(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068477
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】架線具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/30 20110101AFI20220427BHJP
E04H 17/10 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A01M29/30
E04H17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177181
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】592231446
【氏名又は名称】未来のアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】石澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】嶋倉 智浩
【テーマコード(参考)】
2B121
2E142
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BB27
2B121BB32
2B121DA02
2B121EA21
2B121FA12
2E142AA01
2E142BB01
2E142HH03
2E142HH12
2E142HH25
2E142JJ06
2E142MM12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支柱への着脱操作が容易であり、支柱を中心として、少なくとも2方向に架線部を有する架線具を提供する。
【解決手段】電気柵の支柱に係止する係止部3と、係止部3の支柱への着脱を操作する操作部4と、係止部3から延設された第1の延伸部10及び第2の延伸部11と、導電ワイヤを架線する架線部6と、を有し、操作部4と第1の延伸部10及び第2の延伸部11の間に係止部3が位置し、第1の延伸部10及び第2の延伸部11に複数の第1の架線部6A及び第2の架線部6Bが形成され、操作部4に少なくとも1つの第3の架線部6Cが形成されていることにより、支柱を中心として、少なくとも2方向に架線部6を有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気柵の支柱に係止する係止部と、
前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部と、
前記係止部から延設された延伸部と、
柵線を架線する架線部と、を有し、
前記操作部と前記延伸部の間に前記係止部が位置し、
前記延伸部に複数の前記架線部が形成され、
前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成されていることを特徴とする架線具。
【請求項2】
弾性変形可能な1本のばね線材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の架線具。
【請求項3】
前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され、
前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さく、
前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有し、
前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能であることを特徴とする請求項2に記載の架線具。
【請求項4】
前記架線部が前記柵線を挿通可能な環形状を有ることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の架線具。
【請求項5】
前記支柱に係止した状態で、全ての前記架線部が同一の高さに位置することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の架線具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気柵の柵線を複数列架線する架線具に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、線路、農耕地等に鹿やイノシシ等の動物の侵入を防止するために、道路、線路、農耕地等と野山との境界に電気柵を設けることは一般的に行われている。このような電気柵の複数の柵線を支持する架線金具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された架線金具(1)は、1本のバネ線材を曲げ加工することによって形成されており、導電ワイヤ(31)を保持する架線部(21)と、ポール(30)に取り付けるバネ部(23)と、バネ部(23)の内径を縮径した状態で辺Hに係止される引掛け部(22)と、を有している。そして、架線部(21)を複数形成することで複数の導電ワイヤ(31)を1つの架線金具(1)で保持するものである(特許文献1の
図6及び
図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の架線金具(1)は、引掛け部(22)を辺Hに係止することでバネ部(23)の円柱状空間(P)の内径が縮み、ポール(30)に固定されるようになっている。そのため、引掛け部(22)を辺Hに係止する際や、その係止を解除する際には、作業者が両手を使う必要があった。また、架線金具(1)のポール(30)への取り付け位置を上下方向に調整する場合に、引掛け部(22)と辺Hの係止を解除する必要があり、作業が煩雑であった。
【0006】
さらに、特許文献1には、一側に複数の架線部(21)を形成した架線金具(1)が記載されている(例えば、
図6(c),(f)参照)。また、当該一側から180°反対方向である他側に架線部(21)を形成した架線金具(1)も記載されているが(例えば、
