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  • 特開-急速液体凍結装置 図1
  • 特開-急速液体凍結装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068385
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】急速液体凍結装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 13/00 20060101AFI20220427BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
F25D13/00 A
F25D9/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019046766
(22)【出願日】2019-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】518015088
【氏名又は名称】株式会社光商事
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正憲
【テーマコード(参考)】
3L044
3L045
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA04
3L044BA05
3L044CA04
3L044DB02
3L044FA01
3L044FA05
3L044KA04
3L044KA05
3L045AA04
3L045BA03
3L045BA04
3L045CA00
3L045DA02
3L045FA02
3L045GA02
3L045HA01
(57)【要約】
【課題】冷凍設備の不凍液を、均一かつ迅速に冷却できる急速液体凍結装置を提供する。
【解決手段】不凍液を貯留する凍結槽の内壁面に、上下に多段区分された複数段の冷媒蛇管を添設し、それぞれの段の冷媒蛇管の終端に分岐管、合流管を介設して冷媒導入管、冷媒排出管を設けて、凍結槽から外部に引き出した構造にしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不凍液を貯留する凍結槽と、
前記凍結槽の内側を概ね水平に周回する複数の螺旋状冷媒管を縦方向に積層配置させてなる螺旋型冷媒蒸発器とを備えていることを特徴とする、急速液体凍結装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の螺旋状冷媒管のそれぞれは、前記凍結槽の内側を2周以上周回するように形成されていることを特徴とする、急速液体凍結装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記螺旋型冷媒蒸発器は、上、中、下段の螺旋状冷媒管で構成され、これらの冷媒管が並列に接続されていることを特徴とする、急速液体凍結装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記凍結槽の適所に超音波振動装置が付設されていることを特徴とする、急速液体凍結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速液体凍結装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
次の特許文献1には、食材などの凍結対象物を不凍液中に浸漬させ、不凍液をジェットスクリューポンプによって噴流攪拌することによって、凍結対象物を効率的に凍結させる構成のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-061090公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前記のように不凍液を用いる急速液体凍結装置にとって、凍結対象物を可能な限り短時間で凍結させることは普遍的な課題である。本発明はこの課題に対して有効である新規な構成の急速液体凍結装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による急速液体凍結装置は、不凍液を貯留する凍結槽と、前記凍結槽の内側を概ね水平に周回する複数の螺旋状冷媒管を縦方向に積層配置させてなる螺旋型冷媒蒸発器とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記のような凍結槽と螺旋型冷媒蒸発器とを備えているので、螺旋状冷媒管の内側に凍結対象物を配置させた状態で不凍液に効果的な対流を生じさせて、凍結対象物を短時間で凍結させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用した急速液体凍結装置の基本構成図である。
図2】螺旋型冷媒蒸発器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明を適用した急速液体凍結装置の基本構成図である。急速凍結装置は、ヒートポンプAと、これに接続された凍結槽Cとで構成されている。凍結槽Cは、ステンレス等の金属と発泡スチロール等の断熱材とから構成された水密な槽であり、これには、凍結対象物を漬けるために、エチルアルコール等を主成分とする不凍液50が満たされている。
