(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068382
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】光硬化性組成物及び電子基板
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220427BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20220427BHJP
C08F 257/02 20060101ALI20220427BHJP
C09D 153/02 20060101ALI20220427BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/46
C08F257/02
C09D153/02
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019044610
(22)【出願日】2019-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】愛澤 眸
(72)【発明者】
【氏名】花倉 優
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC04
4J011CC10
4J011NA10
4J011PA65
4J011PA79
4J011PB23
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA12
4J011SA02
4J011SA16
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J026AA17
4J026BA27
4J026BB04
4J026DB02
4J026DB13
4J026GA06
4J038CQ011
4J038FA111
4J038KA04
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA10
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】リワーク性が向上し、硬化後の硬化体の剥離後の残渣の発生を改善する光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】
熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性の樹脂組成物であって、硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上である光硬化性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性の樹脂組成物であって、
硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、
前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、
引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上である
ことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーが、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記二官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、0.6~15質量%含まれる請求項2記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含む請求項1~3の何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、40質量%以上含まれる請求項1~4の何れか1項の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む請求項1~5の何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、22.5~39.6質量%含まれる請求項6記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、イソボルニルアクリレートを含む請求項1~7の何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性組成物であって、
硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、
前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、
引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上である
ことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマーが、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、40質量%以上含まれる請求項9記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~8の何れか1項記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜が剥離されて得られる電子部品を備えた電子基板であって、
前記電子基板に対して前記表面保護膜を剥離したとき、前記表面保護膜の残渣は、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、前記表面保護膜の残渣の長径が0.15mm未満であって、その個数が10未満である電子基板。
【請求項12】
請求項9または請求項10の何れか1項記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜が剥離されて得られる電子部品を備えた電子基板であって、
前記電子基板に対して前記表面保護膜を剥離したとき、前記表面保護膜の残渣は、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、前記表面保護膜の残渣の長径が0.15mm未満であって、その個数が10未満である電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化によって形成される再剥離性(リワーク性)に優れた光硬化性組成物および剥離後の表面保護膜の残渣の少ない電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板上の防水、防塵、防湿、絶縁や各種表面処理時の表面保護膜としてマスキングテープやホットメルト材料が使用されている。しかし、電子デバイスの小型化により基板搭載部品の小型化、高密度化が進む中で、従来のマスキングテープやホットメルト材料では、細かい部品の保護を行うには作業性が悪い課題があった。また、表面処理終了後や部品交換時には、電子部品を損傷することなく表面保護膜を剥離する必要がある。
【0003】
