(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068628
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】火災警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/117 20060101AFI20220427BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220427BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G08B17/117
G08B17/00 C
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177411
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 光輝
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AA06
5C085AB01
5C085AC18
5C085CA07
5C085CA16
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB03
5G405AC02
5G405AD09
5G405CA08
5G405CA23
(57)【要約】
【課題】火災現場にいる人の逃げ遅れを抑制することが可能な火災警報器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の火災警報器1は、環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素濃度を検出するCOセンサ2と、環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出する煙センサ3とを備え、煙センサ3により検出される煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に警報を発するように構成される火災警報器1であって、火災警報器1は、COセンサ2により検出される一酸化炭素濃度から血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を算出し、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、煙警報閾値を下げるように構成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素濃度を検出するCOセンサと、環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出する煙センサとを備え、
前記煙センサにより検出される煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に警報を発するように構成される火災警報器であって、
前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度から血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を算出し、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、前記煙警報閾値を下げるように構成される、
火災警報器。
【請求項2】
前記火災警報器は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に応じて、前記算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度を補正し、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が前記所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、前記煙警報閾値を下げるように構成される、
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項3】
前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が、警報を発するための基準となる所定の一酸化炭素警報閾値よりも低い所定の一酸化炭素閾値を超えた時点から、前記一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出を開始するように構成される、
請求項1または2に記載の火災警報器。
【請求項4】
前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が所定値以下となる継続時間が所定時間を超える場合には、前記所定時間を経過した時点までに算出した一酸化炭素ヘモグロビン濃度をゼロとし、下げていた前記煙警報閾値を元の値に戻すように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の火災警報器。
【請求項5】
前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超える場合に警報を発するように構成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の火災警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生を検知するための火災警報器は、「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令」において定められているように、検知される煙濃度が所定の煙警報閾値以上になると警報を発するように構成されている必要がある。採用される煙警報閾値は、例えば5%/m(一種)、10%/m(二種)など、省令で基準が設定されている。火災発生をできるだけ早期に検知して、身の安全を確保するためには、煙警報閾値としてはできるだけ低い5%/m(一種)が採用されることが望ましい。しかしながら、住宅用として使用される火災警報器の場合、煙警報閾値として5%/m(一種)を採用すると、たばこの煙や調理の際に発生する煙などのわずかな煙にも反応して誤報を発してしまう可能性が高くなるために、煙警報閾値として10%/m(二種)が採用されるのが一般的である。
