(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068290
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】X線透視撮影装置およびX線透視撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023004
(22)【出願日】2022-02-17
(62)【分割の表示】P 2019230378の分割
【原出願日】2019-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 徳菜
(72)【発明者】
【氏名】有坂 公孝
(72)【発明者】
【氏名】副島 友和
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透視撮影中に天板に被検体を載置した状態で、天板を移動させることなく安定してX線透視撮影を行うことができ、天板とスタンド部との間のスペースを大きく確保する必要のないX線透視撮影装置を提供する。
【解決手段】X線透視撮影装置1は、床面に載置されるスタンド部10と、スタンド部10の一側面側に突出している支持腕部20と、支持腕部20の突出している方向を短手方向とし短手方向に直交する方向を長手方向として被検体を載置する天板40と、支持腕部20に支持され天板40を支持する支持枠30と、天板40上にX線を照射するX線発生器60と、支持枠30に支持されて上部でX線発生器60を支持する支柱部50と、を備えている。支持枠30は、短手方向に平行な軸を中心として、支柱部50を支持枠30に対して回動可能とする支柱部回動機構228を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置されるスタンド部と、
前記スタンド部の一側面側に突出している支持腕部と、
前記支持腕部の突出している方向を短手方向とし、当該短手方向に直交する方向を長手方向として、被検体を載置する天板と、
前記支持腕部に支持され、前記天板を支持する支持枠と、
前記天板上にX線を照射するX線発生器と、
前記支持枠に支持されて上部で前記X線発生器を支持する支柱部と、を備え、
前記支持枠は、前記短手方向に平行な軸を中心として、前記支柱部を前記支持枠に対して回動可能とする回動機構を有しており、
前記支柱部は、前記回動機構に支持されている基底部と、前記基底部の上部に配置されている支柱本体と、前記X線発生器を前記短手方向に沿って移動可能とするスライド機構と、を有しており、
前記スライド機構は、前記基底部よりも上部に配置されていることを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項2】
前記支持枠内に配置され前記X線発生器から出射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を移動可能とする検出器移動機構とを更に備え、
前記検出器移動機構は、前記X線発生器の移動に連動して前記X線検出器を移動させることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項3】
前記スライド機構は、前記基底部の上端部と前記支柱本体の下端部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記X線発生器を移動させるラックアンドピニオン機構であることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項5】
前記支柱本体は、前記一側面側に前記被検体の撮影部位を圧迫する圧迫筒を有しており、
前記スライド機構は、前記圧迫筒よりも下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項6】
前記支柱部の上端で当該支柱部と前記X線発生器とを連結する管球支持部をさらに備え、
前記スライド機構は、前記支柱本体の上端部と前記管球支持部の下端部とを連結する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項7】
前記支柱部は、前記スライド機構よりも上部に、前記X線発生器を前記短手方向に沿って移動可能とする第2のスライド機構を有していることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項8】
前記スライド機構及び前記第2のスライド機構を制御する機構制御部をさらに備え、
前記機構制御部は、前記スライド機構の駆動による前記X線発生器の位置の調整よりも細かい位置の微調整を、前記第2のスライド機構を駆動させることにより行うことを特徴とする請求項7に記載のX線透視撮影装置。
【請求項9】
前記支持枠内に配置され前記X線発生器から出射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を移動可能とする検出器移動機構とを更に備え、
前記検出器移動機構は、前記短手方向に沿う2つのスライド機構による前記X線発生器の移動に連動して、前記X線発生器から照射されるX線の中心と前記X線検出器の中心とが一致するように、前記X線検出器を移動させることを特徴とする請求項7に記載のX線透視撮影装置。
【請求項10】
前記支柱部と前記X線発生器とを連結する管球支持部を前記支柱部の上端に備え、
前記管球支持部は、前記X線発生器を、前記長手方向に沿った軸を中心に回動可能とする第2の回動機構を有していることを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項11】
前記支持枠内に配置され前記X線発生器から出射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を移動可能とする検出器移動機構とを更に備え、
前記検出器移動機構は、前記スライド機構による前記X線発生器の移動と前記第2の回動機構による前記X線発生器の回動とに連動して、前記X線発生器から照射されるX線の中心と前記X線検出器の中心とが一致するように、前記X線検出器を移動させることを特徴とする請求項10に記載のX線透視撮影装置。
【請求項12】
前記支柱部と前記X線発生器とを連結する管球支持部を前記支柱部の上端に備え、
