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特開2022-68167固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子
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  • 特開-固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068167
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20220426BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220426BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C01B21/064 M
B24D3/00 320B
B24D3/00 330E
B24D3/00 340
B24D3/06 A
B24D3/00 330D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010010
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020116404の分割
【原出願日】2013-09-17
(31)【優先権主張番号】61/709,250
(32)【優先日】2012-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516053969
【氏名又は名称】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ドゥム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工業用途での性能を向上させるため、粗い表面にするための超研磨立方晶窒化ホウ素粒子とその製造方法を提供すること。
【解決手段】立方晶窒化ホウ素粒子は、不規則な表面を有し、その粒子の表面粗さは約0.95以下である。固有の表面形態を有する超研磨立方晶窒化ホウ素粒子の製造方法は、複数の研磨粒子を提供するステップと;反応性金属粉末を前記研磨粒子と混合するステップと;混合した成分を圧縮してペレットにするステップと;前記ペレットを加熱するステップと;改変された研磨粒子を回収するステップを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則な表面を有する立方晶窒化ホウ素粒子であって、前記粒子の表面粗さが約0.95未満である粒子。
【請求項2】
前記粒子の表面粗さが約0.50~約0.80である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子の真球度が約0.70未満である、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
前記粒子の表面積が、同じ粒径分布を有する従来の立方晶窒化ホウ素粒子よりも約20%大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子のサイズが約0.1~約500μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項6】
前記粒子が1つ以上のスパイクを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項7】
前記粒子が1つ以上のピットを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項8】
前記ピットの深さが、前記粒子の最大長の約5%~約70%の範囲である、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
前記ピットの深さが、前記粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である、請求項8に記載の粒子。
【請求項10】
前記粒子が金属被覆を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項11】
真球度が約0.70未満である立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項12】
前記粒子の真球度が約0.2~約0.5である、請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
前記粒子の真球度が約0.25~約0.4である、請求項11に記載の粒子。
【請求項14】
下記のステップを含む、固有の表面形態を有する研磨粒子の製造方法:
複数の研磨粒子を提供するステップ;
反応性金属粉末を前記研磨粒子と混合するステップ;
混合した成分を圧縮してペレットにするステップ;
