(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068375
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 8/26 20060101AFI20220427BHJP
C21D 9/30 20060101ALI20220427BHJP
C21D 9/32 20060101ALI20220427BHJP
C21D 1/06 20060101ALI20220427BHJP
C21D 1/76 20060101ALI20220427BHJP
F16H 55/06 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C23C8/26
C21D9/30 A
C21D9/32 A
C21D9/30 B
C21D9/32 B
C21D1/06 A
C21D1/76 M
F16H55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019032684
(22)【出願日】2019-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000111845
【氏名又は名称】パーカー熱処理工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】平岡 泰
【テーマコード(参考)】
3J030
4K028
4K042
【Fターム(参考)】
3J030AC02
3J030BC02
3J030BC03
3J030CA10
4K028AA02
4K028AB01
4K028AC07
4K028AC08
4K042AA16
4K042AA17
4K042AA18
4K042AA25
4K042BA03
4K042CA01
4K042CA15
4K042DA06
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DD02
4K042DD03
4K042DD05
4K042DE02
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】表層領域の耐摩耗性が改善された窒化鋼部材、及び、そのような窒化鋼部材を製造するための製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、ε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~50μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、
表面に、窒化化合物層を備え、
前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、
前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、
前記窒化化合物層は、ε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、
前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%以上であり、
前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~50μmの厚さを有している
ことを特徴とする窒化鋼部材。
【請求項2】
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、
表面に、窒化化合物層を備え、
前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、
前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、
前記窒化化合物層は、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、
前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、30%以上あり、
前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~30μmの厚さを有している
ことを特徴とする窒化鋼部材。
【請求項3】
炭素含有量が質量%で0.1%以上である炭素鋼を母相としている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の窒化鋼部材。
【請求項4】
案内筒と撹拌ファンとを備えた循環型処理炉を用いて、炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材を製造する方法であって、
窒化処理時において、前記循環型処理炉内の温度範囲が、610℃~660℃に制御され、
前記窒化処理時において、前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルが、0.15~0.6の範囲に制御され、
前記窒化処理後、急冷され、更に再加熱処理がなされる
ことを特徴とする窒化鋼部材の製造方法。
【請求項5】
案内筒と撹拌ファンとを有する循環型処理炉を備え、
窒化処理時において、前記循環型処理炉内の温度範囲が、610℃~660℃に制御され、
前記窒化処理時において、前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルを制御するために、アンモニアガスとアンモニア分解ガスとが前記循環型処理炉内に導入されるようになっている窒化鋼部材の製造装置であって、
前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルは、前記アンモニア分解ガスの炉内導入量を一定とし且つ前記アンモニアガスの炉内導入量を変化させることで、0.15~0.6の範囲の目標の窒化ポテンシャルに制御されるようになっている
ことを特徴とする窒化鋼部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法及び製造装置に関する。さらに詳しくは、自動車用の変速機用の歯車やクランクシャフト等に有用な耐摩耗性に優れる窒化鋼部材並びに当該窒化鋼部材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の表面硬化処理の中でも、低熱処理ひずみ処理である窒化処理のニーズは高く、最近では特に、ガス窒化処理の雰囲気制御技術への関心が高まっている。
【0003】
ガス窒化処理により得られる基本的な組織構成では、表面において鉄窒化物である化合物層が形成され、内部において拡散層と呼ばれる硬化層が形成される。当該硬化層は、通常、母材成分のSiやCrなどの合金窒化物からなる。
【0004】
これらの2層の各々の厚さ(深さ)及び/または表面の鉄窒化物のタイプ等を制御するために、ガス窒化処理の温度と時間とに加えて、ガス窒化処理炉内の雰囲気も適宜に制御されている。具体的には、ガス窒化炉内の窒化ポテンシャル(KN)が適宜に制御されている。
【0005】
そして、当該制御を介して、鋼材の表面に生成される化合物層中のγ’相(Fe4N)とε相(Fe2-3N)の体積分率(鉄窒化物のタイプ)が制御されている。
【0006】