前記管球支持部は、前記X線発生器を、前記長手方向に沿った軸を中心に回動可能とする第2の回動機構を有していることを特徴とする請求項7に記載のX線透視撮影装置。
【請求項13】
前記第2の回動機構は、モータと、前記モータの回転により回転する主動滑車と、前記主動滑車の回転に連動して回転する従動滑車と、前記従動滑車の回転に連動して回転するギアとを備え、
前記X線発生器は、前記ギアに噛み合い回動することを特徴とする請求項12に記載のX線透視撮影装置。
【請求項14】
前記第2の回動機構は減速機をさらに備え、前記減速機は、前記従動滑車の回転方向を、前記主動滑車の回転方向に対して直交する方向に変更することを特徴とする請求項13に記載のX線透視撮影装置。
【請求項15】
前記支持枠内に配置され前記X線発生器から出射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を移動可能とする検出器移動機構とを更に備え、
前記検出器移動機構は、前記スライド機構及び前記第2のスライド機構による前記X線発生器の移動と、前記第2の回動機構による前記X線発生器の回動とに連動して、前記X線発生器から出射されるX線の中心と前記X線検出器の中心とが一致するように、前記X線発生器の移動距離及び回動角度から前記X線検出器の位置を制御することを特徴とする請求項12に記載のX線透視撮影装置。
【請求項16】
前記X線発生器から出射されるX線の出射状況を制御するX線制御部をさらに備え、
前記X線制御部は、前記X線発生器の回動角度に応じて、当該X線発生器から出射されるX線量を制御することを特徴とする請求項12に記載のX線透視撮影装置。
【請求項17】
前記X線発生器から出射されるX線の出射状況を制御するX線制御部と、
距離センサとをさらに備え、
前記X線制御部は、前記距離センサが測定した前記X線発生器から前記被検体までの距離に応じて、当該X線発生器から出射されるX線量を制御することを特徴とする請求項12に記載のX線透視撮影装置。
【請求項18】
前記被検体に照射されるX線の照射範囲を制限する複数のX線絞り羽根をさらに備え、
前記複数のX線絞り羽根は、前記X線発生器の回動角度に応じてそれぞれの位置を変更することでX線の照射領域を変更することを特徴とする請求項12に記載のX線透視撮影装置。
【請求項19】
請求項1に記載のX線透視撮影装置と、
前記被検体の撮影部位の変更指示を受け付ける操作部とを備えていることを特徴とするX線透視撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検体の透視撮影を行うX線透視撮影装置に関し、特に、インターベンショナルラジオロジー(Inter-Ventional Radiology:IVR)に好適なX線透視撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体に対してX線透視を行いながら手技を行うIVRの中でも、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)や内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)においてX線透視撮影装置が広く用いられるようになってきた。
【0003】
内視鏡を用いたIVRでは、被検体の中で内視鏡を移動させてその位置を確認しながら手技が行われるため、透視撮影中に被検体に対するX線の照射位置(撮像位置)を変更可能な構成を有するX線透視撮影装置が望まれている。
【0004】
透視撮影中に撮像位置を変更可能なX線透視撮影装置の一例として、特許文献1、2には、床面に載置されるスタンド部と、スタンド部の一側面から突出している支持腕部と、支持腕部の突出方向を短手方向としその方向に直交する方向を長手方向とする天板と、支持腕部に支持されて天板を支持する支持枠と、天板上にX線を照射するX線発生器と、支持枠により支持されX線発生器を支持する支柱部と、支持枠内に配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを備えたX線透視撮影装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されているX線透視撮影装置では、天板を支持枠ごと天板の短手方向や長手方向にスライドさせたり、当該短手方向に平行な軸を中心にX線発生器とX線検出器を回転させたりしながら被検体の透視撮影位置を変えることができる。
【0006】
また、特許文献2に開示されているX線透視撮影装置では、支柱部が、支持枠に対して長手方向にスライド可能に支持されている基底部と、基底部の上部に固定されている支柱本体と、支柱本体の上端でX線発生器を支持する連結部とを有しており、基底部が、支柱部及びX線発生器を天板の短手方向に移動可能とするスライド機構を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-137540号公報
【特許文献2】特開2008-136797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のX線透視撮影装置では、透視撮影中にX線の照射位置を支持腕部の突出方向に沿って変えたい場合、天板を移動(スライド)させる必要があり、天板上の被検体に対して負荷がかかる恐れがあった。特にIVRを行う場合、被検体自体を移動させながら手技を行うこととなり、術者にとっても被検体にとっても負荷が大きくなってしまっていた。
【0009】
一方、X線発生器を支柱部に対して移動させることも考えられるが、X線発生器は、その内部にX線管や絞り羽根などが備えられており、非常に重くなっている。そのため、従来のX線透視撮影装置を支柱部に対するX線発生器の支持位置を単にスライドあるいは回転する構成では、X線発生器の移動時に装置の姿勢が不安定になるおそれがある。特にX線発生器を天板の短手方向に移動させる際、非常に重い構成のX線発生器を、床面に固定されているスタンド部から離れる方向に移動すること自体が困難であった。
【0010】
また、特許文献2記載のX線透視撮影装置のように、支柱部を支持枠に支持させる役割を担う基底部自体が、X線発生器を天板の短手方向に移動させるスライド機構を有している場合、スタンド部と支持枠との間に支柱部を短手方向にスライドさせるためのスペースを大きく確保する必要があった。
