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特開2022-68380植物の栽培方法及び植物の栽培システム
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  • 特開-植物の栽培方法及び植物の栽培システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068380
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】植物の栽培方法及び植物の栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220427BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A01G31/00 617
A01G7/00 603
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019043330
(22)【出願日】2019-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA01
2B314MA35
2B314NC11
2B314NC32
2B314ND02
2B314PC26
2B314PC44
2B314PD70
(57)【要約】
【課題】移植手間及び植物の傷付きを少なくするだけでなく、体積効率を高め、しかも、植物の生長に適合する間隔調整が可能で品質のよい栽培条件を得ることができる植物の栽培方法及び植物の栽培システムを提供すること。
【解決手段】培地1の複数個を所定間隔に並置した状態で、培地1に保持させた植物4を育成し栽培する植物の栽培方法及び栽培システムにおいて、所定の栽培日数経過毎(インターバル毎)に、植物4の背丈、幅寸法を測定し、その寸法測定結果に対応して、ポット3ヘの移植数を変えることにより、植物4又は培地1の水平二次元方向及び上下方向の隣接間隔を調整する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地の複数個を所定間隔に並置した状態で、培地に保持させた植物を育成し栽培する植物の栽培方法であって、
所定の栽培日数経過毎に、植物の寸法を測定するステップと、
その寸法測定結果に対応して前記植物又は培地の隣接間隔を調整するステップと、を備えている
ことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】
前記隣接間隔の調整は、水平方向及び上下方向の両方向で実施する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項3】
前記隣接間隔の調整幅は、寸法測定時点後の植物の予測生長量も加味して決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物の栽培方法。
【請求項4】
前記培地又は該培地を内部にセットするカップには、各植物のデータを収集するためのIDが付与されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物の栽培方法。
【請求項5】
培地の複数個を所定間隔に並置した状態で、培地に保持させた植物を育成し栽培する植物の栽培システムであって、
所定の栽培日数経過毎に、植物の寸法を測定する寸法測定手段と、
該寸法測定手段による寸法測定結果に対応して前記植物又は培地の隣接間隔を調整する間隔調整手段と、を備えている
ことを特徴とする植物の栽培システム。
【請求項6】
前記隣接間隔の調整は、水平方向及び上下方向の両方向で実施する
ことを特徴とする請求項5に記載の植物の栽培システム。
【請求項7】
前記隣接間隔の調整幅は、寸法測定時点後の植物の予測生長量も加味して決定する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の植物の栽培システム。
【請求項8】
前記培地又は該培地を内部にセットするカップには、各植物のデータを収集するためのIDが付与されている
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の植物の栽培システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖的又は半閉鎖的な空間内において葉菜類などを計画的に生産する、いわゆる「植物工場」で植物を水耕栽培等する場合に適用される植物の栽培方法及び植物の栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場で葉菜類等の植物を水耕栽培等する場合、栽培体積効率を高めるために、植物の生長度合に対応して、例えば、植物を支持するポットを差し込み支持可能な孔のピッチを変化させた複数のフロートを準備し、植物の生長するにつれてポットに支持された植物を孔ピッチの小さいフロートから孔ピッチの大きいフロートに移植する栽培方法が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されたような栽培方法は、移植に多大な手間がかかるだけでなく、移植時に植物が傷付き、移植後に植物の育成不良、生長不良を招くといった問題があった。
