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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068348
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】がんに対する組合せ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20220426BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220426BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K45/00 ZNA
A61K39/39
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K31/405
A61K31/4188
A61K31/4245
A61K31/44
C07K7/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027569
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2018546596の分割
【原出願日】2017-03-03
(31)【優先権主張番号】1603805.1
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1610018.2
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ,ハルド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象内のがんを予防又は治療する方法を提供する。
【解決手段】方法は、(i)免疫系チェックポイントの構成要素又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤を前記対象に投与するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び
(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記チェックポイントが、以下:
a)IDO1とその基質の間の相互作用、
b)PD1とPDL1、及び/又はPD1とPDL2の間の相互作用、
c)CTLA4とCD86、及び/又はCTLA4とCD80の間の相互作用、
d)B7-H3及び/又はB7-H4とそのそれぞれのリガンドの間の相互作用、
e)HVEMとBTLAの間の相互作用、
f)GAL9とTIM3の間の相互作用、
g)MHCクラスI又はIIとLAG3の間の相互作用、並びに
h)MHCクラスI又はIIとKIRの間の相互作用
から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(A)(i)の組成物がチェックポイント(a)の構成要素若しくはその免疫原性断片を含み、(ii)の薬剤が同一の若しくは異なるチェックポイントをブロック若しくは阻害し、任意選択で、異なるチェックポイントがチェックポイント(b)若しくは(c)である、
又は
(B)(i)の組成物がチェックポイント(b)の構成要素若しくはその免疫原性断片を含み、(ii)の薬剤が同一の若しくは異なるチェックポイントをブロック又は阻害し、任意選択で、異なるチェックポイントがチェックポイント(a)若しくは(c)である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記免疫系チェックポイントの前記構成要素がIDO1(配列番号1)であり、IDOの前記免疫原性断片が配列番号1の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成り、前記連続したアミノ酸がALLEIASCLの配列(配列番号2)又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記免疫原性断片がALLEIASCL(配列番号2)の配列又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含むか又はそれから成る、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記免疫系チェックポイントの前記構成要素がPD-L1(配列番号14)であり、PD-L1の前記免疫原性断片が配列番号14の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成り、前記連続したアミノ酸が配列番号15~31のいずれか1つの配列、好ましくは配列番号15、25又は28のいずれか1つの配列を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記免疫調節剤が前記免疫系チェックポイントの構成要素に結合する抗体又は小分子阻害剤(SMI)である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤がIDO1の小分子阻害剤であり、任意選択で、前記阻害剤がエパカドスタット(INCB24360)、インドキシモド、GDC-0919(NLG919)若しくはF001287であり、又は前記薬剤がCTLA4若しくはPD1に結合する抗体であり、任意選択で、CTLA4に結合する前記抗体がイピリムマブであり、PD1に結合する前記抗体がペンブロリズマブである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
(i)の前記組成物がアジュバント又は担体を含み、任意選択で、前記アジュバントが細菌DNAアジュバント、油性/界面活性剤アジュバント、ウイルスdsRNAアジュバント、イミダゾキノリン及びGM-CSFから選択される、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記アジュバントがモンタニドISAアジュバントであり、任意選択で、モンタニドISA 51又はモンタニドISA 720から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
対象内のがんを予防又は治療する方法で使用するための免疫療法組成物であって、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、前記方法が、
(i)前記免疫療法組成物、及び
(ii)免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む、
前記免疫療法組成物。
【請求項12】
対象内のがんを予防又は治療するための医薬の製造における免疫療法組成物の使用であって、前記免疫療法組成物が免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、免疫調節剤の前、それと同時、及び/又はその後に投与するために製剤化されている、前記使用。
【請求項13】
(i)免疫系チェックポイントの構成要素若しくはその免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び/又は
(ii)免疫調節剤
を含み、任意選択で(i)及び(ii)が分離式密閉容器内に提供される、キット。
【請求項14】
アジュバント及び配列番号1の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成るIDOの免疫原性断片を含む免疫療法組成物であって、前記連続したアミノ酸がALLEIASCLの配列(配列番号2)又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含む、前記免疫療法組成物。
【請求項15】
IDOの免疫原性断片がDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)から成る、請求項14記載の免疫療法組成物。
【請求項16】
任意選択で請求項1~10のいずれか1項記載の方法である、対象内のがんを予防又は治療する方法で使用するための、請求項14又は15記載の免疫療法組成物。
【請求項17】
対象内のがんを予防又は治療するための医薬の製造における請求項14又は15記載の免疫療法組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する方法に関する。方法は、免疫系チェックポイントの構成要素、又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤を前記対象に投与するステップを含む。本発明は、前記免疫療法組成物及び前記薬剤、並びにそれを含むキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫系は、がん性腫瘍に対する応答を示す能力を有する。この応答の利用は、がんを治療又は予防するための最有力経路の1つとして、その認識が高まっている。長期持続性の抗腫瘍免疫応答の重要なエフェクター細胞は、活性化した腫瘍特異的エフェクターT細胞である。但し、がん患者は、腫瘍抗原に対して特異的なT細胞を通常有するが、このようなT細胞の活性は、阻害性の因子及び経路により抑制される頻度が高く、そしてがんは先進国における早期死亡の主原因として存続する。
【0003】
過去10年において、免疫系チェックポイントを特異的に標的とする治療法が出現した。この例として、CTLA-4に対して特異的な完全ヒトIgG1抗体であるイピリムマブが挙げられる。イピリムマブによる転移性メラノーマの治療は、大規模第III相試験において、全体的な応答率10.9%、及び臨床的有用率約30%と関連し、そしてその後の分析より、応答は永続的で長期持続性であり得ることが示唆された。しかし、この数字は、大部分の患者では治療から利益が得られず、改善の余地が残されていることをなおも示唆する。
【0004】
従って、より多くの割合の患者においてT細胞の抗腫瘍応答を増強するが、自己免疫疾患等の望ましくない作用を惹起しない、がんを予防又は治療する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含む免疫療法組成物は、追加の免疫調節剤の投与と安全に組み合わせることができ、がんの有効な治療又は予防を実現することを明らかにした。
【0006】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素、又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び
(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0007】
本発明は、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素、若しくはその免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び/又は
(ii)免疫調節剤
を含み、任意選択で、(i)及び(ii)が分離式密閉容器内に提供される、キットも提供する。
【0008】
本発明は、前記免疫療法組成物及び/又は前記免疫調節剤を、相互に独立してやはり提供する。
【0009】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素、又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び
(ii)腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物
を、前記対象に投与するステップを含む方法も提供する。
【0010】
本発明は、アジュバント及び配列番号1の配列の最大25個の連続したアミノ酸からなるIDOの免疫原性断片を含む免疫療法組成物を提供し、前記連続したアミノ酸は、ALLEIASCLの配列(配列番号2)、又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含む。
【0011】
配列リストの簡単な説明
配列番号1は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)のアミノ酸配列である。 配列番号2は、本明細書ではIO101又はIDO5と呼ぶ、IDO1の断片のアミノ酸配列である。 配列番号3は、本明細書ではIO102と呼ぶ、IDO1の断片のアミノ酸配列である。
配列番号4~13は、本明細書に開示するIDO1のその他の断片のアミノ酸配列である。
配列番号14は、PD-L1のアミノ酸配列である。
配列番号15~31及び32は、本明細書に開示するPD-L1の断片のアミノ酸配列である。
配列番号33及び34は、本明細書ではIDO-Pep1及びIDO-EP2とそれぞれ呼ぶ、マウスIDO1の断片のアミノ酸配列である。
配列番号35は、HPVのE7腫瘍性タンパク質の断片である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に基づき治療された患者(#10)内の血清サイトカイン濃度を示す図である。血清中の7つの異なるサイトカインのレベルを、治療期間中のいくつか異なる時点において表す。IL:インターロイキン。TNF:腫瘍壊死因子。IFN:インターフェロン。Wk:第1シリーズのイピリムマブ後の経過した週数。
図2-1】本発明に基づき治療された患者のワクチン応答を示す図である。患者内のワクチン誘導応答を、直接インターフェロンガンマELISpot及び細胞内サイトカイン染色により評価した。a)IO102ペプチドに対する応答。バーは、特異的スポットの数、すなわち陰性対照が差し引かれた数を表す。b)IDOペプチドワクチンを用いずにイピリムマブで治療した患者6例のIO102反応性。これらの患者のいずれも、IO102に対する何らかの測定可能な応答を示さなかった。c)患者#02、#05、及び#07を対象に、4週間、in vitroでIO102ペプチド刺激した後の、IO102刺激T細胞培養物の細胞内サイトカイン染色。d)2cに提示する、但し追加のTNF-アルファ捕捉及び急速増殖を行った後のIO102刺激T細胞培養物の細胞内サイトカイン染色(「方法」を参照)。TNF:腫瘍壊死因子。IFN:インターフェロン。Wk:第1シリーズのイピリムマブ後の経過した週数。
図2-2】図2-1の続きである。
図3-1】本発明に基づき治療された患者の末梢血液に含まれる制御性細胞を示す図である。T細胞、Tヘルパー細胞、制御性T細胞(Treg)、及び骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)の頻度に関するフローサイトメトリー分析。a+b)Treg及びMDSCに関するゲーティング戦略(シングレットゲート及びライブセルゲートを含むが、ここでは図示せず)。c)治療期間におけるTregのCD4+T細胞に占めるパーセンテージ。d)MDSCのライブシングレットPBMCに占めるパーセンテージ。e)リンパ球ゲート内のT細胞のパーセンテージ。f)CD4+細胞のT細胞に占めるパーセンテージ。
図3-2】図3-1の続きである。
図4】本発明に基づき治療された患者の臨床応答を示す図である。RECIST 1.1に基づき測定された標的病変径の変化。患者を、治療開始前(ベースライン)、12週間後、以後進行するまで8~12週間毎に、PET-CTにより評価した。標的病変径の変化を、標的病変径を合計し、ベースラインiからの変化パーセンテージとして計算した。より明るい色をした三角形は、新規病変の出現を示す。PD:進行性の疾患。PR:部分的な応答。
