IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-継手構造および変圧器 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068647
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】継手構造および変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 29/02 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
H01F29/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177437
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍郎
(57)【要約】
【課題】ガスケットを密閉容器の外側から交換することができる継手構造を提供する。
【解決手段】継手構造(10)は、密閉容器の開口部から内部へ挿入される軸部材(11)と、軸部材の一部を収容する管部材(12)と、軸部材が貫通する第1貫通孔部を有し、管部材が第1貫通孔部と連通する内側継手(13)と、第1貫通孔部と連通する第2貫通孔部を有し、第2貫通孔部において軸部材を回転可能に、かつ密閉状態で支持する外側継手(14)と、を備え、管部材と内側継手とが接続された状態で、内側継手と外側継手との結合を解除可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器の開口部から前記密閉容器の内部へ挿入され、前記密閉容器に収容された第1構造物に接続される軸部材と、
前記第1構造物と接続されている前記密閉容器に収容された第2構造物に接続され、前記軸部材の一部を内部に収容する管部材と、
前記開口部を塞ぐように前記密閉容器の外壁に固定される内側継手であって、前記軸部材が貫通する第1貫通孔部を有し、前記管部材が前記第1貫通孔部と連通するように接続される内側継手と、
前記第1貫通孔部を囲うように設けられたガスケットを介して前記内側継手に重畳した状態で前記内側継手に結合される外側継手であって、前記第1貫通孔部と連通する第2貫通孔部を有し、当該第2貫通孔部において前記軸部材を当該軸部材の軸芯周りで回転可能に、かつ密閉状態で支持する外側継手と、
を備え、
前記管部材と前記内側継手とが互いに接続された状態で、前記内側継手と前記外側継手との結合を解除可能である継手構造。
【請求項2】
前記内側継手と前記管部材とを締結する第1締結部材と、
前記密閉容器の外側から前記内側継手と前記外側継手とを締結する第2締結部材とをさらに備える、請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記内側継手は、前記第1締結部材を埋め込み可能な凹部を前記密閉容器の外側方向端部に有する第1締結部材用孔部を備え、
前記第1締結部材は、前記密閉容器の外側から前記第1締結部材用孔部に挿入される、請求項2に記載の継手構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の継手構造を備える変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は継手構造、および当該継手構造を備える変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉容器の開口部を貫通するパイプ等を保持し、当該開口部を密閉するように設けられる継手構造が知られている。例えば、特許文献1には、真空容器の開口部を気密に塞ぐように固定されたハウジング(継手)と、端部付近が開口部およびハウジングを貫通しているパイプ(管)とを備えるパイプ保持接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-138598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載の構成では、管の内部を、当該管を冷却するための流体が流れる。一方で、密閉容器の外部からの動力を密閉容器の内部にある構造物に伝達することについては、引用文献1には何ら開示されていない。
【0005】
本発明の一態様は、密閉容器に挿入された軸を回転可能に支持し、かつガスケットを密閉容器の外側から交換することができる継手構造などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る継手構造は、密閉容器の開口部から前記密閉容器の内部へ挿入され、前記密閉容器に収容された第1構造物に接続される軸部材と、前記第1構造物と接続されている前記密閉容器に収容された第2構造物に接続され、前記軸部材の一部を内部に収容する管部材と、前記開口部を塞ぐように前記密閉容器の外壁に固定される内側継手であって、前記軸部材が貫通する第1貫通孔部を有し、前記管部材が前記第1貫通孔部と連通するように接続される内側継手と、前記第1貫通孔部を囲うように設けられたガスケットを介して前記内側継手に重畳した状態で前記内側継手に結合される外側継手であって、前記第1貫通孔部と連通する第2貫通孔部を有し、当該第2貫通孔部において前記軸部材を当該軸部材の軸芯周りで回転可能に、かつ密閉状態で支持する外側継手と、を備え、前記管部材と前記内側継手とが互いに接続された状態で、前記内側継手と前記外側継手との結合を解除可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、密閉容器に挿入された軸を回転可能に支持し、かつガスケットを密閉容器の外側から交換することができる継手構造などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る継手構造が適用された密閉容器の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。