【0003】
火災発生をできるだけ早期に検知するために、たとえば特許文献1に開示されるような火災警報器が用いられている。特許文献1の火災警報器は、煙を検出する煙センサに加えて、一酸化炭素を検出するCOセンサも備えている。特許文献1の火災警報器は、煙センサおよびCOセンサから得られる煙および一酸化炭素の検出量や検出量の変化率が所定の閾値を超えている場合に、火災が発生したと判断して警報を発する。火災が発生する際には、煙の発生の前に一酸化炭素が発生する場合が多く、煙だけでなく一酸化炭素も検出することで火災発生を早期に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の火災警報器では、検出される煙や一酸化炭素に関するパラメータが所定の閾値を超えて、火災が発生したと判断し得る状況になってはじめて警報が発せられる。ところが、火災現場にいる人は、火災が発生したと判断し得る状況になって警報が発せられても、すでに避難が困難となっている場合がある。たとえば、火災現場にいる人は、火災が発生したと判断し得ない低い一酸化炭素濃度が長時間検出されるような状況におかれた場合、火災発生の警告がないまま、血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が増加して、人体機能が低下した状態となる場合がある。そうなると、火災現場にいる人は、その後に火災が発生したと判断し得る状況になってはじめて警報が発せられても、すでに人体機能が低下した状態となっていて、火災現場から逃げ遅れてしまう可能性がある。早期に火災発生を検知するために煙警報閾値や一酸化炭素警報閾値を下げることも考えられるが、やみくもに閾値を下げることは、誤報の発生を誘発することに繋がる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、火災現場にいる人の逃げ遅れを抑制することが可能な火災警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の火災警報器は、環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素濃度を検出するCOセンサと、環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出する煙センサとを備え、前記煙センサにより検出される煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に警報を発するように構成される火災警報器であって、前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度から血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を算出し、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、前記煙警報閾値を下げるように構成されることを特徴とする。
【0008】
また、前記火災警報器は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に応じて、前記算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度を補正し、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が前記所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、前記煙警報閾値を下げるように構成されることが好ましい。
【0009】
また、前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が、警報を発するための基準となる所定の一酸化炭素警報閾値よりも低い所定の一酸化炭素閾値を超えた時点から、前記一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出を開始するように構成されることが好ましい。
【0010】
また、前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が所定値以下となる継続時間が所定時間を超える場合には、前記所定時間を経過した時点までに算出した一酸化炭素ヘモグロビン濃度をゼロとし、下げていた前記煙警報閾値を元の値に戻すように構成されることが好ましい。
【0011】
また、前記火災警報器は、前記COセンサにより検出される一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超える場合に警報を発するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、火災現場にいる人の逃げ遅れを抑制することが可能な火災警報器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る火災警報器のブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る火災警報器が設置されている室内を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるメインステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるサブステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるサブステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるサブステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるサブステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る火災警報器で実施されるサブステップを概略的に示すフローチャートである。