上述したように、電子基板の電子部品は密集して配置されていることから、表面保護膜は、電子部品間にも入り込み、複数の電子部品を覆っている。そのため、複雑に入り込んだ表面保護膜を剥離する際には、電子部品の損傷を防止するため、柔軟に伸びることが要請されている。ところで、電子基板の電子部品全体を覆う封止材が知られている。特許文献1(特許第6101945号)は、電子基板における破損した電子部品を修理するために、柔軟性を有し剥離し易い封止材を開示している。即ち、特許文献1は、電子基板に塗布した後に光を照射することで硬化し、電子素子を覆うことで電子素子を水分や異物から保護する液状の封止材であって、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、これら(メタ)アクリル酸エステルモノマーに溶解した熱可塑性エラストマーと、光重合開始剤と、を主成分とし、硬化後のステンレスとの接着強さ(F)に対する引張強さ(H)の比(H/F)が2以上であり、切断時伸びが300%以上である封止材を開示している。但し、特許文献1の封止材は、基板対基板接続用コネクタのような複雑な凹凸形状を有する電子素子を保護する場合の剥離性までは考慮されていない。
【0004】
一方、特許文献2(特開2018-131530号公報)は、各種成形品等の製造工程において、工程間の輸送や保管時の傷や汚れを防止するために、表面を保護するための剥離可能な保護層を形成する樹脂硬化物が開示されている。この樹脂硬化物は、引っ張り弾性率が170MPa以上、破断伸びが50%以上であり、(A)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(B)離型剤、(C)光ラジカル重合開始剤を含む光硬化性組成物を光硬化することで作製される。ここで、前記樹脂硬化物は、その引っ張り弾性率が170MPa以上であることから、比較的硬い硬化物であり、電子部品から樹脂硬化物を剥離する際に、電子部品が損傷する可能性がある。
【0005】
また、特許文献3(特開2007-297579号公報)は、リペア性に優れた接着剤組成物が開示されているものの、接着剤の剥離後、アセトンなどの溶剤を用いて残渣を除去している。
【0006】
また、特許文献4(特開2007-123710号公報)は、フッ素系添加剤を含有する接着剤を、QFN(Quad Flat Non-leaded)などの半導体装置の製造に用いることにより糊残りを防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6101945号明細書
【特許文献2】特開2018-131530号公報
【特許文献3】特開2007-297579号公報
【特許文献4】特開2007-123710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したように、電子基板の小型化及び高集積化に伴い、電子部品の小型化、高密度化が進み、その結果、電子基板上に複数の小型の電子部品が密集して配置されている。したがって、従来のマスキングテープやホットメルト材料では、密集して配置された電子部品について保護が不要な箇所を避けながら、必要な箇所のみを確実に塗布することは困難であった。一方、上述の硬化物は、やや硬めであるため、密集して配置された複数の電子部品の複雑な形状に追従させ剥離する用途には今一歩であった。また、上述の何れの接着剤も、剥離後のある程度の残渣の存在を肯定していることから、やはり、密集して配置された複数の電子部品を覆うように保護し、後に剥離する用途には今一歩であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、光硬化によって形成される再剥離性(リワーク性)に優れた光硬化性組成物および剥離後の表面保護膜の残渣の発生が改善された電子基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の光硬化性組成物、ならびに電子基板は、以下のとおりである。
【0011】
本発明の光硬化性組成物は、熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性の樹脂組成物であって、硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上であることを特徴とする。上記組成において上記物性を有することにより、所定の伸びやすさと適度な引張応力を備えるだけに留まらず、所定のtanδを備えることで弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅くなり、その結果、緻密な凸凹に追従して硬化体を形成することができ、さらに、硬化体を被塗物から剥離した際の残渣の発生が改善される。即ち、前記光硬化性組成物の硬化体は、リワーク性に優れる。
【0012】
前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む。前記光硬化性組成物が、二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことにより、tanδピーク温度と引張応力を高める方向に調整することができ、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと引張応力および適度な密着性を有する。これにより、硬化体は被塗物に密着することができ、かつ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。なお、前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いる場合と比較して、tanδピーク温度を高める効果は小さく、引張応力を高める効果が大きい。したがって、tanδピーク温度はそれほど高めずに引張応力を高めたい場合には、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーの比を高めることが好ましく、引張応力はそれほど高めずにtanδピーク温度はそれほど高めたい場合には、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーの比を高めることが好ましい。
【0013】
前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、0.6~15質量%含まれる。前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力および密着性を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、剥離後の硬化体の残渣を低減することができる。
【0014】
前記熱可塑性エラストマーは、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含む。前記光硬化性組成物が、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含むことにより、特に、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。
【0015】
前記熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、40質量%以上含まれる。前記熱可塑性エラストマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。
【0016】
