(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068216
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】異常検知装置及びシート
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220426BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20220426BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220426BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220426BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220426BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220426BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220426BHJP
A61B 5/18 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
G08B21/24
G08B21/02
A61B5/113
B60N2/90
A61B5/11 110
A61B5/1455
A61B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015517
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2017157347の分割
【原出願日】2017-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
(57)【要約】
【課題】乗員の生体情報を検出することにより乗員の健康状態を監視する異常検出装置において、運転中の異常が発生したか否かの判断精度を向上する。
【解決手段】乗員に接することで、乗員の生体情報の実測値を測定する測定手段と、乗員から得られる情報に基づいて乗員の生体情報の推定値を求める推定手段と、推定値に基づいて、乗員の異常の有無を判断する判断手段と、を備える。また、判断手段は、実測値に基づいて、異常の有無を判断する際の判断条件を補正する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に接することで、乗員の生体情報の実測値を測定する測定手段と、
乗員から得られる情報に基づいて乗員の生体情報の推定値を求める推定手段と、
前記推定値に基づいて、乗員の健康状態の異常の有無を判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、
前記推定値が所定の数値範囲に収まっているか否かによって乗員の健康状態の異常の有無を判断するよう構成され、
前記実測値が前記数値範囲に収まっているか否かを判断するよう構成されており、
前記実測値が前記数値範囲から外れていると判定した場合に、前記数値範囲を狭めることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記実測値に基づいて、前記数値範囲の上限及び下限の少なくとも一方を補正することを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記推定値が前記数値範囲から外れていると前記判断手段が判定した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記数値範囲の上限より高い上閾値、又は前記数値範囲の下限より低い下閾値の少なくとも一方を有し、
前記注意喚起手段は、前記推定値が、前記数値範囲の上限より大きく前記上閾値より小さい又は前記数値範囲の下限より小さく前記下閾値よりも大きい場合は、第1の注意喚起を行い、
前記推定値が前記上閾値以上又は前記下閾値以下の場合は、前記第1の注意喚起よりも強い第2の注意喚起を行うことを特徴とする請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
外部の携帯端末と通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段は、前記注意喚起手段が前記第2の注意喚起を行った場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
乗り物の制御部と通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段は、前記注意喚起手段が第2の注意喚起を行った場合に、乗り物の動作を規制する制御信号を、前記乗り物の制御部へ送信することを特徴とする請求項4又は5に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記判断手段は、所定期間に前記測定手段による測定が行われなかった場合に、前記所定期間よりも前に得られた過去の実測値、複数の過去の実測値の平均値に基づいて前記数値範囲を補正することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記推定手段は、体温、脈拍、血圧、呼吸数、血糖値、脳波の少なくともいずれかを検出する生体センサーによって前記乗員の情報を得ることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項9】
前記生体センサーは、乗員の体表で反射された光又は乗員を透過した光、もしくは乗員の体表面における圧力波又は電磁波を用いて前記乗員の情報を得ることを特徴とする請求項8に記載の異常検知装置。