【0009】
ヒートポンプAは、冷媒の循環路として、蒸発器1と圧縮機2と凝集器3とが管路14によって接続されている。すなわち管路14によって、蒸発器1の出口と圧縮機2の入口とが接続され、圧縮機2の出口と凝集器3の入口とが接続され、凝集器3の出口と蒸発器1の入口とが接続されている。
【0010】
また、蒸発器1と凝縮器2との間には、調圧・バイパス制御手段Bが設けられている。
この調圧・バイパス制御手段Bは、蒸発器1の出口と圧縮機2の入口との間に圧力調節弁16を設け、更に、圧縮機2の出口と蒸発器1の入口との間にバイパス路15を設けて、このバイパス路15に、電磁弁21と二方弁22を設けている。
【0011】
一方、凝集器3の出口近傍には乾燥フィルター17が設けられ、乾燥フィルター17と蒸発器1の入口との間には電磁弁18、膨張弁19、合流器20が設けられている。
【0012】
管路14及びバイパス路15は、銅、スチール或いはアルミ等の金属管又は樹脂管で構成されている。
螺旋型冷媒蒸発器1は、基本的には銅、スチール或いはアルミの金属管等で形成されており、金属管の壁面を介してその内側の冷媒と外側の気体又は液体とが熱交換できるようになっている。
【0013】
この蒸発器1は、凍結槽Cの内側に配置されて、その場所で不凍液50から吸熱する作用をなす。
圧縮機2は、気体状態の冷媒を圧縮するコンプレッサーで構成され、その駆動用に図示しないモーター等の動力源を備えている。圧縮機2の種別に特段の制限はなく、ターボ型、スクリュー型、レスプロ型等を用いることができる。なお冷媒の種別に応じた圧縮圧を得るため圧縮機2は多段構成にする等の構成も可能である。
凝集器3は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と外部の空気とが熱交換できるようになっている。更に凝集器3には複数のフィン3aが固着されており、フィンに空気を送るためのブロアー3bが付設されている。凝集器3は、冷凍庫外の開放空間、あるいは凍結装置外の開放空間に配置されて、外気に対して放熱する作用をなす。
【0014】
圧力調節弁16は、一次側圧力調節弁であり、機械式のものを想定しているが、電磁弁を用いて、図示しないコンピュータによる制御によって所定時間毎に開動作させるようにしてもよい。
乾燥フィルター17は、冷媒に混じっている異物、水分等を捕集するフィルターである。
電磁弁18は、管路14における冷媒の通過量を調節するための弁であって、図示しない制御手段によって開弁率等が制御される。
膨張弁19は、開度調節可能な電磁弁又は機械弁であって、図示しない制御手段によって開度等が制御され、当該部分にオリフィスを形成する。
合流器20は、管路14を通じてきた冷媒とバイパス路15を通じてきた冷媒とを合流させるものである。
【0015】
また電磁弁21は、バイパス路15における冷媒の通過量を調節するための弁であって、コンピュータなどの図示しない制御手段によって開弁率等が制御される。
二方弁22、23はバイパス路15の接続先を選択するための開閉弁である。
圧力センサー24a、24bはそれぞれ蒸発器11の入口側の圧力、圧縮機12の入口側の吸引圧を検知するように設けられている。
【0016】
ここでヒートポンプAの基本動作を説明する。冷媒としてはR-404A又はR-410Aを想定している。
圧縮機2及びブロアー3bを作用させると、次のような動作が連続的になされる。なお蒸発器1によって冷却されるべき気体又は液体は特に制限されない。
螺旋型冷媒蒸発器1から圧縮機2に送られて来た気体状態の冷媒は、圧縮機2で圧縮されると、高温高圧な状態になって凝集器3に送られる。凝集器3では内側の冷媒と外側の空気との熱交換が行われ、冷やされた冷媒は凝集して高圧な液体状態になる。そして、この高圧な液体状態の冷媒は、膨張弁19を通過したときに圧力損失を受け、蒸発器1の中で断熱膨張して低温低圧な気体状態になる。このとき蒸発器1の内側の冷媒と外側の気体又は液体との熱交換によって不凍液50は冷却され、蒸発器1から排出された低温低圧な気体状態の冷媒は圧縮機2に戻って吸引される。ヒートポンプAの基本能力は、圧縮機2の回転数、制御弁18の開弁率等によって調節できる。
【0017】
ところで圧縮機2は、圧縮のために容積変化する作動室(図示なし)を備えており、その作動室はオイルによって潤滑され気密維持されているが、このオイルは圧縮された冷媒に混じって圧縮機2から徐々に排出されていく。通常、その排出されたオイル分は、冷媒が圧縮機2によって再吸引されたときに戻ってくるので、圧縮機2のオイルは一定量に保たれて不具合を生じない。
【0018】
しかしながら、圧縮機2を高速で連続運転して、蒸発器1の周囲の気体又は液体を非常な低温まで(摂氏マイナス40度以下)冷やそうとすると、蒸発器1から排出される冷媒の圧力が低くなり、過剰に希薄化してしまう。その結果、オイルが圧縮機2に戻ってこず、最終的にはオイル切れが起きるという問題があった。
例えば冷媒としてR-404Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス45~46度にすることは原理的に可能であるが、そのとき冷媒の圧力は99.31kPaになり、圧縮機2はオイル切れのため作動不能になってしまう。
【0019】
