(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068675
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220427BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20220427BHJP
H01Q 1/22 20060101ALN20220427BHJP
H01Q 9/16 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C15/06 N
H01Q1/22 A
H01Q9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177482
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【テーマコード(参考)】
3D131
5J047
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA39
3D131AA44
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC51
3D131DA01
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3D131DA54
3D131HA32
3D131HA35
3D131HA43
3D131HA44
3D131HA45
3D131HA46
3D131LA24
5J047AA02
5J047AB07
5J047EA01
(57)【要約】
【課題】電子部品を金属補強層としてのスチールサイドプライのような金属製の部材の近くに配置しても、電子部品の特性を維持することができるタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延びるプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されるプライ折り返し部25と、を備えるカーカスプライ23と、プライ折り返し部25とビードフィラー22との間に設けられる金属補強層としてのスチールサイドプライ50と、ビードフィラー22とプライ本体24との間に設けられる電子部品としてのRFIDタグ40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーとを有する一対のビードと、
一方のビードコアから他方のビードコアに延びるプライ本体と、前記ビードコアの周りで折り返されるプライ折り返し部と、を備えるカーカスプライと、
前記プライ折り返し部と前記ビードフィラーとの間に設けられる金属補強層と、
前記ビードフィラーと前記プライ本体との間に設けられる電子部品と、を備えるタイヤ。
【請求項2】
前記電子部品は、少なくともその一部が、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記金属補強層は、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている複数の金属コードと、前記複数の金属コードを被覆するゴムと、を備え、前記電子部品と最も近い位置の前記金属補強層の部分における、前記複数の金属コード間の隙間は、0.5mm以上である、請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が埋設されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグ等の電子部品を埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。例えば特許文献1には、識別情報や履歴情報等を記憶するRFID等により構成された通信回路部と、導電性のベルトまたはカーカスコードとをバイパス配線で接続し、導電性のベルトまたはカーカスコードの一部をループアンテナとして機能させるタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される技術によれば、タイヤの剛性を確保するためのベルトまたはカーカスコードの一部をループアンテナとして機能させて通信を行うことにより、タイヤの履歴情報等の管理を行うことができる。ところでアンテナの設計においては、使用する周波数帯域に応じて、アンテナの長さを最適化する必要がある。具体的には、アンテナと電波の共振条件を考慮すると、アンテナの長さは、使用する周波数の波長の半分、あるいは1/4といった長さとすることが好ましい。しかしながら、特許文献1において、アンテナを構成する部材として示されるベルトまたはカーカスコードは、その寸法が製造上の誤差の影響を受けやすい。よって、これらを用いてアンテナの長さを正確に設定することは困難である。すなわち、製造上の誤差等を考慮すると、導電性のベルトまたはカーカスコードの一部をループアンテナとして機能させることは、通信品質上好ましい態様とはいい難い。また、特許文献1に開示されている技術においては、電子部品と、導電性の部材としてのベルトまたはカーカスコードとを意図的に電気接触させているが、そのような意図を持っていない場合において、電子部品と、導電性の部材とが電気接触すると、電子部品の性能変化が生じ、電子部品の特性を維持することが困難となる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子部品を金属補強層としてのスチールサイドプライのような導電性の部材の近くに配置しても、電子部品の特性を維持することができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーとを有する一対のビードと、一方のビードコアから他方のビードコアに延びるプライ本体と、前記ビードコアの周りで折り返されるプライ折り返し部と、を備えるカーカスプライと、前記プライ折り返し部と前記ビードフィラーとの間に設けられる金属補強層と、前記ビードフィラーと前記プライ本体との間に設けられる電子部品と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子部品を金属補強層としてのスチールサイドプライのような導電性の部材の近くに配置しても、電子部品の特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図3】上記実施形態に係るタイヤのスチールサイドプライを説明するための図である。
【
図4】上記実施形態のRFIDタグを示す図である。
【
図5A】第2実施形態に係るタイヤにおける、保護部材によって保護された、RFIDタグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0010】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
【0011】
なお、
図1の断面図は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
【0013】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、ビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール12と、サイドウォール12の各々のタイヤ径方向外側に連なって踏面(路面との接地面)13Cを構成するタイヤの周方向に延びる環状のトレッド13と、を備える。
