(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068406
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】流体制御弁及びEGRユニット
(51)【国際特許分類】
F02M 26/66 20160101AFI20220427BHJP
F02M 26/68 20160101ALI20220427BHJP
F02M 26/22 20160101ALI20220427BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20220427BHJP
F16K 1/46 20060101ALI20220427BHJP
F16K 41/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
F02M26/66
F02M26/68 301
F02M26/22
F16K27/02
F16K1/46 Z
F16K41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177053
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】曹 海翔
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【テーマコード(参考)】
3G062
3H051
3H052
3H066
【Fターム(参考)】
3G062EA11
3G062EC01
3G062EC06
3G062ED08
3H051AA01
3H051BB10
3H051CC11
3H051FF01
3H052AA01
3H052BA02
3H052BA25
3H052CA23
3H052CC00
3H052CD03
3H052EA01
3H066AA01
3H066BA17
3H066DA01
(57)【要約】
【課題】ポペット式で内開式として機能する流体制御弁において、全閉時に下流側流路に作用する高負圧により弁体が不用意に開弁してしまうことを防止することにある。
【解決手段】EGR弁14は、ハウジング41、弁体43を設けた弁軸42、弁軸42を往復動させるステップモータ44、弁体43と弁軸42をステップモータ44から遠ざかる方向へ付勢するスプリング45を備える。弁体43には、弁軸42の周囲にてリップシール51に接触可能に、弁体43から弁軸42に沿って伸びる円筒状の外軸52が設けられる。外軸52が弁体43と弁軸42と共に往復動するときに外軸52とハウジング41との間をシールするリップシール51が設けられ、リップシール51によりシールすることでハウジング41には内側空間53が設けられる。外軸52の上端部は内側空間53に面し、ハウジング41には、内側空間53を大気に連通させる大気通路54が設けられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、一端部と他端部を含む弁軸と、
前記弁軸の前記一端部に設けられる弁体と、
前記弁軸の前記他端部に対応して前記ハウジングに設けられ、前記弁軸を前記弁体と共に軸線方向へ往復動させるためのアクチュエータと、
前記弁体は、前記軸線方向において先部と基部とを含むことと、
前記弁軸は、前記弁体の前記基部から前記アクチュエータへ向けて伸びることと、
前記弁体を前記弁軸と共に前記アクチュエータから遠ざかる方向へ付勢するためのスプリングと
を備え、流体の流量を制御する流体制御弁において、
前記弁体の前記基部又は前記弁軸に設けられ、前記弁体を前記弁軸と共に前記アクチュエータに近づける方向へ付勢するように前記弁体の前記基部の側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段と、
前記作用圧低減手段が前記弁体及び前記弁軸と共に往復動するときに前記作用圧低減手段と前記ハウジングとの間をシールするためのシール部材と、
前記作用圧低減手段と前記ハウジングとの間を前記シール部材によりシールすることで前記ハウジングの内側に区分される内側空間と、
前記作用圧低減手段は一端部を含み、前記一端部が前記内側空間に面して配置されることと、
前記内側空間を大気に連通させるために前記ハウジングに設けられる大気通路と
を備えたことを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御弁において、
前記作用圧低減手段は、前記弁軸の周囲に設けられ、前記シール部材に接触可能な外周部を含み、前記弁体の前記基部から前記弁軸に沿って伸びる円筒状の外軸である
ことを特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項1に記載の流体制御弁において、
前記作用圧低減手段は、前記弁軸上にて前記弁体から離れて設けられ、前記シール部材に接触可能な外周部と、前記弁体の前記基部に対向する他端部とを含み、前記内側空間を閉鎖する閉鎖部材である
ことを特徴とする流体制御弁。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の流体制御弁において、
前記外軸又は前記閉鎖部材は、前記外周部に、外径を拡大する拡径部を含み、前記拡径部の一端部が前記内側空間に面して配置され、他端部が前記弁体へ向いて配置される
ことを特徴とする流体制御弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の流体制御弁において、
前記ハウジングに設けられ、前記流体が流れる流路と、
前記流路に設けられ、前記弁体の前記先部が着座又は離間する弁座と
を更に備え、
前記流路は、前記弁座を境として前記アクチュエータから遠い上流側流路と前記アクチュエータに近い下流側流路に分かれ、前記下流側流路にて前記弁体が前記弁座に着座可能に配置される
ことを特徴とする流体制御弁。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の流体制御弁において、