【0010】
(密閉容器100の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る継手構造10が適用された密閉容器100の一部の断面図である。図1に示すように、密閉容器100は、継手構造10、天板20、第1構造物30、および第2構造物40を備える。密閉容器100は、例えば、絶縁用の油またはガスが充填された筐体である。密閉容器100は、例えば、変圧器である。この場合、密閉容器100は、変圧比を切り換えるためのタップ(図示せず)をさらに備える。天板20は、密閉容器100の上面に位置する、密閉容器100の外壁の一部である。天板20には、開口部21が設けられている。ただし、密閉容器100は、側壁などの、天板20以外の外壁に開口部を有していてもよい。
【0011】
第1構造物30および第2構造物40は、密閉容器100の内部に収容され、密閉容器100に固定されている内部構造物の一部である。第1構造物30は、例えば平歯車および回転軸などを含む、動力伝達用の部材である。第1構造物30は、例えば変圧器の変圧比を切り換えるためのタップの操作を受け付ける部材(タップ切換器)である。第2構造物40は、第1構造物30と接続されている。第2構造物40は、例えば第1構造物30における回転軸と接続され、第1構造物30を収容する筐体である。第2構造物40は、例えば、第1構造物30としてのタップ切換器の筐体である。
【0012】
(継手構造10の構成)
継手構造10は、軸部材11、管部材12、内側継手13、外側継手14、ガスケット15、およびパッキン16を備える。継手構造10は、軸部材11および管部材12を密閉容器100に密閉状態で接続する継手構造である。
【0013】
軸部材11は、密閉容器100の開口部21から密閉容器100の内部へ挿入される円柱形状の部材である。軸部材11は、密閉容器100の内部において、第1構造物30に接続される。軸部材11を手動などの方法により回転させることで、第1構造物30を操作することができる。軸部材11の材質および太さは、第1構造物30を操作するための動力に応じて適宜決定されればよい。
【0014】
管部材12は、第2構造物40と接続される、中空の円筒形状の部材である。管部材12は、軸部材11の一部を内部に収容している。管部材12の内径は、軸部材11の外径よりも大きい。管部材12は、管部材12の軸心が軸部材11の軸心と略一致するように設けられる。管部材12は、密閉容器100の内部において第2構造物40と接続され、第2構造物40を支持している。なお、第1構造物30および第2構造物40は、密閉容器100に固定されている内部構造物に支持されている。つまり、第2構造物40は、管部材12および内部構造物に支持されている。管部材12の外径および厚さは、第2構造物40を支持するために好適なものに適宜決定されればよい。
【0015】
内側継手13は、開口部21を塞ぐように密閉容器100の天板20に固定される。図1に示した例では、内側継手13は、天板20に溶接される。内側継手13は、軸部材11が貫通する第1貫通孔部13aを有する。第1貫通孔部13aの内径は、軸部材11の外径よりわずかに大きい。管部材12は、第1貫通孔部13aと連通するように内側継手13に接続される。内側継手13は、第1貫通孔部13aの軸心が軸部材11の軸心と略一致するように設けられる。
【0016】
外側継手14は、内側継手13に重畳するように設けられる。外側継手14は、軸部材11の一部が通っている第2貫通孔部14aを有する。第2貫通孔部14aは、第1貫通孔部13aと連通する。第2貫通孔部14aの内径は、軸部材11の外径と略一致する。第2貫通孔部14aの、軸部材11と対向する部分には、パッキン16が設けられている。パッキン16は、軸部材11と外側継手14との間を密閉するシール部材である。具体的には、パッキン16は、例えばOリングである。したがって、外側継手14は、第2貫通孔部14aにおいて、軸部材11を軸芯周りで回転可能に、かつ密閉状態で支持することができる。
【0017】
ガスケット15は、第1貫通孔部13aを囲うように内側継手13と外側継手14との間に挟まれて設けられる。外側継手14は、ガスケット15を介して内側継手13に重畳した状態で内側継手13に結合される。ガスケット15は、内側継手13と外側継手14との間を密閉するシール部材である。したがって、ガスケット15およびパッキン16により、継手構造10が備える部材間の隙間が密閉され、密閉容器100が密閉状態となる。
【0018】
継手構造10においては、管部材12と内側継手13とが互いに接続された状態で、内側継手13と外側継手14との結合を解除可能である。具体的には、継手構造10は、第1締結部材17および第2締結部材18をさらに備える。第1締結部材17は、管部材12と内側継手13とを締結することにより結合させる。第2締結部材18は、内側継手13と外側継手14とを締結することにより結合させる。
【0019】
管部材12は、内側継手13に接続される端部に、他の部分よりも厚みが径方向外側へ拡大されている部分である締結部12aを有する。締結部12aは、密閉容器100の外側方向端部から内側方向に延びる第1タップ孔部12bを有する。内側継手13は、第1タップ孔部12bに対応する位置において、密閉容器100の外側方向端部から内側方向端部に貫通する第1締結部材用孔部13bを有する。第1締結部材17は、密閉容器100の外側から第1タップ孔部12bおよび第1締結部材用孔部13bに挿入される。第1締結部材17の例として六角穴付きボルトが挙げられるがこれに限らない。
【0020】
第1締結部材用孔部13bは、密閉容器100の外側方向端部に、第1締結部材17の頭部を収納するためのザグリ孔として、第1締結部材17を埋め込み可能な凹部13cを有する。第1締結部材17の頭が凹部13cに埋め込まれることで、第1締結部材17と対向する外側継手14の領域を平坦な形状とすることができる。