前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む。前記光硬化性組成物が、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことにより、前記熱可塑性エラストマーの光硬化性組成物との相溶性を高めることができる。さらに、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が低いモノマーであり、これを配合することで硬化体のtanδピーク温度を低温側に調整することができる。したがって、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有し、かつ、適度な接着性を有する。これにより、硬化体は被塗物に密着することができ、かつ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、被塗物への硬化体の残渣を低減できる。
【0017】
前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、22.5~39.6質量%含まれる。前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、硬化体のtanδピーク温度を-30~10℃度の範囲、かつtanδピーク値を0.7以上とすることができ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、被塗物への硬化体の残渣を低減できる。
【0018】
前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、イソボルニルアクリレートを含む。イソボルニルアクリレートは、単官能アクリレートの中でもホモポリマーのガラス転移温度が高いモノマーであり、低粘度であって操作性に優れ、接着性にも優れる。したがって、前記イソボルニルアクリレートをガラス転移温度が低い前記脂肪族アクリル酸エステルモノマーに添加することで、硬化体のtanδピーク温度を高温側へ調整することができる。さらに、イソボルニルアクリレートは前記熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れるため、イソボルニルアクリレートを光硬化性組成物に含有させることにより、塗布時の操作性に優れ、かつ、適度な接着効果が発現して、緻密な凸凹にも追従して、硬化体を形成することができる。
【0019】
本発明の他の光硬化性組成物は、熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性組成物であって、硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上であることを特徴とする。上記組成において上記物性を有することにより、所定の伸びやすさと適度な引張応力を備えるだけに留まらず、所定のtanδを備えることで弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅くなり、その結果、緻密な凸凹に追従して硬化体を形成することができ、さらに硬化体を被塗物から剥離した際の残渣の発生が改善される。即ち、前記光硬化性組成物の硬化体は、リワーク性に優れる。
【0020】
本発明の前記他の光硬化性組成物について、前記熱可塑性エラストマーは、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含む。前記光硬化性組成物が、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含むことにより、特に、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。
【0021】
本発明の前記他の光硬化性組成物について、前記熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性エラストマーと、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、40質量%以上含まれる。前記熱可塑性エラストマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。
【0022】
本発明の前記他の光硬化性組成物について、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む。前記光硬化性組成物が、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことにより、前記熱可塑性エラストマーの光硬化性組成物との相溶性を高めることができる。さらに、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が低いモノマーであり、これを配合することで硬化体のtanδピーク温度を低温側に調整することができる。したがって、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有し、かつ、適度な接着性を有する。これにより、硬化体は被塗物に密着することができ、かつ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、被塗物への硬化体の残渣を低減できる。
【0023】
本発明の前記他の光硬化性組成物について、前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、22.5~39.6質量%含まれる。前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、硬化体のtanδピーク温度を-30~10℃度の範囲、かつtanδピーク値を0.7以上とすることができ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、被塗物への硬化体の残渣を低減できる。
【0024】
本発明の他の光硬化性組成物について、前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、イソボルニルアクリレートを含む。イソボルニルアクリレートは、単官能アクリレートの中でもホモポリマーのガラス転移温度が高いモノマーであり、低粘度であって操作性に優れ、接着性にも優れる。したがって、前記イソボルニルアクリレートをガラス転移温度が低い前記脂肪族アクリル酸エステルモノマーに添加することで、硬化体のtanδピーク温度を高温側へ調整することができる。さらに、イソボルニルアクリレートは前記熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れる。したがって、イソボルニルアクリレートを光硬化性組成物に含有させることにより、塗布時の操作性に優れ、かつ、適度な接着効果が発現して、緻密な凸凹にも追従して、硬化体を形成することができる。
【0025】
本発明の電子基板は、上述の何れか1つに記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜が剥離されて得られる電子部品を備えた電子基板であって、前記電子基板に対して前記表面保護膜を実施形態および実施例に記載の方法で剥離したとき、前記表面保護膜の残渣は、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、前記表面保護膜の残渣の長径が0.15mm未満であって、その個数が10未満である。ここで、「長径」とは残渣の形状の一番大きい径を意味する。上述の何れか1つに記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜を電子基板から剥離させた後に、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、上記残渣しか存在しないため、表面保護膜の剥離後に溶剤によるクリーニングが不要、またはクリーニング効率を大幅に向上させることができる。そのため、例えば、基板対基板コネクタの保護に使用し、後に剥離したとき、クリーニングを行わなくても、前記コネクタの接触抵抗値が悪化することを防ぐことができる。なお、本発明では、1.95mm×9.15mmを単位面積としているが、保護対象の面積が小さい場合には、対象面積と前記単位面積の比に応じた残渣の個数であってもよいものとする。例えば保護対象の面積が半分である場合は、前記表面保護膜の残渣の長径が0.15mm未満であって、その個数が5未満である。
