(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006837
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】地盤振動低減装置
(51)【国際特許分類】
E02D 31/08 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E02D31/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109348
(22)【出願日】2020-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-11-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年 3月25日掲載 https://www.tobishima.co.jp/press_release/detail/20200409131547.html 〔刊行物等〕株式会社日刊建設通信新聞社 建設通信新聞 令和2年3月26日付第3面 2020年 3月26日発行 〔刊行物等〕株式会社日刊建設産業新聞社 日刊建設産業新聞 令和2年3月26日付第2面 2020年 3月26日発行 〔刊行物等〕株式会社日刊建設工業新聞社 日刊建設工業新聞 令和2年3月26日付第3面 2020年 3月26日発行 〔刊行物等〕株式会社日経BP 日経コンストラクション,2020年6月22日号(第738号),第25頁 2020年 6月22日発行
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩根 康之
(72)【発明者】
【氏名】小林 真人
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰尚
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大深度の掘削や土留および開口部閉塞を必要とせず、また工事終了時の埋戻しや土留撤去を必要としないので工事仮設のコストが多大とならず、壁体の施工や撤去に多大のコストを必要とせず、地盤構造の改変をきたし、周辺地盤に傾斜等の影響を与えることがなく、確実に工事振動などを低減できる地盤振動低減装置を提供する。
【解決手段】振動発生源と、該振動発生源の延長線上に設けられた振動が伝達する受振部エリア9との間に設置される地盤振動低減装置であり、該地盤振動低減装置は、前記振動発生源と、振動発生源の延長線上に設けられた受振部エリア9との間の地盤上に敷設される敷板4と、敷板4上に載置され、受振部エリア9での振動を低減する防振用積載物5とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生源と、該振動発生源の振動伝達延長線上に設けられた振動が伝達する受振部エリアとの間に設置される地盤振動低減装置であり、
該地盤振動低減装置は、前記振動発生源と、前記受振部エリアとの間の地盤上に敷設される敷板と、該敷板上に載置され、受振部エリアでの振動を低減する可変可能な質量となる防振積載物群とを有し、
前記敷板は、前記地盤の地表面と密接する面が裏面側に形成されると共に、振動で発生する地表面の変位に抵抗しうる剛性を有して構成され、
前記防振用積載物群は、防振用積載物の複数個で形成され、前記敷板上面にわたり、並設可能で積層可能に載置される、
ことを特徴とする地盤振動低減装置。
【請求項2】
前記防振用積載物群は、前記敷板上に、受振部エリアでの低減効果が最適となる質量での防振積載物の個数及び積層状態に選定できる、
ことを特徴とする請求項1記載の地盤振動低減装置。
【請求項3】
前記敷板は、鉄板あるいはコンクリート板により構成され、前記防振用積載物は、袋に残土を詰めて構成された、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の地盤振動低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建設工事一般に使用する重機等による振動あるいはダンプトラックなどの走行振動など工事あるいはそのほかの理由によってもたらされる地盤振動などの振動を低減する地盤振動低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設工事現場に配置された作業用建設機械や工事用仮設道路を走行する車両等からの振動、また、その他の振動発生源からの振動が周辺の受振側建物などに伝達することが検証され、これらの振動が工事周辺地域、すなわち近隣住宅地域などに悪影響を与えることが問題となっている。
【0003】
