(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068664
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】超純水製造システム及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220427BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220427BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220427BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20220427BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20220427BHJP
C02F 9/12 20060101ALI20220427BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/58
C02F1/28 F
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/12
B01D61/02 500
C02F1/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177465
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
【テーマコード(参考)】
4D006
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA32
4D006KA02
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA63
4D006KA72
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB15
4D006KB17
4D006KC13
4D006KC16
4D006KD22
4D006KE02R
4D006KE03R
4D006KE13R
4D006KE30R
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB05
4D006PB08
4D006PC02
4D624AA01
4D624AB14
4D624BA02
4D624BB01
4D624BB07
4D624DA05
4D624DB04
4D624DB05
(57)【要約】
【課題】超純水を使用した後、過酸化水素を含有する使用済超純水を超純水製造の被処理水として再利用する超純水製造において、簡易な構成で、装置及び被処理水の清浄化に寄与し得る、超純水の製造システム及び製造方法を提供する。
【解決手段】前処理部2、一次純水製造部3及び二次純水製造部4を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、前処理部2の前段又は前処理部2と一次純水製造部3の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部5と、超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部6と、該回収処理部6から得られる回収水を、貯留部5に返送して循環させる循環手段7と、を有する超純水製造システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有することを特徴とする超純水製造システム。
【請求項2】
前記回収処理部が、第1の逆浸透膜装置を有することを特徴とする請求項1に記載の超純水製造システム。
【請求項3】
前記回収処理部が、活性炭装置を有していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の超純水の製造システム。
【請求項4】
前記一次純水製造部が、第2の逆浸透膜装置を有し、該第2の逆浸透膜装置の前段に次亜塩素酸除去装置を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項5】
前記次亜塩素酸除去装置が、活性炭装置である請求項4に記載の超純水製造システム。
【請求項6】
前記活性炭装置が、高分解型活性炭装置である請求項5に記載の超純水製造システム。
【請求項7】
前記貯留部において、前記原水又は被処理水の供給量に対する前記回収水の供給量を10/90~50/50に調整して供給できる流量調整手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項8】