前記ペレットを加熱するステップ;及び
改質された研磨粒子を回収するステップ。
【請求項15】
前記研磨粒子が立方晶窒化ホウ素粒子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記立方晶窒化ホウ素粒子が単結晶CBN粒子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応性金属粉末がアルミニウムである、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱ステップが、金属で被覆された前記粒子を、少なくとも約1200℃に加熱することを含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
金属粉末と研磨粒子の比が1:10~10:1である、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記改質された研磨粒子が、前記方法で処理されていない従来の研磨粒子と比べて、重量損失の約5%を超える平均重量損失を有する、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2012年10月3日に「固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子」という発明の名称で出願された仮出願第61/709,250号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、研磨材による研削、ホーニング、仕上げ、研磨、及びその他の用途に用いられる硬い粒子に関する。特に、本発明は、固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子に関する。本発明の立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子は、工業用途での性能を向上させるために粗い表面を有する。
【背景技術】
【0003】
研磨粒子は、研削、ホーニング、仕上げ、研磨、及びその他の表面仕上げの用途など、多くの用途で使用されている。一般的な研磨粒子は、アルミニウム酸化物、炭化ケイ素、炭化ホウ素、及び炭化タングステンを含む。これらの粒子は、従来型研磨材と呼ぶことができ、モース硬さが9.0以下である。ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素は超研磨粒子と呼ばれ、モース硬さは9.5~10である。ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素などの超研磨粒子を研削及び仕上げの用途に使用すると、工具は従来型研磨材よりもはるかに長寿命であり、しかも摩耗率が小さいため、工具を交換する必要が生じるようになる期間よりも長期にわたって、被加工物の公差が維持される。立方晶窒化ホウ素研磨材は、鉄材料の研削又は仕上げに特に有利である。なぜなら、ダイヤモンドは立方晶窒化ホウ素よりも硬いにもかかわらず、ダイヤモンドは高温で鉄及びニッケルと有害に反応し、性能の顕著な低下が起こるからである。しかし、立方晶窒化ホウ素は、鉄又はニッケルとは反応しないため、研削によって発生する高温中でも研磨性能が維持される。
【0004】
超研磨材工具は従来型研磨材を用いた工具よりも性能が優れているが、最適な性能は、工具が研磨粒子をいかにうまく保持するかと、粒子が被加工物材料といかにうまく相互作用するかによる。工具の性能の重要な一部は、研磨粒子が工具といかにうまく結合しているかによる。超研磨材工具を作製するのに多くのタイプの結合を利用できる。そのような結合として、金属、ガラス、及び樹脂タイプの結合が挙げられる。工具中の研磨材の結合又は保持は、結合材料との物理的付着及び/又は化学的付着を通じて実現できる。物理的付着の程度は、研磨粒子の粗さの影響を受ける可能性がある。滑らかな表面を有し化学的に結合しない粒子は、工具中に十分に保持されるには、結合材料の中にしっかりと包まれている必要がある。この場合、包囲している結合材料が摩耗して取り除かれ、研磨粒子がより多く露出していくにつれて、結合が最終的に研磨材を保持できなくなり、研磨材は工具の外に引き出されることになる。この引き出し現象は、研磨材が有効寿命に達するよりも遥か前に起こることがしばしばある。この効果により、工具がある用途で十分な価値を発揮することが制限される。より粗い形態を有する同様の粒子は、工具中により長く保持され、工具の有効寿命が延びるであろう。すると、加工コストが低下し、加工される部品の品質が向上するであろう。表面が粗いCBN結晶を用いることの別の利点は、露出している粗い面が工具の自由切削能力を向上させることで、工具がより少ないエネルギーで同じ加工量を得られることであると考えられる。また、研磨材上の粗さによってミクロな特徴が決まることにより、被加工物の表面粗さが、標準的な研磨材を用いて得られた表面粗
さよりも少なくなる可能性がある。
【0005】