ここで、従来、工事振動を伝播経路(地盤)で低減させる対策として、前記地盤に空溝を掘った防振溝の形成、あるいは地盤中に地盤を構成する土質と物性の大きく異なる壁体を挿入した地中壁(防振壁)の形成、あるいは各種の制振装置などを設置するなどの対策が提案されてきた。
しかしながら、前記従来の技術、例えば、防振溝の形成、防振壁の形成、あるいは各種制振装置などの設置については各種の課題が指摘されていた。
【0004】
一般に、工事振動では4Hz~10Hzの振動が主に発生し、当該周波数の振動が周辺へ影響を与える。ここで、地盤表層(粘土・シルト)での波長は波動の伝播速度を150m/sとすれば37.5m~15mとなる。
【0005】
この様に長い波長を対象とすることから、例えば前述の防振溝の形成で3dBの振動低減効果を得ようとすると、溝の深さは10m以上(6dBでは20m以上)となり工事現場に適用するには以下の課題が生じる。
【0006】
すなわち、防振溝の形成の場合には、大深度の掘削や土留および開口部閉塞が必要とされる。また工事終了時の埋戻しや土留撤去が必要であり工事仮設並びに工事終了時の架設撤去(復旧)のコストが多大となる。
【0007】
また、防振壁の形成についても、壁体の施工や撤去に多大のコストが必要とされる。
さらに、従来の防振溝、あるいは防振壁の形成には、大規模な仮設が必要で狭小の建設現場には適用が難しい。
また、防振溝や防振壁の形成で地盤構造の改変をきたし、周辺地盤に傾斜等の影響を与える懸念等も指摘されていた。
【0008】
そこで、本件発明者らは、建設工事で発生する振動を地表面に設置するだけで低減することが可能な伝播経路対策、すなわち画期的な防振堤の開発を行ったものである。
【0009】
振動の対策技術としては発生源対策、伝播経路対策、受振部対策の3つの対策に分類される。しかるに、建設工事では受振部対策はあまり一般的ではなく、低振動型の機械や低振動の工法を採用したり、防振マットなどを敷設して地盤への振動伝達を低減したりする発生源対策の採用が検討される。
【0010】
そして、発生源対策の採用が困難な場合や、その効果が充分でない場合などは、伝播経路対策が検討される。ここで、伝播経路対策としては前述した空溝や防振壁の構築が代表的で、これまでに、その効果は複数報告されている。しかし、空溝や防振壁の振動低減効果は、その深さに依存するため、対策が大規模化しやすく、安全面や費用対効果に課題があり、特に建設振動対策としては実用性に乏しいという課題があった。
【0011】
また、近年では、振動低減のための伝播経路対策として、おもりを用いた振動低減対策も提案されている(特開2017-115476号)。この提案は振動の伝播経路上に振動低減用のおもりを設置し、その慣性力によって振動を低減しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2016-23516号公報
【特許文献2】特開2017115476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、例えば工事現場にある汎用的な資機材で製作が可能であり、地表面に設置するだけで振動を低減することができ、もって従来の建設振動対策技術に比べ、安全、安価で効果的な伝播経路対策を実現できる地盤振動低減装置を提供できるものである。
【0014】
すなわち、防振溝形成の場合の様に、大深度の掘削や土留および開口部閉塞を必要とせず、また工事終了時の埋戻しや土留撤去を必要としないので工事仮設のコストが多大とならず、また、防振壁の形成のように、壁体の施工や撤去に多大のコストを必要とせず、地盤構造の改変をきたし、周辺地盤に傾斜等の影響を与えることがなく、確実に工事振動などを低減できるローコストで効果的な地盤振動低減装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
振動発生源と、該振動発生源の延長線上に設けられた振動が伝達する受振部エリアとの間に設置される地盤振動低減装置であり、
該地盤振動低減装置は、前記振動発生源と、振動発生源の延長線上に設けられた受振部エリアとの間の地盤上に敷設される敷板と、該敷板上に載置され、受振部エリアでの振動を低減する防振積載物とを有し、
前記敷板は、前記地盤の地表面と密接する面が裏面側に形成されると共に、振動で発生する地表面の変位に抵抗しうる剛性を有して構成され、
記防振用積載物は、複数個を有し、前記敷板上面の略全面にわたり、並設可能で積層可能に載置される、
ことを特徴とし、
または、
前記防振用積載物群は、前記敷板上に、受振部エリアでの低減効果が最適となる質量での防振積載物の個数及び積層状態に選定できる、
ことを特徴とし、
または、