【
図9】室内の床面上の布団を火源により燃焼させたときに、室内の天井に設置された本発明の一実施形態に係る火災警報器で得られた一酸化炭素濃度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度および煙濃度の時間変化を示すグラフである。
【
図10】室内の床面上の布団を火源により燃焼させたときに、室内の天井および火源近傍に設置された本発明の一実施形態に係る火災警報器で得られた一酸化炭素濃度および一酸化炭素ヘモグロビン濃度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る火災警報器を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例にすぎず、本発明の火災警報器は、以下の例に限定されることはない。
【0015】
本実施形態の火災警報器1は、
図1に示されるように、環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素(CO)濃度を検出するCOセンサ2と、環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出する煙センサ3とを備えている。火災警報器1は、煙センサ3により検出される煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に警報を発するように構成されている。火災警報器1は、たとえば、
図2に示されるように、住宅用として住宅の室R内に設置されて使用される。ただし、火災警報器1は、住宅用に限定されることはなく、オフィス等で用いられる自動火災報知設備など他の用途にも使用することができる。火災警報器1は、本実施形態では、
図1に示されるように、制御部4、記憶部5、警報部6および電源部7をさらに備えている。火災警報器1は、内部に設けられた電源部7からの電力供給により、各構成要素が作動するように構成される。ただし、火災警報器1は、外部の電源から電力が供給されてもよい。
【0016】
COセンサ2は、火災警報器1が設置される場所の環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素濃度を検出する。COセンサ2は、本実施形態では、
図1に示されるように、制御部4に通信可能に接続され、制御部4とともに一酸化炭素濃度を検出する。COセンサ2は、環境雰囲気中に含まれる一酸化炭素を検知して、一酸化炭素濃度に対応した出力値を制御部4に送信する。制御部4は、受信した出力値から一酸化炭素濃度を算出する。COセンサ2は、本実施形態では制御部4とは別に構成されているが、制御部4と一体となった構成であってもよい。
【0017】
COセンサ2は、本実施形態では、電気化学式ガスセンサである。電気化学式ガスセンサは、消費電力が低いため、火災警報器1の消費電力を抑制することができる。また火災警報器1が電源部7として電池を用いている場合、消費電力が低いので長期間の使用に適している。電気化学式ガスセンサであるCOセンサ2は、一酸化炭素の酸化反応を利用して、一酸化炭素濃度に対応した電流値を検出し、電流値に対応した出力値を制御部4に送信する。ただし、COセンサ2は、環境雰囲気中の一酸化炭素濃度を検出することができれば、電気化学式ガスセンサに限定されることはなく、半導体式ガスセンサや接触燃焼式ガスセンサなど他のガスセンサであっても構わない。
【0018】
煙センサ3は、火災警報器1が設置される場所の環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出する。煙センサ3は、本実施形態では、
図1に示されるように、制御部4に通信可能に接続され、制御部4とともに煙濃度を検出する。煙センサ3は、環境雰囲気中に含まれる煙を検知して、煙濃度に対応した出力値を制御部4に送信する。制御部4は、受信した出力値から煙濃度を算出する。煙センサ3は、本実施形態では制御部4とは別に構成されているが、制御部4と一体となった構成であってもよい。
【0019】
煙センサ3は、本実施形態では、散乱光式煙センサである。散乱光式煙センサである煙センサ3は、発光部および受光部(図示せず)を備えている。煙センサ3は、発光部からの光が煙粒子により散乱されて生じる散乱光を受光部が受けたときに生じる、煙濃度に対応した電流値を検出し、電流値に対応する出力値を制御部4に送信する。ただし、煙センサ3は、環境雰囲気中に含まれる煙濃度を検出することができれば、散乱光式煙センサに限定されることはなく、他の種類の煙センサであっても構わない。
【0020】
制御部4は、COセンサ2および煙センサ3からの出力値に基づいて、一酸化炭素濃度および煙濃度を算出する。また、制御部4は、以下で述べる処理を行なうための演算処理機能を有している。制御部4は、
図1に示されるように、COセンサ2および煙センサ3に通信可能に接続され、COセンサ2および煙センサ3の動作制御を行なうとともに、COセンサ2および煙センサ3により得られる出力値を受信する。また、本実施形態では、制御部4は、記憶部5および警報部6に通信可能に接続され、各構成要素の動作制御を行なうとともに、各構成要素に対して情報を送受信できるように構成されている。制御部4は、たとえば公知の中央演算処理装置(CPU)などを用いて構成することができる。
【0021】
記憶部5は、一酸化炭素および煙に関する情報を記憶する。記憶部5は、