メッシュサイズのCBN粒子は滑らかなファセット面を有する傾向があり、より細かいミクロンサイズのCBN粒子は滑らかな表面を示す。そのため、金属結合及び樹脂結合の工具においてCBN研磨材を用いるとき、引き出しは一般的な現象である。研磨工具中のCBNの保持を改善する一般的な方法は、研磨材に金属被覆を付着させることによる。すると、被覆の表面そのものが、よりよい物理的保持のためのより粗い表面を提供するか、被覆によって結合材料へのよりよい化学的付着が可能になる。粗さを与える被覆の一例は、無電解ニッケル被覆である。このタイプのニッケル被覆は、通常、ニッケルが、被覆される研磨粒子の50~70重量%となるように研磨粒子に適用される。ニッケル被覆はより粗いため、物理的保持を向上させるが、ニッケルそのものが研磨材に化学的に結合しているわけではなく、ニッケルは粒子の周囲のシェルとなっているだけである。したがって、研磨材が十分に使用されたと認識される前に、結合したニッケルが研磨材から抜け落ちる可能性が残されている。ニッケル被覆を有する研磨材は、樹脂結合の工具で一般に用いられている。
【0006】
保持向上のために用いる被覆の別の一例は、チタン被覆である。無電解ニッケル被覆とは異なり、チタン被覆は、化学蒸着法を利用して研磨材に適用される。この場合、チタンは粒子が化学的に結合する。しかし、被覆が粒子に化学的に結合していても、薄いチタン被覆が研磨材の表面に粗さを余分に与えることはない。チタン被覆は、金属結合の工具で研磨材を用いるとき、化学結合を改善する。化学結合が十分でない場合には、やはり引き出しが起こる可能性がある。
【0007】
これまで、CBN粒子の粗さを増加するのに用いられてきた方法は、金属被覆と、腐食性又はアルカリ性の化学薬品を用いた表面のエッチングに限られていた。CBNと強く反応して粒子の表面に深いピットとスパイクを形成する、ある種の金属を用いる新しい方法が開発された。これらの素性は、腐食性化学薬品を用いたエッチングによって形成される素性とは異なっており、新しいタイプのCBN研磨材を提供し、既存のCBNを超える性能の改善をもたらすことができる。
【0008】
上記のことからわかるように、工業用途での性能を向上させることを目的として粗い表面にするための超研磨材と、超研磨材を製造する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの特徴では、立方晶窒化ホウ素粒子が不規則な表面を有していて、粒子の表面粗さは約0.95未満である。
【0010】
本発明の別の特徴では、固有の表面形態を有する研磨粒子を製造する方法は、複数の研磨粒子を提供するステップと;反応性金属粉末を前記研磨粒子と混合するステップと;混合した成分を圧縮してペレットにするステップと;前記ペレットを加熱するステップと;改質された研磨粒子を回収するステップを含むことができる。
【0011】
本発明のさらに別の特徴では、複数の立方晶窒化ホウ素粒子が不規則な表面を有することができ、前記粒子の平均表面粗さは約0.95未満である。
【0012】
本発明のさらに別の特徴では、複数の立方晶窒化ホウ素粒子は不規則な表面を有することができ、前記粒子の平均真球度は約0.70未満である。
【0013】
本発明の上記の目的、特徴、及び利点と、他の目的、特徴、及び利点は、本発明の1つ以上の実施態様を図面、明細書、以下請求項において説明する以下の開示から理解されよ
う。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく、又は本発明のいかなる利点も犠牲にすることなく、方法のバリエーションが明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施態様に従い、アルミニウム粉末とともに1400℃で1時間にわたって加熱したCBN粉末を、X線回折によって分析した結果を示す。この分析結果には窒化アルミニウムのピークが認められ、固体状態の反応が起こったことを示している。
図2a】別の実施態様に従い、従来の8~15μmのCBNの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図2b】別の実施態様に従い、アルミニウム粉末プロセスを用いて改質した、8~15μmのCBNの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3a】別の実施態様に従い、従来の2~4μmのCBNの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3b】別の実施態様に従い、アルミニウム粉末プロセスを用いて改質した、2~4μmのCBNの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図4】一実施形態に従い、改質された立方晶窒化ホウ素粒子を製造する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法、系、材料を説明する前に、開示内容が、ここに説明する特定の方法、系、材料に限定されることはなく、別のものが可能であることを理解されたい。説明で用いる用語は、特定の形態又は実施態様を説明することだけが目的であり、本発明の範囲を制限する意図はないことも理解されたい。例えばこの明細書と添付の請求項では、文脈から明らかに異なることがわかる場合を除き、単数形の「1つの」、「その」には複数形が含まれる。それに加え、この明細書では、「備える(有する)」という表現は、「含むが、それらに限定されない」ことを意味するものとする。特に断わらない限り、この明細書で用いるあらゆる科学・技術用語は、当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。
