(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006842
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】宿泊施設人格分析装置、宿泊施設人格分析システム、宿泊施設人格分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/12 20120101AFI20220105BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220105BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20220105BHJP
【FI】
G06Q50/12
G06Q50/06
G06Q30/02 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109353
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】517417739
【氏名又は名称】株式会社サクラクオリティマネジメント
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】特許業務法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 剛史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
5L049CC23
(57)【要約】
【課題】宿泊施設について、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格を適正に分析する。
【解決手段】本発明は、宿泊施設に係るアンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部11aと、アンケートの調査結果を集計する集計部11bと、集計結果を読み出し、宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部11cとを有する宿泊施設人格分析装置である。人格分析部11cは、アンケートの調査結果より、サービス要素に関連して、顧客が推測するであろう人格特性の連想割合を抽出し、抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定し、サービス要素別に、人格特性の連想割合に充足率を反映し、全てのサービス要素にわたって、各人格特性の充足率反映後の連想割合のうち、値が0でないものの平均値を算出し、人格分析の結果を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿泊施設に係るアンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部と、
前記アンケートの調査結果を集計する集計部と、
前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部と、を有する
宿泊施設人格分析装置。
【請求項2】
上記人格分析部は、前記アンケートの調査結果より、サービス要素に関連して、顧客が推測するであろう人格特性の連想割合を抽出し、前記抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定し、前記サービス要素別に、人格特性の連想割合に充足率を反映し、全てのサービス要素にわたって、各人格特性の充足率反映後の連想割合のうち、値が0でないものの平均値を算出し、人格分析の結果を出力する
請求項1に記載の宿泊施設人格分析装置。
【請求項3】
前記連想割合とは、各人格特性を感じるかという問いについてのYes/Noの2択について、Yesと回答した割合であり、
前記充足率とは、前記サービス要素の調査項目でYesと回答した数を当該サービス要素の調査項目数で乗算した値である
請求項2に記載の宿泊施設人格分析装置。
【請求項4】
前記人格分析部は、前記抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定するときには、前記サービス要素の各人格特性の連想割合の中で、所定の変動係数未満となるものを重視すべき要素として特定し、
前記変動係数とは、前記サービス要素の人格特性の連想割合の分布に係る標準偏差を前記サービス要素の人格特性の連想割合の値の平均値で除算した値である
請求項2又は請求項3に記載の宿泊施設人格分析装置。
【請求項5】
前記サービス要素は、バリアフリー、維持管理、清潔感、プライバシー、安心安全、正確性、迅速性、環境配慮、機能性、丁寧さ、快適性、海外対応、業務専念、情報提供、顧客配慮、地域文化性、共感性、積極性、及び意匠性であり、
前記人格特性には、神経質傾向、誠実性、外向性、協調性、経験への開放、男性的、女性的であるかを含む
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の宿泊施設人格分析装置。
【請求項6】