例えば、ε相よりもγ’相を形成することにより、耐疲労性が改善されることが知られている(非特許文献1)。
【0007】
更に、γ’相の形成により曲げ疲労強度や面疲労を改善した窒化鋼部材も提供されている(特許文献1)。
【0008】
あるいは、本発明が着目する耐摩耗性については、ε相を多くすることで改善されることが報告されている(非特許文献2)。そして、ε相を多く含む化合物層を表面に形成させる窒化法として、少量の浸炭性ガスをアンモニア雰囲気に混合させて実施される軟窒化処理が知られている。
【0009】
一方、Fe-N二元合金の共析変態点(約590℃)以上の温度で窒化処理を行うと、表面には化合物層が形成され、その後急冷すればその下部には窒素含有マルテンサイト組織を含む硬化層が形成される。当該温度域での窒化処理は、従来の窒化処理(Nitriding)と区別して、浸窒処理(Austenitic Nitriding)と呼ばれている。
【0010】
しかし、当該浸窒処理では、表面近傍の組織(表面の化合物層は除く)のオーステナイトが安定化され、その後に急冷されても大部分のオーステナイトが残留する。このため、熱処理後のひずみは、窒化処理と同程度である。加えて、この安定化されたオーステナイトは、250~300℃の温度にまで再加熱されることで、硬質なマルテンサイト組織へと変態される。
【0011】
例えば、STKM-13C(JIS G 3445に規程される機械構造炭素鋼鋼管)を640℃で90min浸窒処理し、更に660℃で40min浸窒処理してから急冷し、その後280℃で90min再加熱処理することにより、表面近傍のオーステナイトは800~900HVまで硬化される。
【0012】
更に、700℃でJIS-SPCC(冷間圧延鋼板の一種)を浸窒処理しても、表面に化合物層が形成され、その後の急冷でその下部に窒素マルテンサイト組織の硬化層が形成される(非特許文献3)。この時の表面の化合物層は、ε相であると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013-221203号公報
【特許文献2】特開2014- 25161号公報
【非特許文献1】平岡泰、渡邊陽一、石田暁丈:熱処理、55巻、1号、1-2ページ
【非特許文献2】ディータリートケほか:鉄の窒化と軟窒化、アグネ技術センター、2013年、84ページ
【非特許文献3】河田一喜、木立徹:日本熱処理技術協会、第81回春季講演大会概要集、29-30ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
機械部品、例えば自動車用のエンジン内部のカムシャフト、ピストンリング、クランクシャフト等、における摩擦損失は、10%以上にもなる。一部の機械部品には、既に窒化処理等の表面処理が適用されているが、さらなる摩擦損失の低減が望まれている。
【0015】
鋼部品の摩耗損失を低減するための一つの方策として、鋼部品の「硬さ」を増加させることが考えられる。前述のように、浸窒処理及び急冷後に再加熱処理を行うことによって、表面化合物層の硬さを高められることが知られている。
【0016】
しかしながら、非特許文献3に開示された処理では、窒化温度が700℃であって比較的高いため、母材や拡散層の硬度が低下してしまう懸念がある。
【0017】
更に、特許文献2に開示された処理について再現実験を試みたが、当該文献に記載されているような硬化組織(具体的にはγ’相内にα”相が析出した混相)を再現することはできなかった(当該文献の記述内容に何らかの誤りがあると推測される)。
【0018】
一方、軟窒化処理によって形成される化合物層は、表面硬度が不十分であり(後述の
図11の比較例参照)、耐摩耗性も不十分である(後述の表1の比較例参照)。
【0019】
本件発明者は、鋭意の検討及び種々の実験を繰り返し、処理炉の構成を限定した上で窒化処理の温度及び窒化ポテンシャルを高精度に制御することによって、十分な硬度を維持しつつ耐摩耗性が改善された窒化鋼部材を製造できることを知見した。
【0020】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、表層領域の耐摩耗性が改善された窒化鋼部材、及び、そのような窒化鋼部材を製造するための製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、ε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~50μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材である。
【0022】
本発明によれば、表面の窒化化合物層がε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有し、且つ、5μm~50μmの厚さを有し、窒化化合物層中のγ’相の体積比率が20%以上であることにより(このような構成は、後述される窒化方法によって初めて実現されたものである)、窒化鋼部材として十分な硬度を提供しつつ、耐摩耗性を改善することができる。
【0023】
なお、窒化化合物層の厚さについて50μmを上限値としたのは、その値が本願出願時までに本件発明者によって確認された最大厚さであるからである(後述の循環型処理炉を用いて、S50C鋼を母相として、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.6、処理時間:2時間、という浸窒処理条件を採用することによって得られることが確認されている)。
【0024】
更に、窒化化合物層の厚さについて、窒化化合物層が窒化鋼部材の表面全体に形成される(窒化化合物層が局所的に形成されない場合がない)ための条件として、5μmを下限値としている。
【0025】
また、本発明は、炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、30%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~30μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材である。
【0026】
本発明によれば、表面の窒化化合物層がγ’相、ε相の順番の相分布を有し、且つ、5μm~30μmの厚さを有し、窒化化合物層中のγ’相の体積比率が30%以上であることにより(このような構成は、後述される窒化方法によって初めて実現されたものである)、窒化鋼部材として十分な硬度を提供しつつ、耐摩耗性を改善することができる。
【0027】
本発明においても、窒化化合物層の厚さについて30μmを上限値としているが、これは、その値が本願出願時までに本件発明者によって確認された最大厚さであるからである(後述の循環型処理炉を用いて、S15Cを母相として、処理温度:650℃、窒化ポテンシャル:0.2、処理時間:2時間、という浸窒処理条件を採用することによって得られることが確認されている)。
【0028】
更に、本発明においても、窒化化合物層の厚さについて、窒化化合物層が窒化鋼部材の表面全体に形成される(窒化化合物層が局所的に形成されない場合がない)ための条件として、5μmを下限値としている。
【0029】
以上の各発明において、例えば、炭素含有量が質量%で0.1%以上である炭素鋼を母相とすることができる。
【0030】