【0016】
特に断わらない限り、この明細書と請求項で用いる成分、特性(例えばサイズ、重量、反応条件など)は、あらゆる場合に「約」という用語で修飾されていることを理解されたい。したがって、明細書の以下の説明と添付の請求項に現われる数値パラメータは、逆のことが述べられているのでなければ、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化する可能性のある近似値である。各数値パラメータは、最小限、そして請求項の範囲に等価性の原理の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも、報告されている有効数字に照らすとともに、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。
【0017】
この明細書では、「約」という用語は、表記されている数値の±10%を意味する。したがって約50%は、45%~55%の範囲を意味する。
【0018】
(定義)
本発明の明細書と請求項では、次の用語を以下に示す定義に従って用いる。
【0019】
この明細書では、「研磨材」という用語は、それよりも軟らかい材料を研磨して除去するのに用いる、あらゆる材料を意味する。
【0020】
この明細書では、「材料除去」という用語は、所定の時間で除去された被加工物の重量(ミリグラム、グラムなどの単位で表わす)を意味する。
【0021】
この明細書では、「材料除去速度」という用語は、除去された材料を時間で割った値(mg/分、g/時などの単位で表わす)を意味する。
【0022】
この明細書では、「粒子」という用語は、離散した物体を意味する。結晶又は粒も粒子と考えられる。
【0023】
この明細書では、「ピット」という用語は、粒子の表面にあるくぼみ又は割れ目を意味し、それは、二次元画像の表面にあるくぼみ又は割れ目、あるいは物体にあるくぼみ又は割れ目である。
【0024】
この明細書では、「スパイク」という用語は、粒子の本体から外側に突き出した鋭い突起を意味し、それは、二次元画像の本体から外側に突き出した鋭い突起、又は物体から外側に突き出した鋭い突起である。
【0025】
この明細書では、「超研磨材」という用語は、優れた硬度と耐摩耗性を有する研磨材を意味する。CBN及び立方晶窒化ホウ素は超研磨材の例であり、7500を超えるヌープ圧痕硬さを有する。
【0026】
この明細書では、「重量損失」という用語は、本発明の改質処理を実施する前の一群の粒子の重量と、本発明の改質処理を実施した後の同じ群のCBN粒子又は研磨粒子の重量の差を意味する。
【0027】
この明細書では、「被加工物」という用語は、研削、研磨、ラッピング、又は他の材料除去法によって材料を除去される部品又は物体を意味する。
【0028】
この明細書では、「周囲長」という用語は、閉鎖面図形の境界、又は二次元画像の全ての境界の合計を意味する。
【0029】
この明細書では、「凸周囲長」という用語は、フェレー接点をつないだ線を意味する。なおフェレーとは、二次元の画像又は物体のそれぞれの側の境界線に接触する2本の平行な接線の間の距離である。
【0030】
この明細書では、「表面粗さ」という用語は、二次元画像の測定値であり、CLEMEX画像解析装置であるClemex Visionの利用者ガイドPE3.5(C)2001に記載されているように、物体の縁部又は境界におけるピット及びスパイクの程度又は度合いを定量化した値を意味する。表面粗さは、凸周囲長を周囲長で割った比によって決まる。
表面粗さ=凸周囲長/周囲長
【0031】
ピットとスパイクの程度が大きくなると、表面粗さの因子が小さくなることに注意されたい。
【0032】
この明細書では、「真球度」という用語は、二次元の画像又は物体の閉鎖面積(4πA)を周囲長の二条(p)で割った値を意味する。
真球度=4πA/p
【0033】
この明細書では、「表面積」という用語は、粒子の外面の面積を意味する。複数の粒子、すなわち粉末を用いるときには、比表面積という用語を使用し、粉末1g当たりの表面積として表わす。
【0034】
上に定義した用語は、顕微鏡測定技術を利用した、二次元粒子のプロファイルの測定を意味しているが、その形状は三次元形態に広がっていることに注意することが重要である。当業者には、粒子のサイズと形状の画像自動分析が、粒子の特徴を測定するための信頼
