(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068319
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】低エンドトキシンのキトサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
C08B37/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025138
(22)【出願日】2022-02-21
(62)【分割の表示】P 2020116148の分割
【原出願日】2014-05-29
(31)【優先権主張番号】1309606.0
(32)【優先日】2013-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】510282952
【氏名又は名称】メッドトレイド プロダクツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDTRADE PRODUCTS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ホガース,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】グラッドマン,ジューン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体の製造方法、低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、およびキトサン誘導体の製造方法、ならびにこれらの方法によって得られる製造物を提供する。
【解決手段】方法は、キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体をアルカリ溶液と接触させて混合物を形成する工程と、該混合物を1時間未満放置する工程と、任意に該混合物を乾燥させる工程とを含む。低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、その他の有用なキトサン系生成物の製造において使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドトキシンとアルカリを含む低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法であって、
(a)カルボキシメチルキトサン、N-アシルキトサン、O-アシルキトサン、N-アルキルキトサン、O-アルキルキトサン、N-アルキリデンキトサン、O-スルホニルキトサン、硫酸化キトサン、リン酸化キトサン、キトサン硝酸塩及びキトサンとの金属キレートからなる群から選択されたキトサン誘導体を、0.01M以上0.2M以下の濃度のアルカリ溶液と接触させて、混合物を形成する工程と、
(b)(a)の工程の前記混合物を10秒以上1時間未満放置する工程と、
(c)(b)の工程で生じた前記混合物を乾燥させる工程とからなる低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項2】
前記アルカリ溶液の濃度が0.1Mである請求項1に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項3】
前記アルカリ溶液と、キトサン誘導体とが、アルカリ溶液10部に対してキトサン誘導体1部から、アルカリ溶液1部に対してキトサン誘導体10部までの範囲内で存在する、請求項1または2に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項4】
前記アルカリ溶液が、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属重亜硫酸塩、金属過ケイ酸塩、および水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ成分またはアルカリ土類成分を単独でまたは組み合わせて含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項5】
前記金属が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウムから選ばれる請求項4に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項6】
前記アルカリ成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または炭酸ナトリウムから選ばれる請求項4または5に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項7】
前記工程(a)において、前記アルカリ溶液を前記キトサン誘導体に対し噴霧するか、または前記キトサン誘導体を前記アルカリ溶液と混合する、請求項1から5のいずれか1項に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項8】
前記工程(b)において、前記(a)の工程の前記混合物を清潔な容器内に放置するか、および/または不活性雰囲気下で放置する、請求項1から7のいずれか1項に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項9】
前記(a)・(c)のいずれか1つの工程の前記混合物が防腐剤をさらに含む請求項1から7のいずれか1項に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項10】
前記防腐剤が、銀イオン、亜鉛イオン、クロルヘキシジン、またはこれらの組み合わせから選ばれる請求項9に記載の低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を製造する方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法によって得られる低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法によって得られる低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を酸と接触させることにより反応物を製造する方法であって、
前記酸は、前記混合物を中性とするのに必要な容量及び濃度の酸または該容量及び濃度より多い容量及び濃度の酸であることを特徴とする反応物を製造する方法。
【請求項13】
前記酸を前記低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物に対し噴霧するか、または前記低エンドトキシンのアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を前記酸と混合する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸が、有機酸、カルボン酸、脂肪酸、アミノ酸、ルイス酸、一塩基酸、二塩基酸、多塩基酸、および鉱酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機酸が、酢酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、アセチルサリチル酸、グルコン酸、および乳酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪酸が、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α・リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサヘキサエン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アミノ酸が、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、およびタウリンから単独でまたは組み合わせて選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記鉱酸が、塩酸、硫酸、および硝酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記酸の濃度が1Mである請求項12から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記酸が、前記酸と非溶媒とを含む酸液として存在し、
