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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068652
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】水素供給装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220427BHJP
   F17C 7/00 20060101ALI20220427BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220427BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20220427BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20220427BHJP
   B60K 15/01 20060101ALI20220427BHJP
   B60K 15/077 20060101ALI20220427BHJP
   B60K 15/10 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H01M8/04 J
F17C7/00 A
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
B60K15/01 B
B60K15/077
B60K15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177443
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
【テーマコード(参考)】
3D038
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3D038CA03
3D038CA12
3D038CA15
3D038CB01
3D038CC18
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172EB02
3E172EB11
3E172JA09
3E172KA03
3E172KA22
5H127AB04
5H127AB22
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BA60
5H127DB83
5H127DC02
5H127DC08
(57)【要約】
【課題】複数の水素タンクを備える水素供給装置の寿命を長くする。
【解決手段】水素供給装置は、複数の水素タンク、開閉弁、および制御部を備え、燃料電池システムにおいて燃料電池に水素ガスを供給する。開閉弁は、複数の水素タンクそれぞれに対して設けられる。制御部は、燃料電池の動作時に、容量が最も大きい水素タンク以外の水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御する。或いは、制御部は、容量が最も小さい水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムにおいて燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置であって、
複数の水素タンクと、
前記複数の水素タンクそれぞれに対して設けられた開閉弁と、
各開閉弁を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の動作時に、容量が最も大きい水素タンク以外の水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから前記燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御する
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、容量が最も小さい水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから前記燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の水素供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、選択した水素タンクに対して設けられている開閉弁のみを開き、他の開閉弁を閉じる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水素供給装置。