【請求項10】
前記実測値及び前記推定値の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項11】
前記報知手段は、所定のアプリケーションがインストールされた携帯端末であることを特徴とする請求項10に記載の異常検知装置。
【請求項12】
前記判断手段は、所定のアプリケーションがインストールされた携帯端末であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項13】
着席した乗員と近接する部位に請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置における推定手段が設けられていることを特徴とするシート。
【請求項14】
アームレストを備え、
前記アームレストは、上面に請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置における測定手段を収納可能な収納部を有するとともに、前記収納部を開閉する蓋を備えており、
前記蓋は、前記測定手段を取り出した状態で閉じることが可能であることを特徴とする請求項13に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物に備えられる異常検知装置及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転する運転者の健康状態が悪化した場合、車両の運転に悪影響を及ぼすおそれがあるため、健康状態の悪化を事前に検知して何らかの対策を施すことが望ましい。このような対策として、シートの座面及び背面部に埋め込まれるようにして設けられた非接触式の血流センサーによる脈波等の計測結果に基づいて、血流や血圧等の生体情報を検出推定して運転者の健康状態を把握する技術が知られている(特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-060584号公報
【特許文献2】特開2016-159081号公報
【特許文献3】特開2016-168177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載されたセンサーやアンテナは、いずれもシートの内部に設けられており、乗員に直接触れることなく生体情報を間接的に測定するものとなっている。このため、例えば乗員の服装等によって検出値が異なり、その結果、異常が発生したか否かの判断が変わってくることが考えられる。
すると、例えば、血圧が高めの乗員がシートに着席しても、センサーが血圧を低めに検出してしまい、乗員の異常が放置されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、乗員の生体情報を検出することにより乗員の健康状態を監視する異常検出装置において、運転中の異常が発生したか否かの判断精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、異常検知装置であって、
乗員の状態を測定して実測値を得る測定手段と、
乗員から得られる情報に基づいて乗員の状態を表す推定値を求める推定手段と、
前記推定値に基づいて、乗員の健康状態の異常の有無を判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、
前記推定値が所定の数値範囲に収まっているか否かによって乗員の健康状態の異常の有無を判断するよう構成され、
前記実測値が前記数値範囲に収まっているか否かを判断するよう構成されており、
前記実測値が前記数値範囲から外れていると判定した場合に、前記数値範囲を狭めることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記判断手段は、前記実測値に基づいて、前記数値範囲の上限及び下限の少なくとも一
方を補正することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の異常検知装置であって、
前記推定値が前記数値範囲から外れていると前記判断手段が判定した場合に、乗員に注
意を喚起する注意喚起手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の異常検知装置であって、
前記数値範囲の上限より高い上閾値、又は前記数値範囲の下限より低い下閾値の少なくとも一方を有し、
前記注意喚起手段は、前記推定値が、前記数値範囲の上限より大きく前記上閾値より小さい又は前記数値範囲の下限より小さく前記下閾値よりも大きい場合は、第1の注意喚起を行い、
前記推定値が前記上閾値以上又は前記下閾値以下の場合は、前記第1の注意喚起よりも強い第2の注意喚起を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の異常検知装置であって、
外部の携帯端末と通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段は、前記注意喚起手段が前記第2の注意喚起を行った場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を前記携帯端末へ送信することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の異常検知装置であって、