前記流体はEGRガスであり、前記流体制御弁は、前記EGRガスの流量を制御するEGR弁である
ことを特徴とする流体制御弁。
【請求項7】
請求項6に記載のEGR弁と、
前記EGRガスを冷却するためのEGRクーラと
を備え、
前記EGRクーラは、前記EGRガスが流入する入口と、前記EGRガスが流出する出口とを含み、
前記EGR弁は、前記EGRクーラの前記出口に対応して前記EGRクーラと一体に設けられる
ことを特徴とするEGRユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、流体の流量を制御するポペット式であって内開式の流体制御弁とそれを含むEGRユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されるポペット式であって内開式のEGR弁が知られている。このEGR弁は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、一端部に弁体が設けられた弁軸と、弁軸を弁体と共に軸線方向へ往復動させるアクチュエータとを備える。流路は、弁座を境として上流側流路と下流側流路に分かれ、弁体は下流側流路にて弁座に着座可能に配置される。アクチュエータは雄ねじを有する駆動軸と、駆動軸を軸線方向へ往復動させるために雄ねじに螺合される雌ねじを有するロータと、ロータを回転させるコイルとを含む。雄ねじと雌ねじとの間には、駆動軸の軸線方向において所定のバックラッシが設けられる。駆動軸には、弁体を弁体を弁座に着座させる方向(閉弁方向)へ付勢する閉弁スプリングが設けられる。弁軸と駆動軸との間には、電磁クラッチが設けられる。
【0003】
ここで、内開式のEGR弁は、その開弁時に弁軸も弁座から離れるので、弁体を上流側流路にて弁座に着座可能に配置した外開式のEGR弁に比べ、次のようなメリットがある。すなわち、弁体の外径を等しくした場合、内開式では、EGRガスの最大流量が外開式よりも増加する。そのため、内開式では、所定の最大流量を得るための弁体の外径を外開式よりも小さくすることができ、結果として、低流量域の流量分解能を向上させることができる。このようなメリットが得られることから、内開式のEGR弁の利用について要請が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の内開式のEGR弁では、その全閉時には、閉弁スプリングの付勢力により駆動軸が閉弁方向へ押され、雄ねじのねじ山が雌ねじのねじ山に当たった状態で弁体が弁座に着座する。この状態で、雌ねじと雄ねじとの間には、駆動軸が開弁方向へ動き得るバックラッシ(隙間)が存在する。そのため、下流側流路にて弁体に高い吸気負圧が作用すると、弁体と弁軸を介して駆動軸へ開弁方向の力が作用し、バックラッシの分だけ雄ねじが移動し、弁体が微小に開弁してしまう。この結果、EGRガスが下流側流路へ漏れ、不要なEGRガスが吸気通路へ流れてしまうおそれがある。
【0006】
上記問題の対応策として、閉弁スプリングの付勢力(張力)を、高い吸気負圧に対抗できる程度に増大させることが考えられる。しかし、この場合は、閉弁スプリングが大型化したり、雄ねじと雌ねじとの間で摩耗が増加したりするおそれがあるので好ましくない。
【0007】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポペット式であって内開式として機能する流体制御弁において、全閉時に下流側流路に作用する高負圧により弁体が不用意に開弁してしまうことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、ハウジングと、ハウジングに設けられ、一端部と他端部を含む弁軸と、弁軸の一端部に設けられる弁体と、弁軸の他端部に対応してハウジングに設けられ、弁軸を弁体と共に軸線方向へ往復動させるためのアクチュエータと、弁体は、軸線方向において先部と基部とを含むことと、弁軸は、弁体の基部からアクチュエータへ向けて伸びることと、弁体を弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ付勢するためのスプリングとを備え、流体の流量を制御する流体制御弁において、弁体の基部又は弁軸に設けられ、弁体を弁軸と共にアクチュエータに近づける方向へ付勢するように弁体の基部の側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段と、作用圧低減手段が弁体及び弁軸と共に往復動するときに作用圧低減手段とハウジングとの間をシールするためのシール部材と、作用圧低減手段とハウジングとの間をシール部材によりシールすることでハウジングの内側に区分される内側空間と、作用圧低減手段は一端部を含み、一端部が内側空間に面して配置されることと、内側空間を大気に連通させるためにハウジングに設けられる大気通路とを備えたことを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成において、流体制御弁は、流路と、流路に設けられた弁座とを有する相手部材に組み付けて使用される。この組み付け状態において、弁体が弁座に着座した全閉状態では、流路は、弁座を境としてアクチュエータから遠い上流側流路とアクチュエータに近い下流側流路に分けられる。この場合、下流側流路にて弁体が弁座に着座可能に配置される。ここで、流体制御弁の全閉状態において、弁体の先部の側には、上流側流路の圧力が作用し、弁体の基部の側には、下流側流路の圧力が作用する。そして、下流側流路に高負圧が作用し、上流側流路に正圧が作用した場合、弁体には、上流側流路の正圧と下流側流路の高負圧との圧力差が、弁体を弁座から離間させる方向に作用し、弁体が不用意に弁座から離間する(開弁する)おそれがある。この不用意な開弁を回避するために、従来は、スプリングの付勢力を増大させたり、全閉状態を保つためにアクチュエータを動作させたりすることが考えられる。この点、上記技術の構成によれば、弁体の基部又は弁軸に、弁体を弁軸と共にアクチュエータに近づける方向へ付勢するように弁体の基部の側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段が設けられる。