【請求項4】
各水素タンクの残量を検出する残量センサをさらに備え、
前記制御部は、
対応する開閉弁が開いている第1の水素タンクの残量が所定の閾値より少なくなったときに第2の水素タンクを選択し、
前記第2の水素タンクに対して設けられている開閉弁を開いた後に、前記第1の水素タンクに対して設けられている開閉弁を閉じる
ことを特徴とする請求項3に記載の水素供給装置。
【請求項5】
前記水素供給装置を有する燃料電池システムは産業車両に搭載されており、
前記産業車両は、前記燃料電池の動作に係わる指示を前記水素供給装置に与えるスイッチを備え、
前記制御部は、前記指示に基づいて各開閉弁を制御する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の水素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水素タンクを備える水素供給装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両に搭載された燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置は、例えば、高圧の水素ガスが充填された高圧水素タンク、或いは、水素ガスを可逆的に吸蔵/放出可能な水素吸蔵合金が充填された水素吸蔵タンクを備える。また、燃料電池車両の走行距離または走行時間を長くするために、複数の水素タンクを備える水素供給装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-226715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の水素タンクを備える水素供給装置においては、通常、水素タンクから放出される水素ガスを遮断するための開閉弁が各水素タンクに設けられる。そして、燃料電池の使用状況に応じて、各水素タンクの開閉弁が制御される。
【0005】
ところが、水素タンクの開閉弁の開閉回数が多くなると、故障が発生する確率が高くなる。このため、水素タンクの使用頻度にバラ付きがあり、複数の水素タンクのうちの一部の水素タンクの開閉弁の開閉回数が多くなると、水素供給装置全体として製品の寿命が短くなることがある。
【0006】
本発明の1つの側面に係る目的は、複数の水素タンクを備える水素供給装置の寿命を長くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様の水素供給装置は、燃料電池システムにおいて燃料電池に水素ガスを供給する。この水素供給装置は、複数の水素タンクと、複数の水素タンクそれぞれに対して設けられた開閉弁と、各開閉弁を制御する制御部を有する。そして、制御部は、燃料電池の動作時に、容量が最も大きい水素タンク以外の水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御する。或いは、制御部は、容量が最も小さい水素タンクから順番に水素タンクを選択し、選択した水素タンクから燃料電池に水素ガスが供給されるように各開閉弁を制御してもよい。また、制御部は、選択した水素タンクに対して設けられている開閉弁のみを開き、他の開閉弁を閉じるようにしてもよい。
【0008】
上記構成の水素供給装置において、水素タンクの容量が大きいほど、燃料電池への水素ガスの供給/停止が繰り返される回数が多くなりやすい。すなわち、容量が大きい水素タンクに対して設けられている開閉弁は、開閉回数が多くなりやすい。他方、複数の水素タンクのうちから順番に選択される水素タンクが燃料電池に水素ガスを供給する構成においては、一部の水素タンクのみが使用され、他の水素タンクが使用されないことがある。よって、容量が最も大きい水素タンク以外の水素タンクから順番に水素タンクを選択(或いは、容量が最も小さい水素タンクから順番に水素タンクを選択)することで、各水素タンクに設けられる開閉弁の開閉回数のバラ付きが抑制され、水素供給装置の製品寿命が長くなる。
【0009】
水素供給装置は、各水素タンクの残量を検出する残量センサをさらに備えてもよい。この場合、制御部は、対応する開閉弁が開いている第1の水素タンクの残量が所定の閾値より少なくなったときに第2の水素タンクを選択し、第2の水素タンクに対して設けられている開閉弁を開いた後に、第1の水素タンクに対して設けられている開閉弁を閉じる。この手順によれば、水素タンクに切り替え時に、燃料電池への水素ガスの供給が中断することはない。