【0014】
図2に、
図1に示される本実施形態のタイヤ1における、ビード11およびサイドウォール12のタイヤ径方向内側領域周辺の拡大断面図を示す。
【0015】
ビード11は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを備える。
【0016】
ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、ホイールのリム(不図示)に固定する役目を果たす部材である。
【0017】
ビードフィラー22は、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー22は、タイヤ径方向外側端22Aと、タイヤ径方向内側端22Bを有する。ビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bは、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aと接触している。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー22は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードフィラーを構成するゴムのモジュラスは、少なくとも後述のインナーライナー29を構成するゴムおよびサイドウォールゴム30を構成するゴムのモジュラスよりも高い。
【0018】
タイヤ1の内部には、一対のビード11間を架け渡されたカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、タイヤ1の骨格となるプライを構成しており、一対のビード11間を、一対のサイドウォール12およびトレッド13を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0019】
カーカスプライ23は、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、トレッド13とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、サイドウォール12の領域において、プライ本体24に重ね合わされている。プライ折り返し部25は、端部25Aを有する。本実施形態においては、プライ折り返し部25の端部25Aは、サイドウォール12の領域に位置している。
【0020】
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。本実施形態においては、カーカスプライ23を構成するプライコードは、タイヤ1の中心から放射状(ラジアル方向)に配置されている。すなわち、本実施形態のタイヤ1は、プライコードが放射状に延びるように配置された所謂ラジアルタイヤである。
【0021】
なお、本実施形態のカーカスプライ23は、1層のプライ本体24を備える1層構造のカーカスプライ23である。しかしながら、カーカスプライ23は、複数層のプライ本体24を備える複数層構造のカーカスプライ23であってもよい。
【0022】
ビード11は、チェーハー31と、チェーハー31のタイヤ幅方向外側に配置されたリムストリップゴム32と、金属補強層としてのスチールサイドプライ50と、をさらに備える。
【0023】
チェーハー31は、ビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23を覆うように設けられている。より詳細には、チェーハー31は、ビードコア21周辺のカーカスプライ23のタイヤ幅方向内側、タイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側を覆うように設けられている。チェーハー31は、プライ本体24のタイヤ幅方向内側に配置された第1の端部31Aと、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置された第2の端部31Bと、を有する。チェーハー31は、例えば繊維を練り込んだゴムや、モジュラスの高いゴムにより構成されており、タイヤ1を構成する構成部材の中で、比較的強度が高い。例えば、後述のインナーライナー29やサイドウォールゴム30よりも強度が高い。
【0024】
リムストリップゴム32は、チェーハー31およびカーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置されており、ホイールにタイヤ1が装着される際に、そのタイヤ幅方向外側が、ホイールのリム(不図示)と接触するゴム部材である。リムストリップゴム32は、タイヤ径方向外側端32Aと、タイヤ径方向内側端32Bを有する。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0025】
金属補強層としてのスチールサイドプライ50は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側との間に配置されている。スチールサイドプライ50は、ビード11を補強する機能を有する。スチールサイドプライ50は、タイヤ径方向外側端50Aと、タイヤ径方向内側端50Bを有する。本実施形態においては、スチールサイドプライ50のタイヤ径方向外側端50Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側であって、プライ折り返し部25の端部25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。スチールサイドプライ50は、ビードコア21のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、を有する。本実施形態においては、スチールサイドプライ50はさらに、プライ本体24プライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分を有する。
【0026】
本実施形態のスチールサイドプライ50は、金属繊維を含む金属繊維コード層により構成されている。
図3は、スチールサイドプライ50を構成する金属繊維コード層を説明するための図であり、タイヤ1内に配置されているスチールサイドプライ50を、タイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かって見た場合の仮想的な図である。スチールサイドプライ50は、複数の金属繊維を撚り合わせて形成した複数の金属コード51と、複数の金属コード51を被覆して一体化するトッピングゴムとしてのゴム52とを含んで構成される。
【0027】
図3に示すように、スチールサイドプライ50を構成する複数の金属コード51は、ラジアル方向Rに対して傾斜して延び、傾斜状態でタイヤ周方向Cに間隔をあけて配置されている。タイヤ1のラジアル方向Rと、スチールサイドプライ50の金属コード51の延在方向とのなす角度θは、10°以上40°以下であることが好ましい。なお、本実施形態においては、カーカスプライ23を構成するプライコードは、タイヤ1の中心から放射状(ラジアル方向)に配置されている。よって、本実施形態においては、カーカスプライ23のプライコードの延在方向と、スチールサイドプライ50の金属コード51の延在方向とのなす角度θは、10°以上40°以下となっている。このように、カーカスプライ23のプライコードとスチールサイドプライ50の金属コード51を交差させることで、カーカスプライ23とスチールサイドプライ50が重なる部分の剛性を高めることができる。なお、本実施形態のスチールサイドプライ50の金属コード51のコード径は、例えば0.5mm以上1.2mm以下である。