また、この作用圧低減手段の一端部が、シール部材により下流側流路と区分されるハウジングの内側空間に面して配置される。この内側空間は、大気通路を介して常に大気圧に保たれる。従って、弁体には、弁座に着座する方向(弁体をアクチュエータから遠ざける方向)へ作用圧低減手段を介して大気圧が作用するので、下流側流路にて弁体を弁座から離間させる方向(弁体をアクチュエータに近づける方向)へ高負圧が作用しても、作用圧低減手段に作用する大気圧の分だけ弁体の基部の側に作用する高負圧による付勢力が低減される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、作用圧低減手段は、弁軸の周囲に設けられ、シール部材に接触可能な外周部を含み、弁体の基部から弁軸に沿って伸びる円筒状の外軸であることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁体には、弁体が弁座に着座する方向へ、外軸を介して内側空間から大気圧が作用するので、下流側流路にて弁体を弁座から離間させる方向へ高負圧が作用しても、外軸に作用する大気圧の分だけ弁体の基部の側に作用する高負圧による付勢力が低減される。また、弁軸と外軸との間のスペースにスプリングの配置が可能になるので、スプリングが下流側流路に露出することがない。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、作用圧低減手段は、弁軸上にて弁体から離れて設けられ、シール部材に接触可能な外周部と、弁体の基部に対向する他端部とを含み、内側空間を閉鎖する閉鎖部材であることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、閉鎖部材の一端部が内側空間に面するので、弁体には、弁体が弁座に着座する方向へ閉鎖部材を介して内側空間から大気圧が作用する。従って、下流側流路にて弁体を弁座から離間させる方向へ高負圧が作用しても、閉鎖部材に作用する大気圧の分だけ弁体の基部の側に作用する高負圧による付勢力が低減される。また、閉鎖部材の他端部が弁体の基部に対向することで下流側流路に面するので、下流側流路に作用する高負圧が、閉鎖部材を介して、弁体が弁座に着座する方向に作用する。従って、閉鎖部材に作用する高負圧の分だけ弁体を弁座から離間させる方向へ作用する高負圧による付勢力が低減される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項2又は3に記載の技術において、外軸又は閉鎖部材は、外周部に、外径を拡大する拡径部を含み、拡径部の一端部が内側空間に面して配置され、他端部が弁体へ向いて配置されることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項2又は3に記載の技術の作用に加え、拡径部の他端部が弁体へ向いて配置されることで下流側流路に面するので、下流側流路に作用する高負圧が、拡径部の他端部に作用して弁体が弁座に着座する方向に付勢される。従って、その付勢力の分だけ弁体を弁座から離間させる方向へ作用する高負圧による付勢力が更に低減される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術において、ハウジングに設けられ、流体が流れる流路と、流路に設けられ、弁体の先部が着座又は離間する弁座とを更に備え、流路は、弁座を境としてアクチュエータから遠い上流側流路とアクチュエータに近い下流側流路に分かれ、下流側流路にて弁体が弁座に着座可能に配置されることを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の作用に加え、ハウジングに流路と弁座が一体に設けられるので、流体制御弁を流路と弁座を有する別の相手部材に組み付ける必要がない。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術において、流体はEGRガスであり、流体制御弁は、EGRガスの流量を制御するEGR弁であることを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、EGR弁の全閉時に、その弁体につき請求項1乃至5のいずれかに記載の技術と同等の作用が得られる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項6に記載のEGR弁と、EGRガスを冷却するためのEGRクーラとを備え、EGRクーラは、EGRガスが流入する入口と、EGRガスが流出する出口とを含み、EGR弁は、EGRクーラの出口に対応してEGRクーラと一体に設けられることを趣旨とする。
【0021】
上記技術の構成によれば、請求項6に記載の技術の作用に加え、EGRクーラの出口に対応してEGRクーラと一体に設けられたEGR弁により内開式のポペット弁が構成されるので、開弁時には、下流側流路にて、EGR弁の弁体及び弁軸が、弁座からアクチュエータに近づく方向へ離間することになる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の技術によれば、ポペット式であって内開式として機能する流体制御弁において、その全閉時に下流側流路に作用する高負圧により弁体が不用意に開弁することを防止することができる。
【0023】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、弁体の周囲を簡素化することができ、下流側流路における流体の圧損を低減することができる。
【0024】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、流体制御弁の全閉時に、下流側流路に作用する高負圧により弁体が不用意に開弁することをより確実に防止することができる。
【0025】
請求項4に記載の技術によれば、請求項2又は3に記載の技術の効果に加え、流体制御弁の全閉時に、下流側流路に作用する高い吸気負圧により弁体が不用意に開弁することをより確実に防止することができる。