【0010】
上述の水素供給装置を有する燃料の電池システムは、産業車両に搭載されてもよい。この場合、産業車両は、燃料電池の動作に係わる指示を水素供給装置に与えるスイッチを備える。そして、制御部は、スイッチから与えられる指示に基づいて各開閉弁を制御する。産業車両は、頻繁に起動/停止されることが多く、燃料電池の起動/停止も頻繁に行われる。そして、燃料電池への水素ガスの供給/停止が頻繁に繰り返されるケースでは、開閉弁の開閉回数が増加する。したがって、本発明の水素供給装置が産業車両に搭載される場合、開閉弁の開閉回数のバラ付きを抑制することによる効果は大きい。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、複数の水素タンクを備える水素供給装置の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係わる水素供給装置の一例を示す図である。
図2】水素供給装置を含む燃料電池システムが搭載される産業車両の一例を示す図である。
図3】水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係わる手順による効果の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係わる水素供給装置のバリエーションを示す図である。
図6図5に示す水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図7図5に示す水素供給装置の動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わる水素供給装置の一例を示す。本発明の実施形態に係わる水素供給装置1は、燃料電池システム100において使用される。燃料電池システム100は、水素供給装置1および燃料電池10を備える。なお、燃料電池システム100は、図1に示していない他の回路、機器、またはデバイスをさらに備えてもよい。また、燃料電池システム100は、この実施例では、電動車両に搭載される。一例としては、燃料電池システム100は、燃料電池10を動力とする電動産業車両に搭載される。
【0014】
燃料電池10は、水素ガスおよび酸化ガスを利用して電力を生成する。水素ガスは、水素供給装置1から供給される。なお、燃料電池10は、例えば、複数の燃料電池セルから構成される燃料電池スタックである。そして、燃料電池10から負荷200に電力が供給される。負荷200は、この実施例では、産業車両等の走行用モータである。また、燃料電池システム100が電動フォークリフトに搭載されるときは、負荷200は、走行用モータおよび荷役用モータである。
【0015】
水素供給装置1は、複数の水素タンク2a~2bおよび制御部5を備える。なお、図1に示す実施例では、水素供給装置1は、2個の水素タンク2a~2bを備えるが、3個以上の水素タンクを備えてもよい。
【0016】
水素タンク2a~2bは、それぞれ、例えば高圧水素タンクであり、水素ガスを貯蔵することができる。ただし、水素タンク2a~2bは、高圧水素タンクに限定されるものではない。ここで、水素タンク2a~2bの容量は互いに異なっている。この実施例は、水素タンク2aの容量は、水素タンク2bの容量より大きい。以下の記載では、容量が大きい方の水素タンク(即ち、水素タンク2a)を「メイン水素タンク」と呼ぶことがある。また、容量が小さい方の水素タンク(即ち、水素タンク2b)を「サブ水素タンク」と呼ぶことがある。
【0017】
各水素タンク2a~2bには、それぞれ、開閉弁3a~3bおよびレギュレータ4a~4bが設けられている。開閉弁3a~3bは、制御部5から与えられる指示に応じて、開状態または閉状態を保持する。開状態においては、対応する水素タンクから燃料電池10に水素ガスが供給される。閉状態においては、対応する水素タンクから燃料電池10への水素ガスの供給を遮断する。レギュレータ4a~4bは、対応する水素タンク2a~2bから放出される水素ガスを所定の圧力に減圧する。
【0018】
制御部5は、燃料電池10の状態に応じて開閉弁3a~3bを制御する。具体的には、燃料電池10が発電を行うときは、水素タンク2a~2bのうちの1つから燃料電池10に水素ガスが供給されるように開閉弁3a~3bを制御する。例えば、水素タンク2aから燃料電池10に水素ガスを供給するときは、制御部5は、開閉弁3aを開状態に制御すると共に、開閉弁3bを閉状態に制御する。また、水素タンク2bから燃料電池10に水素ガスを供給するときは、制御部5は、開閉弁3bを開状態に制御すると共に、開閉弁3aを閉状態に制御する。