前記非溶媒が、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、アセトン、80:20の割合のエタノールと水の混合物から選ばれる請求項12から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記エンドトキシンとアルカリを含むアルカリ性のキトサン誘導体の混合物を前記酸と5分間混合する請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記反応物を乾燥させる工程をさらに含む請求項12から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
請求項12から22のいずれか1項に記載の方法により得られる反応物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンの製造方法、低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、およびキトサン誘導体の製造方法、ならびにこれらの方法によって得られる製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
キトサンは、出血を制御するのに使用する止血用材料の調製において特に有用である。
【0003】
キトサンは、甲殻類の加工から生じる固体廃棄物の派生物であり、菌類を培養して抽出することができる。キトサンは水不溶性のカチオン性高分子材料である。キトサンを止血用材料に使用する前に、多くの場合まずキトサンを水溶性の塩へ転換する。これにより、キトサン塩は血液中に溶解し、ゲル状となって血液の流れを止める。
【0004】
キトサンは体内で容易に分解されるので、キトサン塩は本明細書に記載する応用例に理想的に適している。キトサンはリゾチーム酵素によりグルコサミンに転換される。そのため、体内から自然に排出される。キトサンを体内から取り除く必要はない。さらに、キトサン塩には穏やかな抗菌性があり、そのようなものとしてキトサン塩を使用することによって感染のリスクが減少する。
【0005】
出血を制御するために使用するのに適した止血用材料の調製でキトサンを用いるには、キトサンに含有されるエンドトキシンの濃度が十分に低いことを保証する必要がある。
【0006】
エンドトキシンは、グラム陰性菌(gram-negative bacteria)の外膜表面(surface of the outer membrane)に存在するリポ多糖体(lipopolysaccharide)である。エンドトキシンは、哺乳類、特にヒトにとって非常に有毒であり、含有されている材料から取り除くことが非常に難しいことで知られている。通常はその存在が認められない血流やその他の組織にエンドトキシンが放出されると、エンドトキシンは発熱を引き起こすことがある。したがって、薬学的観点から許容される製造物からエンドトキシンを取り除く必要がある。
【0007】
発熱因子(パイロジェン)、特にエンドトキシンを取り除くまたは破壊する処置は「パイロジェン除去」と呼ばれている。エンドトキシンを含有する材料にパイロジェン除去を施す手法としては、イオン交換クロマトグラフィー、限外瀘過、蒸留、およびエンドトキシンの破壊を目的とする様々な化学的方法がある。
【0008】
WO2008063503(特許文献1)は、キトサンからエンドトキシンを取り除く方法に関するものである。該方法は、
a)無菌環境において、殺菌済みの発熱因子が存在しない(pyrogen-free)設備および材料を使用する工程、
b)エンドトキシンを含有するキトサンを最大24時間で膨潤させる工程、
c)1kg/25Lから1.5kg/25Lのキトサンを、0.01Mから4.0Mの塩基性水酸化物(hydroxide base)中に溶解させる工程、
d)得られた塩基性のキトサン溶液を継続的に撹拌する工程、
e)該溶液を撹拌しながら、60℃から100℃で45分間から4時間加熱する工程、
f)該溶液を、その容積の最大10倍のエンドトキシンフリーの(endotoxin-free)超純水で濯ぐ工程、
g)該溶液をpH6.8から7.5の範囲で中和する工程、
h)超高純度の低エンドトキシンのキトサンスラリーを形成させ、スラリーをエンドトキシンフリーの閉鎖系(closed system)に移す工程、および
i)スラリーから余分な水分を取り除く工程を含む。
【0009】
これは、複雑でコストのかかる方法である。特に、無菌設備を必要とし、溶液をその容積の10倍のエンドトキシンフリー水で濯ぐ必要がある。
【0010】
US2006293509(特許文献2)は、低エンドトキシンの水溶性キトサンを製造する方法に関する。該製造方法は、
(a)水不溶性のキトサンを塩基性溶液と、第1の期間である1時間を超えて接触させる工程、
(b)望ましくはエンドトキシンフリー水を用いて、残存する塩基性溶液を取り除くために水不溶性のキトサンを濯ぐ工程、
(c)相間移動剤を含む反応溶液中で、水不溶性のキトサンを部分的にアセチル化する工程、
(d)界面活性剤を含み、約7.0から約7.4のpHを有する水性溶液に、部分的にアセチル化された水溶性のキトサンを溶解させる工程、
(e)該水性溶液に水混和性溶媒を加え、さらに水性溶液のpHを少なくとも8.0に調整して、水性溶液/水混和性溶媒の混合液から、低濃度のエンドトキシンを含む水溶性キトサンを沈殿させる工程、および
(f)任意に、イソプロパノールなどの非溶媒中で洗浄する工程を含む。
【0011】
しかし、この方法は複雑で費用がかり、この方法では大量のエンドトキシンフリー水またはその他の溶液を使用することが望ましい。また、この方法では相間移動剤の使用を必要とし、数時間以上の工程となる。
【0012】
TW593342(特許文献3)は、キトサン中のエンドトキシンを減少させる方法に関する。該方法は、
(a)エンドトキシンを含むキトサンを水性溶液中に溶解させる工程、
(b)水性溶液を界面活性剤と接触させ、エンドトキシンの含有量が減少した水不溶性の固形物と水性溶液を形成させる工程、および
(c)固体/液体分離手段により、固形物を水性溶液から分離する工程を含む。
【0013】
しかし、この方法は、不溶性の固形物を得るために、溶解したキトサンと反応する界面活性剤を必要とする。得られる固形物は、キトサンと界面活性剤の混合物またはキトサンと界面活性剤との反応生成物であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2008/063503号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/293509号
【特許文献3】台湾特許第593342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前述の問題を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の態様においては、低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体の製造方法が提供される。この方法は、
(a)キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体をアルカリ溶液と接触させて、混合物を形成する工程と、
(b)該混合物を1時間未満放置する工程とを含む。
【0017】
本発明の方法は、該混合物を乾燥させる工程(c)をさらに含んでもよい。
【0018】