前記敷板は、鉄板あるいはコンクリート板により構成され、前記防振用積載物は、袋に残土を詰めて構成された、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、工事現場にある汎用的な資機材で製作が可能であり、地表面に設置するだけで振動を低減することができ、もって従来の建設振動対策技術に比べ、安全、安価で効果的な伝播経路対策を実現できる。すなわち、防振溝形成の場合の様に、大深度の掘削や土留および開口部閉塞を必要とせず、また工事終了時の埋戻しや土留撤去を必要としないので工事仮設のコストが多大とならず、また、防振壁の形成のように、壁体の施工や撤去に多大のコストを必要とせず、地盤構造の改変をきたし、周辺地盤に傾斜等の影響を与えることがなく、確実に工事振動を低減できる地盤振動低減装置を提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の第1実施例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図3】第1実施例での効果を説明する説明図(1)である。
【
図4】第1実施例での効果を説明する説明図(2)である。
【
図5】第1実施例での効果を説明する説明図(3)である。
【
図6】第1実施例での効果を説明する説明図(4)である。
【
図7】本発明の第2実施例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図8】本発明の第2実施例の構成を説明する説明図(2)である。
【
図10】第3実施例の構成を説明する説明図である。
【
図11】第3実施例の効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、
図2は、本発明の振動低減装置の概略構成を説明する概略構成説明図である。
図1は振動低減装置の設置状況を示したものである。
図1に示すように、振動の発生源としては、振動型機械の使用、あるいは振動を伴う工法の施工などが挙げられる。そして、それらの振動を本発明による防振堤1を構築することにより受振部エリア9に伝達する振動を低減できるものとしている。
【0019】
図1、
図2において、本発明による振動低減装置である防振堤1は、例えば方形状をなす平板状に形成された敷板4を有する。そして、この敷板4の裏面側は、地表面2と密接する接触面3に形成されている。従って接触面3と地表面2とはほぼ密着状態になるよう構成される。すなわち、前記敷板4は、前記地盤の地表面2と密接する面が裏面側に形成されると共に、敷板4自体が、建設振動などの地盤振動による地表面2の変位に抵抗しうる剛性を有して構成されるものとなる。
【0020】
よって、前記敷板4の材質については何ら限定されないが、前述のように地表面2と全体的に面接触する接触面3を裏面側に形成されることが必要とされ、敷板4自体が地表面2の変位に抵抗しうる剛性を有していることが要求されるものとなる。
【0021】
敷板4としては工事現場などでよく使用される工事用の鉄板あるいはコンクリート板が用いられる。なお、前記鉄板あるいはコンクリート板の大きさや厚さについては何ら限定されないが、大きさについては防振用積載物5が複数個並べて載置できる長さと幅を有する大きさが求められる。よって、大きな敷板4が必要な場合は、鉄板を複数枚用意し、それらを連結金具で繋いで使用することが考えられる。
【0022】
また、厚さについては、前述したように建設振動により発生する地表面の変位に抵抗できる程度の剛性を有する厚みであることが要求される。よって、コンクリート板を使用する場合には、約20cm程度の厚みのものが好ましい。
【0023】
なお、地表面2に凹凸がある場合には、それに密接する敷板4の裏面もその凹凸にあうよう凹凸面に形成する必要がある。コンクリート板によって敷板4を形成する場合には、裏面を前記凹凸にあうよう凹凸面に形成することが容易である。この点を鑑みると、地表面2に凹凸がある場合は、鉄板よりコンクリート板によって敷板4を形成するのが好ましい。
【0024】
次に、敷板4上に載置される防振用積載物5につき述べる。
該防振用積載物5は所定の質量を有するものであればその材質、物性については何ら限定されない。本発明では、現場に多量に存する残土などを袋6に入れて防振用載積物5を形成することができる。
【0025】
ここで、袋6の大きさは何ら限定されないが、重機7によって袋6に残土を入れることができ、また袋詰めした後、重機7によって運搬できるのであれば比較的大きな防振用積載物5が構成できる。しかし、残土の袋詰めや運搬を人力のみで行う場合には、20kg程度の質量の防振用積載物5になる。
【0026】
図2などに示すように、防振用積載物5は複数個必要となる。すなわち、敷板4の表面側略全面にわたって載置できる数個分用意しなければならない。しかも、前記載置された防振用積載物5の上にさらに防振用積載物5が積み重ねられることも必要である。
