(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068593
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】基板支持エリアの特定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
H05K3/34 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177361
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】506225949
【氏名又は名称】株式会社ヴイ・エス・テクノロジ-
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】小池 敏彦
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AC01
5E319CD39
5E319CD57
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】基板支持エリアの特定とその位置決め固定とが容易に行える基板支持エリアの特定方法及び装置を提供する。
【解決手段】基板が当接する側の第1面を上にしてX-Yテーブルに基板をセットする。カメラで第1面を撮影し第1面画像を得る。第1面画像のカメラ光軸位置にピンマークを画像合成し合成画像をモニタに表示する。X-Yテーブルの移動中に、入力操作により基板支持エリア候補内にピンマークを位置させ支持位置データを取得する。支持位置データを反転処理してマーク反転位置データを得る。マーク反転位置データに基づき基板無しのX-Yテーブルを移動させマーク反転位置にカメラ撮影光軸を合わせる。基板無しのX-Yテーブルを撮影しX-Yテーブル画像を取得する。X-Yテーブル画像にピンマークを画像合成しモニタに表示する。モニタ画面の観察によりピンマークにバックアップピンを位置決めする。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部と基板支持部材とで保持された基板をカメラで撮影して基板に対して処理を行う基板処理装置の前記基板支持部材による基板支持エリアの特定方法であって、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する前記基板を前記基板保持部により前記第1面を上にして保持する基板保持ステップと、
前記基板保持ステップで保持される前記第1面を前記カメラで撮影して第1面画像を得る第1撮影ステップと、
前記第1面画像中に、前記カメラの光軸位置で前記基板支持部材を示すマーク画像を前記第1面画像の表示倍率と同倍率で画像合成してモニタに表示する第1表示ステップと、
前記基板保持部及び前記カメラの一方又は双方を前記第1面と平行な方向に相対移動させる第1移動ステップと、
第1移動ステップ中の前記モニタの表示画面のオペレータの観察により前記マーク画像が前記基板支持部材の支持エリアに入ったときの入力操作に基づき、前記基板に対する基板支持部材の支持位置データを取得する位置データ取得ステップと、
前記基板保持部に前記基板の第1面及び第2面を反転してセットした状態の前記支持位置データであるマーク反転位置データを得るデータ反転処理ステップと、
前記マーク反転位置データに基づき前記基板が無い状態の前記基板保持部を前記カメラに対して相対移動させて前記マーク反転位置データに前記カメラの光軸を合わせる第2移動ステップと、
前記第2移動ステップ後の基板保持部を前記カメラで撮影する第2撮影ステップと、
第2撮影ステップで撮影した基板保持部画像に前記マーク画像を画像合成してモニタに表示する第2表示ステップと、
前記第2表示ステップによる前記モニタの表示画面のオペレータの観察により前記マーク画像に前記基板支持部材を位置合わせして前記基板保持部に前記基板支持部材を固定したときの入力操作に基づき、基板支持部材固定完了信号を受け取る位置決め完了検出ステップと
を有する基板支持エリアの特定方法。
【請求項2】
前記マーク画像よりも大きい外形を有する支持エリア確認マークを前記マーク画像と同心で表示する請求項1記載の基板支持エリアの特定方法。
【請求項3】
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する基板の前記第1面及び前記第2面の一方をカメラで撮影して基板に対して処理を行う基板処理装置の基板支持部材による基板支持エリアの特定装置であって、
前記第1面及び前記第2面の一方を上にして前記基板の周縁を保持する基板保持部と、
前記基板保持部で保持される前記基板の前記第1面を前記カメラで撮影して第1面画像を得る第1撮影部と、
前記第1面画像中に、前記カメラの光軸位置で基板支持部材を示すマーク画像を前記第1面画像の表示倍率と同倍率で画像合成してモニタに表示する第1表示部と、