【0019】
制御部5は、例えば、プロセッサおよびメモリを含むプロセッサシステムにより実現される。この場合、プロセッサは、メモリに保存されているソフトプログラムを実行することにより開閉弁3a~3bを制御する。ただし、制御部5の機能の一部は、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0020】
各水素タンク2a~2bに対して、それぞれ、残量センサ6a~6bを設けてもよい。残量センサ6a~6bは、それぞれ、水素タンク2a~2bの水素ガスの残量を検出することができる。一例としては、残量センサ6a~6bは、それぞれ、水素タンク2a~2bの圧力に基づいて水素ガスの残量を検出する。
【0021】
この場合、制御部5は、残量センサ6a~6bにより検出される残量に基づいて、使用する水素タンクを切り替えてもよい。例えば、水素タンク2bから燃料電池10に水素ガスが供給されているときに、残量センサ6bにより検出される水素タンク2bの水素ガスの残量が所定の閾値より少なくなると、制御部5は、水素タンク2aから燃料電池10への水素ガスの供給を開始する。このとき、制御部5は、水素タンク2aに対応する開閉弁3aを開いたときから所定時間が経過した時点で、水素タンク2bに対応する開閉弁3bを閉じる。そうすると、水素タンクの切替え時には、一時的に、双方の水素タンク2a~2bから燃料電池10に水素ガスが供給される。よって、水素タンクの切替え時に、燃料電池10への水素ガスの供給が中断することはない。
【0022】
図2は、水素供給装置1を含む燃料電池システムが搭載される産業車両の一例を示す。図2に示す例では、産業車両300は、スタートスイッチ301を備える。スタートスイッチ301は、産業車両300の運転者により操作され、産業車両300の状態を指示する。すなわち、産業車両300を動作(例えば、走行)させるときは、運転者は、スタートスイッチ301をオン状態に操作する。そうすると、水素供給装置100に起動指示が送られる。
【0023】
水素供給装置1は、起動指示を受け取ると、燃料電池10への水素ガスの供給を開始する。このとき、制御部5は、水素タンク2a~2bのうちの1つに対応する開閉弁を開状態に制御する。例えば、水素タンク2bから燃料電池10に水素ガスを供給するときは、制御部5は、水素タンク2bに対応する開閉弁3bを開く。このとき、他の水素タンクに対応する開閉弁(即ち、水素タンク2aに対応する開閉弁3a)は、閉状態のまま保持される。
【0024】
産業車両300を停止するときには、運転者は、スタートスイッチ301をオフ状態に操作する。そうすると、水素供給装置1に停止指示が送られる。そして、水素供給装置1は、停止指示を受け取ると、燃料電池10への水素ガスの供給を停止する。たとえば、水素タンク2bから燃料電池10に水素ガスが供給されているときにスタートスイッチ301がオフ状態に操作されると、制御部5は、水素タンク2bに対応する開閉弁3bを閉じる。このとき、他の水素タンクに対応する開閉弁(即ち、水素タンク2aに対応する開閉弁3a)は、閉状態のまま保持される。
【0025】
このように、図2に示す産業車両300においては、産業車両300の起動時/停止時に、いずれかの開閉弁3a~3bの開閉制御が行われる。ここで、一般に、産業車両は、頻繁に起動/停止が行われる。例えば、フォークリフトを用いて荷物を目的地に運んだときに、運転者がそのフォークリフトから下車して他の作業を行うことがある。この場合、運転者は、消費電力を削減するために、スタートスイッチ301を操作して水素タンク2a~2bから燃料電池10への水素ガスの供給をいったん停止する。その後、フォークリフトを他の地点に移動させるときには、運転者は、スタートスイッチ301を操作して水素タンク2a~2bから燃料電池10への水素ガスの供給を再開する。すなわち、燃料電池10への水素ガスの供給/停止が頻繁に繰り返される。
【0026】
燃料電池10への水素ガスの供給/停止が頻繁に繰り返されるケースでは、開閉弁3a~3bの開閉回数が増加する。そして、開閉弁3a~3bの開閉回数が増加すると、開閉弁3a~3bが故障する確率が高くなる。
【0027】
ここで、水素タンク2a~2bの使用頻度にバラ付きがあり、水素タンク2a~2bのうちのいずれか一方に対応する開閉弁の開閉回数が多くなると、水素供給装置全体として製品の寿命が短くなってしまう。そこで、水素供給装置1は、開閉弁3a~3bの開閉回数のバラ付きを抑制する機能を備える。
