(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068446
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】アクセルペダル踏み間違い防止装置
(51)【国際特許分類】
B60K 28/10 20060101AFI20220427BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
F02D11/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177118
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康晴
(72)【発明者】
【氏名】市橋 満
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 淳太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 智章
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】太田 昌宏
【テーマコード(参考)】
3D037
3G065
【Fターム(参考)】
3D037EA08
3D037EB16
3D037FA24
3D037FB00
3D037FB09
3G065BA06
3G065CA17
3G065FA08
3G065GA11
3G065GA46
(57)【要約】
【課題】車両の全速度領域でアクセルペダルの踏み間違いを検知して制御できるアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供する。
【解決手段】本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置10は、車両の速度領域を複数の領域に分割し、分割された各速度領域において車速とアクセル信号に基づいて、前記アクセル信号の異常変化を検知したときにエンジン出力の上昇を制限する制御又は設定速度を超えたときに警告を行う信号切り替え制御部20を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度領域を複数の領域に分割し、分割された各速度領域において車速とアクセル信号に基づいて、前記アクセル信号の異常変化を検知したときにエンジン出力の上昇を制限する制御又は設定速度を超えたときに警告を行う信号切り替え制御部を備えたことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたアクセルペダル踏み間違い防止装置であって、
前記分割された複数の速度領域のうち車速が0から所定速度の低速領域において、
前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知したときにエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号に切り替えて前記エンジン出力の上昇を制限する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたアクセルペダル踏み間違い防止装置であって、
前記分割された複数の速度領域のうち前記低速領域よりも速い中速領域において、
前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知した後、さらに継続して加速されて前記中速領域を超えたときにエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号に切り替えて前記エンジン出力の上昇を制限する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたアクセルペダル踏み間違い防止装置であって、
前記分割された複数の速度領域のうち前記中速領域よりも速い高速領域において、
前記信号切り替え制御部は、車速が設定速度に達したときに、アクセル操作の注意を促す警告を発する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載のアクセルペダル踏み間違い防止装置であって、
前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知した後、前記アクセル信号の上昇が継続して検出されなくなったとき、前記疑似アクセル信号に切り替えずに現状の前記アクセル信号が車載ECUに出力される制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いを防止するアクセルペダル踏み間違い防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いによる痛ましい人身事故が多発している。
このような状況に鑑み、従来、種々のアクセルペダル踏み間違い防止装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示の装置は、セーフティーモードのときに車速が所定値以下(一例として8km/h以下)の状態でアクセル信号が所定値以上であることを条件としてアクセル信号の変化が異常であると判断し、車載ECUによるエンジン出力の上昇を制限するようにアクセル信号と異なる疑似アクセル信号が車載ECUに出力される。また通常走行時には踏込量に応じたエンジン出力を得ている。これにより低速運転時でアクセルペダルが強く踏み込まれたときにはエンジン出力の上昇を制限することによって、急発進が防止できる。
【0004】
特許文献1の装置は通常走行時にアクセルペダルが強く踏みこまれた場合にアクセル信号の異常変化を検出してアクセル信号より小さな疑似アクセル信号が車載ECUに出力される(段落番号0073~0079参照)。しかしながら低速走行時と通常走行時において、アクセルペダルを強く踏みこまなければならない場面で、同様の制御方法にて疑似アクセル信号が出力されると運転手の意に反して途中で減速してしまうおそれがある。よって低速走行時と通常走行時では運転手の意に反した急加速をそれぞれ適正に検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、車両の全速度領域でアクセルペダルの踏み間違いを検知して制御できるアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、車両の速度領域を複数の領域に分割し、分割された各速度領域において車速とアクセル信号に基づいて、前記アクセル信号の異常変化を検知したときにエンジン出力の上昇を制限する制御又は設定速度を超えたときに警告を行う信号切り替え制御部を備えたことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、車両の全速度領域においてアクセル信号の異常変化を検出してエンジン出力の上昇を制限する制御又は警告を行うことができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記分割された複数の速度領域のうち車速が0から所定速度の低速領域において、