図5】IO102は、IDO5と比較して、特異的T細胞のブーストにおいて、誘導に優れることを示す図である。フローサイトメトリードットプロットは、CMVペプチドで刺激を受けた細胞に対してIDO5又はIO102を添加したときの、CMV-特異的T細胞の数に対するブースト効果を示す。無関係のHIVペプチドによる刺激を対照として含めた。2つの異なるPBMCバッチ(A及びB)から得られた結果を図に示す。パーセンテージは、CMVに対して特異的な細胞の割合を示す。NLV-PE =フィコエリトリン(PE)とコンジュゲートしたCMV四量体、NLV-APC =アロフィコシアニン(APC)とコンジュゲートしたCMV四量体。
図6】IO102は特異的T細胞のIDO SMI誘導性ブーストを強化することを示す図である。フローサイトメトリードットプロットは、CMVペプチド及びIDO小分子阻害剤(SMI) 1-MTで刺激を受けた細胞に対してIO102を添加したときの、CMV-特異的T細胞の数に対するブースト効果を示す。パーセンテージは、CMVに対して特異的な細胞の割合を示す。NLV-PE =フィコエリトリン(PE)とコンジュゲートしたCMV四量体、NLV-APC =アロフィコシアニン(APC)とコンジュゲートしたCMV四量体。
図7】IDOスクランブル化ペプチド(黒色のバー)又はIO102(灰色のバー)の存在下、表示のエフェクター:標的の比で培養したPBMC(エフェクター細胞)により誘導されたTHP-1標的細胞の溶解パーセントを示す図である。
図8】対照(IDOスクランブル化、黒色のバー)、IDO5(明るい灰色のバー)、又はIO102(濃い灰色のバー)の存在下、表示のエフェクター:標的の比で培養したPBMC(エフェクター細胞)により誘導されたTHP-1標的細胞の溶解パーセントを示す図である。
図9】IDOスクランブル化+抗PD-1抗体(対照)又はIO102+抗PD-1抗体の存在下で培養したPBMC(エフェクター細胞)により誘導されたTHP-1標的細胞の溶解パーセントを示す図である。バーは、表示のエフェクター:標的の比で、IO102+抗PD-1抗体、マイナス対照により誘導された溶解を表す。
図10】IDOペプチド(IDO-Pep1)又はE7ペプチド(E7-Vax)で治療したTC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスについて、経時的な腫瘍容積の変化(A)及び生存パーセント(B)を示す図である。未治療マウスを対照として示す。
図11】IDOペプチド(Pep1)、E7ペプチド(E7-Vax)、又は両方(Pep1+E7-Vax)で治療したTC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスについて、経時的な生存パーセントの変化を示す図である。未治療マウスを対照として示す。
図12】IDOペプチド(Pep1)、1-MT、又は両方(Pep1+1-MT)で治療したTC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスについて、経時的な生存パーセントの変化を示す図である。未治療マウスを対照として示す。
図13】IDOペプチド(EP2)又はモンタニド単独(媒体)で治療したCT26腫瘍を担持するBALB/cマウスについて、経時的な腫瘍容積変化を示す図である。未治療マウスを対照として示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
当技術分野における特別な必要性に応じて、開示される製品及び方法について異なる用途が考案され得るものと理解される。また、本明細書で使用する用語は、本発明の特定の実施形態を記載することを目的とし、制限するようには意図されないと理解される。
【0014】
更に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、記載内容が別途明確に規定しない限り、複数形の指示物が含まれる。従って、例えば、「阻害剤」への言及には、2つ以上のそのような阻害剤が含まれ、又は「オリゴヌクレオチド」への言及には、2つ以上のそのようなオリゴヌクレオチド等が含まれる。
【0015】
「対象」には、本明細書で使用する場合、任意の哺乳動物、好ましくはヒトが含まれる。
【0016】
「ポリペプチド」は、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似物、又はその他のペプチド模倣物の化合物を指すように、本明細書では広義に使用される。用語「ポリペプチド」には、従って、短いペプチド配列、及びより長いポリペプチド、及びタンパク質も含まれる。本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」とは、D若しくはL光学異性体の両方を含む、天然及び/若しくは非天然のアミノ酸、又は合成アミノ酸、並びにアミノ酸類似物及びペプチド模倣物を指す。
【0017】
本明細書で引用するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、前出又は下記を問わず、本明細書により参照によりそのまま援用する。
【0018】
免疫系チェックポイント
エフェクターT細胞の活性化は、MHC複合体により提示された抗原ペプチドを認識するT細胞受容体により通常引き起こされる。実現した活性化のタイプ及びレベルは次いで、エフェクターT細胞応答を刺激するシグナルとエフェクターT細胞応答を阻害するシグナルの間のバランスにより決定される。用語「免疫系チェックポイント」は、本明細書では、エフェクターT細胞応答の阻害に利するようにバランスを変化させる任意の分子相互作用を指すのに使用される。すなわち、分子相互作用は、それが生ずる場合、エフェクターT細胞の活性化を負に制御する。そのような相互作用は、例えばリガンドと阻害性のシグナルをエフェクターT細胞に伝達する細胞表面受容体の間の相互作用のように、直接的であり得る。或いは、リガンドと活性化シグナルをエフェクターT細胞に別途伝達する細胞表面受容体の間の相互作用、又は阻害分子若しくは細胞の上方制御を促進する相互作用のブロック若しくは阻害、又はエフェクターT細胞が必要とする代謝物を酵素により枯渇させること、又は任意のこれらの組合せのように間接的であり得る。
【0019】
免疫系チェックポイントの例として、
a)インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)とその基質の間の相互作用、
b)PD1とPDL1、及び/又はPD1とPDL2の間の相互作用、
c)CTLA4とCD86、及び/又はCTLA4とCD80の間の相互作用、
d)B7-H3及び/又はB7-H4とそのそれぞれのリガンドの間の相互作用、
e)HVEMとBTLAの間の相互作用、
f)GAL9とTIM3の間の相互作用、
g)MHCクラスI又はIIとLAG3の間の相互作用、並びに
h)MHCクラスI又はIIとKIRの間の相互作用
が挙げられる。
【0020】
チェックポイント(a)、すなわちIDO1とその基質の間の相互作用が、本発明の目的のための好ましいチェックポイントである。このチェックポイントは、必須アミノ酸のトリプトファンを必要とする免疫系の細胞内代謝経路である。トリプトファンが欠損すると、その結果、エフェクターT細胞機能が全般的に抑制され、そしてナイーブT細胞の制御性(すなわち、免疫抑制的)T細胞(Treg)への変換が促進される。タンパク質IDO1は、多くの腫瘍細胞において上方制御され、またトリプトファンレベルの低下に関係している。IDO1は、L-トリプトファンのN-ホルミルキヌレニンへの変換を触媒する酵素であり、従ってキヌレニン経路を経由するトリプトファン異化の最初の律速酵素である。従って、IDO1は、本発明の方法において好適な標的となり得る免疫系チェックポイントの構成要素である。
【0021】
本発明の目的のための別の好ましいチェックポイントは、チェックポイント(b)、すなわちPD1とそのリガンドPD-L1及びPD-L2の間の相互作用である。PD1は、エフェクターT細胞上で発現している。いずれかのリガンドと結合すると、その結果、活性化を下方制御するシグナルが生ずる。リガンドは、いくつかの腫瘍により発現される。特にPD-L1が、メラノーマを含む多くの固形腫瘍により発現される。このような腫瘍は、T細胞上の阻害性PD-1受容体の活性化を通じて免疫媒介型抗腫瘍効果を下方制御する可能性がある。PD1とそのリガンドの一方又は両方の間の相互作用をブロックすることにより、免疫応答のチェックポイントが除去可能となり、抗腫瘍T細胞応答が増強される。従って、PD1及びそのリガンドは、本発明の方法において好適な標的となり得る免疫系チェックポイントの構成要素の例である。
【0022】
本発明の目的のための別の好ましいチェックポイントは、チェックポイント(c)、すなわちT細胞受容体CTLA-4とそのリガンド、B7タンパク質(B7-1及びB7-2)間の相互作用である。CTLA-4は、初期の活性化の後、T細胞表面上で通常上方制御され、そしてリガンドが結合すると、その結果、更なる/継続的な活性化を阻害するシグナルが生ずる。CTLA-4は、B7タンパク質への結合について、T細胞表面上でやはり発現しており、活性化を上方制御する受容体CD28と競合する。従って、CD28とB7タンパク質との相互作用ではなく、CTLA-4とB7タンパク質との相互作用をブロックすることにより、免疫応答の正常なチェックポイントの1つが除去可能となり、抗腫瘍T細胞応答の増強を引き起こす。従ってCTLA4及びそのリガンドは、本発明の方法において、好適な標的となり得る免疫系チェックポイントの構成要素の例である。
【0023】
がんを予防又は治療する方法
本発明の方法は、先行セクションに記載した任意のチェックポイントの任意の構成要素を標的とすることができる。
【0024】
本発明の方法は、がんの予防又は治療と関係する。
【0025】
がんは、前立腺がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、膵がん、卵巣がん、肺がん、子宮頚がん、肝がん、頭部/頸部/咽喉がん、皮膚がん、膀胱がん、又は血液のがんであり得る。がんは、腫瘍又は血液起源のがんの形態を採り得る。腫瘍は、固形であり得る。腫瘍は、典型的には悪性であり、また転移性であり得る。腫瘍は、腺腫、腺癌、芽細胞腫、癌腫、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞性腫瘍、リンパ腫、白血病、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ液の腫瘍、乳腺腫瘍、又はメラノーマであり得る。
【0026】
芽細胞腫の種類として、肝芽腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、又は網膜芽細胞腫が挙げられる。癌腫の種類として、結腸直腸癌腫、又は肝細胞癌腫、膵臓、前立腺、胃、食道、頚管、及び頭頸部の癌腫、並びに腺癌が挙げられる。肉腫の種類として、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、又は任意のその他の軟部組織肉腫が挙げられる。メラノーマの種類として、悪性黒子、悪性黒子黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜悪性黒色腫、結節型黒色腫、ポリープ様黒色腫、線維形成性黒色腫、無色素性悪性黒色腫、軟組織黒色腫、母斑様の小細胞を含む黒色腫、スピッツ母斑の特徴を有する黒色腫、及びぶどう膜黒色腫が挙げられる。リンパ腫及び白血病の種類として、前駆T細胞白血病/リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、濾胞性リンパ腫、瀰漫性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病/リンパ腫、MALTリンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉腫、末梢性T細胞リンパ腫、結節硬化型のホジキンリンパ腫、混合細胞型サブタイプのホジキンリンパ腫が挙げられる。肺腫瘍の種類として、非小細胞肺がん(腺癌、扁平上皮癌、及び大細胞癌)、及び小細胞肺癌からなる腫瘍が挙げられる。
【0027】
本発明の方法は、対象内のT細胞抗がん応答を活性化させる、又は増強することにより機能する。これは、1つ以上の免疫チェックポイントをブロック又は阻害して、がん又は腫瘍特異的エフェクターT細胞の活性化を高めることにより達成される。本発明の方法は、前記1つ以上の免疫チェックポイントをブロック又は阻害する少なくとも2つの異なるアプローチを利用する。
【0028】
第1のアプローチは、チェックポイントの構成要素に対して、対象内で免疫応答を引き起こす免疫療法組成物を投与することにより、チェックポイントをブロック又は阻害し、これによりチェックポイントの活性をブロック又は阻害することである。従って、免疫療法組成物は、前記チェックポイントの前記構成要素に対するワクチンとして代替的に記載され得る。前記免疫応答の標的となるチェックポイントの構成要素は、腫瘍細胞により発現されるのが好ましく、また免疫阻害効果を有する正常な細胞によっても発現され得る。従って、前記免疫応答は、チェックポイントの活性をブロック及び阻害し、並びに腫瘍も直接攻撃するという両方の点において二重の効果を有する。
【0029】
第2のアプローチは、チェックポイントの構成要素に結合する、さもなければそれを改変し、これによりチェックポイントの活性をブロック又は阻害する免疫調節剤を投与することにより、チェックポイントをブロック又は阻害することである。薬剤は、チェックポイントの構成要素に結合する抗体又は小分子阻害剤であり得る。複数のそのような薬剤が投与可能であり、そのそれぞれは、異なるチェックポイント又は同一のチェックポイントの異なる構成要素を標的とする。
【0030】
免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する異なるアプローチを利用することにより、本発明の方法は、代替的方法と比較して、それより多くの抗腫瘍応答を引き起こす一方、副作用又は合併症は少ない。抗腫瘍応答は、単一のアプローチのみを使用した場合に期待される応答を典型的には上回る。更に、第1のアプローチ(ワクチン)は、そのような応答から積極的に利益を得、長期持続的効果ももたらす可能性があるので、抗薬物応答に起因する有効性が低下する可能性はより低い。たとえ両方のアプローチが同一の免疫系チェックポイントを標的とするとしても、このような利益が得られる。
【0031】
この実施形態の例として、IDO1を標的とする免疫療法組成物、及び免疫調節剤としてIDO1の抗体又は小分子阻害剤を使用することが挙げられる。別の例として、PD-L1を標的とする免疫療法組成物、及び免疫調節剤としてPD-L1及び/又はPD-L2に結合するPD1の抗体又は小分子阻害剤を使用することが挙げられる。
【0032】
本発明の方法は、それぞれ異なるアプローチを使用して、2つの異なる免疫系チェックポイントも標的とし得る。そのような実施形態では、上記と同様の利益が得られるが、但し、抗腫瘍応答はまた、同一種類のアプローチを使用して各チェックポイントを標的とした場合に期待される応答を典型的には上回る。この実施形態の例として、IDO1(チェックポイント(a))を標的とする免疫療法組成物、及びPD1又はCTLA4(チェックポイント(b)及び(c))を標的とする抗体又は小分子阻害剤の使用が挙げられる。この実施形態のその他の例として、PD-L1(チェックポイント(b))を標的とする免疫療法組成物、及びIDO1又はCTLA4(チェックポイント(a)及び(c))を標的とする抗体又は小分子阻害剤の使用が挙げられる。
【0033】
換言すれば、本発明は、対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素を含む免疫療法組成物、又は前記構成要素の免疫原性断片、及び
(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0034】