また、本発明は、窒化鋼部材の製造方法として認識することも可能である。すなわち、本発明は、案内筒と撹拌ファンとを備えた循環型処理炉を用いて、炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材を製造する方法であって、窒化処理時において、前記循環型処理炉内の温度範囲が、610℃~660℃に制御され、前記窒化処理時において、前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルが、0.15~0.6の範囲に制御され、前記窒化処理後、急冷され、更に再加熱処理がなされることを特徴とする窒化鋼部材の製造方法である。
【0031】
本発明の窒化鋼部材の製造方法によれば、
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、ε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~50μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材
を製造することができる。
【0032】
あるいは、本発明の窒化鋼部材の製造方法によれば、
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、30%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~30μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材
を製造することができる。
【0033】
また、本発明は、窒化鋼部材の製造装置として認識することも可能である。すなわち、本発明は、案内筒と撹拌ファンとを有する循環型処理炉を備え、窒化処理時において、前記循環型処理炉内の温度範囲が、610℃~660℃に制御され、前記窒化処理時において、前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルを制御するために、アンモニアガスとアンモニア分解ガスとが前記循環型処理炉内に導入されるようになっている窒化鋼部材の製造装置であって、前記循環型処理炉内の窒化ポテンシャルは、前記アンモニア分解ガスの炉内導入量を一定とし且つ前記アンモニアガスの炉内導入量を変化させることで、0.15~0.6の範囲の目標の窒化ポテンシャルに制御されるようになっていることを特徴とする窒化鋼部材の製造装置である。
【0034】
本発明の窒化鋼部材の製造装置によれば、
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、ε相、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~50μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材
を製造することができる。
【0035】
あるいは、本発明の窒化鋼部材の製造装置によれば、
炭素鋼または低合金鋼を母相とする窒化鋼部材であって、表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層の下部に、オーステナイト組織を有する硬化層を備え、前記硬化層の下部に、前記母相内に窒素が拡散されている拡散層を備え、前記窒化化合物層は、γ’相、ε相の順番の相分布を有しており、前記窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、30%以上であり、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から5μm~30μmの厚さを有していることを特徴とする窒化鋼部材
を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の窒化鋼部材によれば、窒化鋼部材として十分な硬度を提供しつつ、耐摩耗性を改善することができる。
【0037】
また、本発明の窒化鋼部材の製造方法によれば、十分な硬度及び耐摩耗性を有する窒化鋼部材を製造することができる。
【0038】
また、本発明の窒化鋼部材の製造装置によれば、十分な硬度及び耐摩耗性を有する窒化鋼部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の第1実施形態による窒化鋼部材の断面顕微鏡写真である。
【
図2】
図1の窒化鋼部材のEBSD法による解析結果を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の窒化鋼部材の再加熱処理前の状態の断面顕微鏡写真である。
【
図4】
図3の窒化鋼部材のEBSD法による解析結果を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による窒化鋼部材の断面顕微鏡写真である。
【
図6】
図5の窒化鋼部材のEBSD法による解析結果を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の窒化鋼部材の再加熱処理前の状態の断面顕微鏡写真である。
【
図8】
図7の窒化鋼部材のEBSD法による解析結果を示す図である。
【
図9】比較例としての窒化鋼部材の断面顕微鏡写真である。
【
図10】
図9の窒化鋼部材のEBSD法による解析結果を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態による窒化鋼部材の製造装置の概略図である。
【
図13】循環型処理炉(横型ガス窒化炉)の概略断面図である。
【
図15】摩擦摩耗試験に用いた試験片の斜視図である。
【
図16】摩擦摩耗試験に用いたSRV試験機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0041】
(窒化鋼部材の第1実施形態の構成、製法及び効果)
図1は、本発明の第1実施形態の窒化鋼部材110の断面顕微鏡写真である。
図1に示すように、本実施形態の窒化鋼部材110は、表面に、窒化化合物層111が形成されており、当該窒化化合物層111の下方に、後述するようなオーステナイト組織を有する硬化層112を備え、当該硬化層112の下方に、母相内に窒素が拡散されている拡散層113を備えている。本実施形態の母相(母材)は、炭素含有量が質量%で0.45%である炭素鋼である。
【0042】
図1において、窒化化合物層111の下部や硬化層112が黒く見えているのは、組織観察用の腐食液によって強く腐食されたためである。また、表面の更に上方に見えているのは、研磨用の板であり、窒化鋼部材の構成要素ではない。
【0043】
窒化鋼部材110の相分布は、EBSD法とX線回折とを併用することによって解析され得る。具体的には、
図2に示すように、EBSD法によって、表面側からε相、γ’相(fcc結晶相)、ε相の順番の相分布が分かる。そして、X線回折が併用されることで、硬化層112のfcc結晶相がオーステナイト相(γ相)であることが確認される。
【0044】
窒化化合物層111は、窒化鋼部材110の表面から約30μmの厚さを有しており、これは5μm~50μmの範囲内の厚さである。表面のε相は、数μmの厚さである。
【0045】
また、窒化化合物層111中のγ’相の体積比率は、SEM/EBSD法による分析範囲(窒化化合物層111の幅約120μm)中に占めるγ’相とε相のカウント数に基づいて測定され得る。あるいは、得られた