図6(d),(e)参照)、このような場合には、長いバネ線材が必要であると共に、他側に形成された架線部(21)が一側に形成された架線部(21)よりも下側に配置されており、一側に形成された架線部(21)と他側に形成された架線部(21)に架線された導電ワイヤ(31)が同一の高さに架線されないという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は以上の問題点を解決し、支柱への着脱操作が容易であり、支柱を中心として、少なくとも2方向に柵線を架線可能な架線具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る架線具は、電気柵の支柱に係止する係止部と、前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部と、前記係止部から延設された延伸部と、柵線を架線する架線部と、を有し、前記操作部と前記延伸部の間に前記係止部が位置し、前記延伸部に複数の前記架線部が形成され、前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る架線具は、弾性変形可能な1本のばね線材により形成されている場合がある。
【0010】
また、本発明に係る架線具は、前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され、前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さく、前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有し、前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能である場合がある。
【0011】
また、本発明に係る架線具は、前記架線部が前記柵線を挿通可能な環形状を有する場合がある。
【0012】
また、本発明に係る架線具は、前記支柱に係止した状態で、全ての前記架線部が同一の高さに位置する場合がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、架線具を支柱に取り付けた状態で、支柱を中心として、少なくとも2方向に架線部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施例1の操作部を操作していない状態の架線具の平面図である。
【
図3】実施例1の操作部を操作している状態の架線具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、添付
図1~
図10を参照して説明する。以下に説明する実施例は、請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0016】
図1~
図4は本発明の実施例1を示したものであり、架線具1は、1本のばね線材を折り曲げて形成されている。架線具1は、支柱2に係止する係止部3と、係止部3の内径を拡径操作する操作部4と、導電ワイヤ5を保持する架線部6と、を有する。所定の間隔で1列に並列された複数の支柱2に架線具1を取り付け、導電ワイヤ5を架線具1に架線することで電気柵7を形成する。
【0017】
支柱2は、合成樹脂材やグラスファイバー等の絶縁体により略円柱状に形成されている。本実施例の支柱2は地面に立設されるが、例えば、支柱2の下端部に転倒防止用の重りとなる基台(図示せず)を設け、地面に設置するものであってもよい。
【0018】
図1~
図3に示すように、係止部3は、ばね線材を円環状に2周巻いて円筒状に形成されている。操作部4を操作していない状態の係止部3の内径d1は、支柱2の外径D(
図4参照)よりも僅かに小さくなるように形成されており、操作部4を操作して拡径した状態の係止部3の内径d2は、支柱2の外径Dよりも僅かに大きくなる。そのため、操作部4を操作して内径d2の状態の係止部3に支柱2を挿通後、操作部4から手を離し、操作部4を操作しない状態とすることで、係止部3が支柱2に係止し、架線具1が支柱2に保持された状態で取り付けられる。なお、本実施例の係止部3は、ばね線材を円環状に2周巻いて円筒状に形成しているが、支柱2に着脱することができれば、1周又は3周以上巻いて形成してもよい。
【0019】
図1~
図3に示すように、操作部4は、係止部3を形成したばね線材の一端3Aを延長し、長円環状に折り曲げた第1の操作部4Aと、係止部3を形成したばね線材の他端3Bを延長し、長円環状に折り曲げた第2の操作部4Bと、を有している。第1の操作部4Aと第2の操作部4Bを互いに接近させるように操作すると、係止部3を弾性変形させ、係止部3の内径d1を支柱2の外径Dよりも僅かに大きい内径d2とすることができる。操作部4から手を離し、操作部4の操作をやめるとばね線材の弾性により、係止部3は内径d1の状態に復元する。
【0020】
第1の操作部4Aは、ばね線材の一側終端部8Aを有し、一部開口した第1の開口部9Aを有している。また、第2の操作部4Bも一部開口した第2の開口部9Bを有している。
【0021】
図4に示すように、柵線としての導電ワイヤ5は、後述する電源装置12から通電され、動物が導電ワイヤ5に接触することで、動物が感電し、動物を忌避することができる。本実施例の導電ワイヤ5は、後述する第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B及び第3の導電ワイヤ5Cを有する。
【0022】
図1~
図3に示すように、架線部6は、係止部3側から順に第1の架線部6Aと第2の架線部6Bを有する。第1の架線部6Aと第2の架線部6Bは、ばね線材を円環状に1周巻いて形成されている。係止部3と第1の架線部6Aの間には、ばね線材を直線的に延伸した第1の延伸部10を有し、第1の架線部6Aと第2の架線部6Bの間には、ばね線材を直線的に延伸した第2の延伸部11を有する。第1の延伸部10に第1の架線部6Aが形成され、第2の延伸部11に第2の架線部6Bが形成されている。
【0023】