原水を、前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部で処理して超純水を製造する超純水製造方法であって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部を有し、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、回収処理部により処理して、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とし、
前記回収水を、前記貯留部に返送して循環させる、ことを特徴とする超純水製造方法。
【請求項9】
前記回収処理部が、第1の逆浸透膜装置を有することを特徴とする請求項8に記載の超純水製造方法。
【請求項10】
前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであることを特徴とする請求項8又は9に記載の超純水製造方法。
【請求項11】
前記貯留部内において、前記前処理装置で処理して得られた前処理水と前記回収水とを混合した混合水の過酸化水素濃度が1~10ppmであることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の超純水製造方法。
【請求項12】
前記一次純水製造部が、第2の逆浸透膜装置と、その前段に次亜塩素酸除去装置を有し、
前記次亜塩素酸除去装置により、前記回収水に含まれている次亜塩素酸塩を除去することを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の超純水製造方法。
【請求項13】
前記次亜塩素酸除去装置が、活性炭装置であることを特徴とする請求項12に記載の超純水製造方法。
【請求項14】
前記活性炭装置において、被処理水をSV=5~40h-1で通水することを特徴とする請求項13に記載の超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用した超純水を、超純水製造の被処理水として再利用する超純水製造システム及び超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水は、一般に、原水を前処理部と一次純水製造部により不純物を除去して純水とし、この純水をさらに二次純水製造部により清浄化処理を行い製造され、この製造された超純水はユースポイント(POU)に供給される。
【0003】
一般に、前処理部は、凝集沈殿、砂ろ過、活性炭吸着、pH調整等の処理装置のいくつかを組み合わせて構成され、一次純水製造部は、ろ過分離処理装置、吸着処理装置、逆浸透膜(RO)装置、紫外線酸化装置、脱気装置、イオン交換処理装置等を組み合わせて構成され、二次純水製造部は、紫外線酸化装置、イオン交換処理装置、限外濾過装置等を組み合わせて、構成されている。
【0004】
またユ-スポイントで使用した超純水(使用済超純水)のうち、薬品等が多量に混入していない場合は、再度超純水製造に利用するため回収される場合もある。このとき、使用済超純水から、混入した不純物を除去して清浄化、回収処理し、回収水とし、一次純水製造部に返送される。
【0005】
例えば、半導体製造システムにおいて、半導体ウェハの洗浄に用いられる超純水には、その洗浄薬品としてSC-2、SPM、FPM等の薬液が添加して使用される。そのため、使用済の超純水には、硫酸、リン酸、フッ酸などの酸や、過酸化水素等が含有されている。そのため、半導体洗浄に使用された超純水を回収する場合には、この洗浄薬液に由来し、使用により混入された不純物を除去する除去装置により回収処理を行っている。
【0006】
このような回収処理で用いられる不純物の除去装置としては、例えば、過酸化水素の除去のための活性炭と、酸成分等の除去のためのイオン交換装置と、を有し、活性炭としては、過酸化水素に対する分解能の高いものと低いものの2種類の活性炭を組み合わせて用い、過酸化水素を完全に除去する超純水製造システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この除去装置は、回収処理部において、イオン交換装置の処理の前に、活性炭を設置した構成である。これは、イオン交換装置が過酸化水素に対する耐性が低いため、また、イオン交換装置を通水中に過酸化水素が分解して生じる酸素によりイオン交換装置のトラブルが生じるため、その装置寿命を維持し、イオン交換処理を効果的に実施できるようにするため、過酸化水素を除去する活性炭を、イオン交換装置の前段に設置することを必須の構成としたものである。
【0008】