乗り物の制御部と通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段は、前記注意喚起手段が第2の注意喚起を行った場合に、乗り物の動作を規制する制御信号を、前記乗り物の制御部へ送信することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記判断手段は、所定期間に前記測定手段による測定が行われなかった場合に、前記所定期間よりも前に得られた過去の実測値、複数の過去の実測値の平均値、又は所定の設定値に基づいて前記判断条件を補正することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記推定手段は、体温、脈拍、血圧、呼吸数の少なくともいずれかを検出する生体センサーによって前記乗員の情報を得ることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の異常検知装置であって、
前記生体センサーは、乗員の体表で反射された光又は乗員を透過した光、もしくは乗員の体表面における圧力波又は電磁波を用いて前記乗員の情報を得ることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記実測値及び前記推定値の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の異常検知装置であって、
前記報知手段は、所定のアプリケーションがインストールされた携帯端末であることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記判断手段は、所定のアプリケーションがインストールされた携帯端末であることを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、シートであって、
着席した乗員と近接する部位に請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置における推定手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のシートであって、
アームレストを備え、
前記アームレストは、上面に請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置における測定手段を収納可能な収納部を有するとともに、前記収納部を開閉する蓋を備えており、
前記蓋は、前記測定手段を取り出した状態で閉じることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、測定手段によって得られた生体情報の実測値に基づいて、異常の有無を判断する際の判断条件が補正されるので、実測値と推定値に差ができるような場合であっても、運転中の異常が発生したか否かの判断精度を向上させることが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、比較的簡素な仕組みで数値範囲の補正を行うことができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、数値範囲が狭められることで、その後求められる推定値が数値範囲外となりやすくなるため、より早い段階で異常を検知することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、注意喚起を受けた乗員やその同乗者は、当該乗員が急に体調を崩した場合に備えておくことが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、二段階の注意喚起がなされるため、なされた注意喚起に応じて、乗員の異常の程度を知ることが可能となり、乗員の状態により正確に即した対応が可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、異常が生じた場合に、素早く助けを呼ぶことが可能となる。また、例えば意識が朦朧とする等して、携帯端末を操作することが困難となっても、声さえ出すことが助けを呼ぶことができるため、無事に救助される可能性が高まる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、異常が発生し、かつ、乗員がアクセルを踏み込んでしまっている場合等であっても、大きな事故が生じるのを抑制することが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、最新の実測値が得られなくても、数値範囲や閾値を実態に近いものに補正することが可能となる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、体温、脈拍、血圧、呼吸数は基本的な生体情報であり、これらのいずれかを測定すれば、乗員の健康状態を比較的正確に掴むことが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、生体センサーは、乗員と接する必要が無くなるため、比較的自由な位置に設けることが可能となる。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、異常がない場合であっても、現状の生体情報を確認することが可能となる。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、画像の表示、音声、振動等、様々な態様で報知を行うことが可能となる。また、乗員の所持する携帯端末を利用することも可能となる。
【0030】
請求項12に記載の発明によれば、市販のスマートフォン等を利用できるので、異常検知装置の製造コストを低減することが可能となる。また、乗員の所持する携帯端末を利用することも可能となる。また、携帯端末は表示機能、音声出力機能、振動機能等を有していることが多いため、報知手段としても利用可能となる。
【0031】
請求項13に記載の発明によれば、推定手段と乗員とが近づくため、推定手段の測定精度を向上させることが可能となる。
【0032】
請求項14に記載の発明によれば、閉じられた蓋の上に腕を置いた楽な状態で測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る異常検知装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】
