(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068239
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】防音室及びその組立方法、使用方法
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20220426BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20220426BHJP
E04B 1/90 20060101ALI20220426BHJP
A62C 37/12 20060101ALI20220426BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20220426BHJP
A62C 3/07 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
E04H1/12 302C
E04B1/82 W
E04B1/82 M
E04B1/90 Z
A62C37/12
A62C35/02 A
A62C3/07 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017915
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2020137133の分割
【原出願日】2019-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】519207974
【氏名又は名称】テレキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】間下 浩之
(57)【要約】
【課題】設置の容易化を図りつつ、非常時には優れた防災機能を発揮可能な防音室及びその組立方法、使用方法を提供する。
【解決手段】消防用設備を備えた建物内空間に設置される防音室11であって、その筐体12の天井12bには、既設の消防用設備に対して別個に増設され、該消防用設備とは独立して機能する、電源を要しない消火設備が取り付けられ、消火設備は、取付位置を確定する取付部31と、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器25と、該消火剤容器の下端に固着され、熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって消火剤容器内の消火剤を執務空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えた自動消火装置24である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
執務空間を形成する筐体と、該筐体の側壁に設けられた出入口を開閉可能な扉とを備え、さまざまな人が通行する場所のうち、商用電源設備及び消防用設備を備えた建物内空間に設置される可搬式の防音室であって、
前記筐体の天井には、既設の前記消防用設備に対して別個に増設され、該消防用設備とは独立して機能する、電源を要しない消火設備が取り付けられ、
前記消火設備は、取付位置を確定する取付部と、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、前記天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器と、該消火剤容器の下端に固着され、前記熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって前記消火剤容器内の消火剤を前記執務空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えた自動消火装置であることを特徴とする防音室。
【請求項2】
前記筐体は、電源回路を備え、送電側の電源プラグと受電側の接続ポートとの間を前記電源回路により電気的に接続することで、前記執務空間に持ち込まれたコンピュータ又は携帯型の情報端末に前記接続ポートを介して商用電源を取る電源コンセントからの電力の供給が可能とされていることを特徴とする請求項1記載の防音室。
【請求項3】
前記筐体は、金属製の板材にて形成された外壁と、不燃材を用いて形成された内壁とを有し、
前記電源回路は、前記外壁の内側面に沿って延びる複数の接続配線を有し、
前記複数の接続配線は、前記筐体に設けられた複数の機器とそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2記載の防音室。
【請求項4】
前記自動消火装置は、前記天井の室外側に設けられた部分を有して取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の防音室。
【請求項5】
前記天井の室外側に設けられた部分は、前記取付部と前記消火剤容器とを含むことを特徴とする請求項4記載の防音室。
【請求項6】
前記自動消火装置は、化粧板で覆われた開口から前記放出ノズルを前記執務空間に臨ませてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の防音室。
【請求項7】
前記消火剤容器は、前記熱感知部を通る鉛直軸まわりに円弧を回転して得られる外周面を有し、
前記取付部は、互いに着脱可能な固定具の対の一方を前記消火剤容器に設けてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の防音室。
【請求項8】
前記天井には、箱状の消火装置カバーが設けられ、
前記消火装置カバーは、前記固定具の対の他方が設けられることで、前記箱状の内側に前記消火剤容器の取付スペースを有し、