本発明により、低濃度のエンドトキシンを含むアルカリ性キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体を効率的に製造する方法が提供される。本発明の方法には、洗浄工程、濯ぎ工程、界面活性剤や相間移動剤の使用、無菌設備、かつ/またはエンドトキシンフリー水の使用を必要としないという利点がある。さらに、専門的な(specialist)エアフィルターや無菌状態も必要としない。本発明の方法は、キトサンをアセチル化する工程を含まないことが好ましい。また、本発明の方法は、エンドトキシンフリーの設備を使用しない。このことは、無菌設備を必要とする方法と比べると、処理工程のコストを削減することになるので特に有益である。
【0019】
本明細書で使用する用語「キトサン誘導体」とは、部分的に脱アセチル化(partially deacetylated)されたキチンを意味し、所望に応じて脱アセチル化の程度は異なってもよい。一般的には、本発明での使用に適した部分的に脱アセチル化されたキチンは、約50%を超える程度に脱アセチル化されている。より典型的には約75%を超える程度、最も典型的には約85%を超える程度に脱アセチル化されている。
【0020】
また、本明細書で使用する用語「誘導体」とは、キトサンまたはキチンとその他の化合物との反応物を意味する。このような反応物としては、カルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan)、ヒドロキシルブチルキチン(hydroxyl butyl chitin)、N-アシルキトサン(N-acyl chitosan)、O-アシルキトサン(O-acyl chitosan)、N-アルキルキトサン(N-alkyl chitosan)、O-アルキルキトサン(O-alkyl chitosan)、N-アルキリデンキトサン(N-alkylidene chitosan)、O-スルホニルキトサン(O-sulfonyl chitosan)、硫酸化キトサン(sulfated chitosan)、リン酸化キトサン(phosphorylated chitosan)、キトサン硝酸塩(nitrated chitosan)、アルカリキチン(alkalichitin)、アルカリキトサン(alkalichitosan)、またはキトサンとの金属キレート(metal chelates with chitosan)などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【0021】
本発明の第一の態様においては、低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体の製造方法が提供されるが、以下では、便宜上例示を目的として、キトサンに関連して説明する。
【0022】
キトサンは、食物等級、医療等級、または医薬品等級のキトサンなど、市販のキトサンを用いることができる。したがって、本発明の方法により、市販のキトサンから低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを得ることができる。これは、キトサン製造工程の一部としてエンドトキシンの除去または低減を行う工程とは異なる。有益なことに、本発明の方法によれば、含有するエンドトキシンの濃度のために医療分野にはもともとは不適切であっただろう調製されたキトサンから、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを得ることができる。
【0023】
本明細書で使用する用語「アルカリ性キトサン」とは、pH値が7.5を超えるキトサン組成物を意味する。
【0024】
本明細書で使用する用語「アルカリ溶液」とは、pH値が7.5を超える溶液を意味する。
【0025】
エンドトキシンの分子量は様々に異なるので、エンドトキシンの濃度は材料1グラム当たりのエンドトキシン活性単位(EU)で計測する。エンドトキシンの濃度は、特定量の基準エンドトキシンに対する相対量として計測する。
【0026】
たとえば、本発明では、エンドトキシンの濃度はキトサン1グラム当たりのエンドトキシン活性単位で計測する。本明細書で使用する用語「低エンドトキシン」とは、キトサン1グラム当たりのエンドトキシン活性単位が50未満である濃度のエンドトキシンを意味する。
【0027】
したがって、本発明の方法は、エンドトキシンの濃度が50EU/g未満のアルカリ性キトサンを製造するのに適している。
【0028】
本発明により得られるアルカリ性キトサンは、エンドトキシンの濃度が30EU/g未満であり、好ましくは20EU/g未満、より好ましくは15EU/g未満、さらに好ましくは10EU/g未満、最も好ましくは5EU/g未満がよい。
【0029】
本発明の方法では、アルカリ溶液は低濃度であることが望ましいことが分かった。本発明の方法で使用するアルカリ溶液の濃度は約0.01Mから約1Mでよい。好ましくは、アルカリ溶液の濃度は1M未満であるのがよい。より好ましくは、アルカリ溶液の濃度は約0.02Mから0.25M、さらに好ましくは、約0.04Mから0.06Mであるのがよい。典型的には、アルカリ溶液の濃度は0.05Mである。また、アルカリ溶液の濃度は、最大約0.01M、0.05M、0.10M、0.15M、0.20M、0.25M、0.30M、0.35M、0.40M、0.45M、0.50M、0.55M、0.60M、0.65M、0.70M、0.75M、0.80M、0.85M、0.90M、または0.95Mであってもよい。アルカリ溶液の濃度が0.1Mのときに良好な結果が得られることが観察された。
【0030】
いくつかの実施形態においては、キトサンに対するアルカリ溶液の量は、アルカリ溶液約10部に対してキトサン約1部から、アルカリ溶液約1部に対してキトサン約10部までの範囲でよい。好ましくは、キトサンに対するアルカリ溶液の量は、キトサン約2部に対してアルカリ溶液約1部がよく、より好ましくは、キトサン約1部に対してアルカリ溶液約1部がよい。
【0031】
アルカリ溶液は、金属水酸化物(metal hydroxides)、金属炭酸塩(metal carbonates)、金属重亜硫酸塩(metal bisulphites)、金属過ケイ酸塩(metal persilicates)、共役塩基(conjugate bases)、および水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)から選ばれるアルカリ成分またはアルカリ土類成分を単独でまたは組み合わせて含んでよい。
【0032】
好適な金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウムが挙げられる。
【0033】
好ましくは、アルカリ成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または炭酸ナトリウムがよい。典型的には水酸化ナトリウムを使用する。
【0034】
アルカリ溶液をキトサンと接触させるには、当該技術分野において周知である、いずれかの好適な手段により行ってよい。たとえば、アルカリ溶液をキトサンに対し噴霧すればよい。または、キトサンをアルカリ溶液と混合してもよい。また、アルカリ溶液と接触したキトサンを均一に分散するのが好ましい。
【0035】
好ましくは、キトサンをアルカリ溶液と混合するのがよい。低分子量であるなら、キトサンはアルカリ溶液中に完全にまたは部分的に溶解する。キトサンはアルカリ溶液と最大約30分間混合してもよいが、より好ましくは約10分間混合するのがよい。いくつかの実施形態においては、キトサンをアルカリ溶液と30分間を超えて混合してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態においては、キトサンはアルカリ溶液に溶解しない。
【0037】
いくつかの実施形態においては、キトサンはアルカリ溶液中で膨潤(swell)しない。
【0038】
いくつかの実施形態においては、アルカリ溶液は、キトサンを溶解せずに、またはキトサンを膨潤させずに、キトサンを湿らせる(wet)。
【0039】
いくつかの実施形態においては、キトサンとアルカリ溶液との混合物を、工程(b)の間断続的に撹拌してもよい。
【0040】
