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  • 特開-PC鋼材の連結方法 図1
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  • 特開-PC鋼材の連結方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068528
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】PC鋼材の連結方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20220427BHJP
   E04C 5/08 20060101ALI20220427BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20220427BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220427BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04C5/08
E04G21/12 104C
E01D1/00 D
E01D22/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177266
(22)【出願日】2020-10-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】312011039
【氏名又は名称】株式会社ハナミズキ・ブリッジ・プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】角谷 務
【テーマコード(参考)】
2D059
2E164
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG55
2E164AA02
2E164BA27
2E164DA32
(57)【要約】
【課題】新設PC鋼材と既設PC鋼材とを、既設PC鋼材の定着具を利用して容易に連結することができる、PC鋼材の連結方法を提供する。
【解決手段】既設PC鋼材51の定着スリーブ11の外周を切削加工して既設コンクリート50端面側の先端部から後端部にかけて外径が漸減するテーパー13を形成するとともに、先端部外周に環状溝14を形成する工程と、端部内周に環状凸部16を有し、外周に雄ねじ17が形成された筒状のカプラー15を、環状凸部16側から定着スリーブ11の外周に圧入して、環状凸部16を環状溝14に係合させる工程と、新設PC鋼材51aが連結されたスリーブ19であって内周に雌ねじ20が形成されたスリーブ19を、カプラー15の雄ねじ17に螺着する工程とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリートに埋設された既設PC鋼材の端部が、前記既設コンクリートの端面に設置されて前記端部が挿入される定着スリーブを含む定着具によって、前記既設コンクリートに定着されている前記既設PC鋼材と、
前記既設コンクリートに打ち継がれる新設コンクリートに埋設される新設PC鋼材とを連結する方法であって、
前記定着スリーブの外周を切削加工して前記既設コンクリート端面側の先端部から後端部にかけて外径が漸減するテーパーを形成するとともに、前記先端部外周に環状溝を形成する工程と、
端部内周に環状凸部を有し、外周に雄ねじが形成された筒状のカプラーを、前記環状凸部側から前記定着スリーブの外周に圧入して、前記環状凸部を前記環状溝に係合させる工程と、
前記新設PC鋼材が連結されたスリーブであって内周に雌ねじが形成されたスリーブを、前記カプラーの雄ねじに螺着する工程と
を備えたことを特徴とするPC鋼材の連結方法。
【請求項2】
前記既設コンクリート及び前記新設コンクリートはPC床版橋における床版コンクリートであることを特徴とする請求項1記載のPC鋼材の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PC鋼材の連結方法に関し、より詳細には、例えばPC床版橋において車線を拡幅施工する際に適用されるPC鋼材の連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート系床版を用いた橋梁として、PC(プレストレストコンクリート)床版橋が知られている。PC床版は、図5(a)に示すように、床版コンクリート50に橋軸方向に50cm程度の間隔で多数のPC鋼材51を埋設して、橋軸直角方向にプレストレスを導入したものである。これらのPC鋼材51の両端部は、床版コンクリート50の両端部の定着部52で定着されている。
【0003】
上記のようなPC床版橋において、交通量の増大に対処すべく、例えば2車線から3車線に床版を拡幅する場合、図5(b)に示すように、既設の床版コンクリート50に新設の床版コンクリート50aを打ち継ぐことになる。
【0004】
この場合、新設の床版コンクリート50aにもプレストレスを導入しないと、橋軸直角方向境界部に縦目地が発生し、車線変更時に段差が生じて危険である。すなわち、新設の床版コンクリート50aに埋設される新設のPC鋼材51aと、既設のPC鋼材51とを定着部52で連結して、新設の床版コンクリート50aにプレストレスを導入する必要がある。
【0005】
PC鋼材の連結方法として、例えば特許文献1には、先行工区と後行工区のコンクリート打継部において、先行PC鋼材の定着スリーブに内周に雌ねじが形成されたものを使用し、この定着スリーブに外周に雄ねじを有するプラグを螺着するとともに、このプラグに内周に雌ねじを有し、後行PC鋼材が連結されたスリーブを螺着することにより、先行及び後行PC鋼材を連結する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、先行工区と後行工区とあるように、先行PC鋼材に後行PC鋼材が連結されることが予定されており、それゆえ定着スリーブの内周に予め雌ねじが形成されているのであり、PC鋼材の定着部に使用される一般的な定着スリーブにはこのような雌ねじは形成されていない。したがって、上記のようなPC床版橋において、既設の床版コンクリートを拡幅する場合には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4395112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、既設コンクリートに埋設された既設PC鋼材と、既設コンクリートに打ち継がれる新設コンクリートに埋設される新設PC鋼材とを、既設PC鋼材の定着具を利用して容易に連結することができる、PC鋼材の連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、既設コンクリートに埋設された既設PC鋼材の端部が、前記既設コンクリートの端面に設置されて前記端部が挿入される定着スリーブを含む定着具によって、前記既設コンクリートに定着されている前記既設PC鋼材と、