図1に示されるように、制御部4に通信可能に接続され、制御部4との間で一酸化炭素および煙に関する情報を通信するように構成される。ここでいう一酸化炭素および煙に関する情報には、たとえば、COセンサ2および煙センサ3からの出力値、COセンサ2および煙センサ3からの出力値から算出される一酸化炭素濃度および煙濃度、予め求められているCOセンサ2の出力値と一酸化炭素濃度との間の関係式(検量線)、予め求められている煙センサ3の出力値と煙濃度との間の関係式(検量線)、一酸化炭素警報閾値、煙警報閾値、検出された一酸化炭素濃度から算出される血液中の一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)濃度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値などが含まれる。また、記憶部5は、以下で述べる処理を実行可能なプログラムや計算式などを記憶するように構成されていてもよい。記憶部5は、特に限定されることはなく、RAMなどの公知の揮発性メモリや、ハードディスク、フラッシュメモリなどの公知の不揮発性メモリにより構成することができる。
【0022】
警報部6は、煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に警報を発する。また、警報部6は、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超える場合に警報を発してもよい。警報部6は、
図1に示されるように、制御部4に通信可能に接続され、制御部4の制御により警報を発する。警報部6は、特に限定されることはなく、LED照明やスピーカーなどにより構成され、LED点灯や警告音などの警報を発する。
【0023】
つぎに、
図3~
図8を参照して、本実施形態の火災警報器1の動作を説明する。
図3は、火災警報器1で実施されるメインステップMSを概略的に示すフローチャートである。
図4は、
図3のメインステップMS内で実施されるサブステップSS1を概略的に示すフローチャートである。
図5~
図8はそれぞれ、
図4のサブステップSS1内で任意で実施されるサブステップSS2~SS5を概略的に示すフローチャートである。サブステップSS2~SS5は、実施されなくてもよいし、いずれか1つが実施されてもよいし、いずれか複数が組み合わされて実施されてもよい。なお、以下で説明する動作は、説明する順序に限定されることはなく、説明する順序とは異なる順序で実施されてもよい。
【0024】
火災警報器1は、
図3に示されるように、メインステップMSを実施するように構成される。火災警報器1は、メインステップMSにより、煙センサ3により検出される煙濃度が所定の煙警報閾値(後述するように煙警報閾値が下げられている場合は、下げられた煙警報閾値、以下同じ)を超える場合に警報を発するように構成される。本実施形態では、火災警報器1の煙センサ3が、環境雰囲気中の煙を検知し、煙濃度に対応した出力値を火災警報器1の制御部4に送信する。制御部4は、煙センサ3からの出力値を受信し、その出力値から、記憶部5に記憶された出力値と煙濃度との間の関係式を用いて煙濃度を算出する。それによって、火災警報器1は、煙濃度の検出を行なう(MS1)。つぎに、制御部4は、検出された煙濃度が所定の煙警報閾値を超えるか否かの判定を行なう(MS2)。制御部4は、煙濃度が所定の煙警報閾値を超える場合に、警報部6を作動して火災警報を発する(MS3)。これにより、火災警報器1が設置されている環境にいる人間は、火災が発生している可能性があることを認知することができる。制御部4は、煙濃度が所定の煙警報閾値を超えない場合には、メインステップMSの最初から処理を繰り返す。なお、制御部4は、火災警報を発した後、所定の条件を満たす場合に、火災警報を停止してもよい。ここでいう所定の条件としては、特に限定されることはないが、たとえば、煙濃度が所定の煙警報閾値以下まで下がった場合や、煙濃度が所定の煙警報閾値以下となる時間が所定時間を超えた場合などが例示される。制御部4は、火災警報を停止すると、通常通りメインステップMSを実施する。火災警報器1は、検出された煙濃度を時系列で記憶するように構成されていてもよい。
【0025】
なお、ここでいう煙警報閾値とは、火災が発生している可能性があると判断する際の基準となる煙濃度である。所定の煙警報閾値は、特に限定されることはなく、火災警報器1が設置される環境において火災が発生したと判断し得る煙濃度に応じて適宜設定することができる。所定の煙警報閾値は、たとえば「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令」において二種として定められる10%/mに設定することができる。
【0026】
火災警報器1は、
図3に示されるように、上述したメインステップMSにおいて、サブステップSS1を実施するように構成される。火災警報器1は、
図4に示されるように、サブステップSS1により、COセンサ2により検出される一酸化炭素濃度から血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を算出し、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、煙警報閾値を下げるように構成される。本実施形態では、火災警報器1のCOセンサ2が、環境雰囲気中の一酸化炭素を検知し、一酸化炭素濃度に対応した出力値を火災警報器1の制御部4に送信する。制御部4は、COセンサ2からの出力値を受信し、その出力値から、記憶部5に記憶された出力値と一酸化炭素濃度との間の関係式を用いて一酸化炭素濃度を算出する。それによって、火災警報器1は、一酸化炭素濃度の検出を行なう(SS11)。ここで、火災警報器1は、検出された一酸化炭素濃度を時系列で記憶するように構成されていてもよい。本実施形態では、制御部4は、算出した一酸化炭素濃度を記憶部5に送信し、記憶部5が測定開始からの経過時間とともに一酸化炭素濃度を記憶する(SS12)。つぎに、制御部4は、検出された一酸化炭素濃度から人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を算出する(SS13)。制御部4は、算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えるか否かを判定する(SS14)。制御部4は、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合には、煙警報閾値を下げて(SS15)、サブステップSS1を終了する。一方、制御部4は、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えない場合には、サブステップSS1を終了する。このとき、煙警報閾値を既に下げていた場合には、制御部4は、下げていた煙警報閾値を元の値に戻す。制御部4は、サブステップSS1を終了すると、上述したメインステップMSの後の処理を実施する。