調査員の端末装置、ユーザの端末装置と、宿泊施設人格分析装置とからなる宿泊施設人格分析システムにおいて、
前記調査員の端末装置は、
アンケートの調査結果を送信する第1送信部、を有し、
前記宿泊施設人格分析装置は、
前記アンケートの調査結果を受信する第1受信部と、
前記アンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部と、
前記アンケートの調査結果を集計する集計部と、
前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部と、
前記分析結果に係る表示データを生成する表示データ生成部と、
前記表示データを前記ユーザの端末装置に送信する第2送信部と、を有し、
前記ユーザの端末装置は、
前記表示データを受信する第2受信部と、
前記表示データに基づく表示を行う表示部と、を有する
宿泊施設人格分析システム。
【請求項7】
調査員の端末装置、ユーザの端末装置と、宿泊施設人格分析装置とからなる宿泊施設人格分析システムによる方法であって、
前記調査員の端末装置が、
アンケートの調査結果を送信し、
前記宿泊施設人格分析装置が、
前記アンケートの調査結果を受信し、
前記アンケートの調査結果を受け付け、
前記アンケートの調査結果を集計し、
前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力し、 前記分析結果に係る表示データを生成し、
前記表示データを前記ユーザの端末装置に送信し、
前記ユーザの端末装置では、
前記表示データを受信し、
前記表示データに基づく表示を行う
宿泊施設人格分析方法。
【請求項8】
コンピュータを、
宿泊施設に係るアンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部、
前記アンケートの調査結果を集計する集計部、及び、
前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部、として機能させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格を適正に分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテルや旅館等の宿泊施設では、来客数、更には顧客単価を増加させるべく、サービスの向上を心掛けている。そして、そのようなサービスの向上を図るために、自施設のサービスの現状の見直し、更なる付加的なサービスの導入を検討しているが、そのような見直しを行うためには、顧客による客観的な評価が極めて参考になる。そこで、多くの宿泊施設では、顧客によるアンケートを実施し、当該アンケート結果に基づいて、自施設の見直し等を行っているのが実情である。そして、そのような見直しを効率よく行うために、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、所定属性の宿泊施設に対して専門家が過去実施した評価の各項目と、当該項目に関する評価結果に応じて当該専門家が評価レポートに記載した文章とを対応付けたテーブルを記憶し、ユーザ指定の属性に応じた宿泊施設に係る各評価項目に関してユーザが下した評価結果を取得し、評価レポートを生成する宿泊施設評価支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格を分析し、当該分析結果に基づいて最適な提案をすることは開示されていない。
【0006】
ここで、「宿泊施設の人格」とは、ホテルや旅館の宿泊体験を経て、事業用不動産を擬人化する、あるいは、支配人等の顧客が接した実際のヒューマンウェア・パーソナリティが複雑な体験をシンプル化する過程において生じる現象として捉えることができる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格を適正に分析することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る宿泊施設人格特性分析装置は、宿泊施設に係るアンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部と、前記アンケートの調査結果を集計する集計部と、前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部と、を有する。
【0009】
本発明の第2の態様に係る宿泊施設人格分析装置は、第1の態様において、上記人格分析部は、前記アンケートの調査結果より、サービス要素に関連して、顧客が推測するであろう人格特性の連想割合を抽出し、前記抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定し、前記サービス要素別に、人格特性の連想割合に充足率を反映し、全てのサービス要素にわたって、各人格特性の充足率反映後の連想割合のうち、値が0でないものの平均値を算出し、人格分析の結果を出力する。
【0010】
本発明の第3の態様に係る宿泊施設人格分析装置は、第2の態様において、前記連想割合とは、各人格特性を感じるかという問いについてのYes/Noの2択について、Yesと回答した割合であり、前記充足率とは、前記サービス要素の調査項目でYesと回答した数を当該サービス要素の調査項目数で乗算した値である。
