(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068617
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】プレキャスト部材間の鉄筋連結構造、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート版、及び、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート壁
(51)【国際特許分類】
E04B 1/04 20060101AFI20220427BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20220427BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20220427BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20220427BHJP
E04B 2/86 20060101ALI20220427BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20220427BHJP
E04B 1/61 20060101ALI20220427BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
E04B1/04 E
E01D19/12
E01D21/00 B
E01D1/00 H
E04B2/86 611H
E04B2/56 621R
E04B1/61 502J
E04B5/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177394
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
【テーマコード(参考)】
2D059
2E002
2E125
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059AA17
2D059GG55
2D059GG61
2E002FB03
2E002GA09
2E125AA53
2E125AA57
2E125AE03
2E125AE07
2E125AG28
2E125AG29
2E125BA03
2E125BB08
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF04
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】複数の隣接するプレキャスト部材同士を鉄筋を用いて接合させる連結構造において、接合箇所での強度と、施工性や作業性の向上を両立させる。
【解決手段】互いに隣接する第1のプレキャスト部材と第2のプレキャスト部材とには、それぞれ接合用鉄筋群が埋設され、接合用鉄筋群の端部は、第1のプレキャスト部材と第2のプレキャスト部材との接合端部近傍においてプレキャスト部材の上面より上方の現場打ちコンクリート部中に突出し、現場打ちコンクリート部の内部には、第1のプレキャスト部材と第2のプレキャスト部材との接合端部を跨ぐように連結鉄筋群が設けられ、現場打ちコンクリート部中に突出した接合用鉄筋群の端部と、連結鉄筋群の両端部は互いに向き合うようにフック状に折り返された形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレキャスト部材と、前記プレキャスト部材の表面を覆う現場打ちコンクリート部から構成されるハーフプレキャストコンクリート版に内包される鉄筋連結構造であって、
互いに隣接する第1のプレキャスト部材と第2のプレキャスト部材とには、それぞれ接合用鉄筋群が埋設され、
前記接合用鉄筋群の端部は、前記第1のプレキャスト部材と前記第2のプレキャスト部材との接合端部近傍において前記プレキャスト部材の上面より上方の前記現場打ちコンクリート部中に突出し、
前記現場打ちコンクリート部の内部には、前記第1のプレキャスト部材と前記第2のプレキャスト部材との接合端部を跨ぐように連結鉄筋群が設けられ、
前記現場打ちコンクリート部中に突出した前記接合用鉄筋群の端部と、前記連結鉄筋群の両端部は互いに向き合うようにフック状に折り返された形状を有することを特徴とする、鉄筋連結構造。
【請求項2】
前記第1のプレキャスト部材及び前記第2のプレキャスト部材には、前記接合端部においてそれぞれ切欠き部が形成され、
前記接合端部には前記切欠き部によって構成される溝部が設けられ、当該溝部には現場打ちコンクリートが充填され前記現場打ちコンクリート部の一部を構成することを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋連結構造。
【請求項3】
前記溝部には、前記連結鉄筋群の少なくとも一部が配置されることを特徴とする、請求項2に記載の鉄筋連結構造。
【請求項4】