【0027】
なお、ここでいう一酸化炭素ヘモグロビン濃度とは、火災警報器1が設置される環境に人間がいた場合に、その人間の血液中に生成されると推定される一酸化炭素ヘモグロビンの濃度である。一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、人間が一酸化炭素に曝された時間とその時の一酸化炭素濃度とに応じて求める(推定する)ことが可能である。一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、特に限定されることはなく、たとえば、実験的または経験的に得られた、一酸化炭素濃度および曝露時間と人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度との間の関係から求めることもできるし、「家庭用ガス器具の低換気率室内での燃焼(酸欠燃焼)の危険性」(安全工学 Vol.19 No.4(1980)」で報告された公知の式を用いて算出することもできるし、そのような公知の式に基づいて新たに作成した式を用いて算出することもできる。一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出に上記の式を用いる場合には、環境雰囲気に含まれる酸素濃度も必要になるが、その際に、酸素濃度として、空気中に通常存在する酸素濃度を採用してもよいし、火災警報器1に任意で設けた酸素センサにより検出される酸素濃度を採用してもよい。
【0028】
また、ここでいう一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値とは、火災警報器1が設置される環境にいる人間の機能に障害が生じていて、その人間がその環境から脱出することに支障が生じる可能性があると判断する際に基準となる一酸化炭素ヘモグロビンの濃度である。所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値は、特に限定されることはなく、人間の機能に障害が生じていると判断し得る一酸化炭素ヘモグロビン濃度に応じて適宜設定することができる。一般的には、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が10%を超えると軽い頭痛や皮下血管の拡張が生じ、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が20%を超えると頭痛や頭側部の拍動が生じ、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が30%を超えると激しい頭痛、めまい、視力混濁、嘔吐、唇・皮膚粘膜の桃赤色への変化が生じると言われている。所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値は、火災警報器1が設置される環境から人間が脱出するのに障害となり得る機能低下を考慮して、たとえば軽い頭痛や皮下血管の拡張が生じる10%に設定することができる。
【0029】
また、ここでいう煙警報閾値を下げるとは、予め設定されている煙警報閾値よりも低い値に煙警報閾値を設定し直すことを意味する。低く設定し直される煙警報閾値は、少なくとも予め設定される煙警報閾値よりも低ければよく、特に限定されることはないが、たとえば「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令」において一種として定められる5%/mに設定することができる。
【0030】
以上に示したように、火災警報器1は、一酸化炭素濃度から算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、予め設定される煙警報閾値よりも低い煙警報閾値が設定され、その低く設定された煙警報閾値よりも煙濃度が高くなると警報を発するように構成される。したがって、火災警報器1が設置される環境(火災現場)にいる人間は、機能障害が生じ得る状態にあっても煙濃度が比較的低い段階で火災の発生を認知して逃げ始めることができるため、火災現場から逃げ遅れることが抑制される。また、人間の機能が低下している可能性が高い場合に限って煙警報閾値を下げることにより、誤報の発生を抑制しながら、火災検知の精度を高めることができる。
【0031】
ここで
図9を参照して、上述したサブステップSS1を含むメインステップMSの具体例を説明する。
図9は、
図2に示されるように室R内において床面F上の布団Dを火源(ヒータ)Hにより燃焼させて燻焼火災を生じさせたときに、天井Cに設けられた火災警報器1で得られた一酸化炭素濃度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度および煙濃度の時間変化を示している。
図9を参照すると、火源Hの駆動開始から15分を超えたあたりから一酸化炭素濃度が上昇し始め、それに伴って一酸化炭素ヘモグロビン濃度も上昇し始めることが分かる。一方、煙濃度は、火源Hの駆動開始から50分を超えたあたりから上昇し始める。たとえば、予め設定される煙警報閾値が10%/mである場合に、上述したサブステップSS1を実施しなければ、火源Hの駆動開始から約74分後に煙濃度が煙警報閾値を超えて、警報が発せられる。たとえば、一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を10%に設定して上述したサブステップSS1を実施した場合には、火源Hの駆動開始から約54分後に、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えて、煙警報閾値が下げられる。たとえば、下げられる煙警報閾値を5%/mとした場合には、火源Hの駆動開始から約70分後に煙濃度が既に下げられた煙警報閾値を超えることとなり、この時点で警報が発せられる。つまり、本実施形態の火災警報器1によれば、人間の機能が低下している可能性がある場合には、通常よりも約4分早く警報が発せられる。これにより、火災警報器1が設置される環境(火災現場)にいる人間は、機能障害が生じ得る状態にあっても煙濃度が低い段階で火災の発生を認知して逃げ始めることができるため、火災現場から逃げ遅れることが抑制される。