【0004】
上記問題を改良する植物の栽培方法として、植物を保持するための保持及び該保持部と一体成形されたガイド部を有するプラスチック製の本体とペットボトル等の養液貯留容器とからなり、前記本体のガイド部を養液貯留容器の口部に嵌め合わせた水耕栽培用具を用いるボトル式水耕栽培方法(例えば、特許文献2参照)や、吊持部に吊持された複数の植物苗床を水平方向に配列させ、それら複数の植物苗床を植物の生長に合わせて所定の水平方向に搬送させることにより、各植物苗床の間隔を、段階的又は連続的に広げながら栽培する間隔調整機構付き水耕栽培システム(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-103894号公報
【特許文献2】特開2015-139378号公報
【特許文献3】特開2017-221165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のボトル式水耕栽培方法の場合は、特許文献1の栽培方法に比べて、移植の手間がなく、植物の傷付きに伴うその後の育成不良、生長不良を抑制することが可能であるものの、複数の植物の間隔を目視観察に基づいて調整が必要であり、それに手間を要するとともに、植物の生長に適合する間隔調整が難しいという問題がある。
【0007】
また、特許文献3の間隔調整機構付き水耕栽培システムの場合は、植物苗床の間隔を機械的に容易迅速に変更することが可能で、特許文献1の栽培方法に比べて、移植の手間が不要であると共に、植物の傷付きに伴う育成不良、生長不良を抑制することが可能である反面、システム構成が複雑で高価なものになりやすく、かつ、植物の生長に適合する間隔調整の操作が大変であり、更に植物苗床の吊持部や間隔調整機構の構成部材の洗浄等のメンテナンスに多大な手間及び費用を要するといった問題がある。
【0008】
更に、特許文献2及び3のように、植物の栽培ピッチ(間隔)を生長に合わせて調整する栽培方法、栽培システムは、生育状況が時期によって異なり、植物が大きかったり小さかったりするために、結果として、広目のエリアで栽培することになり、高い体積効率を得ることができず、また、栽培途中で病害や生長不良が発生した場合、それに対処して品質のよい栽培条件とすることが困難であるという問題もあった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、移植手間及び植物の傷付きを少なくするだけでなく、体積効率を高め、しかも、植物の生長に適合する間隔調整が可能で品質のよい栽培条件を得ることができる植物の栽培方法及び植物の栽培システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る植物の栽培方法は、培地の複数個を所定間隔に並置した状態で、培地に保持させた植物を育成し栽培する植物の栽培方法であって、所定の栽培日数経過毎に、植物の寸法を測定するステップと、その寸法測定結果に対応して前記植物又は培地の隣接間隔を調整するステップと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る植物の栽培システムは、培地の複数個を所定間隔に並置した状態で、培地に保持させた植物を育成し栽培する植物の栽培システムであって、所定の栽培日数経過毎に、植物の寸法を測定する寸法測定手段と、該寸法測定手段による寸法測定結果に対応して前記植物又は培地の隣接間隔を調整する間隔調整手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のごとき特徴構成を有する本発明に係る植物の栽培方法及び植物の栽培システムによれば、所定の栽培日数が経過する毎に、植物の寸法、具体的には背丈、幅を測定し、その測定結果に応じて植物又は該植物を保持する培地の水平方向又は/及び上下方向の隣接間隔を調整することにより、植物の生長度合に適応した高い体積効率を確保しつつ、隣接する植物の葉部が重なって一部が影になったり、葉部同士が擦れ合って傷付いたりすることを防ぐことができると共に、各植物に対する光照射による照明効率も高めることができる。従って、植物の生長度合に対応して常に最適かつ品質のよい栽培条件を得ることができるといった効果を奏する。
【0013】
本発明に係る植物の栽培方法及び植物の栽培システムにおいて、請求項2及び請求項6に記載のように、前記隣接間隔の調整は、水平方向及び上下方向の両方向で実施することが好ましい。
この場合は、所定の栽培日数経過後の植物が背丈だけでなく幅も同時に生長するものであるため、寸法の測定結果に対応して、水平方向及び上下方向の両方向で隣接間隔を調整することにより、背丈と幅とを別々に測定して水平方向の間隔と上下方向の間隔とを別々に行う必要がなくなり、それだけ間隔調整の手間を最大限減少することができる。
【0014】
また、本発明に係る植物の栽培方法及び植物の栽培システムにおいて、請求項3及び請求項7に記載のように、前記隣接間隔の調整幅は、寸法測定時点後の植物の予測生長量も加味して決定することが好ましい。