【0028】
図3は、水素供給装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、図2に示す産業車両300に図1に示す燃料電池システム100が搭載されているものとする。即ち、水素供給装置1は、メイン水素タンク2aおよびサブ水素タンク2bを備える。メイン水素タンク2aの容量は、サブ水素タンク2bの容量よりも大きい。
【0029】
S1において、制御部5は、起動指示を待ち受ける。起動指示は、図2を参照して説明したように、産業車両300の運転者の操作に応じてスタートスイッチ301により生成される。起動指示を受信すると、制御部5の処理はS2に進む。
【0030】
S2において、制御部5は、サブ水素タンク2bの残量が閾値以上であるか否かを判定する。サブ水素タンク2bの残量は、残量センサ6bにより検出される。そして、サブ水素タンク2bの残量が閾値以上であるときは、制御部5は、S3において、サブ水素タンク2bに対して設けられている開閉弁3bを開く。このとき、メイン水素タンク2aに対して設けられている開閉弁3aは閉状態のままである。これにより、サブ水素タンク2bから燃料電池10への水素ガスの供給が開始される。
【0031】
S4において、制御部5は、サブ水素タンク2bの残量をモニタする。即ち、サブ水素タンク2bから燃料電池10へ水素ガスが供給されているときは、常時、サブ水素タンク2bの残量がモニタされる。また、制御部5は、停止指示を待ち受ける。停止指示も、図2を参照して説明したように、産業車両300の運転者の操作に応じてスタートスイッチ301により生成される。なお、S4およびS5は、並列に実行される。
【0032】
停止指示を受信すると、制御部5は、S6において、開状態となっている開閉弁を閉じる。例えば、停止指示の受信時に開閉弁3bが開状態であれば、制御部5は、開閉弁3bを閉じる。また、停止指示の受信時に開閉弁3aが開状態であれば、制御部5は、開閉弁3aを閉じる。この後、制御部5の処理はS1に戻る。すなわち、制御部5は、次の起動指示を待ち受ける。
【0033】
起動指示を受信したときにサブ水素タンク2bの残量が閾値より少ないときは(S2:No)、制御部5は、S7において、メイン水素タンク2aに対して設けられている開閉弁3aを開く。このとき、サブ水素タンク2bに対して設けられている開閉弁3bは閉状態のままである。これにより、メイン水素タンク2aから燃料電池10への水素ガスの供給が開始される。
【0034】
S8において、制御部5は、停止指示を待ち受ける。そして、停止指示を受信すると、制御部5は、S6において、開状態となっている開閉弁を閉じる。この場合、開閉弁3aが閉じられる。この後、制御部5の処理はS1に戻る。すなわち、制御部5は、次の起動指示を待ち受ける。なお、特に図示しないが、メイン水素タンク2aから燃料電池10へ水素ガスが供給されているときに、メイン水素タンク2aの残量が閾値より少なくなったときには、例えば、産業車両300の運転者に対してアラートが出力されることが好ましい。
【0035】
サブ水素タンク2bから燃料電池10へ水素ガスが供給されているときに、サブ水素タンク2bの残量が閾値より少なくなったときは(S4:Yes)、制御部5は、燃料電池10へ水素ガスを供給する水素タンクを切り替える。すなわち、制御部5は、サブ水素タンク2bに対して設けられている開閉弁3bを閉じると共に、メイン水素タンク2aに対して設けられている開閉弁3aを開く。以降、メイン水素タンク2aから燃料電池10へ水素ガスが供給されるようになる。なお、サブ水素タンク2bからメイン水素タンク2aへの切り替え時には、制御部5は、開閉弁3aを開いたときから所定時間が経過した後に開閉弁3bを閉じるようにすることが好ましい。この手順によれば、水素タンクの切替え時には、一時的に、双方の水素タンク2a~2bから燃料電池10に水素ガスが供給されるので、燃料電池10への水素ガスの供給が中断することはない。
【0036】
サブ水素タンク2bからメイン水素タンク2aへの切り替えが行われた後は、制御部5の処理はS8に進む。よって、以降の処理は説明を省略する。
【0037】
このように、水素供給装置1は、サブ水素タンク2bの残量が閾値以上であるときは、サブ水素タンク2bを使用する。すなわち、容量が小さい水素タンクから優先的に使用される。そして、このポリシに従って燃料電池10に水素ガスを供給する水素タンクを選択することにより、各水素タンクに対して設けられている開閉弁(3a~3b)の開閉回数のバラ付きが抑制される。