キトサンとアルカリ溶液との混合物はある期間放置される。この期間にエンドトキシンは十分に破壊される。キトサンとアルカリ溶液との混合物を1時間未満放置する。キトサンとアルカリ溶液を1時間未満という短期間放置すると、それ以降の処理工程で結果として得られるアルカリ性キトサン中のエンドトキシンの濃度が望ましい低濃度になることを発見した。
【0041】
混合物を1時間未満放置した場合、エンドトキシンの濃度が適切に低濃度となることが観察された。処理という観点から見れば、キトサンとアルカリとの混合物を放置する時間が短ければ短いほど、より望ましい。本発明の方法の利点の一つは、キトサンとアルカリ溶液を混合し続ける必要はなく、それらの混合物を放置できることである。
【0042】
いくつかの実施形態においては、60分未満、55分未満、50分未満、45分未満、40分未満、35分未満、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、10分未満、または5分未満の間、混合物を放置してもよい。
【0043】
好ましくは3分間未満、より好ましくは2分間未満、最も好ましくは1分間未満。混合物を放置するのがよい。
【0044】
好ましくは、工程(b)では、以降の処理工程、たとえば、乾燥工程(c)のために混合物を調製するのに要する時間だけ混合物を放置するのがよい。混合物を1時間以内乾燥した場合、時間の経過とともに(約1-3週間で)エンドトキシンの濃度が低下することが観察された。
【0045】
工程(a)でキトサンをアルカリ溶液と接触させた直後に混合物を乾燥させると、良好な結果が得られることが観察された。ここで「直後」とは、工程(b)で、乾燥工程(c)のために混合物を調製するのに要する時間だけ混合物を放置することを意味する。典型的には放置する時間は約30秒未満であり、好ましくは20秒未満、最も好ましくは10秒未満がよい。
【0046】
したがって、本発明の一つの態様においては、低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体の製造方法が提供される。この方法は、
(a)キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体をアルカリ溶液と接触させて、混合物を形成する工程と、
(b)該混合物を直ちに乾燥させる工程とを含む。
【0047】
上記の方法では、工程(b)で、次の段階の処理工程のために混合物を調製するのに必要な時間だけ混合物を放置する。たとえば、工程(b)では、乾燥処理のために混合物を調製するのに必要な時間だけ混合物を放置してよい。その後、乾燥工程(c)で混合物を乾燥してもよい。
【0048】
工程(b)では、室温および室圧(room pressure)下で混合物を放置してよい。ここで「室温」および「室圧」とは、約20~25℃の温度と、約1気圧(atm)の圧力を意味する。このように、混合物を無菌設備内に放置する必要はないという利点がある。
【0049】
好ましくは、混合物を清潔な容器内に保存する。混合物を不活性雰囲気下で保存してもよい。
【0050】
混合物は防腐剤をさらに含んでよい。防腐剤により、たとえば、混合物を長期間放置する場合に起こりうる微生物の増殖という危険性を取り除くことができるという利点がある。防腐剤としては、生体適合性(biocompatible)があり、アルカリ性環境での使用に適しているものであれば、任意の防腐剤を使用できる。好適な防腐剤としては、銀イオン、亜鉛イオン、クロルヘキシジン、またはこれらを組み合わせて使用できる。
【0051】
乾燥工程は、当該技術分野で周知である、いずれかの従来の乾燥手段により行ってよい。好ましくは、乾燥工程は、オーブン内で行うか、または空気乾燥器に通して濾過することにより行う。乾燥工程においても、特別な無菌設備は必要ない。
【0052】
いったん乾燥工程で混合物を乾燥させると、時間が経過しても乾燥した混合物のエンドトキシン含有量は著しく増加しないことを発見した。実際に、上述したように、エンドトキシンの含有量は時間の経過とともに低下しうることが観察されている。この知見は、さらに処理を進める前に混合物をある程度の期間保存することができることを示しており、有益である。
【0053】
前述のとおり、エンドトキシンの濃度が50EU/g未満の低エンドトキシンのアルカリ性キトサンが得られる。低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは水不溶性であってよい。低分子量であれば、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンはある程度の水溶性を示すことがある。
【0054】
本発明の他の態様においては、本明細書に記載の方法により得られる低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体が提供される。
【0055】
本発明のさらに他の態様においては、エンドトキシンの濃度が50EU/g未満であるアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体が提供される。
【0056】
アルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体が含有するエンドトキシンの濃度は 30EU/g未満がよく、好ましくは20EU/g未満、より好ましくは15EU/g未満、さらに好ましくは10EU/g未満、最も好ましくは5EU/g未満がよい。
【0057】
低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体は、濃度が約1M未満のアルカリを含んでいる。好ましくは、濃度は約0.5M以下、より好ましくは約0.25M以下、さらに好ましくは約0.2M以下、最も好ましくは約0.1M以下であるのがよい。
【0058】
低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、たとえば、誘導体または共重合体などの他のキトサン生成物(product)の製造、または低分子量のキトサンまたはキトサンオリゴ糖の製造で中間物(intermediate)として使用することができる。また、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、キトサン系の繊維(fiber)、織物(fabric)、塗料、フィルム、ゲル、溶液、シート、発泡体などのその他の形態のキトサンやキトサン誘導体または共重合体を製造するための原料としても有用である。
【0059】
特に、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、低濃度のエンドトキシンを含むその他の有用なキトサン生成物、たとえば、中性キトサン、キトサン塩、およびその他のキトサン誘導体などを調製する際に使用することができる。その他の有用なキトサン生成物としては、カルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan)、ヒドロキシエチルキトサン(hydroxyethyl chitosan)、アシルキトサン(acyl chitosan)、アルキルキトサン(alkyl chitosan)、スルホニルキトサン(sulphonyl chitosan)、リン酸化キトサン(phosphorylated chitosan)、アルキリデンキトサン(alkylidene chitosan)、金属キレート(metal chelates)、塩化キトサン(chitosan chloride)、乳酸キトサン(chitosan lactate)、酢酸キトサン(chitosan acetate)、リンゴ酸キトサン(chitosan malate)、およびグルコン酸キトサン(chitosan gluconate)などが挙げられる。
【0060】
前述のとおり、本発明の他の態様では、本明細書に記載の方法により調製されるアルカリ性キトサンを酸と接触させる工程を含む、低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体を製造する方法が提供される。
【0061】
本発明の方法により、医療的に有用な、低濃度のエンドトキシンを含む中性キトサン、キトサン塩、またはその他のキトサン誘導体を得ることができる。