図2の画像から、画像解析によって計算してもよい。本実施形態の窒化化合物層111の場合、41%である。
【0046】
硬化層112は、再加熱処理によってマルテンサイト組織に変態していると予想されたが、本件発明者が前述のようなX線回折法による結晶構造解析を適用したところ、硬化層112の大部分がオーステナイト相(γ相)であるとの結果であった。従って、本件発明者は、硬化層112について、厳密にはオーステナイトとマルテンサイトとの混合組織ではないか、と考えている。もっとも、浸窒処理後の鋼材サイズや冷却条件や再加熱条件により、ベイナイト組織やブラウナイト組織等、更に複数種類の微細組織を含む可能性も排除されない。
【0047】
本実施形態の窒化鋼部材110は、後述の循環型処理炉を用いて、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.4、処理時間:2時間、という処理条件で浸窒処理された後、急冷され、更に処理温度:250℃、処理時間:2時間、という処理条件で再加熱されることで、製造され得る。
【0048】
以上のような窒化鋼部材110は、窒化化合物層111中のγ’相の体積比率が41%(20%以上)であることにより、実用に足る十分な硬度を提供できると共に(後述の
図11の実施例1-30参照)、耐摩耗性も改善されている(後述の表1の実施例1-30参照)。
【0049】
参考のため、窒化鋼部材110の再加熱処理前の状態の断面顕微鏡写真を
図3に示す。また、
図4は、
図3の窒化鋼部材160のEBSD法による解析結果を示す図である。
【0050】
図3及び
図4に示すように、再加熱処理前の状態では、窒化化合物層111に相当する領域161の大部分がε相である。このため、十分な硬さが得られない(後述の
図11の参考例1参照)。
【0051】
(窒化鋼部材の第2実施形態の構成、製法及び効果)
図5は、本発明の第2実施形態の窒化鋼部材120の断面顕微鏡写真である。
図5に示すように、本実施形態の窒化鋼部材120は、表面に、窒化化合物層121が形成されており、当該窒化化合物層121の下方に、後述するようなオーステナイト組織を有する硬化層122を備え、当該硬化層122の下方に、母相内に窒素が拡散されている拡散層123を備えている。本実施形態の母相(母材)は、炭素含有量が質量%で0.45%である炭素鋼である。
【0052】
図5においても、窒化化合物層121の下部や硬化層122が黒く見えているのは、組織観察用の腐食液によって強く腐食されたためである。また、表面の更に上方に見えているのは、研磨用の板であり、窒化鋼部材の構成要素ではない。
【0053】
窒化鋼部材120の相分布は、EBSD法とX線回折とを併用することによって解析され得る。具体的には、
図6に示すように、EBSD法によって、表面側からγ’相(fcc結晶相)、ε相の順番の相分布が分かる。そして、X線回折が併用されることで、硬化層122のfcc結晶相がオーステナイト相(γ相)であることが確認される。
【0054】
窒化化合物層121は、窒化鋼部材120の表面から約12μmの厚さを有しており、これは5μm~30μmの範囲内の厚さである。表面のγ’相は、数μmの厚さである。
【0055】
また、窒化化合物層121中のγ’相の体積比率は、SEM/EBSD法による分析範囲(窒化化合物層121の幅約120μm)中に占めるγ’相とε相のカウント数に基づいて測定され得る。あるいは、得られた
図2の画像から、画像解析によって計算してもよい。本実施形態の窒化化合物層121の場合、52%である。
【0056】
硬化層122は、再加熱処理によってマルテンサイト組織に変態していると予想されたが、
図6に示すEBSDの結果と前述のようなX線回折法による結晶構造解析とにより、硬化層122においては、部分的に多くのオーステナイトが残っていることが確認された。もっとも、浸窒処理後の鋼材サイズや冷却条件や再加熱条件により、ベイナイト組織やブラウナイト組織等、更に複数種類の微細組織を含む可能性も排除されない。
【0057】
本実施形態の窒化鋼部材120は、後述の循環型処理炉を用いて、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.2、処理時間:2時間、という処理条件で浸窒処理された後、急冷され、更に処理温度:250℃、処理時間:2時間、という処理条件で再加熱されることで、製造され得る。
【0058】
以上のような窒化鋼部材120は、窒化化合物層121中のγ’相の体積比率が52%(30%以上)であることにより、実用に足る十分な硬度を提供できると共に(後述の
図11の実施例2-12参照)、耐摩耗性も改善されている(後述の表1の実施例2-12参照)。
【0059】
参考のため、窒化鋼部材120の再加熱処理前の状態の断面顕微鏡写真を
図7に示す。また、
図8は、
図7の窒化鋼部材170のEBSD法による解析結果を示す図である。
【0060】
図7及び
図8に示すように、再加熱処理前の状態では、窒化化合物層121に相当する領域171の大部分がε相である。このため、十分な硬さが得られない。
【0061】
(窒化鋼部材の比較例)
図9は、比較例の窒化鋼部材300の断面顕微鏡写真である。
図9に示すように、比較例の窒化鋼部材300は、表面に、窒化化合物層301が形成されており、当該窒化化合物層301の下方に、母相内に窒素が拡散されている拡散層303を備えている。比較例の母相(母材)も、炭素含有量が質量%で0.45%である炭素鋼である。
【0062】
従来の一般的な窒化処理で得られる化合物層の表面側は多孔質である。
図9において、窒化化合物層301の上部が黒く見えているのは、この領域に多数の微細なボイドが存在しているからである。また、表面の更に上方に見えているのは、研磨用の板であり、窒化鋼部材の構成要素ではない。
【0063】
窒化鋼部材300の相分布も、EBSD法とX線回折とを併用することによって解析され得る。具体的には、
図10に示すように、EBSD法によって、窒化化合物層301の大部分がε相であることが分かる。
【0064】
窒化化合物層301は、窒化鋼部材300の表面から約17μmの厚さを有している。
【0065】
当該比較例の窒化鋼部材300は、後述の循環型処理炉を用いて、処理温度:580℃、窒化ポテンシャル2.5、処理時間:2時間、という処理条件で軟窒化処理された後(雰囲気ガスは、アンモニア、窒素ガス及び炭酸ガス)、急冷されることで、製造され得る。なお、当該比較例の窒化化合物層301は、再加熱処理を施しても硬化しないことが確認されている(軟窒化処理時の温度が比較的低いためであると考えられる)。
【0066】
以上のような窒化鋼部材300は、窒化化合物層301の大部分がε相であり、従来はこの硬いε相を利用して耐摩耗性を向上させていた。しかし、本発明の浸窒処理によるε化合物層と比べると表面硬度が不十分であり(後述の
図11の比較例参照)、そのことが耐摩耗性にも不利に影響して、耐摩耗性も不十分である(後述の表1の比較例参照)。
【0067】
更に、比較例の窒化鋼部材300については、窒化化合物層301の表面側に多くのボイド(
図9において黒く見えている)が形成されてしまうという欠点も指摘される。当該ボイド(ポーラス)は、亀裂発生の起点となり得るため、その存在は好ましくない。
【0068】
(硬度の評価)