【0028】
サイドウォール12は、カーカスプライ23の幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム30を備える。
【0029】
サイドウォールゴム30は、タイヤ1の外壁面を構成するゴム部材である。サイドウォールゴム30は、タイヤ径方向外側端30Aと、タイヤ径方向内側端30Bを有する。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0030】
トレッド13は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されたベルトとしてのスチールベルト26と、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ27と、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴム28と、を備える。
【0031】
スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド13と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層構造のスチールベルト(内側のスチールベルト261と外側のスチールベルト262)が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。なお、スチールコードを用いたスチールベルト26に替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコード等を用いたベルトを用いてもよい。なお、本実施形態の2層構造のスチールベルト26は、内側のスチールベルト261が外側のスチールベルト262よりも幅広である。したがって、内側のスチールベルト261のタイヤ幅方向外側端が、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aを構成する。
【0032】
キャッププライ27は、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置された部材であり、ベルト補強層としての機能を有する。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。本実施形態においては、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
【0033】
トレッドゴム28は、踏面(路面との接地面)13Cを構成する部材である。トレッドゴム28は、タイヤ幅方向外側端28Aを有する。トレッドゴム28の踏面13Cには、複数の溝で構成されるトレッドパターン(不図示)が設けられている。
【0034】
ビード11、サイドウォール12、トレッド13において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0035】
ここで、
図1に示されるように、サイドウォール12のサイドウォールゴム30は、トレッド13に向かって延出している。一方、トレッド13のトレッドゴム28は、サイドウォール12に向かって延出している。その結果、カーカスプライ23の一部領域のタイヤ外表面側において、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが積層された状態となっている。より詳細には、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28とが共に存在する領域、すなわちサイドウォール12とトレッド13の移行領域において、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28とが、順に積層された状態となっている。
【0036】
図1および
図2に示されるように、ビード11およびサイドウォール12におけるカーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32と、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム30が配置されている。
【0037】
また、
図1および
図2に示されるように、ビード11とサイドウォール12の移行領域付近においては、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。
【0038】
また、
図1および
図2に示されるように、チェーハー31の第1の端部31Aは、カーカスプライ23のプライ本体24とインナーライナー29との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31の第2の端部31Bは、カーカスプライ23のプライ折り返し部25とリムストリップゴム32との間に挟まれるように配置されている。
【0039】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0040】
図4は、本実施形態のRFIDタグ40を示す図である。本実施形態のRFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42としての、コイル状のスプリングアンテナを備えている。ここで、アンテナ42を形成する金属素線の直径は、0.5mm以下であることが好ましい。例えば、この金属素線の直径は、0.1mm以上0.5mm以下である。この金属素線が巻回されることにより形成されたコイル状のスプリングアンテナのコイル直径Dは、2.0mm以下であることが好ましい。例えば、コイル状のスプリングアンテナのコイル直径Dは、1.0mm以上2.0mm以下である。アンテナ42を含むRFIDタグ40の長手方向の長さL2は、30mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、RFIDタグ40は、ビードフィラー22とプライ本体24との間に配置されている。より具体的には、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側とプライ本体24との間に配置されている。
【0042】
このように、RFIDタグ40が高モジュラスのビードフィラー22と繊維層であるプライ本体24との間に設けられているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。
【0043】
そして、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、金属補強層としてのスチールサイドプライ50と、繊維層としてのプライ折り返し部25と、ビードフィラー22とが存在するため、RFIDタグ40にかかる負荷を小さくすることができる。特に、RFIDタグ40の近くに金属補強層としてのスチールサイドプライ50が存在しているため、タイヤの幅方向外側から力が加わったときにおいても、RFIDタグ40が強固に保護される。