前記基板保持部及び前記カメラの一方又は双方を前記第1面と平行な方向に相対移動させる第1移動部と、
前記第1移動部による前記基板の移動中の前記モニタの表示画面のオペレータの観察により前記マーク画像が基板支持部材の支持エリアに入ったときの入力操作に基づき、前記基板に対する基板支持部材の支持位置データを取得する位置データ取得部と、
前記基板保持部に前記基板の第1面及び第2面を反転してセットした状態の前記支持位置データであるマーク反転位置データを得るデータ反転処理部と、
前記マーク反転位置データに基づき前記基板が無い状態の前記基板保持部を前記カメラに対して相対移動させて前記マーク反転位置データに前記カメラの光軸位置を合わせる第2移動部と、
前記第2移動部による移動後の基板保持部を前記カメラで撮影する第2撮影部と、
第2撮影部で撮影した基板保持部画像に前記マーク画像を画像合成してモニタに表示する第2表示部と、
前記第2表示部の前記モニタの表示画面のオペレータの観察により前記マーク画像に基板支持部材を位置合わせして前記基板保持部に前記基板支持部材を固定したときの入力操作に基づき、基板支持部材固定完了信号を受け取る位置決め完了検出部と
を有する基板支持エリアの特定装置。
【請求項4】
前記マーク画像よりも大きい外形を有する支持エリア確認マークを前記マーク画像と同心で表示する請求項3記載の基板支持エリアの特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板支持部材による基板支持エリアの特定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板用リワーク装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の装置は、基板の両端を保持して基板の表面を平面状に維持する。そして、表面からリペア対象のチップ等の電子部品を取り外し、その後の基板の残留ハンダクリーニング、基板へのハンダ塗布、新規の電子部品の搭載、及びハンダ付けといったプリント基板に対する一連のリペア作業を連続的に行う。例えば、新規の電子部品のハンダ付けでは、ヒータにより基板を裏面から加熱する。
【0003】
基板用リワーク装置では、電子部品を加熱して電子部品を基板にハンダ付けするときに、基板や電子部品等の自重で基板の中央が下方に撓む傾向がある。特に面積が広い基板や、部品点数が多い基板では撓み量が増加する。撓み量が一定値を超えると、実装した電子部品との間が狭まったり又は離れたりして、ハンダ付けを自動的に行う際に、ハンダブリッジや未ハンダ部分等のハンダ不良が発生する。また、基板には自重による撓みの他に、基板の取り付け状態などによって基板に反りが発生することもある。反りが発生した基板でも撓み同様にハンダ不良が発生する。
【0004】
このため、バックアップピンや押さえ部材等の基板支持部材により基板を支持して、基板の撓みや反りを矯正することが行われている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-45185号公報
【特許文献2】特開2003-62971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バックアップピンで基板を支持する際に、支持箇所に電子部品等が有るとバックアップピンが電子部品等に当たり、基板が破損する。このため、電子部品等の無い箇所をバックアップピンで支持する必要がある。特許文献2に記載のクリーム半田印刷装置では、基板保持ピンの位置情報は、基板のキャドデータや基板保持ピンの行又は列単位での先端位置のデータを用いている。このため、リワーク装置のように多種多用な各種基板を作業対象にしている場合には、基板のキャドデータや先端位置データなどが入手困難である場合が多い。従って、オペレータにより手作業で基板の裏側を観察しながら、バックアップピンの支持位置を決める必要がある。
【0007】
しかしながら、基板の裏側を観察しながら、バックアップピンの支持位置を決め、この位置にバックアップピンを固定することは、裏面の観察や狭い空間での固定作業を伴うため、オペレータにとって困難な作業となり、熟練を要するという問題がある。特に、電子チップが微小化し且つ高密度実装された基板では、支持位置を特定する作業はより一層困難になる。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、基板支持部材による基板支持エリアの特定とその位置決め固定とが容易に行える基板支持エリアの特定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の基板支持エリアの特定方法は、基板保持部と基板支持部材とで保持された基板をカメラで撮影して基板に対して処理を行う基板処理装置の基板支持部材による基板支持エリアの特定方法であって、基板保持ステップ、第1撮影ステップ、第1表示ステップ、第1移動ステップ、位置データ取得ステップ、データ反転処理ステップ、第2移動ステップ、第2撮影ステップ、第2表示ステップ、及び位置決め完了検出ステップを含む。