図11は、硬さの測定結果を示すグラフである。第1実施形態の窒化鋼部材110(実施例1-30)、第2実施形態の窒化鋼部材120(実施例2-12)、参考例の窒化鋼部材160(参考例1-30)、及び、比較例の窒化鋼部材300の各々について、表面から所定深さでの硬さを測定した結果がプロットされている。
【0069】
第1実施形態の窒化鋼部材110(実施例1-30)では、窒化化合物層111の厚さ全体(30μm)に亘って、1000HV以上という高い硬さが得られている。特に、心部側のε相に対応する部分の硬さが大きくなっている。
【0070】
これに対して、参考例の窒化鋼部材160(参考例1-30)では、表面付近での硬さが800HVを少し下回っており、十分ではない。
【0071】
第2実施形態の窒化鋼部材120(実施例2-12)では、内部に向かって硬さは低下しているが、表面付近での硬さは十分に高い。
【0072】
その他、比較例の窒化鋼部材300では、表面付近での硬さが600HV程度となっており、十分ではない。
【0073】
(第1実施形態の窒化鋼部材110の窒化化合物層111の厚さ)
第1実施形態の窒化鋼部材110の窒化化合物層111の厚さは、一般的には、より厚い方が摩耗許容量が大きくなるため好ましいと言える。
【0074】
本件発明者は、一般的にシャフト類に使われる炭素鋼で炭素量の多い(具体的には例えばS50C鋼)場合に、窒化化合物層111が厚くなり易いという傾向を確認した。そして、具体的に、S50C鋼を、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.6、処理時間:2時間で浸窒処理し、急冷して、処理温度:250℃、処理時間:2時間で再加熱した時、窒化化合物層111の厚みは50μmであった(後述の表1の実施例1-50参照)。従って、当業者が本発明の課題を解決できると認識し得る窒化化合物層111の厚さの最大値を、50μmとした。
【0075】
その他、本件発明者は、窒化化合物層111の厚さについて、浸窒処理時の窒化ポテンシャルが高い場合に厚くなるという傾向を確認している。
【0076】
(第2実施形態の窒化鋼部材120の窒化化合物層121の厚さ)
第2実施形態の窒化鋼部材120の窒化化合物層121の厚さも、一般的には、より厚い方が摩耗許容量が大きくなるため好ましいと言える。
【0077】
本件発明者は、一般的に歯車に使われる炭素鋼で炭素量が低い(具体的には例えばS15C鋼)場合に、窒化化合物層121が厚くなり易いという傾向を確認した。そして、具体的に、S15C鋼を、処理温度:650℃、窒化ポテンシャル:0.2、処理時間:2時間で浸窒処理し、急冷して、処理温度:250℃、処理時間:2時間で再加熱した時、窒化化合物層121の厚みは30μmであった(後述の表1の実施例2-30参照)。従って、当業者が本発明の課題を解決できると認識し得る窒化化合物層111の厚さの最大値を、30μmとした。
【0078】
その他、本件発明者は、窒化化合物層121の厚さについても、浸窒処理時の窒化ポテンシャルが高い場合に厚くなるという傾向を確認している。
【0079】
(第1実施形態の窒化鋼部材110の窒化化合物層111中のγ’相の体積比率)
本件発明者は、窒化化合物層111中のγ’相の体積比率について、より大きい方が硬さを高めるためには好ましいことを確認している。最小値については、具体的に、S50C鋼を、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.6、処理時間:2時間で浸窒処理し、急冷して、処理温度:250℃、処理時間:2時間で再加熱した時、窒化化合物層111中のγ’相の体積比率は20%であった(後述の表1の実施例1-50参照)。従って、当業者が本発明の課題を解決できると認識し得る窒化化合物層111中のγ’相の体積比率の最小値を、20%とした。
【0080】
(第2実施形態の窒化鋼部材120の窒化化合物層121中のγ’相の体積比率)
本件発明者は、窒化化合物層121中のγ’相の体積比率についても、より大きい方が硬さを高めるためには好ましいことを確認している。最小値については、具体的に、S15C鋼を、処理温度:650℃、窒化ポテンシャル:0.2、処理時間:2時間で浸窒処理し、急冷して、処理温度:250℃、処理時間:2時間で再加熱した時、窒化化合物層121中のγ’相の体積比率は30%であった(後述の表1の実施例2-30参照)。従って、当業者が本発明の課題を解決できると認識し得る窒化化合物層121中のγ’相の体積比率の最小値を、30%とした。
【0081】
(窒化鋼部材の製造装置の構成)
続いて、窒化鋼部材の製造装置について説明する。まず、ガス窒化処理の基本的事項について化学的に説明すれば、ガス窒化処理では、被処理品が配置される処理炉(ガス窒化炉)内において、以下の式(1)で表される窒化反応が発生する。
NH3→[N]+3/2H2 ・・・(1)
【0082】
このとき、窒化ポテンシャルKNは、以下の式(2)で定義される。
KN=PNH3/PH2
3/2 ・・・(2)
ここで、PNH3は炉内アンモニア分圧であり、PH2は炉内水素分圧である。窒化ポテンシャルKNは、ガス窒化炉内の雰囲気が有する窒化能力を表す指標として周知である。
【0083】
一方、ガス窒化処理中の炉内では、当該炉内へ導入されたアンモニアガスの一部が、式(3)の反応にしたがって水素ガスと窒素ガスとに熱分解する。
NH3→1/2N2+3/2H2 ・・・(3)
【0084】
炉内では、主に式(3)の反応が生じており、式(1)の窒化反応は量的にはほとんど無視できる。したがって、式(3)の反応で消費された炉内アンモニア濃度または式(3)の反応で発生された水素ガス濃度が分かれば、窒化ポテンシャルを演算することができる。すなわち、発生される水素及び窒素は、アンモニア1モルから、それぞれ1.5モルと0.5モルであるから、炉内アンモニア濃度を測定すれば炉内水素濃度も分かり、窒化ポテンシャルを演算することができる。あるいは、炉内水素濃度を測定すれば、炉内アンモニア濃度が分かり、やはり窒化ポテンシャルを演算することができる。
【0085】
なお、ガス窒化炉内に流されたアンモニアガスは、炉内を循環した後、炉外へ排出される。すなわち、ガス窒化処理では、炉内の既存ガスに対して、フレッシュ(新た)なアンモニアガスを炉内へ絶えず流入させることにより、当該既存ガスが炉外へ排出され続ける(供給圧で押し出される)。
【0086】
ここで、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が少なければ、炉内でのガス滞留時間が長くなるため、分解されるアンモニアガスの量が増加して、当該分解反応によって発生される窒素ガス+水素ガスの量は増加する。一方、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が多ければ、分解されずに炉外へ排出されるアンモニアガスの量が増加して、炉内で発生される窒素ガス+水素ガスの量は減少する。
【0087】
さて、
図12は、本発明の一実施形態による窒化鋼部材を製造するための製造装置を示す概略図である。
図12に示すように、本実施形態の製造装置1は、循環型処理炉2を備えており、当該循環型処理炉2内へ導入するガスとして、アンモニアとアンモニア分解ガスの2種類のみを用いている。アンモニア分解ガスとは、AXガスとも呼ばれるガスで、1:3の比率の窒素と水素とからなる混合ガスである。もっとも、導入ガスとしては、(1)アンモニアガスのみ、(2)アンモニアとアンモニア分解ガスの2種類のみ、(3)アンモニアと窒素ガスの2種類のみ、または、(4)アンモニアとアンモニア分解ガスと窒素ガスの3種類のみ、から選択され得る。