【0026】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の効果に加え、流体制御弁それのみを流体の通路の任意の位置に接続するだけで、流体の流量制御も使用できるようになる。
【0027】
請求項6に記載の技術によれば、EGR弁の全閉時に、その弁体につき請求項1乃至5のいずれかに記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0028】
請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の技術の効果に加え、EGRクーラの出口におけるEGRガスの圧損を低減することができ、EGRガスをEGRクーラからEGR弁へ流れ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係り、EGRユニットの具体例を示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、
図2の一点鎖線四角で囲った部分であって全閉に動作したEGR弁を示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、全閉に動作したEGR弁のみを示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、
図2の一点鎖線四角で囲った部分であって全開に動作したEGR弁を示す断面図。
【
図6】第1実施形態に係り、全開に動作したEGR弁のみを示す断面図。
【
図7】第1実施形態に係り、
図3に示す全閉に動作したEGR弁を簡略化して示す断面図。
【
図8】第2実施形態に係り、全閉に動作したEGR弁を示す
図7に準ずる簡略化した断面図。
【
図9】第3実施形態に係り、全閉に動作したEGR弁を示す
図7に準ずる簡略化した断面図。
【
図10】第4実施形態に係り、全閉に動作したEGR弁を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、流体制御弁及びEGRユニットをガソリンエンジンシステムに具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0031】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態のガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。自動車に搭載されたエンジンシステムは、複数の気筒を有するエンジン1を備える。このエンジン1は、4気筒、4サイクルのレシプロエンジンであり、ピストン及びクランクシャフト等の周知の構成を含む。エンジン1には、各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、エンジン1の各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。
【0033】
吸気通路2には、スロットル装置4及び吸気マニホールド5が設けられる。吸気マニホールド5は、吸気通路2の一部を構成する。排気通路3には、その上流側から順に排気マニホールド6及び触媒7が設けられる。触媒7には、排気を浄化するために、例えば、三元触媒が内蔵される。加えて、排気通路3と吸気通路2との間には、高圧ループタイプの排気還流装置(EGR装置)11が設けられる。
【0034】
スロットル装置4は、吸気マニホールド5より上流の吸気通路2に配置され、運転者のアクセル操作に応じてバタフライ式のスロットル弁4aを開度可変に開閉駆動させることで、吸気通路2を流れる吸気量を調節するようになっている。吸気マニホールド5は、主として樹脂材より構成され、エンジン1の直上流にて吸気通路2に配置される。吸気マニホールド5は、吸気が導入される一つのサージタンク5aと、サージタンク5aに導入される吸気をエンジン1の各気筒へ分配するためにサージタンク5aから分岐した複数(4つ)の分岐管5bとを含む。
【0035】
エンジン1には、各気筒に対応して燃料を噴射するための燃料噴射装置(図示略)が設けられる。燃料噴射装置は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料をエンジン1の各気筒へ噴射するように構成される。各気筒では、燃料噴射装置から噴射される燃料と吸気マニホールド5から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0036】
また、エンジン1には、各気筒に対応して点火装置(図示略)が設けられる。点火装置は、各気筒で可燃混合気に点火するように構成される。各気筒内の可燃混合気は、点火装置の点火動作により爆発・燃焼し、燃焼後の排気は、各気筒から排気マニホールド6及び触媒7を経て外部へ排出される。このとき、各気筒でピストン(図示略)が上下運動し、クランクシャフト(図示略)が回転することにより、エンジン1に動力が得られる。
【0037】
[EGR装置について]
この実施形態のEGR装置11は、エンジン1の各気筒から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路2へ流してエンジン1の各気筒へ還流させるように構成される。すなわち、EGR装置11は、排気還流通路(EGR通路)12と、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)13と、EGR通路12を流れるEGRガスの流量を制御(調節)するための排気還流弁(EGR弁)14と、EGR通路12を流れるEGRガスをエンジン1の各気筒へ分配するために、吸気マニホールド5の各分岐管5bへEGRガスを分配するための排気還流ガス分配器(EGRガス分配器)15とを備える。EGR通路12は、入口12aと出口12bを含む。その入口12aは触媒7より上流の排気通路3に接続され、その出口12bはEGRガス分配器15に接続される。EGRガス分配器15は、EGR通路12の終段を構成する。EGR通路12において、EGR弁14は、EGRクーラ13より下流に設けられ、EGRガス分配器15は、EGR弁14より下流に設けられる。この実施形態で、EGRクーラ13は、EGRガスが流入する入口23(