第2の架線部6Bは、ばね線材の他側終端部8Bを有する。第1の延伸部10と第2の延伸部11は、水平方向に一直線上に配置され、第1の架線部6Aと第2の架線部6Bは、第1の延伸部10と第2の延伸部11よりも上側に配置されている。なお、本実施例の第1の架線部6Aと第2の架線部6Bは円環状に形成されているが、導電ワイヤ5を挿通可能な形状であれば、角環状等、他の形状としてもよい。また、第1の延伸部10と第2の延伸部11の長さは、忌避する対象である動物の種類等に応じて適宜決定することができる。そのため、例えば、第1の延伸部10を短く形成することで、第1の導電ワイヤ5Aを支柱2に近接した位置に配置したりすることができる。
【0024】
第2の操作部4Bは、導電ワイヤ5を保持する第3の架線部6Cとしても機能する。よって、本実施例の架線部6は、第1の架線部6A、第2の架線部6B及び第3の架線部6Cを有する。なお、第1の操作部4Aを第3の架線部6Cとして使用してもよいが、第1の開口部を狭くする等、導電ワイヤ5が第1の開口部9Aから外れないようにする必要がある。
【0025】
図4に示すように、導電ワイヤ5は、第1の架線部6Aに挿通される第1の導電ワイヤ5Aと、第2の架線部6Bに挿通される第2の導電ワイヤ5Bと、第3の架線部6Cに挿通される第3の導電ワイヤ5Cと、を有する。導電ワイヤ5には、電気柵7の近傍に設置した電源装置12から通電されている。本実施例では、電源装置12から接続線13A,13B,13Cにより最上段の第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B、第3の導電ワイヤ5Cに通電されている。そして、上中下段の第1の導電ワイヤ5Aは結線14A(渡り線)により接続され、上下の第2の導電ワイヤ5Bは結線14B(渡り線)により接続され、上下の第3の導電ワイヤ5Cは結線14C(渡り線)により接続されている。これにより全ての導電ワイヤ5に電源装置12から通電される。なお、電源装置12は、バッテリー式、太陽光発電式、電池式や、近隣の電柱や住宅から給電するもの等を選択することができる。
【0026】
ここで、架線具1の使用方法について説明する。先ず、複数の支柱2を所定の間隔で1列に並列するように地面に立設する。次に、架線具1の操作部4を操作して係止部3を拡径し、地面に立設した支柱2を挿通させて支柱2に取り付ける。本実施例では、1本の支柱2に対して上下方向に所定の間隔を有して3つの架線具1を取り付ける。その他の支柱2も同様に、同じ高さに架線具1を3つずつ取り付けておく。このとき、各架線具1の向きを統一させる。次に、第1の架線部6A、第2の架線部6B、第3の架線部6C(第2の操作部4B)に、第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B、第3の導電ワイヤ5Cをそれぞれ挿通する。これにより、第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B、第3の導電ワイヤ5Cを水平方向に並列して架線することができる。本実施例では、第1の操作部4Aにも第3の導電ワイヤ5Cを挿通している。なお、支柱2を立設する地面に凹凸や傾斜がある場合には、架線具1を取り付ける高さ方向の位置を調節することで他の支柱2に取り付けた架線具1と同一の高さとなる位置に取り付ければよい。その後、上中下段の第1の導電ワイヤ5Aを結線14Aで接続し、上中下段の第2の導電ワイヤ5Bを結線14Bで接続し、上中下段の第3の導電ワイヤ5Cを結線14Cで接続する。そして、電源装置12と上段の第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B、第3の導電ワイヤ5Cを接続線13A,13B,13Cで接続し、第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B及び第3の導電ワイヤ5Cに通電する。
【0027】
以上のように、本実施例の架線具1は、電気柵7の支柱2に係止する係止部3と、係止部3の支柱2への着脱を操作する操作部4と、係止部3から延設された第1の延伸部10及び第2の延伸部11と、導電ワイヤ5を架線する架線部6と、を有し、操作部4と第1の延伸部10及び第2の延伸部11の間に係止部3が位置し、第1の延伸部10及び第2の延伸部11に複数の第1の架線部6A及び第2の架線部6Bが形成され、操作部4に少なくとも1つの架線部6Cが形成されていることにより、支柱2(係止部3)を中心として、2方向に架線部6を形成することができる。そのため、1列に並列された支柱2により、複数の導電ワイヤ5(第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B及び第3の導電ワイヤ5C)を並列に架線することができる。また、1列に並列された支柱2を境界として、電気柵7の内側方向と外側方向にそれぞれ導電ワイヤ5を架線することができる。
【0028】
また、本実施例の架線具1は、弾性変形可能な1本のばね線材により形成されていることにより、操作部4の操作により係止部3の内径を拡径することができる。また、架線具1の形状を所望の形状に容易に形成することができる。
【0029】
また、本実施例の架線具1は、係止部3が支柱2を挿通可能な円筒状に形成され、係止部3の内径d1が支柱2の外径Dよりも僅かに小さく、操作部4が第1の操作部4Aと第2の操作部4Bを有し、第1の操作部4Aと第2の操作部4Bを接近させるように操作することで係止部3の内径を拡径可能であることにより、片手で操作部4の接近操作を行うことができる。そのため、支柱2への架線具1の着脱作業が容易となる。また、一方の手で支柱2を把持し、他方の手で架線具1の着脱操作を行うことができるため、架線具1の着脱作業時に支柱2が傾いたり、地面から抜けたりすることを防止できる。
【0030】
また、本実施例の架線具1は、全ての架線部6(第1の架線部6A、第2の架線部6B及び第3の架線部6C)が導電ワイヤ5(第1の導電ワイヤ5A、第2の導電ワイヤ5B及び第3の導電ワイヤ5C)を挿通可能な環形状を有ることにより、架線部6に導電ワイヤ5を挿通するだけで導電ワイヤ5を架線することができる。そのため、導電ワイヤ5の架線作業が容易となる。
【0031】
また、本実施例の架線具1は、支柱2に係止した状態で、全ての第1の架線部6A、第2の架線部6B及び第3の架線部6Cが同一の高さに位置することにより、3本の第1の導電ワイヤ5A、第2の裸伝声5B及び第3の導電ワイヤ5Cを水平に架線することができる。そのため、