【0011】
本発明の第4の態様に係る宿泊施設人格分析装置は、第2又は第3の態様において、前記人格分析部は、前記抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定するときには、前記サービス要素の各人格特性の連想割合の中で、所定の変動係数未満となるものを重視すべき要素として特定し、前記変動係数とは、前記サービス要素の人格特性の連想割合の分布に係る標準偏差を前記サービス要素の人格特性の連想割合の値の平均値で除算した値である。
【0012】
本発明の第5の態様に係る宿泊施設人格分析装置は、第1乃至第4の態様において、前記サービス要素は、バリアフリー、維持管理、清潔感、プライバシー、安心安全、正確性、迅速性、環境配慮、機能性、丁寧さ、快適性、海外対応、業務専念、情報提供、顧客配慮、地域文化性、共感性、積極性、及び意匠性であり、前記人格特性には、神経質傾向、誠実性、外向性、協調性、経験への開放、男性的、女性的であるかを含む。
【0013】
本発明の第6の態様に係る宿泊施設人格分析システムは、調査員の端末装置、ユーザの端末装置と、宿泊施設人格分析装置とからなる宿泊施設人格分析システムにおいて、前記調査員の端末装置は、アンケートの調査結果を送信する第1送信部、を有し、前記宿泊施設人格分析装置は、前記アンケートの調査結果を受信する第1受信部と、前記アンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部と、前記アンケートの調査結果を集計する集計部と、前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部と、前記分析結果に係る表示データを生成する表示データ生成部と、前記表示データを前記ユーザの端末装置に送信する第2送信部と、を有し、前記ユーザの端末装置は、前記表示データを受信する第2受信部と、前記表示データに基づく表示を行う表示部と、を有する。
【0014】
本発明の第7の態様に係る宿泊施設人格分析方法は、調査員の端末装置、ユーザの端末装置と、宿泊施設人格分析装置とからなる宿泊施設人格分析システムによる方法であって、前記調査員の端末装置が、アンケートの調査結果を送信し、前記宿泊施設人格分析装置が、前記アンケートの調査結果を受信し、前記アンケートの調査結果を受け付け、前記アンケートの調査結果を集計し、前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力し、前記分析結果に係る表示データを生成し、前記表示データを前記ユーザの端末装置に送信し、前記ユーザの端末装置では、前記表示データを受信し、前記表示データに基づく表示を行う。
【0015】
本発明の第8の態様に係るプログラムは、コンピュータを、宿泊施設に係るアンケートの調査結果を受け付ける入出力制御部、前記アンケートの調査結果を集計する集計部、及び、前記集計結果を読み出し、前記宿泊施設のサービス要素別に、それぞれの人格特性の連想割合に係る値に基づいて、前記宿泊施設の人格分析を行い、分析結果を出力する人格分析部、として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格を適正に分析する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る宿泊施設人格分析システムの構成図である。
【
図2】同システムの宿泊施設人格分析装置の構成図である。
【
図4】同システムによる人格分析の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】人格分析結果を可視化したイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
本願においては、「宿泊施設の人格」を、ホテルや旅館の宿泊体験を経て、事業用不動産を擬人化するあるいは、支配人等の顧客が接した実際のヒューマンウェア・パーソナリティが複雑な体験をシンプル化する過程において生じる現象として捉えることができるものと定義する。
【0020】
発明者により実施されたアンケート調査では、ホテルや旅館での滞在体験を通じて「これまでにホテル・旅館に対し人格を感じたことがあるか」という質問に対して、約21%の人が「ある」と回答している。これを施設カテゴリーで見ると、人格性を感じたという対象の約46%が旅館であった。また、約28%がリゾートホテルであり、約19%がシティホテル、約7%がビジネスホテルという結果であった。さらに、「人格を感じたホテルにまた行きたいか」という質問に対しては、約88%の人が「頻繁に行きたい~いつか行きたい」と回答している。
【0021】
人格の源泉を探ると、「感じた人格が具体的に『誰』に近いと思うか」という質問に対しては、多くの人が「フロントスタッフ」や「接したスタッフ」に近いと回答している。また、旅館では特に「女将」の影響を強く受けているようであった。
【0022】