このような活性炭を用いた回収処理を行うと、一次純水製造部に循環させる回収水において、過酸化水素を含む不純物がほぼ除去されており、再度超純水製造の被処理水として使用した場合、使用時における不純物の混入による影響を考慮することなく超純水を継続的に製造でき好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような回収水を再利用する場合、回収水は、前処理部で得られた前処理水と混合するための貯留部に一旦貯留され、この貯留部内で混合した混合水を被処理水として使用することが一般的であるが、このような貯留部においては、混合して得られた混合水が一定時間貯留部内に滞留するため、微生物の増殖やそれに由来する有機物等の含有など、汚染が発生する場合もある。一般的にこの対応として、貯留部又はその前段の任意の場所にて次亜塩素酸ナトリウムを添加して対応するが、回収水があるため、その添加量は増加する。
【0011】
また、上記とは別の課題として、回収水の有無にかかわらず、次亜塩素酸ナトリウムは後段の逆浸透装置やイオン交換樹脂装置の不具合の原因となるため、これらの装置に至る前に除去することが必須であるが、この除去が不十分となると、後段の装置のトラブルとなる。これらの原因の1つとしては、回収水の量が増減するため、適正な次亜塩素酸ナトリウムの量が変動することがある。
【0012】
また、除去した部分より逆浸透膜装置等に至る経路は微生物の増殖が起きうる環境となってしまう。したがって、例えば、逆浸透膜装置やそのプレフィルター等において微生物増殖によるトラブルがしばしば発生する。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を見出し、完成したものである。すなわち、本願発明は、超純水を使用した後、その回収を行う際に、過酸化水素を含有させた状態で回収することにより、簡易な構成で、装置の清浄化に寄与し得る、超純水の製造システム及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の超純水製造システムは、前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部と、前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環する循環手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の超純水製造方法は、原水を、前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部で処理して超純水を製造する超純水製造方法であって、前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部を有し、前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、回収処理部により処理して、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とし、前記回収水を、前記貯留部に返送して循環させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体製造等に使用された使用済超純水を、その中に含まれる過酸化水素を含有させた状態で回収し、循環させて超純水の製造に再利用するものであり、これにより、超純水製造工程において、簡素な装置構成で、細菌の発生や増殖等を抑制し、有機物の含有量を低減することができる。
【0017】
また、これにより、従来回収時に使用していた活性炭装置を回収処理部に設けなくてもよくなり、装置の設置スペースを縮小することもでき、その分のコストダウンを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態である超純水製造システムの概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の超純水製造システム及び超純水製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(超純水製造システム)
本実施形態の超純水製造システムは、
図1に示したように、前処理装置2、一次純水製造部3、二次純水製造部4、貯留部5、回収処理部6、循環手段7を有してなる超純水製造システム1である。以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
本実施形態における前処理装置2は、従来公知の超純水製造システムに用いられている前処理装置と同様の構成とでき、特に限定されるものではない。
【0022】
