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特開2022-68246炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層を準備する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068246
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層を準備する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20220426BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220426BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220426BHJP
   D01F 9/22 20060101ALI20220426BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20220426BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20220426BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220426BHJP
【FI】
H01M4/96 M
H01M4/86 B
H01M4/96 B
H01M4/86 M
H01M4/88 C
D01F9/22
D04H1/728
D01D5/04
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018709
(22)【出願日】2022-02-09
(62)【分割の表示】P 2020520417の分割
【原出願日】2018-06-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0080431
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519108785
【氏名又は名称】ガードネック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUARDNEC CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1172,Cheoinseong-ro,Idong-myeon,Cheoin-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17127 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】パーク,キ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ブ ゴン
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ジョン ス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】均一な気孔分布及び高気孔率を有しながらも、熱伝達及び電気伝導効率に優れ、優れた発電効率を示す燃料電池用ガス拡散層、これを含む膜-電極接合体及びこれを含む燃料電池を提供する。
【解決手段】高分子組成物を、40℃~80℃の温度下で、30kV~70kVの電圧を印加して、電界紡糸して形成した炭素ナノ繊維紡糸層を含む、燃料電池用ガス拡散層である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層であって、
前記炭素ナノ繊維紡糸層は、高分子組成物を電界紡糸して形成したものである、燃料電池用ガス拡散層。
【請求項2】
前記電界紡糸は、30kV~70kVの電圧を印加するものである、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項3】
前記電界紡糸は、40℃~80℃の温度下で行われるものである、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項4】
前記炭素ナノ繊維紡糸層は、前記電界紡糸によって形成された炭素ナノ繊維紡糸層を熱処理したものである、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項5】
電解質膜と、
前記電解質膜を挟んで互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極と、を含み、
前記アノード電極とカソード電極は、ガス拡散層及び触媒層を含み、
前記ガス拡散層は、請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層である、燃料電池用膜-電極接合体。
【請求項6】
一つまたは二つ以上の請求項5に記載の膜-電極接合体と前記膜-電極接合体間に介在するセパレータを含むスタックと、
燃料を前記スタックに供給する燃料供給部と、
酸化剤を電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層、これを含む膜-電極接合体及びこれを含む燃料電池に関する。
【0002】
本出願は、2017年6月26日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0080431号の出願日の利益を主張し、その全内容は本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
燃料電池(Fuel Cell)とは、燃料の酸化により発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池であって、最近、化石燃料の枯渇問題、二酸化炭素発生による温室効果と地球温暖化などの問題点を克服すべく太陽電池などと共に多くの研究がなされている。
【0004】