基板保持ステップでは、第1面及び第1面とは反対側の第2面を有する基板を基板保持部により第1面を上にして保持する。第1撮影ステップでは、基板保持ステップで保持される第1面をカメラで撮影して第1面画像を得る。第1表示ステップでは、第1面画像中にカメラの光軸位置で基板支持部材を示すマーク画像を第1面画像の表示倍率と同倍率で画像合成してモニタに表示する。第1移動ステップでは、基板保持部及びカメラの一方又は双方を第1面と平行な方向に相対移動させる。位置データ取得ステップでは、第1移動ステップ中のモニタの表示画面のオペレータの観察によりマーク画像が基板支持部材の支持エリアに入ったときの入力操作に基づき、基板に対する基板支持部材の支持位置データを取得する。データ反転処理ステップでは、基板保持部に基板の第1面及び第2面を反転してセットした状態の支持位置データであるマーク反転位置データを得る。第2移動ステップでは、マーク反転位置データに基づき基板が無い状態の基板保持部をカメラに対して相対移動させてマーク反転位置にカメラの光軸位置を合わせる。第2撮影ステップでは、第2移動ステップ後の基板保持部をカメラで撮影する。第2表示ステップでは、第2撮影ステップで撮影した基板保持部画像にマーク画像を画像合成してモニタに表示する。位置決め完了検出ステップでは、第2表示ステップによるモニタの表示画面のオペレータの観察によりマーク画像に基板支持部材を位置合わせして基板保持部に基板支持部材を固定したときの入力操作に基づき、基板支持部材固定完了信号を受け取る。
【0010】
本発明の基板支持エリアの特定装置は、第1面及び第1面とは反対側の第2面を有する基板の第1面及び第2面の一方をカメラで撮影して基板に対して処理を行う基板処理装置の基板支持部材による基板支持エリアの特定装置であって、基板保持部、第1撮影部、第1表示部、第1移動部、位置データ取得部、データ反転処理部、第2移動部、第2撮影部、第2表示部、及び位置決め完了検出部を有する。基板保持部は、第1面及び第2面の一方を上にして基板の周縁を保持する。第1撮影部は、基板保持部で保持される基板の第1面をカメラで撮影して第1面画像を得る。第1表示部は、第1面画像中にカメラの光軸位置で基板支持部材を示すマーク画像を第1面画像の表示倍率と同倍率で画像合成してモニタに表示する。第1移動部は、基板保持部及びカメラの一方又は双方を第1面と平行な方向に相対移動させる。位置データ取得部は、第1移動部による基板の移動中のモニタの表示画面のオペレータの観察によりマーク画像が基板支持部材の支持エリアに入ったときの入力操作に基づき、基板に対する基板支持部材の支持位置データを取得する。データ反転処理部は、基板保持部に基板の第1面及び第2面を反転してセットした状態の支持位置データであるマーク反転位置データを得る。第2移動部は、マーク反転位置データに基づき基板が無い状態の基板保持部をカメラに対して相対移動させてマーク反転位置データにカメラの光軸位置を合わせる。第2撮影部は、第2移動部による移動後の基板保持部をカメラで撮影する。第2表示部は、第2撮影部で撮影した基板保持部画像にマーク画像を画像合成してモニタに表示する。位置決め完了検出部は、第2表示部のモニタの表示画面のオペレータの観察によりマーク画像に基板支持部材を位置合わせして基板保持部に基板支持部材を固定したときの入力操作に基づき、基板支持部材固定完了信号を受け取る。
【0011】
なお、マーク画像よりも大きい外形を有する支持エリア確認マークをマーク画像と同心で表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板支持部材による基板支持エリアの特定と、特定した基板支持エリアへの基板支持部材の位置決め固定が容易に且つ正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】リワーク装置に設けた本発明の基板支持エリアの特定装置の一例を模式的に示す正面図である。
【
図3】下部ヒータが退避位置状態の第1撮影ステップ中のX-Yテーブルを示す側面図である。
【
図4】下部ヒータが加熱位置状態の第2撮影ステップ中のX-Yテーブルを示す側面図である。
【
図5】基板の各位置を特定するX―Y座標を示す説明図である。
【
図6】バックアップピンの下部ヒータへの取り付け状態を示す平面図である。
【
図7】
図5におけるバックアップピンの取り付け状態を示す側面図である。
【
図8】コントローラによる制御を示すブロック図である。
【
図9】第1表示部によるモニタの画面を示す正面図である。
【
図11】第2表示部によるモニタの画面を示す正面図である。
【
図12】複数のバックアップピンの取り付け状態を示す正面図である。
【
図13】基板支持エリアの特定装置の操作手順を示すフローチャートである。
【