【0062】
アルカリ性キトサンを酸と接触させる工程は、本明細書で前述した、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンの製造方法における乾燥工程(c)の前に行うことができる。
【0063】
あるいは、アルカリ性キトサンを酸と接触させる工程は、本明細書で前述した、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンの製造における乾燥工程(c)の後で行ってもよい。このような実施形態では、低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体の製造方法は、アルカリ性キトサンを酸と接触させる工程の後に、さらに乾燥工程を含んでもよい。この乾燥工程は、当該技術分野で周知である、いずれかの従来の乾燥手段により行ってよい。好ましくは、乾燥工程は、オーブン内で行うか、または空気乾燥器に通して濾過することにより行う。
【0064】
酸をアルカリ性キトサンに接触させるには、当該技術分野で周知である、いずれかの好適な手段により行ってよい。たとえば、アルカリ性キトサンに対し酸を噴霧するか、またはアルカリ性キトサンを酸と混合してもよい。
【0065】
好ましくは、アルカリ性キトサンを酸と混合するのがよい。
【0066】
本明細書で使用する用語「中性キトサン」とは、そのpH値が約6.5から約7.5の範囲にあるキトサン組成物、好ましくは、pH値が約7であるキトサン組成物を意味する。
【0067】
このように、中性キトサンを調製するには、アルカリ性キトサンを、適切な容量および/または濃度の酸と混合し、pH値が6.5から7.5の範囲にある中性溶液を形成すればよい。アルカリ性キトサンを中和するために必要な酸の容量および濃度は、アルカリ性キトサンのpHに応じて異なるだろう。
【0068】
また、キトサン塩またはキトサン誘導体を調製するには、アルカリ性キトサンを、中性キトサンを得るために必要な容量および濃度より多い容量および濃度の酸と混合してもよい。
【0069】
本発明で使用する好適な酸は、有機酸(organic acids)、カルボン酸(carboxylic acids)、脂肪酸(fatty acids)、アミノ酸(amino acids)、ルイス酸(lewis acids)、一塩基酸(monoprotic acids)、二塩基酸(diprotic acids)、多塩基酸(polyprotic acids)、核酸(nucleic acids)、および鉱酸(mineral acids)から単独でまたは組み合わせて選ぶことができる。
【0070】
好適な有機酸は、酢酸(acetic acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、アセチルサリチル酸(acetylsalicylic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、および乳酸(lactic acid)から単独でまたは組み合わせて選ぶことができる。
【0071】
好適な脂肪酸は、ミリストレイン酸(myristoleic acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、サピエン酸(sapienic acid)、オレイン酸(oleic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、バクセン酸(vaccenic acid)、リノール酸(linoleic acid)、リノエライジン酸(linoelaidic acid)、α-リノレン酸(α-linoleic acid)、アラキドン酸(arachidonic acid)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)、エルシン酸(erucic acid)、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)、カプリル酸(caprylic acid)、カプリン酸(capric acid)、ラウリン酸(lauric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキジン酸(arachidic acid)、ベヘン酸(behenic acid)、リグノセリン酸(lignoceric acid)、およびセロチン酸(cerotic acid)から単独でまたは組み合わせて選ぶことができる。
【0072】
好適なアミノ酸は、ヒスチジン(histidine)、リシン(lysine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、グルタミン(glutamine)、グリシン(glycine)、プロリン(proline)、およびタウリン(taurine)から単独でまたは組み合わせて選ぶことができる。
【0073】
好適な鉱酸は、塩酸、硫酸、および硝酸から単独でまたは組み合わせて選ぶことができる。中和目的には塩酸が好ましい。
【0074】
酸の濃度は、約0.001Mから可能な最大濃度までの範囲でよい。たとえば、典型的な最大濃度の硫酸は、約98%硫酸である。酸の濃度は、約0.01Mから5M、0.01Mから3M、または0.1Mから2Mの範囲でよい。酸の濃度は約1Mであるのが好ましい。酸の濃度は、最大約0.01M、0.05M、0.10M、0.15M、0.20M、0.25M、0.30M、0.35M、0.40M、0.45M、0.50M、0.55M、0.60M、0.65M、0.70M、0.75M、0.80M、0.85M、0.90M、0.95M、または1.0Mでもよい。
【0075】
酸は、酸と非溶媒とを含む酸液(acid liquor)として存在してよい。非溶媒としては、キトサンが溶けない任意の溶媒を使用することができる。典型的な非溶媒としては、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、アセトン、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、非溶媒としては酢酸エチルまたはエタノールがよい。より好ましくは、非溶媒はエタノールと水が80:20の割合で構成されているものがよい。エタノールと水が80:20の割合で構成される非溶媒を使用した場合に反応がより速く進行することが観察されており、このような非溶媒を使用することは有益である。
【0076】
酸液に対するキトサンの割合は、約5対1から約1対5でよい。好ましくは、酸液に対するキトサンの割合は約2対1であるのがよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、酸と最大約30分間以下混合してよい。より好ましくは約10分間以下、最も好ましくは約5分間以下混合するのがよい。その後、混合物を乾燥させながら、反応を生じさせてもよい。
【0078】
アルカリ性キトサンと酸を混合させて得られる生成物は酸性塩を含んでもよい。好ましくは、生成される酸性塩が生体適合性を有するように、アルカリ溶液と酸を選ぶ。たとえば、アルカリ溶液は水酸化ナトリウムを含み、酸は塩酸を含む。この例では、酸性塩は生体適合性を有する塩化ナトリウムであろう。
【0079】
酸性塩は、アルカリ性キトサンと酸との反応により生成される副産物である。
【0080】
キトサン生成物における酸性塩の存在は、キトサン生成物の有用性に影響を与える可能性があることが分かっている。たとえば、キトサンがゲル化する程度は水中と比べると生理食塩水中では低いこと、そして2倍濃度の生理食塩水中ではさらに低いことが観察されている。ここで「2倍濃度の生理食塩水」とは、1.8%の塩化ナトリウムを含む生理食塩水を想定している。したがって、結果として得られるキトサン生成物における酸性塩の含有量はできる限り少ないことが望ましい。理想的には、酸性塩の含有量は、キトサン生成物の有効性にほとんどまたはまったく影響を与えない程度がよい。
【0081】