図1の異常検知装置を備えたシートの斜視図である。
【
図3】
図1の異常検知装置を備えたシート及び乗り物用ドアの斜視図である。
【
図4】
図1の異常検知装置を備えたシートの側面図である。
【
図5】
図1の異常検知装置における異常有無の判断を表す概念図である。
【
図6】
図1の異常検知装置における判断条件の補正を表す概念図である。
【
図7】同実施形態の変形例に係る異常検知装置の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
まず、本発明の実施形態に係る異常検知装置の概略構成について説明する。
図1は異常検知装置のブロック図、
図2はこの異常検知装置10を備えたシート100の斜視図、
図3はこの異常検知装置10を備えた乗り物用ドア200及びシート100の斜視図、
図4はこの異常検知装置10を備えたシート100の側面図である。
なお、
図2には、乗り物用ドアとして乗用車のドアを例示したが、本発明は、バスやトラック等の他の自動車にも適用可能であることは勿論、鉄道や船舶、航空機等の自動車以外の乗り物にも適用可能である。
【0035】
本実施形態に係る異常検知装置10は、乗り物に備えられるものであって、乗員の健康状態に異常が生じていないかどうかを監視するためのものである。この異常検知装置10は、
図1に示したように、第一測定部1、第二測定部2、報知部3、装置本体4等を備えて構成されている。
これらは、有線又は無線で通信可能に接続されている。有線接続とする場合には、乗り物に配設されたワイヤーハーネスを利用してもよいし、専用の配線を設けるようにしてもよい。一方、無線接続とする場合には、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用するのが好ましい。
【0036】
第一測定部1は、乗員の体温、脈拍、血圧、呼吸数等のうち少なくともいずれかの生体情報を、乗員と直接接触することにより測定するものである。これらは基本的な生体情報であり、これらのいずれかを測定すれば、乗員の健康状態を比較的正確に掴むことが可能となる。
第一測定部1は、専用の装置としてもよいし、市販のデジタル式の血圧計や電子体温計等に通信機能を搭載したものとしてもよい。また、第一測定部1の形態は、乗り物内に据え付けられるものであってもよいし、指輪型あるいは腕輪型のような、乗り物から物理的に切り離され乗員が身に着けられるものとしてもよい。
なお、脳波や血糖値、心電、血中酸素濃度等、より高度な生体情報を測定するようにしてもよい。
【0037】
また、第一測定部1は、検出した生体情報の実測値を算出(生体情報を数値化)するようになっている。なお、実測値の算出は、後述する装置本体4の制御部41で行うようにしてもよい。
また、第一測定部1は、算出した実測値を装置本体4へ送信するようになっている。
なお、第一測定部1と装置本体4とが無線で接続される場合には、第一測定部1内に内蔵バッテリーを備えるようにするのが好ましい。
【0038】
第一測定部1の設置箇所は、特に限定されるものでは無いが、例えば、
図2,3に示したように、シート100のアームレスト110やドア200のアームレスト210に備えるようにしてもよい。
また、この場合、アームレスト110,210の上面に収納用の収納部110a,210aを設けておくとよい。このようにすれば、第一測定部1(血圧計のカフ等)を使用しないときに収納しておくことで、運転の最中第一測定部1が邪魔になりにくい。
【0039】
また、この場合、収納部110a,210aを開閉する蓋120,220を備えるようにするとよい。こうすることで、第一測定部1の収納時は蓋を閉めておくことで、第一測定部1を使用しないときの乗り物内の見栄えが損なわれなくなる。
更に、この場合、アームレストの側面に第一測定部から延びるケーブル等を通すための溝110b,210b等を設けることにより、第一測定部1を取り出した状態でも蓋を閉じることができるようにするとよい。このようにすれば、閉じられた蓋120,220の上に腕を置いた楽な状態で測定を行うことが可能となる。
【0040】
第二測定部2は、第一測定部1が測定する乗員の状態と同じ種類の状態(第一測定部1が血圧を測定するものである場合には血圧)を、乗員から得られる情報(反射又は透過してきた光や電磁波等)に基づいて間接的に測定するものである。
第二測定部2は、専用の装置として構成してもよいし、市販の生体センサー等を用いたものであってもよい。
【0041】
第二測定部2は、装置本体4から制御信号を受信したことに基づいて光や圧力波(音波や電磁波)、振動等を乗員の方向に向けて出力するようになっている。ここで、電磁波とは、100MHz程度の電波やマイクロ波を始め、赤外光、可視光、紫外光、X線等を含む広義の電磁波を意味しており、人体に悪影響を及ぼさない範囲で好適な電磁波が使用される。
また、第二測定部2は、乗員の体表で反射した、あるいは乗員を透過した光や圧力波等を検出するようになっている。このため、第二測定部2は、乗員と接する必要が無くなるため、比較的自由な位置に設けることが可能となる。
また、第二測定部2は、検出した光や電磁波等の強さから、生体情報の推定値を算出する(強さを数値化する)ようになっている。なお、推定値の算出は、後述する装置本体4の制御部41で行うようにしてもよい。
また、第二測定部2は、装置本体4から測定開始を指示する制御信号を受信したり、算出した推定値を装置本体4へ送信したりするようになっている。
【0042】
なお、第二測定部2の電力や装置本体4との接続方式は、特に限定されるものではないが、第二測定部2は、乗り物が走行している間、生体情報を検出し続けるようにする必要があることから、装置本体4と有線で接続し、装置本体4から電源の供給を受けるようにするのが好ましい。