図14】別実施形態におけるバックアップピンの位置決め固定を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2に示すように、本発明の基板支持エリアの特定装置10は、基板処理装置の一例としての基板用リワーク装置(以下、「リワーク装置」と称す。)に設けられる。基板支持エリアの特定装置10はリワーク装置の主要部品をそのまま共通部品として用いており、新たに基板支持エリアの特定方法を実施するプログラムが後述するコントローラ18(
図8参照)に格納されている。このプログラムが実行されることにより、リワーク装置は基板支持エリアの特定装置10として機能する。リワーク装置は、プリント基板(以下、「基板」と称する)11に対してリペア作業を行う。
図3に示すように、基板11には例えばその表裏面に、IC(Integrated Circuit)、抵抗、コンデンサ等の電子部品11c,11dが取り付けられている。本実施形態では、基板支持部材としてのバックアップピン12の先端面12aが当接する基板11の裏面を第1面11bとし、リペア対象の電子部品11cが搭載されたリペア対象面である表面を第2面11aとして説明する。図面のなかで、第1面11bと第2面11aとが容易に判るように、第2面11aの電子部品11cを白抜きで表示し、第1面11bの電子部品11dを黒く塗りつぶして表示している。また、矢印及びその符号X,Y,Zは、X-Y面を水平面とし、X-Z面、Y-Z面を鉛直面とするXYZ直交座標系の各座標軸を示している。
【0015】
図1に示すように、基板支持エリアの特定装置10を含むリワーク装置は、X-Yテーブル13と、カメラ14と、リワーク部15と、モニタ16と、操作部17を含むコントローラ18とを備えている。
【0016】
図3に示すように、リペア作業では、リペア対象面である第2面11aが上を向いた状態で基板11がX-Yテーブル13に保持される。また、基板支持部材としてのバックアップピン12による基板支持エリアの特定時には、
図4に二点鎖線で示すように、バックアップピン当接面である第1面11bが上を向いた状態で基板11がX-Yテーブル13に保持される。リペア作業では、例えば、不合格の原因となったリペア対象の電子部品11cが基板11から取り外される。その後に、電子部品11cが取り外された該当箇所に対して、ハンダクリーニング、新たなハンダの塗布、新しい電子部品の搭載及びハンダ付けといった作業が連続して行われる。
【0017】
X-Yテーブル13は基板11を保持し、基板11を水平面(X-Y面)内でX軸方向及びY軸方向に平行移動する。カメラ14は、基板11を上方から撮影する。また、
図4に示すように、基板11がX-Yテーブル13にセットされていない状態では、X-Yテーブル内のバックアップピン12を含む下部ヒータ23を上方から撮影する。カメラ14は、リワーク装置に搭載されている部品位置決用カメラやフィデューシャルマーク用のカメラを用いることが設備コストの点から好ましいが、専用の新設カメラを用いても良い。
【0018】
図2に示すように、カメラ14はY移動部14aを有する。Y移動部14aは、カメラ14をY軸方向にシフトさせ、実線で表示した撮影位置と二点鎖線で表示した退避位置とに切り替える。撮影位置では、カメラ14は基板11又は基板11が取り外された状態のX-Yテーブル13を撮影する。退避位置では、カメラ14は撮影位置からY軸方向に退き、リワーク部15による基板11のリワーク作業が行われる。モニタ16は、カメラ14の撮影画像を所望の解像度及び倍率で表示する。この外に、基板支持エリアの特定装置における操作入力案内の表示や必要に応じて案内の音声を出力する。
【0019】
リワーク部15は、クランプ部材19、昇降部20を有する。クランプ部材19には各種のリワーク治具21が着脱自在に取り付けられる。リワーク治具21には、
図1及び
図2に示すようなニードル21aを有するものがある。リワーク治具21を交換することにより、例えば、基板11に対して電子部品11cの取り外し、残留ハンダの平滑化、ハンダ塗布、新たな電子部品11cの搭載、加熱などの処理が行われる。
【0020】
図3及び
図4に示すように、X-Yテーブル13は、X移動部13a、Y移動部13b及び基板保持枠13cと、下部ヒータ23を有する。基板保持枠13cは各種サイズの基板11の1つの角部を原点位置として基準角部に当てた状態で、基板11を保持するもので基板保持部に相当する。基板保持枠13cは、1対の固定保持辺と1対の移動保持辺とを有し矩形枠状に構成される。1対の移動保持辺が基板11の二辺を水平面内で押すことにより、1対の固定保持辺に基板11の他方の二辺が押しつけられて、基板11は水平に保持される。基板保持枠13cの各保持辺は、適宜個数の押さえ片13dを有する。押さえ片13dは、X-Y面に直交するZ軸方向(鉛直方向)への基板11の移動を阻止する。
【0021】