前記連結鉄筋群には、当該連結鉄筋群を構成する鉄筋の延伸方向に直交し、当該連結鉄筋群を構成する複数の鉄筋同士を互いに結合させる横結合部材が設けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄筋連結構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄筋連結構造を有し、複数のプレキャスト部材と、前記プレキャスト部材の表面を覆う現場打ちコンクリート部から構成されることを特徴とする、ハーフプレキャストコンクリート版。
【請求項6】
それぞれが請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄筋連結構造を有し、複数のプレキャスト部材で構成され、所定の間隔の間隙部を設けた状態で互いに平行に設置された第1壁部と第2壁部と、を備え、
前記間隙部には現場打ちコンクリートが充填され前記現場打ちコンクリート部を構成することを特徴とする、ハーフプレキャストコンクリート壁。
【請求項7】
前記第1壁部の鉄筋連結構造を構成する連結鉄筋群と、前記第2壁部の鉄筋連結構造を構成する連結鉄筋群とは、連結部材によって互いに連結され一体化されることを特徴とする請求項6に記載のハーフプレキャストコンクリート壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材間の鉄筋連結構造、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート版、及び、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート壁に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造等の鉄筋を有するコンクリート複合構造物や建築物において、複数のコンクリート部材を連結させ、床版部材や壁部材を構成することが知られている。近年では、施工性や工期短縮化といった観点から、工場などで予め製作された部材を現場に搬入し、既設部材に組み付けるといったいわゆるプレキャストコンクリート部材(単にプレキャスト部材とも呼称される)を用い、現場打ちコンクリートと組み合わせて版部材や壁部材を構成する技術が一般的となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成桁を構築するに際し、隣接して配置されるプレキャスト部材(HPCa部)同士を接合鉄筋(いわゆるループ継手)によって接合させ、その上部に現場打ちコンクリート部を打設することでコンクリート製の床版を構築し、その床板と鋼製桁部とを組み合わせることで合成桁を構築する技術が開示されている。特許文献1に係る技術によれば、施工性の向上に加え、支保工の省略といった工期及び工費の削減などが図られる。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、建物の壁をプレキャスト部材(PCa部材)を用いて形成するに際し、鉄筋同士をラップさせ、そこにコンクリートを充填させることで接合させる構成が開示されている。特許文献2に係る技術によれば、プレキャスト部材同士を効率的に接合させて壁を形成させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-101072号公報
【特許文献2】特開2013-53491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、いわゆるループ継手と呼ばれる接合鉄筋を用いて隣接して配置されるプレキャスト部材同士を接合させている。このようなループ継手やスリーブ継手といった手段による部材の接合方法は、接続強度を確保するため、隣接する2つのプレキャスト部材からループ状の鉄筋を突出させ、それらを断面視で重ね合わせた状態で配置して用いる必要がある。
【0007】
特許文献1に開示された接合鉄筋の構成では、重なり合う2つのループ状の鉄筋同士が干渉する恐れがあるため、施工時に隣接するプレキャスト部材同士を配置する際に煩雑な作業を伴う場合がある。また、接合鉄筋の構成において、強度向上のため、そのループ内部に複数の鉄筋を挿通させるといった施工が必要となるため、配筋構成が煩雑化する恐れがある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の構成では、鉄筋継手部(接合部)がプレキャスト部材同士の接合部に設けた溝部(凹部)内に収まっている。例えば、特許文献2の技術において、プレキャスト部材と現場打ちコンクリート部(充填コンクリート)の厚みに着目すると、プレキャスト部材の厚みが十分に厚い場合には十分な接合強度面が確保できる。