前記取付スペースは、前記消火剤容器の外周面と前記消火装置カバーの内側面との間に設けられた幅方向の隙間を含むことを特徴とする請求項7記載の防音室。
【請求項9】
前記放出ノズルは、前記鉛直軸と同軸に配置されていることを特徴とする請求項8記載の防音室。
【請求項10】
前記固定具は、上下方向に当接する合わせ面を有した一対の上金具及び下金具からなり、前記上金具は、前記消火装置カバーの上板の下面に、前記下金具は、前記消火剤容器の上面にそれぞれ固着され、両金具のいずれか一方のフックをいずれか他方の合わせ面に設けられた係合孔に差し込むとともに、前記消火剤容器と前記消火装置カバーとを水平方向に相対的に回転させることにより、前記フックが前記上金具又は下金具に対して係合可能に形成されていることを特徴とする請求項9記載の防音室。
【請求項11】
前記隙間は、前記取付スペースで前記消火剤容器の外周面を把持して前記回転を与えることが可能な隙間量を有し、
前記自動消火装置は、前記両金具同士を係合させた状態で、前記天井に対し、前記消火装置カバーと一体で着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項10記載の防音室。
【請求項12】
請求項11記載の防音室の組立方法であって、前記消火剤容器の外周面を把持して該消火剤容器に回転を与え、前記両金具同士を係合させた状態で、前記自動消火装置を前記消火装置カバーと一体で前記天井に取り付けることを特徴とする防音室の組立方法。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の防音室の使用方法であって、防音室を、企業のオフィス内に設置した後、前記筐体と前記自動消火装置との相対位置を維持した状態のまま、オフィスレイアウトに従って前記オフィス内を移動させることを特徴とする防音室の使用方法。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の防音室の使用方法であって、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先とテレビ会議を行うことを特徴とする防音室の使用方法。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の防音室の使用方法であって、防音室を、企業のオフィス内に設置した状態で、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先の拠点とテレビ会議を行うことを特徴とする防音室の使用方法。
【請求項16】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の防音室の使用方法であって、防音室を、不特定多数の人が通行する駅、空港、商業施設、展示場、店舗、ホテル、共同住宅のいずれか1つ又は2つ以上の建物内に設置した状態で、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先とテレビ会議を行うことを特徴とする防音室の使用方法。
【請求項17】
前記テレビ会議機能を有する機器は、企業のオフィス内に設置されたテレビ会議用端末と通信接続されることを特徴とする請求項16記載の防音室の使用方法。
【請求項18】
防音室に入室する前に、前記扉に設けられた扉ガラスを介して室内を目で見て確認することを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項記載の防音室の使用方法。
【請求項19】
防音室に入室する前に、認証を完了させ、解錠することを特徴とする請求項14乃至18のいずれか1項記載の防音室の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音室及びその組立方法、使用方法に関し、詳しくは、屋内や屋外に設置して使用可能な可搬式の防音室及びその組立方法、使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内を静粛に保つための遮音性を有した防音室は、従来から、家庭や企業など様々な場所に設置され、種々の目的に使用されてきた。近年では、各企業におけるテレワークへの関心の高まりを受けて、テレワーカを対象とする防音室が検討されている。そこで、機密情報への第三者のアクセス防止の観点から、不特定多数の人が通る場所に設置されるテレワーカ向けの防音室において、室内に入れる人を制限可能な防犯機能を備えた防音室が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不特定多数の人が通る場所に防音室を設置する場合、防犯に加えて、防災対策も欠かせず、特に火災においては、地震などの自然災害によって生じる場合だけでなく、室内に持ち込まれた物品に起因して生じる場合も想定され、防音室を使用するユーザの安全をいかにして確保するかが課題である。そこで、防音室に防災設備として自動消火装置を設けることが考えられるが、消火剤容器や導管の設置など周辺工事に手間を要する。そうだからといって、これらの機器を防音室内に設置するのでは、空間利用効率を低下させる要因になるばかりか、かえって防音室の大型化につながり、設置場所に対して搬入・搬出が容易な小型の防音室の利点が損なわれてしまう。
【0005】