Y移動部13bは、XY直交座標を構成するY軸方向に、基板保持枠13cを平行移動する。X移動部13aは、X軸方向にY移動部13bを平行移動する。これにより、基板11はX-Y面(水平面)の任意位置に移動及び固定が可能になる。そして、
図5に示すように、基板11の各位置は基準角部を原点とするX-Y座標により特定される。例えば、バックアップピンの支持位置を3カ所としたときには、これら各支持位置P1,P2,P3が、X座標値とY座標値との組み合わせ位置データ(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)として原点(0,0)を基準にして特定される。
【0022】
図3に示すように、下部ヒータ23は、X-Yテーブル13の下部に設けられる。下部ヒータ23は、例えば複数の遠赤外線ヒータ24とリフレクタ25とステー26とから構成され、ステー26で複数の加熱エリアに分離される。
【0023】
図6及び
図7に示すように、ステー26には、バックアップピン12がレバー27及びボルト28により取り付けられる。バックアップピン12は、レバー27の一端部で、X-Y面に直交するZ軸方向に固定される。レバー27は、長手方向に長孔29を有する。ボルト28はレバー27の長孔29に挿入された後に、ステー26のネジ孔30に締結される。長孔29の任意位置で且つ任意角度でボルト28により、レバー27がステー26に締結されることで、X-Y面の任意位置にバックアップピン12が位置決めされる。
【0024】
図3及び
図4に示すように、下部ヒータ23は昇降機構31を有する。昇降機構31は、下部ヒータ23を退避位置(
図3参照)と加熱位置(
図4参照)との間で昇降させる。加熱位置では、下部ヒータ23が基板11に接近し、基板11を加熱する。そして、バックアップピン12の先端面12aが基板11の第1面11bに接触し、基板11の撓みを抑える。退避位置では下部ヒータ23及びバックアップピン12の先端面12aが基板11から離れる。
【0025】
ところで、
図3に示すようにリワーク作業ではリワーク対象の電子部品11cが上を向いた状態でX-Yテーブル13に基板11がセットされるので、バックアップピン12による基板支持エリアは、リワーク作業では下向きの第1面11bにある。したがって、第1面11bが下を向いたままでは、電子部品11cにバックアップピン12が当たらないように、基板支持エリアを特定することは困難である。このため、基板支持エリアの特定装置10はオペレータによるバックアップピン12の基板支持エリアの特定作業と位置決め作業を支援する。この支援により、基板支持エリアの特定とバックアップピン12の位置決めとが容易に且つ正確に行われる。
【0026】
図8に示すように、リワーク装置はコントローラ18により制御される。コントローラ18は、コンピュータを主体とするものであり、実行部37、記憶部38、入出力部39等を含む。コントローラ18は、リペア作業プログラムの起動によって、各部を制御してオペレータによるリペア作業を支援する。このため、入出力部39にはカメラ14、モニタ16、及び操作部17やその他の各部を制御する駆動回路33や各種センサが接続される。なお、入出力部39にはその他にリペア作業時の各部を駆動する駆動源等が駆動回路を介して接続されるが、リペア作業用の各部について図示は省略している。
【0027】
操作部17は各種操作ボタン34a,34b,35a~35d,36a~36cを有する。各種操作ボタン34a,34b,35a~35d,36a~36cはオペレータによる入力操作を受けて、操作信号をコントローラ18に送る。コントローラ18は、各移動ボタン35a~35dが押されることで、各移動ボタン35a~35dの矢印が示す移動方向にX移動部13a及びY移動部13bを駆動する。操作部17は、X移動部13a及びY移動部13bを手動操作する上下左右の移動ボタン35a~35dの他に、ズームボタン34a,34b、バックアップピンセットボタン36a、完了ボタン36b、及び決定ボタン36cを備えている。ズームボタン34aはズームアップ時に用いられ、ズームボタン34bはズームダウン時に用いられる。
【0028】
コントローラ18はバックアップピン位置決め作業プログラムの起動によって各部を制御し、第1撮影部40、第1表示部41、第1移動部42、位置データ取得部43、データ反転処理部44、第2移動部45、第2撮影部46、第2表示部47、及び位置決め完了検出部48の機能ブロックを構成する。これらの機能ブロック40~48、カメラ14、モニタ16、及び操作部17によって、本発明の基板支持エリアの特定装置10が構成され、バックアップピン12の支持エリアの特定とバックアップピン12の位置決め作業を支援する。
【0029】
第1撮影部40は、基板11の第1面11bをカメラ14で撮影して第1面画像を得る。第1表示部41は、