【0021】
内側継手13は、第1締結部材用孔部13bよりも軸部材11から離れた位置において、密閉容器100の外側方向端部から内側方向に延びる第2タップ孔部13dを有する。外側継手14は、第2タップ孔部13dに対応する位置において、密閉容器100の外側方向端部から内側方向端部に貫通する第2締結部材用孔部14bを有する。第2締結部材18は、密閉容器100の外側から第2タップ孔部13dおよび第2締結部材用孔部14bに挿入される。第2締結部材18は、例えば六角ボルトである。
【0022】
継手構造10においては、ユーザは密閉容器100の外側からアクセスし、第2締結部材18を取り外すことで、内側継手13と外側継手14との結合を解除することができる。内側継手13と外側継手14との結合が解除された状態であれば、外側継手14を内側継手13から取り外すことができる。管部材12および内側継手13は第1締結部材17により互いに結合しているため、第2締結部材18を取り外しても結合が維持される。したがって、継手構造10においては、管部材12が内側継手13、すなわち密閉容器100に固定された状態で、外側継手14を内側継手13から取り外すことができる。
【0023】
簡単のため、図1においては、第1タップ孔部12b、第1締結部材用孔部13b、凹部13c、第2タップ孔部13d、および第2締結部材用孔部14bを、それぞれ1つのみ示している。しかし、第1タップ孔部12b、第1締結部材用孔部13b、凹部13c、第2タップ孔部13d、および第2締結部材用孔部14bは、管部材12および内側継手13の間、または内側継手13および外側継手14の間に必要な結合力に応じて、適切な数設けられれば良い。また、(i)第1タップ孔部12b、第1締結部材用孔部13b、および凹部13cの数と、(ii)第2タップ孔部13dおよび第2締結部材用孔部14bの数とは互いに異なっていてもよい。
【0024】
(継手構造10の作用効果)
継手構造10においては、軸部材11は、内側継手13に接続された管部材12に一部を収容された状態で、第1構造物30に接続されている。軸部材11は、内側継手13と重畳して結合された外側継手14により、軸芯周りで回転可能に、かつ密閉状態で支持されている。このため、軸部材11を回転させることで、第1構造物30に回転を伝達できる。
【0025】
また、継手構造10においては、管部材12と内側継手13とを締結した状態で、外側継手14と内側継手13との結合を密閉容器100の外側から解除可能である。したがって、密閉容器100のメンテナンスにおいて、外側継手14を内側継手13から取り外し、ガスケット15を交換することができる。また、パッキン16についても同様に、管部材12と内側継手13とを締結した状態で交換することができる。
【0026】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る継手構造は、密閉容器の開口部から前記密閉容器の内部へ挿入され、前記密閉容器に収容された第1構造物に接続される軸部材と、前記第1構造物と接続されている前記密閉容器に収容された第2構造物に接続され、前記軸部材の一部を内部に収容する管部材と、前記開口部を塞ぐように前記密閉容器の外壁に固定される内側継手であって、前記軸部材が貫通する第1貫通孔部を有し、前記管部材が前記第1貫通孔部と連通するように接続される内側継手と、前記第1貫通孔部を囲うように設けられたガスケットを介して前記内側継手に重畳した状態で前記内側継手に結合される外側継手であって、前記第1貫通孔部と連通する第2貫通孔部を有し、当該第2貫通孔部において前記軸部材を当該軸部材の軸芯周りで回転可能に、かつ密閉状態で支持する外側継手と、を備え、前記管部材と前記内側継手とが互いに接続された状態で、前記内側継手と前記外側継手との結合を解除可能である。
【0027】
上記の構成によれば、軸部材は、内側継手に接続された管部材に一部を収容された状態で、軸芯周りで回転し、第1構造物に当該回転を伝達できる。ガスケットを介して内側継手に重畳した状態で結合される外側継手は、管部材と内側継手とが互いに接続された状態で、内側継手との結合を解除可能である。したがって、継手構造によれば、密閉容器に挿入された軸を回転可能に支持し、かつガスケットを密閉容器の外側から交換することができる。
【0028】
また、本発明の態様2に係る継手構造は、前記内側継手と前記管部材とを締結する第1締結部材と、前記密閉容器の外側から前記内側継手と前記外側継手とを締結する第2締結部材とをさらに備える。
【0029】
上記の構成によれば、内側継手と管部材とを第1締結部材により締結した状態で、第2締結部材のみを取り外すことで、内側継手と外側継手との結合を解除できる。したがって、管部材が密閉容器に固定された状態で外側継手を内側継手から取り外し、ガスケットを交換することができる。
【0030】
また、本発明の態様3に係る継手構造において、前記内側継手は、前記第1締結部材を埋め込み可能な凹部を前記密閉容器の外側方向端部に有する第1締結部材用孔部を備え、前記第1締結部材は、前記密閉容器の外側から前記第1締結部材用孔部に挿入される。
【0031】
上記の構成によれば、内側継手と対向する外側継手の面を、第1締結部材を埋め込み可能な凹部を有しない平坦な形状とすることができる。
【0032】
また、本発明の態様4に係る変圧器は、態様1から3のいずれかに記載の継手構造を備える。
【0033】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10 継手構造
11 軸部材
12 管部材
13 内側継手
13c 凹部
14 外側継手
15 ガスケット
16 パッキン
17 第1締結部材
18 第2締結部材
20 天板
30 第1構造物
40 第2構造物
100 密閉容器(変圧器)
図1