そこで本発明は、設置の容易化を図りつつ、非常時には優れた防災機能を発揮可能な防音室及びその組立方法、使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の防音室は、執務空間を形成する筐体と、該筐体の側壁に設けられた出入口を開閉可能な扉とを備え、さまざまな人が通行する場所のうち、商用電源設備及び消防用設備を備えた建物内空間に設置される可搬式の防音室であって、前記筐体の天井には、既設の前記消防用設備に対して別個に増設され、該消防用設備とは独立して機能する、電源を要しない消火設備が取り付けられ、前記消火設備は、取付位置を確定する取付部と、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、前記天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器と、該消火剤容器の下端に固着され、前記熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって前記消火剤容器内の消火剤を前記執務空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えた自動消火装置であることを特徴としている。
【0007】
また、前記筐体は、電源回路を備え、送電側の電源プラグと受電側の接続ポートとの間を前記電源回路により電気的に接続することで、前記執務空間に持ち込まれたコンピュータ又は携帯型の情報端末に前記接続ポートを介して商用電源を取る電源コンセントからの電力の供給が可能とされていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記筐体は、金属製の板材にて形成された外壁と、不燃材を用いて形成された内壁とを有し、前記電源回路は、前記外壁の内側面に沿って延びる複数の接続配線を有し、前記複数の接続配線は、前記筐体に設けられた複数の機器とそれぞれ接続されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記自動消火装置は、前記天井の室外側に設けられた部分を有して取り付けられていることを特徴としている。さらに、前記天井の室外側に設けられた部分は、前記取付部と前記消火剤容器とを含むことを特徴としている。加えて、前記自動消火装置は、化粧板で覆われた開口から前記放出ノズルを前記執務空間に臨ませてなることを特徴としている。
【0010】
また、前記消火剤容器は、前記熱感知部を通る鉛直軸まわりに円弧を回転して得られる外周面を有し、前記取付部は、互いに着脱可能な固定具の対の一方を前記消火剤容器に設けてなることを特徴としている。さらに、前記天井には、箱状の消火装置カバーが設けられ、前記消火装置カバーは、前記固定具の対の他方が設けられることで、前記箱状の内側に前記消火剤容器の取付スペースを有し、前記取付スペースは、前記消火剤容器の外周面と前記消火装置カバーの内側面との間に設けられた幅方向の隙間を含むことを特徴としている。加えて、前記放出ノズルは、前記鉛直軸と同軸に配置されていることを特徴としている。
【0011】
また、前記固定具は、上下方向に当接する合わせ面を有した一対の上金具及び下金具からなり、前記上金具は、前記消火装置カバーの上板の下面に、前記下金具は、前記消火剤容器の上面にそれぞれ固着され、両金具のいずれか一方のフックをいずれか他方の合わせ面に設けられた係合孔に差し込むとともに、前記消火剤容器と前記消火装置カバーとを水平方向に相対的に回転させることにより、前記フックが前記上金具又は下金具に対して係合可能に形成されていることを特徴としている。
【0012】
さらに、前記隙間は、前記取付スペースで前記消火剤容器の外周面を把持して前記回転を与えることが可能な隙間量を有し、前記自動消火装置は、前記両金具同士を係合させた状態で、前記天井に対し、前記消火装置カバーと一体で着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の防音室の組立方法は、前記防音室の組立方法であって、前記消火剤容器の外周面を把持して該消火剤容器に回転を与え、前記両金具同士を係合させた状態で、前記自動消火装置を前記消火装置カバーと一体で前記天井に取り付けることを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の防音室の使用方法は、前記防音室の使用方法であって、防音室を、企業のオフィス内に設置した後、前記筐体と前記自動消火装置との相対位置を維持した状態のまま、オフィスレイアウトに従って前記オフィス内を移動させることを特徴としている。加えて、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先とテレビ会議を行うことを特徴としている。
【0015】
また、防音室を、企業のオフィス内に設置した状態で、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先の拠点とテレビ会議を行うことを特徴としている。さらに、防音室を、不特定多数の人が通行する駅、空港、商業施設、展示場、店舗、ホテル、共同住宅のいずれか1つ又は2つ以上の建物内に設置した状態で、防音室に入室した後、テレビ会議機能を有する機器を使用してネットワークに接続し、通信先とテレビ会議を行うことを特徴としている。加えて、前記テレビ会議機能を有する機器は、企業のオフィス内に設置されたテレビ会議用端末と通信接続されることを特徴としている。
【0016】
また、防音室に入室する前に、前記扉に設けられた扉ガラスを介して室内を目で見て確認することを特徴としている。さらに、防音室に入室する前に、認証を完了させ、解錠することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、消防用設備を備えた建物内空間に設置される防音室の天井に、既設の消防用設備に対して別個に増設され、該消防用設備とは独立して機能する、電源を要しない消火設備として、消火剤容器を含む一体型の自動消火装置を設けているので、設置の容易化を図りつつ、非常時には優れた防災機能を発揮可能な防音室が達成され、もって、防音室が設置される多様な環境において、その安全な利用を促進し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一形態例を示す防音室の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至