【0011】
本発明は、透視撮影中に天板に被検体を載置した状態で、天板を移動させることなく安定してX線透視撮影を行うことができ、天板とスタンド部との間のスペースを大きく確保する必要のないX線透視撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のX線透視撮影装置は、床面に載置されるスタンド部と、スタンド部の一側面側に突出している支持腕部と、支持腕部の突出している方向を短手方向とし短手方向に直交する方向を長手方向として被検体を載置する天板と、支持腕部に支持され天板を支持する支持枠と、天板上にX線を照射するX線発生器と、支持枠に支持されて上部でX線発生器を支持する支柱部と、を備えている。支持枠は、短手方向に平行な軸を中心として、支柱部を支持枠に対して回動可能とする回動機構を有している。支柱部は、回動機構に支持されている基底部と、基底部の上部に配置されている支柱本体と、X線発生器を短手方向に沿って移動可能とするスライド機構とを有している。スライド機構は、基底部よりも上部に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検体を載置した天板を移動させずに安定してX線発生器を短手方向に移動させ、被検体の任意の位置を透視することができる。また本発明のX線透視撮影装置は、天板とスタンド部との間のスペースを大きく確保する必要がなく、装置全体をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】X線透視撮影システムSYの全体構成を示す上面から見た図。
【
図3】X線透視撮影装置1の構成例を示すブロック図。
【
図4】X線透視撮影装置1の各機構の制御系の構成例を示すブロック図。
【
図5】(A)、(B)はX線透視撮影装置1の動作例を示す部分側面図。
【
図6】スライド機構部51mの構成を示す部分斜視図。
【
図7】X線透視撮影装置1の動作を示すフローチャート。
【
図8】(A)、(B)はX線透視撮影装置1Bの動作例を示す側面図。
【
図9】スライド機構部52mの構成を示す部分斜視図。
【
図10】(A)、(B)はX線発生器60の移動前後の位置を説明する側面図。
【
図11】X線透視撮影装置1Bの各機構の制御系の構成例を示すブロック図。
【
図12】(A)、(B)はX線透視撮影装置1Cの動作例を示す側面図。
【
図13】(A)、(B)は回動機構部53mの構成を示す部分斜視図。
【
図14】X線透視撮影装置1Cの制御系の構成例を示すブロック図。
【
図15】(A)、(B)は斜入透視撮影時のX線検出器70の動作を示す説明図。
【
図16】(A)、(B)は絞り羽根610A、610Bの動作とX線照射範囲を示す説明図。
【
図17】(A)、(B)はX線検出器70に設けられたグリッド71の作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
まず、本発明のX線透視撮影システムSYの全体構成について説明する。
X線透視撮影システムSYは、
図1に示すように、X線透視撮影装置1と、この撮影装置1に電力を供給する高電圧発生器3と、撮影した像を表示する表示装置80と、これらの機器を統合的に操作する遠隔操作卓2、近接操作卓4を備えている。これらの機器のうち、X線透視撮影装置1、高電圧発生器3、近接操作卓4および表示装置80は、被検体Pの透視撮影を行なう撮影室100に配置されている。また遠隔操作卓2は、X線透視撮影装置1の各部を動作させる機構への指示など撮影技師W1の各種操作を受け付ける操作部122を備えており、撮影室100に隣接する操作室200に設けられている。または、撮影室100内に同様の機能を持った近接操作卓4により術者OP1が操作して、X線透視撮影装置1の各部を動作させてもよい。その場合には、近接操作卓4には、フットペダルなどにより術者OP1が手技を行いながらX線を照射できる機構があることが好ましい。
【0017】
撮影室100は、室内で発生するX線を遮蔽できる構造を有している。そのため、操作室200内にいる撮影技師W1は、X線透視撮影装置1からX線が出射されても被曝しない。なお、撮影室100と操作室200との間には窓200wが設けられており、撮影技師W1が操作室200から撮影室100内の様子を監視できる。この窓200wは、撮影室100からのX線を遮蔽できるように、鉛入りガラスなどで形成されている。
【0018】
この撮影システムSYで、被検体Pの透視撮影と手技を並行して行う、いわゆるIVR等の手技を行うとき、X線の強度や照射間隔などのX線条件の入力は撮影技師W1が遠隔操作卓2で行ってもよいし、近接操作卓4で術者OP1が行ってもよい。高電圧発生器3は、そのX線条件に基づき、パルス波形を有する管電流をX線透視撮影装置1に供給する。X線透視撮影装置1は、X線透視撮影装置1の天板40上に寝かせられた被検体Pに対して間歇的にX線を照射し、各X線に応じた被検体Pの透視画像を生成して、連続的に透視画像を表示装置80に表示させる。術者OP1は、被検体Pの周囲に立ち、表示装置80に表示される透視画像を見ながら手技を行う。この際必要に応じて後述するX線透視撮影装置1の機構を動作させて、被検体Pの任意の位置にX線を照射し透視撮影を行う。
【0019】
<実施形態1>
続いて、上述したX線透視撮影システムSYに備えられている、実施形態1のX線透視撮影装置1について、その構成を説明する。
【0020】
[全体構成]
X線透視撮影装置1は、
図2に示すように、床面に載置されるスタンド部10と、スタンド部10の一側面側に突出している支持腕部20と、支持腕部の突出している方向に直交して延在し被検体Pを載せる天板40と、支持腕部20に支持されて天板40を下から支持する支持枠30と、天板40上にX線を照射するX線発生器60と、支持枠30に支持される支柱部50と、支柱部50の上部で支柱部50とX線発生器60を連結する管球支持部90と、被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器70とを備えている。
【0021】
以下、支持腕部20がスタンド部10から突出している方向(被検体Pの左右方向)を天板40の短手方向といい、天板40の短手方向に直交する方向を長手方向として説明する。