【0044】
また、RFIDタグ40とスチールサイドプライ50との間にビードフィラー22が配置されている。これにより、RFIDタグ40を、金属補強層としてのスチールサイドプライ50の近くに配置しているものの、RFIDタグ40と金属部材との距離を確保し、両者の接触を防ぐことができる。よって、RFIDタグ40の性能の低下を抑制することが可能となる。例えば本実施形態のRFIDタグ40のようにアンテナ42を有している場合、通信品質の低下を抑制することができる。
【0045】
図1および
図2に示されるように、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bよりも、タイヤ径方向外側端22Aに近い位置に配置されることが好ましい。より好ましくは、RFIDタグ40は、少なくともその一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている。さらに好ましくは、RFIDタグ40のアンテナを含む全ての部分が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている。すなわち、本実施形態のRFIDタグ40は、
図1および
図2に示されるように、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側の10mmの領域範囲L1に配置されることが好ましい。
【0046】
ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響を及ぼす可能性が特に高い金属部材である。よって、RFIDタグ40は、ビードコア21からなるべく離れた位置に配置された方がよい。
【0047】
また、
図1、
図2に示すように、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側には、金属製の金属コード51を有するスチールサイドプライ50が配置されている。
図3に示すように、スチールサイドプライ50は、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている複数の金属コード51を備える。これらの複数の金属コード51は、ラジアル方向Rに対して傾斜して延び、傾斜状態でタイヤ周方向Cに間隔をあけて配置されていることから、複数の金属コード51間の隙間Gは、タイヤ径方向外側に向かうにしたがって、広がっていく。
【0048】
金属製の金属コード51を有するスチールサイドプライ50も、通信に対して影響を及ぼす可能性のある部材である。そこで、RFIDタグ40を、例えばビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bよりも、タイヤ径方向外側端22Aに近い位置に配置することにより、RFIDタグ40を、複数の金属コード51間の隙間Gが広くなる部分に配置することができる。これにより、RFIDタグ40が、金属製の金属コード51を有するスチールサイドプライ50の影響を受けにくくなる。この観点においても、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側の10mmの領域範囲L1に配置されることが好ましい。なお、複数の金属コード51間の隙間Gは、
図3に示すように、タイヤの周方向の距離で示される。
【0049】
なお、
図2に示す、RFIDタグ40と最も近い位置のスチールサイドプライ50の部分50Cにおける、複数の金属コード51間の隙間Gは、RFIDタグ40のアンテナ42を形成する金属素線の直径よりも大きいことが好ましい。例えば、この部分の隙間Gは、0.5mm以上であることが好ましい。これにより、通信に対する影響を抑制することができる。よって、RFIDタグ40と外部のリーダとの好適な通信性を確保することが可能となる。より好ましくは、この部分の隙間Gの平均値は、0.5mm以上2.5mm以下である。これにより、RFIDタグ40を強固に保護しつつ、通信に対する影響を抑制することができる。
【0050】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、
図4に示すように、アンテナを含めると、長手方向を有する。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向またはタイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち
図1、
図2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0051】
そして、前述の、RFIDタグ40と最も近い位置のスチールサイドプライ50の部分50Cにおける、複数の金属コード51間の隙間Gは、アンテナ42を含むRFIDタグ40の長手方向の長さL2の範囲内における、複数の隙間Gの平均値として算出される。
【0052】
ここで、本実施形態のRFIDタグ40は、タイヤ1の製造工程において、加硫工程の前にタイヤ構成部材に取り付けられる。具体的には、RFIDタグ40は、ビードフィラー22またはプライ本体24に取り付けられる。このとき、ビードフィラー22およびプライ本体24のトッピングゴムは加硫前の生ゴムの状態である。よって、生ゴムの粘着性を利用して、RFIDタグ40は、ビードフィラー22またはプライ本体24に貼り付けられる。なお、RFIDタグ40は、接着剤等を用いて貼り付けられてもよい。その後、RFIDタグ40を、ビードフィラー22とプライ本体24との間に挟み込む。挟み込んだ後、RFIDタグ40を含む各タイヤ構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0053】
これにより、本実施形態においては、タイヤ製造時において、剛性を有し、粘着性を有する生ゴムにより被覆されている繊維層としてのプライ本体24またはビードフィラー22にRFIDタグ40を貼り付けることができる。よって、タイヤの製造工程において、RFIDタグ40の組み付け作業が容易となる。また、RFIDタグ40とスチールサイドプライ50との間に加硫時に厚み変化の少ないビードフィラー22が配置されるため、RFIDタグ40とスチールサイドプライ50との距離を確保し、RFIDタグ40の性能の低下を抑制することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、導電性の部材と電気接触すると、電子部品の性能変化が生じ、電子部品の特性を維持することが困難となる可能性がある。また、電子部品は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0055】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0056】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延びるプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されるプライ折り返し部25と、を備えるカーカスプライ23と、プライ折り返し部25とビードフィラー22との間に設けられる金属補強層としてのスチールサイドプライ50と、ビードフィラー22とプライ本体24との間に設けられる電子部品としてのRFIDタグ40と、を備える。これにより、電子部品としてのRFIDタグ40と金属補強層としてのスチールサイドプライ50との間に加硫時に厚み変化の少ないビードフィラー22が配置されるため、RFIDタグ40と金属部材との距離を確保し、RFIDタグ40の性能の低下を抑制することができる。よって、RFIDタグ40を金属補強層としてのスチールサイドプライ50のような導電性の部材の近くに配置しても、RFIDタグ40の特性を維持することができる。