本発明は、本発明の方法で使用するための、すなわち対象内のがんを予防又は治療するための免疫療法組成物も提供し、免疫療法組成物は、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、方法は、
(i)前記免疫療法組成物、及び
(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む。
【0035】
本発明は、本発明の方法で使用するための、すなわち対象内のがんを予防又は治療するための免疫調節剤も提供し、免疫調節剤は、免疫系チェックポイントをブロック又は阻害し、方法は、
(i)前記免疫調節剤、及び
(ii)(i)によりブロック又は阻害されたチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含む免疫療法組成物
を前記対象に投与するステップを含む。
【0036】
或いは、本発明は、対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素、又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び
(ii)腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物
を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0037】
本実施形態では、方法は、(ii)の組成物の特異的腫瘍抗原に対して、対象内のT細胞抗がん応答を活性化させる、又は増強することにより機能する。これは、抗原又はその免疫原性断片を、対象のT細胞にそれが提示されるように投与し、且つ前記T細胞の活性化を別途低下させる免疫チェックポイントをブロック又は阻害する免疫療法組成物を同時又は連続的に使用して、腫瘍抗原特異的エフェクターT細胞の活性化を高めることにより達成される。この方法の文脈において、腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物は、前記腫瘍抗原に対するワクチンとして代替的に記載することができ、また本発明の免疫療法組成物を伴う投与は、前記ワクチンの強化として記載され得る。
【0038】
本発明は、本発明の方法で使用するための、すなわち対象内のがんを予防又は治療するための免疫療法組成物も提供し、免疫療法組成物は、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、方法は、
(i)前記免疫療法組成物、及び
(ii)腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物
を前記対象に投与するステップを含む。
【0039】
本発明は、本発明の方法で使用するための、すなわち対象内のがんを予防又は治療するための、腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物も提供し、方法は、
(i)前記組成物、及び
(ii)免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含む免疫療法組成物
を前記対象に投与するステップを含む。
【0040】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する医薬の製造における免疫療法組成物の使用であって、免疫療法組成物が、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、免疫調節剤、又は腫瘍抗原若しくはその免疫原性断片を含む組成物の前、それと同時、及び/又はその後に投与するために製剤化されている、使用も提供する。
【0041】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する医薬の製造における、免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤の使用であって、薬剤が、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含む免疫療法組成物の前、それと同時、及び/又はその後に投与するために製剤化されている、使用も提供する。
【0042】
本発明は、対象内のがんを予防又は治療する医薬の製造における、腫瘍抗原又はその免疫原性断片を含む組成物の使用であって、薬剤が、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含む免疫療法組成物の前、それと同時、及び/又はその後に投与するために製剤化されている、使用も提供する。
【0043】
免疫療法組成物
本発明の免疫療法組成物は、免疫系チェックポイントの構成要素に対して免疫応答を引き起こす。構成要素は、典型的にはポリペプチドである。従って、免疫療法組成物は、前記構成要素又はその免疫原性断片を含み得る。「免疫原性断片」は、本明細書では、前記免疫系チェックポイントの構成要素よりも短いが、前記構成要素に対する免疫応答を誘発する能力を有するポリペプチドを意味するのに使用される。
【0044】
免疫系チェックポイントの構成要素に対して免疫応答を誘発する断片の能力(「免疫原性」)は、任意の適する方法により評価され得る。典型的には、断片は、前記構成要素に対して特異的なT細胞において、in vitroでの増殖及び/又はサイトカイン放出を誘導する能力を有し、前記細胞は、がん患者から採取されたリンパ球のサンプル内に存在し得る。増殖及び/又はサイトカイン放出は、ELISA及びELISPOTを含む任意の適する方法により評価され得る。例示的な方法は、実施例に記載する。好ましくは、断片は、構成要素特異的T細胞の増殖を誘導する、及び/又はそのような細胞に由来するインターフェロンガンマの放出を誘導する。
【0045】
前記構成要素に対して特異的なT細胞において増殖及び/又はサイトカイン放出を誘導するために、断片は、それがT細胞に提示されるように、MHC分子に結合する能力を有さなければならない。換言すれば、断片は、前記構成要素の少なくとも1つのMHC結合エピトープを含む、又はそれからなる。前記エピトープは、MHCクラスI結合エピトープ又はMHCクラスII結合エピトープであり得る。断片が2つ以上のMHC結合エピトープを含む場合、前記エピトープのそれぞれは、異なるHLA-対立遺伝子から発現したMHC分子に結合し、これにより非近交系のヒト母集団から採取される対象のカバレッジ範囲が広がることが特に好ましい。
【0046】
MHC結合は、in silicoでの方法の使用を含む、任意の適する方法により評価され得る。好ましい方法として、結合が参照ペプチドと比較して測定される競合的阻害アッセイが挙げられる。参照ペプチドは、典型的には、所与のMHC分子に対する強力なバインダーとして公知であるペプチドである。そのようなアッセイでは、ペプチドが、所与のHLA分子について、参照ペプチドの1/100未満のIC50を有する場合、ペプチドは弱いバインダーである。ペプチドが、所与のHLA分子について、参照ペプチドの1/100以上、1/20未満のIC50を有する場合、ペプチドは中程度のバインダーである。ペプチドが、所与のHLA分子について、参照ペプチドの1/20以上のIC50を有する場合には、ペプチドは、強力なバインダーである。
【0047】
MHCクラスIエピトープを含む断片は、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A11、及びHLA-A24からなる群から選択されるMHCクラスI HLA種、より好ましくはHLA-A3又はHLA-A2に結合するのが好ましい。或いは、断片は、HLA-B7、HLA-B35、HLA-B44、HLA-B8、HLA-B15、HLA-B27、及びHLA-B51からなる群から選択されるMHCクラスI HLA-B種に結合し得る。
【0048】
MHCクラスIIエピトープを含む断片は、HLA-DPA-1、HLA-DPB-1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA、HLA-DRBからなる群から選択されるMHCクラスII HLA種、並びにこの群及びHLA-DM、HLA-DOのすべての対立遺伝子に結合するのが好ましい。
【0049】
免疫療法組成物は、免疫系チェックポイントの構成要素の免疫原性断片を1つ含み得る、又は2つ以上のそのような断片の組合せを含み得るが、それぞれは、対象母集団のより大きな割合をカバーするために、少なくとも1つの異なるHLA分子と特異的に相互作用する。従って、例として、組成物は、例えば、対象母集団内でHLA表現型が優勢であることに対応するHLA-A分子及びHLA-B分子、例えば、HLA-A2及びHLA-B35等を含め、HLA-A分子により限定されたペプチドとHLA-B分子により限定されたペプチドの組合せを含み得る。更に、組成物は、HLA-C分子により限定されたペプチドを含み得る。
【0050】
本発明の好ましい免疫療法組成物は、ポリペプチドのインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)に対する免疫応答を引き起こす。換言すれば、本発明の方法は、IDO1に対して免疫応答を引き起こす免疫療法組成物を投与するステップを含むのが好ましい。免疫療法組成物は、従ってIDO1に対するワクチンとして代替的に記載され得る。本発明の免疫療法組成物として使用可能であるIDO1に対するワクチンは、国際公開第2009/143843号、Andersen及びSvane(2015年)、Oncoimmunology 第4巻、1号、e983770、及びIversenら(2014年)、Clin Cancer Res、第20巻、1号、221~32頁に記載されている。本発明の免疫療法組成物は、IDO1又はその免疫原性断片を含み得る。前記断片は、IDO1(配列番号1)の少なくとも8個、好ましくは少なくとも9個の連続したアミノ酸からなり得る。前記断片は、IDO1(配列番号1)の最大40個の連続したアミノ酸、IDO1(配列番号1)の最大30個の連続したアミノ酸、好ましくはIDO1(配列番号1)の最大25個の連続したアミノ酸からなり得る。従って、断片は、IDO1(配列番号1)の8~40、8~30、8~25、9~40、9~30、又は9~25個の連続したアミノ酸を含み得る、又はそれからなり得る。断片は、IDO1(配列番号1)の9~25個の連続したアミノ酸を含む、又はそれからなるのが好ましい。
【0051】
前記断片は、下記の配列のうちのいずれか1つを含み得る、又はそれからなり得る:
IO101: ALLEIASCL [199-207] (配列番号2);
IO102: DTLLKALLEIASCLEKALQVF [194-214] (配列番号3);
IOx1: QLRERVEKL [54-62] (配列番号4);
IOx2: FLVSLLVEI [164-172] (配列番号5);
IOx3: TLLKALLEI [195-203] (配列番号6);
IOx4: FIAKHLPDL [41-49] (配列番号7);
IOx6: VLSKGDAGL [320-328] (配列番号8);
IOx7: DLMNFLKTV [383-391] (配列番号9);
IOx8: VLLGIQQTA [275-283] (配列番号10);
IOx9: KVLPRNIAV [101-109] (配列番号11);
IOx10: KLNMLSIDHL [61-70] (配列番号12);
IOx11: SLRSYHLQIV [341-350] (配列番号13)
【0052】
四角括弧[ ]内の番号は、N末端からC末端に向かって数えて、配列番号1のIDOポリペプチド内の対応する位置を示す。
【0053】
断片は、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるのが好ましく、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるのが最も好ましい。配列番号2を含む、又はそれからなるペプチドは、HLAの特に一般的な種であるHLA-A2に良く結合する。配列番号3からなるペプチドは、上記した特異的なクラスI及びクラスII HLAの種のうちの少なくとも1つに良く結合する。配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を含む、又はそれからなる断片は、高比率の非近交系ヒト母集団において有効である、という点において好都合である。
【0054】
本発明の別の好ましい免疫療法組成物は、ポリペプチドであるプログラム死リガンド1(PD-L1)に対する免疫応答を引き起こす。換言すれば、本発明の方法は、PD-L1に対する免疫応答を引き起こす免疫療法組成物を投与するステップを含むのが好ましい。免疫療法組成物は、従ってPD-L1に対するワクチンとして代替的に記載され得る。PD-L1に対するワクチンは本発明の免疫療法組成物として使用可能であり、国際公開第2013/056716号に記載されている。本発明の免疫療法組成物は、PD-L1又はその免疫原性断片を含み得る。前記断片は、PD-L1(配列番号14)の少なくとも8個、好ましくは少なくとも9個の連続したアミノ酸からなり得る。前記断片は、PD-L1(配列番号14)の最大40個の連続したアミノ酸、PD-L1(配列番号14)の最大30個の連続したアミノ酸、好ましくはPD-L1(配列番号14)の最大25個の連続したアミノ酸からなり得る。従って、断片は、PD-L1(配列番号14)の8~40、8~30、8~25、9~40、9~30、又は9~25個の連続したアミノ酸を含み得る、又はそれからなり得る。断片は、PD-L1(配列番号14)の9~25個の連続したアミノ酸を含む、又はそれからなるのが好ましい。
【0055】
前記断片は、下記の配列のうちのいずれか1つを含み得る、又はそれからなり得る:
【0056】
【0057】
前記断片は、配列番号15、25、28、又は32のうちの1つの配列を含む、又はそれからなるのが好ましい。
【0058】
免疫療法組成物は、アジュバント及び/又は担体を好ましくは含み得る。本発明により提供される特に好ましい免疫療法組成物は、アジュバント、及び有効成分として、配列番号3のアミノ酸配列を含む、又はそれからなる、長さが最大アミノ酸25個分のポリペプチドを含む。前記組成物は、本発明の方法で使用するため、又は組成物の投与を含む、がんを予防若しくは治療する任意のその他の方法で使用するために提供され得る。
【0059】
アジュバントは任意の物質であり、それを組成物と混合すると、組成物により誘発された免疫応答を高める、さもなければ改変する。アジュバントは、広義には、免疫応答を促進する物質である。アジュバントは、投与部位からの活性な薬剤の低速徐放も引き起こすという点において、好ましくはデポ効果も有し得る。アジュバントの一般的考察は、Goding、Monoclonal Antibodies: Principles & Practice(第2版、1986年)、61~63頁に提示されている。
【0060】