【0022】
スタンド部10はその内部に、支持腕部20、支持枠30、及び支持枠30により支持される天板40、支柱部50、X線発生器60、X線検出器70、及び管球支持部90を矢印A1方向に昇降可能とする昇降機構221(以下、A1昇降機構という)を有している(
図4参照)。この機構221により、X線発生器60とX線検出器70との距離、すなわちX線管焦点・受像面間距離(SID)を維持した状態で支持枠30を昇降させることができる。また支持枠30が昇降可能な構成であるため、天板40の高さを、天板40上に被検体Pを乗せやすい位置、あるいは術者が作業を行ないやすい位置に調節することができる。
【0023】
スタンド部10は、天板40の短手方向に平行な軸を中心として、支持腕部20を回動可能な(矢印A2)天板回動機構222(以下、A2回動機構という)を有している(
図4参照)。この機構222による支持腕部20の回動に伴い、支持枠30及び天板40が支柱部50とともに回動することができる。支持枠30の回動可能範囲は、床面に対して水平な状態から約±90°程度、合計約180°程度であることが好ましい。支持腕部20がこのように回転可能な構成であるため、天板40上の被検体Pの体勢を立たせたり寝かせたり等、変更することができる。
【0024】
支持枠30はその内部に、支柱部50を支持腕部20及び支持枠30に対して天板40の長手方向(矢印A3方向)に移動可能とするスライド機構223(以下、A3スライド機構という)を有している(
図4参照)。
【0025】
支持枠30はさらにその内部に、X線検出器70を天板40の短手方向(矢印A7方向)、及び長手方向(矢印A8方向)にスライドさせる検出器移動機構(以下、検出器スライド機構という)227(
図4参照)を有している。なおX線検出器70の長手方向へのスライドを検出器移動機構227の代わりに、A3スライド機構223が実施可能とする構成であってもよい。その場合、A3スライド機構223は、支柱部50及びX線検出器70を一緒にスライドさせて、X線検出器70の長手方向の位置と、X線発生器60の長手方向の位置とを常に一致させることができる。
【0026】
支持枠30は、スタンド部10側に、天板40の短手方向に平行な軸を中心として支柱部50を回動可能な(矢印A9方向)支柱部回動機構228(以下、A9回動機構という)を有している。このA9回動機構228は、上に円弧を有する半円状の部材の円周部に沿って支柱部50を回動可能とする構成を有しており、この半円状の部材は、A3スライド機構223により天板40の長手方向にスライド可能に配置されている。
【0027】
これらの機構221~223、227、228は公知の構成であってよく、従来のX線透視撮影装置に備えられている機構と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
上述した5つの機構221~223、227、228に加えて、本実施形態のX線透視撮影装置1は、支柱部50が、X線発生器60を天板40の短手方向(矢印A4方向)に沿って移動可能とする短手方向のスライド機構部51mを有している。このA4スライド機構部51mの構成の詳細については後で説明する。
【0029】
X線発生器60は、高電圧発生器3から図示しないケーブルを介して電力供給を受けてX線を発生させるX線管球を有している。高電圧発生器3からX線発生器60に電力を供給するケーブルは、蛇管やケーブルベア(登録商標)等、装置の各種動作及び透視撮影を妨げないような機構および配置であることが好ましい。X線発生器60は、X線発生器60から発せられるX線の照射範囲を制限するX線可動絞り600(
図3)や、特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるX線フィルタなどを有していてもよい。
【0030】
X線検出器70は、X線発生器60に対向するように支持枠30の内部に配置されていて、X線発生器60から照射されるX線の光軸がX線検出器70の中心を常に貫くように、X線発生器60の位置に連動して移動可能である。X線検出器70には、イメージインテンシファイヤとTVカメラとを組み合わせたものや、X線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)等を使用することができる。特に、X線検出器を支持枠内に配置することを考慮すれば、小型・軽量のFPDを使用することが好ましい。
【0031】
[制御系の構成]
X線透視撮影装置1は
図3に示すように、X線検出器70から出力されたX線信号に対して画像処理を行なう画像処理部116と、画像処理部116により処理されたX線画像などの各種情報を記憶する記憶部114と、各構成要素を統合して制御する装置制御部120とを備えている。画像処理部116により処理されたX線画像は、装置制御部120を介して表示装置80に表示される。
【0032】
装置制御部120は、CPU或いはGPUに搭載されるソフトウェアとしてその機能が実現される。また装置制御部120の、一部または全部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programable Gate Array)などのハードウェアで実現することも可能である。
【0033】
X線透視撮影装置1には、上述した装置制御部120とともに、各部の動作を制御するための制御部が備えられている。具体的にはX線透視撮影装置1は、X線発生器60やX線可動絞り600の制御をしてX線発生器60から出射されるX線量を調整するX線制御部123と、装置の各部を移動させる機構を制御する機構制御部124とを備えている。
【0034】
装置制御部120は、操作部122に接続されており、操作部122が受け付けた撮影技師W1或いは術者OP1による操作情報を受信すると、その情報に基づいて機構制御部124等に指示を送る。機構制御部124は、
図4に示すように、X線の照射位置(撮像位置)を調整する撮像系制御部6と、撮像位置に応じてX線検出器70の位置を調整する検出器制御部7とを有している。
【0035】