前処理部2は、原水中の懸濁物質を除去して、前処理水を生成し、この前処理水を一次純水製造部3に供給する。前処理部2は、例えば、原水中の懸濁物質を除去するための砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて原水の温度調整を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質によっては、前処理部2を省略してもよい。
【0023】
本実施形態における一次純水製造部3は、従来公知の超純水製造システムに用いられている一次純水製造部と同様の構成とでき、特に限定されるものではない。
【0024】
一次純水製造部3は、前処理水中の不純物を除去して純水を製造するものである。この一次純水製造部3は、例えば、逆浸透膜装置、脱気装置(脱炭酸等、真空脱気装置、脱気膜装置等)、イオン交換装置(陽イオン交換樹脂装置、陰イオン交換樹脂装置、混床式イオン交換樹脂装置等、電気脱イオン装置等)、紫外線酸化装置のうち1つ以上を適宜組み合わせて構成される。一次純水製造部12は、前処理水中のイオン成分及び非イオン成分、溶存ガスを除去して一次純水を製造し、この一次純水を二次純水製造部4に供給する。
【0025】
一次純水製造部3としては、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂装置、2B3T型装置(強酸性陽イオン交換樹脂装置、脱炭酸塔、塩基性陰イオン交換装置)、逆浸透膜装置、紫外線酸化装置、混床式イオン交換樹脂装置、脱気膜装置等が挙げられ、これら装置を適宜選択して構成される。さらに必要に応じて被処理水の温度調整を行う熱交換器等を備えてもよい。
【0026】
本実施形態における二次純水製造部4は、従来公知の超純水製造システムに用いられている二次純水製造部と同様の構成とでき、特に限定されるものではない。
【0027】
二次純水製造部4は、一次純水中の微量不純物を除去して超純水を製造するものである。この二次純水製造部4は、例えば、限外ろ過膜装置、熱交換器、紫外線酸化装置、過酸化水素除去装置、脱気膜装置、非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)等が挙げられ、これら装置を適宜選択して構成される。さらに必要に応じて被処理水の温度調整を行う熱交換器等を備えてもよい。
【0028】
本実施形態における貯留部5は、前処理部2と一次純水製造部3との間に設けられ、前処理部2で処理された前処理水と、後述する回収処理部6で得られた回収水とが、それぞれ供給され、これらを混合して一次純水製造部以降の被処理水として貯留するタンク又はピットである。
【0029】
なお、貯留部5は、
図1では、前処理部2と一次純水製造部3との間に設けられている例を示しているが、前処理部2の前段に設けて、原水を一旦貯留部5に供給し、これを回収処理部6で得られた回収水と混合するようにしてもよい。
【0030】
本実施形態における回収処理部6は、過酸化水素を含有する使用済超純水から、使用により混入された不純物を除去しつつ、過酸化水素は透過させて、再度超純水を製造する被処理水として回収するものである。
【0031】
ここで用いられる使用済超純水は、例えば、半導体製造工場などで半導体ウェハの洗浄等に使用され、その際に使用された薬品等が混入された超純水が挙げられる。半導体ウェハの洗浄の際には、その洗浄薬品としてSC-2、SPM、FPM等の薬液が添加して使用される。そのため、使用済の超純水には、硫酸、リン酸、フッ酸などの酸や、それに加え過酸化水素等が含有されている。
【0032】
この場合、回収処理部6においては、使用済超純水に含まれる、硫酸、リン酸、フッ酸などの酸を除去し、過酸化水素は透過するような装置構成とすればよい。この回収処理部6としては、
図1に示したように、膜処理装置61と逆浸透膜装置62(第1の逆浸透膜装置)とを、この順番で配置する構成が例示できる。
【0033】
ここで膜処理装置61としては、精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)等が例示でき、使用済超純水中に含まれる微粒子を除去するもので、逆浸透膜装置62の前段に配置されるものである。なお、膜処理装置は必須の要素ではない。
【0034】
また、逆浸透膜装置62としては、水処理で用いられる公知の逆浸透膜装置が挙げられ、特に限定されるものではない。この逆浸透膜装置62は、酸由来のイオン成分を除去しながら、過酸化水素は除去せず透過できるため、本実施形態の回収処理部に好適な装置である。
【0035】
この点、先行技術文献で記載した先行文献1では、イオン交換樹脂装置を用いているが、このイオン交換樹脂装置により過酸化水素もある程度分解除去されるため、本実施形態の回収処理部において、イオン交換樹脂装置は設けないことが好ましい。
【0036】