前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知したときにエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号に切り替えて前記エンジン出力の上昇を制限する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、低速領域において、アクセルペダルの踏み間違いを検知して急発進を防止することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第2の手段において、前記分割された複数の速度領域のうち前記低速領域よりも速い中速領域において、
前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知した後、さらに継続して加速されて前記中速領域を超えたときにエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号に切り替えて前記エンジン出力の上昇を制限する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置。
上記第3の手段によれば、中速領域において、アクセルペダルの踏み間違いを検知して急加速を防止することができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第3の手段において、前記分割された複数の速度領域のうち前記中速領域よりも速い高速領域において、
前記信号切り替え制御部は、車速が設定速度に達したときに、アクセル操作の注意を促す警告を発する制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、高速領域で走行中の場合、警告を発することにより運転者に注意を促すことができる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1ないし第4のいずれか1の手段において、前記信号切り替え制御部は、前記アクセル信号の異常変化を検知した後、前記アクセル信号の上昇が継続して検出されなくなったとき、前記疑似アクセル信号に切り替えずに現状の前記アクセル信号が車載ECUに出力される制御を行うことを特徴とするアクセルペダル踏み間違い防止装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば、アクセル信号の異常変化を検知した後であっても、疑似アクセル信号に切り替えられずに現状のアクセル信号が出力されて、通常走行が妨げられることがない。一例として、上り坂を走行中にアクセルペダルを強く踏み込んでも、アクセルペダルを緩めることにより疑似アクセル信号が出力されることを回避して運転手の意思に反した減速を回避できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば全速度領域におけるアクセルペダルの踏み間違いを検知して走行中の急発進又は急加速を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置の構成概略図である。
【
図2】本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置を用いた処理フロー図である。
【
図3】低速・中速・高速の速度領域におけるアクセル信号又は車速と時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0015】
(アクセルペダル踏み間違い防止装置10)
図1は、本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置の構成概略図である。
本実施形態における車両の速度領域は、一例として、低速領域を0~10km/h、中速領域を10~50km/h、高速領域を50km/h以上として、以下説明する。しかしながら上記速度領域は、運転手が任意に設定変更でき、かつ2つ以上に分割することができる。
図示のように本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置10は、アクセルペダルのアクセルユニット12と車載ECU14(エンジン コントロール ユニット)の間に接続している。通常、アクセルユニット12は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた電圧のアクセル信号を車載ECU14に出力している。車載ECU14は入力したアクセル信号の電圧の大きさからアクセルペダルの踏み込み量を検出して踏込量に相当する制御信号を車両の動力源、一例として内燃機関駆動源、ハイブリット駆動源、電気式駆動源に出力する。
【0016】
アクセルペダル踏み間違い防止装置10は、信号切り替え制御部20と、検知部30と、速度設定部40と、警告部50を主な基本構成としている。
信号切り替え制御部20は、アクセルユニット12からのアクセル信号と、あらかじめ設定した疑似アクセル信号を受信して、両信号のいずれか一方を選択して車両ECUに出力する信号切り替え制御を行っている。
本実施形態の疑似アクセル信号とは、アクセルユニットからのアクセル信号とは異なり、エンジン出力の上昇を制限するアクセル信号であり、一例としてアイドリング時の電圧のアクセル信号である。
【0017】
検知部30は、車両の速度信号(車速パルス)が入力されて車速に応じたパルス数の車速信号を検知する。検知信号は信号切り替え制御部20に出力される。
速度設定部40は、車両の速度領域を複数の領域に分割し、各速度領域の速度範囲を設定変更できる。速度設定部40は、運転手の任意設定のほか、車両毎に設定変更できる。設定値は検知部30に出力される。
警告部50は、信号切り替え制御部20と電気的に接続し、アクセル信号の異常変化を検知したときに警告を生じるスピーカ又は表示モニタを備えている。異常変化を検知したときには、一例として「アクセル信号の異常(急アクセル)を検知しました」と音声出力又は文字表示、ランプの点灯又は点滅表示などを行う。
【0018】