前述した機構、すなわちA1昇降機構221、A2回動機構222、A3スライド機構223、A9回動機構228及びスライド機構部51mは、撮像系制御部6に接続されている。撮像系制御部6は、操作部122が受け付けた各部を動作させる指示情報に従ってこれらの機構の動作を制御し、撮像位置を調整する。また、検出器スライド機構227は検出器制御部7に接続されており、X線発生器60の位置に連動させてX線検出器70の位置を調整する。
【0036】
操作部122は、装置の移動条件を受け付けるレバーやボタンを備えていたり、移動条件を数値入力などにより受け付けるキーボードやタッチパネルなどのUIを有していたりしてもよい。撮影技師W1や術者OP1は操作部122を介してその移動方向や移動量等の移動条件を入力することで、検出器制御部7の制御のもと、X線透視撮影装置1の矢印A1~A4、A7~A9方向の動作を制御することができる。なお以上で説明した制御部は、その一部又は全部が撮影室200内に設けられていてもよい。
【0037】
[スライド機構部の構成]
次に、支柱部50の、特にスライド機構部51mの具体的な構成について
図5、6を参照し説明する。
図5は、説明のためにX線透視撮影装置1の外装を外した状態を示している。
図6は、スライド機構部51mを
図2の矢印Y1方向からみた(すなわち、スタンド部10側からみた)拡大図である。
【0038】
X線透視撮影装置1の支柱部50は、支柱部回動機構228に支持されている基底部51と、基底部51の上部に配置されている支柱本体52とを備えている。支柱本体52の支持枠30側の側面には、撮影時に被検体Pの関心領域を圧迫する圧迫筒54が設けられている。
【0039】
スライド機構部51mは、基底部51よりも上部(具体的には、基底部51の上端部と支柱本体52の下端部との間)に配置され、支柱本体52を基底部51に対して天板40の短手方向にスライドさせる機構である。スライド機構部51mの駆動により支柱本体52がスライドすることにより、その移動に合わせてX線発生器60をスライドさせることができる。
【0040】
スライド機構部51mには、公知のスライド機構を採用することができるが、図示する例ではラックアンドピニオン機構を有している。具体的には、スライド機構部51mは、基底部51側に、ラック500と直線ガイド501のレール部分とを備えている。ラック500と直線ガイド501のレール部分は、天板40の短手方向と平行に配置されており、ラック500の長さによりX線発生器60の可動範囲が設定されている。一方、スライド機構部51mは支柱本体52側に、直線ガイド501のブロック部分、駆動用のモータ502、駆動用の減速機503、およびラック500と噛み合う駆動用のピニオン504が備えられている。ピニオン504は、減速機503の出力軸の先端に設けられている。このような機構により、モータ502が駆動すると、減速機503がモータ502の回転をピニオン504に伝え、ピニオン504がラック500に噛み合った状態で移動し、支柱本体52が天板40の短手方向(矢印A4方向)にスライド可能となる。
【0041】
[動作]
以下、X線透視撮影装置1の動作例について
図7等を参照し説明する。
【0042】
[ステップs1]
撮影技師W1は、操作部122を操作して、被検体Pが天板40上に載りやすい高さとなるようにA1昇降機構221を動作させて支持枠30の高さを調整する。この時点では、
図5(A)に示すように、支柱本体52はスタンド部10に近づいて収納された状態となっている。
[ステップs2]
この状態で、術者OP1は、天板40の上に被検体Pを横たわらせる。
【0043】
[ステップs3]
装置制御部120は、操作部122が撮影技師W1により操作されて撮像位置の変更指示の入力を受け付けたかどうかを判断する。X線透視撮影装置1の動作フローは、操作部122が撮影技師W1による入力を受け付けると、次のステップs4に進む。
【0044】
[ステップs4]
撮影系制御部6は、撮影技師W1が入力した撮像位置に応じて、各機構の動作を制御し、X線発生器60を天板40の長手方向及び短手方向に移動させて、透視撮影の開始位置に配置する。X線発生器60や支持枠30の傾きを変える場合は、X線発生器60とX線検出器70との距離(SID)を維持した状態で行う。
【0045】
[ステップs5]
装置制御部120は、操作部122が撮影技師W1による透視撮影開始の指示入力を受け付けたかどうかを判断する。X線透視撮影装置1の動作フローは、操作部122が透視撮影開始の指示入力を受け付けると、次のステップs6に進む。
【0046】
[ステップs6]
X線発生器60から所定の間隔でX線が照射され、透視撮影が始まる。このとき、必要に応じて圧迫筒54で被検体Pの関心領域を圧迫した状態で撮影する。撮影された透視画像は表示装置80に表示され、術者は表示装置80に表示される透視画像を見ながら被検体Pに対して手技を行う。
【0047】
[ステップs7]
装置制御部120は、撮影技師W1が操作部122を操作して撮像位置を天板40の短手方向に移動する指示が入力されたかどうかを判断する。
【0048】
[ステップs8]
撮像系制御部6は、透視撮影が継続した状態で、
図5(B)に示すようにスライド機構部51mを駆動させて、X線発生器60を、天板40の短手方向の被検体P側(矢印A4)に移動させる。具体的には、撮像系制御部6は、装置制御部120が受け付けた指示に応じ、スライド機構部51mに対して、指示された移動量でX線発生器60が移動するようにモータ502を回転させる信号を送る。これにより、ピニオン504がラック500に噛み合った状態で移動し、X線発生器60が天板40の短手方向に移動する。
【0049】
検出器スライド機構227は、スライド機構部51mと連動して同方向にX線検出器70の位置を移動させる。これにより、照射されるX線の光軸を、X線検出器70の中心を常に貫くように位置づけることができる。
【0050】
[ステップs9]
装置制御部120は、撮影技師W1がX線撮影をするように操作部122を操作したかどうかを判断する。
【0051】
[ステップs10]
撮影系制御部6がスライド機構部51mによるX線発生器60の移動を一時停止させ、検出器制御部7が検出器スライド機構227によるX線検出器70の移動を一時停止させる。このようにX線発生器60が位置決めされた状態で、X線が照射されてX線画像が撮影される。X線画像は表示装置80に表示される。X線撮影が終了したら、X線発生器60とX線検出器70の移動、及び透視撮影が再開される。