アジュバントは、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルヌラミル(nornuramyl)-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11687、nor-MDPとも呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEとも呼ばれる)、2%スクアレン/ツイーン-80.RTM.エマルジョン中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リピドAを含むリポ多糖類及びその様々な誘導体、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント、メルクアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリIC酸、及びポリAU酸)、結核菌(Mycobacterium, tuberculosis)由来のワックスD、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、及びブルセラ属(genus Brucella)のメンバーに見出される物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(米国特許第58767号及び同第5,554,372号を参照)、リピドA誘導体、コレラトキシン誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックス又はGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA-51、及びQS-21からなる群から選択され得る。様々なサポニン抽出物も、免疫原性組成物において、アジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)もまた、アジュバントとして使用可能である。
【0061】
本発明で使用される好ましいアジュバントとして、油性/界面活性剤に基づくアジュバント、例えばモンタニドアジュバント(ベルギーのSeppic社から入手可能)、好ましくはモンタニドISA-51等が挙げられる。その他の好ましいアジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、例えばCpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバント等である。なおもその他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、例えばポリI:C等である。GM-CSF及びイミダゾキニリン(Imidazochiniline)も、好ましいアジュバントの例である。
【0062】
アジュバントは、モンタニドISAアジュバントが最も好ましい。モンタニドISAアジュバントは、モンタニドISA 51又はモンタニドISA 720が好ましい。
【0063】
GodingのMonoclonal Antibodies: Principles & Practice(第2版、1986年)、61~63頁では、目的とする抗原が低分子量である、又は免疫原性に劣る場合、免疫原性の担体と連結させることが推奨されることについても指摘する。本発明の免疫療法組成物のポリペプチド又は断片は、担体と連結し得る。担体は、アジュバントとは独立して存在し得る。担体の機能は、例えば、活性又は免疫原性を高めるため、安定性を付与するため、生物活性を高めるため、又は血清半減期を延長するために、ポリペプチド断片の分子量を増加させることであり得る。更に、担体は、ポリペプチド又はその断片をT細胞に提示させるのに役立つ可能性がある。従って、免疫原性の組成物において、ポリペプチド又はその断片は、担体、例えば以下に記載するような担体等と会合し得る。
【0064】
担体は、当業者に公知の任意の適する担体、例えば、タンパク質又は抗原提示細胞、例えば樹状細胞(DC)等であり得る。担体タンパク質として、スカシガイヘモシアニン、血清タンパク質、例えばトランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリン、若しくはオバルブミン、免疫グロブリン等、又はホルモン、例えばインスリン等、又はパルミチン酸が挙げられる。或いは、担体タンパク質は、破傷風トキソイド又はジフテリアトキソイドであり得る。或いは、担体は、デキストラン、例えばセファロース等であり得る。担体は、ヒトにとって生理学的に許容され、また安全でなければならない。
【0065】
免疫療法組成物は、薬学的に許容される賦形剤を任意選択で含み得る。賦形剤は、組成物のその他の成分と適合性を有し、及びそのレシピエントにとって有毒でないという意味において「許容性」でなければならない。補助剤、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質等は、賦形剤中に存在し得る。このような賦形剤及び補助剤は、一般的に、組成物を投与される個体において免疫応答を誘導しない医薬品であり、過度の毒性を伴わずに投与され得る。薬学的に許容される賦形剤として、液体、例えば水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、及びエタノール等が挙げられるが、但しこれらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば鉱酸の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等、及び有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等もその中に含まれ得る。薬学的に許容される賦形剤、媒体、及び補助剤の網羅的考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.、N.J. 1991年)において入手可能である。
【0066】
免疫療法組成物は、ボーラス投与又は連続投与に適する形態で調製、包装、又は販売され得る。注入型組成物は、単位投与剤形、例えばアンプル等として、又は防腐剤を含有する複数回投与用容器に含めて調製、包装、又は販売され得る。組成物には、懸濁物、溶液、油性又は水性媒体中のエマルジョン、ペースト、及び埋込型徐放性又は生分解性製剤が含まれるが、但しこれらに限定されない。組成物の1つの実施形態では、有効成分を適する媒体(例えば、滅菌発熱性物質除去水)を用いて再構成した後に、再構成した組成物が投与されるように、乾燥形態で(例えば、粉末又は顆粒として)提供される。組成物は、注射可能な無菌の水性若しくは油性の懸濁物又は溶液の形態で調製、包装、又は販売され得る。この懸濁物又は溶液は、公知の技術に基づき製剤化され得るが、また有効成分に付加して追加の成分、例えば本明細書に記載するアジュバント、賦形剤、及び補助剤等を含み得る。そのような注射可能な無菌の製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤、又は溶媒、例えば水若しくは1,3-ブタンジオール等を使用して調製され得る。その他の許容される希釈剤及び溶媒として、リンガー溶液、等張食塩水、及び不揮発性油、例えば合成モノ-又はジ-グリセリド等が挙げられるが、但しこれらに限定されない。有用であるその他の組成物として、有効成分を、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、又は生分解性ポリマー系の構成要素として含む組成物が挙げられる。徐放性又は移植用の組成物は、薬学的に許容されるポリマー性又は疎水性の材料、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、やや溶けにくいポリマー、又はやや溶けにくい塩等を含み得る。或いは、組成物の有効成分は、カプセル化され得る、粒子状担体に吸着され得る、又はそれと会合し得る。適する粒子状担体として、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する担体、並びにポリ(ラクチド)及びポリ(ラクチド-co-グリコリド)に由来するPLG微粒子が挙げられる。例えば、Jefferyら、(1993年) Pharm. Res.、10巻:362~368頁を参照。その他の微粒子系及びポリマー、例えばポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン等のポリマー、並びにこのような分子のコンジュゲートも使用可能である。
【0067】
免疫調節剤
「免疫調節剤」は、本明細書では、対象に投与されると、免疫系チェックポイントの作用をブロック又は阻害し、対象内の免疫エフェクター応答、好ましくは抗腫瘍T細胞エフェクター応答を含む、典型的にはT細胞エフェクター応答の上方制御を引き起こす任意の薬剤を意味するのに使用される。
【0068】
本発明の方法で使用される免疫調節剤は、上記免疫系チェックポイントのいずれかをブロック又は阻害し得る。薬剤は、抗体、又は前記ブロッキング若しくは阻害を引き起こす任意のその他の適する薬剤であり得る。薬剤は、従って、前記チェックポイントの阻害剤と一般的に呼ばれる場合がある。
【0069】
「抗体」には、本明細書で使用する場合、すべての抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)、又はその単鎖が含まれる。抗体は、ポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体であり得るが、また任意の適する方法により産生され得る。抗体の用語「抗原結合部分」に含まれる結合断片の例には、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。単鎖抗体、例えばscFv等、及び重鎖抗体、例えばVHH及びラクダ抗体等も、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれるように意図される。
【0070】
CTLA-4とB7タンパク質との相互作用をブロック又は阻害する好ましい抗体として、イピリムマブ(ipilumumab)、トレメリムマブ、又は国際公開第2014/207063号で開示される抗体のいずれかが挙げられる。その他の分子として、ポリペプチド、又は可溶性突然変異体CD86ポリペプチドが挙げられる。
【0071】
PD1とPD-L1との相互作用をブロック又は阻害する好ましい抗体として、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ランブロリズマブ、ピディリズマブ(pidilzumab)、及びAMP-224が挙げられる。抗PD-L1抗体として、MEDI-4736及びMPDL3280Aが挙げられる。
【0072】
その他の適する阻害剤として、典型的には小型の有機分子である小分子阻害剤(SMI)が挙げられる。
【0073】
IDO1の好ましい阻害剤として、エパカドスタット(INCB24360)、インドキシモド、GDC-0919(NLG919)、及びF001287が挙げられる。IDO1のその他の阻害剤として、1-メチルトリプトファン(1MT)が挙げられる。
【0074】
本発明の免疫調節剤、例えば抗体又はSMI等は、対象に投与するために、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化され得る。適する賦形剤及び補助剤は、本発明の免疫療法組成物用として上記されているが、またそれらは、本発明の免疫調節剤と共に使用することも可能である。免疫療法組成物を調製、包装、及び販売するための適する形態も上記されている。本発明の免疫調節剤について、同様の検討がなされる。
【0075】
投与レジメン
がんを治療するために、免疫療法組成物及び免疫調節剤が、治療有効量で対象にそれぞれ投与される。物質の「治療有効量」とは、所与の物質が、がん又はその症状のうちの1つ以上を治癒、緩和、又は部分的に阻止するのに十分な量で、がんに罹患した対象に投与されることを意味する。そのような治療処置は、疾患症状の重症度の低下、又は症状を有さない頻度又は期間の増加を引き起こし得る。そのような治療は、固形腫瘍容積低下を引き起こす可能性がある。
【0076】
がんを予防するために、免疫療法組成物及び免疫調節剤が、予防上有効な量で対象にそれぞれ投与される。物質の「予防上有効な量」とは、所与の物質が、がんと関連した症状のうちの1つ以上の発生又は再発を長期間防止するのに十分な量で対象に投与されることを意味する。
【0077】
所与の目的及び所与の組成物又は薬剤における有効量は、疾患の重症度、並びに対象の体重及び全身状態に依存し、また医師により容易に決定され得る。
【0078】
免疫療法組成物及び免疫調節剤は、同時に又は任意の順序で連続して投与され得る。しかるべき投与経路及び各投与量は、医師により決定され得るが、またそれに応じて組成物及び薬剤が製剤化される。
【0079】
免疫療法組成物は、非経口経路、典型的には注射により投与されるのが典型的である。投与は、好ましくは皮下、皮内、筋肉内、又は腫瘍内の各経路を経由し得る。注射部位は、免疫原性を強化するために、例えばイミキモド又は類似した局所的アジュバントで事前治療され得る。本発明の免疫療法組成物を単回投与する際の、活性な薬剤として存在するポリペプチドの総量は、典型的には10μg~1000μg、好ましくは10μg~150μgの範囲である。
【0080】
免疫調節剤が抗体である場合、全身用の輸液として、例えば静脈内に典型的には投与される。免疫調節剤がSMIである場合、経口により典型的には投与される。抗体及びSMIのしかるべき投与量は、医師により決定され得る。抗体のしかるべき投与量は、対象の体重に典型的には比例する。
【0081】
本発明の方法の典型的なレジメンは、免疫療法組成物及び免疫調節剤の両方の独立した複数回投与と関係する。それぞれは、2回以上、例えば2、3、4、5、6、7回以上等の回数、独立して投与され得る。免疫療法組成物が2回以上投与される場合、反復投与は得られる免疫応答を増進し得るので、増加した利益を特に提供し得る。組成物又は薬剤の個々の投与は、医師により決定されるしかるべき間隔を置いて分離され得るが、間隔は典型的には1~2週間である。投与間の間隔は、治療コースの開始時において典型的には短めであり、そして治療コースの最後に向かって増加する。
【0082】
例示的な投与レジメンは、例えば合計約4シリーズ、3週間毎に、体重1キログラム当たり3ミリグラムの用量の免疫調節剤の投与を含み、免疫療法組成物(典型的にはアジュバントを含む)も、腕部背後又は大腿部の前部の皮下に、右側及び左側を交互に繰り返しながら投与される。免疫療法組成物の投与は、第1シリーズの薬剤と同時に開始することができ、組成物が合計約7回送達され、最初は毎週、合計4回、その後2週間毎に3回の追加投与が実施される。このタイプのレジメンは、実施例1に記載されている。
【0083】
別の例示的な投与レジメンは、2週間毎に(誘導)2.5ヶ月間、その後は毎月(維持)、免疫療法組成物(典型的にはアジュバントを含む)を皮下投与して対象を治療することを含む。イミキモド軟膏(Aldara、Meda AS、www.meda.se)が、組成物の投与前8時間において任意選択で投与される場合があり、皮膚の同一エリアに投与されるまで、皮膚がパッチで覆われる。
【0084】
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)対象内のがんを予防又は治療する方法であって、
(i)免疫系チェックポイントの構成要素又は前記構成要素の免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び
(ii)(i)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一であり得る、又は異なり得る免疫系チェックポイントをブロック又は阻害する免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
(2)少なくとも1つの前記チェックポイントが、以下:
a)IDO1とその基質の間の相互作用、
b)PD1とPDL1、及び/又はPD1とPDL2の間の相互作用、
c)CTLA4とCD86、及び/又はCTLA4とCD80の間の相互作用、
d)B7-H3及び/又はB7-H4とそのそれぞれのリガンドの間の相互作用、
e)HVEMとBTLAの間の相互作用、
f)GAL9とTIM3の間の相互作用、
g)MHCクラスI又はIIとLAG3の間の相互作用、並びに
h)MHCクラスI又はIIとKIRの間の相互作用
から選択される、(1)記載の方法。