【0088】
循環型処理炉2の断面構造例を、
図13に示す。
図13において、炉壁(ベルとも呼ばれる)201の中に、レトルトと呼ばれる円筒202が配置され、更にその内側に内部レトルトと呼ばれる円筒204が配置されている。ガス導入管205から供給される導入ガスは、図中の矢印に示されるように、被処理品の周囲を通過した後、攪拌扇203の作用によって2つの円筒202、204間の空間を通過して循環する。206は、フレア付きのガスフードであり、207は、熱電対であり、208は冷却作業用の蓋であり、209は、冷却作業用のファンである。当該循環型処理炉2は、横型ガス窒化炉とも呼ばれており、その構造自体は公知のものである。
【0089】
被処理品Sは、炭素鋼または低合金鋼であって、例えば自動車部品であるクランクシャフトやギア等である。
【0090】
また、
図12に示すように、本実施形態の表面硬化処理装置1の処理炉2には、炉開閉蓋7と、攪拌ファン8と、攪拌ファン駆動モータ9と、雰囲気ガス濃度検出装置3と、窒化ポテンシャル調節計4と、プログラマブルロジックコントローラ30と、炉内導入ガス供給部20と、が設けられている。
【0091】
攪拌ファン8は、処理炉2内に配置されており、処理炉2内で回転して、処理炉2内の雰囲気を攪拌するようになっている。攪拌ファン駆動モータ9は、攪拌ファン8に連結されており、攪拌ファン8を任意の回転速度で回転させるようになっている。
【0092】
雰囲気ガス濃度検出装置3は、処理炉2内の水素濃度またはアンモニア濃度を炉内雰囲気ガス濃度として検出可能なセンサにより構成されている。当該センサの検出本体部は、雰囲気ガス配管12を介して処理炉2の内部と連通している。雰囲気ガス配管12は、本実施形態においては、雰囲気ガス濃度検出装置3のセンサ本体部と処理炉2とを直接連通させる経路で形成され、途中で排ガス燃焼分解装置41へ繋がる炉内ガス廃棄配管40が接続されている。これにより、雰囲気ガスは、廃棄されるガスと雰囲気ガス濃度検出装置3に供給されるガスとに分配される。
【0093】
また、雰囲気ガス濃度検出装置3は、炉内雰囲気ガス濃度を検出した後、当該検出濃度を含む情報信号を、窒化ポテンシャル調節計4へ出力するようになっている。
【0094】
窒化ポテンシャル調節計4は、炉内窒化ポテンシャル演算装置13と、ガス流量出力調整装置30と、を有している。また、プログラマブルロジックコントローラ31は、ガス導入量制御装置14と、パラメータ設定装置15と、を有している。
【0095】
炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、炉内雰囲気ガス濃度検出装置3によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて、処理炉2内の窒化ポテンシャルを演算するようになっている。具体的には、実際の炉内導入ガスに応じてプログラムされた窒化ポテンシャルの演算式が組み込まれており、炉内雰囲気ガス濃度の値から窒化ポテンシャルを演算するようになっている。
【0096】
パラメータ設定装置15は、例えばタッチパネルからなり、炉内導入ガスの総流量、ガス種、処理温度、目標窒化ポテンシャル、等をそれぞれ設定入力できるようになっている。設定入力された各設定パラメータ値は、ガス流量出力調整装置30へ伝送されるようになっている。
【0097】
そして、ガス流量出力調整装置30が、炉内窒化ポテンシャル演算装置13によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、アンモニアガスとアンモニア分解ガスの各々の導入量を入力値とした制御を実施するようになっている。より具体的には、アンモニア分解ガスの炉内導入量を一定とし且つアンモニアガスの炉内導入量を変化させる制御を実施できるようになっている。ガス流量出力調整装置30の出力値は、ガス導入量制御装置14へ伝達されるようになっている。
【0098】
ガス導入量制御装置14は、各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置22とアンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置26とにそれぞれ制御信号を送るようになっている。
【0099】
本実施形態の炉内導入ガス供給部20は、アンモニアガス用の第1炉内導入ガス供給部21と、第1供給量制御装置22と、第1供給弁23と、第1流量計24と、を有している。また、本実施形態の炉内導入ガス供給部20は、アンモニア分解ガス(AXガス)用の第2炉内導入ガス供給部25と、第2供給量制御装置26と、第2供給弁27と、第2流量計28と、を有している。
【0100】
本実施形態では、アンモニアガスとアンモニア分解ガスとは、処理炉2内に入る前の炉内導入ガス導入配管29内で混合されるようになっている。
【0101】
第1炉内導入ガス供給部21は、例えば、第1炉内導入ガス(本例ではアンモニアガス)を充填したタンクにより形成されている。
【0102】
第1供給量制御装置22は、マスフローコントローラにより形成されており、第1炉内導入ガス供給部21と第1供給弁23との間に介装されている。第1供給量制御装置22の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第1供給量制御装置22は、第1炉内導入ガス供給部21から第1供給弁23への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
【0103】
第1供給弁23は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第1供給量制御装置22と第1流量計24との間に介装されている。
【0104】
第2炉内導入ガス供給部25は、例えば、第2炉内導入ガス(本例ではアンモニア分解ガス)を充填したタンクにより形成されている。
【0105】
第2供給量制御装置26は、マスフローコントローラにより形成されており、第2炉内導入ガス供給部25と第2供給弁27との間に介装されている。第2供給量制御装置26の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第2供給量制御装置26は、第2炉内導入ガス供給部25から第2供給弁27への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
【0106】
第2供給弁27は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第2供給量制御装置26と第2流量計28との間に介装されている。
【0107】
(窒化鋼部材の製造装置の作用(製造方法))
次に、本実施形態の製造装置1の作用について説明する。まず、循環型処理炉2内に被処理品Sが投入され、循環型処理炉2が所望の処理温度に加熱される。その後、炉内導入ガス供給部20からアンモニアガスとアンモニア分解ガスとの混合ガス、あるいはアンモニアガスのみ、が設定初期流量で処理炉2内へ導入される。この設定初期流量も、パラメータ設定装置15において設定入力可能であり、第1供給量制御装置22及び第2供給量制御装置26(共にマスフローコントローラ)によって制御される。また、攪拌ファン駆動モータ9が駆動されて攪拌ファン8が回転し、処理炉2内の雰囲気を攪拌する。