【0026】
本発明の電子基板は、以下に示す工程を用いて製造することができる。即ち、本発明における電子基板の製造方法は、電子基板上の導通性を担保すべき保護対象部位(電子部品及び回路配線を含む)を被覆するように、上述の何れか1つに記載の光硬化性組成物を塗布する工程と、前記光硬化性組成物に光線(例えば、紫外線)を照射して硬化させ、前記導通性を担保すべき保護対象部位の表面に表面保護膜を形成する工程と、前記電子基板上に更に表面処理膜(例えば、絶縁性皮膜)を形成する工程と、前記導通性を担保すべき保護対象部位からその表面に形成された前記表面保護膜と表面処理膜を剥離する工程と、を含む。上述の工程を経て得られた、本発明の電子基板は、上述の何れか1つに記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜を用いているため、電子基板に対して表面保護膜を剥離させた後に、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、上記残渣しか存在しないため、表面保護膜の剥離後に溶剤によるクリーニングが不要、またはクリーニング効率を大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光硬化性組成物は、光硬化性組成物の硬化後に所定の伸びやすさと適度な引張応力を有し、さらに変形からの回復速度が遅い硬化体が得られ、この硬化体は一体として、例えば基板から剥離することができ、リワーク性に優れる。また、本発明の電子基板は、上述の何れか1個に記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜を電子基板から剥離させた後の残渣が、従来に比べ大幅に低減できるので、前記表面保護膜の剥離後に溶剤によるクリーニングが不要、またはクリーニング効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の電子基板の製造方法の一例を説明する模式図である。
【
図2】本発明の電子基板における残渣の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔光硬化性組成物〕
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態の光硬化性組成物は、熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性の樹脂組成物であって、硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上である。上記組成において上記物性を有することにより、所定の伸びやすさと適度な応力を備えるだけに留まらず、所定のtanδを備えることで弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅い硬化体が得られる。その結果、緻密な凸凹に追従して硬化体を形成することができ、さらに、硬化体を一体として、被塗物から剥離することができる。即ち、前記光硬化性組成物の硬化体は、リワーク性に優れる。
【0030】
ここで、本明細書において、「単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、単官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーおよび単官能脂肪族メタクリル酸エステルモノマーを含む意味である。「単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、単官能脂環式アクリル酸エステルモノマーおよび単官能脂環式メタクリル酸エステルモノマーを含む意味である。「多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、多官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーおよび多官能脂肪族メタクリル酸エステルモノマーを含む意味である。
【0031】
前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含む。前記光硬化性組成物が、二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことにより、tanδピーク温度と引張応力を高める方向に調整することができ、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと引張応力および適度な密着性を有する。これにより、硬化体は被塗物に密着することができ、かつ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、残渣の発生が改善される。なお、前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いる場合と比較して、tanδピーク温度を高める効果は小さく、引張応力を高める効果が大きい。したがって、tanδピーク温度はそれほど高めずに引張応力を高めたい場合には、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーの比を高めることが好ましく、引張応力はそれほど高めずにtanδピーク温度はそれほど高めたい場合には、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーの比を高めることが好ましい。
【0032】
前記光硬化性組成物を被塗物に塗布した後、光硬化させて被塗物上に硬化体を形成し、その後、前記硬化体を一体として被塗物から剥離させた際の剥離後の残渣低減の観点から、硬化後の硬化体のtanδピーク温度は、-30~10℃度の範囲であり、好ましくは-20~10℃の範囲であり、より好ましくは-10~5℃の範囲である。tanδピーク温度を上記範囲にすることで、弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅くなり、その結果、被塗物から剥離した際の残渣を低減することができる。
【0033】
また、上記同様の観点から、前記硬化体のtanδピーク値は、0.7以上であり、好ましくは0.9以上であり、より好ましくは1.0以上である。tanδピーク値を上記範囲にすることで、弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅くなり、その結果、被塗物から剥離した際の残渣を低減することができる。
【0034】
