(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068386
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】調圧・バイパス制御ユニット
(51)【国際特許分類】
F25D 13/00 20060101AFI20220427BHJP
F25D 9/00 20060101ALI20220427BHJP
F25B 41/22 20210101ALI20220427BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
F25D13/00 A
F25D9/00 B
F25B41/06 A
F25B1/00 101H
F25B1/00 304W
F25B1/00 311Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019046767
(22)【出願日】2019-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】518015088
【氏名又は名称】株式会社光商事
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正憲
【テーマコード(参考)】
3L044
3L045
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA04
3L044BA05
3L044CA04
3L044DB02
3L044KA04
3L044KA05
3L045AA03
3L045BA03
3L045BA04
3L045CA00
3L045DA02
3L045FA02
3L045GA02
3L045HA01
3L045JA02
3L045JA03
3L045JA13
3L045JA14
3L045LA03
3L045LA12
3L045MA08
3L045NA00
3L045PA05
(57)【要約】
【課題】ヒートポンプ式液体急速凍結装置に組込むだけで、潤滑のオイル切れを起こすことなく、冷凍設備の不凍液を-40℃以下の超低温度域まで冷却できる調圧・バイパス制御ユニットを提供する。
【解決手段】蒸発器の入口に接続される第1ポート、蒸発器の出口に接続される第2ポート、凝集器の入口に接続される第3ポート、凝集器の出口に接続される第4ポート、圧縮機の吸引口に圧接続される第5ポート、圧縮機の吐出口に接続される第6ポート、第1ポートと第5ポートとの間に圧力調整弁を介して接続する第1の経路、第3ポートと第6ポートを接続する第2経路の接続点、第2ポートと第4ポートを接続する第3経路、第2経路と第3経路とを第1、第2の制御弁を介在させて接続した第1のバイパス路とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ式液体急速凍結装置に組込んで使用される調圧・バイパス制御ユニットであって、
蒸発器の入口に接続される第1ポート、蒸発器の出口に接続される第2ポート、凝集器の入口に接続される第3ポート、凝集器の出口に接続される第4ポート、圧縮機の吸引口に接続される第5ポート、圧縮機の吐出口に接続される第6ポート、第1ポートと第5ポートとの間に圧力調整弁を介して接続する第1の経路、第3ポートと第6ポートを接続する第2経路、第2ポートと第4ポートを接続する第3経路、第2経路と第3経路とを第1、第2の制御弁を介在させて接続する第1のバイパス路とを備えていることを特徴とする調圧・バイパス制御ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1経路であって、前記圧力調節弁の出口側と、前記第1バイパス路であって、前記第1のバイパス路の前記第1、第2の制御弁との間を、第3の制御弁を介在させて接続する第2のバイパス路を備えている、調圧・バイパス制御ユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記圧力調節弁は、前記圧縮機の吸引口側に設けた圧力センサ-に応じて、開閉制御することを特徴する調圧・バイパス制御ユニット。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記圧力調節弁は、コンピュータが、予め設定された凍結温度に応じて準備されたプログラムを実行して、開閉制御することを特徴する調圧・バイパス制御ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記調圧・バイパス制御ユニットは、前記第1ポート~第6のポートを、ワンタッチ式挿脱具によって、蒸発器、凝縮器、圧縮機に着脱可能に接続する構造にしている、調圧・バイパス制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式の急速液体凍結装置に組み込んで使用される、新規な構成の調圧・バイパス制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサーを用いて冷媒ガスを循環させて熱交換させるヒートポンプは、空調や冷凍などに広く使用されているが、この種のヒートポンプでは、冷媒ガスに潤滑油を含有させて、コンプレッサーの潤滑と気密性を確保している。