【0032】
火災警報器1は、上述したように、メインステップMSのサブステップSS1においてサブステップSS2~SS5のうちのいずれか1つまたは複数を実施するように構成されてもよい。たとえば、火災警報器1は、
図4に示されるように、サブステップSS1においてサブステップSS2を実施するように構成されてもよい。火災警報器1は、
図5に示されるように、サブステップSS2により、COセンサ2により検出される一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超える場合に警報を発するように構成される。本実施形態では、
図4に示されるように、火災警報器1は、サブステップSS1において、一酸化炭素濃度の検出を行なう(SS11)。つぎに、火災警報器1の制御部4は、
図5に示されるように、サブステップSS2において、検出された一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超えるか否かの判定を行なう(SS21)。制御部4は、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超える場合に、警報部6を作動してCO警報を発する(SS22)。これにより、火災警報器1が設置されている環境にいる人間は、火災が発生している可能性があることを認知することができる。たとえば、燻焼火災のように火炎が生じない場合には、一酸化炭素の発生からかなり遅れて煙が発生することがある(たとえば
図9参照)。このような場合でも、火災警報器1が設置される環境にいる人間は、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超えた時点で警報が発せられることで、早期に火災を認知することができる。一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値を超えない場合には、制御部4は、サブステップSS2を終了して、サブステップSS1の後の処理を実施する。なお、制御部4は、CO警報を発した後、所定の条件を満たす場合に、CO警報を停止してもよい。ここでいう所定の条件としては、特に限定されることはないが、たとえば、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値以下まで下がった場合や、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素警報閾値以下となる時間が所定時間を超えた場合などが例示される。制御部4は、CO警報を停止すると、サブステップSS2を終了して、サブステップSS1の後の処理を実施する。
【0033】
ここでいう一酸化炭素警報閾値とは、火災が発生している可能性があると判断する際の基準となる一酸化炭素濃度である。所定の一酸化炭素警報閾値は、特に限定されることはなく、火災警報器1が設置される環境において火災が発生したと判断し得る一酸化炭素濃度に応じて適宜設定することができる。所定の一酸化炭素警報閾値は、たとえば100ppmなどに設定することができる。
【0034】
火災警報器1は、
図4に示されるように、サブステップSS1においてサブステップSS3を実施するように構成されてもよい。火災警報器1は、
図6に示されるように、サブステップSS3により、COセンサ2により検出される一酸化炭素濃度が、所定の一酸化炭素閾値を超えた時点から、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出を開始するように構成される。本実施形態では、
図4に示されるように、火災警報器1は、サブステップSS1において、一酸化炭素濃度の検出を行なう(SS11)。つぎに、火災警報器1の制御部4は、
図6に示されるように、サブステップSS3において、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理が継続中か否かの判定を行なう(SS31)。つまり、制御部4は、前回の一酸化炭素濃度検出時に一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理を行なったか否かの判定を行なう。制御部4は、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理が継続中であれば、サブステップSS3を終了して、サブステップSS1の後の処理(一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理)を実施する。制御部4は、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理が継続中でなければ、検出された一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素閾値を超えるか否かの判定を行なう(SS32)。制御部4は、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素閾値を超える場合に、サブステップSS3を終了して、サブステップSS1の後の処理(一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理)を実施する。このように一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素閾値を超えた時点で一酸化炭素ヘモグロビン濃度の算出処理を開始することで、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇に実質的に影響を及ぼさない程度の一酸化炭素濃度の計測データを排除することができ、それによって一酸化炭素ヘモグロビン濃度を精度よく算出することができる。制御部4は、一酸化炭素濃度が所定の一酸化炭素閾値を超えない場合には、サブステップSS1を終了して、メインステップMSの後の処理を実施する。