(3)(A)(i)の組成物がチェックポイント(a)の構成要素若しくはその免疫原性断片を含み、(ii)の薬剤が同一の若しくは異なるチェックポイントをブロック若しくは阻害し、任意選択で、異なるチェックポイントがチェックポイント(b)若しくは(c)である、
又は
(B)(i)の組成物がチェックポイント(b)の構成要素若しくはその免疫原性断片を含み、(ii)の薬剤が同一の若しくは異なるチェックポイントをブロック又は阻害し、任意選択で、異なるチェックポイントがチェックポイント(a)若しくは(c)である、
(2)記載の方法。
(4)前記免疫系チェックポイントの前記構成要素がIDO1(配列番号1)であり、IDOの前記免疫原性断片が配列番号1の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成り、前記連続したアミノ酸がALLEIASCLの配列(配列番号2)又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含む、(1)~(3)のいずれか1記載の方法。
(5)前記免疫原性断片がALLEIASCL(配列番号2)の配列又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含むか又はそれから成る、(4)記載の方法。
(6)前記免疫系チェックポイントの前記構成要素がPD-L1(配列番号14)であり、PD-L1の前記免疫原性断片が配列番号14の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成り、前記連続したアミノ酸が配列番号15~31のいずれか1つの配列、好ましくは配列番号15、25又は28のいずれか1つの配列を含む、(1)~(3)のいずれか1記載の方法。(7)前記免疫調節剤が前記免疫系チェックポイントの構成要素に結合する抗体又は小分子阻害剤(SMI)である、(1)~(6)のいずれか1記載の方法。
(8)前記薬剤がIDO1の小分子阻害剤であり、任意選択で、前記阻害剤がエパカドスタット(INCB24360)、インドキシモド、GDC-0919(NLG919)若しくはF001287であり、又は前記薬剤がCTLA4若しくはPD1に結合する抗体であり、任意選択で、CTLA4に結合する前記抗体がイピリムマブであり、PD1に結合する前記抗体がペンブロリズマブである、(7)記載の方法。
(9)(i)の前記組成物がアジュバント又は担体を含み、任意選択で、前記アジュバントが細菌DNAアジュバント、油性/界面活性剤アジュバント、ウイルスdsRNAアジュバント、イミダゾキノリン及びGM-CSFから選択される、(1)~(8)のいずれか1記載の方法。(10)前記アジュバントがモンタニドISAアジュバントであり、任意選択で、モンタニドISA 51又はモンタニドISA 720から選択される、(9)記載の方法。
(11)対象内のがんを予防又は治療する方法で使用するための免疫療法組成物であって、免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、前記方法が、
(i)前記免疫療法組成物、及び
(ii)免疫調節剤
を前記対象に投与するステップを含む、
前記免疫療法組成物。
(12)対象内のがんを予防又は治療するための医薬の製造における免疫療法組成物の使用であって、前記免疫療法組成物が免疫系チェックポイントの構成要素又はその免疫原性断片を含み、免疫調節剤の前、それと同時、及び/又はその後に投与するために製剤化されている、前記使用。
(13)(i)免疫系チェックポイントの構成要素若しくはその免疫原性断片を含む免疫療法組成物、及び/又は
(ii)免疫調節剤
を含み、任意選択で(i)及び(ii)が分離式密閉容器内に提供される、キット。
(14)アジュバント及び配列番号1の配列の最大25個の連続したアミノ酸から成るIDOの免疫原性断片を含む免疫療法組成物であって、前記連続したアミノ酸がALLEIASCLの配列(配列番号2)又はDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)を含む、前記免疫療法組成物。
(15)IDOの免疫原性断片がDTLLKALLEIASCLEKALQVFの配列(配列番号3)から成る、(14)記載の免疫療法組成物。
(16)任意選択で(1)~(10)のいずれか1記載の方法である、対象内のがんを予防又は治療する方法で使用するための、(14)又は(15)記載の免疫療法組成物。
(17)対象内のがんを予防又は治療するための医薬の製造における(14)又は(15)記載の免疫療法組成物の使用。
本発明は、下記の実施例により説明される。
【実施例0085】
[実施例1]
第I相試験
方法
試験デザイン
患者は、コペンハーゲン大学(Herlev、デンマーク)、Herlev病院の腫瘍学部門で、2014年3月~2014年8月に実施されたファースト・イン・ヒューマンの第I相臨床試験に登録した。試験は、IDO1由来のペプチドワクチン接種をイピリムマブ又はベムラフェニブによる標準治療と組み合わせた2治療群第I相試験として当初デザインされた。ワクチンと組み合わせたイピリムマブにより治療された患者から得られたデータのみを報告する。対象は、組織学的に確認された切除不能な病期III又は病期IV悪性メラノーマを有し、年齢18歳以上、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス≦2であり、メラノーマに対する最後の全身的治療から少なくとも21日経過し、その後十分に回復しており、そして血液機能、腎臓機能、及び肝臓機能が適切でなければならなかった。治療が無効であった、又は毒性起因で中止されたのでなければ、過去の抗CTLA-4治療の履歴は許容された。
【0086】
主要な除外基準には、全身性免疫抑制治療の併存、慢性感染症既知、3年以内のがんの前歴、重度医学的疾患の併存、28日以内の腹部大手術、妊娠女性又は授乳女性、コンプライアンスに影響を及ぼす重度の精神病、ワクチンアジュバントであるモンタニド又はイミキモドに対する不耐性既知、自己免疫の履歴、又は28日以内に予防ワクチンを受けたレシピエントが含まれた。試験は、The Danish Health and Medicines Agency and the local Ethics Committee、デンマーク首都地域(Capital Region of Denmark)により承認された。試験は、ヘルシンキII宣言及び医薬品臨床試験の実施基準(GCP)に基づき実施した。すべての対象は、試験関連手順を実施する前に、同意書を提供した。試験は、www.clinicaltrials.gov(NCT02077114)、及びhttps://eudract.ema.europa.eu/(EudraCT# 2013-000365-37)において登録されている。
【0087】
一次エンドポイントは毒性であった。更に、ワクチンペプチドに対する免疫応答及び治療の臨床的有用性を評価した。患者は、体重1キログラム当たり3ミリグラムの用量で、3週間毎に合計4シリーズのイピリムマブによる治療を受けた。これに付加して、患者は、腕部の背後又は大腿部の前部の皮下に、右側と左側を交互に繰り返しながら送達される、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)-モンタニドISA-51エマルジョン中にIO102ペプチドを含有するワクチンの接種を受けた。ワクチン接種は、第1シリーズのイピリムマブと同時に開始し、そして合計7回のワクチンを送達した、最初は毎週、合計4回のワクチン、その後2週間毎に3回の追加のワクチン。
【0088】
IO102ワクチン
ワクチンは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの残基194~214に対応する、アミノ酸21個のペプチドからなる。ペプチドは、本明細書ではIO102と呼ばれる。ペプチドは、アミノ酸配列DTLLKALLEIASCLEKALQVF(配列番号3)を有する。ドイツ、ベルリンのJPT Peptides Technologies BmbH社が、GMP標準に準じて生産した。投与する場合、hospital pharmacy(デンマーク首都地域)が、2%のジメチルスルホキシド及び98%のPBS中にペプチドを溶解し、そしてモンタニドISA-51(Air Liquideグループヘルスケア部門Seppic社、パリ La Defence、フランス、の製品)と混合した。局所的5%イミキモドクリーム(Medea、Allerod、デンマーク)を、ワクチン部位に塗布し、そして注射の前6~12時間、密封包帯で保護した。
【0089】
ペプチドは、配列内にネスト化された非常に多くの異なるHLAクラスIエピトープを有し、in silico分析により、最も一般的なHLA-対立遺伝子のいくつかに結合することが予測された(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/)。
【0090】
臨床評価基準
試験治療の安全性を、有害事象の発生に関して評価し、有害事象共通用語基準(CTCAE)、第4.0版に基づき等級化した。抗腫瘍活性を、ベースライン時(治療開始前、最長28日)、12週間後、及びその後8~12週間毎に進行するまで取得された陽電子放出型断層撮影法-コンピュータ断層撮影法(PET-CT)スキャンを用いて評価した。CTスキャンを、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)第1.1版に基づき評価した。応答の分類は、完全な応答(CR)、部分的な応答(PR)、進行性の疾患(PD)、及び安定な疾患(SD)である。少なくとも5回のワクチン投与を受けた患者を、本試験の臨床的及び免疫学的エンドポイントの評価について適格性を有するとみなした。
【0091】
血液サンプルの処理
PBMCを、LeucoSep(商標)チューブ(Greiner Bio-One社)内で、lymphoprep(商標)(StemCell Technologies社)密度勾配遠心分離を使用して、ヘパリン処理された血液から精製した。処理後、細胞をNuncR 1.8ml CryoTube(thermo Scientific社)中で凍結し、そして90%のヒトAB血清(Sigma Aldrich社)及び10%のジメチルスルホキシド(Herlev Hospital Pharmacy)中、-150℃で保管した。患者-処理時間は、できる限り短時間に保たれるようにし、そして一般的に4時間以内に処理を開始した。血清収集用の血液を、凝固活性化剤を含有する8ml VacuetteRゲル-チューブ(Greiner Bio-One社)内に収集した。血清を、NuncR 1.8ml CryoTube(thermo Scientific社)内に一定量分取し、そして分析まで-80℃で保管した。PBMCを、1サンプリング毎に100mlのヘパリン処理血液から処理し、そして全血8mlから血清を処理した。血液サンプルをベースライン時、第4週目、第8週目、及び第12週目に取得した。非進行性の患者では、8~12週間毎に追加の血液サンプルを取得し、同時に放射線評価を実施した。
【0092】
IO102免疫原性のIn vitro検証
ELISpot分析を、CIMT免疫ガイディングプログラム(CIP)ガイドラインに基づき実施した(http://cimt.eu/cimt/files/dl/cip_guidelines.pdf)。ワクチン応答を、療法の前、期間中、及び後に取得したPBMCサンプルにおいて直接ex vivoで評価した。凍結保存したサンプルを解凍し、そして24ウェルプレート内、5%のヒトAB血清(Sigma社)を含有するX-vivio培養培地(Lonza社)中にオーバーナイトで放置した。底部がニトロセルロースの96ウェルプレート(MultiScreen MSIPN4W、Millipore社)を、IFN-γ捕捉抗体(Mabtech社)により、オーバーナイトでコーティングした。ウェルをPBS(Sigma-Aldrich社)中で洗浄し、加湿された雰囲気内、37℃、x-vivoで2時間ブロックし、そしてPBMCを5×105/ウェル及び2×105/ウェルの濃度で添加し、またIO102ペプチド(デンマーク、KlampenborgのKJ Ross-Petersen社から購入)を、5μMの濃度で添加した。無関係のHIVに由来するペプチドを、陰性対照として使用した(ILKEPVHGV、デンマーク、KlampenborgのKJ Ross-Petersen社から購入)。ペプチドを添加した後、プレートを、5%のCO2が補充された加湿雰囲気内、37℃で、オーバーナイトにてインキュベートした。翌日、培地を廃棄し、そしてウェルを洗浄した後、ビオチン化されたIFN-γ二次抗体(Mabtech社)を添加した。プレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄を行い、そしてアビジン-酵素コンジュゲート(AP-アビジン、Calbiochem/Invitrogen Life Technologies社)を、各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、そして酵素基質NBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies社)を、各ウェルに添加し、そして室温で1~10分間インキュベートした。目視検査により判断して暗紫色のスポットが出現したら、脱塩水の洗浄により反応を終了させた。ImmunoSpotSeries 2.0アナライザー(CTL Analyzers社)を使用してスポット数を計測した。ELISpot応答は、IFN-γ分泌細胞の数が陰性対照よりも少なくとも2倍上回り、且つ最低50個のスポット(PBMC 5×105個当たり)が検出されたとき、陽性とみなした。すべての実験を3回繰り返した。結果を、バックグラウンドの平均値を差し引き提示する。
【0093】
IDO-特異的T細胞培養物の確立
PBMCを、24ウェルプレート(Nunc、Fischer Scientific社)内で、5%のヒトAB血清及び120U/mlのIL2(Novartis社、デンマーク)を含むX-vivo 15中のIO102ペプチドにより刺激した。最初に、20μMのペプチドを使用し、そして培養物を、7日間毎に、各週ペプチドの濃度をlog10減少させながら再刺激した。細胞培養物を、7~10日毎に新しいIL2で補充した。細胞を3~4×106/ウェルの濃度で保持した。IDO-特異的T細胞の富化及び増殖では、培養細胞を、培養4週間後に20μMのペプチドで再刺激し、そして製造業者の説明書に基づき、TNF-α分泌アッセイ(Miltenyi Biotec社)により富化させた。細胞を、2.5時間ペプチド刺激した後、一次抗体で染色した。富化した細胞を、改変された急速増殖プロトコールにおいて増殖させた(下記参照)。
【0094】
急速増殖プロトコール
IDO-反応性について富化したT細胞を増殖させ、そして約1~2×105個の細胞を最初に使用した。10%のヒトAB血清が補充された20mlのX-vivo 15(Lonza社)、0.6μgの抗CD3(OKT3、Janssen-Cilag社)、6000U/mlのIL2(Proleukin、Novartis社)、1.25μg/mlのファンギゾン(Squibb社)、100+100U/mlのPenStrep(Gribco、Life Technologies社)、及び2×107個のフィーダー細胞を含有するアップライト型T25フラスコ(Nunc社)中で、培養を開始した。フィーダー細胞として、少なくとも3人の異なるドナーから混合された異質遺伝子的なPBMCを使用した。使用直前に、フィーダー細胞を0.025mg/mlのパルモザイム(Roche社)を含むRPMI(Gribco、Life Technologies社)中で解凍し、そして30Gyでγ照射した。5日間培養した後、10mlの培地を慎重に吸引し、そして10%のヒトAB血清、6000U/mlのIL2、1.25μg/mlのファンギゾン、及び100+100U/mlのPenStrepを含有する新しい培地をボトルに補充した。培養物を、細胞数及び培地の色に関して定期的に評価し、そして該当する場合には、新しい培地を更に添加しながら、T80又はT175フラスコに移した。合計14日間培養した後、細胞を採取し、そして直接分析するか、又は90ヒトAB血清及び10%のジメチルスルホキシド中に凍結保存した。