図2参照)と、EGRガスが流出する出口24(
図2参照)とを有する。EGR弁14は、EGRクーラ13の出口24に対応してEGRクーラ13と一体に設けられる。EGRクーラ13とEGR弁14とによりEGRユニット17が構成される。この実施形態で、EGR弁14は、この開示技術の流体制御弁の一例に相当し、EGRガスはEGR弁14が流量を制御する流体の一例に相当する。
【0038】
このEGR装置11では、EGR弁14が開弁することにより、排気通路3を流れる排気の一部がEGRガスとしてEGR通路12を流れ、EGRクーラ13で冷却され、更にEGR弁14で流量が制御され、EGRガス分配器15を介して吸気マニホールド5の各分岐管5bへ分配され、更にエンジン1の各気筒へ分配されて還流される。
【0039】
[EGRユニットについて]
図2に、EGRユニット17の具体例を断面図により示す。
図2において、EGRクーラ13は、ケーシング21と、ケーシング21の中に設けられる熱交換器22と、ケーシング21にEGRガスを導入するための入口23と、ケーシング21からEGRガスを導出するための出口24とを含む。この実施形態において、EGRクーラ13は、EGR通路12において、出口24が入口23よりも垂直方向において高い位置に配置されるように斜めに配置される。従って、このEGRクーラ13では、EGRガスが入口23から出口24へ向けて斜め上方へ向けて流れる。
【0040】
ケーシング21は、熱交換器22が設けられる本体部21aと、本体部21aから入口23までの間の導入部21bと、本体部21aから出口24までの間の導出部21cと、導出部21cより下流にてEGR弁14が組み付けられる組付部21dとを含む。導入部21bは、その内部に導入空間25を有する。導出部21cは、その内部に導出空間26を有する。熱交換器22は、冷却水が流れる水通路31と、水通路31の中に配置され、EGRガスが流れるガス通路32とを含む。水通路31は、扁平形状をなし互いに平行に配置された複数の小水通路31aを含む。ガス通路32は、小水通路31aの間にて扁平形状をなし互いに平行に配置された複数の小ガス通路32aを含む。各小水通路31aの外壁には、多数のフィン33が設けられる。各小水通路31aの軸方向両端は封鎖される。本体部21aには、水通路31に冷却水を取り入れるための取入口34と、水通路31から冷却水を取り出すための取出口35が設けられる。取入口34から取り入れられた冷却水は、各小水通路31aを流れて取出口35から取り出される。各小ガス通路32aの軸方向両端は開口しており、それぞれ導入空間25及び導出空間26に連通する。従って、この入口23から導入空間25に導入されたEGRガスは、各小ガス通路32aを通過して導出空間26へ流れる。各小ガス通路32aを通過するEGRガスは、小水通路31aとの間で熱交換が行われ、冷却される。
【0041】
ケーシング21の組付部21dには、EGRクーラ13の出口24に連通する組付孔28と流路29が設けられる。流路29の一端には出口29aが設けられる。組付孔28には、EGR弁14が組み付けられ、出口24には、組み付けられたEGR弁14の弁体43が着座(閉弁)又は離間(開弁)する弁座30が設けられる。この実施形態では、組付部21dにEGR弁14が組み付けられた状態で、ポペット式であって内開式のEGR弁が構成される。そして、EGR弁14の弁体43が弁座30から離間することで、EGRガスがEGRクーラ13の出口24から流路29へ流れ、出口29aから導出される。
【0042】
[EGR弁の構成について]
次に、EGR弁14の構成について説明する。
図3に、
図2の一点鎖線四角S1で囲った部分であって全閉に動作したEGR弁14を断面図により示す。
図4に、全閉に動作したEGR弁14のみを断面図により示す。
図5に、
図2の一点鎖線四角S1で囲った部分であって全開に動作したEGR弁14を断面図により示す。
図6に、全開に動作したEGR弁14のみを断面図により示す。
図7に、
図3に示す全閉に動作したEGR弁14を簡略化した断面図により示す。
【0043】
図3~
図6に示すように、EGR弁14は、ハウジング41と、ハウジング41に設けられ、下端部(一端部)と上端部(他端部)を含む弁軸42と、弁軸42の下端部に設けられる弁体43と、弁軸42の上端部に対応してハウジング41に設けられ、弁軸42を弁体43と共に軸線方向へ往復動させるためのステップモータ44と、弁体43を弁軸42と共にステップモータ44から遠ざかる方向へ付勢するためのスプリング45とを含む。弁軸42は、ハウジング41の中心を貫通して配置され、上端部に雄ねじ46が設けられる。ステップモータ44は、この開示技術のアクチュエータの一例に相当する。
【0044】
ハウジング41は、EGR弁14の外側を覆う外ハウジング61と、外ハウジング61の内側に配置される内ハウジング62と、内ハウジング62の下部内側に配置される軸受ハウジング63とを含む。内ハウジング62の上部は、ステップモータ44のステータ71を構成し、その外周にはコイル72が設けられる。軸受ハウジング63は、その中心部に弁軸42をスラスト方向へ往復動可能に支持するスラスト軸受部63aを含み、スラスト軸受部63aの周囲は中空となっている。ステータ71の内側には、ステップモータ44を構成するロータ73が配置される。外ハウジング61には、上方へ突出するコネクタ61aが形成される。コネクタ61aには、コイル72に接続される端子74が設けられる。外ハウジング61の下部には、フランジ61bが形成される。EGRクーラ13の組付部21dには、フランジ21daが形成される。EGR弁14は、これらフランジ61b,21daを介してボルト等(図示略)によりEGRクーラ13に固定される。
【0045】
