項目について実用上好ましい結果を示した。特に、実施例3は、異方性導電接続時の応力緩和作用を有する中間樹脂層を設けているので、第1導電粒子層の中心線と第2導電粒子層の中心線との厚み方向の距離が他の実施例や比較例に比して離れているが、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率のいずれも好ましい結果であった。また実施例4から、第1導電粒子層の中心線と第2導電粒子層の中心線との厚み方向の距離Sが導電粒子径の1/5で、この距離Sが、他の実施例や比較例に比して小さいものでも初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率のいずれも好ましい結果が得られ、実用上問題ないことが分かった。
【0091】
一方、比較例1、2は、単層の導電粒子層から形成されており、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率のいずれも実用上好ましい結果を示している。しかしながら、比較例1、2では、製造時に導電粒子を転写型から絶縁性樹脂層に転写するときに、凹部が密に配置された転写型を使用することが必要となり、所期の配列に欠陥無く導電粒子を配置することが難しい。したがって、本発明の実施例によれば、比較例1、2と導電粒子が同等に配置されている異方性導電フィルムを、凹部が粗に配置された転写型を使用して簡便に製造できることが確認できた。
【0092】
また、比較例3、4は、第1導電粒子層、第2導電粒子層のそれぞれにおいて、導電粒子間距離が狭く、導電粒子が密に詰まり過ぎた状態であるため、ショート発生率が高くなっている。
【0093】
なお、実施例1~7において、熱重合性の絶縁性樹脂に代えて、フェノキシ樹脂、アクリレート樹脂及び光ラジカル重合開始剤を含む光重合性の絶縁性樹脂を使用した場合にも、熱重合性の絶縁性樹脂を使用した場合と同様に、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率のいずれも実用上好ましい結果となった。
【0094】
実施例8~13、比較例5~9
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP-50)60質量部、エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、及び熱カチオン重合開始剤(潜在性硬化剤)(三新化学工業(株)、SI-60L)2質量部を含有する熱重合性の絶縁性樹脂を調製し、これをフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み20μmの粘着性の絶縁性樹脂層を形成した。
【0095】
一方、二次元の面心格子配列パターンに対応した凸部の配列パターンを有する金型を作成し、その金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させたものを流し込み、冷やして固めることで、凹部が二次元の面心格子配列パターンの樹脂製の転写型を作製した。この転写型の凹部に、表2に示す平均粒子径と粒子硬さとを有する金メッキ導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、熱硬化させた。そして、転写型から絶縁性樹脂層を剥離し、導電粒子を転着した第1絶縁性樹脂層を作製した。また、同様にして導電粒子を転着した第2絶縁性樹脂層を作製した。
【0096】
第1絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面と第2絶縁性樹脂層の導電粒子の転着面を対向させ、これらを加熱圧着することで異方性導電フィルムを製造した。
【0097】
ただし、比較例5~8については、第1導電粒子層の導電粒子を単分散(ランダム)又は面心格子配列とし、第2導電粒子層に相当する層には、導電粒子を含有させず、絶縁性接着層とした。比較例9については、第1及び第2導電粒子層における導電粒子を単分散とした。
【0098】
なお、表2において平均粒子径と粒子硬さで特定されている金メッキ導電粒子は以下の通りに作製して得たものを用いた。
【0099】
なお、表2において平均粒子径と粒子硬さで特定されている導電粒子としては、以下に示すように作成した樹脂コアを用いて作製して得たものを用いた。
【0100】
<樹脂コアの作製>
ジビニルベンゼン、スチレン、ブチルメタクリレートの混合比を調整した溶液に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを投入して高速で均一攪拌しながら加熱を行い、重合反応を行うことにより微粒子分散液を得た。前記微粒子分散液をろ過し減圧乾燥することにより微粒子の凝集体であるブロック体を得た。更に、前記ブロック体を粉砕・分級することにより、樹脂コアとして平均粒子径3、4又は5μmのジビニルベンゼン系樹脂粒子を得た。粒子の硬さはジビニルベンゼン、スチレン、ブチルメタクリレートの混合比を調整して行った。