また、近時にあっては、このようなヒートポンプがアルコールなどの冷媒を用いた急速液体凍結装置にも使用されており、特許文献1には、コンプレッサーを用いたヒートポンプを組み込んだ急速液体凍結機が提案されているが、食材などを不凍液に浸漬させ、ジェットスクリューポンプによって噴流攪拌することによって均一に凍結させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のヒートポンプを急速液体凍結装置に使用して、蒸発器による冷却効果を高めるためには、コンプレッサーを高速運転する必要があり、コンプレッサーを高速運転すれば、蒸発器を-40℃以下の超低温度域まで冷却することは原理的には可能であるが、そのために蒸発器からコンプレッサーに吸引される冷媒ガスが希薄となって圧力が著しく低下する。その結果、コンプレッサーに十分な潤滑油が戻らなくなって、いわゆるオイル切れ現象が生じ、潤滑と気密性が確保できずに破損してしまうという問題があった。
したがって、通常の汎用タイプのコンプレッサーを用いた急速液体凍結設備では、-40℃以下の超低温度域まで冷凍させることは実際には不可能とされていた。
【0005】
これに対して本発明は、汎用のコンプレッサーを用いたヒートポンプを用いて、急速凍結させる急速液体凍結装置に部品として組み込んで使用すれば、前記のようなオイル切れの問題がなく、-40℃以下の超低温度域まで冷却し急速凍結できるように機能アップさせることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、冷媒の循環路として蒸発器と圧縮機と凝集器とが管路によって接続されているヒートポンプに簡単に組み込んだ使用される、調圧・バイパス制御ユニットを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調圧・バイパス制御ユニットは、ヒートポンプの目標性能に合わせて、種々のタイプのものを準備しておけば、第1~第6のポートに対して、蒸発器、圧縮機、凝集器を適宜選択して接続することによって、オイル切れの問題がなく、-40℃以下の超低温度域まで冷却できるヒートポンプ式液体凍結装置が簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用したヒートポンプ式急速凍結装置の基本構成図である。
【
図2】本発明を適用したヒートポンプ式急速凍結装置の他例の基本構成図である。
【
図3】本発明の調圧・バイパス制御ユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明を適用したヒートポンプ式急速凍結装置の基本構成図である。
急速液体凍結装置は、ヒートポンプAと、ヒートポンプAの一部を構成する調圧・バイパス制御ユニットB、及びこれに接続された凍結槽Cとで構成されている。
なお、調圧・バイパス制御ユニットBの詳細は後述する。
【0010】
ヒートポンプAは、冷媒の循環路として、蒸発器1と圧縮機2と凝集器3とが調圧・バイパス制御ユニットCに接続されており、調圧・バイパス制御ユニットCは、対応したポートを有しており、それぞれのポートが蒸発器1、圧縮機2、凝集器3に着脱可能に接続されている。ヒートポンプの冷媒を流通させる管路及びバイパス路は、銅、スチール或いはアルミ等の金属管又は樹脂管で構成されている。
【0011】
調圧・バイパス制御ユニットCは、金属製のケーシングで構成された制御ユニットとして組み込まれ、蒸発器1の入口に接続される第1ポートP1、蒸発器1の出口に接続される第2ポートP2、凝集器3の入口に接続される第3ポートP3、凝集器3の出口に接続される第4ポートP4、圧縮機2の吸引口に接続される第5ポートP5、圧縮機2の吐出口に接続される第6ポートP6を備えており、第1ポートP1と第5ポートP5とは第1経路14(1)を通じて接続され、第1経路14(1)には圧力調節弁16が介装され、第3ポートP3と第6ポートP6とは第2経路14(2)を通じて接続され、更に第2ポートP2と第4ポートP4とは第3経路14(3)を通じて接続されている。また、第2経路14(2)と第3経路14(3)とは第1、第2の制御弁21,22を介在させた第1のバイパス路15(1)を通じて接続され、第1の経路14(1)と第1のバイパス路15(2)とは、圧力調節弁16の出口と第1、第2の制御弁の接続点との間に第3の制御弁23が接続されている。