ところがこのヒートポンプAによれば、調圧・バイパス制御手段Bを設けているので、そのような不具合が生じない。すなわち、圧力・バイパス制御手段Bを構成する圧力調節弁16は、蒸発器1から排出されてくる冷媒の圧力が低下すると閉じので、冷媒を一旦堰き止め、その冷媒の圧力が所定以上になった時点で放出するという動作をなすので、オイル切れが防止できる。この場合、蒸発器1における冷媒の圧力は圧力調節弁16の開閉弁に合わせて上下動を繰り返すことになるが、この冷媒の圧力が低くなっているときは、冷媒の温度が極めて低くなるときであり、強い吸熱が行われ、これによって冷媒のR-404Aが摂氏マイナス45~46度になる。
【0020】
また例えば冷媒としてR-410Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス55~56度にすると、冷媒の圧力は80.46kPaになるので、前記のような圧力調節弁16の作用だけでは圧縮機2のオイル切れを防止することは難しい。
しかしながら、この問題は、調圧・バイパス制御手段Bが圧縮機2から蒸発器1に冷媒を直接送るためのバイパス路15を備えることで解決される。すなわち、前記した圧力調節弁16を閉じても、急激な圧力低下が解消しないときには、二方弁22を閉じ、二方弁23を開き、電磁弁21を開けば、圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、直接圧縮機2にそのまま戻すことができるので、蒸発器1から排出される冷媒の圧力低下が補完されることになる。また、二方弁22を開き、二方弁23を閉じ、電磁弁21を開けば、圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、蒸発器1に送り込んで、蒸発器1による急速冷却を緩やかに制御できる。
これらの圧力調節弁16、バイパス路15に設けた二方弁22、23、電磁弁21は、圧力センサー24a、24bの検知信号に基づいて、コンピュータに実装したプログラムに従って行われ、オイル切れを生じることなく、蒸発器1は冷却される。また、コンピュータで制御を実行せずに、圧力センサー24aの検知信号に基づいて、電磁弁21の開弁率を制御してもよい。
【0021】
以上のように、ヒートポンプAは汎用の圧縮機2を用いることが可能であり、かつバイパス路15や圧力調節弁16のために要する費用も僅かなので安価に製造できる。
【0022】
図2は、螺旋型冷媒蒸発器の斜視図である。ここで凍結槽Cはその内側を示すために輪郭線のみ示している。
凍結槽Cは、スレンレス等の金属と発泡スチロール等の断熱材とから構成された槽本体40と、ステンレス等の金属から形成された基台41と、槽本体40と基台41との間隙に配置された複数の超音波振動装置42とで構成されている。蒸発器1は不凍液50の水面よりも下方になるように配置されている。
螺旋型冷媒蒸発器1は、凍結槽Cの内周面から所定距離となるように概ね水平に周回する複数の螺旋状冷媒管1a、1b、1cを縦方向に積層配置させた構造となっている。ここに、螺旋状冷媒管1a、1b、1cはいずれも凍結槽Cの内側を2周以上周回するように形成されており、なお、この例の蒸発器は、上、中、下段、すなわち3段の螺旋状冷媒管で構成されているが、その段数に特段の制限はない。
上、中、下段の螺旋状冷媒管1a、1b、1cは、管路14の末端に連結される分岐部1d、合流部1eに対して並列に接続されている。
管路14を通じて蒸発器1側に流れてきた液体状の冷媒は、膨張弁19を通過した時点で減圧され、分岐部1dで分流されて、上、中、下段の螺旋状冷媒管1a、1b、1cのそれぞれに流入し、その管体を通じて不凍液50と熱交換して蒸発、膨張しながら合流部1eに向かって進行していく。不凍液50は冷媒との熱交換によって冷却されて、冷媒よりも3~5度高い程度の温度に到達する。
【0023】
このように本発明によれば、螺旋型冷媒蒸発器1は、凍結槽Cの内周面から所定距離となるように概ね水平に周回する複数の螺旋状冷媒管1a、1b、1cを縦方向に積層配置させて構成しているので、不凍液50の効果的な対流を生じさせることができ、かつ螺旋状冷媒管1a、1b、1cの内側に凍結対象物を配置させることができるので、その凍結対象物を短時間でさせることが可能である。
【0024】
超音波振動装置42は、凍結対象物を凍結槽Cに漬けて凍結させる際に作動させればよく、これによって凍結対象物の凍結中の組織破壊が抑えられる。これを簡単に説明すると、一般的に凍結対象物が不凍液50との熱交換等によって冷却されていくとき、凍結対象物の表面部分は迅速な温度低下によってすぐに凍結されるが、内側部分はゆっくりと温度低下するためすぐには凍結されない。つまり表面部分と内側部分とに凍結の時間差があるため凍結対象物の組織破壊が生じ易くなる。
ところが、このとき超音波振動装置42させていると、不凍液50を媒体として、凍結対象物の表面部分に微小振動が生じて凍結し難くなる。つまり内側部分が十分に冷却されるまでの期間だけ表面部分の凍結を遅らせることができ、その結果として凍結対象物全体を略同時に凍結させることが可能になり、凍結対象物の組織破壊が抑えられる。なお、特に凍結対象物が一定の物品である場合、凍結対象物を凍結槽Cに投入した時点から超音波振動装置42の作動時間を最適化することも可能なり、凍結対象物の組織破壊が最小限に抑えられる。
【符号の説明】
【0025】
A ヒートポンプ
B 調圧・バイパス制御手段
C 凍結槽
1 螺旋型冷媒蒸発器
1a~1c 螺旋状冷媒管
40 凍結槽本体
42 超音波振動装置
50 不凍液
図1
図2