【0101】
<導電粒子の作成>
次に、得られたジビニルベンゼン系樹脂粒子(5g)に、パラジウム触媒を浸漬法により坦持させた。次いで、この樹脂粒子に対し、硫酸ニッケル六水和物、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン及び硝酸タリウムから調製された無電解ニッケルメッキ液(pH12、メッキ液温50℃)を用いて無電解ニッケルメッキを行い、表面金属層としてニッケルメッキ層を有するニッケル被覆樹脂粒子を作製した。
【0102】
続いて、このニッケル被覆樹脂粒子(12g)を、塩化金酸ナトリウム10gをイオン交換水1000mLに溶解させた溶液に混合して水性懸濁液を調整した。得られた水性懸濁液に、チオ硫酸アンモニウム15g、亜硫酸アンモニウム80g、及びリン酸水素アンモニウム40gを投入することにより金メッキ浴を調整した。得られた金メッキ浴にヒドロキシルアミン4gを投入後、アンモニアを用いて金メッキ浴のpHを9に調整し、そして浴温を60℃に15~20分程度維持することにより、以下のようにニッケルメッキ層の表面に金メッキ層が形成された導電粒子を作製した。
【0103】
(イ)平均粒子径3μm、粒子硬さ200kgf/mm2
(ロ)平均粒子径3μm、粒子硬さ400kgf/mm2
(ハ)平均粒子径3μm、粒子硬さ500kgf/mm2
(ニ)平均粒子径4μm、粒子硬さ200kgf/mm2
(ホ)平均粒子径5μm、粒子硬さ50kgf/mm2
(ヘ)平均粒子径5μm、粒子硬さ200kgf/mm2
(ト)平均粒子径5μm、粒子硬さ300kgf/mm2
【0104】
<評価>
実施例8~13及び比較例5~9の異方性導電フィルムについて、(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)ショート発生率をそれぞれ次のように評価した。追加的に(d)バンプの圧痕状態を観察し評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(a)初期導通抵抗
各実施例又は比較例の異方性導電フィルムを、初期導通および導通信頼性の評価用ICとガラス基板の間に挟み、加熱加圧(170℃、60MPa、10秒)して各評価用接続物を得、この評価用接続物の導通抵抗を測定した。導通抵抗が5Ω未満である場合を非常に良好「A」と評価し、5Ω以上10Ω未満である場合を良好「B」と評価し、10Ω以上である場合を不良「C」と評価した。なお、評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。
【0106】
初期導通および導通信頼性の評価用IC
外径: 1.8×20mm
厚み: 0.5mm
Bump仕様: 金メッキ、高さ14又は15μm、サイズ30×85μm
(なお、バンプ高さの「14又は15μm」は、一つのバンプ中で1μmの高低差があることを示している。高さ14μmの部分をバンプ凹部とし、高さ15μmの部分をバンプ凸部とした。)
【0107】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0108】
(b)導通信頼性
(a)の評価用ICと各実施例又は比較例の異方性導電フィルムとの評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、(a)と同様に測定した。導通抵抗が10Ω未満である場合、導通信頼性が非常に良好「A」と評価し、10Ω以上20Ω未満である場合を良好「B」と評価し、20Ω以上である場合を不良「C」と評価した。
【0109】
(c)ショート発生率
ショート発生率の評価用ICとして次のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))を用意した。
外径: 1.5×13mm
厚み: 0.5mm
Bump仕様: 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、Bumpスペース10μm、Bump間Gap7.5μm、ギャップ数16セット(1セット当たり10カ所)
【0110】
ガラス基板
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0111】
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、加熱加圧(170℃、60MPa、10秒)して各評価用接続物を得、この評価用接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。ショート発生率が50ppm未満である場合を非常に良好「A」と評価し、50ppm以上250ppm未満である場合を良好「B」と評価し、250ppm以上である場合を不良「C」と評価した。