これらスタッフ以外で、人格性の源泉を探ったところ、「全体を通じて自然に生じていると思う」という回答が多く、その他「ブランド」、「支配人」、「客層」へと続いた。人格発現の契機がどのようなものであれ、このようにホテルの人格が生じた際、顧客のリピーター化に大きく貢献することが明らかとなった。
【0023】
また、発明者による別の調査では、人格と客層の統一感と満足度との関係を追及した調査も行った。その結果、「ホテルの人格が客層の統一感を連想させ、この客層の統一感が満足度を助長させる」と解釈することができた。
【0024】
ここで、さらに踏み込んで、望ましい「人格」とはどのような人格であるかという視点ついて言及する。先ずは、今回の調査結果を紹介する(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2020年実施)。本調査では、女性っぽい印象を感じるホテルと、男性っぽい印象を感じるホテルがある場合、どちらを望ましいと感じるかという調査を行った。その結果、女性っぽいホテルを望ましいと考える人の割合が10%、やや女性っぽいホテルを望ましいと考える人の割合が29%と合計39%が女性っぽいホテルを望ましいと考え、一方男性っぽいホテルを望ましいと考える人の割合が1.5%、やや男性っぽいホテルを望ましいと考える人の割合が6.5%と男性っぽいホテルを望ましいと考える人の割合は合計8%という結果であった。
【0025】
「どちらでもない」と回答した人(全体の53%)は、男性っぽいホテル、女性っぽいホテルのいずれであっても、実際のサービスが良ければ支持してくれる客層だと考えますと、女性っぽいとの印象を与えるホテルは相対的に大きな顧客満足度に繋がる可能性が考えられる。
【0026】
つまり、宿泊施設の体験を通じて、顧客は人格を感じる傾向があり、望ましい人格を造ることで、共感する顧客を生み出すことができる。そのためには、人格特性を定量化する必要がある。そこで、本願発明では、この定量化を実施する。
【0027】
さらに、ホテルや旅館の人格については、宿泊施設に求められている品質をサービスの正確性や迅速性等19のサービス要素に分類し、それぞれのサービス要素に対して、様々な人格特性に対して当該サービス要素が充足される場合にどれほどその人格を感じるかを調査、さらに覆面調査を実施し、各サービス要素の基準充足率を査定することで、どれほどの顧客が各人格特性を感じやすいかを定量化し、人格特性(性格等)を視覚化する。
【0028】
本発明の実施形態では、覆面調査により人格特性を類推し、且つ様々な調査項目を個別に以下のような人格に大きな影響を与えるであろう項目を確認する等を行い、調査対象施設の人格特性を類推する。以下、詳述する。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態に係る宿泊施設人格分析システムの構成を示し説明する。
【0030】
同図に示されるように、本発明の一実施形態に係る宿泊施設人格分析システムは、宿泊施設人格分析装置1と、調査員の端末装置2と、ユーザの端末装置3とが、インターネット等の通信網4を介して無線又は有線で接続され、構成されている。ここでいう「ユーザ」とは、評価業務を請け負ったコンサルタントやホテルや旅館等の宿泊施設の経営者等である。但し、これに限定されない。宿泊施設人格分析装置1としては、パーソナルコンピュータやサーバ装置等を採用することができる。また、端末装置2,3としては、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等、各種のものを採用することができる。
【0031】
このような構成において、宿泊施設人格分析装置1は、調査員の端末装置2からの調査結果を受信すると、当該調査結果を集計し、詳細は後述するように宿泊施設の人格分析を行う。そして、人格分析の結果に係る表示データを生成し、ユーザの端末装置3に送信する。ユーザの端末装置3では、可視化された宿泊施設の人格分析の結果を確認することが可能となる。宿泊施設人格分析装置1は、人格分析の結果を上記送信に止まらず、様々な形で出力することが可能である。例えば、宿泊施設の人格分析の結果を可視化してレポート形式に落とし込み、報告書として出力することも可能であり、モニター上に可視化された報告内容を表示することも可能である。
【0032】
図2には、宿泊施設評価システムの宿泊施設人格分析装置の構成を示し説明する。
【0033】
同図に示されるように、宿泊施設人格分析装置1は、全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等からなる制御部11を備えている。制御部11は、バスライン18を介して、通信部12、記憶部13と接続されている。通信部12は、インターネット等の通信網4を介して、調査員の端末装置2やユーザの端末装置3と通信するための通信インタフェースである。
【0034】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)RAM(Read Only Memory)等のメモリやハードディスクドライブ(HDD;Hard Disc Drive)等で構成されており、制御部11で実行されるプログラムを記憶している。記憶部13は、ユーザ記憶部14、調査結果記憶部15、及び人格分析用記憶部16を少なくとも有している。