性と再現性がある方法であることが認識されている。ここではCLEMEX画像分析装置を利用したが、データを再現する同様の装置を利用できる。
【0035】
本発明は、固有の表面形態を有する研磨粒子に関する。また、本発明は、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子を改質して、固有の表面形態を有する粗くて不規則な粒子を得る方法が含まれる。CBNの表面を改質するこの方法は、CBNと反応する金属としてアルミニウムを用いる必要がある。高温でCBNがアルミニウムと反応して窒化アルミニウムを形成することが見出された。この反応によってCBNの表面にピットとスパイクが生成すると考えられる。反応が起こった後、窒化アルミニウムを除去し、粗くなったCBN表面を露出させることができる。本発明のCBN粒子は非常に粗い表面を含んでいるため、入り組んだ多数のポケット又はエッチピットがCBNの表面に形成される。この性状により、粒子の表面に、従来からの典型的なCBN粒子の表面に存在するよりも鋭い刃先が多く提供される。本発明のCBN粒子を用いる用途で、工具の性能が向上することが予想される。そうした用途として、精密研削が挙げられ、これは、CBN粒子が、樹脂、金属、又はガラス結合の系のいずれかの中に組み込まれている。本発明のCBN粒子により、ホーニングと超仕上げでの性能向上が期待され、結合材料が樹脂、金属、焼結ガラスのいずれかを含んでいる場合に、特に性能向上が期待される。本発明のCBN粒子は、例えば、その粒子が工具の表面に電着又は電鋳される場合、あるいは、CBN粒子が被覆の中に同時堆積される場合に、工具性能の向上が期待される。
【0036】
本発明の改質法は、他の形態のCBNの改質にも使用できる。他の形態のCBNとしては、例えば単結晶CBNや多結晶CBNであるが、これらに限定されない。本発明は、広い範囲のサイズのCBNに適用され、広い範囲のサイズとは、直径が数百μmからμmまでのサイズの粉末をいう。
【0037】
本発明の一実施態様では、サイズが約100μm未満のCBN粒子を用いる。しかし、サイズが約100ミクロンを超えるCBN粒子も使用できる。一実施態様では、CBN粒子のサイズは約0.1~約500μmの範囲である。使用できるCBN粒子の一例は、Diamond Innnovations社(ワーシントン、オハイオ州、アメリカ合衆国)が製造している立方晶窒化ホウ素粒子で、8~15μmのBMP-Iである。
【0038】
図4に示したように、一実施態様では、固有の表面形態を有する研磨粒子を製造する方法40は、複数の研磨粒子、例えば立方晶窒化ホウ素粒子を提供するステップ40と;反応性金属粉末を前記研磨粒子と混合するステップ42と;混合した成分を圧縮してペレットにするステップ44と;前記ペレットを加熱するステップ46と;改質された研磨粒子を回収するステップ48を含むことができる。立方晶窒化ホウ素粒子は、単結晶cBN粒子であってよい。反応性金属粉末は、例えばアルミニウムであってよい。金属で被覆された粒子の加熱は、少なくとも約1200℃であってよい。金属粉末と研磨材料の比は、例えば1:10~10:1であってよい。方法40によって改質された研磨材料は、この方法で処理されていない従来の研磨材料と比べて、重量損失の約5%を超える平均重量損失を有していてよい。
【0039】
本発明のCBN粒子を製作するには、一様な混合を実現する適切な任意の混合法を用いて、約10~約80重量%のCBN粒子と、約20~約90重量%のアルミニウム粒子を混合する。本発明では、計量されたアルミニウム粒子とCBN粒子をジャーの中に入れて密封し、少なくとも約1時間にわたって、又は約30分間から約1時間にわたって混合装置、例えばTurbula(登録商標)シェイカーミキサー(Glen Mills社、クリフトン、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)の中に入れておく。混合する前に、必要に応じて結合剤をこの混合物に添加してもよい。結合剤は、粒子の表面に潤滑性を与えることで、金属粉末とCBNの間により密な充填とより密な接触を可能にする。結合剤
は、圧縮された物体を、未焼結体として一体に保持するのにも役立つ。
【0040】
次に、この混合物を圧縮してCBN粒子とアルミニウム粒子の密な混合物にする。CBN粒子とアルミニウム粒子が密な混合物を形成し、粒子が互いに非常に密に接触するのであれば、CBN粒子とアルミニウム粒子を圧縮するのにどの方法を利用してもよい。この混合物の圧縮に用いる1つの方法として、プレスの上に設置し、固定した金型セットの中に混合物を入れることであってよい。適切なプレスの一例は、Carver社(ワバシュ、インディアナ州)製のCarver(登録商標)ペレットプレスである。この金型プレスの中で、混合物に約5~約50,000psi、約10,000~約40,000psi、又は約15,000~約30,000psiの圧力が負荷され、ペレットが形成される。混合物をペレットにする方法を教示したが、CBN粒子とアルミニウム粒子の混合物をペレットにする必要はなく、粒子を圧縮して互いに密に接触しているようにするだけでもよい。変形可能な工具を用いた静水圧圧縮成形を利用し、密な接触を得ることもできる。