【0112】
(d)バンプの圧痕状態
初期導通抵抗評価で使用した評価用接続物について、ガラス基板側からバンプの圧痕を倍率20倍の光学顕微鏡で10個のバンプを観察し、観察された圧痕の数が10箇所以上である場合を非常に良好「A」と評価し、8又は9個の圧痕が観察された場合を良好「B」と評価し、観察された圧痕が7個以下の場合を不良「C」と評価した。バンプ凸部と凹部のいずれかがA又はB評価であれば実用上問題はないと評価できる。
【0113】
【表2】
【0114】
実施例8~13、比較例5~9は、導電粒子の粒径と粒子硬さと、評価結果との関係について検討したものである。
【0115】
表2から分かるように、実施例8~13の異方性導電フィルムは、粒子間距離が平均粒子径の2倍以上あり、しかも導電粒子の粒径と粒子硬さのバランスがよいため、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率、バンプの圧痕状態の全ての評価項目について実用上良好な結果を示した。なお、実施例11~13では、バンプ凹部の圧痕状態はC評価であったが、バンプ凸部の圧痕状態がB評価であったため、実用上問題なかった。
【0116】
それに対し、比較例5~8の異方性導電フィルムの場合、実施例と異なり、第2導電粒子層に相当する層は、導電粒子を含有していない絶縁性樹脂層となっていた。
【0117】
また、比較例5の異方性導電フィルムの場合、導電粒子の平均粒子径が5μmと比較的大きく、粒子個数密度が60000個/mm2と比較的高く、しかもランダムに分散させていたので、ショートの発生率がC評価となった。反対に比較例7の異方性導電フィルムの場合、粒子個数密度が60000個/mm2と比較的高く、しかもランダムに分散されていたが、平均粒子径が3μmと比較的小径であったため、バンプの凹凸をキャンセルすることができず、導通信頼性がC評価となった。
【0118】
比較例6の異方性導電フィルムの場合、導電粒子を面心格子配列させたが、粒子間距離平均粒子径が5μmと比較的大きく、しかも粒子硬さが50kgf/mm2と比較的柔らか過ぎるため、圧痕状態がバンプ凸部・凹部ともC評価となり、凹凸のあるバンプに十分に対応できていなかった。反対に比較例8の異方性導電フィルムの場合、導電粒子の平均粒子粒が3μmと比較的小径であり、しかも粒子硬さが500kgf/mm2と比較的硬かったため、バンプ凸部での圧痕状態がA評価であったが、導通信頼性がC評価となった。これは粒子径が小さすぎるために、特にバンプの凹部での接続が保たれなくなり、抵抗値が上昇したものと考えられる。
【0119】
比較例9の異方性導電フィルムの場合、第1導電粒子層と第2導電粒子層とが積層されているものの、いずれの層もランダム配置であり、導電粒子の粒子個数密度がそれぞれ30000個/mm2であったため、ショート発生率がC評価となった。これは、導電粒子同士の接触が発生しやすい状況になったためと考えられる。
【0120】
なお、実施例8~13において、熱重合性の絶縁性樹脂に代えて、フェノキシ樹脂、アクリレート樹脂及び光ラジカル重合開始剤を含む光重合性の絶縁性樹脂を使用した場合にも、熱重合性の絶縁性樹脂を使用した場合と同様に、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率、バンプの圧痕状態の全ての評価項目についていずれも実用上問題のない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップなどの電子部品の配線基板への異方性導電接続に有用である。電子部品の配線は狭小化が進んでおり、本発明は、狭小化した電子部品を異方性導電接続する場合に特に有用となる。
【符号の説明】
【0122】
1A、1B、1C、1D、1X 異方性導電フィルム
2a、2b 導電粒子
3a 第1導電粒子層
3b 第2導電粒子層
4 絶縁性樹脂層
4a 第1絶縁性樹脂層
4b 第2絶縁性樹脂層
5a 剥離フィルム
6 絶縁性接着剤層
7 応力緩和層
8 中間樹脂層
10a 転写型
11 凹部
20 電子部品
21 端子
22 電子部品
23 端子
Da 第1導電粒子層における導電粒子の平均粒子径
Db 第2導電粒子層における導電粒子の平均粒子径
La 第1導電粒子層における導電粒子の最近接距離
Lb 第2導電粒子層における導電粒子の最近接距離
Lc 異方性導電フィルムの平面視における導電粒子の最近接距離
Pa 第1導電粒子層における導電粒子の中心線
Pb 第2導電粒子層における導電粒子の中心線
S 第1導電粒子層の導電粒子の中心線と第2導電粒子層の導電粒子の中心線との距

z フィルム厚方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12