【0095】
細胞内サイトカイン染色
細胞を、96ウェルプレート(Nunc、Fischer Scientific社)に、2~3×106個/mlの濃度で蒔いた。IO102ペプチドを、5μMの濃度で添加し、そして1時間後に、GolgiPlugTM(BD Biosciences社)を、培地1ml当たり1μlの濃度で添加した。5時間後、細胞を採取し、そして更に処理した。細胞を、表面抗原及び死細胞について、下記の抗体/染料を用いて染色した:抗CD3-PerCP、抗CD4-Horizon V500、抗CD8-FITC、及びLIVE/DEADR Fixable Near-IR Dead Cell Stain(Life Technologies社)。細胞を固定し、そしてBD Cytofix/Cytoperm Kit(BD Biosciences社)を使用して、製造業者の説明書に基づき透過性にした。細胞を、細胞内サイトカインについて、下記の抗体を用いて染色した:抗IL2-PE、抗IFN-γ-APC(BD Biosciences社)、及び抗TNF-α-PE-Cy7(Biolegend社)。FACSDivaソフトウェア、バージョン6.1.3(BD Biosciences社)を使用して、FACSCanto II(BD Biosciences社)上で細胞を取得した。FlowJoソフトウェア、バージョン10(Tree Star、Ashland、米国)を、サイトカイン陽性細胞の頻度を決定するのに使用した。
【0096】
末梢血液中の制御性細胞の分析
PBMCサンプルを、バッファー100ml当たり2.5mlのDNAse含有パルモザイム(Roche社)、及び0.26mmolのMgCl(Herlev Hospital Pharmacy)が補充された、37℃のRPMI 1640培地(Lonza社)中で解凍した。すべての染色を、0.5%のウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Lonza社)内で実施した。下記の抗体を使用した:FoxP3-PE、HLA-DR-HV500、CD3-PE-Cy7、CD19-PE-Cy7、CD56-PE-Cy7、CD4-HV500、CD11b-APC、CD3-APC(BD Bioscience社から購入)、CD33-FITC、CD124-PE(BD Pharmigenから購入)、HELIOS-PerCP-Cy5.5、CD14-BV421、CD25-BV421(すべてBiolegend社から購入)、CD127-FITC、CD39-PE-Cy7(eBioscience社から購入)。更に、すべてのサンプルを、LIVE/DEADR Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit(Life Technologies社)で染色した。転写因子の細胞内染色では、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(eBioscience社)を、製造業者の説明書に基づき使用した。FACSDivaソフトウェア、バージョン6.1.3(BD Biosciences社)を使用して、FACSCanto II上で細胞を取得した。フローデータの分析を、FlowJoソフトウェア、バージョン10 OSX(TreeStar inc.社、Ashland、OR)を使用して実施した。死細胞及びダブレット/トリプレットのフィルタリング後に、データ分析を実施した。
【0097】
サイトカインビーズアレイ
治療前及び期間中に患者から得た血清中のインターロイキン(IL) 2、IL4、IL6、IL10、IL17A、TNF-α、及びIFN-γの濃度を、BD(商標) Human Th1/Th2/Th17 CBA Kit(BD Biosciences社)を使用して、製造業者の説明書に従い測定した。サイトカイン濃度を、解凍した未希釈の血清サンプルにおいて測定した。サイトカインの濃度を、FCAP Array(商標)ソフトウェア、バージョン3.0(BD SoftFlow社)を使用して計算した。
【0098】
参照患者コホート
臨床及び免疫学データの比較では、当施設においてイピリムマブで治療された患者コホートを使用した(患者データ等をマニュスクリプトIIに提示)。この患者は、the local Ethics Committee for The Capital Region of Denmarkにより承認されたバイオマーカー試験(承認番号H-2-2012-058)に参加し、そして全患者が同意書を提出した。このプロトコールの組み入れ基準は、ワクチン試験の組み入れ基準と類似したが、但し、ワクチンアジュバントのモンタニド又はイミキモドに対する不耐性既知については評価しなかった。患者を、年齢(+/-5歳)及びM-期に基づき、対照として選択した。イピリムマブ療法期間中のIO102に対するT細胞反応性の比較では、IFN-γ分泌を、上記で説明したように、ELISpotアッセイにおいて測定した。反応性を、治療開始前及び3シリーズの治療後に取得されたPBMCサンプルにおいて評価した。
【0099】
統計学
すべての統計計算を、GraphPad Prism(GraphPad Software社、La Jolla, CA)を使用して実施した。散布図をメジアン(水平のライン)と共に提示する。すべての検定を両側について実施し、またp値≦0.05を有意とみなした。該当する場合には、経時的な差異を、Wilcoxonの対応した符号付き順位検定を使用して評価した。
【0100】
結果
人口統計学
患者13例を試験に組み入れるためにスクリーニングし、12例を組み入れたが、1例は参加する意志を有さなかった。患者2例が、最初の治療を受け取る前に臨床的に有意な脳転移と診断され、試験から除外した。患者10例が、プロトコール内の治療を受け、そして全員が、試験内の臨床的及び免疫学的エンドポイントの評価について適格性を有するとみなされた。これらの患者10例の患者特性を表1に提示する。患者8例が、プロトコールに規定する4シリーズのイピリムマブ、及び7回のペプチドワクチンの投与を受けた。患者1例が、3シリーズのイピリムマブ及び5回のワクチンの投与を受けた後に症候性の脳転移を発症し、高用量コルチコステロイド治療を必要とするのでプロトコールから除外した。すべての患者10例において、イピリムマブを第一選択療法として投与した。患者1例が、試験に参加する前に、補助療法としてインターフェロン-αを投与された。患者のいずれも、転移性疾患について何らかの事前の全身療法は受けなかった。
【0101】
【表1】
【0102】
毒性
結果を表2に提示する。ワクチンと関連しCTCAEグレードIII又はIV有害反応は認められなかった。一般的に、治療は良好な忍容性を示し、限定的で管理可能な毒性と関連した。
【0103】
大部分の患者は、ワクチン投与部位において、そう痒、腫脹、及び紅斑を含む、軽度~中等度の注射部位反応を経験した。ほとんどの場合、症状は経口抗ヒスタミン薬に応答し、またすべての患者において、ワクチン治療終了後、症状が寛解した。興味深いことに、ワクチン投与エリアにおいて、多くの患者でPET-シグナルの増加が認められた。
【0104】
患者数例が、イピリムマブ治療と関連する可能性が極めて高い有害反応を経験した。患者2例が、ロペラミドによる治療に応答したグレードIIの下痢を経験した。患者1例(患者#10)が、グレードIIIの下痢を治療するために当施設に入院し、結腸内視鏡検査により、イピリムマブ誘導性大腸炎の診断が下された。状態は、高用量経口コルチコステロイドに対しても当初難治性であったが、静脈内メチルプレドニゾロン投与後に寛解した。退院から1週間後、この患者は、下痢の再発、末梢性浮腫、及び全身倦怠感のため、地方病院に再入院した。この時点で、この患者の検査室調査が行われ、低ナトリウム血症、低カリウム血症、低アルブミン血症、及び血小板減少症が顕著であった。この患者を、電解質及び補液療法で治療したが、入院後1週間で死亡した。この時点で、正確な死因は、完全には明確でなかった。この患者が死亡する4週間前にPET-CTスキャンが実施され、皮膚及び皮下転移、並びに疾患の安定化のみが判明し、従って疾患進行の可能性は極めて低い。患者は、コルチコステロイドによる治療不順守又はステロイド難治性の疾患に起因して、加速性の大腸炎を発症した可能性が極めて高い。イピリムマブ誘導性大腸炎は、それ自体致命的であるが、また患者が入院期間中に、敗血症を発症した可能性もある。サイトカインビーズアレイを使用して血清サンプル中の炎症性サイトカインの分析を行い、この患者では、劇症性大腸炎の発症と同時に、第12週までにIL17A及びIL6のレベルが顕著に増加したことが明らかとなった(図1)。
【0105】
更に、患者2例が、体幹及び四肢にグレードIIの斑状丘疹状皮疹を経験したが、局所的ステロイド治療に応答し、そして治療終了後完全に消失した。患者1例が、イピリムマブの1回目の投与後に、既存の酒さの再燃を経験したが、後続する療法期間中に消失した。患者1例が、イピリムマブの最終投与から10週間後に、治療に関連した可能性のあるグレードII脈絡膜炎を経験したが、コルチコステロイドによる局所治療後に消散した。最終的に、患者1例が、イピリムマブの最終投与を受けた2ヶ月後に、PET-CTスキャンで明らかな臨床的に無症状の複数の小さい肺塞栓を有すると診断された。この患者は、肺転移及び早期慢性閉塞性肺疾患の履歴を有し、また事象は、イピリムマブ又はワクチンによる治療のいずれとも関係しない可能性が極めて高い。
【0106】
【表2】
【0107】
ワクチンエピトープに対するT細胞応答
IO102(配列番号3)、及びネスト化されたHLA-A2エピトープIDO5(配列番号2、IO101とも呼ばれる)に対する自発的T細胞応答がこれまでに報告されており、そしてワクチンエピトープとしてのIDO5の臨床的有効性及び免疫原性の両方が、これまでの肺がんの第I相臨床試験において実証された。
【0108】
本試験では、IO102刺激したPBMCサンプルにおけるIFN-γ放出について、直接ELISpotを使用して初期のスクリーニングを実施した。すべての実験を、2つの異なる細胞濃度(5×105個及び2×105個)を用いて3回繰り返した。応答は、スポットカウントが、バックグラウンドdの少なくとも2倍を上回り、対応する陰性対照(HIVペプチド)よりもスポットが少なくとも50スポット多い場合に、特異的とみなした。図2aに認められるように、患者のいずれも、IO102に対して検出可能な治療前応答を有さなかった。しかし、患者3例が、療法期間中に陰性対照を50スポット上回るという実験的閾値を超える応答を示したが、それはワクチンの反復接種により、ある程度増強されたと思われる。
【0109】
ワクチン応答の有無又は応答の程度は、いずれも治療の臨床的効果又は毒性のタイプ/グレードと相関関係を有さないと思われた。IDO-特異的応答が、ワクチンにより誘導されたのか、又はむしろイピリムマブ治療期間中に一般的現象として生じたのか決定するために、ワクチンを用いずにイピリムマブで治療したメラノーマ患者から得たPBMC中のIDO反応性を測定した(「方法」を参照)。治療前及び3シリーズ後の反応性を評価した。図2bに認められるように、IDOワクチンを用いないイピリムマブ治療期間中、IDO特異的細胞の誘導は認められなかった。従って、認められたIDO応答は、ワクチンにより誘導された。誘導されたワクチン特異的T細胞について更に綿密に調査するために、ex vivoで直接、及びIO102ペプチドでin vitro刺激してから4週間後の両方において、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリーを使用して、IO102刺激PBMCサンプル中のサイトカイン産生を評価した。これは、ELISpot分析から得られた結果に基づき選択した患者3例について試みられた。
【0110】
図2cに認められるように、IO102で刺激した際に、サイトカイン陽性T細胞、主にCD4+の富化が実証された。このような細胞は、主としてTNF-αを産生し、またいくつかの細胞はIFN-γも分泌した。更に、TNF-αの細胞外捕捉とその後の非特異的な増殖に基づき、IDO反応性T細胞の精製を実施した(「方法」を参照)。この富化後の細胞内サイトカイン染色の結果を図2dに提示する。示す通り、CD4+IDO反応性T細胞は、患者3例すべてになおも認められた。更に、IDO反応性CD8+T細胞の富化が、患者#07及び#02に認められたが、但し患者#02から得た培養物内には、わずかなCD8+T細胞しか認められなかった。サブセットのいずれも、IL2の有意な産生を一切示さなかった(データは示さない)。
【0111】
治療全体を通じた制御性細胞の動力学
IDOは、免疫抑制の重要なメディエーターであり、また制御性の免疫細胞の動力学に対して重要な影響を有し得る。マウスでは、IDOの発現及びIDOに触媒されたトリプトファンの分解により産生された代謝物が、Tregの生成を誘導することが明らかにされている。更に、IDOは、MDSC(骨髄由来のサプレッサー細胞)内で発現され得るが、これにより、この細胞型に関するいくつかのエフェクター機構のうちの1つを代表する。末梢血液中のTreg及びMDSCのレベルを、療法の前、期間中、及び後に測定した。
【0112】
TregをCD3+CD4+CD25highCD127-FOXP3+として定義した。
【0113】
MDSCを、系列マーカーCD3、CD19、及びCD56について陰性のPBMC、更にHLADR-/lowCD14+CD11b+CD33+CD124-として定義した。
【0114】
ゲーティング戦略を、図3a+bに提示する。結果を図3c~fに提示する。
【0115】
示す通り、4週間(2シリーズのイピリムマブ及び4回のワクチン)及び8週間(3シリーズのイピリムマブ及び5回のワクチン)の後に、Treg細胞の頻度増加を認めた。12週までに全治療コースを終了した後、レベルはベースラインと比較してなおも上昇していたが、それほど顕著ではなかった。変化は8週目において有意となったにすぎない(p=0.008)。更に、活性化/非活性化されたナイーブな天然のTregを、エフェクターT細胞のプール品に由来するTregと区別し得る表面マーカーCD39及び転写因子Heliosの発現について、Tregを綿密に調査した。このようなTregのサブセットのいずれにおいても、一貫した変化は認められなかった(データは示さない)。CD3に関して陽性のリンパ球の割合に変化はなく、またCD4+T細胞の頻度に軽微な変化が認められたにすぎない(図3e+f)。
【0116】
MDSCに関して、Tregレベルの顕著なミラーイメージ、すなわちベースラインと比較して、それよりも低下したレベルを認めた。しかし、変化は、評価した時点のいずれにおいても有意には至らなかった(ベースライン~第8週、p=0.13)。TregとMDSCを比較して、そのレベルと変化の間に説得力のある相関は存在しないことが判明した(データは示さない)。
【0117】
臨床的有効性
組み込まれた患者12例のうち10例が、プロトコールの一環として治療を受け、また全員が、評価可能患者について規定されたプロトコールに従い、少なくとも5回のワクチン投与を受けた。このため、患者10例のうち7例が治療終了から10ヶ月後もなお生存した。
【0118】
結果を図4に提示する。1回目の評価では、患者(#03)1例が、部分的な寛解(PR)を有し、標的病変(TL)径が44%低下し、また患者4例が、安定な疾患(SD)の限界内であった。患者5例が進行し、その他の治療を照会された。このうち、患者2例(#02及び#13)が、イピリムマブの第3シリーズの投与を受けた後に、また1例はイピリムマブの第4シリーズ及び7回目のワクチン完了後まもなくして脳転移と診断された。無症候性の患者では、ベースラインにおいて脳画像診断がルーチン的に実施されなかったので、患者#02及び#07は療法期間中に脳転移を発症したのか、又は病変は既に存在したのか定かでない。但し、患者#13の場合、磁気共鳴スキャンが組み入れ直前に実施されており、中枢神経系への転移の兆候は示されなかった。