【0038】
図4は、本発明の実施形態に係わる手順による効果の一例を示す。ここでは、図1に示す水素供給装置1において、メイン水素タンク2aの容量が50Lであり、サブ水素タンク2bの容量が20Lであるものとする。水素ガスの充填時には、メイン水素タンク2aおよびサブ水素タンク2bはそれぞれ満杯まで充填される。「水素ガスの消費量」は、水素タンクが充填されたときから次にその水素タンクが充填されるときまでに産業車両300により消費される水素ガスの量を表す。なお、この実施例では、説明を簡単にするために、産業車両300の1回の動作(即ち、起動から停止まで)で水素ガスが2Lだけ消費されるものとする。
【0039】
図4(a)は、メイン水素タンク2aが優先的に使用されるケースでの各開閉弁3a~3bの開閉回数を示す。例えば、水素ガスの消費量が10Lであれば、必要な水素ガスは全てメイン水素タンク2aから供給可能である。ここで、この実施例では、産業車両300の1回の動作で水素ガスが2Lだけ消費される。すなわち、産業車両300が5回起動されたことになる。よって、この場合、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数は5回である。また、水素ガスの消費量が50Lであるときも、必要な水素ガスは全てメイン水素タンク2aから供給可能である。そして、この場合、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数は25回である。ただし、水素ガスの消費量が60Lであるときは、メイン水素タンク2aだけでは必要な量の水素ガスを供給できない。すなわち、メイン水素タンク2aから燃料電池10に50Lの水素ガスが供給され、その後、サブ水素タンク2bから燃料電池10に10Lの水素ガスが供給される。この場合、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数は25回であり、サブ水素タンク2bに対応する開閉弁3bの開閉回数は5回である。
【0040】
このように、メイン水素タンク2aが優先的に使用されるケースでは、サブ水素タンク2bに対応する開閉弁3bと比較して、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数が多くなる。この実施例では、開閉弁3bの合計開閉回数が10回であるのに対して、開閉弁3aの合計開閉回数が145回である。このため、開閉弁3aの故障確率が高くなってしまう。
【0041】
図4(b)は、サブ水素タンク2bが優先的に使用されるケースでの各開閉弁3a~3bの開閉回数を示す。すなわち、図4(b)は、本発明の実施形態に係わる水素供給装置1における各開閉弁3a~3bの開閉回数を示す。
【0042】
本発明の実施形態において、水素ガスの消費量が10Lであれば、必要な水素ガスは全てサブ水素タンク2bから供給可能である。ここで、上述したように、産業車両300の1回の動作で水素ガスが2Lだけ消費される。すなわち、産業車両300が5回起動されたことになる。よって、この場合、サブ水素タンク2bに対応する開閉弁3bの開閉回数は5回である。これに対して、水素ガスの消費量が50Lであるときは、サブ水素タンク2bだけでは必要な量の水素ガスを供給できない。すなわち、サブ水素タンク2bから燃料電池10に20Lの水素ガスが供給され、その後、メイン水素タンク2aから燃料電池10に30Lの水素ガスが供給される。この場合、サブ水素タンク2bに対応する開閉弁3bの開閉回数は10回であり、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数は15回である。
【0043】
本発明の実施形態に係わる水素供給装置1においては、メイン水素タンク2aに対応する開閉弁3aの開閉回数とサブ水素タンク2bに対応する開閉弁3bの開閉回数との差分が小さくなる。この実施例では、開閉弁3aの合計開閉回数が80回であるのに対して、開閉弁3bの合計開閉回数が75回である。
【0044】
このように、開閉弁ごとの開閉回数の最大値は、図4(a)に示すケースでは145回であるのに対して、本発明の実施形態に係わる水素供給装置1においては80回である。したがって、図4(a)に示すケースと比較して、本発明の実施形態によれば、複数の開閉弁のうちのいずれか1つの開閉弁が故障するまでの期間の期待値が長くなる。即ち、本発明の実施形態によれば、複数の水素タンクを備える水素供給装置の寿命が長くなる。
【0045】
<バリエーション>