この場合は、寸法測定時点後の植物の生長量を予測し、その予測生長量も加味して植物隣接又は培地の隣接間隔を調整することが可能である。したがって、寸法の測定及びその測定結果に対応する間隔調整のインターバルを大きくとり、栽培手間の削減を図りつつ、葉部同士の重なりによって影部分が形成されることを抑制し、植物の生長性をよくすることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る植物の栽培方法及び植物の栽培システムにおいて、請求項4及び請求項8に記載のように、前記培地又は該培地を内部にセットするカップには、各植物のデータを収集するためのIDが付与されていることが好ましい。
この場合は、複数個の栽培個体(植物)それぞれを目視あるいは画像処理で認識することができるだけでなく、IDを使って各栽培植物の栽培各工程での生長を個別に計測し、かつ、植物の流通、販売などの各種工程時の管理等にも有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る植物の栽培方法及び栽培システムで使用する植物保持用培地の一例を示す拡大斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る植物の栽培方法及び栽培システムで使用する植物保持用培地の他の例を示す拡大斜視図である。
図3】(A)~(D)は栽培植物の播種・緑化、育苗(育成)、移植、定植の各工程の概要を示す縦断面図と平面図である。
図4】複数の栽培段(ポット置き部)が形成された栽培棚を用いた場合の栽培植物の播種・緑化、育苗(育成)、移植、定植の各工程の概要を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る植物の栽培方法及び栽培システムで使用する植物保持用培地1の一例を示す拡大斜視図であり、該培地1は、吸水性、保水性に優れ、植物の種子や根を支え、種子や根に継続的に肥料成分を含む水分(液肥)を供給する機能を有する材料、例えば、ウレタン樹脂からなるスポンジ等の発泡体、ロックウール、寒天、ゼラチンやビニロン等の樹脂繊維、吸水性樹脂、パルプ、紙、フェルトや不織布等の植物性繊維、培養土や鹿沼土等の栽培用土、親水性樹脂、保水材、バーミキュライト、ピートモス、ヤシガラ、オアシス、破砕石等の材料から形成される。
【0018】
前記培地1の形態としては、図1に示すように、立方体を含む直方体の他、円柱体や球状体などが好ましく、種子を保持するための形状、例えば、頂面に凹みや切れ目をつけることが好ましい。また、前記培地1は、後述するボトル間での移植ハンドリングのために把持しても変形しない又は変形が少ないように、周辺部を固くするために、培地1自身の密度を高める手段が採用されている。このような培地1には、例えば微細空泡を備えた樹脂培地で、周囲の穴(微細空泡)密度を下げたものなどを適用可能である。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る植物の栽培方法及び栽培システムで使用する植物保持用培地1の他の例を示す拡大斜視図であり、該培地1は、上記と同様な材料から形成された培地1の周辺をフイルムで覆い、その周辺部のみを固くして、下部の穴からは吸水するとともに生長した根が下方へ延び、上部の穴からは照明用光が入りやすいとともに、生長した芽が上方へ出ていくような構造にしている。前記フイルムで覆われて固められた部分2(以下、カップ部という)は、移植ハンドリング時に把持しても潰れたり、変形したりすることがないような強度を有する。また、カップ部2を形成するフイルムとしては、樹脂、紙を含む植物繊維、薄い金属のいずれであってもよく、形状は膜状、網状、膜に穴明けしたものでもよい。
【0020】
図1に示す植物保持用培地1の周囲又は図2に示す植物保持用培地1のカップ部2には、IDが付与されている。このIDは、各培地1で育成し栽培した植物個体の各種データを収集するために利用される。例えば、播種後、育苗、栽培などの各工程で、所定間隔で栽培個体(植物)の生長を計測する際の固体認識などに用いられる。カップ部2に付与されたIDは、栽培植物のむ流通・販売時の物品管理等にも有効に利用できる。付与されるIDとしては、バーコード、QRコード(登録商標)、数字列など目視または画像処理で個体が認識できるものであればよい。
【0021】
次に、上記したような培地1を用いた植物の栽培方法及び栽培システムについて説明する。
図3は、播種・緑化、育苗(育成)、移植、定植の各工程に区分し、播種・緑化工程では、図3の(A)に示すように、一つのポット(栽培パレット)3に16個の培地1を保持させて各培地1に植物4を播種し緑化させる。16個の培地1を保持させたポット3の9個を隣接して敷き詰める。これにより、144個の培地1が水平二次元方向に所定間隔に並置された状態での栽培がおこなわれる。なお、培地1は、図外のボトルに保持され、このボトルごとポット3に保持される。
【0022】
次に、少なくとも7日以下のインターバル(所定の栽培日数経過)で、一つのポット3内の3個以上の植物4の寸法、具体的には、背丈(高さ)と幅を測定する。かかる測定には、カメラ、3Dカメラ、定規等のスケール、センサー等の各種の寸法測定手段が使用される。