【0119】
1回目の評価時にSDであった患者4例のうち1例(#01)が、8週間後の2回目の評価時に明確な進行を示し、TL径の合計が100%増加した。患者(#10)1例が、最終治療を受けてから6週間後に死亡した(「毒性」セクションを参照)。患者2例では、SDが継続した。このうち、1例が、アルゴンビーム照射により、肺転移についての評価スキャンの間で治療を受けたが、どちらの治療が疾患の安定化により深く関わったか決定するのは不可能である。初期の(未確認の)PRを示した患者#03では、ベースラインと比較してTL径が更にわずかに減少し-57%となったが、残念ながら、PET-CTでは、肝臓及び皮下組織内に新規病変が明らかとなり、ここでこの患者の最良応答SDとした。現在のところ、患者2例が継続的なSDを示し、更なる評価を待っている。
【0120】
まとめとして、全体的な客観的応答率、すなわち完全応答+部分的応答(CR+PR)は、いずれの患者においてもSDよりも良好な応答が確認されなかったので、0%であった。従って、患者5例(50%)が、1回目の評価によりSDの状態にあったが、そのうちの2例が確認され、そして2回目の評価により2例が進行し、そして1例が1回目と2回目の評価の間で死亡した。
【0121】
考察
イピリムマブは、免疫阻害性分子CTLA-4を標的とし、転移性メラノーマを有する患者の全生存を延長することが明らかにされている。この治療は、腫瘍負荷の劇的な低下、また患者によっては完全な応答を伴う、永続性の応答を誘導する可能性がある。このように楽天的であるにもかかわらず、療法に実際に応答するのは患者のうちでもなおも小さい割合であり、改善の余地は大いにある。これを実現する試みにおいて、非常に多くの試験では、1回に2つ以上の標的に打撃を与える手段としての組合せ療法に重点が置かれた。いくつかの試験では、イピリムマブとその他の介入との組合せについて試験され、これまで、最も有望なデータは、PD-1標的抗体ニボルマブとの組合せに基づいた。しかし、ここで報告する試験以前において、IDO1に対するワクチンと組み合わせる試みは見当たらない。
【0122】
組合せによる治療は、ほとんどの患者において軽度~中等度の毒性と関連したが、一般的に安全で、また良好な忍容性を示した。ほとんどの患者は、ワクチン投与部位において、紅斑、浮腫、及び皮下組織内の非圧痛性のしこりを含む、ある程度の局所反応を経験した。後者は、一般的であり、またこの試験でも使用された油性アジュバントのモンタニドを含有するペプチドワクチンに対する一過性の副作用である。
【0123】
患者のうち数例が、下痢及び斑状丘疹状皮疹を含む、イピリムマブ治療と一般的に関連した反応を経験した。患者1例は、最終治療から10週間後に、イピリムマブに対する稀な副作用としてこれまでに報告された単眼性脈絡膜炎を有すると診断された。これが治療と関連するか否かは、治療と症状の一時的な解離を踏まえ、証明するのが困難である。
【0124】
患者1例が、療法期間中にイピリムマブ関連の大腸炎を発症したが、当施設に入院中に非経口高用量プレドニゾロンにより当初管理された。不運な状況に起因して、この患者は、この種の患者を治療した経験のない地方病院にその後入院し、そして入院から1週間後に死亡した。入院時、臨床化学検査結果及び症状(presentation)は、加速性の大腸炎及び敗血症の可能性を示唆した。大腸炎の出現が、サイトカインIL17A及びIL6のレベルの顕著な増加と同時に生じたことは、この患者から得た血清サンプルにおいて実証された。重要なこととして、両サイトカインは、自己免疫性大腸炎において役割を演じている可能性がある。類似した増加は、治療されたその他の患者のいずれにおいても実証されなかったことから、サイトカインレベルの上昇は、大腸炎を媒介した、又は腸の炎症に対して下流側の応答に該当する可能性があることを示している。IDOは消化管内で高度に発現しているので、ワクチンがイピリムマブをきっかけとした下痢又は大腸炎を引き起こし得る、又は増強し得ることは、理論的に可能である。ワクチンに誘導されたIDO反応性T細胞の存在又は程度と毒性の発生の間の関連は認められなかった。同一施設で実施された過去の試験では、しかし、肺がんを対象とした、IDOを標的とする最低量のエピトープワクチンは、27%の患者においてグレードI/IIの下痢と関連した。有害反応は、それ以外では一般的に管理可能であった。
【0125】
すべての参加患者は、IFN-γ ELISpotを使用して、IO102ペプチドに対する応答について試験され、そして本発明者らの実験的閾値を上回るワクチン誘導性応答が、治療を受けた患者10例のうち3例に見出された。ワクチンを用いずにイピリムマブの投与を受け、年齢及び病期が一致した患者のいずれも、IDO反応性の何らかの兆候を療法期間中に示さなかったので、このような患者における応答は、ワクチンにより誘導された可能性が極めて高い。患者のいずれも、ベースライン時において検出可能な応答を有さなかった。アッセイの特異性が高くなるように、IDO反応性に関するスクリーニングをex vivoで直接的に実施した。この処置は、しかし、感度とのトレードオフであり、また間接的なアプローチであったならば、より多くの免疫応答を実証できたであろうことは確かにあり得る。
【0126】
反応性T細胞の更なる特徴づけを行うために、初期スクリーニングにおいて応答を示した患者を対象とした、IDO応答のin vitroブーストを実施した。これより、反応性の細胞は、主としてTNF-αを産生するCD4+T細胞であることが判明したが、富化及び急速増殖後、IDO反応性細胞毒性T細胞を検出することができた。IDO反応性T細胞は、細胞内サイトカイン染色により、直接ex vivoで直ちに実証されなかった。腫瘍特異的CD4+T細胞の利益に関して、矛盾するデータが公表されている。腫瘍免疫性におけるTヘルパー細胞の機能に関するおびただしいエビデンスは、利益は、主要細胞のサブタイプに依存し、その結果、サイトカイン環境が腫瘍内に構築されることを示唆する。前臨床調査では、Th1細胞及びTh2細胞の両方が、直接又は支援物質を介して抗腫瘍活性を、及びその他の細胞に対する走化性効果を発揮し得る一方、Th17及びTregは、腫瘍型に依存する悪影響を有し得る。テロメラーゼに由来する長鎖ペプチドを使用したワクチン接種試験では、CD4 T細胞応答が、明らかな細胞毒性能力及び臨床的有効性の兆候と共に実証された。
【0127】
本試験で行った分析より、増殖させたIDO反応性CD4+T細胞は、主としてTNF-α、ごくわずかなIFN-γを産生する一方、反応性CD8+T細胞は、主としてダブルポジティブであった。これは、細胞の両サブセットの炎症表現型、及びTヘルパー細胞の場合は、細胞のex vivo粗放的培養により誘導された可能性がある、より疲労した状態を示唆する。患者3例すべてが疾患進行を経験したように、治療の有効性とワクチン応答の間に良好な相関がないことが判明した。肺がんを対象とした過去のIDOワクチン接種試験では、既存のIDO応答と治療応答の間で有意な相関が見出されたものの、ワクチン誘導性の応答とは相関は認められなかったが、それは、理論的には、ワクチン接種の際に、腫瘍反応性T細胞が腫瘍部位に移動するためと考えられる。いくつかのその他の試験において、臨床応答と免疫応答との関連付けについて検討されたが、多くの場合、ワクチン接種試験において応答例の数が少なかったことに起因して、矛盾する結果が得られた。
【0128】
これまでに記載したように、IDOは、MDSCのいくつかのサブタイプを含むいくつかの異なる組織内で発現しており、IDOを標的とした治療はMDSCの頻度に影響を及ぼす可能性がある。更に、MDSCの頻度は、イピリムマブによる治療により低下することが明らかにされている。これに合致して、単球MDSCの頻度低下が治療期間中に判明した。興味深いことに、これはTregのレベル増加と鏡像関係にあり、MDSC対Tregの、そのレベル/変化の間で比例関係は見出されなかったが、自己免疫を防止する逆制御機構に該当する可能性がある。イピリムマブは末梢血液中のTregの頻度を増加させる可能性があることが、いくつかの刊行物でこれまでに報告されているが、その他の報告は逆のことを実証した。
【0129】
Tregのレベルは低下するがMDSCは変化しないことが、この試験で使用したゲーティング及びマーカーパネルと同一のものを使用して、ワクチンを用いずにイピリムマブで治療した患者に認められた(データは示さない)。TregとMDSCの逆の変化は、ランダムな生物学的変動に起因しないと仮定すれば、これは、おそらくはIDO発現細胞、例えばMDSCを標的とするワクチンの特異的効果を示唆し得る。
【0130】
治療終了から10ヶ月後、患者10例のうち7例がなおも生存しており、また患者2例が、なおも安定した疾患状態にある。現行試験のサンプルサイズはそれほど大きくないことから、応答患者数は、ワクチンに関わらず、もっぱら生物学的変動に起因して、単剤治療としてイピリムマブを用いた大規模な臨床試験から実質的に乖離し得るものと予想される。イピリムマブに対する応答は、新規エピトープを生じさせる非同義的突然変異の数と強く関連し、そのようなエピトープは、綿密に調査した患者サンプルの約半分に存在することが最近明らかにされ、小規模な試験において、これとその他の予後因子の不均等な分布を引き起こす重要な機会をもたらす。試験対象コホートでは、客観的な応答率は極めて控えめであった、すなわち患者のいずれも、確認された客観的応答を有さなかった。患者1例では、1回目の評価において腫瘍負荷が極めて有意に低下し、2回目の確認評価において、標的病変に対する応答が継続していたにもかかわらず、同患者は進行し、複数の部位に新規病変を有した。この患者では、治療に対して応答性が低い又は非応答性の悪性クローンが増殖した一方、遺伝的な腫瘍不均一性により、病変のいくつかが継続的に応答可能となった可能性がある。治療を受けた患者10例のうち5例が、1回目の評価により、SD状態の可能性があると考えられ、そのうちの2例が、2回目の評価において確認され、1例が死亡し、そして2例が進行した。臨床的に明白な脳転移を発症する患者の数がかなり高く(3例)、常に不良な予測をもたらすことから、応答率もそれほど高くないことが理解されるはずである。
【0131】
結論として、IDOペプチドワクチンの投与は、イピリムマブと組み合わせたとき、安全であり、また最低限の毒性と関連した。ワクチンは、ex vivoで直接検出可能であったIDO T細胞応答を誘導した。
【0132】
[実施例2]
IDOペプチドワクチン構成要素の更なる特徴づけ(1)
T細胞におけるCMVペプチドに誘導された刺激に対するIDO5及びIO102のブースト効果の比較
方法
方法の全体的なスキームを表Xに要約する。
第1日目:
- バフィーコートサンプルを解凍し、2回洗浄し、培地中に再懸濁した。細胞数を計測した。
- 細胞を、次にX-VIVO+5%HS中、5×106/0.5mlで、細胞培養プレートのウェルに添加した。
- ウェルをCMVペプチドにより、室温で2時間刺激した。使用したCMVペプチドは、HCMV pp65 495-504(NLVPMVATV)であった。
- 2時間後、IDO5、IO102、又は対照として使用した無関係のHIVペプチドを、表Xに基づき添加し、そしてプレートを室温で更に2時間インキュベートした。
- 1500マイクロLのX-VIVO/5% HSを各ウェルに添加し、そしてプレートを37℃のインキュベーター内に配置した。
2日目及び9日目:
- IL2を添加した(120U/μl)。
8日目:
- ウェルをIDO5、IO102、又はHIVペプチドで再刺激し、表Xに基づき添加した後、室温で2時間インキュベートした。
- 再刺激後、各ウェルの内容物を2分割し、そして1.5mlのX-VIVO+5%HSを各ウェルに添加した。
- プレートを、37℃のインキュベーター内に配置した。
第15日目:
- 細胞を採取し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
-CD8モノクロナール抗体(mAb)並びに四量体複合体のHLA-A2/CMV pp65 495-504を使用して、各ウェル中のCMV特異的CD8 T細胞のパーセンテージを同定した。
- 対照として、細胞を、四量体複合体のHLA-A2/HIV-1 pol476-484及びCD8 mAbで追加染色した(データは示さない)。
【0133】
【0134】
結果
結果(図5を参照)は、IO102をCMV刺激細胞培養物に添加すると、IDO5/IO101を添加した場合と比較して、それより大きな割合のCMV特異的T細胞の誘導を引き起こすことを示す。従って、IO102は、IDO5/IO101よりも優れた特異的T細胞の誘導物質であることが明らかである。
【0135】
[実施例3]
IDOペプチドワクチン構成要素の更なる特徴づけ(2)
IO102をIDO小分子阻害剤(SMI)の1-メチルトリプトファン(1MT)と組み合わせて、CMVペプチドで刺激したPBMCに添加したときの効果に関する試験
方法
方法の全体的なスキームを表Yに要約する。
第1日目:
- バフィーコートサンプルを解凍し、2回洗浄し、培地中に再懸濁した。細胞数を計測した。
- 細胞を、次にX-VIVO+5%HS中、5×106/2mlで、細胞培養プレートのウェルに添加した。- ウェルを、表Yに示す通り、ペプチド及びSMIで刺激した。使用したCMVペプチドは、HCMV pp65 495-504(NLVPMVATV)であった。
- プレートを、37度のインキュベーター内に配置した。
2日目及び9日目:
- IL2を添加した(100U/μl)。
8日目:
- 各ウェルから1mlを取り出し、そして1mlの新鮮な培地を添加した。
- 表Yに基づき、ウェルをペプチド及びSMIで再刺激した。
- プレートを、37℃のインキュベーター内に配置した。
第15日目:
- 細胞を採取し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
- CD8モノクロナール抗体(mAb)並びに四量体複合体のHLA-A2/CMV pp65 495-504を使用して、各ウェル中のCMV特異的CD8 T細胞のパーセンテージを同定した。
- 対照として、細胞を、四量体複合体のHLA-A2/HIV-1 pol476-484及びCD8 mAbで追加染色した(データは示さない)。
【0136】
【0137】
結果
結果(図6を参照)は、IDO小分子阻害剤である1MTと組み合わせたIO102によりCMV特異的T細胞刺激をブーストすれば、1MT単独よりも強力となることを示す。従って、IO102及びSMIの両方を使用してIDOを同時に標的とすることは、IDO阻害剤、例えば1MT等を使用して単独で標的とする場合よりも有効である。IO102は、特異的T細胞のIDO SMI誘導型ブーストを強化する。
【0138】
[実施例4]
IDOペプチドワクチン構成要素の更なる特徴づけ(3)
スクランブル化した配列においてIO102と同一のアミノ酸を含有するペプチドではなく、IO102を添加すると、PBMCによる急性単球白血病細胞系THP-1の異質遺伝子的殺傷が強化される。
方法
方法の全体的なスキームを表Z4に要約する。
【0139】