アクセルペダル踏み間違い防止装置10は、車両の速度領域を複数の領域に分割している。そして分割した各速度領域においてエンジン出力の上昇を制限する制御又は警告をおこなっている。分割する複数の領域は、低速領域(0~10km/h)と通常走行領域(10km/h~)の2分割、又は低速領域(0~10km/h)、中速領域(10~50km/h)、高速領域(50km/h~)の3分割などである。なお中速領域はさらに複数の領域に細分割することもできる。
【0019】
図3は低速・中速・高速の速度領域におけるアクセル信号又は車速と時間の関係を示すグラフである。一例として、速度領域を低速領域、中速領域、高速領域に分割した場合である。
同グラフに示す低速領域は、車両の車速が0~10km/hにおいて、アクセルペダルを急激に踏み込んだり又はベタ踏みしたりしてアクセル信号が最大値の80%に達したときに(同グラフ中のNG(一点・二点鎖線))、アクセル信号の異常変化と認識して、車載ECU14によるエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号(アクセル信号とは異なる電圧であり、一例としてアイドリング時の電圧)を車載ECU14に出力する。これによりエンジンを強制的に停止又はアイドリング状態まで回転数を低下させて、車両の急発進を防止する。
【0020】
なお低速領域内でアクセル信号が最大値の80%に達しないときは(同グラフ中の二点鎖線OK)はアクセルユニット12のアクセル信号に切り替えて車載ECU14に出力される。
またアクセル信号が最大値の80%(所定閾値)は、一例であり、運転手が任意に設定変更できる。
【0021】
同グラフに示す中速領域は、車両の車速が10~50km/hにおいて、アクセルペダルを急激に踏み込んだり又はベタ踏みしたりしてアクセル信号が最大値の80%に達してアクセル信号の異常変化と認識した後、さらに継続して加速されて(アクセルペダルを緩めることなく加速され続けて)、中速領域を超えたときに、車載ECU14によるエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号を車載ECU14に出力する。これにより通常走行中におけるアクセルペダルの踏み間違いを検知して通常走行中の急加速を防止することができる。
なお中速領域内であれば、アクセル信号が最大値の80%に達しても車載ECU14によるエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号を車載ECU14に出力しない。
またアクセル信号の異常変化と認識して、その後アクセル信号の上昇が継続して検出されなくなったときには、疑似アクセル信号に切り替えずに現状の前記アクセル信号を車載ECUに出力する。これにより設定速度に達しても疑似アクセル信号に切り替えられずに現状のアクセル信号が出力されて、通常走行が妨げられることがない。一例として、上り坂を走行中にアクセルペダルを強く踏み込んでも、アクセルペダルを緩めることにより疑似アクセル信号が出力されることを回避して運転手の意思に反した減速を回避できる。
【0022】
また中速領域において、アクセル信号が最大値の80%に達しないときには、アクセルユニット12のアクセル信号に切り替えて車載ECU14に出力される。
また徐々に加速して中速領域の範囲外でアクセル信号が最大値の80%に達した場合には異常変化とは認識されず、アクセルユニット12のアクセル信号に切り替えて車載ECU14に出力される。
同グラフに示す高速領域は、車両の車速が50km/h~において、設定速度に達した場合、運転手にアクセル操作の注意を促す警告を発する。これにより高速走行中に警告を発して運転者に注意を促すことができる。
【0023】
(アクセルペダル踏み間違い防止方法)
上記構成による本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置を用いた踏み間違い防止方法について以下説明する。
図2は本発明のアクセルペダル踏み間違い防止装置を用いた処理フロー図である。
ステップ1:車速が10km/h未満、又はそれ以上であるか否か判断する。
ステップ2:車速が10km/h未満の場合であって、アクセル信号が最大値の80%未満、又はそれ以上であるか否か判断する。
ステップ3:車速が10km/h未満の場合であって、アクセルペダルを急激に踏み込んだり又はベタ踏みしたりしてアクセル信号が最大値の80%以上の場合、アクセル信号の異常変化と認識して、車載ECU14によるエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号を車載ECU14に出力する。これによりエンジンを強制的に停止又はアイドリング状態まで回転数を低下させて、車両の急発進を防止する(低速領域制御)。
【0024】
ステップ4:車速が10km/h未満の場合であって、アクセル信号が最大値の80%未満の場合、疑似アクセル信号を出力する制御を解除して通常のアクセルユニットによるアクセル信号の出力制御に切り替える。
ステップ5:車速が50km/h未満、又はそれ以上であるか否か判断する。
ステップ6:車速が50km/h未満の場合であって、アクセル信号が最大値の80%未満、又はそれ以上であるか否か判断する。
ステップ7:車速が50km/h未満(かつ車速が10km/h以上)の場合であって、アクセルペダルを急激に踏み込んだり又はベタ踏みしたりしてアクセル信号が最大値の80%以上に達して、アクセル信号の異常変化と認識した後、さらに継続して加速されて(アクセルペダルを緩めることなく加速され続けて)、中速領域を超えたときに、車載ECU14によるエンジン出力の上昇を制限する疑似アクセル信号(アクセル信号とは異なる電圧)を車載ECU14に出力する。これにより通常走行中におけるアクセルペダルの踏み間違いを検知して通常走行中の急加速を防止することができる(中速領域制御)。
【0025】
ステップ8:車速が50km/h未満の場合であって、アクセル信号が最大値の80%未満の場合、疑似アクセル信号を出力する制御を解除して通常のアクセルユニットによるアクセル信号の出力制御に切り替える。
ステップ9:車速が50km/h以上において、設定速度に達した場合、運転手にアクセル操作の注意を促す警告を発する。これにより警告を発して運転者に注意を促すことができる(高速領域制御)。
【0026】
このような本発明によれば、発進開始後の低速走行でない通常走行の速度領域におけるアクセルペダルの踏み間違いを検知して通常走行中の急加速を防止することができる。また全速度領域においてアクセル信号の異常変化を検出してエンジン出力の上昇を制限する制御又は警告を行うことができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 アクセルペダル踏み間違い防止装置
12 アクセルユニット
14 車載ECU
20 信号切り替え制御部
30 検知部
40 速度設定部
50 警告部