【0023】
上記の寸法(高さと幅)測定結果に基いて、該寸法測定時点から一定日数経過後の生長量を予測し、その予測生長量を加味して前記培地1の隣接間隔を調整する。具体的には、図3の(B)に示すように、隣接する植物4,4間の各間隔が育苗(育成)に適した間隔になるように、一つのポット3に4個の培地1を移植して保持させて各培地1の植物4を育成する。この育成工程においても、4個の培地1を保持させたポット3の9個を隣接して敷き詰める。これにより、36個の培地1及び植物4が水平二次元方向に所定間隔に並置された状態での栽培がおこなわれる。
【0024】
続いて、少なくとも7日以下のインターバルで、3個以上の植物4の寸法、具体的には、背丈(高さ)と幅を前述した寸法測定手段により測定する。そして、その測定結果及びその後の予測生長量に基いて、図3の(C)に示すように、隣接する植物4,4間の各間隔が育苗(育成)に適した間隔になるように、一つのポット3に1個の培地1を移植して保持させて各培地1の植物4を育成・栽培する。この育成・栽培工程においても、1個の培地1を保持させたポット3の9個を隣接して敷き詰める。これにより、9個の培地1及び植物4が水平二次元方向に所定間隔に並置された状態での栽培がおこなわれる。
【0025】
さらに、少なくとも7日以下のインターバルで、3個以上の植物4の寸法、具体的には、背丈(高さ)と幅を前述した寸法測定手段により測定する。そして、その測定結果に基いて、図3の(D)に示すように、隣接する植物4,4間の各間隔がそれ以降の育成に適した間隔になるように、1個の培地1が移植されたポット3の隣接間隔を大きくとる。
【0026】
以上の実施の形態では、播種・緑化、育苗(育成)、移植、定植の各工程において、所定のインターバルで植物4の背丈と幅寸法を測定し、その測定結果に基いて、隣接植物4,4間の水平二次元方向の間隔を調整することについて説明したが、前記測定結果に基いて、上下に隣接する植物の上下方向の間隔も調整することが好ましい。
【0027】
具体的には、図4に示すように、所定の栽培日数が経過する毎(インターバル)に、植物4の寸法、具体的には背丈、幅を測定し、その測定結果に応じて、上下の隣接間隔に差をつけて複数の栽培段(ポット置き部)が形成された栽培棚の各栽培段へのポット3の水平方向での並列数を変えることによって、上下に隣接する培地1及び植物4の上下方向の間隔を調整する。なお、この場合、各栽培段の天井部には各植物4に向けて栽培光を照射する照明装置5が設置されているが、この照明装置5の設置数は、栽培段によって異なる。特に、植物4の生長が進み、ポット3の水平方向隣接間隔がポット3の幅よりも大きくなったとき、その下段の栽培段における照明装置5の設置数が減少してしまうので、設置数が減少する段には、光が弱くてもよい栽培所期、すなわち、播種・緑化工程の植物4を保持するポット3を置くことが好ましい。また、強くて多くの光を必要とする栽培段には明るく強い光を照射する照明装置5を設置することが好ましい。
【0028】
以上のように、本発明では、所定の栽培日数が経過する毎(インターバル)に、植物4の寸法、具体的には背丈、幅を測定し、その測定結果に応じて植物又は該植物を保持する培地1の水平方向及び/又は上下方向の隣接間隔を調整することにより、植物4の生長度合に適応した高い体積効率を確保しつつ、隣接する植物4,4の葉部同士が重なって一部が影になったり、葉部同士が擦れ合って傷付いたりすることを防ぐことが可能であると共に、各植物4に対する光照射による照明効率も高めることができる。これによって、植物の生長度合に対応して常に最適かつ品質のよい栽培条件を得ることができる。
【0029】
ここで、本例における予測生長量の導出等は、以下のように行うことが考えられる。
(1)例えば、生産する栽培条件において、複数(好ましくは3以上)の栽培個体の、背丈・幅を、少なくとも7日以下のインターバルで測定し、栽培日数と平均寸法(背丈・幅)の関係を示す生長曲線(あるいは表などでもよい)を予め得ておく。
(2)実際の生産時において、植物4の寸法の測定結果を上記生長曲線にあてはめ、次の場所に設置する一定日数間の生長量を予測し、予測生長後の寸法と同一か、望ましくはそれより余裕のある、高さと幅のピッチがある場所に植物4を培地ごと移動させる。なお、植物4を個別に測定する場合は、この移動も個別に行わせればよく、複数の植物4の一群の寸法を特定の1又は複数の植物4に代表させてその代表の寸法のみを測定する場合は、その代表を含む植物4の一群を移動させればよい。
(3)一定日数の栽培後に、植物4の寸法(背丈・幅)を測定し、その測定結果と、予測生長後の寸法との大小を比較する。測定結果が、予測生長後の寸法より一定範囲を上回った(例えば予測生長後の寸法の110%を上回った)植物4の比率が大きい場合、あるいは予測生長後の寸法より一定範囲を下回った(例えば予測生長後の寸法の90%を下回った)植物4の比率が大きい場合には、上記(1)で得た生長曲線を修正し、次の栽培に適用する。また、この修正が頻繁に生じるようであれば、上記一定範囲の幅を広げるようにしてもよい。なお、生長曲線を修正する基準となる上記二つの比率(比率が大きい場合)としては、例えば0.1%、好ましくは1%以上、更に好ましくは5%以上の場合が挙げられる。