しかしながら、プレキャスト部材の絶対厚みが薄い、あるいはプレキャスト部材の厚みが現場打ちコンクリート部に比べて相対的に薄い場合には、十分な接合強度の確保が難しいといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の隣接するプレキャスト部材同士を鉄筋を用いて接合させる連結構造において、プレキャスト部材の厚みの大小に関わらず、接合箇所での強度と、施工性や作業性の向上を両立させることが可能なプレキャスト部材間の鉄筋連結構造、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート版、及び、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、複数のプレキャスト部材と、前記プレキャスト部材の表面を覆う現場打ちコンクリート部から構成されるハーフプレキャストコンクリート版に内包される鉄筋連結構造であって、互いに隣接する第1のプレキャスト部材と第2のプレキャスト部材とには、それぞれ接合用鉄筋群が埋設され、前記接合用鉄筋群の端部は、前記第1のプレキャスト部材と前記第2のプレキャスト部材との接合端部近傍において前記プレキャスト部材の上面より上方の前記現場打ちコンクリート部中に突出し、前記現場打ちコンクリート部の内部には、前記第1のプレキャスト部材と前記第2のプレキャスト部材との接合端部を跨ぐように連結鉄筋群が設けられ、前記現場打ちコンクリート部中に突出した前記接合用鉄筋群の端部と、前記連結鉄筋群の両端部は互いに向き合うようにフック状に折り返された形状を有することを特徴とする、鉄筋連結構造が提供される。
【0011】
前記第1のプレキャスト部材及び前記第2のプレキャスト部材には、前記接合端部においてそれぞれ切欠き部が形成され、前記接合端部には前記切欠き部によって構成される溝部が設けられ、当該溝部には現場打ちコンクリートが充填され前記現場打ちコンクリート部の一部を構成しても良い。
【0012】
前記溝部には、前記連結鉄筋群の少なくとも一部が配置されても良い。
【0013】
前記連結鉄筋群には、当該連結鉄筋群を構成する鉄筋の延伸方向に直交し、当該連結鉄筋群を構成する複数の鉄筋同士を互いに結合させる横結合部材が設けられても良い。
【0014】
また、本発明によれば、上記記載の鉄筋連結構造を有し、複数のプレキャスト部材と、前記プレキャスト部材の表面を覆う現場打ちコンクリート部から構成されることを特徴とする、ハーフプレキャストコンクリート版が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、それぞれが上記記載の鉄筋連結構造を有し、複数のプレキャスト部材で構成され、所定の間隔の間隙部を設けた状態で互いに平行に設置された第1壁部と第2壁部と、を備え、前記間隙部には現場打ちコンクリートが充填され前記現場打ちコンクリート部を構成することを特徴とする、ハーフプレキャストコンクリート壁が提供される。
【0016】
前記第1壁部の鉄筋連結構造を構成する連結鉄筋群と、前記第2壁部の鉄筋連結構造を構成する連結鉄筋群とは、連結部材によって互いに連結され一体化されても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の隣接するプレキャスト部材同士を鉄筋を用いて接合させる連結構造において、プレキャスト部材の厚みの大小に関わらず、接合箇所での強度と、施工性や作業性の向上を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鉄筋連結構造を示す概略説明図である。
【
図2】本実施の形態に係る鉄筋連結構造の施工方法を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の他実施形態に係る鉄筋連結構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第2の他実施形態に係る鉄筋連結構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁の概略説明図である。
【
図6】ハーフプレキャストコンクリート壁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第2変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、本明細書の実施の形態においては、例えばコンクリート構造物等の床部材や壁部材に用いられるハーフプレキャストコンクリート版を例示して図示・説明するが、本発明に係る技術はこれに限定されるものではなく、種々の構造物に適用可能である。また、本明細書では、説明のために鉄筋構造や配筋構成について、一部図示を省略する場合や、あるいは、通常は可視されない部材内部の鉄筋等を図示する場合がある。
【0020】
(本発明の実施の形態に係る鉄筋連結構造の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る鉄筋連結構造1を示す概略説明図であり、当該鉄筋連結構造1を含むプレキャスト部材同士の連結部分の概略断面図である。
図1に示すように、ハーフプレキャストコンクリート版10は、隣接する複数のプレキャスト部材12(ここでは第1のプレキャスト部材12aと第2のプレキャスト部材12b)同士を接合させて一体的構造(ここでは下部構造)を構成し、その表面(上面)に上部構造としての現場打ちコンクリート部15を打設して構成される。その際、隣接するプレキャスト部材12a、12bの接合端部近傍には、接合させるための鉄筋連結構造1が設けられる。
【0021】
第1のプレキャスト部材12aには、現場打ちコンクリート部15中に突出する接合用鉄筋群20aが埋設されている。同様に第2のプレキャスト部材12bには、現場打ちコンクリート部15中に端部が突出する接合用鉄筋群20bが埋設されている。