バフィーコートを解凍し(0日目)、2回洗浄し、培地中に再懸濁し、計測を行い、そして表Z4の記載に従いウェルに蒔いた。THP-1細胞を30GYで照射し、そして培地中で2回洗浄した。THP-1細胞の数を計測し、そして表Z4の記載に従い、それを、PBMCを含有するウェルに添加した(総容積2ml)。プレートを、37度のインキュベーター内に配置した。ペプチド及びサイトカインを、間隔を置いて添加し、濃度を表Z5に示す。7日目及び14日目に、1mlの上清を各ウェルから取り出した。新鮮な照射済みのTHP-1細胞を調製し、そして上記の通り計測を行い、そして1mlを、表Z4に示す通り、ウェルに添加した。17日目に細胞を採取し、そして細胞毒性活性について分析した。標準51Cr-放出アッセイを使用して、ペプチドで処置したPBMCの細胞毒性能力を測定した。51CrでラベリングされたTHP-1細胞を標的細胞として、そしてペプチドで処置したPBMCをエフェクター細胞として使用した。トリトン-Xで処理したウェルを測定可能な最大溶解として、また培地単独を最低溶解として使用した。
特異的溶解%=((cpmサンプル - cpm最低)/(cpm最大 - cpm最低))×100%
【0140】
【0141】
結果
IO102をPMBC及びTHP-1がん細胞の培養物に添加すると、THP-1細胞の異質遺伝子的殺傷が強化された。IO102と同一のアミノ酸を含有するが、配列をスクランブル化したペプチド(CILDSKLEVEALAQLLTFALK(配列番号15)、図7、黒色のバー)が誘導したTHP-1細胞の溶解は、異なるエフェクター標的比(E/T)の範囲において、IO102(図7、灰色のバー)と比較してそれよりも少なかったので、ブーストされた細胞毒性は、IO102ペプチドに対して特異的である。
【0142】
[実施例5]
IDOペプチドワクチン構成要素の更なる特徴づけ(4)
IO102は、スクランブル化配列においてIO102と同一のアミノ酸を含有するペプチド(対照、IDOスクランブル化)と比較して、THP-1細胞においてより良好なPBMC媒介型の細胞毒性を誘導する。また、IO102は、IDO5と比較して、低いエフェクター-標的(E/T)比において、THP-1細胞のより良好な殺傷も引き起こす。
方法
方法の全体的なスキームを表Z5に要約する。
【0143】
バフィーコートを解凍し(0日目)、2回洗浄し、培地中に再懸濁し、計測を行い、そして表Z5の記載に従い、ウェルに蒔いた。THP-1細胞を30GYで照射し、そして培地中で2回洗浄した。THP-1細胞の数を計測し、そして表Z5の記載に従い、それを、PBMCを含有するウェルに添加した(総容積2ml)。プレートを、37度のインキュベーター内に配置した。ペプチド及びサイトカインを、間隔を置いて添加し、そして濃度を表Z5に示す。7日目に、1mlの上清を各ウェルから取り出した。新鮮な照射済みのTHP-1細胞を調製し、そして上記の通り計測を行い、そして1mlを、表Z5に示す通り、ウェルに添加し、細胞を採取し、そして23日目に細胞毒性活性について分析した。標準51Cr-放出アッセイを使用して、ペプチドで処置したPBMCの細胞毒性能力を測定した。51CrでラベリングされたTHP-1細胞を標的細胞として、またペプチドで処置したPBMCをエフェクター細胞として使用した。トリトン-Xで処理したウェルを測定可能な最大溶解として、また培地単独を最低溶解として使用した。特異的溶解%=((cpmサンプル - cpm最低)/(cpm最大 - cpm最低))×100%
【0144】
【0145】
結果
IO102(図8、濃い灰色のバー)をPMBC及びTHP-1がん細胞の培養物に添加すると、対照ペプチドであるIDOスクランブル化(図8、黒色のバー)と比較して、試験したすべてのE/T比(2:1~60:1)において、THP-1細胞の異質遺伝子的殺傷が強化された。更に、IO102をPBMC培養物に添加すると、IDO5ペプチド(図8、薄い灰色のバー)を添加した場合と比較して、低いE/T比において、THP-1細胞のより効率的な溶解を誘導した。これは、IO102特異的T細胞は、異質遺伝子的な抗がんT細胞応答をより効率的に支援することを示唆した。
【0146】
[実施例6]
追加のチェックポイント阻害剤と組み合わせたIDOペプチドワクチンの特徴づけ
IO102+抗PD1は、対照ペプチド+抗PD-1と比較して、THP-1細胞においてより良好なPBMC媒介型の細胞毒性を誘導する。
方法の全体的なスキームを表Z6に要約する。
【0147】
バフィーコートを解凍し(0日目)、2回洗浄し、培地中に再懸濁し、計測を行い、そして表Z6の記載に従い、ウェルに蒔いた。THP-1細胞を30GYで照射し、そして培地中で2回洗浄した。THP-1細胞の数を計測し、そして表Z5の記載に従い、それを、PBMCを含有するウェルに添加した(総容積2ml)。プレートを、37度のインキュベーター内に配置した。ペプチド、抗体(ペンブロリズマブ、Merck社)、及びサイトカインを、間隔を置いて添加し、そして濃度を表Z6に示す。7日目に、1mlの上清を各ウェルから取り出した。新鮮な照射済みのTHP-1細胞を調製し、そして上記の通り計測を行い、そして1mlを、表Z6に示す通り、ウェルに添加した。23日目に細胞を採取し、そして細胞毒性活性について分析した。標準51Cr-放出アッセイを使用して、ペプチドで処置したPBMCの細胞毒性能力を測定した。51CrでラベリングされたTHP-1細胞を標的細胞として、またペプチドで処置したPBMCをエフェクター細胞として使用した。トリトン-Xで処理したウェルを測定可能な最大溶解として、また培地単独を最低溶解として使用した。
特異的溶解%=((cpmサンプル - cpm最低)/(cpm最大 - cpm最低))×100%
【0148】
【0149】
結果
IO102と抗PD-1抗体の組合せをPMBCの培養物に添加すると、IDOスクランブル化対照ペプチドと抗PD-1抗体の組合せと共に培養したPBMCによる溶解と比較して、すべてのE/T比(0.7:1~20:1)において、THP-1標的細胞の異質遺伝子的殺傷が強化された(図9)。
【0150】
[実施例7]
IDOペプチドワクチンに関するマウスモデル試験
TC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスを、TC-1特異的E7-ペプチド(RAHYNIVTF、配列番号35)又はIDO-Pep1(MTYENMDIL、配列番号33)で治療し、そしてペプチドワクチンの有効性を、腫瘍負荷及び生存率により評価した。マウスIDO1の配列はヒトIDO1の配列とは異なるので、マウスIDOペプチド配列(IDO-Pep1)を選択して、上記実施例において試験したヒトIDOペプチドに対応するマウス類似体を提供した。
【0151】
方法
4~6週齢のC57BL/6マウスに、細胞70,000個/マウスのTC-1細胞を注射した。腫瘍が約0.075cm3の平均サイズに達したとき(腫瘍イノキュレーション後、約10日)、それぞれの群内の治療を開始した。ワクチン接種で使用されるペプチドには、TC1-特異的E7-ペプチド(RAHYNIVTF、配列番号35)及びIDO-Pep1(MTYENMDIL、配列番号33)が含まれた。マウスIDOペプチドを、MHCクラスI及びII結合アルゴリズムに基づきデザインした。Pan-HLADR-結合エピトープ(PADRE、aK-Cha-VAAWTLKAAa、20μg/マウス)とQuilA(10μg/マウス)を組み合わせて、100μg/マウスの投薬量で投与して、それぞれのペプチドをマウスの皮下にワクチン接種した。1週間の間隔を置きながら2~3回マウスにワクチン接種を行い、そしてペプチドワクチンの有効性を、腫瘍容積及び/又は全生存を測定して評価した。
【0152】
結果
マウスIDOペプチドを用いたワクチン接種は、TC-1腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍保護効果を実証し、腫瘍特異的ペプチド抗原であるE7ペプチドを用いてワクチン接種した場合よりも優れた保護を提供する。図10を参照。
【0153】
[実施例8]
腫瘍抗原ワクチンと組み合わせた、マウスモデルにおけるIDOペプチドワクチン試験
TC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスを、TC-1特異的E7-ペプチド(RAHYNIVTF、配列番号35)、又はIDO-Pep1(MTYENMDIL、配列番号33)、又はE7及びIDO-Pep1の両方の組合せを用いて治療した。ワクチンの有効性を、全生存により評価した。方法は、ペプチドの組合せを含めたことを除き、実施例7と同一であった。
【0154】
結果
E7ペプチドでワクチン接種を受けたマウスは、TC-1モデルにおいて、治療有効性を期待通り有する(及び図10に示す)。但し、E7ペプチドを、IDO-Pep1と共に投与したとき、E7単独又はIDO-ペプチド単独よりも優れた保護を提供する。図11を参照。
【0155】
[実施例9]
追加のチェックポイント阻害剤と組み合わせた、マウスモデルにおけるIDOペプチドワクチン試験
TC-1腫瘍を担持するC57BL/6マウスを、IDO-Pep1(MTYENMDIL、配列番号33)単独、1-メチルトリプトファン(1-MT)単独、又はIDO-Pep1及び1-MTの両方の組合せを用いて治療した。ワクチンの有効性を全生存により評価した。
【0156】
方法
4~6週齢のC57BL/6マウスに、細胞70,000個/マウスのTC-1細胞を注射した。腫瘍が約0.075cm3の平均サイズに達したとき(腫瘍イノキュレーション後、約10日)、それぞれの群内の治療を開始した。マウスのワクチン接種では、IDOエピトープ、IDO-Pep1を使用した。Pan-HLADR-結合エピトープ(PADRE、aK-Cha-VAAWTLKAAa、20μg/マウス)とQuilA(10μg/マウス)を組み合わせて、IDO Pep-1を100μg/マウスの投薬量でマウスの皮下にワクチン接種した。1週間の間隔を置きながら2~3回マウスにワクチン接種を行い、そしてペプチドワクチンの有効性を、腫瘍容積及び/又は生存率を測定して評価した。マウスの1つの群を、試験期間、飲料水に溶解した1-メチルトリプトファン(1-MT)(2mg/ml)で治療し、またマウスの追加の群をIDO-Pep1及び1-MTの両方で治療した。
【0157】
結果
TC-1を担持するマウスを経口a-MTで治療したとき、実現する治療有効性はそれほど高くない。このようなマウスにIDO Pep-1を同時投与すると、生存が延長することから実証されるように、有効性が強化された。図12を参照。
【0158】
[実施例10]
IDOペプチドワクチンの代替的マウスモデル試験
マウスIDOペプチドのIDO-EP2(LPTLSTDGL、配列番号34)を、BALB/cマウスに予防的にワクチン接種し、そして7日後にCT26腫瘍を用いて誘発試験を行った。ペプチドワクチンの有効性を、腫瘍負荷により評価した。マウスIDO1の配列はヒトIDO1の配列とは異なるので、マウスIDOペプチド配列(IDO-EP2)を選択して、上記実施例において試験したヒトIDOペプチドに対応するマウス類似体を提供した。
【0159】
方法
6~10週齢のBALB/cマウスに、1:1の乳化として調製した、100μgのペプチドIDO-EP2+30μgのCpGを含む100μLのモンタニドアジュバント[モンタニドISA 51 VG(Seppic社)]を尾部基底部の皮下注射により免疫した。モンタニド単独(媒体)を対照として使用した。マウス数匹を、更なる対照として未治療のままとした。免疫化を、腫瘍誘発試験の7日前に実施した。CT26腫瘍細胞移植では、各マウスは、1×105個のCT26を含む無血清DMEM、100μLの皮下注射を2回(各側腹部に1回)受けた。腫瘍長さ及び幅のカリパス測定値を、6日目から開始して3~4日毎に記録した。腫瘍容積を式0.52(L×W2)を使用して計算した。合計した腫瘍容積が、約2,000mm3の定義されたエンドポイントに到達したとき、マウスを安楽死させた。
【0160】
結果
マウスIDOペプチドを用いた予防的ワクチン接種は、CT26腫瘍モデルにおいて抗腫瘍保護効果を実証した。図13を参照。
【0161】
[実施例11]
抗PD1抗体と組み合わせたPD-L1/IDOペプチドワクチンの臨床試験
第1の目的は、免疫チェックポイントブロッキング抗体のニボルマブ(ヒトPD1に対して特異的)と組み合わせて、転移性の悪性メラノーマ(MM)を有する患者に投与したときに、アジュバントとしてモンタニドISA 51を含む、ペプチドIDO long(DTLLKALLEIASCLEKALQVF、配列番号3)、及びPD-L1 long1(FMTYWHLLNAFTVTVPKDL、配列番号32)を含有するペプチドワクチンの忍容性及び安全性を評価することである。エンドポイントは、CTCAE 4.0により評価する有害事象(AE)である。
【0162】
第2の目的は、治療の前、期間中、及び後に免疫応答を評価することである。血液サンプルは、治療前、及びその後3ヶ月毎に最長5年採取される。抗原特異的免疫反応性は、PD-L1及びIDO特異的CD8 T細胞のELISPOT、増殖アッセイ、細胞毒性アッセイ、細胞内染色(ICS)、及び多量体染色を含む、関連する免疫学アッセイのパネルを使用して試験される。1回目のワクチンの前、及び6回目のワクチン後に、入手可能な腫瘍病変又は関係するリンパ節から生体組織試料を採取することに、努力が払われなければならない。各患者の腫瘍免疫微環境を評価することが目的である。免疫組織化学、異なる免疫遺伝子における遺伝子発現の定量化、及び初期の突然変異状態を評価する全エキソームシークエンシングが実施される。
【0163】
第3の目的は、治療の臨床的有効性を評価することである。エンドポイントは、客観的応答(OR)、無増悪生存率(PFS)、及び全生存(OS)である。
【0164】
試験は、非盲検第I/II相試験としてデザインされる。第I相では、MMを有する患者6例が治療を受ける。第II相が開始可能となる前に、すべての患者6例は、ニボルマブについて予想される有害事象を除き、グレード3~4の有害事象を一切有さずに、最初の4回の治療を受けなければならない。第I相において、3例以上の患者が、ワクチン接種と関連したグレード3~4のAEを経験した場合、試験は中止される。第II相では、更に患者26例が組み込まれる。
【0165】
試験に組み込まれる患者は、標準レジメンに基づきニボルマブで治療されるが、今のところは、臨床的効果が存在する限り、2週間毎に3mg/kgの外来患者IV輸液を含む。PD-L1/IDOワクチンが、ニボルマブの開始から、最初の6回のワクチンにつき2週毎に、その後4週毎に最長47週間投与される。全体で15回のワクチンが投与される。ワクチン接種の終了時に、進行を理由にプロトコールから除外されない患者は、通常のガイドラインに基づき、ニボルマブによる治療を継続する。
【0166】
完全長タンパク質配列
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022068348000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キットの形態にある、対象におけるがんを予防又は治療するための医薬製剤であって、 (i) 配列DTLLKALLEIASCLEKALQVF(配列番号3)のペプチド及び配列FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号32)のペプチドを含む免疫療法組成物と、
(ii) PD1に結合する抗体である免疫調節剤と、
を含み、任意選択で(i)及び(ii)が別々の密閉容器において提供される、前記医薬製剤。
【請求項2】
抗PD1抗体がペンブロリズマブ又はニボルマブである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
(i)の組成物がアジュバント又は担体を含み、任意選択で、前記アジュバントが細菌DNAアジュバント、油性/界面活性剤アジュバント、ウイルスdsRNAアジュバント、イミダゾキノリン及びGM-CSFから選択される、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記アジュバントがモンタニドISAアジュバントであり、任意選択で、モンタニドISA 51又はモンタニドISA 720から選択される、請求項3記載の医薬製剤。