図8は、本発明の防音室の一形態例を示すもので、防音室11は、
図1乃至
図7に示すように、筐体12と扉13とによって形成され、人が入ることができる空間を有し、例えば、駅構内、空港、商業施設、展示場、屋外の広場、店舗の内部、ホテル、共同住宅、又はオフィス内のように、さまざまな人が通行する場所に設置される。また、防音室11は、インターネットなどのネットワークを介して外部機器との間でデータを送受信することができる。防音室11を利用するユーザは、例えば、防音室11に設置されたテレビ会議用端末を用いて、テレビ会議機能を有する外部機器を利用するユーザとの間でテレビ会議を行うことができる。
【0020】
筐体12は、金属、木材又は樹脂などの部材からなり、全体として高さ寸法の大きい直方体に形成され、その一側面である正面(
図1)に、ユーザが出入りするための開口が設けられている。また、筐体12の底面の四隅にはキャスター14及びアジャスター15がそれぞれ設けられている。防音室11の設置者は、キャスター14を使って設置場所に防音室11を移動した後に、アジャスター15の長さが防音室11の底面と床面との距離に等しくなるように調整することで、防音室11を定位置に固定することができる。
【0021】
筐体12の内側には吸音材12aが設けられており、防音室11の内部でユーザが話した声、及び外部機器を使用するユーザが発した声が防音室11の外部に漏れにくい。したがって、防音室11が、不特定多数の人が通る公共場所に設置されている場合であっても、ユーザは、機密性が高い内容を安心して話すことができる。また、床材の仕様には、複数の梁が介在されることによって上下床板の間に空間が形成された二重床の構造となっており、人の出入りやソファ16などの支持に必要な強度が確保されている。
【0022】
扉13は、筐体12の開口を塞ぐことができるように筐体12に結合されており、ハンドル13aを操作することにより、筐体12との結合部位を軸にして開閉可能に構成されている。扉13には扉ガラス13bが設けられており、外部から防音室11の内部を視認することが可能になっている。
【0023】
筐体12と扉13との間には錠(図示せず)が設けられており、筐体12に組み込まれた制御部(CPU)の制御により、扉13を開くことができる開錠状態と扉13を開くことができない閉錠状態とを切り替える。錠は、筐体12の内側からユーザが操作することによって開錠状態と閉錠状態とを切り替えたり、遠隔操作によって切り替えたりすることで、防音室11を解錠又は施錠するように制御がなされる。
【0024】
また、筐体12の正面側には、ユーザの操作を受け付ける操作受付部17が設けられている。操作受付部17は、例えば、タッチパネル付きのディスプレイであり、ユーザにより入力された使用予定時間を受け付ける。ユーザは、例えば、30分、60分、90分のいずれか一つの使用予定時間を選択することができる。決済される料金は、使用予定時間に応じて決定されており、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、防音室11の内部に設けた電子機器への電力の供給が開始される。
【0025】
前記電子機器は、常設されたテレビ会議用の設備18、筐体12の天井12bに設置された照明19、監視カメラ20、スピーカ21及び空調設備、並びにユーザが持ち込んだコンピュータ又は携帯端末などである。空調設備は、防音室の内部空間を換気するとともに、内部温度を調整するもので、例えば、室内の空気を吸引して外部に放出可能なファン22が挙げられる。ファン22は、作動によって上昇気流を形成させ、室内の空気を床から天井に向かわせる。
【0026】
前記空調設備は、制御部による制御に基づいて、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、動作する。これらの電子機器は、例えば、屋内又は屋外に設けられた電源コンセントから電源プラグを介して電力の供給を受けるようになっている。また、ユーザは、必要に応じて、室内に設けられた電子機器の接続ポート23を使用することができる。
【0027】
ところで、防音室11には、防災上の観点から、内壁面の吸音材12aや床面に敷き詰めたタイル材12cについて不燃性のものを使用しているが、通常、建物内に壁などによって囲まれた空間が新たに構成される場合には、密閉の程度に応じて、防災設備の増設が必要となる場合がある。このような事情から、防音室11の天井12bには、室内の火災において、早期に異常を検知でき、被害を最小限に抑えるための自動消火装置24を設けている。
【0028】
自動消火装置24は、下方放出型の消火装置(スプリンクラー)であって、
図8に示すように、消火剤が充填された消火剤容器25と、該消火剤容器25の下端中央に設けられ、内蔵される熱感知部(図示せず)の感知を受けて消火剤を室内に放出可能な放出ノズル26とを一体的に備えている。また、放出ノズル26を挟んで両側部には、一方側に圧力充填口27が、他方側に圧力計(ゲージ)28がそれぞれ取り付けられている。熱感知部には低融点金属が使用され、放出ノズル26の下端にある集熱板26aが火災源からの熱を感知すると、低融点金属が融けるとともに、容器内の加圧されたガスが密閉栓及び集熱板26aを吹き飛ばし、消火剤の放出が始まる。
【0029】
ここで、自動消火装置24は、防音室11の機能性を失わないように、その取付位置が照明19や、スピーカ21、ファン22、各種カバー部材29などの配置を考慮して設定されている(