この回収処理部6には、活性炭やパラジウムや白金を担持した触媒樹脂等の過酸化水素を除去できる装置を有しないようにすることが好ましい。ただし、過酸化水素を一部除去できるものでも、その残部が透過できるものであれば設けても差し支えない。
したがって、活性炭装置は回収処理部6では用いないことが好ましいが、仮に、活性炭装置を用いる場合には、この活性炭装置において使用済超純水を空間速度SV=40hr-1以上で透過させるようにすることで、回収水中に過酸化水素を含有させるようにすることもできる。
【0037】
なお、従来このような回収操作においては、過酸化水素を除去することも必須とし、通常、回収処理部に活性炭装置を設けていたが、本実施形態の好ましい態様として説明したように、活性炭装置を設けない場合、その分装置の設置面積を縮小でき、装置全体の簡素化を図ることできる点で好ましい。
【0038】
上記の回収処理部6で得られた回収水は、循環手段7によって、貯留部5へ循環させる。この循環手段7は、回収水を貯留部5へと流通できる配管で構成される。
【0039】
ここで、循環手段7としては、貯留部5へ供給する回収水の流量を調整する流量調整手段を有していてもよい。流量調整手段としては、例えば、
図1に示したようにバルブV1を設けることが例示でき、この場合、前処理部2から供給される被処理水の量と、循環手段7から供給される回収水の量と、を調整することができ、これにより混合水の過酸化水素濃度を調整することもできる。このバルブV1としては、流量調整できればよく、公知のバルブ等を用いることができる。
【0040】
(超純水製造方法)
次に、本発明の一実施形態である超純水製造方法について、
図1に示した超純水製造システムを用いた場合を例に説明する。
【0041】
まず、原水を前処理部2に供給して、原水中の懸濁物質を除去して前処理水を得る。このとき、原水としては、市水、井水、地下水、工業用水等が用いられる。この前処理水は、貯留部5へ供給される。
【0042】
次いで、貯留部5から前処理水を一次純水製造部へ送出し、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を、逆浸透膜装置やイオン交換装置を用いて除去して一次純水を製造する。さらに、得られた一次純水を二次純水製造部へ送出し、一次純水中の極微量の不純物を除去して超純水(二次純水)を製造する。
【0043】
このとき、得られる一次純水の水質は、例えば、抵抗率が17MΩ・cm以上、得られる超純水(二次純水)の水質は、例えば、抵抗率が18MΩ・cm以上である。
【0044】
得られた超純水は、使用場所(ユースポイント:POU)に供給され、各種目的に応じて使用される。また、このとき上記したように、例えば、半導体ウェハの洗浄に使用された場合、その使用済超純水は過酸化水素を含有しており、本実施形態における回収対象となる。このような使用済超純水は、本実施形態の超純水製造装置の回収処理部に送出され、酸成分やその他の不純物が除去され回収水となる。この回収水には過酸化水素が含有されている。
【0045】
この回収水を、循環手段7により貯留部5へ送出し、循環させる。貯留部5へ循環するように供給された回収水は、前処理水と混合され、再度超純水製造の被処理水として利用される。なお、上記したように、本実施形態における回収水は過酸化水素を含有しているため、これを循環させた貯留部内では、その殺菌作用により、細菌の発生や増殖を効果的に抑制できる。
【0046】
また、本実施形態においては、貯留部5において、前処理水と回収水とを混合するが、前処理水には、通常、殺菌のための次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等)が含有され、また、回収水には過酸化水素(H2O2)が含有され、いずれも殺菌作用のある成分が含有されており、貯留部5内においては、細菌の発生や増殖が抑制できる状態になっている。
【0047】
ところで、前処理水に含まれる次亜塩素酸塩は、既に前処理で殺菌処理に利用された後の残留分であり、過酸化水素は次亜塩素酸塩よりも殺菌作用は弱い。また、前処理水と回収水を混合しているため、それぞれの濃度は混合する量に応じて低下する。
【0048】
しかしながら、本実施形態のように、前処理水と回収水とを混合した場合、これら成分を単に足し合わせた作用を超えて、好ましい殺菌作用を得られることを本発明者らは見出した。この殺菌作用が向上する理由は、以下のように考えられる。
【0049】
上記したように、貯留部5において、前処理水と回収水との混合により、その混合水中には、次亜塩素酸塩と過酸化水素が共存し、これら化合物は反応して、一重項酸素(1O2)又はOHラジカル(・OH)が発生する。一重項酸素(1O2)もOHラジカル(・OH)も、いずれも活性が高く、有機物の分解等の作用を有するため、貯留部5内での殺菌処理が、次亜塩素酸塩単独、過酸化水素単独に比べて、著しく向上でき、好ましい殺菌作用を発現できる。