【0035】
より詳細には、ユーザ記憶部14は、ユーザIDと紐づけて、ユーザであるホテルや旅館等の宿泊施設の名称、住所、電話番号、担当者名、電子メールアドレス等を記憶している。調査結果記憶部15は、調査員の端末装置2から送られてきた各宿泊施設の調査結果に係るデータを、ユーザIDと紐づけて記憶している。そして、人格分析用記憶部16は人格分析に用いるデータ(調査結果の集計データ)、演算過程のデータ、及び人格分析の結果等を、ユーザIDと紐づけて記憶している。
【0036】
このような構成において、制御部11は、記憶部13のプログラム14を実行することで、入出力制御部11a、集計部11b、人格分析部11c、学習部11d、表示データ生成部11e、及び送受信制御部11fとして機能する。
【0037】
入出力制御部11bは、調査員の端末装置2から送信された調査結果等の入出力を受け付ける。本実施形態では、調査員による調査項目は2140項目に及び、受付けからチェックアウト等に至るまでの時系列的に並ぶサービスシーン別、及びサービス要素別にカテゴライズされている。入力された調査結果は、記憶部13の調査結果記憶部15に適宜記憶される。入出力制御部11bは、また、人格分析部11cによる分析結果を出力する役割も担っている。集計部11bは、調査結果記憶部15に記憶されている調査結果を集計する。この集計データは、人格分析用記憶部16に記憶される。
【0038】
人格分析部11cは、人格分析用記憶部16を適宜参照して、ホテルや旅館等の宿泊施設の人格分析を実行する。
【0039】
より詳細には、人格分析部11cは、調査結果より、各サービス要素に関連して、顧客が推測するであろう人格特性の連想割合を抽出し、その中で重視すべきサービス要素を特定し、サービス要素別に充足率を反映させ、各人格特性を感じる割合にサービス要素別基準充足率を乗算し、平均値を演算し、分析結果を出力する。
【0040】
表示データ生成部11fは、分析結果についてHTML等で表示データを生成する。そして、送受信制御部11gは、このHTML等で生成された表示データをユーザの端末装置3に送信するよう制御する。学習部11eは、分析が繰り返される中で蓄積される調査結果のデータ、及びその分析結果等について機械学習を実施し、その学習結果に基づいて人格分析用記憶部16の分析基準等を適宜更新することで、分析の精度を高める役割を担っている。
【0041】
図3には、端末装置の構成を示し説明する。端末装置2,3は、同一構成であることから、ここでは端末装置2を例示して、構成及び作用を説明する。
【0042】
同図に示されるように、端末装置2(3も同様)は、制御部21と、通信部22と、操作部23と、表示部24と、記憶部25とを有する。各部21~25は、バスライン26を介して通信自在に接続されている。通信部22は、例えば、NIC等により実現されるもので、インターネット等の通信網4と有線又は無線で接続され、宿泊施設人格分析装置1等との間で通信を行う通信インタフェースである。操作部23は、マウスやキーボード等で実現され、ユーザによる各種操作入力を受け付ける。表示部24は、液晶ディスプレイ等により実現され、各種表示を行う。尚、操作部23と表示部24とをタッチパネルとして一体に構成してもよい。記憶部25は、例えば、RAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD、または光ディスク装置等で実現されるもので、制御部21で実行されるプログラムを記憶している。
【0043】
制御部21は、CPUやMPU等で実現され、記憶部25に記憶されているプログラムを実行することで、受信部21a、閲覧部21b、送信部1cとして機能する。なお、制御部21は、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてよい。
【0044】
受信部21aは、宿泊施設人格分析装置1から送られていた表示データ等を、通信部22を介して、受信する。閲覧部21bは、表示データに基づく表示を表示部24に行い閲覧可能とする。そして、送信部21cは、調査結果に係るデータ等を、通信部22を介して、宿泊施設人格分析装置1に送信する。
【0045】
以下、
図4のフローチャートを参照して、本発明の一実施形態に係る宿泊施設人格分析システムによる人格分析の処理手順を示し説明する。ここでは、
図5乃至
図7を適宜参照しつつ説明を進める。
【0046】
前提として、調査員は、本実施形態では19のサービス要素のそれぞれについて、人格特性、即ち、神経質傾向、誠実性、外向性、協調性、経験への開放(好奇心、アイディア等)、男性的、女性的であるか等を連想するかアンケート調査しており、回答者の年齢層(若年層、中年層、高年層等)についても、回答内容から特定している。調査員の端末装置2は、宿泊施設人格分析装置1に、アンケートの調査結果に係るデータを送信する。あるいは、これら調査結果に係るデータを宿泊施設人格分析装置1に入力する。受信ないしは入力された調査結果に係るデータは、調査結果記憶部15に記憶されると共に、集計部11bにより読みだされ、回答内容が集計される。