すなわち、敷板4上に複数個並べて載置することが出来、また、並べられた防振用積載物5の上に、さらに、防振用積載物5を積層出来ることが必要である。
【0027】
敷板4上に複数個並べて載置することが出来、また、並べられた防振用積載物5の上に、さらに、防振用積載物5を積層出来るようにすることで、防振すべきそれぞれの受振部エリア9(防振対策エリア)に適合した所定の質量を有する防振用積載物5が確保できるものとなる。しかも、防振用積載物5を積層出来ることにより敷板4の大きさを必要以上に大きくする必要もなくなる。
すなわち、比較的小さい大きさの敷板4を選択し、その選択した敷板4上に低減効果が最適となる質量の防振積載物5の個数及び積層状態などを選定できるからである。
【0028】
ところで、防振対策を行わなければならない工事現場において、敷板4や大型土のうなどで構成した防振用積載物5はきわめて汎用的な資材でもあり、また重機7は中型のバックホウがあれば本発明での防振提1の形成は容易に行えることとなる。
【0029】
よって、従来の防振壁などの構築に比べると、地盤振動低減装置の構築に際し、大幅なコストダウンが可能であり、また空溝のような維持管理における安全上の問題も生じないのである。
【0030】
図3は、本発明による防振堤1を設置した際の周辺地盤の加速度応答の数値解析結果を示したものである。
【0031】
ここで、
図3(a)は防振堤1の構成を大型土のうにより構成された防振用積載物5を複数個並べて地表面2上に直に載置した場合、すなわち敷板4を使用しない場合を想定しており、防振堤1のパラメータに表層地盤と同じ物性を持つソリッド要素のみを設定して表現したものである。
【0032】
これに対し、
図3(b)の防振堤1は、大型土のうからなる複数個の防振用積載物5により構成された防振積載物群の下に本発明の必須構成要件である敷板4を、地表面2と接触面3とが密接するよう敷設した場合を想定して表現したものであり、ソリッド要素の下面に例えば厚さ22mmの鋼板を想定したシェル要素を設定して表現したものである。なお、加振条件は(a)と(b)とで同じにしてある。
【0033】
ここで、2つの解析結果を比較すると、(a)では(b)に比べ防振堤1による振動低減効果が小さく、防振堤1が地盤と同様に変位している様子が周辺地盤の加速度応答の数値解析結果から確認できる。
【0034】
一方(b)では、加速度応答は(a)に比べ小さく、特に防振堤1の背面で振動を大幅に低減していることが分かる。このように、防振堤1は
図3(b)に示すように剛性の高い下層部分、すなわち、敷板4と、質量を付与する上層部分、すなわち防振積載物5とが一体となって挙動し、地表面2の変位を拘束することで、特にその背面の振動を効果的に低減することができるのである。
【0035】
防振堤1の実用化に向け、本件発明者らは、実物大実験を実施して本発明による振動低減装置、すなわち防振堤1の振動低減効果を検証した。
【0036】
図2から理解できるように、防振堤1は、例えば、鉄板を連結金具で接続した、すなわち、2枚の敷鉄板(1枚の大きさが1,524 mm×6,096 mm、t=22 mm、よって2枚を接続したとき、約3,048 mm×6,096 mm、t=22 mm)で構成された敷板4の上に、質量約1tの大型土のう、すなわち防振用積載物5を24袋(3×4列×2段)設置して構成した。すなわち、防振用積載物5の総質量は24tとなる。
【0037】
加振方法は、起振器8による掃引加振、重機7の低速走行および高速走行による加振の3通りとした。低速走行とは、重機7の速度レバーを最低速に切り替えたものであり、高速走行とは、重機7の速度レバーを最高速に切り替えたものである。
【0038】
そして、
図2に示すように、防振堤1の位置は起振器8による加振位置の中央から6m地点とし、その背面を振動の低減対象範囲、すなわち受振部エリア9とした。
【0039】
加振位置の測定点(PU1)(PU:pick up)とその他の測定点(PU2~PU6)の加速度の比を取って伝達関数とし、この伝達関数が防振堤1を設置することでどのくらい低減するかを検証した。
【0040】
測定点PU4は、防振提1の幅方向中心位置から4m離れた位置、測定点PU5は、防振提1の幅方向中心位置から8m離れた位置、測定点PU6は、防振提1の幅方向中心位置から12m離れた位置として設定してある。
【0041】
図4乃至
図6に振動低減対象範囲である受振部エリア9のPU4、PU5、PU6の加振力ごとの伝達関数の低減量を示す。いずれの測定点においても防振堤1による振動低減効果が確認された。特に、およそ15~20Hzの振動数では、低減量は10dB程度と大きく、防振堤1による振動対策の優れた有効性が確認された。