燃料電池は、一般に、水素と酸素の酸化、還元反応を利用して、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。アノード(anode)にて水素が酸化され、水素イオンと電子に分離され、水素イオンは電解質(electrolyte)を通じてカソード(cathode)に移動する。このとき、電子は回路を通じて陽極に移動する。陽極にて水素イオン、電子および酸素が反応して水を生成する還元反応が起こる。
【0005】
燃料電池のガス拡散層は、外部または燃料電池の単位電池間に介在されたセパレータ(separator)を通じて流入される反応ガス(水素、酸素など)を電気化学反応が発生する触媒層に流入させ、かつ電気化学反応により発生する凝縮水を排出する役割をする。
【0006】
燃料電池のガス拡散層が、反応ガスを円滑に流入できなければ、反応濃度が低下して発電電圧の低下を招く。
【0007】
また、燃料電池のガス拡散層が、電気化学反応により発生した凝縮水を円滑に排出できなければ、同様に反応濃度が低下して発電電圧の低下を招く。
【0008】
一方、燃料電池のガス拡散層が、発生した熱を円滑に排出できなければ、電解質が通過する電解質膜を乾燥させることにより、イオン伝導度の低下を招き、抵抗損失を増加させて、同様に発電電圧の低下を招く。
【0009】
したがって、従来の燃料電池のガス拡散層は、反応ガスの流入を促進し、凝縮水排出を促進させるために、その気孔率を高める場合、電解質膜の乾燥を招き、電気化学反応により発生する熱の排出が円滑でないという問題点により、一定のレベル以上の気孔率を向上させることができず、さらに電気伝導率も低いので、発電効率を向上させることができないという限界があった。
【0010】
また、従来の燃料電池のガス拡散層は、電解質膜の湿潤状態を保持するために、微細炭素粒子をコーティングすることにより高分子膜の気孔を微細な大きさに調節したが、これらの電解質膜は、気孔の分布が不均一なため、反応ガスが円滑に流入され得ず、発電効率が劣るという問題点があり、多層積層構造により厚さ調節などの難点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、均一な気孔分布及び高気孔率を有しながらも、熱伝達及び電気伝導効率に優れ、優れた発電効率を示す燃料電池用ガス拡散層、これを含む膜-電極接合体及びこれを含む燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層であって、前記炭素ナノ繊維紡糸層は、高分子組成物を電界紡糸して形成したものである燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0013】
また、本発明は、電解質膜と、該電解質膜を挟んで互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極と、を含み、該アノード電極及びカソード電極は、前記燃料電池用ガス拡散層及び触媒層を含む燃料電池用膜-電極接合体を提供する。
【0014】
また、本発明は、1つまたは2つ以上の前記膜-電極接合体と該膜-電極接合体間に介在するセパレータを含むスタックと、燃料を前記スタックに供給する燃料供給部と、酸化剤を電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るガス拡散層は、高気孔率及び均一な気孔分布を有することにより、反応ガスの流入を促進し、凝縮水排出を促進しながらも、熱伝達及び電気伝導効率に優れ、電解質膜の乾燥を抑制するので、これを含む膜-電極接合体及び燃料電池は、優れた発電効率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、試験例1において、実施例1-2に従って造られたガス拡散層の微細構造を電界放出型走査電子顕微鏡装置で撮影した画像であって、倍率は10kである。
図2図2は、試験例1において、比較例1-2に従って造られたガス拡散層の微細構造を電界放出型走査電子顕微鏡装置で撮影した画像であって、倍率は10kである。
図3図3は、試験例2において、実施例1-2乃至実施例4-2による各単位電池の電流-電圧値を測定し、電流-電圧曲線を示した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池用ガス拡散層を説明する。
【0018】
本発明に係る燃料電池用ガス拡散層は、炭素ナノ繊維紡糸層を含む。
【0019】
本発明に係る炭素ナノ繊維紡糸層は、高分子組成物を電界紡糸して形成したものである。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記電界紡糸は、前記高分子組成物を紡糸する時、30kV~70kVの電圧、より好ましくは40kV~60kVの電圧を印加するものである。前記電圧が30kV未満であれば、繊維のスプリット(Split)が活発に行われず、溶媒の揮発度が低下し、70kVを超えると、高分子組成物が紡糸されるノズルの先端から目詰まり(ティップトラブル)が発生する。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記電界紡糸は、50℃~80℃の温度下で行われるものである。前記電界紡糸が行われる温度が50℃未満である場合、前記高分子溶液の粘度が高くなり、円滑に紡糸されず、これは量産性を確保できないことがある。また、前記電界紡糸が行われる温度が80℃を超えた場合、前記高分子溶液中、溶媒の揮発が発生し、高分子溶液の組成が変化し得、溶媒揮発による溶液タンク内の圧力が増加して爆発を引き起こす恐れもある。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記電界紡糸された炭素ナノ繊維紡糸層の繊維の平均直径は0.01μm~2μm、より好ましくは0.02μm~1μmである。前記繊維の平均直径が0.01μm未満であれば、繊維と繊維間の空隙の大きさが減少してガス透過率が低下し、2μmを超えると、繊維間の空隙の大きさが増し、ガス内に存在する異物が空隙の間を通過して電池スタック内に蓄積されることにより、燃料電池のガス拡散層として燃料電池の特性評価時、性能が低下する。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記電界紡糸は、前記高分子組成物が保存された容器の開放部であるティップと、該ティップから重力方向に離間された集電板との間に電圧が印加された状態で、前記容器に圧力が印加されて噴射されるものである。