【0030】
以下、具体例を挙げて説明する。まず、実際にフリルレタスを栽培したところ、栽培日数と草丈(cm)、草幅(cm)とについて、以下の表1の関係が得られた。
【0031】
【表1】
【0032】
また、従来方式の栽培システムと、本発明による栽培システムとの関係を、以下の表2に示す。なお、表2において、積算体積とは、一つの栽培物が占める体積の積算である。例えば従来方式ステップ1では、棚ピッチが縦と横に3cmずつで、高さが30cmなので、270cmの体積を占める。これを14日続けるので、270×14=3780cm・日となる。
【0033】
【表2】
【0034】
従来方式は、表2に示すように、14日くらいまでは、一定間隔(3cmピッチ)の育苗培地で栽培し、次に、13cm間隔の穴のあいたフロートに移植し10日生長させ、その後、24cm間隔の穴のあいたフロートに移植し10日生長といった方法で栽培がおこなわれていた。しかし、例えば栽培日数が14日までの間、草巾はピッチより広いため、葉が重なった状態になってしまい、影になる部分ができ、生長が抑制され、また徒長ぎみとなってしまっていた。
【0035】
これに対して、本発明を適用した栽培システムでは、生長を予測して、間隔と高さピッチを精密に調整するのであり、表2の場合、ピッチは、7日目までは4cm、14日までは8cm、21日までは12cm、28日までは18cm、35日までは24cmとし、高さは、それぞれ5cm、8cm、11cm、15cm、19cmと変化させる。すなわち、本栽培システムでは、葉が重ならないように栽培できるので、生長性も良く、徒長しにくい効果が期待できる。
【0036】
しかも、従来方式では35日間にわたり、毎日平均8655cmの体積を必要とするが、本方式(本発明の栽培システム)だと3593cmと、約2.4倍の体積効率が得られる。
【0037】
ところで、本例で用いるボトルは、培地1を保持し、水耕の場合、液肥を保持する機能を有していればよい。そして、一つのボトルで一つの培地1を保持することが、個別管理できる観点で好ましい。しかし、播種後、育苗中のような植物4が小さい期間は、一つのボトルに複数の植物4を保持させることで、ハンドリング効率を高めるようにしてもよい。
【0038】
また、植物4が大きくなると、蒸散が増え、多くの養液(液肥)がすわれるため、大きな容積が必要となる。そこで、植物4が小さいときは小さいボトル、大きくなったら大きなボトルに移すことが好ましい。なお、ボトルに液肥を追加するタイミングは、ボトルに植物4を移す際や、植物4を移してから所定期間経過後等とすることができる。
【0039】
さらに、ボトルは、藻の生育を促進しないようにするため、透光性を持たない材料で構成したり、遮光構造を持たせたりすることが好ましい。そして、ボトルの材質としては、樹脂や金属が好ましく、どちらかといえば樹脂が好ましい。具体的には、PP、PE、PET、アクリル、ABS、塩ビなどを挙げることができるが、これらに限らない。
【0040】
ボトルのサイズ(体積)は、栽培物である植物4が必要な液量を保持できる大きさが好ましい。具体的には、50cc以上、100cc以上、200cc以上、300cc以上などとすることができる。そして、ボトルが大きすぎると、栽培体積効率が下がるのであり、50000cc以下、10000cc以下、3000cc以下、1000cc以下が好ましい。
【0041】
ボトルの幅は、収穫時の植物4より狭いことが好ましい。植物4が小さいときは、できるだけ狭いピッチで保持しておきたいためである。具体的には、500mm以下、300mm以下、200mm以下、140mm以下とすることが考えられる。また、液肥を保持するために、一定以上大きいことが好ましく、10mm以上、30mm以上、50mm以上、70mm以上とすることが考えられる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0043】
上記実施の形態では、IDを培地1の周囲又はカップ部2に付与しているが、これに限らず、例えばボトルに付与してもよいし、これらとは別の部材にIDを付与し、その部材を培地1等に例えば着脱自在に連結してもよい。
【0044】
体積効率の向上等の観点から、培地1の移設は、2回以上、3回以上、更には4回以上とすることが好ましい。また、移設回数が多すぎると、それだけハンドリングが増え、生産性が低下するため、その上限は100回であり、50回以下、30回以下、さらには10回以下とするのが好ましい。
【0045】
液肥を培地1が十分保持(保水)できない場合は、液肥をボトルに保ち、これを植物4の根が吸い上げるか、培地1の吸水力を利用して根に供給できるような構造にすることが好ましい。
【0046】
また、培地1の周囲又はカップ部2は、ボトルに設けられた上向きに開放された穴に設置することが考えられるが、この場合、その挿入のし易さのために、少なくとも穴の周縁にテーパを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 培地
2 カップ部
3 ポット
4 植物
5 照明装置

図1
図2
図3
図4