図1のように、これら接合用鉄筋群20(20a、20b)の端部は、隣接するプレキャスト部材12aと12bとの接合端部22の近傍において、プレキャスト部材12の上面より上方の現場打ちコンクリート部15中に突出しており、当該端部は部材内側方向に向かってフック状に折り返された形状を有している。また、これら接合用鉄筋群20(20a、20b)は接合端部22の近傍において突き合わされた状態で互いに干渉しない配置構成となっている。
【0022】
また、現場打ちコンクリート部15の内部には、第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bの表面(上面)近傍において、接合端部22を跨ぐように連結鉄筋群30が埋設されている。連結鉄筋群30を構成する鉄筋の両端部は互いに向き合うようにフック状に折り返されている。
図1のように、断面視において、接合用鉄筋群20の端部と、連結鉄筋群30の端部は重なり合うような位置関係にある。即ち、断面視において、接合用鉄筋群20の端部と連結鉄筋群30の端部とが互いに向き合うような位置関係となっている。
【0023】
本実施の形態に係る鉄筋連結構造1は、これら接合用鉄筋群20(20a、20b)と連結鉄筋群30を例えば
図1のように断面視で端部が重なり合うように配置構成し、現場打ちコンクリート部15を打設させることでいわゆるループ継手を構成するように連結させた構造をいう。
なお、連結鉄筋群30は、例えば複数の鉄筋が平行且つ等間隔で配置された構成である。そこで、必須ではないが、連結鉄筋群30には、平面視で当該連結鉄筋群30の延伸方向に直交し、連結鉄筋群30を構成する複数の鉄筋同士を互いに結合させる横結合部材33が設けられても良い。横結合部材33は1又は複数の棒状鉄筋であっても良く、その結合方法や結合位置は任意であるが、例えば、連結鉄筋群30を施工する際に、接合用鉄筋群20と干渉しないような位置に溶接によって設けることが好ましい。
【0024】
また、プレキャスト部材12の内部には、平面視で接合用鉄筋群20と交差(直交)する方向に伸びる複数の鉄筋からなる下部鉄筋群35が設けられても良い。また、現場打ちコンクリート部15の内部上方には、平面視で接合用鉄筋群20と平行に伸びる上部鉄筋群40と、当該上部鉄筋群40と交差(直交)する方向に伸びる複数の鉄筋からなる上部配力筋群45が設けられても良い。これら下部鉄筋群35、上部鉄筋群40、上部配力筋群45は、ハーフプレキャストコンクリート版10を強固な構造とするために設けられ、例えば、複数の鉄筋同士が等間隔且つ平行となるように伸びる鉄筋群である。
【0025】
(鉄筋連結構造の施工方法)
図2は本実施の形態に係る鉄筋連結構造1の施工方法を示す概略説明図である。なお、
図2において、上記
図1と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
図2(a)に示すように、第1のプレキャスト部材12aと第2のプレキャスト部材12bが隣接配置される。その際、図示のように、接合端部22の近傍においては、接合用鉄筋群20(20a、20b)の端部が上方に向かって突出している。そして、隣接配置された第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bの上方から連結鉄筋群30を下降させて配置する。
【0026】
図2(b)に示すように、第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bの上面において、連結鉄筋群30は、当該上面から突出する接合用鉄筋群20(20a、20b)とは干渉しないように配置される。この状態で、第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bの上面に現場打ちコンクリート部15(
図2では図示せず)が打設され鉄筋連結構造1が構成される。
【0027】
図2に示すように施工された鉄筋連結構造1では、接合用鉄筋群20(20a、20b)と連結鉄筋群30とを端部がフック状に折り返された形状とし、断面視で両者の端部が互いに向き合うような配置構成で施工される。この状態で現場打ちコンクリート部15が打設されることで、接合用鉄筋群20a、20b同士が連結鉄筋群30を介して連続化され、連続した鉄筋を設けた従来の構成と同等以上の接続強度を実現させることができる。また、この鉄筋連結構造1において、その主要部分(接合用鉄筋群20の端部、連結鉄筋群30、及び、横結合部材33)は現場打ちコンクリート部15の内部に位置している。そのため、プレキャスト部材12の絶対厚みが薄い場合や、プレキャスト部材12の厚みが現場打ちコンクリート部15に比べ相対的に薄い場合であっても、十分な接続強度が確保される。
【0028】
(本発明の第1の他実施形態)
図3は本発明の第1の他実施形態に係る鉄筋連結構造1aを示す概略説明図であり、当該鉄筋連結構造1aを含むプレキャスト部材同士の連結部分の概略断面図である。なお、
図3において、上記
図1、2と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態に係る鉄筋連結構造1aは、第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bのそれぞれに、接合端部22において切欠き部50(50a、50b)が形成された構成を有している。この切欠き部50(50a、50b)が形成されていることで、プレキャスト部材12の接合端部22には溝部53が構成される。図示のように、現場打ちコンクリート部15打設時には、この溝部53内も現場打ちコンクリートで充填され、現場打ちコンクリート部15の一部を構成することになる。