図1に示す実施例では、水素供給装置1は2個の水素タンクを備えるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、本発明は、3個以上の水素タンクを備える水素供給装置にも適用可能である。
【0046】
図5は、本発明の実施形態に係わる水素供給装置のバリエーションを示す。図5に示す水素供給装置1Bは、n個の水素タンク2a~2nを備える。nは、3以上の自然数である。また、水素タンク2a~2nに対して、それぞれ、開閉弁3a~3n、レギュレータ4a~4n、残量センサ6a~6nが設けられている。
【0047】
制御部5Bは、開閉弁3a~3nを制御することにより、水素タンク2a~2nから図1に示す燃料電池10への水素ガスの供給を制御する。具体的には、制御部5Bは、図2に示すスタートスイッチ301から起動指示を受信すると、開閉弁3a~3nのうちのいずれか1つを開いて燃料電池10に水素ガスを供給する。
【0048】
図6は、図5に示す水素供給装置1Bの動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、水素供給装置1Bがスタートスイッチ301から起動指示を受信したときに実行される。
【0049】
S11において、制御部5Bは、変数iを1に初期化する。変数iは、水素タンク2a~2nを識別する。よって、変数iは、自然数であり、その値域は1~nである。以下の記載では、変数iにより識別される水素タンクを「水素タンクXi」と呼ぶことがある。なお、変数iの値が小さい水素タンクほど容量が小さいものとする。例えば、水素タンクX1の容量は、水素タンク2a~2nのうちで最小であり、水素タンクXnの容量は、水素タンク2a~2nのうちで最大である。
【0050】
S12において、制御部5Bは、水素タンクXiの残量が閾値以上であるか否かを判定する。そして、サブ水素タンクXiの残量が閾値より少ないときは、制御部5Bは、S13において、変数iをインクリメントする。S12~S13の処理は、残量が閾値以上である水素タンクXiが見つかるまで繰り返し実行される。すなわち、制御部5Bは、容量が小さい水素タンクから順番に、残量が閾値以上である水素タンクXiを捜す。そして、残量が閾値以上である水素タンクXiが見つかると、制御部5Bの処理はS14に進む。すなわち、S11~S13において、起動指示の受信時に残量が閾値以上である水素タンクのうちで、容量が最小の水素タンクが選択される。
【0051】
S14において、制御部5Bは、S11~S13で選択された水素タンクXiに対して設けられている開閉弁を開く。このとき、他の水素タンクに対して設けられている開閉弁は閉状態のままである。これにより、水素タンクXiから燃料電池10への水素ガスの供給が開始される。
【0052】
S15~S16の処理は、図3に示すS4~S5と実質的に同じである。すなわち、制御部5Bは、S15において水素タンクXiの残量をモニタする。また、制御部5は、S16において停止指示を待ち受ける。そして、停止指示を受信すると、S19において、制御部5Bは、開状態となっている開閉弁を閉じる。この後、制御部5Bは、次の起動指示を待ち受ける。
【0053】
水素タンクXiから燃料電池10へ水素ガスが供給されているときに、水素タンクXiの残量が閾値より少なくなったときは(S15:Yes)、制御部5Bは、S17において、変数iの値がnであるか判定する。変数iの値がnでないときは、S14~S16の処理が行われていない水素タンクが残っていることになる。よって、この場合、制御部5Bは、S18において変数iをインクリメントする。この後、制御部5Bの処理はS14に戻る。
【0054】
S18の後にS14が実行されるときは、制御部5Bは、新たな変数iにより識別される水素タンクXiに対応する開閉弁を開くと共に、先に燃料電池10に水素ガスを供給していた水素タンクに対応する開閉弁を閉じる。これにより、水素タンクの切り替えが実現される。そして、新たな水素タンクXiに対してS15~S16の処理が実行される。
【0055】
なお、S17において変数iの値がnであったときは、制御部5Bは、すべての水素タンクの残量が閾値より少ないと判定する。この場合、制御部5Bは、S20において、産業車両300の運転者にアラートを出力する。
【0056】