【0057】
(2)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、少なくともその一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている。これにより、RFIDタグ40がビードコア21から十分離れるため、RFIDタグ40に対するビードコアの影響を抑制することができる。また、スチールサイドプライ50を構成する複数の金属コード51間の平均隙間が広くなる位置となるため、RFIDタグ40に対するスチールサイドプライ50の影響を抑制することができる。よって、外部とRFIDタグ40との好適な通信性を確保することができる。
【0058】
(3)本実施形態に係るタイヤ1のスチールサイドプライ50は、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている複数の金属コード51と、複数の金属コード51を被覆するゴム52と、を備え、RFIDタグ40と最も近い位置のスチールサイドプライ50の部分における、複数の金属コード51間の隙間は、0.5mm以上である。これにより、RFIDタグ40に対するスチールサイドプライ50の影響を抑制することが可能となり、外部とRFIDタグ40との好適な通信性を確保することができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ1について、
図5A~5Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。本実施形態においては、RFIDタグ40は、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆されている。
【0060】
図5Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図5Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。
図5Bは
図5Aのb-b断面図、
図5Cは
図5Aのc-c断面図である。本実施形態においては、
図5A~
図5Cに示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。
【0061】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、前述のとおり、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。
【0062】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0063】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0064】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
【0065】
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍~2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
【0066】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0067】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0068】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシート431、432によって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。例えば、加硫前の各ゴム部材の所望の位置に、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシート431、432も加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート431、432自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0069】
但し、保護部材43は、2枚のゴムシート431、432によって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、RFIDタグ40は、保護部材43により被覆されている状態で、カーカスプライ23とビードフィラー22との間に挟まれることになる。この場合、カーカスプライ23とビードフィラー22とが相対的に移動することによりRFIDタグ40が応力を受ける状況下においても、保護部材43の存在によって、RFIDタグ40が保護される。よって、RFIDタグ40の耐久性がさらに向上する。
【0071】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤ1の周方向またはタイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち
図1~2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設されている。製造工程においては、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤ1の構成部材に貼り付けられる。
【0072】
このような態様とすることで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0073】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、上記(1)~(3)に加えて以下の効果を奏する。
【0074】
(4)本実施形態においては、RFIDタグ40が、ゴムシート431、432により被覆されている。これにより、製造工程における作業性が向上する。また、RFIDタグ40にかかる応力を緩和する効果などが得られる。
【0075】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 タイヤ
11 ビード
12 サイドウォール
13 トレッド
21 ビードコア
22 ビードフィラー
22A タイヤ径方向外側端
23 カーカスプライ
24 プライ本体
25 プライ折り返し部
26 スチールベルト(ベルト)
27 キャッププライ
28 トレッドゴム
29 インナーライナー
30 サイドウォールゴム
31 チェーハー
32 リムストリップゴム
40 RFIDタグ(電子部品)
42 アンテナ
50 スチールサイドプライ(金属補強層)
51 金属コード
52 ゴム