驚くべきことに、濃度が0.25M未満、好ましくは0.01Mからから0.2M、より好ましくは約0.01Mから約0.1Mのアルカリ溶液を使用すると、含有するエンドトキシンが望ましい低濃度になるとともに、中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体を製造する以降の工程で生成される酸性塩副産物の量が減少することを発見した。有益なことに、酸性塩副産物の量が少なくなれば、結果として得られるキトサン生成物の使用時のゲル化が、酸性塩をより多く含む生成物と比べて改善されることがわかったのである。本発明の方法により、キトサン生成物の洗浄または濯ぎを必要とすることなく、酸性塩の含有量が適切に少ないキトサン生成物を得ることができる。さらに、洗浄または濯ぎの工程で、エンドトキシンフリー水を使用する必要がないという利点もある。
【0082】
さらに、本明細書に記載する低濃度のアルカリ溶液を使用することにより、中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体を製造する際のキトサンの粘度低下が少なくなることも分かった。
【0083】
ここで「低濃度のアルカリ」とは、約0.01Mから約1M、好ましくは1M未満、より好ましくは約0.02Mから約0.25Mの濃度を意味する。いくつかの実施形態においては、アルカリ濃度は、0.02Mから0.1M、好ましくは0.05Mから0.1Mである。濃度が約0.1Mであるアルカリ溶液を使用する場合、良好な結果が得られることが観察された。また、いくつかの実施形態においては、アルカリ濃度はこの明細書で前述した通りであってよい。このように、本発明の方法において低濃度のアルカリ溶液を使用することにより、キトサンの損傷を低減できることは有益である。つまり、キトサンからエンドトキシンを取り除くことができるとともに、粘度の変化を最小限にとどめることができる。本発明の方法においては、キトサンの粘度低下を約25%未満、好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満にすることが望ましい。
【0084】
本発明の方法により低エンドトキシンの中性キトサンを製造する場合、得られる生成物は、その他のキトサン系生成物を製造する際の中間物として使用するのに好適である。具体例の1つとしては、キトサン塩の製造での使用が挙げられる。キトサン塩は、その吸収特性(absorbent properties)により出血を制御するための止血剤の調製で使用するのに好適である。キトサン塩は水溶性であることが望ましい。
【0085】
前述したように、本発明の他の実施形態では、本明細書に記載の方法で得られる低エンドトキシンの中性キトサンを酸と接触させることにより、低エンドトキシンのキトサン塩を得ることができる。
【0086】
本発明では、所望のキトサン塩を得るのに適した任意の酸を使用することができる。たとえば、所望のキトサン塩が酢酸キトサンである場合、酢酸を使用すればよい。また、所望のキトサン塩がコハク酸キトサンである場合は、コハク酸を使用すればよい。このように所望に応じて任意の酸を使用することができる。本発明の方法により低エンドトキシンのキトサン塩を製造する際には、本明細書に記載の酸のいずれを使用してもよい。
【0087】
低エンドトキシンのキトサン塩またはキトサン誘導体を製造するための本発明の方法は、低エンドトキシンの中性キトサンと酸との混合物を乾燥する工程をさらに含んでよい。乾燥工程は、当該技術分野において周知である、いずれかの従来の乾燥手段により行ってよい。好ましくは、乾燥工程は、オーブン内で行うか、または空気乾燥器に通して濾過することにより行う。
【0088】
このように、エンドトキシンの濃度が50EU/g未満である低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体を得ることができる。
【0089】
得られる低エンドトキシンの中性キトサンは水不溶性であってもよい。
【0090】
得られる低エンドトキシンのキトサン塩は水溶性であってもよい。
【0091】
本発明の他の態様においては、本明細書に記載するいずれかの方法により得られる低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体が提供される。
【0092】
本発明のさらに他の態様においては、エンドトキシンの濃度が50EU/g未満である中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体が提供される。
【0093】
中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体が含有するエンドトキシンの濃度は30EU/g未満であり、好ましくは20EU/g未満、より好ましくは15EU/g未満、さらに好ましくは10EU/g未満、最も好ましくは5EU/g未満がよい。
【0094】
本発明の低エンドトキシンのキトサン塩は、血液の流れを止める止血剤として使用するのに好適である。
【0095】
このように、本発明の他の態様においては、前述したとおり、血液の流れを止める止血剤として使用される、低エンドトキシンのキトサン塩が提供される。低エンドトキシンのキトサン塩は、内部出血用または外部出血用の止血剤として使用できる。内部出血用として手術で使用するキトサン塩については、エンドトキシンの濃度は5EU/g未満が望ましい。
【0096】
本発明の低エンドトキシンのキトサン塩は、表部における生命に別状のない出血用または生死に関わる出血用の創傷被覆材に含有させてもよい。
【0097】
このように、本発明の他の態様においては、前述したとおり、表部における生命に別状のない出血用または生死に関わる出血用の創傷被覆材で使用される、低エンドトキシンのキトサン塩が提供される。
【0098】
本発明の低エンドトキシンのキトサン塩は、血液の流れを止めるための創傷被覆材の調製で使用するのに好適である。本発明の他の態様においては、本明細書に記載の低エンドトキシンのキトサン塩を含む止血用創傷被覆材が提供される。
【0099】
本発明のさらに他の態様においては、本明細書に記載の低エンドトキシンのキトサン塩を含む止血材料が得られる。
【0100】
止血材料および/またはキトサン塩は、粒子状、粉末状、顆粒状、フレーク状、繊維状、ゲル状、発砲体状、シート状、フィルム状、または液状などの任意の好適な形態であればよい。
【0101】
本発明のさらに他の態様では、可能であれば創傷領域を任意に洗浄する工程と、本明細書に記載の低エンドトキシンのキトサン塩を含む止血用創傷被覆材を該創傷領域に適用する工程と、ゲル状凝血塊が形成されるまで該創傷領域に一定の圧力を加える工程とを含む方法が提供される。
【0102】
一定の圧力は創傷領域に約3分間以上加えるのが好ましい。
【0103】
有益なことに、本発明の止血材料を調製する際に使用するアルカリ溶液の濃度が低ければ低いほど、止血材料は、浸透性、凝血塊の形成、および止血においてより良好な性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施例について詳しく説明するが、これらの例に限定されるわけではない。
【
図1】異なる溶媒中で異なる濃度の酸性塩副産物がキトサン生成物の粘度に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0105】
エンドトキシン試験
1.キトサンのエンドトキシン試験用に、USP(米国薬局方)に詳述されている通りの抽出溶液(4.6mlの1M HClと45.4mlのエンドトキシンフリー水)を調製し、
2.0.1gの試験用キトサン生成物を9.9mlのUSP抽出溶液に加えて抽出し、37℃で48時間放置し、
3.48時間後、100μlの抽出物を0.9mlのエンドトキシンフリー水で希釈し、
4.上記の希釈液100μlを、100μlのチャールズリバー(Charles River)社製のエンドトキシンスペシフィック(Endotoxin Specific)(ES)緩衝液と混合する。
【0106】
FDA(米国食品医薬品局)認可の使い捨てカートリッジを用いた、手持ち(ハンドヘルド)の分光光度計Endosafe(登録商標)-PTS(商標)を使用して、結果として得られた抽出物を試験する。抽出物を2000倍希釈し、試験検出下限量(minimum test limit detection)を10EU/gとする。