また、上記同様の観点から、前記硬化体の引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値は、170以上であり、好ましくは180以上であり、より好ましくは400以上である。引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値を上記範囲にすることで、剥離時に硬化体が所定の伸びやすさと引張応力を備え、千切れにくくなる。したがって、被塗物から剥離した際の残渣を低減することができる。
【0035】
前記熱可塑性エラストマーは、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含む。前記光硬化性組成物が、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーを含むことにより、特に、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができる。なお、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーの具体例については、後述する。
【0036】
前記熱可塑性エラストマーが、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、例えば30質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。前記熱可塑性エラストマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができる。
【0037】
前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことが好ましい。前記光硬化性組成物が、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを含むことにより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有し、かつ、適度な接着性を有する。これにより、硬化体は被塗物に密着することができ、かつ、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、硬化体の残渣を低減することができる。
【0038】
前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、22.5~39.6質量%含まれることが好ましく、硬化体を被塗物から剥離する際の、硬化体の残渣を低減する観点から、22.5~30.0質量%含まれることがより好ましく、24.0~30.0質量%含まれることがさらに好ましい。前記アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、硬化体のtanδピーク温度を-30~10℃度の範囲かつ、tanδピーク値を0.7以上とすることができ、適度な接着性を発現し、被塗物に硬化体を適度に密着させて形成することができるとともに、硬化体を被塗物から剥離する際に、硬化体を一体として被塗物から剥離することができ、被塗物への硬化体の残渣を低減できる。
【0039】
前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、イソボルニルアクリレートを含む。イソボルニルアクリレートは、単官能アクリレートの中でもホモポリマーのガラス転移温度が高いモノマーであり、ガラス転移温度が低い前記脂肪族アクリル酸エステルモノマーと共に用いた際に、硬化体のtanδピーク温度を高温側へ調整することができる。さらに、イソボルニルアクリレートは前記熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れる。したがって、イソボルニルアクリレートを光硬化性組成物に含有させることにより、塗布時の操作性に優れ、かつ、適度な接着効果が発現して、緻密な凸凹にも追従して、硬化体を形成することができる。
【0040】
上述したように、前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、二官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーの総質量に対して、0.6~15質量%含まれることが好ましく、3.0~15質量%含むことがより好ましく、9.0~15質量%含むことが特に好ましい。前記二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力および密着性を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができ、剥離後の硬化体の残渣を低減することができる。一方、15質量%を超えると、硬化時の硬化収縮が大きくなることから、被塗物に応力が加わったり、被塗物から剥がれやすくなる懸念がある。
【0041】
次に、第1の実施の形態における光硬化性組成物の含有成分について説明する。
【0042】
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー:
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、液状組成物であり、前述の単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に前記熱可塑性エラストマーを溶解するための成分である。単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーを配合することで、光硬化性組成物の硬化後に得られる硬化体の柔軟性を高めることができる。
【0043】
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの脂肪族エーテル系(メタ)アクリル酸エステルモノマーや、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n-オクチルアクリレートなどの脂肪族炭化水素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。
【0044】
本実施の形態では、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、上述したように、光硬化性組成物の硬化後の硬化体を被塗物から剥離した際の残渣の低減の観点から、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーが好ましく、例えば、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレートがより好ましい。アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを配合することで、熱可塑性エラストマーの光硬化性組成物との相溶性を高め、光硬化性組成物の塗布性を高めることができる。さらに、ホモポリマーのガラス転移温度が低いモノマーのため、硬化体のtanδピーク温度を低温側に調整することができる。
【0045】
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー:
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーも、液状組成物であり、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に前記熱可塑性エラストマーを溶解する成分である。また、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーを配合することで、光硬化性組成物の硬化後における硬化体の接着力を高めつつ、被着物に対して硬化体を剥したときに残渣を少なくすることができる。