【0050】
さらに、発生した一重項酸素(1O2)又はOHラジカル(・OH)は、水中の有機物(TOC成分)と一部反応する。その結果、逆浸透膜装置やイオン交換装置で除去しやすい形態となるため、逆浸透膜装置やイオン交換装置の処理水のTOCの低下も期待できる。
【0051】
なお、このとき回収水の過酸化水素の濃度は、2~50ppmが好ましく、4~20ppmがより好ましい。濃度がこの範囲内であれば、前処理水中の次亜塩素酸塩との反応により、一重項酸素又はOHラジカルを効果的に発生させることができる。このとき、前処理水の次亜塩素酸塩の濃度は0.05~10ppmが好ましく、0.1~2ppmがより好ましい。この量の添加量であっても、次亜塩素酸塩と過酸化水素が反応するため、次亜塩素酸塩はほとんど消失する。なお、次亜塩素酸塩の添加量は過酸化水素による分解で次亜塩素酸が残らない程度に適宜調整するとよい。
【0052】
また、貯留部5における、前処理水の供給量と回収水との供給量は、それらを混合した混合水の過酸化水素の濃度が1~10ppmとなる量とすることが好ましい(この過酸化水素濃度は、前処理水と回収水の混合割合によって算出できる)。このような濃度とするには、例えば、前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比(回収水の供給量/前処理水の供給量)を、10/90~50/50とすることが好ましく、20/80~40/60とすることがより好ましい。
【0053】
以上のような、超純水の製造装置及び製造方法を用いることで、使用済超純水に含まれる過酸化水素を、殺菌処理に利用しつつ、超純水の製造のための被処理水としても再利用でき、好ましい。また、このような作用を得るために、従来の、使用済超純水を再利用する超純水の製造装置に対して、例えば、活性炭装置を省略することができる等の回収処理部の装置構成を簡素化できる。
【0054】
(変形例)
なお、上記では、次亜塩素酸塩が過酸化水素との反応でほぼ消失する場合について言及しているが、条件や不具合等によっては、次亜塩素酸塩が残留して1次純水製造部に含有する場合も考えられる。
そのため、上記説明した第1の実施形態において、さらに、一次純水製造部に次亜塩素酸塩除去のため、活性炭装置を設けることが好ましい。このとき、一次純水製造部には、通常、逆浸透膜装置(以下、第2の逆浸透膜装置と称する)が設けられており、活性炭装置は、この第2の逆浸透膜装置の前段に設ける。このような配置とすることで、貯留部5から1次純水製造部に供給される被処理水中の次亜塩素酸塩による第2の逆浸透膜装置の劣化を抑制できる。
【0055】
この活性炭装置としては、水処理に用いられる公知の活性炭を使用でき、例えば、やし殻活性炭、石炭系活性炭等が例示できる。これらの活性炭は、内部に10~10000Å程度(その大半は10~20Åである)の細孔が無数に形成されており、500~1500m2程度の比表面積を有している。高分解能とするために、白金、パラジウム、銀のような分解触媒を担持させてもよい。なお、本明細書における活性炭の細孔分布及び比表面積は、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)等による吸着法もしくは水銀圧入法により測定した値である。
【0056】
なお、一次純水製造部では、次亜塩素酸塩の除去ができていれば、この活性炭装置において過酸化水素を透過させても、除去してもよい。次亜塩素酸塩はその大半が貯留部5及びその後段で過酸化水素と反応して消失しており、わずかに残留する次亜塩素酸塩を除去すればよいので、活性炭装置での除去は容易である。そのため、この活性炭装置における空間速度はSV=5~40hr-1の範囲で使用できる。通常用いられるSV=5~10hr-1の場合、次亜塩素酸塩と共に、過酸化水素もよく除去され、高流速なSV=10~40hr-1の場合、次亜塩素酸塩を除去する一方で、過酸化水素は透過させやすくなる。したがって、この活性炭装置における処理条件を変更することで、後段に流れる被処理水中の過酸化水素濃度を調整することもできる。後段に流れる被処理水中の過酸化水素濃度を0.1~1ppmとすることにより、活性炭装置と後段の逆浸透膜装置等の間における細菌の発生や増殖等の抑制を行なうことが可能であり、後段の逆浸透膜装置等の安定運転が可能となる。
【0057】
この活性炭装置において、高流速なSV=10~40hr-1で処理する場合、使用する活性炭装置としては、20~1000Åの細孔の割合を10Vol%以上、好ましくは20Vol%以上に高くするか、又は白金、パラジウム、銀のような分解触媒を担持させた高分解能を有する活性炭とすることが好ましい。
【0058】