【0041】
あるいは、この混合物を、例えば高圧圧縮ロール又はブリケット・ロールによって圧縮し、厚さが数mm~数インチの薄いシートにすることもできる。次に、形成されたシートをより小さな区画に切断し、次に説明する処理をさらに行なう。アルミニウム粒子とCBN粒子の混合物を圧縮する別の方法として、この混合物を圧力下で混合して押し出すという方法が挙げられる。CBN粒子とアルミニウム粒子の混合物をペレット化装置によってペレット化すること、又は混合物をタンブリング装置の中で回転させることも、混合物を圧縮するのに使用できる別の方法である。これらの方法によってペレット、ブリック、ブリケット、又はケークのいずれかを形成することができ、それを次に説明するように、さらに処理することができる。
【0042】
アルミニウム粒子とCBN粒子の混合物を圧縮する別の方法として、射出成形、押し出し、容器内での混合物の圧縮、又はテープ成形が挙げられる。あるいは、アルミニウム粒子とCBN粒子が互いに密に接触する限り、イオン注入、スパッタリング、スプレー乾燥、電解被覆、無電解被覆、又は他の適用可能な任意の方法により、個々のCBN粒子を金属粒子で被覆することができる。
【0043】
CBN粒子とアルミニウム粒子の混合物を圧縮した後、ペレット、凝集体、又は他の密な形態であってよい。その圧縮された混合物を、炉の中に入れ、水素雰囲気、真空雰囲気、又は不活性ガス雰囲気の中で、約900℃~約1600℃に加熱する。例えば約1000℃~約1400℃、又は約1100℃~約1200℃の温度を用いることができる。圧縮された混合物は、例えば約5分間~約5時間にわたって加熱することができる。時間として、例えば約30分間~約2時間、又は約1時間~約2時間であってよい。
【0044】
加熱サイクルが完了して粉末を冷却した後、アルミニウム/CBNペレットを通常の酸に溶かすことにより、改質されたCBN粒子を取り出す。使用する酸として、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、及びこれらの所定の組み合わせが挙げられる。これらの酸、又はこれらの組み合わせを、酸と被覆されるCBNの比が(体積で)100:1~1000:1となるように、添加する。次に、この混合物を、例えば約6~約8時間にわたって約100℃~約120℃に加熱する。その後、この溶液を冷却すると、遊離されたCBNが沈殿し、溶液をデカントする。実質的にすべてのアルミニウムが温浸するまで、酸クリーニングと加熱ステップを繰り返す。
【0045】
炉の条件の選択に応じ、金属とCBNの間で、ある程度の反応が起こる。金属粉末がCBNをより多くエッチングするほど、窒化アルミニウムがより多く形成される、CBNによって、より多くの重量が失われる。窒化アルミニウムを完全に溶かすには、より多くの
酸を用いるか、追加の溶解処理が必要となる可能性がある。次に、例えば水の中でCBN粒子を洗浄して酸と残留物を除去する。その後、CBN粒子を、炉の中で、大気中で、マイクロ波乾燥で、又は公知の他の乾燥法で乾燥させる。
【0046】
本発明の一実施態様は、図2bに示した非常に粗い不規則な表面を有するCBN粒子に関する。外見が粗いことに加え、本発明のCBN粒子は、図2aに示した従来のCBN粒子と比べて、固有の性質を有する。粉砕によって造られる従来のCBN粒子には、本発明の改質処理が施されなかった。
【0047】
cBNの一実施態様は、スパイクとピットを含んでよい。スパイクは、いくつかの用途において刃先として機能する。改質されたcBN粒子を、固定された結合系の中で用いるとき、ピット及び/又はスパイクは、粒子を結合系の中に固定するのに役立つ。
【0048】
スパイクの長さとピットの深さは、改変処理パラメータによって異なってよい。粒子の上にあるピットの平均深さは、粒子の最大長の約5%~約70%の範囲である。いくつかの実施態様では、粒子の上にあるピットの深さは、粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である。
【0049】
改質されたcBN粒子は、表面粗さ、真球度、及び材料除去に関し、固有の特徴を示す。一実施態様では、改質されたcBNの表面粗さは、例えば約0.95未満であってよい。別の一実施態様では、cBNの表面粗さは、例えば約0.50~約0.80であってよい。
【0050】
cBNの重量損失と表面積の間には相関が存在する可能性がある。重量損失が35%を超える改質されたcBN粒子の比表面積は、同じ粒径分布を有する従来の立方晶窒化ホウ素粒子と比べて約20%大きい。粒子の比表面積は、改質処理の間の立方晶窒化ホウ素粒子と鉄粒子との反応の程度に直接比例することが認められる。
【0051】