【0107】
実施例
実施例1
50gのキトサンを、50gの1M NaOHと10分間混合した。結果として得られた、湿ったアルカリ性キトサン団粒(crumb)を、直ちに流動層乾燥機(fluid bed drier)内で40℃で乾燥した。
【0108】
未加工キトサンのエンドトキシン初期量:64.8EU/g
乾燥処理済みのアルカリ性キトサン:<5EU/g
実施例2
50gのキトサンを、50gの0.1M NaOHと10分間混合した。結果として得られた、湿ったアルカリ性キトサン団粒を、直ちに流動層乾燥機内で40℃で乾燥した。
【0109】
未加工キトサンのエンドトキシン初期量:64.8EU/g
乾燥処理済みのアルカリ性キトサン:16.3EU/g
実施例3
50gのキトサンを、50gの0.05M NaOHと10分間混合した。結果として得られた、湿ったアルカリ性キトサン団粒を、直ちに流動層乾燥機内で40℃で乾燥した。
【0110】
未加工キトサンのエンドトキシン初期量:64.8EU/g
乾燥処理済みのアルカリ性キトサン:20.0EU/g
実施例4
50gのキトサンを、50gの0.01M NaOHと10分間混合した。結果として得られた、湿ったアルカリ性キトサン団粒を、直ちに流動層乾燥機内で40℃で乾燥した。
【0111】
未加工キトサンのエンドトキシン初期量:64.8EU/g
乾燥処理済みのアルカリ性キトサン:<30EU/g
本発明の方法は拡大適用(scale up)することができ、より大きなバッチサイズでの製造も可能である。
【0112】
本発明の方法は、キトサン繊維またはキトサン織物などの異なる物理的形態のキトサンに対しても適用できる。
【0113】
また、本発明の方法では、たとえば水酸化カリウムのように、水酸化ナトリウムとは異なる塩基を使用することもできる。
【0114】
実施例1-4は低エンドトキシンのアルカリ性キトサンの製造に関する。この低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを原料として使用して、その他のキトサン系生成物を製造することができる。たとえば、塩基と反応して生体適合性を有する塩を生成する、少量の適切な酸を加えることにより、pH値が7になるようにアルカリ性キトサンを中和し、中性キトサンを生成することができる。また、たとえば、塩基溶液において水酸化ナトリウムを使用する場合、塩酸を加えることにより中和することができる。得られる生成物には、少量の塩化ナトリウムが残留することもある。
【0115】
また、実施例1-4で生成される低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを使用して、低エンドトキシンの水溶性キトサン塩またはその他のキトサン誘導体を製造できる。有益なことに、無菌設備を必要とせず、大量の高価なエンドトキシンフリー水を使用する必要もなく、洗浄も濯ぎも必要としないで、このことを達成できる。たとえば、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンは、より多量の好適な酸と反応させることもできる。一部のわずかな酸が塩基と反応して生体適合性を有する塩を生成することになる。
【0116】
また、他の実施例では、低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを原材料として、カルボキシメチルキトサンなどの低エンドトキシンのキトサン誘導体の製造にも使用できる。
【0117】
酸性塩の粘度に対する影響
低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを酸と反応させて、中性のpHを有するキトサンまたはキトサン塩を製造する場合、酸性塩が副産物として生成される。この副産物の存在は、キトサン生成物の性能に影響を与える可能性がある。たとえば、副産物の量によっては生理食塩水中のキトサンの粘度に影響を与えることがある。
【0118】
図1を参照すると、乳酸ナトリウムを生理食塩水中に異なる濃度で加えた結果が示されている。この結果は、現在市販されているキトサン生成物であるCELOX(登録商標)を2g、サンプルとしていくつかの異なる溶媒液20g中で使用し、3分後に粘度に与えた影響を示したものである。
【0119】
基本溶媒(base media)は体液から得た生理食塩水であり、それに異なる量の乳酸ナトリウムを加えた。乳酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムと乳酸との反応により生成される副産物を表している。
【0120】
【0121】
【表1】
図1から、加えられた塩の濃度が増加するにつれて、溶媒液中のCELOX(登録商標)の粘度が減少することが分かる。したがって、本発明のキトサン生成物において、残留する塩の副産物の量がわずかであることが有益である。
【0122】
低濃度アルカリ溶液の粘度に対する影響
本発明の低エンドトキシンのアルカリ性キトサンを試験することにより、酸による処理がキトサン重合体の粘度に与える影響を明らかに示すことができる。ここでは、粘度は分子量の測定単位と考える。試験は次の手順によって行う。
【0123】
a)低エンドトキシンのアルカリ性キトサン顆粒を5g量り、
b)600mlのビーカーに4.95gの酢酸を量って入れ、
c)490.05gの脱イオン化水をビーカーに加え、1%の酢酸溶液を495g調製し、
d)ビーカーを撹拌用プレート(stirrer plate)に載せ、攪拌器をオンにし(溶液の粘度が増加するにしたがい、撹拌速度を速くする)、
e)キトサン顆粒を酢酸溶液に加え、
f)顆粒がすべて溶解するまで定期的に溶液を確認し、必要ならば、溶液の粘度が増加するにしたがい、撹拌速度を速くし、
g)キトサン顆粒を酢酸溶液に加えた時点から計測して合計で24時間、溶液を放置し、
h)ブルックフィールド(Brookfield)粘度計にスピンドル64を取り付け、
i)スピンドルを10rpmにセットし、
j)スピンドルに示された目印までスピンドルを溶液に浸し、粘度計をオンにして安定するまで待ち、
k)選んだ時間間隔で、粘度(cPs)を記録する。
【0124】
アルカリ溶液の濃度減少による効果
本発明の方法において、より低濃度のアルカリ溶液を使用することの効果は、3つの実験により試験することができる。実験では、(1)生理食塩水の試験サンプルへの浸透率、(2)凝血塊が形成される(血液が凝固する)までの時間、および(3)生体モデルでの上腹部断絶における止血割合に焦点を合わせる。
【0125】
(1)生理食塩水の試験サンプルへの浸透率を計測する一般的な試験方法は次のとおりである。まず、5mlの蒸留水を試験管に入れる。食用赤色染料を一滴蒸留水に加える。水面上に層が形成されるように、3gの止血用粉末サンプルを静かに水面に落とす。1分後、水が止血用粉末内に侵入した距離を計測し、浸透率として記録する。
【0126】
(2)凝血塊が形成される(血液が凝固する)までの時間を計測する一般的な試験方法は次のとおりである。まず、0.75gの止血用粉末サンプルを試験管に入れる。そこに、5mlのウサギのヘパリン添加血液(heparinised rabbit blood)を加える。次に、試験管を逆さまにして、血液が完全にゲル状の塊に凝固するまでの時間を記録する。
【0127】
(3)生体モデルでの上腹部断絶における止血割合を計測する一般的な試験方法は次のとおりである。まず、豚モデル(ヘパリン処置されていない)(non-heparinised)の上腹部の動脈に、3-5cmの傷を付ける。顆粒状の止血材料を適用し、1分間圧迫する。再出血が生じた場合は、さらに1分間圧迫する。
【0128】
これまでに示した実施例は例示の目的でのみ記述したもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではないことは当然にして理解されるだろう。
【0129】
以下本願明細書に記載の発明を列挙する。
【0130】
(1)