【0052】
[ステップs11]
装置制御部120は、撮影技師W1が操作部122を介して入力した所定位置まで透視撮影が終了したかどうかを判断する。
【0053】
[ステップs12]
透視撮影が終了する。撮影技師W1が撮影終了の指示を操作部122から入力すると、X線発生器60はX線の照射を停止する。スライド機構部51mの駆動が停止し、X線発生器60の天板40の短手方向への移動が止まる。
【0054】
[ステップS13]
撮像系制御部6は、被検体Pが天板40上から降りやすい高さとなるように支持枠30を調整し、支柱本体52を
図5(A)に示すように、最もスタンド部10に近づいた状態に戻す。
【0055】
このようにして、実施形態1のX線透視撮影装置1による、被検体の透視撮影が行われる。なお以上の動作では、操作部122の操作が撮影技師W1により行われるものとしたが、操作部122と同様の操作部が近接操作卓4にも設けられていて、術者OP1がX線発生器60の位置を変更できるようにしてもよい。
【0056】
以上のように、実施形態1のX線透視撮影装置1では、スライド機構部51mにより、X線発生器を天板の短手方向に沿って移動させながら被検体の任意の位置を透視することができる。そのため、透視撮影中に天板を支持腕部の突出方向に沿って移動させる必要がなくなり、被検体の負荷を軽減することができる。
【0057】
特にX線透視撮影装置1を用いたIVRでは、被検体自体を天板の短手方向に沿って移動することなく手技を行うことができるので、術者及び被検体に対する負荷を大幅に軽減することができる。
【0058】
X線透視撮影装置1では、スライド機構部51mが、支持枠の支柱部回動機構に支持されている基底部51よりも上部に配置されていることにより、スタンド部と天板との間に支柱部を短手方向にスライドさせるためにスペースを大きく確保する必要がない。そのため、装置全体をコンパクトにできる。
【0059】
またX線透視撮影装置1は、スライド機構部51mが、基底部のすぐ上部の支柱本体ごとスライド可能としているため、非常に重い構成のX線発生器であっても、安定して天板の短手方向にスライドさせることができる。
【0060】
さらにX線透視撮影装置1では、スライド機構部51mを有する支柱部50が支持腕部20とは異なる位置で支持枠30に支持されているため、支持枠30をスライドや回動させる機構ごと移動させる必要がなく、短手方向への移動機構を容易に構成することができる。またこれにより、支持腕部20ごとスライドさせるよりも装置の奥行きをコンパクトにできる。
【0061】
さらに本実施形態のX線透視撮影装置1では、スライド機構部51mが圧迫筒54よりも下部に設けられているため、スライド機構部51mの駆動時にX線発生器60と圧迫筒54が連動して動き、圧迫筒54による被検体の圧迫位置を、X線照射範囲の中心と常に合わせることができる。
【0062】
<実施形態2>
実施形態2のX線透視撮影装置1Bについて、実施形態1のX線透視撮影装置1と異なる点について説明する。X線透視撮影装置1Bは、
図8(A)に示すように、スライド機構部51mに加え、支柱本体52の上端と管球支持部90の下端とを連結する位置に、X線発生器60を天板40の短手方向(矢印A5方向)にスライド可能とする短手方向スライド機構部52mを備えている。
【0063】
[構成]
以下、スライド機構部52mの具体的な構成について、
図8、9を参照して説明する。
図9は、スライド機構部52mを
図8(A)の矢印Y2方向からみた(すなわち、支持枠30側からみた)拡大図である。
【0064】
スライド機構部52mは、公知のスライド機構を採用することができるが、図示する例ではスライド機構部51mと同様のラックアンドピニオン機構を有している。具体的には、スライド機構部52mは、支柱本体52側に、ラック510と、直線ガイド511のレール部分とを備えている。ラック510と、直線ガイド511のレール部分は、矢印A5方向に平行に配置されている。一方、スライド機構部52mの管球支持部90側には、直線ガイド511のレールに沿って移動可能な管球スライド部53が設けられており、管球スライド部53には直線ガイド511のブロック部分、駆動用のモータ512、および駆動用ピニオン513が設けられている。X線発生器60は、管球支持部90に対してスタンド部10とは反対側の先端に取り付けられている。ピニオン513は、管球スライド部53の先端にチェーンおよび減速機等を介して設けられている。
【0065】
モータ512が回転すると、ラック510とピニオン513が噛み合った状態で、管球スライド部53が管球支持部90とX線発生器60ごと矢印A5方向にスライドする。
【0066】
X線透視撮影装置1Bでは、X線発生器60の天板40に対する短手方向の可動範囲は、2つのスライド機構部51m、52mによるX線発生器60の可動範囲の合計である。天板40の短手方向の長さが
図10に示すように700mmの場合、例えばX線発生器60はスライド機構部51mにより200mm、スライド機構部52mにより400mm移動させることで、合わせて600mm移動可能となる。これによりX線の照射可能範囲(すなわち撮像可能範囲)を天板40の短手方向の一端から他端まで移動させることができる。
【0067】
実施形態2では、撮像系制御部6は
図11に示すように、A1昇降機構221、A2回動機構222、A3スライド機構223、A9回動機構228、スライド機構部51mに加え、スライド機構部52mに接続されている。また検出器移動機構227は、スライド機構部51m、52mの駆動によるX線発生器60の、天板40の短手方向に沿うスライド動作に連動させてX線検出器70を移動し、X線の光軸がX線検出器70の中心を常に貫くようにその位置を調整する。
【0068】
実施形態2において、操作部122として、スライド機構51mを駆動させる操作部とスライド52mを駆動させる操作部とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。スライド機構51mを駆動させる操作部とスライド52mを駆動させる操作部とが同一の場合、スライド機構部51mによるX線発生器60スライド動作を優先させて行うことが好ましい。すなわち、X線発生器60の大まかな移動は支柱本体52とその上部の重い構造全てを支えているスライド機構部51mにより行い、細かな調整は、支持している構造がより軽いスライド機構部52mにより行うことが好ましい。