図9に示すように、モニタ16に第1面画像50とマーク画像51とを表示する。マーク画像51は第1面画像50の撮影光軸49の位置に画像合成される。マーク画像51は、撮影光軸49を通るX軸線51a及びY軸線51bと、これらの交点を中心とするピンマーク51cと支持エリア確認マーク51dとから構成される。ピンマーク51c及び支持エリア確認マーク51dは、モニタ16の画面に映る基板11の第1面画像50の表示倍率と同倍率で画像合成される。例えば、第1面画像50が拡大して表示される場合にはその拡大倍率(表示倍率)と同倍率でピンマーク51c及び支持エリア確認マーク51dも拡大表示される。また、ズームボタン24aが押されると、第1面画像50がズームアップされ拡大表示される。ズームボタン24aが押されると第1面画像50がズームダウンされ縮小表示される。これらの拡大又は縮小表示の際にも、ピンマーク51c及び支持エリア確認マーク51dも第1面画像50の表示倍率と同倍率で拡大又は縮小表示される。
【0030】
ピンマーク51cはバックアップピン12の断面外形と同じ円形であり、支持エリア確認マーク51dも、ピンマーク51cと同心で且つ外形が大きい円形である。ピンマーク51cと支持エリア確認マーク51dの外径の差が余裕代となっており、この余裕代に応じてバックアップピン12の位置決めが容易になる。
【0031】
第1移動部42は、オペレータによる移動ボタン35a~35dの操作入力により、X移動部13a及びY移動部13bを制御して、移動ボタン操作方向に基板11を平行移動させる。この移動に伴い、
図9に示すように、モニタ16には移動中の第1面画像50がスルー画像として表示される。
【0032】
位置データ取得部43は、基板11に対するバックアップピン12の支持位置データを取得する。まず、オペレータによる移動ボタン35a~35dの入力により基板11がX移動部13a及びY移動部13bによって所望方向に移動する。オペレータはモニタ16の画面を見て、バックアップピン12の支持エリア候補となる電子部品11c間の隙間エリアを特定する。そして、移動ボタン35a~35dを操作して、この隙間エリアを基板支持エリア52として、このエリア52内に支持エリア確認マーク51dを入れる。基板支持エリア52に支持エリア確認マーク51dが入るのであれば、このエリア52ではバックアップピン12が各電子部品11cに当たることが無くなる。この状態で、支持エリア確認マーク51dが基板支持エリア52内に納まっていれば、決定ボタン36cを押す。
【0033】
位置データ取得部43は、移動ボタン35a~35dの操作による基板11のX方向移動量とY方向移動量とをカウントしている。そして、決定ボタン36cが押された位置決め完了時に、そのカウント量を基準点からの移動量とする。この移動量は、基準位置を原点したX-Y座標における支持位置P1の位置データ(x1,y1)とされ、記憶部38に記憶される。
【0034】
図5に示すように、基板11のサイズに応じて、バックアップピン12による支持位置が複数必要である場合には、第1の支持エリア決定と同様の操作を繰り返すことにより、第2、第3の支持位置P2,P3の位置データ(x2,y2),(x3,y3)が得られる。必要な支持位置P1~P3の全てが取得されると、オペレータにより完了ボタン36bが操作される。完了ボタン36bの操作により第1表示部41は、基板取り外しを指示するための「基板取り」をモニタ16に表示する。また、この表示と共に、基板取り外しの警報が鳴らされる。
【0035】
完了ボタン36bの操作により、データ反転処理部44は、取得した位置データ(
図5参照)から、
図10に示すように、基板保持枠13cに基板11の第1面11b及び第2面11aを反転してセットした状態の支持位置データであるマーク反転位置データHP1,HP2,HP3を得る。これらマーク反転位置データHP1,HP2,HP3は、基板11の左右を反転して基板11を裏返しした時の位置データである。例えば、X方向基板長さLXの中心部を通るY軸に平行な反転軸HLを中心としてX座標のみが反転(180°回転)されて、第2面11aを上にした状態の支持エリアの位置データであるマーク反転位置データHP1(LX-x1),y1)、HP2(LX-x2),y2)、HP3(LX-x3),y3)を得る。これらマーク反転位置データHP1,HP2,HP3は、基板ID(識別番号)毎に記憶部38に記憶される。そして、次回同じ基板IDの基板11を処理する際には、基板IDに基づき対応するマーク反転位置データが読みとられ、これに基づきバックアップピン12の位置決めが行われる。
【0036】
第2撮影部46は、第2移動部45により移動された基板保持枠13cをカメラ14で撮影する。第2表示部47は、第2撮影部46で撮影した基板保持枠13cの画像に、マーク画像51を画像合成し、
図11に示すように、モニタ16に表示する。
【0037】
第2移動部45は、X移動部13a及びY移動部13bを制御して、マーク反転位置データに基づき基板11が無い状態の基板保持枠13cをカメラ14に対して移動させてマーク反転位置データの座標位置にカメラ14の撮影光軸49を合わせる。この移動に伴い、