低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、またはこれらの誘導体を製造する方法であって、
(a)キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体をアルカリ溶液と接触させて、混合物を形成する工程と、
(b)前記混合物を1時間未満放置する工程とを含む方法。
【0131】
(2)
前記混合物を乾燥させる工程(c)をさらに含む(1)に記載の方法。
【0132】
(3)
前記アルカリ溶液の濃度が約0.01Mから約1Mまでである(1)または(2)に記載の方法。
【0133】
(4)
前記アルカリ溶液の濃度が約0.02Mから0.25Mまでである(3)に記載の方法。
【0134】
(5)
前記アルカリ溶液の濃度が約0.1Mである(4)に記載の方法。
【0135】
(6)
前記アルカリ溶液と、キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体とが、アルカリ溶液約10部に対してキトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体約1部から、アルカリ溶液約1部に対してキトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体約10部までの範囲内で存在する、前記いずれか一つのに記載の方法。
【0136】
(7)
前記アルカリ溶液が、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属重亜硫酸塩、金属過ケイ酸塩、共役塩基、および水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ成分またはアルカリ土類成分を単独でまたは組み合わせて含む、前記いずれか一つに記載の方法。
【0137】
(8)
前記金属が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウムから選ばれる(7)に記載の方法。
【0138】
(9)
前記アルカリ成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または炭酸ナトリウムから選ばれる(7)または(8)に記載の方法。
【0139】
(10)
前記アルカリ溶液を前記キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体に対し噴霧するか、または前記キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体を前記アルカリ溶液と混合する、前記いずれか一つに記載の方法。
【0140】
(11)
前記混合物を3分間未満放置する前記いずれか一つに記載の方法。
【0141】
(12)
前記工程(b)が、前記工程(a)に続いて直ちに前記混合物を乾燥させることを含む(11)に記載の方法。
【0142】
(13)
前記混合物を清潔な容器内に放置するか、および/または不活性雰囲気下で放置する、前記いずれか一つに記載の方法。
【0143】
(14)
前記混合物が防腐剤をさらに含む前記いずれか一つに記載の方法。
【0144】
(15)
前記防腐剤が、銀イオン、亜鉛イオン、クロルヘキシジン、またはこれらの組み合わせから選ばれる(14)に記載の方法。
【0145】
(16)
(1)から(15)のいずれかに記載の方法によって得られる低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体。
【0146】
(17)
エンドトキシンの濃度が50EU/g未満であるアルカリ性キトサン、キチン、キトサン誘導体、またはキチン誘導体。
【0147】
(18)
(1)から(15)のいずれかに記載の方法によって調製されるアルカリ性キトサンを酸と接触させる工程を含む、低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体を製造する方法。
【0148】
(19)
前記アルカリ性キトサンを酸と接触させる工程を、(2)から(15)のいずれかに記載の前記乾燥工程(c)の前に行う(18)に記載の方法。
【0149】
(20)
前記酸を前記アルカリ性キトサンに対し噴霧するか、または前記アルカリ性キトサンを前記酸と混合する(18)または(19)に記載の方法。
【0150】
(21)
前記酸が、有機酸、カルボン酸、脂肪酸、アミノ酸、ルイス酸、一塩基酸、二塩基酸、多塩基酸、核酸、および鉱酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる(18)から(20)のいずれかに記載の方法。
【0151】
(22)
前記有機酸が、酢酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、アセチルサリチル酸、グルコン酸、および乳酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる(21)に記載の方法。
【0152】
(23)
前記脂肪酸が、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサヘキサエン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる(21)に記載の方法。
【0153】
(24)
前記アミノ酸が、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、およびタウリンから単独でまたは組み合わせて選ばれる(21)に記載の方法。
【0154】
(25)
前記鉱酸が、塩酸、硫酸、および硝酸から単独でまたは組み合わせて選ばれる(21)に記載の方法。
【0155】
(26)
前記酸の濃度が約1Mである(18)から(25)のいずれかに記載の方法。
【0156】
(27)
前記酸が、前記酸と非溶媒とを含む酸液として存在する(18)から(26)のいずれかに記載の方法。
【0157】
(28)
前記非溶媒が、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、アセトン、80:20の割合のエタノールと水の混合物、またはこれらの混合物から単独でまたは組み合わせて選ばれる(27)に記載の方法。
【0158】
(29)
酸液に対するキトサンの割合が約5:1から約1:5である(27)または(28)に記載の方法。
【0159】
(30)
前記アルカリ性キトサンを前記酸と約5分間混合する(18)から(29)のいずれかに記載の方法。
【0160】
(31)
前記反応物を乾燥させる工程をさらに含む(18)から(30)のいずれかに記載の方法。
【0161】
(32)
(18)から(31)のいずれかに記載の方法により得られる低エンドトキシンの中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体。
【0162】
(33)
エンドトキシンの濃度が50EU/g未満である中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体。
【0163】
(34)
血液の流れを止めることを目的とする(32)に記載の低エンドトキシンのキトサン塩の使用。
【0164】
(35)
血液の流れを止める止血剤として使用する(32)に記載の低エンドトキシンのキトサン塩。
【0165】
(36)
生命に別状のない表部の出血用または生死に関わる出血用の創傷被覆材に使用する(32)に記載の低エンドトキシンのキトサン塩。
【0166】
(37)
(32)に記載の低エンドトキシンのキトサン塩を含む止血用創傷被覆材。
【0167】
(38)
血液の流れを止める方法であって、可能であれば創傷領域を任意に洗浄する工程と、請求項32に記載の低エンドトキシンのキトサン塩を含む止血用創傷被覆材を前記創傷領域に適用する工程と、ゲル状凝血塊が形成されるまで前記創傷領域に一定の圧力を加える工程とを含む方法。
【0168】
(39)
本明細書および図面に実質的に記載され示される、低エンドトキシンのアルカリ性キトサン、中性キトサン、キトサン塩、またはキトサン誘導体、あるいはこれらの処理工程または方法。