【0030】
ここで、本実施形態では、連結鉄筋群30を設ける位置は、上記実施の形態と同様に、第1のプレキャスト部材12a及び第2のプレキャスト部材12bの上面近傍である。
【0031】
本実施の形態に係る鉄筋連結構造1aによれば、第1のプレキャスト部材12aと第2のプレキャスト部材12bとの接合端部22に溝部53を設けている。第1のプレキャスト部材12aと第2のプレキャスト部材12bとが境界線において接する範囲を小さくすることで接続強度の更なる向上が図られる。また、接合用鉄筋群20における鉄筋かぶり(コンクリートから鉄筋までの最小距離)を確保しやすくなり、鉄筋の劣化を抑えることができる。但し、鉄筋連結構造1において、その主要部分(接合用鉄筋群20の端部、連結鉄筋群30、及び、横結合部材33)は現場打ちコンクリート部15の本体部分(溝部53でない部分)の内部に位置している。そのため、プレキャスト部材12の絶対厚みが薄い場合や、プレキャスト部材12の厚みが現場打ちコンクリート部15に比べ相対的に薄い場合であっても、十分な接続強度が確保される。
【0032】
(本発明の第2の他実施形態)
図4は本発明の第2の他実施形態に係る鉄筋連結構造1bを示す概略説明図であり、当該鉄筋連結構造1bを含むプレキャスト部材同士の連結部分の概略断面図である。なお、
図4において、上記
図1~3と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0033】
図4に示すように、本実施の形態に係る鉄筋連結構造1bにおいては、断面積が上記第1の他実施形態に比べて大きな切欠き部50(50a、50b)が形成されている。これにより、溝部53内に連結鉄筋群30の少なくとも一部が配置されるような構造となる。このような構成とすることで、接合用鉄筋群20の直線部の有効高さと、連結鉄筋群30の直線部の有効高さとを一致させた構成を採ることができる。ここで「有効高さ」とは、部材のコンクリート上面からの深さを指す。
【0034】
接合用鉄筋群20と連結鉄筋群30の直線部の有効高さを一致させることで、鉄筋群の有効高さについて概ね同じ断面構成となる。例えば、
図4に示すA-A断面とB-B断面が概ね同じ断面構成となる。これにより、鉄筋連結構造1bやその近傍での位置による強度差が出にくくなり、より強固な構造が実現される。
【0035】
(作用効果)
以上説明した実施の形態及び第1、第2の他実施形態に係る鉄筋連結構造1、1a、1bによれば、プレキャスト部材12と現場打ちコンクリート部15を組み合わせてハーフプレキャストコンクリート版10を構築するに際し、特別な加工や高価な材料を用いることなく、また、現場での複雑な作業を必要とせずに、接合用鉄筋群20a、20b同士を連結鉄筋群30を介して連続化させ、プレキャスト部材同士の接合強度を向上させることができる。
【0036】
また、鉄筋連結構造1、1a、1bにおいて、その主要部分(接合用鉄筋群20の端部、連結鉄筋群30、及び、横結合部材33)は現場打ちコンクリート部15の本体部分の内部に位置している。そのため、プレキャスト部材12の絶対厚みが薄い場合や、プレキャスト部材12の厚みが現場打ちコンクリート部15に比べ相対的に薄い場合であっても、十分な接続強度が確保される。
【0037】
また、鉄筋連結構造1、1a、1bを用いて構築されるハーフプレキャストコンクリート版10においては、プレキャスト部材12と、現場打ちコンクリート部15とを併用したいわゆるハーフプレキャスト構造を採用している。これにより、材料費の低減や工期の短縮が図られ、更には、施工時の作業効率や部材の運搬性を向上させることができる。即ち、施工性の向上と、プレキャスト部材同士の接合強度の向上の両方が実現される。
【0038】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。以下では、本発明に係る変形例について図面等を参照して説明する。なお、以下の変形例に係る説明において、本実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して図示し、説明は省略する場合がある。
【0039】
(本発明の第1変形例)
上記実施の形態においては、鉄筋連結構造1、1a、1bを、床板部材であるハーフプレキャストコンクリート版10を構築する際に用いる場合を図示し説明したが本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。例えば、本発明に係る鉄筋連結構造1を用いて、壁部材(壁体)であるハーフプレキャストコンクリート壁60を構築する場合にも適用される。
【0040】
図5は本発明の第1変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60の概略説明図であり、当該ハーフプレキャストコンクリート壁60におけるプレキャスト部材同士の連結部分の概略平面図である。なお、
図5において、上記実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0041】