【0042】
次に、
図7、
図8に防振積載物5の個数を変化させた場合の実施例における検証例を示す。
【0043】
ここで、防振堤1は、例えば、連結金具で接続した敷板4、すなわち、4枚の敷鉄板(1枚の大きさが1,524 mm×6,096 mm、t=22 mm、よって4枚を接続したとき、約6,096mm×6,096 mm、t=22 mm)の上に、質量約1tの大型土のう、すなわち防振用積載物5を
図8に示すように1段で16袋を並べて設置した場合、2段重ねにして28袋設置した場合、3段重ねにして36袋設置した場合について検証した。
【0044】
加振方法は、起振器8による掃引加振とした。
上記の説明による現場検証の配置図は
図7である。
図7に示すように、防振堤1の設置位置は、起振器8による加振位置の中央から6m離れた地点とし、その背面を振動の低減対象範囲、すなわち受振部エリア9とした。
【0045】
加振位置の測定点(PU1)(PU:pick up)とその他の測定点(PU4)の加速度の比を取って伝達関数とし、この伝達関数が防振堤1を設置することでどのくらい低減するかを検証した。
測定点PU4は、防振提1の幅方向中心位置PU3から6m離れた個所に設定してある。
【0046】
図9に振動低減対象範囲である受振部エリア9のPU4の加振力ごとの伝達関数の低減量を示す。1段で16袋設置した場合、2段で28袋設置した場合、3段で36袋設置した場合のいずれの場合でも防振堤1による振動低減効果が確認された。特に、防振積載物5の質量を大きくすることで、低い振動数から低減効果が現れ、低減量が大きくなる傾向があることが確認できた。
【0047】
図9に示すように、17Hz近傍の振動数では、2段にした場合、14dBほど低減している。また、3段にした場合は、13Hzからの低振動数に対しても安定的に低減しているのが理解できる。
【0048】
次に、
図10に示すように、振動の伝播方向へ本発明の防振提1の長さを延ばした場合、その防振堤1の延ばした長さ分が低減効果にどのような影響を与えるかにつき検証した。
【0049】
図10(a)は、4枚の敷鉄板(1枚の大きさが1,524 mm×6,096 mm、t=22 mm、よって4枚を接続したとき、6,096 mm×約6,096 mm、t=22 mmとなる)を連結金具で繋ぎ敷板4を形成し、その上に防振用載積物5を伝播方向へ4列、3段に積み上げた場合であり、
図10(b)は、6枚の敷鉄板(1枚の大きさが1,524 mm×6,096 mm、t=22 mm、よって6枚を接続したとき、6,096 mm×約9,144mm、t=22 mmとなる)を連結金具で繋ぎ、敷板4を形成し、その上に防振用載積物5を伝播方向へ6列、3段に積み上げた場合であり、
図10(c)は、8枚の敷鉄板(1枚の大きさが1,524 mm×6,096 mm、t=22 mm、よって8枚を接続したとき、6,096mm×約12,192 mm、t=22 mmとなる)を連結金具で繋ぎ、敷板4を形成し、その上に防振用載積物5を伝播方向へ8列、3段に積み上げた場合である。
【0050】
そして、前記4列の場合は、36袋の防振積載物5を使用し、6列の場合は、60袋の防振積載物5を使用し、8列の場合は、84袋の防振積載物5を使用したものである。
【0051】
しかるに、
図11から理解できるように、防振堤1の長さ方向中央から6mの位置にある測定点PU4では、振動数13Hz付近、または振動数16Hz付近において前記防振堤1の長さを長くすることで低い振動数から低減効果が現れ、低減量は大きくなる傾向を示した。
【0052】
なお、本発明における防振提1の設置の個数であるが、決して1つの防振提1の設置に限定されるものではなく振動発生源や受振部エリア9などの状況に応じて、複数の防振堤1を設置することができる。
【0053】
さらに、敷板4の形状・大きさ・配置状態についてであるが、敷板4は、振動発生源と受振部エリア9との間の地盤において、振動の伝播方向に所定の長さ(地表面との接地面積)以上確保するように敷設することが好ましい。
【0054】
また、防振堤1の長さの設定について考察すると、振動の発生源として想定される振動の種類や振動数に応じて、振動の伝播方向への防振提1(敷板4)の長さを設定することが好ましい。この長さの設定についてはコンピュータを用いて行えば簡単に算出することができる。
【0055】
さらに、一旦防振堤1を設置した後に、実際の振動の種類や振動数に応じて防振堤1(敷板4)の長さを変更することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 防振提
2 地表面
3 接触面
4 敷板
5 防振用積載物
6 袋
7 重機
8 起振器
9 受振部エリア