【0035】
ここでいう一酸化炭素閾値とは、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇に影響を及ぼす可能性があると判断する際の基準となる一酸化炭素の濃度である。所定の一酸化炭素閾値は、特に限定されることはなく、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇に影響を及ぼす可能性があると判断し得る一酸化炭素濃度に応じて適宜設定することができる。所定の一酸化炭素閾値は、たとえば警報を発するための基準となる所定の一酸化炭素警報閾値よりも低い値に設定することができ、たとえば50ppmなどに設定することができる。
【0036】
火災警報器1は、
図4に示されるように、サブステップSS1においてサブステップSS4を実施するように構成されてもよい。火災警報器1は、
図7に示されるように、サブステップSS4により、COセンサ2により検出される一酸化炭素濃度が所定値以下となる継続時間が所定時間を超える場合には、所定時間を経過した時点までに算出した一酸化炭素ヘモグロビン濃度をゼロとし、下げていた煙警報閾値を元の値に戻すように構成される。本実施形態では、
図4に示されるように、火災警報器1は、サブステップSS1において、一酸化炭素濃度の検出を行なう(SS11)。つぎに、火災警報器1の制御部4は、
図7に示されるように、サブステップSS4において、一酸化炭素濃度が所定値以下か否かの判定を行なう(SS41)。制御部4は、一酸化炭素濃度が所定値以下の場合には、以下のさらなる処理を実施し、一酸化炭素濃度が所定値を超える場合には、サブステップSS4を終了して、サブステップSS1の後の処理を実施する。一酸化炭素濃度が所定値以下の場合、制御部4は、一酸化炭素濃度が所定値以下である継続時間が所定時間を超えるか否かの判定を行なう(SS42)。制御部4は、継続時間が所定時間を超える場合には、所定時間を経過した時点までに算出した一酸化炭素ヘモグロビン濃度をゼロとし、所定時間を経過した時点において煙警報閾値を下げていた場合には煙警報閾値を元の値に戻す(SS43)。そして、制御部4は、サブステップSS1を終了して、メインステップMSの後の処理を実施する。一方、制御部4は、一酸化炭素濃度が所定値以下である継続時間が所定時間を超えない場合には、サブステップSS4を終了して、サブステップSS1の後の処理を実施する。一酸化炭素濃度が所定値以下である継続時間が所定時間を超える場合には、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が下がっている可能性が高い。そのような場合に、一酸化炭素ヘモグロビン濃度をゼロに設定(リセット)することで、一酸化炭素濃度があらためて上昇した時に人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度をより精度よく算出(推定)することができる。また、煙警報閾値を下げている場合に煙警報閾値を元の値に戻すことにより、誤報の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、一酸化炭素濃度に対する所定値とは、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇に影響を及ぼさないと判断する際の基準となる一酸化炭素の濃度である。所定値は、特に限定されることはなく、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇に影響を及ぼさないと判断し得る一酸化炭素濃度に応じて適宜設定することができる。所定値は、たとえば警報を発するための基準となる所定の一酸化炭素警報閾値よりも低い値に設定することができ、より具体的には、たとえば建築物環境衛生管理基準における室内空気中の一酸化炭素濃度基準である10ppmなどに設定することができる。
【0038】
また、一酸化炭素濃度が所定値以下である継続時間に対する所定時間とは、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が、人間の機能低下が生じないレベルにまで回復(低下)していると想定する際に基準となる時間である。所定時間は、特に限定されることはなく、人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が人間の機能低下の生じないレベルにまで回復(低下)していると想定し得る時間に応じて適宜設定することができる。所定時間は、たとえば数分間~数時間(たとえば一酸化炭素ヘモグロビンの半減期を採用する場合には3~4時間)に設定することができる。
【0039】
火災警報器1は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に応じて、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度を補正するように構成されてもよい。そして、火災警報器1は、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、煙警報閾値を下げるように構成されてもよい。本実施形態では、火災警報器1の制御部4は、
図4に示されるように、サブステップSS1において、算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えるか否かを判定する(SS14)。制御部4は、この処理SS14に代えて、