図5に示すように、ハーフプレキャストコンクリート壁60は隣接する複数のプレキャスト部材12(ここでは2つのプレキャスト部材12a、12b)同士を接合させて一体的構造とした第1壁部63と、同様の構成を有する第2壁部64とを所定の間隔の間隙部65を設けた状態で互いに平行に設置した構成を有している。第1壁部63及び第2壁部64を構成する複数のプレキャスト部材12同士の連結には、上記実施の形態で説明した鉄筋連結構造1が用いられている。即ち、図示のように、間隙部65内には、接合用鉄筋群20の突出部分や連結鉄筋群30(ここでは一方の連結鉄筋群30aと他方の連結鉄筋群30b)が設けられる構成である。
【0042】
ハーフプレキャストコンクリート壁60には、間隙部65において、接合用鉄筋群20の突出部分や連結鉄筋群30が配置された状態でコンクリートが充填され、現場打ちコンクリート部70が構成される。このような構成により、対向する第1壁部63と第2壁部64が鉄筋連結構造1や現場打ちコンクリート部70を介して一体化され、ハーフプレキャストコンクリート壁60が構築される。
【0043】
図6は本変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60の構築方法を示す概略説明図である。ハーフプレキャストコンクリート壁60の構築方法として、先ず、
図6(a)に示すように所定の間隔でもって第1壁部63と第2壁部64を配置する。そして、連結鉄筋群30aが、第1壁部63から突出する接合用鉄筋群20と平面視で重なり合うような位置で且つ干渉しないように設置される。
【0044】
同様に、連結鉄筋群30bが、第2壁部64から突出する接合用鉄筋群20と平面視で重なり合うような位置で且つ干渉しないように設置される。その際、
図6(b)、(c)に示すように、連結鉄筋群30bは、横結合部材33によって一体化された状態で間隙部65の上方から当該間隙部65に向かって下降させ、その後、第2壁部64に近づけるように接合用鉄筋群20と重なり合うような位置に挿入させても良い。
【0045】
このようにして、第1壁部63と第2壁部64のいずれの表面においても連結鉄筋群30a、30bが設置された状態で間隙部65に現場打ちコンクリート部70が打設され、ハーフプレキャストコンクリート壁60が構築される。本変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60においては、上記実施の形態で説明した鉄筋連結構造1、1a、1bを用いてプレキャスト版同士を接合させ、現場打ちコンクリート部70を打設して一体構造物としている。即ち、ハーフプレキャストコンクリート壁60の構築において施工性の向上と、プレキャスト部材同士の接合強度の向上の両方が実現される。
【0046】
(本発明の第2変形例)
また、上記第1変形例で説明したハーフプレキャストコンクリート壁60を構築するに際し、互いに対向する位置に設置される一方の連結鉄筋群30aと他方の連結鉄筋群30bとを一体化させることで更なる施工性の向上を図ることが考えられる。
図7は本発明の第2変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60aの概略説明図であり、当該ハーフプレキャストコンクリート壁60aにおけるプレキャスト部材同士の連結部分の概略平面図である。なお、
図7において、上記実施の形態や変形例と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0047】
図7に示すように、本変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60aにおいては、上記第1変形例の構成に加え、一方の連結鉄筋群30aと他方の連結鉄筋群30bとを一体化させる連結部材80が設けられている。連結部材80の数や構成は任意であるが、例えば、図示のようにその両端が連結鉄筋群30aと連結鉄筋群30bとにそれぞれ溶接された鋼部材であっても良い。
【0048】
本変形例に係るハーフプレキャストコンクリート壁60aによれば、上記実施の形態や変形例で享受される作用効果に加え、一方の連結鉄筋群30aと他方の連結鉄筋群30bとを連結部材80によって一体化させたため、更なる施工性の向上が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プレキャスト部材間の鉄筋連結構造、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート版、及び、当該鉄筋連結構造を備えたハーフプレキャストコンクリート壁に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b…鉄筋連結構造
10…ハーフプレキャストコンクリート版
12…プレキャスト部材
15…現場打ちコンクリート部
20…接合用鉄筋群
22…接合端部
30…連結鉄筋群
33…横結合部材
35…下部鉄筋群
40…上部鉄筋群
45…上部配力筋群
50…切欠き部
53…溝部
60…ハーフプレキャストコンクリート壁
63…第1壁部
64…第2壁部
65…間隙部
70…現場打ちコンクリート部
80…連結部材