図3)。特に、放出ノズル26の位置、つまり熱検知部の位置とファン22の位置とは、ファン22の作動によって形成した上昇気流で、火災源からの熱の上昇を促進させるように、互いに横並びの関係になるように設けられている。また、
図4及び
図6にも示すように、放出ノズル26を天井12bの高さ位置に、すなわち、天井12bの開口12d位置に対応して配置することによって消火剤容器25が天井12bの外側に設けられている。消火剤容器25は、箱状の消火装置カバー30によって覆われており、消火装置カバー30の上板30aに設けた取付部31に対して、消火剤容器25が着脱可能になっている。
【0030】
取付部31は、上下方向に当接する合わせ面を有した一対の固定金具であり、上金具31aが上板30aの下面に、下金具31bが消火剤容器25の上面にそれぞれ固着されている。これにより、下金具31bのフック31cを上金具31aの合わせ面に設けた係合孔に差し込むとともに、消火剤容器25を消火装置カバー30に対して水平方向に回転させることより、フック31cが上金具31aに係合し、消火装置カバー30内に自動消火装置24が固定される。
【0031】
消火装置カバー30は、筐体12の外壁面の位置に対して内側に引き込んだ位置に設けられている(
図3)。消火装置カバー30の高さ寸法は、上板30aに自動消火装置24を固定した状態で、放出ノズル26が防音室11の天井12bの高さ位置に揃うように極力小さい寸法で形成されている。一方、幅寸法も同様にして、消火剤容器25の外径寸法に対応させるように極力小さい寸法で形成されている。
【0032】
このように、防音室11が天井12bに消火剤容器25を含む一体型の自動消火装置24を設けているので、人の操作に依存せずに初期火災を素早く鎮圧することができる。しかも、天井12bには自動消火装置24と同じ高さ位置に設けたファン22が、その作動によって防音室11内に上昇気流を形成するので、火災源からの熱の上昇が促進され、迅速かつ確実な熱検知が可能となる。
【0033】
また、自動消火装置24を天井12bに設けた状態のままで防音室11を運搬できることから、防音室11の設置に伴う工事をなんら必要とすることなく即座に使用状態にすることができる。すなわち、設置の容易化を図りつつ、非常時には優れた防災機能を発揮可能な防音室11の構造が得られ、もって、防音室11が設置される多様な環境において、その安全な利用を促進し得るものとなる。
【0034】
さらに、自動消火装置24に備わる放出ノズル26を天井12bの高さ位置に対応して配置することによって消火剤容器25を天井12bの外側に設けているので、防音室11内の空間利用効率を高めることができる。しかも、自動消火装置24が有する一体型構造と相俟って、消火装置カバー30を小さく形成できることから、防音室11の外観上の美観を損ねることはなく、天井12b全域に亘って厚みが増すという不都合もなくなる。
【0035】
加えて、消火装置カバー30に消火剤容器25が着脱可能な取付部31を設けているので、自動消火装置24を天井12b位置に安定的に保持できる。しかも、取付部31が上下方向に当接する合わせ面を有した一対の固定金具であるため、たとえ取付スペースに制限がある場合であっても、その着脱を容易に行うことができる。
【0036】
また、消火装置カバー30を筐体12の外壁面の位置に対して内側に引き込んだ位置に設けているので、防音室11の設置時に、他の構造物に対して接触させるおそれがなくなる。とりわけ、建屋内の間口が狭い場所など、防音室11を傾斜状態にして通過せざるを得ない状況であっても、消火装置カバー30の位置を低く抑えて安全かつ迅速な運搬が行える。
【0037】
さらに、上述のように、防音室11の天井12bに設けたファン22によって自動消火装置24の信頼性を向上させることができるが、これに加えて、ファン22から排出された煙により、防音室11内での火災の発生を外部の人間が認知できることから、非常時に初動として求められる迅速かつ的確な対応を可能にするものである。
【0038】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものでなく、防音室には消火設備の他に、防災上必要な各種設備を備えることができ、設置場所については鉄道車両、バス、タクシー又は飛行機などの移動体であってもよい。また、筐体の形状は、直方体に限られず、円柱体形状であってもよく、機動的な可搬式防音室の利点が損なわれない範囲で、一人だけでなく二人以上の収容が可能な空間を有して形成することができる。さらに、自動消火装置は、コンパクトな一体型のものを天井に備える構成であれば、仕様や取付位置など適宜に変更することができる。加えて、消火装置カバーや取付部の形状も任意であり、放出ノズルが位置する天井面の開口を化粧板などで覆ってもよい。また、ファンは、天井面に、つまり自動消火装置が取り付けられる面と同一面に設けることで顕著な効果を奏するものであるが、これに限られず、防音室が設置される環境に応じて側壁面の上部に設けるなど適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
11…防音室、12…筐体、12a…吸音材、12b…天井、12c…タイル材、12d…開口、13…扉、13a…ハンドル、13b…扉ガラス、14…キャスター、15…アジャスター、16…ソファ、17…操作受付部、18…設備、19…照明、20…監視カメラ、21…スピーカ、22…ファン、23…接続ポート、24…自動消火装置、25…消火剤容器、26…放出ノズル、26a…集熱板、27…圧力充填口、28…圧力計、29…カバー部材、30…消火装置カバー、30a…上板、31…取付部、31a…上金具、31b…下金具、31c…フック