図3では、第1の制御弁21は電磁弁、第2、第3の制御弁22,23は二方弁とが使用されているが、これに限定されるものではない。また合流器20は、第3の経路14(3)を通じて凝集器2から送られて来た冷媒と、第1のバイパス路15(1)からバイパスして送られて来た冷媒を合流させて、蒸発器1に送り込むものである。
圧力調節弁16は、機械式のものを想定しているが、電磁弁等を用いて、図示しないコンピュータによる制御によって所定時間毎に開動作させるようにしてもよい。
また電磁弁21は、第1のバイパス路15(1)を通過する冷媒の通過量を調節するための弁であって、コンピュータなどの図示しない制御手段によって開弁率等が制御される。
第2、第3の制御弁22,23は第1のバイパス路15(1)からバイパスして来た冷媒の接続先を選択するための開閉弁である。
蒸発器1の入口側、圧縮機2の入口側には圧力センサー23a、23bが設けられ、それぞれ吸引圧を検知している。
【0012】
蒸発器1は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成され、金属管の壁面を介してその内側の冷媒と外側の気体又は液体とが熱交換できるように構成されている。
圧縮機2は、気体状態の冷媒を圧縮するコンプレッサーで構成され、その駆動用に図示しないモーター等の動力源を備えている。圧縮機2の種別に特段の制限はなく、ターボ型、スクリュー型、レスプロ型等を汎用型のもの用いることができるが、冷媒の種別に応じた圧縮圧を得るため圧縮機2を多段構成にすることも可能である。
凝集器3は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と外部の空気とが熱交換できるように構成されている。凝集器3には複数のフィン3aが固着されており、フィンに空気を送るためのブロアー3bが付設されている。凝集器3は、冷凍庫外の開放空間、あるいは凍結装置外の開放空間に配置されて、外気に対して放熱する作用をなす。
【0013】
凝集器3の出口と調圧・バイパス制御ユニットCとの中間部には、乾燥フィルター17と、電磁弁18と、膨張弁19とが設けられている。
乾燥フィルター17は、冷媒に混じっている異物、水分等を捕集するフィルターである。
電磁弁18は、管路14における冷媒の全体的な通過量を調節するための弁であって、図示しない制御手段によって開弁率等が制御される。
膨張弁19は、開度調節可能な電磁弁又は機械弁であって、図示しない制御手段によって開度等が制御され、当該部分にオリフィスを形成する。
一方、凍結槽3は、スレンレス等の金属と発泡スチロール等の断熱材とから構成された水密な槽であり、これには、凍結対象物を漬けるために、エチルアルコール等を主成分とする不凍液32が満たされている。
【0014】
上記のように、本発明による調圧・バイパス制御ユニットBによれば、設計すべきヒートポンプの目標性能に合わせたものを準備することで、第1~第6のポートP1~P6に、蒸発器、圧縮機、凝集器を適宜選択して接続することによって、設計目的に応じたヒートポンプが簡単に得られる。
【0015】
次いでヒートポンプAの基本動作を説明する。冷媒としてはR-404A又はR-410Aを想定している。
圧縮機2及びブロアー3bを作用させると、次のような動作が連続的になされる。なお蒸発器1によって冷却されるべき気体又は液体は特に制限されない。
蒸発器1から圧縮機2に送られて来た気体状態の冷媒は、圧縮機2で圧縮されると、高温高圧な状態になって凝集器3に送られる。凝集器3では内側の冷媒と外側の空気との熱交換が行われ、冷やされた冷媒は凝集して高圧な液体状態になる。そして、この高圧な液体状態の冷媒は、膨張弁19を通過したときに圧力損失を受け、蒸発器1の中で断熱膨張して低温低圧な気体状態になる。このとき蒸発器1の内側の冷媒と外側の気体又は液体との熱交換によって不凍液32は冷却され、蒸発器1から排出された低温低圧な気体状態の冷媒は圧縮機2に吸引される。ヒートポンプAの基本能力は、圧縮機2の回転数、制御弁18の開弁率等によって調節できる。
【0016】
ところで圧縮機2は、圧縮のために容積変化する作動室(図示なし)を備えており、その作動室はオイルによって潤滑され気密維持されているが、このオイルは圧縮された冷媒に混じって圧縮機2から徐々に排出され、通常は、排出されたオイル分は、冷媒が圧縮機2によって再吸引されたときに戻ってくるので、圧縮機2のオイルは一定量に保たれて不具合を生じない。
【0017】