【0069】
[動作]
以下、実施形態2のX線透視撮影装置1Bの動作例について説明する。X線透視撮影装置1Bの動作は、
図7に示すX線透視撮影装置1の動作と同様であり、天板40の短手方向にX線発生器60を移動させる際のステップs8のみが異なる。以下、ステップs8のX線透視撮影装置1Bの場合の動作について説明する。
【0070】
[ステップs8]
撮像系制御部6は、
図8(B)に示すようにスライド機構部51m及びスライド機構部52mを駆動させて、X線発生器60を、天板40の短手方向の被検体P側(矢印A4、A5)に操作部122を介して入力された移動量でスライドさせる。
【0071】
以上の通り実施形態2のX線透視撮影装置1Bでは、天板40の短手方向のサイズ(装置の奥行きサイズ)を従来と同程度に抑えたままで、実施形態1のX線透視撮影装置1よりも広い範囲での撮像が可能となる。
【0072】
またスライド機構部52mは支柱本体52の上端に設けられているため、スライド機構部51m、52mを両方駆動させることにより、スライド機構部51mが支柱部50を被検体Pにぶつからない位置まで移動させ、且つスライド機構部52mがX線発生器60の位置を天板40の術者側の端部(スタンド部10とは反対側の端部)まで移動させて撮影できるようになる。
【0073】
なお、天板40の術者側の端部で撮影を行う際、一般に圧迫筒を使用しない。そのためスライド機構部52mの駆動時、圧迫筒54の位置はX線発生器60移動に連動しなくてもよい。スライド機構部52mの駆動時に圧迫筒54を使用したい場合、X線発生器70の位置を位置センサ等で検出し、X線照射範囲の中心と被検体を圧迫する中心とが一致するかどうかを判断し、一致する場合のみ圧迫動作を許可する構成としてもよい。これらの中心が一致しない場合は、ずれている方向やそのずれ量を表示装置80及び操作部122に示すことが好ましい。
【0074】
<実施形態3>
以下、実施形態3のX線透視撮影装置1Cについて説明する。X線透視撮影装置1Cは、
図12に示すように、スライド機構部51m、52mに加え、X線発生器60を天板40の長手方向に平行な軸Rを中心に回動可能(矢印A6方向)とする回動機構部53mを管球支持部90に備えている。これによりX線透視撮影装置1Cは、短手方向の斜入(被検体に対して被検体の体軸に平行な軸を中心に斜めからX線を照射すること)を可能にする。
図13(A)、(B)はそれぞれ、回動機構部53mを上からみた図と下からみた図である。
【0075】
以下、回動機構部53mの具体的な構成について説明する。
回動機構部53mは、
図13に示すように、モータ520と、モータ520の回転により回転する主動滑車521と、主動滑車521の回転に連動して回転する従動滑車522と、従動滑車522の回転方向を主動滑車521の回転方向に対して直交するように変換する減速機523と、滑車521、522を連結するベルト524と、天板40の長手方向に平行な軸である回転軸部53sと、X線発生器60に噛み合って回転軸部53sを中心に回動するギア525とを備えている。
【0076】
X線発生器60は回転軸部53sと平行な軸Rを有する筒状の形状を有しており、その外周に対してギア525の円弧状の部分が固定されギア525の回転に伴い軸Rを中心に回動するように構成されている。
【0077】
具体的には、モータ520が回転すると主動滑車521が回転し、その回転に連動して従動滑車522が回転する。従動滑車522の回転により回転軸部53sを中心にギア525が回転する。X線発生器60は、ギア525の回動に連動して軸Rを中心に矢印A6方向に回動する。
【0078】
実施形態3では、撮像系制御部6は
図14に示すように、A1昇降機構221、A2回動機構222、A3スライド機構223、A9回動機構228、スライド機構部51m、52mに加え、回動機構部53mにも接続されている。また検出器制御部7は、スライド機構部51m52mによる支柱部50のスライド、及び回動機構部53mによるX線発生器60の回動に連動して、X線の中心がX線検出器70の中心と常に一致するように、X線発生器60の移動距離と回動角度からX線検出器70の位置を調整する。
【0079】
以下、実施形態3のX線透視撮影装置1Cの動作例について説明する。
X線透視撮影装置1Cの動作は、
図7に示す実施形態1のX線透視撮影装置1の動作と同様であり、X線発生器60を移動させるステップs8のみが異なっているため以下、そのステップs8における動作について説明する。
【0080】
[ステップs8]
撮像系制御部6が、
図12(B)に示すようにスライド機構部51m、52m、及び回動機構部53mを駆動させる。スライド機構部51m、52mによりX線発生器60が天板40の短手方向の被検体側(矢印A4、A5)に指示された移動量でスライドし、回動機構部53mによりX線発生器60が回動する(矢印A6)。これによりX線が被検体Pに対して斜めに照射される。
【0081】
X線発生器60はその内部にX線管や絞り羽根などが備えられているため、重くなっている。そのため、スライド機構部51m、52mによりX線発生器60が矢印A4、A5方向へ移動した後に、回動機構部53mによって矢印A6方向に回動するという順番で操作を行うことが好ましい。
【0082】
このようにX線発生器60を回動させながら透視撮影を行うと(以下、斜入透視撮影という)、
図15(A)に示すように、X線の入射位置がX線検出器70の中心からずれる。装置制御部120はそのずれ分を計算して、検出器スライド機構227にX線検出器70をA7方向にスライドさせる。これにより、X線検出器70の中心にX線の入射位置(撮影点)を一致させた状態で斜入透視撮影を行うことができる。
【0083】
また、上述の通りX線発生器60は非常に重い構成であるが、X線透視撮影装置1Cでは、回動機構部53mが支柱本体52の上端の管球支持部90に設けられているため、X線発生器60を支柱本体52ごと回動させて斜入透視撮影を行うよりも、X線発生器60を安定して回動させることができる。
【0084】