図11に示すように、モニタ16には基板保持枠画像53がスルー画像として表示される。
【0038】
オペレータは、モニタ16の表示画面を観察しながら、表示画面中のピンマーク51cにスルー画像中のバックアップピン画像G12が重なるように、バックアップピン12の位置合わせを行う。バックアップピン12の位置合わせは、
図6及び
図7に示すように、ボルト28を弛めてレバー27の取り付け位置を調整することにより行われる。バックアップピン12の位置合わせ完了後に、ボルト28を締結することにより、第1の位置決めが完了する。位置決め完了後は、オペレータが完了ボタン36bを入力操作すると、同様にして、第2支持位置データの反転データに基づきX-Yテーブル13が駆動され、第2支持位置の反転データに基づきカメラ14の撮影光軸49が位置決めされる。以下同様にして、モニタ画面の観察により第2バックアップピン12の位置決め作業が行われる。同様にして第3支持位置データの反転データに基づきカメラ14の撮影光軸49が位置決めされ、第3バックアップピン12の位置決め作業が行われる。
図12に示すように、全てのバックアップピン12の位置決めが完了すると完了ボタン36bの入力操作により、位置決め作業が終了する。
【0039】
完了ボタン36bの操作により、カメラ14は撮影位置からリペア作業に支障の無い退避位置に移動する。位置決め作業の終了後は、「リペア対象電子部品を上にした基板のセット」がモニタ16に表示される。オペレータは、基板保持枠13cにリペア対象の電子部品11cが上を向くように基板11をセットした後に、完了ボタン36bを操作する。
【0040】
基板11のセット完了後は、昇降機構31が作動して、下部ヒータ23を基板11に近接させる。この近接により、バックアップピン12の先端面12aが基板11の第1面11bの位置決めエリアに当接して、基板11を押し上げて、基板11を水平に保持し、基板11の撓みが矯正される。この撓みが矯正された基板11に対してリペア作業が行われる。
【0041】
次に、
図13を参照して、本発明の基板支持エリアの特定方法について説明する。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)では、基板支持エリアを特定するために、オペレータにより第1面11bを上にして基板11が基板保持枠13cにセットされる。その後、S2において、操作部17のバックアップピンセットボタン36aが操作される。バックアップピンセットボタン36aが操作されると、S3に進み、カメラ14が退避位置から撮影位置に移動する。
【0042】
S4ではカメラ14が基板11の第1面11bを撮影し、第1面画像50を得る。
【0043】
S5では、
図9に示すように、第1面画像50がモニタ16に表示される。S6では、第1面画像50に撮影光軸位置でマーク画像51を画像合成し、モニタ16に表示する。マーク画像51のピンマーク51c及び支持エリア確認マーク51dは、モニタ画面の基板画像の表示倍率と同倍率で画像合成される。
【0044】
S7では、オペレータがモニタ16を観察しながら、移動ボタン35a~35dを操作する。S8では、移動ボタン35a~35dの操作に応じてX移動部13a及びY移動部13bを介して基板保持枠13cが移動する。この移動により
図9に示すようにマーク画像51を基板支持エリア52に合わせる。
【0045】
S9では、モニタ16の観察により、所望の基板支持エリア52内に支持エリア確認マーク51dに入ったか否かが判断される。S10では、支持エリア確認マーク51dが基板支持エリア52内に入っていると、決定ボタン36cが押される。これにより、S11では、基板支持エリア52の位置データが取得されて、この位置データが記憶部38に記憶される。
【0046】
S12では、オペレータにより全支持位置データが取得されたか否かが判断される。基板11を複数箇所で指示する場合には、S7に戻り、以下S7~S11の処理が繰り返される。これにより、複数箇所のバックアップピン12の位置データが得られる。所定の個数分の位置データが記憶されると、完了ボタン36bが押されて、S12の処理を終了する。
【0047】
S13では、全支持位置データの取得が完了すると、
図10に示すように、データ反転処理部44が支持位置データである座標のうち、Y軸線50bの位置データをそのままにしてX軸線50aの位置データを反転処理してマーク反転位置データを得る。反転処理は、
図10に示すように反転軸HLを中心としてX座標のみが反転される。位置データが複数ある場合には、すべてのマーク反転位置データを取得する。
【0048】
S14では、カメラ14を待避位置に移動し、基板11の取り外しが容易に行えるようにする。S15では、カメラ14が待避位置に移動したので、基板11を基板保持枠13cから取り外す。モニタ16の画面に「基板取り外し」が表示され、基板11の基板保持枠13cからの取り外しが標示される。また、この表示と共に、基板取り外しの警報が鳴らされる。