ロータ73は、ロータ本体73aと、ロータ本体73aの外周に設けられるマグネット73bとを含む。ロータ本体73aの下端には、下方へ伸びるスリーブ75が設けられ、スリーブ75の外周と内ハウジング62との間には、ラジアル軸受76が設けられる。ロータ73は、ラジアル軸受76によりステータ71の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体73aの中心には、弁軸42の雄ねじ46に螺合される雌ねじ47が設けられる。雄ねじ46と雌ねじ47との間には、弁軸42の軸線方向において所定のバックラッシが設けられる。
【0046】
図3、
図5は、EGR弁14の内ハウジング62の下部がEGRクーラ13の組付部21dの組付孔28に組み付けられた状態を示す。この組み付け状態において、EGRクーラ13の出口24と組付部21dの流路29とは、EGRクーラ13からEGRガスが流れる一連の流路48(二点鎖線で概形を示す。)を構成する。この一連の流路48は、出口24に設けられた弁座30を境として、弁座30より下側のステップモータ44から遠い上流側流路48aと、弁座30より上側のステップモータ44に近い下流側流路48bに分かれる。弁体43は、下流側流路48bにて弁座30に着座可能に配置される。
【0047】
図3~
図6に示すように、弁体43は、その軸線方向において下側の先部43aと上側の基部43bを含む。弁体43は、その先部43aが弁座30を貫通すると共に着座するようになっている。そして、弁軸42は、弁体43の基部43bからステップモータ44へ向けて伸びている。弁体43は、先端である下方へ収束する略円錐台形状をなしている。この実施形態において、弁体43の基部43bには、弁体43を弁軸42と共に弁座30から離間する方向(ステップモータ44に近づける方向)へ付勢するように弁体43の基部43bの側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段50が設けられる。軸受ハウジング63の内側には、作用圧低減手段50が弁体43及び弁軸42と共に往復動するときに作用圧低減手段50と軸受ハウジング63との間をシールするためのリップシール51が設けられる。リップシール51は、この開示技術のシール部材の一例に相当する。この実施形態で、作用圧低減手段50は、一例として、弁軸42の周囲に設けられ、リップシール51に接触可能な外周部52cを含み、弁体43の基部43bから弁軸42に沿って伸びる円筒状の外軸52により構成される。この実施形態で、
図7に示すように、外軸52の外周部52cの外径D1は、弁体43の最大外径D2と同じに設定される。また、外軸52の外周部52cの外径D1は、弁座30の内径D3よりも大きく設定される。
【0048】
EGR弁14には、外軸52と軸受ハウジング63との間をリップシール51によりシールすることでハウジング41の内側に区分される内側空間53が設けられる。外軸52の上端部52a(一端部)は、この内側空間53に面して配置される。そして、この内側空間53を大気に連通させるために、ハウジング41(外ハウジング61、内ハウジング62及び軸受ハウジング63)には、大気通路54(二点鎖線で概形を示す。)が設けられる。
【0049】
上記のように構成したEGR弁14は、ステップモータ44を駆動させてロータ73を回転させることにより、その回転運動を雄ねじ46と雌ねじ47を介して弁軸42と弁体43のストローク運動に変換し、弁座30に対する弁体43の開度を調節するようになっている。すなわち、EGR弁14は、
図3に示すように、弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ロータ73を一方向へ回転させることにより、雄ねじ46と雌ねじ47の螺合関係により、スプリング45の付勢力に抗して、弁軸42が弁体43と共にスラスト方向である
図3の上方向へストローク運動する。これにより、弁体43が弁座30から流路29の側へ離間(開弁)し、更に、
図5に示す全開状態となる。
【0050】
一方、EGR弁14は、
図5に示すように、弁体43が弁座30から最も離間した全開状態から、ロータ73を反対方向へ回転させることにより、雄ねじ46と雌ねじ47の螺合関係により、スプリング45の付勢力との協働により、弁軸42が弁体43と共にスラスト方向である
図5の下方向へストローク運動する。これにより、弁体43が弁座30に着座し、
図3に示す全閉状態となる。
【0051】
[EGR弁及びEGRユニットの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGR弁14の構成によれば、EGR弁14(流体制御弁)は、流路29と、出口24に設けられた弁座30とを有する相手部材としてのEGRクーラ13の組付部21dに組み付けて使用される。この組み付け状態において、EGR弁14の弁体43が弁座30に着座した全閉状態では、一連の流路48は、弁座30を境としてステップモータ44(アクチュエータ)から遠い、EGRクーラ13の出口24(上流側流路48a)とステップモータ44に近い流路29(下流側流路48b)に分けられる。この場合、流路29(下流側流路48b)にて弁体43が弁座30に着座可能に配置される。
【0052】
ここで、EGR弁14の全閉状態において、弁体43の先部43aの側には、EGRクーラ13の出口24(上流側流路48a)におけるEGRガスの圧力が作用し、弁体43の基部43bの側には、流路29(下流側流路48b)におけるEGRガス又は吸気の圧力が作用する。そして、エンジン1の減速運転時等には、流路29(下流側流路48b)に吸気通路2から高い吸気負圧が作用し、EGRクーラ13の出口24(上流側流路48a)にほぼ大気圧(非常に低い正圧)が作用することがある。この場合、弁体43には、出口24(上流側流路48a)の大気圧と流路29(下流側流路48b)の高い吸気負圧との圧力差が、弁体43を弁座30から離間させる方向に作用し、弁体43が不用意に弁座30から離間(開弁)するおそれがある。この不用意な開弁を回避するために、従来は、スプリング45の付勢力を増大させたり、全閉状態を保つためにステップモータ44を動作させたりすることが考えられた。
【0053】