【0046】
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。本実施の形態では、イソボルニルアクリレートが好ましい。イソボルニルアクリレートは前記熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れるため、光硬化性組成物の塗布性を高めることができる。さらに、ホモポリマーのガラス転移温度が高いため、ガラス転移温度が低い前記脂肪族アクリル酸エステルモノマーと共に用いることで、硬化体のtanδピーク温度を好ましい範囲に調整することができる。
【0047】
多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー
前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、二官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。前記二官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明の多官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーとしては、二官能脂肪族炭化水素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。
【0048】
熱可塑性エラストマー:
前記熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル熱可塑性エラストマー、フッ化系樹脂熱可塑性エラストマー、イオン架橋系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。本発明における熱可塑性エラストマーとしては、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーへの溶解性に優れ、耐湿性を高める効果にも優れるスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0049】
不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーは、光硬化性組成物中では、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー、前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーに溶解している。そして、スチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーは、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー、前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーが硬化した後の硬化体の機械的強度を高めるとともに水や異物、各種処理膜からのバリア性を高めることができる。また、硬化体にゴム弾性(柔軟性)を付与する成分である。
【0050】
不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマー単独では固体のため、常温では接着性を有さないが、前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー、前記多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーに溶解することで、光硬化性組成物及びその硬化体中に均一に分散し、接着性を向上させる。
【0051】
不飽和結合を主鎖に有さないスチレン系トリブロック型の熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、およびこれらの変性体が挙げられる。
【0052】
本明細書において、熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー)を用い、かつ、標準ポリスチレンにより測定された校正曲線(検量線)を基に測定した。本発明では、重量平均分子量が20万未満の熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。なお、後述する実施例に記載の重量平均分子量は、上記測定方法により測定されている。
【0053】
ラジカル重合開始剤:
ラジカル重合開始剤として、具体的には、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーを、例えば、光線によって光反応させて硬化させる、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光硬化性組成物が光ラジカル重合開始剤を含むことによって、光硬化性組成物に光線を照射することで、例えば、塗膜形成対象物上に塗布した光硬化性組成物を光硬化させ、塗膜を形成することができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルフォスフィン系、オキシムエステル系、アルキルフェノン系等の光重合開始剤を挙げることができる。光ラジカル重合開始剤の添加量は、単官能および二官能以上を含めた全てのアクリル系モノマーの合計質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0054】
その他の成分:
本発明の光硬化性組成物は、さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば、オレフィン系オイルやパラフィン系オイル等の可塑剤、シランカップリング剤や重合禁止剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シリカや酸化アルミニウム等の充填剤等が挙げられる。
【0055】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態の光硬化性組成物は、熱可塑性エラストマーと、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む光硬化性組成物であって、硬化後の硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲であり、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上であり、かつ、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上である。
【0056】
本発明の光硬化性組成物は、上記組成において上記物性を有することにより、所定の伸びやすさと適度な応力を備えるだけに留まらず、所定のtanδを備えることで弾性的な性質を有しながら、変形からの回復速度が遅い硬化体が得られる。その結果、緻密な凸凹に追従して硬化体を形成することができるだけに留まらず、さらに硬化体を被塗物から剥離した際の残渣の発生が改善される。即ち、前記光硬化性組成物の硬化体は、リワーク性に優れる。
【0057】
なお、第1の実施の形態と同じ構成については、上記記載と同様であるため、第2の実施の形態においては、その説明を省略する。
【0058】