細孔分布を変えて過酸化水素に対する分解能を高めた活性炭としては、例えば、カルゴンカーボンジャパンから販売されているセンタウ(CENTAUR)(商品名)が例示できる。また、過酸化水素高分解触媒を担持させた活性炭としては、クラレケミカル株式会社製 T-SB(商品名)が例示できる。
【0059】
なお、過酸化水素濃度を調整するために、活性炭以外の過酸化水素除去装置(H2O2除去装置)を設けてもよい。この過酸化水素除去装置は、水中の過酸化水素を分解除去する装置であり、例えば、パラジウム(Pd)や白金(Pt)担持樹脂によって過酸化水素を分解除去する金属触媒担持樹脂装置や、表面に亜硫酸基及び/又は亜硫酸水素基を有する還元性樹脂を充填した還元性樹脂装置等が挙げられる。
【0060】
また、活性炭装置に流入する水に次亜塩素酸がほとんど存在しない場合、活性炭装置にバイパスラインを設けて、このバイパスラインを用いて過酸化水素濃度を調整することも可能である。
残留させた過酸化水素は、逆浸透膜装置等の後段に、さらに過酸化水素除去手段を用いて除去すればよい。この過酸化水素除去手段としては、例えば、パラジウム(Pd)や白金(Pt)担持樹脂によって過酸化水素を分解除去する金属触媒担持樹脂装置や、表面に亜硫酸基及び/又は亜硫酸水素基を有する還元性樹脂を充填した還元性樹脂装置、また上記回収処理部や1次純水製造部で説明した活性炭装置等が挙げられる。
【実施例0061】
以下、本発明について実施例および比較例を参照しながら説明する。なお、本発明は、この実施例により限定して解釈されるものではない。
【0062】
(実施例1)
図1に示した超純水製造装置を用い、超純水を製造し、これを半導体製造装置における半導体ウェハの洗浄(SPM洗浄)に用いた。洗浄後の使用済超純水は、硫酸、リン酸、過酸化水素等を含有しており、これを、回収処理部により処理して回収水を得た。なお、回収処理部に用いた装置は、以下の通りである。
【0063】
<回収処理部>
膜処理装置61:3M社製バグフィルター 1μm
逆浸透膜装置62:低圧RO(東レ株式会社製、商品名:TM720D) 運転圧0.6MPa
【0064】
膜処理装置61、逆浸透膜装置62(第1の逆浸透膜装置)の順に処理して得られた回収水中の過酸化水素濃度は20ppmであり、この回収水を貯留部5に循環、供給した。貯留部5では、前処理部で得られた前処理水と回収水とが混合され、これを被処理水として超純水の製造を継続して行った。混合比は前処理水:回収水=4:1であった。
【0065】
なお、このときの前処理水の次亜塩素酸ナトリウム濃度、回収水の過酸化水素濃度を表1に示した。また、貯槽部5内の混合水と1次純水製造部に設けられた逆浸透膜装置(第2の逆浸透膜装置)の入口における生菌数、原水と第2の逆浸透膜装置の出口のTOC濃度、をそれぞれ測定し、表1に示した。
【0066】
次亜塩素酸ナトリウム濃度の測定:前処理水に対して、残留塩素計(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン法)法、柴田科学株式会社製、簡易水質キット)を用いて測定した。
過酸化水素濃度:回収水に対して、オンライン過酸化水素測定装置(ノキシア)(野村マイクロ・サイエンス株式会社製)を用いて測定した。
生菌数の測定:原水と、第2の逆浸透膜装置の入口において、採取したサンプルを用いて、培養法(標準寒天培地、32度7日間培養)を用いて測定した。
TOCの測定:原水と、第2の逆浸透膜装置の出口において、Sievers M9e(スエズ社製)を用いて測定した。
【0067】
(比較例1)
実施例1に対して、回収処理部を、活性炭装置(三菱化学製、商品名:ダイヤホープ006とカルゴンカーボンジャパン製、商品名:センタウの複床、体積比率2:1)、弱塩基性アニオン交換装置(ダウ・デュポン製、商品名:A368D)を順番に接続した装置構成とした以外は、実施例1と同様に、回収水を混合しつつ、超純水の製造を行った。
実施例1と同様に、水質について測定し、表1に併せて示した。
【0068】
(比較例2)
前処理水に亜硫酸を添加して、次亜塩素酸ナトリウムを除去した以外は、実施例1と同様に、回収水を混合しつつ、超純水の製造を行った。
実施例1と同様に、水質について測定し、表1に併せて示した。
【0069】
【0070】
以上より、過酸化水素を含有する使用済超純水を回収して再利用する超純水製造装置において、回収処理時に、あえて過酸化水素を含有させたまま循環させ、被処理水とすることで、原水又は前処理水と混合した後、生菌数やTOC等を抑制することができることがわかった。
このとき、回収処理時に通常設けられていた活性炭装置を省略することができ、装置を簡素化するとともに、設置面積を縮小することもできる。
1…超純水製造システム、2…前処理部、3…一次純水製造部、4…二次純水製造部、5…貯留部、6…回収処理部、7…循環手段、61…膜処理装置、62…第1の逆浸透膜装置