本発明の研磨粒子は、多くの用途において有用であり、その用途には、ラッピング、研削、切削、研磨、ダイシング、焼結研磨材若しくは研磨用圧粉体、ワイヤソーのためのワイヤ、又はホーニングを含む。一般に、粗い表面は、工具又は樹脂結合系の中にCBN粒子を保持することを助けることが予想される。本発明の研磨材を使用すると、金属又は樹脂のマトリックス中における研磨粒子のよりよい保持の提供を助けるため、ワイヤ・ソーの寿命が延びる。また、本発明の研磨材は、より優れた自由切削能力とともに、より大きな材料除去速度を提供することができる。
【0052】
不規則な表面を有しており、平均表面粗さが約0.95未満の複数の立方晶窒化ホウ素粒子の一実施態様は、工具、例えば砥石車、固定された研磨ワイヤ、ホーニング工具、ダイシングブレード、研磨フィルム、化学的機械研磨(CMP)パッドコンディショナー、研磨化合物、複合立方晶窒化ホウ素摩耗被覆に組み込んで用いることができる。
【0053】
ワイヤソーでの利用に関しては、電気めっき、金属焼結、又はポリマー若しくは樹脂結合により、研磨粒子がワイヤに付着されてよい。電気めっきしたワイヤ・ソーは、一般に、単層の研磨材料を含み、同時に堆積させた金属ニッケル層を伴う。ワイヤによっては、金属マトリックス又は樹脂マトリックスの中に研磨粒子を付着させるのに樹脂も用いる。そのためワイヤソーの寿命が延びる。改質された研磨粒子は、材料除去速度を大きくするとともに自由切削能力を向上させることもできる。
【0054】
ワイヤソーを用いて切断される典型的な材料として、ケイ素、サファイヤ、SiC、金属、セラミック、炭素、石英、石、ガラス、複合体、及び花崗岩が挙げられる。
【0055】
本発明の別の一実施態様では、表面が改変された研磨材及び超研磨材を、場合によっては金属、すなわちIVA族、VA族、VIA族から選択した金属又はその合金、あるいは、その金属及び合金の組み合せで被覆することができる。
【実施例0056】
平均サイズが12μmであって8~15μmの単結晶CBN粉末は、平均サイズが3μmであるアルミニウム粉末と混合され、その混合比は、CBN粒子が40重量%、及びアルミニウム粉末が60重量%であった(結合剤なし)。Carver(登録商標)プレスを20,000 psiの圧力で用い、この混合物を圧縮して2cm×0.5cmのペレットにした。このペレットを形成ガス雰囲気中で1時間にわたって1200℃に加熱した。このCBNペレットを放置して冷却した。ペレットが溶け、遊離された粒子がビーカーの底に沈殿するまで、HO:HCl:HNOを4:3:1の割合にした酸混合物でペレットを温浸することにより、CBN粒子をペレットから回収した。脱イオン水を用いてCBN粒子を中和し、回収し、そして乾燥させた。粉末をX線回折によって分析した。その結果を図1に示す。これらの結果から、粉末の中には窒化アルミニウムがいくらか残留していることが認めれれる。そのことから化学反応が実際に起こったことが確認される。回収したCBNのサンプルを走査電子顕微鏡の中に入れ、その粒子の写真を撮影した。図2bは、その粒子を示しており、大きく表面がエッチングされた証拠がはっきりと認められる。比較のため、改質されていない8~15μmのCBN粒子を図2aに示してある。
【実施例0057】
平均サイズが3μmであって2~4μmの単結晶CBN粉末は、平均サイズが3μmであるアルミニウム粉末と混合され、その混合比は、CBN粒子が40重量%、及びアルミニウム粉末がと60重量%であった(結合剤なし)。Carver(登録商標)プレスを20,000 psiの圧力で用い、この混合物を圧縮して2cm×0.5cmのペレットにした。このペレットを形成ガス雰囲気中で1時間にわたって1200℃に加熱した。このCBNペレットを放置して冷却した。ペレットが溶け、遊離された粒子がビーカーの底に沈殿するまで、HO:HCl:HNOを4:3:1の割合にした酸混合物でペレットを温浸することにより、CBN粒子をペレットから回収した。脱イオン水を用いてCBN粒子を中和し、回収し、そして乾燥させた。回収したCBNのサンプルを走査電子顕微鏡の中に入れ、その粒子の写真を撮影した。図3bは、その粒子を示しており、大きく表面がエッチングされた証拠がはっきりと認められる。比較のため、改質されていない2~4μmのCBN粒子を図3aに示してある。
【0058】
(均等)
本発明をいくつかの実施態様に関して説明してきたが、当業者には、開示した発明に関し、上に提示した詳細な説明と矛盾しない多くの代替例、改変、及びバリエーションが可能であることが明らかであろう。また、当業者には、開示したさまざまな実施態様のいくつかの特徴を、開示した他の任意の実施態様又はその代替例の特徴と組み合わせて利用して、この明細書には明示的に説明しなかったが、本発明が組み込まれ、かつ想定する用途又は性能条件にさらによく合致した追加の実施態様を生み出せることも明らかであろう。したがって本発明の精神に含まれるそのような代替例、改変、及びバリエーションはすべて、添付の請求項の範囲に包含されるものとする。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】