次に、第2の実施の形態の光硬化性組成物の含有成分について説明する。なお、第1の実施の形態の光硬化性組成物の含有成分と同じ成分については、説明を省略する。
【0059】
前記熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性エラストマーと前記単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、例えば30質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。前記熱可塑性エラストマーが上記割合で前記光硬化性組成物中に含有されることにより、前記光硬化性組成物の硬化後の硬化体は、所定の伸びやすさと適度な引張応力を有するため、その結果、この硬化体を一体として、被塗物から剥離することができる。
【0060】
〔電子基板〕
本発明について実施形態に基づき詳しく説明する。
【0061】
本発明の電子基板は、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態の何れか記載の光硬化性組成物を光硬化させて成る表面保護膜が剥離されて得られる電子部品を備えた電子基板であって、前記電子基板に対して前記表面保護膜を後述の方法で剥離したとき、前記表面保護膜の残渣は、1.95mm×9.15mmの単位面積当たり、前記表面保護膜の残渣の長径が0.15mm未満であって、その個数が10未満である。
【0062】
本発明の電子基板における表面処理方法の一例について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板の断面を用いて、表面処理工程を説明している。なお、
図1において「S100」とは「ステップ100」の意味であり、以下同様である。
【0063】
図1に示すように、電子基板10は、基板12上に、コネクタ14、センサ16、電子部品18,19などが、密集して配置されている(S100)。次に、ディスペンサ装置30などの塗布装置を用いて、上述した本発明の光硬化性組成物を、絶縁処理などの表面処理を行わないコネクタ14やセンサ16などの電子部品上に塗布して、光硬化性組成物の膜20を形成する(S102)。次いで、電子基板10の上方から紫外線照射装置40を用いて紫外線を照射して、光硬化性組成物20中のラジカル重合開始剤によって重合が開始される。これにより、絶縁処理などの表面処理を行わないコネクタ14やセンサ16などの電子部品上に、光硬化性組成物が硬化して成る表面保護膜22が形成される(S104)。次に、絶縁性処理用の樹脂組成物50が、表面保護膜22が形成されたコネクタ14やセンサ16などの電子部品およびその他の電子部品18,19および露出している基板12上に、例えばスプレーコーティングされる(S106)。これにより、電子基板10の表面全面に絶縁性皮膜52が形成される(S108)。次に、電気的な接続を要するコネクタ14やセンサ16の表面に形成された、表面保護膜22と絶縁性皮膜52とを併せて、ピックアップ装置60を用いて、電子基板10から剥離する。このとき剥離方向は限定されないが、前記ピックアップ装置60で表面保護膜の中央を掴み、基板から垂直方向に剥離する方法が挙げられる。これにより、絶縁処理などの表面処理が成された電子基板10が得られる(S110)。
【0064】
しかしながら、
図2に示すように、従来の光硬化性組成物によって形成された表面保護膜23は、ピックアップ装置60を用いて、電子基板10から剥離した際に、その表面保護膜23の一部が、コネクタ14やセンサ16の表面に残渣24として残ってしまうという不具合があった。これに対して、
図1に示すように、本発明の光硬化性組成物を用いて得られる表面保護膜22は、ピックアップ装置60を用いて、電子基板10に対して剥離した際に、その表面保護膜22の一部が、コネクタ14やセンサ16の表面に残渣24として残ることを抑制することができる。
【0065】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更または公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例0066】
次に実施例(比較例)に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。次の試料1~試料119の光硬化性組成物およびその硬化体を作製し、さらに硬化体から成る表面保護膜を電子基板に形成して、以下に示す評価方法により評価した。
【0067】
<試料の作製>
以下に示すように、試料を作製した。
【0068】
試料1:
ラウリルアクリレート(単官能脂肪族アクリル酸エステルモノマー)とイソボルニルアクリレート(単官能脂環式アクリル酸エステルモノマー)と、さらに1,9-ノナンジオールジアクリレート(二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマー)を準備した。(この混合液を単に「アクリル酸エステルモノマー」と記載する)次に、上述のアクリル酸エステルモノマーに、熱可塑性エラストマーとしてSIBS(スチレン-イソブチレン-ブチレン-スチレン)(商品名「SIBSTAR102T」、株式会社カネカ製)を添加して、24時間攪拌することにより、スチレン系エラストマーを上述のアクリル酸エステルモノマーに溶解した。このときの配合割合は、表1に示すとおりである。そして、上述のアクリル酸エステルモノマーとスチレン系エラストマーの合計質量を100質量部としたときに、光ラジカル重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを、表1に示す質量部で、上記樹脂成分に添加して試料1の光硬化性組成物を得た。
【0069】
得られた試料1の光硬化性組成物に後述の条件で紫外線を照射して試料1の硬化体を形成して、硬化後の特性について評価した。一方、試料1を電子基板に塗布して上記条件下で硬化した表面保護膜を形成し、その後、この表面保護膜を電子基板から剥離し、後述する評価方法により、リワーク性およびレセプタクル残渣の評価を行った。
【0070】
試料2~19:
試料1のスチレン系エラストマーと各モノマー等を表2~4に記した種類と配合(質量部)に変更した以外は試料1と同様にして試料2~19の光硬化性組成物を作製した。試料2~19の光硬化性組成物ついても、試料1と同様に紫外線を照射して、硬化体を得るとともに、電子基板上に表面保護膜を形成した。
【0071】
以下に、試料1~19の組成と評価結果を表1~4に示す。評価方法は、後述する。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
表1~4に用いた原料を以下に示す。
<熱可塑性エラストマー>
SIBSTAR102T:商品名「SIBSTAR102T」、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量9万、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、株式会社カネカ製。
SIBSTAR103T:商品名「SIBSTAR103T」、スチレン含有量30質量%、重量平均分子量9万、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、株式会社カネカ製。
SEPTON2063:商品名「SEPTON2063」、スチレン含有量13質量%、重量平均分子量12万、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製。