【0043】
また、第二測定部2は、一のシート100に対して、一つ又は複数備えることが可能となる。
第二測定部2の取り付け位置は、特に限定されるものではないが、
図4に示したように、シート100における着席した乗員と近接する部位、すなわち、シートボトム130の上側表層部、シートバック140の前側表層部、あるいはヘッドレスト150の前側表層部等とするのが、第二測定部2が発する光や電磁波等を減衰させることなく透過させる観点から好ましい。
なお、シート100が、図示しないオットマンやフットレスト、ネックレスト等を備える場合には、これらに備えるようにしてもよい。
【0044】
報知部3は、例えば、モニターやスピーカー、振動機等で構成される。そして、後述する装置本体4から受信した制御信号に基づいて、異常の有無を、表示や音声、振動等によって乗員に報知するようになっている。
報知部3を振動機とする場合には、振動が伝わりやすいよう、シート100における着席した乗員と近接する部位に設けるのが好ましい。
【0045】
一方、報知部3をモニターで構成する場合には、被測定者の視認し易い位置に設けるのが好ましい。具体的には、シート100の前方(自動車の場合にはインパネや、前席と後席がある場合には前席の背面等)に設けるとよい。
また、報知部3をモニターで構成すれば、異常発生の報知の他、実測値、推定値を常時表示する事もできる。このようにした場合、制御部41や報知部3は、本発明における報知手段として機能することになる。このようにすれば、異常がない場合であっても、現状の生体情報を確認することが可能となる。
【0046】
装置本体4は、
図1に示したように、制御部41、通信部42、記憶部43等を備えて構成されている。
制御部41は、CPU、RAM等で装置本体4の各部の動作を統括的に制御するように構成されている。具体的には、乗り物のエンジンがかけられたことや、乗員がシートに着席したこと、第一測定部1や第二測定部2から信号を受信したこと等に基づいて、記憶部43に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行する。
【0047】
通信部42は、第一測定部1や第二測定部2から実測値や推定値を受信したり、報知部3へ制御信号を送信したり、図示しない乗り物の制御装置との間で制御信号を送受信したりすることが可能となっている。
【0048】
記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成されている。記憶部43には、各種処理プログラムや、当該プログラムの実行に用いる所定の数値範囲や閾値等を記憶している。
数値範囲は、測定部1,2が測定する項目に対応したものであって、その測定項目における標準的なもの(いわゆる正常値)が記憶されている。なお、複数の測定項目に対応した複数種類の数値範囲を記憶しておいて、接続する第一測定部1や第二測定部2に対応したものを選択できるようにしてもよい。
また、閾値には、対応する数値範囲の上限よりも所定値分だけ高い上閾値と、数値範囲の下限よりも所定値分だけ低い下閾値がある。なお、測定項目によっては、上閾値と下閾値のいずれかのみを記憶するようにしてもよい。
また、記憶部43は、第一測定部1から受信した実測値や、第二測定部2から受信した推定値を記憶することが可能となっている。
【0049】
このように構成された装置本体4の制御部41は、記憶部43に記憶されている処理プログラムに従って以下のような動作をする。
例えば、制御部41は、通信部42を介して、生体情報の開始を指示する信号を、所定期時間毎に第二測定部2へ繰り返し送信するようになっている。
また、制御部41は、第二測定部2から推定値を受信する度に、予め記憶部に格納されている所定の数値範囲R(
図5参照)と比較し、推定値が数値範囲R内にあれば異常なし、数値範囲R外にあれば何らかの異常ありと判定するようになっている。すなわち、第二測定部2及び制御部41は、本発明における判断手段として機能する。こうすることで、比較的簡素なプログラム(仕組み)で判断条件の補正を行うことが可能となる。
【0050】
なお、比較的自由に第一測定部1の操作を行うことが可能なとき(例えば、乗り物の停止中、あるいは自動運転中等)には、実測値に基づいて乗員の健康状態を判別するようにしてもよい。第一測定部1を用いた測定は、乗り物の停止中に行うことが多いため、このようにすれば、運転を開始(再開)する前に異常の有無を判断でき、異常が発生した状態で運転が行われるのを抑制することが可能となる。
【0051】
また、制御部41は、推定値が数値範囲R外にあると判定した場合に、予め記憶部に格納されている所定の閾値T
U,T
L(
図5参照)と比較し、推定値が数値範囲Rの上限と上閾値T
Uとの間又は数値範囲Rの下限と下閾値T
Lとの間にあれば、第1の異常が発生した(異常の可能性が高い)と判断する。一方、推定値が上閾値T
Uよりも上又は下閾値T
Lよりも下であれば、第1の異常よりもレベルの高い第2の異常が発生した(異常の可能性が大である)と判断するようになっている。
【0052】
また、制御部41は、推定値が数値範囲R外にあると判定した場合に、その旨を報知するための信号を報知部3へ送信するようになっている。
具体的には、第1の異常が発生したと判断した場合は、相対的に弱い第1の注意喚起を行うことを指示する制御信号を送信し、第2の異常が発生したと判断した場合は、第1の注意喚起よりも強い第2の注意喚起を行うことを指示する制御信号をようになっている。
これにより、報知部3は、第1の異常が発生した場合に、第1の注意喚起(例えば異常が発生していることの報知)を行い、第2の異常が発生した場合に、第2の注意喚起(例えば運転を控える旨の案内)を行うため、乗員の注意が喚起される。すなわち、報知部3及び制御部41は、本発明における注意喚起手段として機能する。このような機能を有することで、注意喚起を受けた乗員やその同乗者は、当該乗員が急に体調を崩した場合に備えておくことが可能となる。また、なされた注意喚起に応じて、乗員の異常の程度を知ることが可能となり、乗員の状態により正確に即した対応が可能となる。