しかしながら、圧縮機2を高速で連続運転して、蒸発器1の周囲の気体又は液体を非常な低温まで(摂氏マイナス40度以下)冷やそうとすると、蒸発器1から排出される冷媒の圧力が低くなり、過剰に希薄化してしまう。その結果、オイルが圧縮機2に戻ってこず、最終的にはオイル切れが起きるという問題があった。
例えば冷媒としてR-404Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス45~46度にすることは原理的に可能であるが、そのとき冷媒の圧力は99.31kPaになるので、汎用の圧縮機2はオイル切れのため作動不能になってしまう。
【0018】
ところが本発明の圧力・バイパス制御手段Bを組込んだヒートポンプによれば、圧力・バイパス制御手段B内部に設けた圧力調節弁16は、蒸発器1から排出されてくる冷媒の圧力が低下すると閉じて、冷媒を一旦堰き止め、その冷媒の圧力が所定以上になった時点で放出するという動作をなすので、冷媒の圧力は、更にそれ以上低下することは回避され、オイル切れが防止できる。この場合、蒸発器1における冷媒の圧力は圧力調節弁16の開閉弁に合わせて上下動を繰り返すことになるが、この冷媒の圧力が低くなっているときは、冷媒の温度が極めて低くなるときであり、強い吸熱が行われ、これによって冷媒のR-404Aが摂氏マイナス45~46度に冷却できることになる。
【0019】
また例えば冷媒としてR-410Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス55~56度にすると、冷媒の圧力は80.46kPaになるので、前記のような圧力調節弁16の作用だけでは圧縮機2のオイル切れを防止することは難しい。
しかしながら、この問題は、圧力・バイパス調節制御手段Bによって解決される。
すなわち、前記した圧力調節弁16を閉じても、急激な圧力低下が解消しないときには、二方弁22を閉じ、制御弁23を開き、電磁弁21を開けば圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、直接圧縮機2に供給することができ、これによって蒸発器1から排出される冷媒の圧力低下が更に補完される。
また、二方弁22を開き、制御弁23を閉じ、電磁弁21を開けば、圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、蒸発器1に送り込むことができ、これによっても蒸発器1による急速冷却を緩やかに制御することも可能となる。
これらの圧力調節弁16、第1、第2のバイパス路15(1)、15(2)に設けた電磁弁21、第1、第2の制御弁22、23は、圧力センサー24a、24bからの信号に基づいて、コンピュータに実装したプログラムに従って行われ、結果としてオイル切れを生じることなく、蒸発器1は冷却される。また、コンピュータで制御を実行せずに、圧力センサーの検知信号に基づいて、電磁弁21や制御弁23,24の開閉を制御してもよい。
【0020】
本発明では、調圧・バイパス制御ユニットBを組み込むことで、汎用の圧縮機を用いた構成であっても、このような制御が可能となり、オイル切れが防止でき、極低温度領域の凍結が可能となる。また、既存の装置に部品として取り換えるだけでよいので、製造コストも安価にできる。
【0021】
図2は、本発明を適用したヒートポンプ式急速凍結装置の他例の基本構成図である。急速凍結装置は、ヒートポンプAと、これに接続された収納庫Dとで構成されている。収納庫Dは、天井面、床面及び壁面が断熱壁で構成された筐体であって、開閉自在な扉を有し(図示なし)、外気と同様の空気によって満たされている。この急速凍結装置は、ヒートポンプによって冷却された冷風で被凍結物を凍結させるブラスト式凍結装置である。
図1に共通する要素には同一の参照符号を付けている。
【0022】
蒸発器1は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と、冷凍庫41内の空気とが熱交換できるようになっている。更に蒸発器1には複数のフィン1aが固着されており、フィン1aに空気を送るためのブロアー1bが付設されている。空気は、フィン1aの間隙を通過している間に熱交換によって冷却されて冷気になる。この冷気によって被冷凍物を急速に凍結させる。
【0023】
特にこの例では、調圧・バイパス制御ユニットBに対して、収納庫Dに適したサイズの蒸発器を選択して接続することで、必要な風量の冷風が容易に得られるようになる。
【符号の説明】
【0024】
1 蒸発器
2 圧縮機
3 凝集器
14(1)~14(3)第1、第2、第3の経路
15(1)、15(2)第1、第2のバイパス路
16 圧力調節弁
41 冷凍庫
A ヒートポンプ
B バイパス・調圧制御ユニット
C 凍結槽
D 収納庫
P1~P6 第1~第6ポート