次に、斜入に伴い実施される装置制御部120による制御、あるいは調整について説明する。装置制御部120が行う制御には例えばX線量の制御、X線強度の調整、絞り羽根の調整、グリッドの調整などがある。装置制御部120は、斜入透視撮影時にこれらの1つ以上を実施することが好ましい。
【0085】
[X線量の制御]
まずX線量の制御について説明する。
斜入透視撮影時には、透視撮影中にX線発生器60と被検体との距離(撮影距離)が変わる。これにより、出射されるX線量が同じであっても被検体Pが受けるX線強度が変化するため、透過画像の撮影部位ごとに濃度ムラが生じる場合がある。装置制御部120は、以下の式(1)により被検体が受けるX線強度を算出する。X線制御部123は、被検体が受けるX線強度がどの撮影タイミングでも同じとなるように高電圧発生器3の出力を制御する。これにより、画像の濃度ムラを抑えた透視撮影が可能となる。
【0086】
【0087】
撮影距離の計測方法には、例えば撮像系制御部6がX線発生器60の斜入角度θを計測してその角度θに応じて撮影距離を随時算出する方法や、X線可動絞り600等に距離センサを固定し、距離センサにより撮影距離を実測する方法などを用いることができる。
【0088】
[画像処理におけるX線強度の調整]
続いて、画像処理によるX線強度の調整について説明する。
斜入透視撮影時、X線はX線発生器60から放射状に出射されるため、同じタイミングで照射されるX線であってもその強度が、被検体Pの位置ごとに異なる。例えば
図15(B)に示すように斜入角度θでの斜入透視撮影時、被検体Pに対して入射するX線の術者OP1側の端部T1と、その反対側の端部T2とでは、それぞれの撮影距離D1、D2が異なるため、X線強度が異なる。このX線強度の差は斜入角度が大きいほど大きくなる。
【0089】
装置制御部120は、放射状のX線の被検体に対する入射位置ごとに上記式(1)を用いて、被検体が受けたX線強度を算出する。画像処理部116は、あるタイミングにおいて撮影された透視画像を、そのタイミングで被検体の各部が受けたX線強度に基づいて補正することにより、濃度ムラのない透視画像を作成することができる。
【0090】
[絞り羽根の調整]
続いて、絞り羽根の調整について説明する。
実施形態3では
図16(A)に示すように、X線可動絞り600に、それぞれ異なる開口幅となるように独立して開閉可能な複数の絞り羽根(以下、非連動の絞り羽根という)610A、610Bが設けられていることが好ましい。X線が放射状に出射されるため、斜入透視撮影時には、出射直後ではX線が術者OP1側とその反対側とでほぼ同じ幅に広がっていても(L1=L1)、X線検出器70に照射される際の幅(受像領域)r1、r2の大きさが異なることがある(ここでは、r1<r2)。受像領域r1、r2の差は、斜入角度が大きいほど大きくなる。
【0091】
そのため、絞り羽根610A、610Bが連動であると、検出器70での受像領域を最大にした場合にX線を出射すると、X線検出器70の有感領域よりも広い範囲にX線が照射され、被検者および術者に不要な被爆が発生する(
図16(A))。そこで、
図16(B)に示すように、絞り羽根610A、610Bを非連動とし、X線発生器60の回動角度に応じて両側の照射領域の差を計算し補正することで、受像領域が最大の状態で、被検者及び術者の不要な被爆を防ぐことができる。この図では、受像領域がX線検出器70の有感領域を超えていた側の絞り羽根610Bの幅を狭める(すなわち、L1>L2とする)ことで、不要被爆を防ぐことができる。
【0092】
[グリッドの調整]
続いて、グリッドの調整について説明する。
X線検出器70には、
図17(A)に示すように、散乱線を除去するグリッド71が配置されていてもよい。グリッド71には、平行グリッド、集束グリッド、クロスグリッドなどを用いることができる。グリッド71を配置した場合、射入撮影時のX線発生器60の回動角度によっては、X線発生器60から出射されたX線が、X線検出器70に対して斜めに入射されてグリッド71により除去されX線検出器70に到達しない可能性がある。グリッド71が平行グリッドの場合、射入撮影時、
図17(B)に示すように、グリッド71、もしくはグリッド71とX線検出器70をX線発生器60の回動角度に合わせて回動させることにより、散乱線の影響を受けない鮮明な画像を提供することができる。また、グリッド71を配置せず(グリッドレス)、撮影後の画像から散乱線の影響を除去する画像補正処理を行ってもよい。
【0093】
以上の通り、実施形態3のX線透視撮影装置1Cによれば、X線発生器を天板の短手方向に移動できる上に、短手方向に直交する軸Rを中心に傾けることができるため、撮影中に被検体を動かすことなく、X線の照射位置および照射角度を変更することができる。
【0094】
例えば、被検体の撮像したい箇所で臓器が重なっている場合においても、従来のように医療従事者が麻酔中の被検体の身体をX線管球に対して斜めに傾けて、臓器の重なりを避けながら撮影を行う必要がなくなる。X線透視撮影装置1Cでは、このような場合であっても、被検体に触れることなく適切な角度でX線透視撮影を行うことができる。
【0095】
なお、X線発生器60は、X線が術者に向けて照射されないような構成、あるいはX線が術者に向かないように制御されることで(例えば回動可能角度±15度)、術者の不要な被爆を防ぐことが好ましい。
【0096】
上述した実施形態1~3は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせ可能であり、本発明に含まれる。例えば、スライド機構部52mや、回動機構部53mはそれぞれ独立してX線透視撮影装置に搭載されていてもよいし、スライド機構部51mと回動機構部53m、あるいはスライド機構部52mと回動機構部53mが搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1・・・X線透視撮影装置、2・・・遠隔操作卓、3・・・高電圧発生器、4・・・近接操作卓、10・・・スタンド部、20・・・支持腕部、30・・・支持枠、40・・・天板、50・・・支柱部、51m、52m・・・スライド機構部、52・・・支柱本体、53m・・・回動機構部、54・・・圧迫筒、60・・・X線発生器、70・・・X線検出器、80・・・表示装置、90・・・管球支持部、100・・・撮影室、P・・・被検体、SY・・・X線透視撮影システム