このように、図6に示す手順においては、容量が小さい水素タンクから1つずつ順番に燃料電池10に水素ガスを供給する水素タンクが選択される。ここで、燃料電池への水素ガスの供給/停止が頻繁に行われる使用形態では、1つの水素タンクが満状態から空状態になるまでの期間にその水素タンクに対応する開閉弁が開閉される回数は、その水素タンクの容量に依存すると考えられる。具体的には、1つの水素タンクが満状態から空状態になるまでの期間にその水素タンクに対応する開閉弁が開閉される回数は、その水素タンクの容量が小さいほど少なくなり、その水素タンクの容量が大きいほど多くなると考えられる。他方、使用中の水素タンクの残量が閾値より少なくなったときに次の水素タンクが選択される構成においては、各水素タンクに水素ガスが充填されるまでの期間に、一部の水素タンクのみが使用され、他の水素タンクが使用されないことがある。このようなケースでは、先に選択される水素タンクに対応する開閉弁の開閉回数が多くなり、後に選択される水素タンクに対応する開閉弁の開閉回数が少なくなりやすい。
【0057】
したがって、容量が小さい水素タンクから順番に選択することで、満状態から空状態になるまでの期間に対応する開閉弁が開閉される回数が少なくなりやすい水素タンク(すなわち、容量が小さい水素タンク)が選択されやすくなり、また、満状態から空状態になるまでの期間に対応する開閉弁が開閉される回数が多くなりやすい水素タンク(すなわち、容量が大きい水素タンク)が選択されにくくなる。この結果、各水素タンクに設けられる開閉弁の開閉回数のバラ付きが抑制され、水素供給装置の製品寿命が長くなる。なお、図5図6において、水素供給装置1Bに実装される水素タンクの数が2個である場合、図3に示す手順は、図6に示す手順と実質的に同じになる。
【0058】
図7は、図5に示す水素供給装置1Bの動作の他の例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理も、水素供給装置1Bがスタートスイッチ301から起動指示を受信したときに実行される。
【0059】
S21~S22において、制御部5Bは、水素供給装置1Bに実装される水素タンク2a~2nの中から、容量が最も大きい水素タンク(図5に示す例では、水素タンク2a)以外の水素タンクであり、且つ、残量が閾値以上の水素タンクを1つ選択する。以下の記載では、容量が最も大きい水素タンクを「最大容量水素タンク」と呼ぶことがある。
【0060】
S23~S25の処理は、図3に示すS3~S5と実質的に同じである。すなわち、選択した水素タンクに対応する開閉弁が開かれる。また、制御部5Bは、選択した水素タンクの残量をモニタしながら、停止指示を待ち受ける。そして、停止指示を受信すると、制御部5Bは、S29において、開状態となっている開閉弁を閉じる。
【0061】
使用中の水素タンクの残量が閾値よりも少なくなると(S24:Yes)、制御部5Bは、S26において、最大容量水素タンク以外の水素タンクであり、且つ、S23~S25の処理が行われていない水素タンクが残っているか否かを判定する。そして、そのような水素タンクが残っていれば、制御部5Bの処理はS21に戻る。すなわち、次の水素タンクが選択され、燃料電池10に水素ガスを供給する水素タンクの切り替えが行われる。
【0062】
S26において最大容量水素タンクしか残っていないときは、制御部5Bは、S27において、最大容量水素タンクに対応する開閉弁を開く。このとき、他の開閉弁は閉じられる。そして、S28において停止指示を受信すると、制御部5Bの処理はS29に進む。すなわち、開閉弁が閉じられる。
【0063】
このように、図7に示す手順においては、最大容量水素タンクは最後に選択されるが、他の水素タンクを選択する順序は任意である。例えば、水素供給装置1Bが3個の水素タンク2a~2cを備え、水素タンク2a、2b、2cの容量がそれぞれ50L、20L、15Lである場合、制御部5Bは、最初に水素タンク2bを選択し、2番目に水素タンク2cを選択し、最後に水素タンク2aを選択してもよいし、あるいは、最初に水素タンク2cを選択し、2番目に水素タンク2bを選択し、最後に水素タンク2aを選択してもよい。そして、図6に示す手順と同様に、図7に示す手順によっても、各水素タンクに設けられる開閉弁の開閉回数のバラ付きが抑制される。なお、図7において、水素供給装置1Bに実装される水素タンクの数が2個である場合、図3に示す手順は、図7に示す手順と実質的に同じになる。
【符号の説明】
【0064】
1、1B 水素供給装置
2a~2n 水素タンク
3a~3n 開閉弁
5、5B 制御部
6a~6n 残量センサ
10 燃料電池
100 燃料電池システム
300 産業車両
301 スタートスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7