前記既設コンクリートに打ち継がれる新設コンクリートに埋設される新設PC鋼材とを連結する方法であって、
前記定着スリーブの外周を切削加工して前記既設コンクリート端面側の先端部から後端部にかけて外径が漸減するテーパーを形成するとともに、前記先端部外周に環状溝を形成する工程と、
端部内周に環状凸部を有し、外周に雄ねじが形成された筒状のカプラーを、前記環状凸部側から前記定着スリーブの外周に圧入して、前記環状凸部を前記環状溝に係合させる工程と、
前記新設PC鋼材が連結されたスリーブであって内周に雌ねじが形成されたスリーブを、前記カプラーの雄ねじに螺着する工程と
を備えたことを特徴とするPC鋼材の連結方法にある。
【0010】
上記方法において、前記既設コンクリート及び前記新設コンクリートは、例えばPC床版橋における床版コンクリートである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、既設コンクリートに埋設された既設PC鋼材と、既設コンクリートに打ち継がれる新設コンクリートに埋設される新設PC鋼材とを、既設PC鋼材の定着具を利用して容易に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】既設床版コンクリートに埋設された既設PC鋼材の定着部の詳細を示す断面図である。
図2】この発明の実施形態を示す断面図である。
図3図2の手順に引き続く手順を示す断面図である。
図4図3の手順に引き続く手順を示す断面図である。
図5】PC床版橋において、床版を拡幅する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、PC床版橋において既設床版コンクリート50に埋設された既設PC鋼材51の定着部52の詳細を示す断面図である。
【0014】
既設床版コンクリート50の端面には支圧板10が設けられ、この支圧板10に形成された穴10aを既設のPC鋼材51の端部が貫通し、床版コンクリート50の外方に突出している。
【0015】
既設PC鋼材51は床版コンクリート50にプレストレスを導入するために緊張されている。このPC鋼材51は、床版コンクリート50からの突出端部が定着スリーブ11に挿入されたうえ、定着スリーブ11に複数の楔12が打ち込まれることにより、床版コンクリート50に定着されている。
【0016】
既設床版コンクリート50に新設床版コンクリートを打ち継いで床版を拡幅する場合、既設PC鋼材51と新設床版コンクリートに埋設される新設PC鋼材とが、この発明により、以下のようにして連結される。
【0017】
図2に示すように、定着スリーブ11等の定着具が既設床版コンクリート50に設置された状態のまま、定着スリーブ11の外周を切削加工する。具体的には、定着スリーブ11の既設床版コンクリート50の端面側の先端部から後端部にかけて外径が漸減するテーパー13を形成する。また、定着スリーブ11の先端部外周に周方向の環状溝14を形成する。
【0018】
次に、図3に示すように、定着スリーブ11の外周に筒状のカプラー15を圧入する。このカプラー15には一方の端部内周に周方向の環状凸部16が設けられ、また外周には雄ねじ17が形成されている。カプラー15は環状凸部16側から定着スリーブ11の外周に圧入され、定着スリーブ11の先端部で環状凸部16が環状溝14に係合する。
なお、環状凸部16には周方向引張応力(フープテンション)が発生するように径を設定し、環状溝14に密着するようにする。
【0019】
次に、図4に示すように、新設PC鋼材51aの先端部が連結されたスリーブ19をカプラー15に連結する。スリーブ19は、内周に雌ねじ20が形成され、また後端が閉鎖端21となっている。
【0020】
スリーブ19内にはコンプレッショングリップ22が収容されている。新設PC鋼材51aの先端部は、閉鎖端21に形成された穴21aに挿入されてコンプレッショングリップ22に固定されている。これにより、新設PC鋼材51aの先端部はスリーブ19に連結・保持されている。
【0021】
スリーブ19内周の雌ねじ20は、カプラー15外周の雄ねじ17に螺着され、これにより新設PC鋼材51aが既設PC鋼材51に連結される。その後、新設PC鋼材51aは図示しない緊張手段により緊張され、既設床版コンクリートに打ち継がれる新設床版コンクリートにプレストレスが導入されることとなる。
【0022】
上記のようなPC鋼材の連結構造によれば、カプラー15に設けられた環状凸部16が既設の定着スリーブ11の環状溝14に係合しているので、新設PC鋼材51aに付与される緊張力は既設の定着スリーブ11に確実に伝達され、定着スリーブ11から確実に緊張反力を得ることができる。
【0023】
上記実施形態によれば、既設PC鋼材51の定着スリーブ11を利用し、これを加工して新設PC鋼材を連結するので、既設床版コンクリートに新設床版コンクリートを打ち継いで床版を拡幅する必要が生じた際に対応することができる。
【0024】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。上記実施形態は、PC床版橋において既設床版コンクリートに新設床版コンクリートを打ち継ぐ場合であるが、PC床版橋に限らず他のプレストレストコンクリート構造物を打ち継ぐ場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0025】
10:支圧板
11:定着スリーブ
12:楔
13:テーパー
14:環状溝
15:カプラー
16:環状凸部
17:雄ねじ
19:スリーブ
20:雌ねじ
22:コンプレッショングリップ
50:既設床版コンクリート
51:既設PC鋼材
52:定着部
50a:新設床版コンクリート
51a:新設PC鋼材
図1
図2
図3
図4
図5