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記ティップと前記集電板との間の離隔距離は10cm~20cm、好ましくは12cm~16cmである。前記離隔距離が10cm未満であれば、繊維のスプリット(Split)が行われる前にもう紡糸が終わってしまうので、残留溶媒が残ることになり、これらの残留溶媒により炭素繊維のメルティング(melting)現象が発生するため、所望の炭素ナノ繊維の変形が発生し、20cmを超えると、集電板との間の磁場の形成が不安定になり、炭素ナノ繊維層が形成されない。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記高分子組成物は、ポリメチルメタクリレート(Poly methylmethacrylate、PMMA)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、ポリアクリル酸(Polyacrilic acid、PAA)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN )などのポリアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride、PVC)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、PVA)、ポリビニルアセテート(Polyvinyl acetate、PVAc)などのポリビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(Poly ethylene terephthalate、PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(Polytrimethylene Terephthalate、PTT)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylne terephthalate、PBT)などのポリエステル樹脂;ナイロン(Nylon);ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO);ポリウレタン(Polyurethane、PU)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF);ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体[poly(vinylidene fluoride)-co-(hexafluoropropylene)、P(VDF-HFP)];ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体[poly(vinylidene fluoride)-co-(chlorotrifluoroethylene);P(VDF-CTFE)]、ポリテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデン共重合体(Poly tetrafluoro ethylene-co-hexafluoro propyrene-co-vinylidene fluoride、THV);ポリエーテルケトン(Poly ether ether ketone)、ポリフェニレンオキサイド(Poly phenylene oxide、PPO);ポリフェニレンスルホン(Poly phenylene sulfone、PPS);ポリスルホン(Poly sulfone、PS);ポリエーテルスルホン(Poly ehter sulfone、PES);ポリイミド(Poly imide、PI);ポリエーテルイミド(Polyether imide、PEI);ポリアミドイミド(Polyamide imide、PAI);ポリベンジイミダゾール(Polybenzimidazole、PBI);ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole、PBO);及びポリアラミド(Poly aramide)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記高分子組成物は、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記炭素ナノ繊維紡糸層の厚さは20μm~200μm、より好ましくは50μm~150μmである。前記炭素ナノ繊維紡糸層の厚さが20μm未満であれば、熱処理時、物性の低下が発生し、200μmを超えると、熱処理後、ガス分離層の膜-電極接合体の積層時、空間上の制約により、燃料電池の性能発現に必要な有効な触媒層が形成されないことがあり得る。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記炭素ナノ繊維紡糸層は、前記電界紡糸によって形成された炭素ナノ繊維紡糸層を熱処理したものである。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記熱処理段階は、酸化安定化段階、炭化段階と黒鉛化段階を含む方法である。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記酸化安定化段階は、第1の温度区間を有する第1のヒーター内に前記炭素ナノ繊維紡糸層を導入することにより、前記ナノ繊維フィルムの環化反応を起こす段階を含み、酸化安定化段階で生成された二重結合は、炭素化の過程で鎖の切断を減らし、耐熱性を向上させる効果を示す。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記第1の温度区間は、室温で300±30℃まで順次上昇する区間である。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記炭化段階は、炭化第2の温度区間を有する第2のヒーター内に前記炭素ナノ繊維紡糸層を導入することにより、前記ナノ繊維フィルムを炭化させて炭素質フィルムに変換させる段階を含む。
【0033】