SEPTON4055:商品名「SEPTON4055」、スチレン含有量30質量%、重量平均分子量25万、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製。
<モノマー>
LA:ラウリルアクリレート。
STA:ステアリルアクリレート。
NOAA:n-オクチルアクリレート。
IBXA:イソボルニルアクリレート。
NDDA:1,9-ノナンジオールジアクリレート。
<フィラー>
シリカ:商品名「AEROSIL(登録商標) 200」、BET法による比表面積が約200m2/gの親水性フュームドシリカ、日本アエロジル株式会社製。
<光ラジカル開始剤>
Omnirad1173:商品名「Omnirad 1173」、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、IGM Resins B.V製。
【0077】
<各種試験と評価>
【0078】
tanδピーク温度(℃)、tanδピーク値および貯蔵弾性率E’(MPa):
シリコーン離型処理されたポリエステルフィルム上に厚み1mmで光硬化性組成物を塗布し、波長365nmのLEDを使用し200mW/cm2で15秒間紫外線照射することで硬化させた硬化体を幅5.0mm×長さ30.0mm(厚さは1.0mm)の大きさに切り出して測定用試験片を準備した。動的粘弾性測定装置(商品名「DMS6100」、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、チャック間距離8mm、周波数1Hz、昇温速度3℃、引張モードにて測定し、-40~200℃での損失正接tanδのピーク時の温度をtanδピーク温度、tanδのピーク時の値をtanδピーク値とした。また、23℃での貯蔵弾性率の値を貯蔵弾性率E’として記載した。
【0079】
引張破断伸び(%)、引張強さ(MPa)、100%伸び引張応力(MPa)およびヤング率(MPa):
硬化体の機械的強度は、JIS K 6251:2010を一部変更して実施した。シリコーン離型処理されたポリエステルフィルム上に厚み1mmで光硬化性組成物を塗布し、波長365nmのLEDを使用し200mW/cm2で15秒間紫外線照射することで、光硬化性組成物を硬化させ、得られた硬化体をダンベル状8号型で打ち抜き、ダンベル状試料の棒状部に16mmの間隔を空けて標線を付け、試験片を作製した。速度200mm/minで引張試験を行い、引張破断伸び(切断時伸び)、引張強さ(最大引張応力)、100%伸び引張応力、ヤング率(弾性率)を測定した。それぞれ下記式(1)、式(2)、式(3)に適用して、引張破断伸び、引張強さ、100%伸び引張応力を算出した。ヤング率は引張比例限度内の引張応力をひずみで割ることで求めた。
TS=Fm/S ・・・式(1)
Eb=(L1-L0)/L0×100 ・・・式(2)
TS100=F100/S ・・・式(3)
TS:引張強さ(MPa)
Fm:最大引張力(N)
S:試験片の初期断面積(mm2)
Eb:引張破断伸び(%)
L0:初期の標線間距離(mm)
L1:破断時の標線間距離(mm)
TS100:100%伸び引張応力(MPa)
F100:100%伸び引張力(N)
【0080】
リワーク性およびレセプタクル残渣:
市販のコンタクトピッチ0.35mmのコネクタレセプタクル(WP-21-S040VA1-R8000)上に光硬化性組成物を高さ0.8mm以上となるようにディスペンサ装置を用いて塗布した後、波長365nmのLEDを使用し600mW/cm2で5秒間紫外線照射することでコネクタを硬化体でマスクした。その後、硬化体の中央部分をピンセットでつまみ、上に持ち上げて剥離した。このとき、千切れが発生して剥離できなかったものを「C」、千切れずに剥離できたものを「B」、千切れず簡単に剥離しやすかったものを「A」として、リワーク性の評価結果に記載した。このとき、レセプタクルに残った残渣を、下記の評価基準に従って、レセプタクル残渣(以下「残渣」ともいう)の評価結果に記載した。なお、「WP-21-S040VA1-R8000」は、コンタクトピッチが0.35mmピッチであり、本体の長さが9.15mm、本体の幅が1.95mmである。そこで1.95mm×9.15mmの単位面積当たりの残渣を、顕微鏡により観察して測定した。また、「長径」とは残渣の形状の一番大きい径を意味する。
A:長径が0.05mm以上の残渣が、0個である。
B:長径が0.05mm以上0.15mm未満の残渣が、1個以上10個未満である。
C:長径が0.05mm以上0.15mm未満の残渣が、10個以上である。
D:長径が0.15mm以上の残渣が、1個以上10個未満である。
E:長径が0.15mm以上の残渣が、10個以上である。
【0081】
なお、上述した何れの試験においても、光硬化性組成物の「厚み」は、硬化後の厚みを意味する。
【0082】
<試験結果の分析>
【0083】
試料1~2と試料3~8とを比較すると、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170以上とすることにより、残渣の発生が大きく改善された。
【0084】
アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを用いた試料4、10は、アルキル鎖の炭素数が18の脂肪族アクリル酸エステルモノマーを用いた試料9に比べ、残渣の発生が大きく改善された。
【0085】
試料3~8,12,15~17と試料11,13~14とを比較すると、アルキル鎖の炭素数が8~12の脂肪族アクリル酸エステルモノマーが、熱可塑性エラストマーと単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、22.5~39.6質量%含まれることにより、硬化体のtanδピーク温度が-30~10℃度の範囲かつ、前記硬化体のtanδピーク値が0.7以上となり、リワーク性が向上し、残渣の発生が大きく改善されることが分かった。
【0086】
試料3と試料4~8とを比較すると、多官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー、特に二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーが光硬化性組成物に含有されることにより、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が大きくなり、残渣の発生が大きく改善されることが分かった。また、特に二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーが、熱可塑性エラストマーと単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーと単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと二官能脂肪族アクリル酸エステルモノマーとの総質量に対して、9.0~15.0質量%含まれることにより、リワーク性が大きく改善されることがわかった。
【0087】
試料18は、熱可塑性エラストマーの分子量が大きく添加量が少ないため、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170未満となり、リワーク性が低下し、残渣が多くなることが分かった。
【0088】
試料19は、伸び性の制御のために、フィラーを添加したものである。この場合には、引張破断伸び(%)×100%伸び引張応力(MPa)の値が170未満となり、リワーク性が低下し、残渣が多くなることが分かった。