【0049】
S16では、基板11の取り外しが完了したか否かが完了ボタン36bの押下によって判定される。S17では、基板11が取り外された後に、カメラ14が待避位置から撮影位置に移動する。S18では、第2撮影部46により基板保持枠13cが撮影される。
【0050】
S19では、第2表示部47により
図11に示すように基板保持枠画像53にマーク画像51を画像合成し、
図13に示すようにモニタ16に表示する。
【0051】
S20では、マーク反転位置データに基づきX移動部13a、Y移動部13bが駆動され、マーク反転位置データの座標位置にカメラ14の撮影光軸49が合わせられる。この移動に伴い、モニタ16には移動中の基板保持枠画像53がスルー画像として表示される。
【0052】
S21では、バックアップピン12の位置決めを行う。バックアップピン12の位置決めは、ボルト28を緩め、モニタ画面を見ながらモニタ画面中でバックアップピン12が支持エリア確認マーク51d内に入るように移動させる。そして、バックアップピン12がピンマーク51c内に入った時点でボルト28を締め、バックアップピン12の位置決めを終了する。
【0053】
S22では、バックアップピン12が複数ある場合には、第2のマーク反転位置データの座標位置に基板保持枠13cが移動する。全ての支持位置データに基づき、全てのバックアップピン12の位置決めが完了したか否かが完了ボタン36bの押下により判定される。完了ボタン36bが押下され、全てのバックアップピン12の位置決めが完了したら、バックアップピン12の位置決め作業が完了する。
【0054】
完了ボタン36bの押下がなく全てのバックアップピン12の位置決めが完了しない場合には、S20に戻り、以下S20~S22の処理が繰り返えされる。
【0055】
なお、上記実施形態では、基板保持枠13cを水平移動させて基板支持エリア52の位置を取得したが、基板保持枠13c及びカメラ14の一方又は双方を相対移動させて基板支持エリア52の位置を取得してもよい。例えば、基板保持枠13cの移動に代えて又は加えて、カメラ14を水平移動させる。この場合には、カメラ14の水平移動量に基づき又は水平移動量を加味して基板支持エリア52の位置を特定する。
【0056】
上記実施形態では、X軸方向長さの中心を通るY軸を反転軸として基板11を反転させているが、Y軸方向長さの中心を通るX軸を反転軸として基板11を反転させてもよい。この場合には、反転軸を中心としてY座標のみが反転されて第2面11aを上にした状態の支持エリアの位置データが得られる。
【0057】
上記実施形態では、バックアップピン12をレバー27とボルト28によりX-Y面の任意位置に固定したが、これに代えて、
図14に示すように、バックアップピン70が挿脱自在に挿入される孔71を多数有する基板支持部材72を用いてもよい。この場合にはバックアップピン70の孔71へのセットは自動又は手動で行う。
【0058】
上記実施形態では、リワーク装置に本発明の支持エリアの特定装置10を設けたが、リワーク装置の他に、各種基板を取り扱う印刷機、各種SMT(Surface mount technology)実装機、画像検査機などの反り矯正を必要とする各種実装関連機器に本発明の基板支持エリアの特定装置及び方法を実施することができる。
【0059】
上記実施形態では、バックアップピン12の支持エリアの位置データをXY直交座標系により特定したが、他の極座標系などにより特定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 基板支持エリアの特定装置
11 基板
11a 第2面
11b 第1面
11c,11d 電子部品
12 バックアップピン(基板支持部材)
12a 先端面
13 X-Yテーブル
13a X移動部
13b Y移動部
13c 基板保持枠(基板保持部)
13d 押さえ片
14 カメラ
14a Y移動部
15 リワーク部
16 モニタ
17 操作部
18 コントローラ
19 クランプ部材
20 昇降部
21 リワーク治具
21a ニードル
23 下部ヒータ
24 遠赤外線ヒータ
25 リフレクタ
26 ステー
27 レバー
28 ボルト
29 長孔
30 ネジ孔
31 昇降機構
33 駆動回路
34a,34b ズームボタン
35a~35d 移動ボタン
36a バックアップピンセットボタン
36b 完了ボタン
36c 決定ボタン
37 実行部
38 記憶部
39 入出力部
40 第1撮影部
41 第1表示部
42 第1移動部
43 位置データ取得部
44 データ反転処理部
45 第2移動部
46 第2撮影部
47 第2表示部
48 位置決め完了検出部
49 撮影光軸
50 第1面画像
51 マーク画像
51a X軸線
51b Y軸線
51c ピンマーク
51d 支持エリア確認マーク
52 基板支持エリア
53 基板保持枠画像(基板保持部画像)
70 バックアップピン
71 孔
72 基板支持部材