前記炭化第1の温度区間は300±30℃~1,000℃に順次上昇する区間である。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記黒鉛化段階は、リニア的に温度が上昇する区間である第3の温度区間を有する第3のヒーター内に前記炭素質フィルムを導入させて多孔性を有するグラファイトフィルムに変換させる段階を含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記第3の温度区間は、1000℃~2800℃に順次上昇する区間である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記第3の温度区間は、1000℃~1500℃の第3-1の温度区間、1500℃~2200℃の第3-2の温度区間及び2,200℃~2,800℃の第3-3の温度区間を含む。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記黒鉛化段階は、前記第3-1の温度区間内で前記炭素質フィルムを横方向に0.33mm/秒~1.33mm/秒で移動させ、前記第3のヒーターの内部温度を毎分1℃~5℃に上昇させながら、1時間~4時間の間、前記炭素質フィルムに対して熱処理を進行する段階を含む。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、アセトン;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N、N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o-、m-、またはp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒、またはそれらの混合物である。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン等の芳香族炭化水素をさらに含む。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、ジエチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの混合物である。
【0041】
以下、本発明に係る燃料電池用ガス拡散層の製造方法を説明する。特別な制限の説明がなければ、以下の燃料電池用ガス拡散層の製造方法は、上述した燃料電池用ガス拡散層の説明が適用されることができる。
【0042】
本発明に係る燃料電池用ガス拡散層の製造方法は、高分子組成物を電界紡糸して炭素ナノ繊維紡糸層を形成する段階を含む。
【0043】
前記炭素ナノ繊維紡糸層を形成する段階は、高分子組成物の紡糸時、30kV~70kVの電圧、より好ましくは40kV~60kVの電圧を印加する段階を含む。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記電界紡糸段階は、前記高分子組成物が保存された容器の開放部であるティップと、該ティップから重力方向に離隔された集電板との間に電圧が印加された状態で、前記容器に圧力が印加され噴射する段階を含む。
【0045】
本発明に係る燃料電池用ガス拡散層の製造方法は、前記電界紡糸によって形成された炭素ナノ繊維紡糸層を熱処理する段階を含む。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記熱処理段階は、酸化安定化段階、炭化段階と黒鉛化段階を含む方法である。
【0047】
以下、本発明に係る燃料電池用膜-電極接合体を説明する。
【0048】
本発明に係る燃料電池用膜-電極接合体は、前記燃料電池用電解質膜と、該燃料電池用電解質膜を挟んで互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極と、を含む。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記電解質膜は、パーフルオロスルホン酸ポリマー、炭化水素系ポリマー、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスファゼン、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ドーピングされたポリベンズイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、これらの酸または塩基であってもよい。
【0050】
本発明に係るアノード電極及びカソード電極は、それぞれガス拡散層及び触媒層を含む。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記アノード電極の触媒層は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金と白金-遷移金属合金からなる群から選択されるいずれか一つ以上の触媒を含む。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記カソード電極の触媒層は、白金を含む。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記アノード電極又は前記カソード電極の触媒は、炭素系担体に担持される。
【0054】
以下、本発明に係る燃料電池を説明する。
【0055】
本発明に係る燃料電池は、前記膜-電極接合体と、前記膜-電極接合体の間に介在するセパレータを含むスタックと、燃料を前記スタックに供給する燃料供給部と、酸化剤を電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む。
【0056】
本発明に係るセパレータは、膜-電極接合体が電気的に接続されることを防ぎ、外部から供給された燃料及び酸化剤を膜-電極接合体へ伝達する役割とアノード電極とカソード電極を直列に接続させる伝導体の役割をする。
【0057】
本発明に係る燃料供給部は、燃料を前記スタックに供給する役割をし、燃料を保存する燃料タンク及び前記燃料タンクに保存された燃料をスタックに供給するポンプを含むことができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記燃料としては、気体又は液体状態の水素または炭化水素燃料である。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記炭化水素燃料はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは天然ガスである。