この点、この実施形態のEGR弁14の構成によれば、弁体43の基部43bには、弁体43を弁軸42と共にステップモータ44に近づける方向へ付勢するように弁体43の基部43bの側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段50が設けられる。また、この作用圧低減手段50の上端部52a(一端部)が、リップシール51(シール部材)により流路29(下流側流路48b)と区分されるハウジング41の内側空間53に面して配置される。この内側空間53は、大気通路54を介して常に大気圧に保たれる。従って、弁体43には、弁座30に着座する方向(弁体43をステップモータ44から遠ざける方向)へ作用圧低減手段50を介して大気圧が作用するので、流路29(下流側流路48b)にて弁体43を弁座30から離間させる方向(弁体43をステップモータ44に近づける方向)へ高い吸気負圧が作用しても、作用圧低減手段50に作用する大気圧の分だけ弁体43の基部43bの側に作用する高い吸気負圧による付勢力が低減される。この実施形態では、作用圧低減手段50が外軸52により構成され、その外軸52の外周部52cの外径D1が弁座30の内径D3よりも大きく設定されるので、エンジン1の減速運転時に、EGRクーラ13の出口24から弁体43の先部43aの側に作用する大気圧による付勢力よりも、スプリング45の付勢力に加えて、内側空間53から外軸52を介して弁体43の基部43bの側に作用する大気圧による付勢力の方が大きくなり、弁体43が弁座30に着座する方向へ付勢される。このため、ポペット式であって内開式として機能するEGR弁14において、その全閉時に流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧により弁体43が不用意に開弁してしまうことを防止することができる。この場合、弁体43を全閉状態に保つためにステップモータ44の要求駆動トルクを増大させる必要がなく、ステップモータ44の小型化を図ることができる。
【0054】
この実施形態の構成によれば、作用圧低減手段50が、弁軸42の周囲にてリップシール51に接触可能な外周部52cを含み、弁体43の基部43bから弁軸42に沿って伸びる円筒状の外軸52により構成される。従って、弁体43には、弁体43が弁座30に着座する方向へ、外軸52を介して内側空間53から大気圧が作用するので、流路29(下流側流路48b)にて弁体43を弁座30から離間させる方向へ高い吸気負圧が作用しても、外軸52に作用する大気圧の分だけ弁体43の基部43bの側に作用する高い吸気負圧による付勢力が低減される。特に、この実施形態では、外軸52の外周部52cの外径D1が、弁体43の最大外径D2と同じに設定されるので、弁体43の基部43bが流路29(下流側流路48b)に露出せず、その基部43bに、弁体43を弁座30から離間させる方向に、高い吸気負圧が作用することがない。このため、EGR弁14の全閉時に、流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧により弁体43が不用意に開弁することを確実に防止することができる。また、弁軸42と外軸52との間のスペースにスプリング45の配置が可能になるので、スプリング45が流路29(下流側流路48b)に露出することがない。このため、弁体43の周囲を簡素化することができ、ハウジング41の小型化が可能となると共に、流路29(下流側流路48b)におけるEGRガスの圧損を低減することができる。
【0055】
この実施形態の構成によれば、EGRクーラ13の出口24に対応してEGRクーラ13に一体に設けられたEGR弁14により内開式のポペット弁が構成される。従って、EGR弁14の開弁時には、弁体43及び弁軸42が、流路29(下流側流路48b)にて弁座30からステップモータ44に近づく方向へ離間し、出口24(上流側流路48a)にてステップモータ44から遠ざかる方向へ離間することがない。このため、EGRクーラ13の出口24(上流側流路48a)におけるEGRガスの圧損を低減することができ、EGRガスをEGRクーラ13からEGR弁14へ流れ易くすることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0057】
[EGR弁の構成について]
この実施形態のEGR弁14は、外軸52の構成の点で第1実施形態と異なる。
図8に、全閉に動作したEGR弁14を
図7に準ずる簡略化した断面図により示す。この実施形態のEGR弁14の外軸52は、外周部52cに、弁体43の最大外径D2より大きく、リップシール51に接触可能な外径D4を有する拡径部52bが設けられる。この拡径部52bの上端部52ba(一端部)は、内側空間53に面して配置され、反対側の下端部52bb(他端部)は、弁体43へ向いて配置されることで流路29(下流側流路48b)に面して配置される。
【0058】
この実施形態のEGR弁14の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を有する。すなわち、拡径部52bの下端部52bb(他端部)が弁体43へ向いて配置されることで流路29(下流側流路48b)に面するので、流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧が、拡径部52bの下端部52bbに作用し、外軸52を介して弁体43が弁座30に着座する方向に付勢される。従って、その付勢力の分だけ弁体43を弁座30から離間させる方向へ作用する高い吸気負圧による付勢力が更に低減される。この場合、弁体43の前後差圧により弁体43が弁座30に押し付けられることになる。このため、EGR弁14の全閉時に、流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧により弁体43が不用意に開弁することをより確実に防止することができる。
【0059】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0060】
[EGR弁の構成について]
この実施形態のEGR弁14は、作用圧低減手段50の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図9に、全閉に動作したEGR弁14を