【0108】
窒化ポテンシャル調節計4の炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、炉内の窒化ポテンシャルを演算し(最初は極めて高い値である(炉内に水素が存在しないため)がアンモニアガスの分解(水素発生)が進行するにつれて低下してくる)、目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和を下回ったか否かを判定する。この基準偏差値も、パラメータ設定装置15において設定入力可能である。
【0109】
炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和を下回ったと判定されると、窒化ポテンシャル調節計4は、ガス導入量制御装置14を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始する。
【0110】
窒化ポテンシャル調節計4の炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、入力される水素濃度信号またはアンモニア濃度信号に基づいて炉内窒化ポテンシャルを演算する。そして、ガス流量出力調整装置30は、炉内窒化ポテンシャル演算装置13によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、炉内導入ガスの導入量を入力値としたPID制御を実施する。具体的には、当該PID制御において、アンモニア分解ガスの炉内導入量を一定とし且つアンモニアガスの炉内導入量を変化させる制御を実施するようになっている。当該PID制御においては、パラメータ設定装置15にて設定入力された各設定パラメータ値が用いられる。この設定パラメータ値は、例えば、目標窒化ポテンシャルの値に応じて異なる値が用意されている。
【0111】
そして、ガス流量出力調整装置30が、PID制御の結果として、炉内導入ガスの各々の導入量を制御する。具体的には、ガス流量出力調整装置30が、各ガスの流量を決定し、当該出力値がガス導入量制御装置14へ伝達される。
【0112】
ガス導入量制御装置14は、各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置22とアンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置26とにそれぞれ制御信号を送る。
【0113】
以上のような制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができる。これにより、被処理品Sの浸窒処理を極めて高品質に行うことができる。
【0114】
以上のような制御の一例を、
図14に示す。アンモニア分解ガスの炉内導入量が一定であり、アンモニアガスの炉内導入量が40(l/min)の近傍で小刻みにフィードバック制御されている。この結果、窒化ポテンシャルが0.17に高精度に制御されている。
【0115】
更に、被処理品Sの材料種類や形状によっては、当該製造装置1において浸窒処理後の冷却工程をも実施することが可能である。しかし、当該製造装置1の冷却速度では処理後に十分な硬さが得られない場合は、当該製造装置1での浸窒処理後、加熱温度を保持した状態で、被処理品Sを炉外の急冷装置(例えば油槽)へ搬送し、その後に急冷することが必要である。あるいは、製造装置1において冷却した後の被処理品Sを製造装置1から取り出して、急冷装置を備えた別の加熱炉において加熱温度まで再度昇温し、その後に急冷することが必要である。
【0116】
本件発明者の検討によれば、1.0%以上の窒素で安定化したオーステナイト組織は、冷却速度が遅いとブラウナイト(フェライト相とγ’相の層状組織)となり、硬さや疲労強度の低下を招く懸念がある。従って、ガス冷却や空冷を採用する場合には、部品毎にその冷却速度を最適化することが重要である。一方、油冷を採用する場合には、一般的な部品であればオーステナイト組織を保持することが十分に可能である。
【0117】
(案内筒(内部レトルト)の重要性について)
また、本件発明者の実験によれば、製造装置1から案内筒5(内部レトルト)を取り除いて窒化処理を実施した場合には、窒化ポテンシャルの炉内均一性が低下して、処理の均一性が低下することが確認された。
【0118】
(硬度及び疲労強度の検証)
図15に示すような形状(φ25×8mmサイズ)のS45C鋼(試験片)を対象にして、後記する表1に示す各条件で処理を行って、
図16に示すような摩擦摩耗試験機(ドイツのオプチモール社製:振動摩擦摩耗試験機SRV4)を用いて耐摩耗性を評価した。
【0119】
摺動子として、φ10の窒化珪素(硬さ:約1600HV)のボールが用いられ、乾式(室温25℃、湿度30%、潤滑油なし)の条件下で、10Nの負荷荷重を与えながら、往復摺動が繰り返され(振幅1mm、50Hz、10分)、最大摩耗量(摺動方向に垂直な断面で測定)が測定された。
【0120】
図16において、401は、オシレーションブロックヘッドプレートであり、402aは、ねじれセンサであり、402bは、試験片固定具であり、403aは、上部試験片ホルダであり、404は、垂直荷重軸である。
【0121】
【0122】
(実施例1-30)
表1における実施例1-30が、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態の窒化鋼部材110に相当している。当該実施例1-30は、前述の循環型処理炉2を用いて、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.4、処理時間:2時間、という処理条件で浸窒処理された後、急冷され、更に処理温度:250℃、処理時間:2時間、という処理条件で再加熱されることで、製造された(母相はS45C鋼)。
【0123】
窒化化合物層の相分布は、ε相、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約30μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、41%であった。
【0124】
このような実施例1-30の窒化鋼部材は、
図11に黒三角点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0125】
(実施例1-36)
実施例1-36は、実施例1-30に対して浸窒処理時の窒化ポテンシャルを0.5に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0126】
窒化化合物層の相分布は、ε相、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約36μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、33%であった。
【0127】
このような実施例1-36の窒化鋼部材も、概ね
図11に黒三角点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0128】
(実施例1-40)