【0060】
本発明に係る酸化剤供給部は、酸化剤を前記スタックに供給する役割をする。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記酸化剤は酸素または空気である。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記酸化剤はポンプで注入される。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記燃料電池は、高分子電解質型燃料電池または直接メタノール型燃料電池である。
【0064】
以下、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を具体的に説明するためのものに過ぎず、このような実施例により、本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【0065】
<実施例1-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
ポリアクリロニトリル(PAN)100gにジメチルアセトアミド(DMAc)900gを入れて溶解させ、高分子紡糸溶液(濃度:10wt%)を製造した。
【0066】
それから、オソンテクノロジー社で製造された電界紡糸装置の高分子組成物供給容器に製造された高分子紡糸溶液6mlを注入した後、前記供給容器の開放部であるティップと、該ティップから重力方向に離隔された集電板との間の距離を15cmに保持し、前記供給容器内の温度を70℃に恒温制御したまま、前記ティップと前記集電板との間に30kVの電圧を印加し、前記供給容器の高分子紡糸溶液を8時間の間、加圧噴射させて横25cm、縦45cm、厚さ100μmの炭素ナノ繊維紡糸層を生成した。
【0067】
<実施例2-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
電界紡糸装置の高分子紡糸溶液の供給容器内の温度を45℃に恒温制御したことを除いては、前記実施例1-1と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0068】
<実施例3-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
電界紡糸装置の高分子紡糸溶液の供給容器内の温度を35℃に恒温制御したことを除いては、前記実施例1-1と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0069】
<製造例4-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
電界紡糸装置の高分子紡糸溶液の供給容器内の温度を25℃に恒温制御したことを除いては、前記実施例1-1と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0070】
<実施例1-2>ガス拡散層の製造
前記実施例1-1にて製造された炭素ナノ繊維紡糸層を熱処理してガス拡散層を製造した。第1の温度区間を有する第1のヒーター内に前記実施例1-1にて製造された炭素ナノ繊維紡糸層を導入することにより、前記ナノ繊維フィルムの環化反応が起こった安定化したナノ繊維フィルムを製造した。前記第1の温度区間は、300±30℃まで順次上昇する区間である。
【0071】
このように安定化したナノ繊維フィルムを第2の温度区間を有する第2のヒーター内に導入させることにより、ナノ繊維フィルムを炭化させて炭素質フィルムを製造した。前記第2の温度区間は300±30℃~1,000℃に順次上昇する区間である。
【0072】
前記の方法で作製した炭素質フィルムを第3の温度区間を有する第3のヒーター内に導入させて多孔性を有するガス拡散層を製造した。前記第3の温度区間は、1000℃~2800℃に順次上昇する区間である。
【0073】
<実施例2-2>ガス拡散層の製造
炭素ナノ繊維紡糸層として前記実施例2-1にて製造された炭素ナノ繊維紡糸層を用いたことを除いては、前記実施例1-2と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0074】
<実施例3-2>ガス拡散層の製造
炭素ナノ繊維紡糸層として前記実施例3-1にて製造された炭素ナノ繊維紡糸層を用いたことを除いては、前記実施例1-2と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0075】
<実施例4-2>ガス拡散層の製造
炭素ナノ繊維紡糸層として前記実施例4-1にて製造された炭素ナノ繊維紡糸層を用いたことを除いては、前記実施例1-2と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0076】
<実施例1-3>触媒層が形成された電解質膜の製造
電解質膜は、パーフルオロスルホン酸ポリマーであるデュポン社のナフィオン膜(Nafion 112)を用いた。触媒インクを製造するため、アノードとカソード触媒として白金担持カーボン触媒(Pt/C)を用いた。ナフィオン(Nafion)溶液、イソプロピルアルコールと水を混合し、前記触媒と混ぜて触媒:nafion乾燥重量:溶媒=1:0.3:20になるようにした後、よく分散されるように攪拌して、高速ミキサー(2時間)で均一に混合して触媒インクを用意した。
【0077】
製造された触媒インクを、スプレーコーター(spray coater)を利用して高分子電解質膜の一面に噴射することにより、0.4mg/cm2ずつ触媒層をそれぞれ形成した。
【0078】
<実施例1-4>単位電池の製造
前記実施例1-3に従って製造した電解質膜の両面に、前記実施例1-2に従って製造されたガス拡散層を重ねた後、膜-電極接合体を中心に、ガスの気密性を維持するための210μmのガスケットを、電極部分を除いた高分子電解質の部分に密着させて、膜-電極接合体に水素の投入及び均一な圧力を与えるための流路を有する負極用板と、空気の投入及び膜-電極接合体に均一な圧力を与えるための陽極用板を密着させて単位電池を製造した。