【0047】
上記前提となる処理の後、人格分析部11cは、アンケートの調査結果より、本実施形態では、19のサービス要素に関連して、顧客が推測するであろう人格特性の連想割合を抽出する(S1)。その結果は、
図5に示される通りである。ここで、19のサービス要素とは、本実施形態では、バリアフリー、維持管理、清潔感、プライバシー、安心安全、正確性、迅速性、環境配慮、機能性、丁寧さ、快適性、海外対応、業務専念、情報提供、顧客配慮、地域文化性、共感性、積極性、及び意匠性である。但し、これらには限定されない。人格特性とは、この例では、神経質傾向、誠実性、外向性、協調性、経験への開放(好奇心、アイディア等)、男性的、女性的であるか等であり、回答者の年齢層(若年層、中年層、高年層)も含まれる。但し、これらには限定されない。連想割合とは、各人格特性を感じるかという問いについてのYes/Noの2択について、Yesと回答した割合である。但し、これには限定されない。
【0048】
続いて、人格分析部11cは、
図5に示されるように、抽出された連想割合の中から重視すべき要素を特定する(S2)。より具体的には、人格分析部11cは、19のサービス要素の各人格特性の連想割合の中で、所定の変動係数未満となるものを重視すべき要素として特定する。ここで、変動係数とは、標準偏差/平均値である。標準偏差とは、19のサービス要素の人格特性の連想割合の分布に係る標準偏差である。平均値とは、19のサービス要素の人格特性の連想割合の値の平均値である。このように、重要度の高いもののみを採用し、重要度が低いものを考慮外とすることで分析の純度を高めている。その結果は、
図6に示される通りである。重視しない要素については、連想割合を0%に置き換えて、以降の処理に影響しないように除外している。
【0049】
次いで、人格分析部11cは、この例では、19のサービス要素別に、人格特性の連想割合に充足率を反映(乗算)する(S3)。ここで、充足率とは、例えば、あるサービス要素に関する調査項目が200項目ある場合に、100項目がYesであれば、当該サービス要素に関する充足率は50%となる。即ち、あるサービス要素の調査項目でYesと回答した数を当該サービス要素の調査項目数で乗算した値が充足率となる。各サービス要素により、人格への影響が異なることから、それぞれ充足率を反映している。続いて、人格分析部11cは、全てのサービス要素にわたって、各人格特性の充足率反映後の連想割合のうち、値が0%でないものの平均値を算出する(S4)。その結果は、例えば
図7に示される通りである。こうして、人格分析部11cは、人格分析の結果を出力し(S5)、人格分析に関わる全ての処理を終了する。
【0050】
【0051】
図8(a)の表示例では、19のサービス要素別に、充足率を示しており、各サービス要素が、人格特性にいかに影響を与えているかを把握可能としている。
【0052】
図8(b)の表示例では、人格特性に係る連想割合の充足率反映後の平均値を示しており、分析対象の宿泊施設が、どのような人格特性となるかを把握可能としている。
【0053】
以上説明した本発明の実施形態に係る宿泊施設人格分析システム等によれば、分析対象の宿泊施設に関わるアンケートの調査結果に基づいて、サービス要素別に人格特性の連想割合を分析し、いかなる人格特性が強いのか、即ち宿泊施設の人格を分析し、分析結果を可視化して提示することが可能となる。
【0054】
本願発明では、「宿泊体験全体を通じ感じ取った顧客ニーズに沿う品質のサービス要素別人格特性」×「細かな運営内容」×「実際に接したスタッフの印象や客層、ブランド等の印象を確認」=「人格」に繋がっており、さらに「人格」が「客層の統一感」を経て、「満足度」を助長する関係が認められることから、ベースとなるホテルの「人格」を適切に分析し、コーディネートすべく改善提案することで、顧客が抱くホテルの印象を望ましい形で綿密に導くことも可能となり、その効果は非常に大きい。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0056】
例えば、サービス要素は、前述した19のサービス要素には限定されず、また人格特性についても、前述したものには限定されず、種々のものを採用することができる。
【0057】
本発明の産業上の利用可能性としては、ホテルのほか、旅館についても適用可能であることは勿論である。共通となる安心感に関する各基準について、それぞれホテルでの解釈と旅館での解釈とを使い分けることで、全国の様々な旅館、例えば、伝統的な旅館から一部客室はホテルである旅館等、全国の旅館すべてに対応が適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…宿泊施設人格分析装置、2…情報端末、3…情報端末、4…通信網、11…制御部、11a…入出力制御部、11b…演算処理部、11c…人格分析部、11d…学習部、11e…表示データ生成部、11f…送受信制御部、12…通信部、13…記憶部、14…ユーザDB、15…調査結果DB、16…人格分析用DB16、21…制御部,21a…受信部、21b…閲覧部、21c…送信部、22…通信部、23…操作部、24…表示部、25…記憶部。