なお、異常が発生していない場合にも、報知部3が、何らかの表示や音声出力を行えるようにしてもよい。
【0053】
また、通信部42を、図示しない携帯端末と通信可能に構成し、推定値が閾値TU,TLよりも数値範囲Rから遠ざかる方へ超えたと制御部41が判断した(注意喚起手段が第2の注意喚起を行った)場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を携帯端末へ送信するようにしてもよい。このようにすれば、異常が生じた場合に、素早く助けを呼ぶことが可能となる。また、例えば意識が朦朧とする等して、携帯端末を操作することが困難となっても、声さえ出すことができれば助けを呼ぶことができるため、無事に救助される可能性が高まる。
【0054】
また、通信部42を、シートが搭載される乗り物の制御部と通信可能に構成し、推定値が閾値TU,TLよりも数値範囲Rから遠ざかる方へ超えたと制御部41が判断した(注意喚起手段が第2の注意喚起を行った)場合に、以降の運転を制限することを指示する信号(例えば、乗り物が停止中であればエンジンを作動させない信号、乗り物が走行中であれば減速及び停止させる信号を、乗り物の制御部へ送信するようにしてもよい。このようにすれば、異常が発生し、かつ、乗員がアクセルを踏み込んでしまっている場合等であっても、大きな事故が生じるのを抑制することが可能となる。
【0055】
また、制御部41は、第一測定部1から実測値を受信すると、その実測値に基づいて、数値範囲Rを補正することが可能となっている。
具体的には、実測値が数値範囲R外にあると判定した場合に、その後得られる推定値が数値範囲R外となりやすく(異常発生と判断し易く)なるよう数値範囲Rを狭めたり、
図6に示したように、閾値T
U,T
Lを数値範囲Rに近づけたりするようになっている。具体的には、実測値が数値範囲の上限より高い場合には、数値範囲Rの上限と上閾値T
Uの一方又は両方を下げ、実測値が数値範囲の下限より低い場合には、数値範囲Rの下限と下閾値T
Lの一方又は両方を上げる補正を行う。こうすることで、乗員の異常をより早期に発見することが可能となる。
【0056】
なお、制御部41に、実測値を記憶しておく機能や、実測値に各種演算を行う機能を持たせ、今回の着席で第一測定部1を用いた測定が行われなかった場合に、過去の実測値、複数の過去の実測値の平均値や中央値、あるいは複数の過去の実測値の変化の傾向等に基づいて判断条件を補正するようにしてもよい。このようにすれば、最新の実測値が得られなくても、数値範囲Rや閾値TU,TLを実態に近いものに補正することが可能となる。
【0057】
次に、上記異常検知装置10が備えられた乗り物を用いた運転の流れについて、自動車を例にして説明する。
まず、乗員が乗り物のシートに着席し、エンジンを掛ける。この段階で、異常検知装置10は動作を開始しており、第一測定部を用いた測定が可能な状態となっている。
ここで、乗員が、シート(例えばアームレスト110,210の収納部110a,210a)から第一測定部1(例えば血圧計のカフ)を取り出し、自身の体表に接触させる(例えば腕に巻く)ことにより、生体情報(血圧)を測定する。ここで、乗員に異常があった(実測値が数値範囲R外であった)場合には、装置本体4の制御部41が数値範囲Rに対し範囲を狭める補正を行う。
【0058】
なお、ここで、乗員が測定を行わないまま運転を開始した(所定期間が過ぎた)場合には、制御部41が、過去の実測値を呼び出し、過去の実測値に問題があれば数値範囲Rの補正を行う。過去の実測値に問題があれば、制御部41が数値範囲Rの補正を行う。
運転開始後は、第二測定部2が、乗員に対し定期的に光や電磁波を照射し、生体情報の推定値を繰り返し求める。推定値が数値範囲R内にあるうちは、報知部3による注意喚起は行われず、乗員は何事もなく運転を続けることが可能となる。
一方、推定値が数値範囲R外になると、報知部3は、程度に応じて第1の注意喚起又は第2の注意喚起を行う。
このようにして、本実施形態の異常検知装置10を備える乗り物は、運転が行われている間、乗員に異常が生じていないかどうかを監視し続けるため、乗員の異常発生をいち早く発見することが可能となる。
【0059】
なお、本発明の実施に際しては、報知部3や装置本体4の代わりに、
図7に示したように、市販のスマートフォンやタブレット等の携帯端末5を備えるようにしてもよい。
携帯端末5の制御部51及び通信部52は、記憶部53に所定のアプリケーションを予めインストールしておくことにより、上記実施形態の装置本体4の制御部41及び通信部42と同様の機能を有することになる。
また、携帯端末5の表示部54や、図示しないスピーカー、振動機等が、上記実施形態の報知部3と同様の機能を有することになる。
このように構成された異常検知装置10Aは、専用の装置本体や報知部を製造しなくてもよいため、異常検知装置の製造コストを低減することが可能となる。また、画像の表示、音声、振動等、様々な態様で報知を行うことが可能となる。更に、乗員の所持する携帯端末を利用することも可能となる。
【符号の説明】
【0060】
100 シート
110,210 アームレスト
110,210 アームレスト
110a,210a 収納部
110b,210b 溝
120,220 蓋
130 シートボトム
140 シートバック
150 ヘッドレスト
200 ドア
10 異常検知装置
1 第一測定部
2 第二測定部
3 報知部
4 装置本体
41 制御部
42 通信部
43 記憶部
5 携帯端末
51 制御部
52 通信部
53 記憶部
54 表示部
R 数値範囲
TL 下閾値
TU 上閾値