図7に準ずる簡略化した断面図により示す。この実施形態の作用圧低減手段50は、弁軸42上にて弁体43から離れて設けられ、リップシール51に接触可能な外周部56cと、弁体43の基部43bに対向することで流路29(下流側流路48b)に面する下面56aa(他端部)とを含み、内側空間53を閉鎖する閉鎖部材56により構成される。この実施形態の閉鎖部材56は、有底な短円筒形状をなし、弁軸42が貫通する底壁56aと、リップシール51に接触可能な外周部56cを含む周壁56bとを含む。この実施形態で、周壁56bは、弁体43の最大外径D2より大きい外径D5を有する。周壁56bの上端部56ba(一端部)は、内側空間53に面して配置され、底壁56aの下面56aa(他端部)は、流路29(下流側流路48b)に面して配置される。
【0061】
この実施形態のEGR弁14の構成によれば、前記各実施形態の作用及び効果と異なり次のような作用及び効果を有する。すなわち、閉鎖部材56の上端部56ba(一端部)が内側空間53に面するので、弁体43には、弁体43が弁座30に着座する方向へ閉鎖部材56を介して内側空間53から大気圧が作用する。従って、流路29(下流側流路48b)にて弁体43を弁座30から離間させる方向へ高い吸気負圧が作用しても、閉鎖部材56に作用する大気圧の分だけ弁体43の基部43bの側に作用する高い吸気負圧による付勢力が低減される。また、閉鎖部材56の下面56aa(他端部)が弁体43の基部43bに対向することで流路29(下流側流路48b)に面するので、流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧が、閉鎖部材56を介して、弁体43が弁座30に着座する方向に作用する。従って、閉鎖部材56に作用する高い吸気負圧の分だけ弁体43を弁座30から離間させる方向へ作用する高い吸気負圧による付勢力が低減される。この場合、弁体43の前後差圧により弁体43が弁座30に押し付けられる。このため、EGR弁14の全閉時に、流路29(下流側流路48b)に作用する高い吸気負圧により弁体43が不用意に開弁することをより確実に防止することができる。
【0062】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0063】
[EGR弁の構成について]
この実施形態は、EGR弁の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図10に、全閉に動作したEGR弁19を断面図により示す。この実施形態のEGR弁19は、ハウジング41が、外ハウジング61、内ハウジング62及び軸受ハウジング63の他に、EGRガスが流れる流路66を有する流路ハウジング67を更に備える。流路ハウジング67は、流路66の入口68と出口69を有する。流路66には、弁体43の先部43aが着座又は離間する弁座30が設けられる。流路66は、弁座30を境としてステップモータ44から遠い下側の上流側流路66aとステップモータ44に近い上側の下流側流路66bに分かれる。弁体43は、下流側流路66bにて弁座30に着座可能に配置される。流路ハウジング67の入口68の外周には、EGR通路の上流側(図示略)に接続される入口フランジ67aが形成され、出口69の外周には、EGR通路の下流側(図示略)に接続される出口フランジ67bが形成される。その他の構成は、第1実施形態で説明したEGR弁14のそれと同じである。
【0064】
この実施形態のEGR弁19の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を有する。すなわち、ハウジング41を構成する流路ハウジング67に流路66と弁座30が一体に設けられるので、EGR弁19を流路と弁座を有する別の相手部材に組み付ける必要がない。このため、EGR弁19それのみをEGRガスが流れるEGR通路の任意の位置に接続するだけで、EGRガスの流量制御に使用できるようになる。
【0065】
なお、この開示技術は前記実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0066】
(1)前記第2実施形態では、外軸52の外周部52cに拡径部52bを設けたが、前記第3実施形態の閉鎖部材56の外周部46cにも拡径部を設けることができる。
【0067】
(2)前記各実施形態では、EGRクーラ13へ流れるEGRガスをバイパスするバイパス通路と、バイパス通路を開閉するバイパス弁を設けていないが、これらバイパス通路とバイパス弁を設けてもよい。
【0068】
(3)前記第4実施形態において、内ハウジング62と流路ハウジング67を一体に成形することもできる。
【0069】
(4)前記各実施形態では、流体制御弁をEGRガスの流量を制御するEGR弁14,19に具体化したが、EGRガス以外の流体(例えば、吸気)を制御する弁装置(例えば、アイドル・スピード・コントロール・バルブ(ISCV))に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この開示技術は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに装備するEGR装置に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
13 EGRクーラ
14 EGR弁(流体制御弁)
19 EGR弁(流体制御弁)
23 入口
24 出口
29 流路
30 弁座
41 ハウジング
42 弁軸
43 弁体
43a 先部
43b 基部
44 ステップモータ(アクチュエータ)
45 スプリング
48 一連の流路
48a 上流側流路
48b 下流側流路
50 作用圧低減手段
51 リップシール(シール部材)
52 外軸(作用圧低減手段)
52a 上端部(一端部)
52b 拡径部
52ba 上端部(一端部)
52bb 下端部(他端部)
52c 外周部
53 内側空間
54 大気通路
56 閉鎖部材(作用圧低減手段)
56aa 下面(他端部)
56c 外周部
56ba 上端部(一端部)
66 流路
66a 上流側流路
66b 下流側流路