【0079】
<実施例2-4>単位電池の製造
前記実施例2-2にて製造されたガス拡散層をガス拡散層として用いたことを除いては、前記実施例1-4と同様の過程で単位電池を製造した。
【0080】
<実施例3-4>単位電池の製造
前記実施例3-2いて製造されたガス拡散層をガス拡散層として用いたことを除いては、前記実施例1-4と同様の過程で単位電池を製造した。
【0081】
<実施例4-4>単位電池の製造
前記実施例4-2にて製造されたガス拡散層をガス拡散層として用いたことを除いては、前記実施例1-4と同様の過程で単位電池を製造した。
【0082】
<比較例1-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
電界紡糸時、高分子組成物供給容器の温度を制御することなく、室温である25℃に維持したことを除いては、前記実施例1-1と同様の過程で横25cm、縦45cm、厚さ100μmの炭素ナノ繊維紡糸層を製造した。
【0083】
<比較例1-2>ガス拡散層の製造
前記比較例1-1に従って製造された炭素ナノ繊維紡糸層を用いたことを除いては、前記実施例1-2と同様の過程でガス拡散層を製造した。
【0084】
<比較例1-3>触媒層が形成された電解質膜の製造
前記実施例1-3と同様の過程で電解質膜を製造した。
【0085】
<比較例1-4>単位電池の製造
前記比較例1-1に従って製造された炭素ナノ繊維紡糸層を用いて造られたガス拡散層を用いたことを除いては、前記実施例1-4と同様の過程で単位電池を製造した。
【0086】
<試験例1>FE-SEMによる微細構造の観察
前記実施例1-2及び比較例1-2の方法に従って造られたガス拡散層の微細構造を日立社で製造された製品名SU-70の電界放出型走査電子顕微鏡装置(FE-SEM;Field Emission Scanning Electron Microscopy )を使用して撮影し、それぞれ図1および図2に示した。
【0087】
本発明に係るナノ繊維の微細構造を観察した結果、炭素ナノ繊維紡糸層の製造時、高分子紡糸液の温度を一定の範囲に制御されるか否かに応じて、繊維の直径に違いがあり、これは図2に示すように、電界紡糸時、一定の温度が維持されなかったとき、残留溶媒揮発が不足して溶媒にナノ繊維の一部が溶けて生じる現象を示すことを確認することができる。
【0088】
<試験例2>単位電池性能測定
本発明に係る燃料電池の性能を比較するために、下記の条件の下、単位電池の性能を測定した。
相対湿度:80%
電池温度:65℃
ガス供給:アノード-水素/カソード-空気
測定装置:CNL社の燃料電池性能TEST STATION
電解質膜の表面積:25cm2
【0089】
まず、前記実施例1-2~実施例4-2による各単位電池の電流-電圧値を測定し、図3に電流-電圧曲線を示した。
【0090】
図3に示すように、製造時、高分子紡糸溶液を供給容器内で温度をそれぞれ45℃、70℃に維持しながら、電圧を印加して製造されたガス拡散層を使用する実施例1-2及び実施例2-2の燃料電池は、それぞれ35℃、25℃に維持しながら、電圧を印加して製造されたガス拡散層を用いる実施例3-2及び4-2の燃料電池より発電性能が特に優れていることを知ることができ、実施例1-2の燃料電池が、実施例2-2の燃料電池よりも発電性能がより優れていることを確認することができる。
【0091】
特に、図3において、電流密度800~1200mA/cm2の区間は、ガス拡散層の気孔サイズと関連して、水の排出、ガス流入及び濃度勾配により、性能減少が発生する物質伝達(mass transfer)区間に該当するが、この区間で実施例1-2及び実施例2-2の燃料電池は、実施例3-2及び4-2の燃料電池に比べて、性能減少が少なく、特に実施例1-2は、物質伝達区間での性能低下がほとんど起こらないことを確認することができる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層を準備する方法であって、
前記方法は、50℃~80℃の温度下で高分子組成物を電界紡糸してナノ繊維紡糸層を形成し、さらに、
前記ナノ繊維紡糸層を熱処理することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記電界紡糸は、30kV~70kVの電圧を印加することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の前記方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層を準備する方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明は、均一な気孔分布及び高気孔率を有しながらも、熱伝達及び電気伝導効率に優れ、優れた発電効率を示す燃料電池用ガス拡散層を準備する方法を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、炭素ナノ繊維紡糸層を含む燃料電池用ガス拡散層を準備する方法であって、前記方法は、50℃~80℃の温度下で高分子組成物を電界紡糸してナノ繊維紡糸層を形成し、さらに、前記ナノ繊維紡糸層を熱処理することを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明の実施の一形態は、前記電界紡糸が30kV~70kVの電圧を印加することによって行われることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明に係る方法によれば、得られるガス拡散層が高気孔率及び均一な気孔分布を有することにより、反応ガスの流入を促進し、凝縮水排出を促進しながらも、熱伝達及び電気伝導効率に優れ、電解質膜の乾燥を抑制するので、これを含む膜-電極接合体及び燃料電池は、優れた発電効率を示す。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
実施例4-1>炭素ナノ繊維紡糸層の製造
電界紡糸装置の高分子紡糸溶液の供給容器内の温度を25℃に恒温制御したことを除いては、前記実施例1-1と同様の過程でガス拡散層を製造した。