図8に示されるサブステップSS5を実施する。制御部4は、サブステップSS5において、算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度を、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に応じて補正する(SS51)。そして、制御部4は、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えるか否かを判定する(SS52)。制御部4は、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超える場合に、サブステップSS5を終了してサブステップSS1に戻り、煙警報閾値を下げる(SS15)。制御部4は、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が所定の一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値を超えない場合には、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度を元の一酸化炭素ヘモグロビン濃度に戻してサブステップSS1を終了して、メインステップMSの後の処理を実施する。
【0040】
ここで、火災警報器1は、一般的には、室内の天井や壁に設置される。それに対して、火災発生場所は、たとえばタバコの不始末による火災などのように、室内の床面やその周辺である場合が多い。火災発生場所の近くの一酸化炭素濃度は、火災発生場所から離れた場所である天井や壁の近くの一酸化炭素濃度よりも高い可能性がある。これに伴って、火災発生場所の近くにいる人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、火災発生場所から離れた場所で検出された一酸化炭素濃度に基づいて算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度よりも高い可能性がある。たとえば、
図10は、
図2に示されるように火源H近傍に設置された火災警報器1と天井Cに設置された火災警報器1との設置場所の違いによる一酸化炭素濃度および一酸化炭素ヘモグロビン濃度の時間変化の違いを示している。火源H近傍に設置された火災警報器1では、火源Hから離れた天井Cに設置された火災警報器1と比べて、一酸化炭素が検知され始める時間が早く、検出される一酸化炭素濃度が高い。これに伴って、火源H近傍の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が、天井C近くの一酸化炭素ヘモグロビン濃度よりも、早く上昇し始めるとともに、高くなっている。このように、火災発生場所から離れた位置に火災警報器が設置されると、火災発生場所の近くにいる人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を小さく算出(推定)してしまう可能性がある。それに対して、上述したように、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に応じて、算出される一酸化炭素ヘモグロビン濃度を補正することで、火災発生場所の近くにいる人間の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度をより正確に推定することができる。そして、補正された一酸化炭素ヘモグロビン濃度に基づいて煙警報閾値を変更することで、より正確に火災警報を発することができ、火災発生場所の近くにいる人間の逃げ遅れをより確実に抑制することができる。
【0041】
一酸化炭素ヘモグロビン濃度の補正は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離に基づいて行われる。たとえば、一酸化炭素濃度は、室内に火災発生場所がある場合に、火災発生場所からの水平距離および垂直距離に応じて変化することが知られている。したがって、一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の水平距離および垂直距離に応じて補正することができる。たとえば、実験的または経験的に求められる、実際の火災発生場所(またはその近傍)の一酸化炭素ヘモグロビン濃度と火災警報器1が設置される場所の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の関係から、一酸化炭素ヘモグロビン濃度を補正するための補正式を求めることができる。補正式は、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離が一定の範囲内にある場合には、距離に対して一定とすることもできる。また、本実施形態では、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の補正に際して、想定される火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離が採用されるが、熱センサなどから求めた実際の火災発生場所と火災警報器が設置される設置場所との間の距離が採用されてもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、サブステップSS5において、算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が補正される。しかし、算出された一酸化炭素ヘモグロビン濃度が補正される代わりに、一酸化炭素ヘモグロビン濃度閾値が補正されても、上記効果と同様の効果が奏される。また、サブステップSS1における判定処理SS14からサブステップSS5への変更は、たとえば火災警報器1が設置される際に、火災警報器1に設けられたスイッチにより切り替えることなどにより行なうことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 火災警報器
2 COセンサ
3 煙センサ
4 制御部
5 記憶部
6 警報部
7 電源部
C 天井
D 布団
F 床面
H 火源
MS メインステップ
R 室
SS1、SS2、SS3、SS4、SS5 サブステップ