実施例1-40は、実施例1-30に対して浸窒処理時の窒化ポテンシャルを0.6に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0129】
窒化化合物層の相分布は、ε相、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約40μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、24%であった。
【0130】
このような実施例1-40の窒化鋼部材も、概ね
図11に黒三角点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0131】
(実施例1-50)
実施例1-50は、実施例1-30に対して、母相をS50C鋼に変更し、更に浸窒処理時の窒化ポテンシャルを0.6に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0132】
窒化化合物層の相分布は、ε相、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約50μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、20%であった。
【0133】
このような実施例1-50の窒化鋼部材も、概ね
図11に黒三角点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0134】
(実施例1-15)
実施例1-15は、実施例1-30に対して、浸窒処理時の窒化温度を620℃に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0135】
窒化化合物層の相分布は、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約15μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、37%であった。
【0136】
このような実施例1-15の窒化鋼部材も、概ね
図11に白丸点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0137】
(参考例1-30、参考例1-36、参考例1-40)
実施例1-30、実施例1-36、実施例1-40について、それぞれ、再加熱処理前の状態を参考例1-30、参考例1-36、参考例1-40として、硬度及び最大摩耗量が評価された。
【0138】
その結果、硬度については、
図11に白三角点で示されたような不十分な硬度分布であることが分かり、摩擦摩耗特性についても、表1に示されたような比較的高い最大摩耗量であった。
【0139】
(実施例2-12)
表1における実施例2-12が、
図5及び
図6を用いて説明した第2実施形態の窒化鋼部材120に相当している。当該実施例2-12は、前述の循環型処理炉2を用いて、処理温度:640℃、窒化ポテンシャル:0.2、処理時間:2時間、という処理条件で浸窒処理された後、急冷され、更に処理温度:250℃、処理時間:2時間、という処理条件で再加熱されることで、製造された(母相はS45C鋼)。
【0140】
窒化化合物層の相分布は、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約12μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、52%であった。
【0141】
このような実施例2-12の窒化鋼部材は、
図11に白丸点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0142】
(実施例2-7)
実施例2-7は、実施例2-12に対して浸窒処理時の窒化ポテンシャルを0.18に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0143】
窒化化合物層の相分布は、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約7μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、60%であった。
【0144】
このような実施例2-7の窒化鋼部材も、概ね
図11に白丸点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0145】
(実施例2-16)
実施例2-16は、実施例2-12に対して浸窒処理時の窒化温度を630℃、窒化ポテンシャルを0.25に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0146】
窒化化合物層の相分布は、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約16μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、45%であった。
【0147】
このような実施例2-16の窒化鋼部材も、概ね
図11に白丸点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【0148】
(実施例2-30)
実施例2-30は、実施例2-12に対して、母相をS15C鋼に変更し、更に浸窒処理時の窒化温度を650℃、窒化ポテンシャルを0.2に変更することによって製造された窒化鋼部材である。
【0149】
窒化化合物層の相分布は、γ’相、ε相の順番であり、窒化化合物層の厚さは、窒化鋼部材の表面から約30μmであり、窒化化合物層中のγ’相の体積比率は、30%であった。
【0150】
このような実施例2-30の窒化鋼部材も、概ね
図11に白丸点で示されたような十分な硬度分布を提供し、且つ、表1に示されたような低い最大摩耗量(十分な摩擦摩耗特性)を提供することが確認された。
【符号の説明】
【0151】
1 窒化鋼部材の製造装置(表面硬化装置)
2 循環型処理炉
3 雰囲気ガス濃度検出装置
4 窒化ポテンシャル調節計
5 内部レトルト
6 レトルト
7 炉開閉蓋
8 攪拌ファン
9 攪拌ファン駆動モータ
12 雰囲気ガス配管
13 炉内窒化ポテンシャル演算装置
14 ガス導入量制御装置
15 パラメータ設定装置(タッチパネル)
20 炉内ガス供給部
21 第1炉内導入ガス供給部
22 第1炉内ガス供給制御装置
23 第1供給弁
25 第2炉内導入ガス供給部
26 第2炉内ガス供給制御装置
27 第2供給弁
29 炉内導入ガス導入配管
30 ガス流量出力調整装置
31 プログラマブルロジックコントローラ
40 炉内ガス廃棄配管
41 排ガス燃焼分解装置
110 窒化鋼部材(第1実施形態)
111 窒化化合物層
112 硬化層
113 拡散層
120 窒化鋼部材(第2実施形態)
121 窒化化合物層
122 硬化層
123 拡散層
160 窒化鋼部材(参考例1)
161 窒化化合物層に対応する領域
170 窒化鋼部材(参考例2)
171 窒化化合物層に対応する領域
300 窒化鋼部材(比較例)
301 窒化化合物層
303 拡散層
201 炉壁またはベル
202 レトルト
203 撹拌扇
204 案内筒(内部レトルト)
205 ガス導入管
206 フレア付きのガス排気またはガスフード
207 熱電対
208 冷却作業用の蓋
209 冷却作業用の送風機