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特開2022-6869画像処理装置、医用撮像装置および画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006869
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、医用撮像装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220105BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20220105BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220105BHJP
   G06T 1/40 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B8/14
G06T1/00 290C
G06T1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109420
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 千鶴枝
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸生
【テーマコード(参考)】
4C096
4C601
5B057
【Fターム(参考)】
4C096AB07
4C096AD14
4C096DA13
4C096DC05
4C096DC27
4C096DC33
4C601EE02
4C601JB34
4C601JC12
4C601JC17
4C601JC21
5B057AA07
5B057BA07
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057CE08
5B057CH16
5B057DA08
5B057DA16
5B057DC40
(57)【要約】
【課題】画像内の領域によってノイズレベルの異なる画像から低計算コストでノイズを除去し、かつ、読影者の好みに応じた高画質化を可能にする。
【解決手段】複数の画像生成器3-1~3-Nは、撮像装置1によって得られた計測データまたは撮像画像を受け取り、同一の撮像範囲についてそれぞれ異なる画像を生成する。画像選択・合成部5は、画像生成器3-1~3-Nが生成した複数の画像4-1~4-Nから、予め定めた領域選択パターンに従って、それぞれ異なる画像領域を選択し、選択した画像領域の画像5-1~5-Nを合成して1つの画像7を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって得られた計測データまたは撮像画像を受け取って、同一の撮像範囲についてそれぞれ異なる画像を生成する複数の画像生成器と、
複数の前記画像生成器が生成した複数の画像から、予め定めた領域選択パターンに従って、それぞれ異なる画像領域を選択し、選択した前記画像領域の画像を合成して1つの画像を生成する画像選択・合成部とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、複数の前記画像生成器はそれぞれ、ノイズレベルの異なる画像から、ノイズを除去した画像を生成するように予め構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、前記撮像装置によって得られた前記計測データまたは撮像画像は、空間的な領域によってノイズレベルが異なり、
前記領域選択パターンは、前記ノイズレベルが異なる前記領域のパターンに対応していることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像処理装置であって、複数の前記画像生成器はそれぞれ、学習済みの学習モデルであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、前記学習モデルはそれぞれ、前記撮像装置により所定の撮像方法によって撮像して得られた、空間的な領域によってノイズレベルが異なる撮像画像のうち、所定のノイズレベルの領域内の画像を入力データとし、前記撮像装置により前記撮像方法よりもノイズが低減される撮像方法により撮像して得られた撮像画像を教師データとして、予め学習したものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、前記入力データの画像を得る撮像方法は、所定の高速撮像方法であり、前記教師データの画像を得る撮像方法は、前記高速撮像方法よりも低速の撮像方法であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記画像選択・合成部が選択に用いる前記予め定めた領域選択パターンを複数種類格納するパターン格納部と、
前記パターン格納部から前記領域選択パターンを選択して前記画像選択・合成部に設定するパターン設定部とをさらに有し、
前記画像選択・合成部は、前記パターン設定部によって設定された前記領域選択パターンに従って画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像処理装置であって、複数の前記画像生成器が生成した画像をそれぞれ格納する画像記憶部と、
ユーザから前記領域選択パターンの選択指示を受け付ける受付部とをさらに有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理装置であって、前記画像選択・合成部が前記領域選択パターンに従って前記1つの画像を生成した後、前記受付部がユーザから前記領域選択パターンの選択を受け付け、前記パターン設定部が前記画像選択・合成部に設定した場合、前記画像選択・合成部は、前記画像記憶部に格納された前記画像を用いて、設定された前記領域選択パターンに従って画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記領域選択パターンは、相互の領域の境界が所定幅で重なり合うように設定されており、
前記画像選択・合成部は、選択した前記画像領域の画像を合成する際に、前記境界の前記所定幅で重なり合う領域において、それぞれの前記画像領域の画像を重み付けして加算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項8に記載の画像処理装置であって、前記受付部は、ユーザから変化の度合いを受け付け可能な形態であって、予め変化の度合いに前記領域選択パターンが対応付けられており、
前記パターン設定部は、ユーザが前記受付部を操作して設定した変化の度合いに応じて、その変化の度合いに対応付けられた前記領域選択パターンを前記画像選択・合成部に設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記撮像装置から撮像条件を受け取って、予め定めておいた撮像条件と領域選択パターンとの関係に基づいて、受け取った撮像条件に対応する領域選択パターンを選定する撮像条件受付・パターン選定部をさらに有し、
前記パターン設定部は、前記撮像条件受付・パターン選定部が選定した前記領域選択パターンを前記画像選択・合成部に設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項8に記載の画像処理装置であって、前記撮像装置から撮像条件を受け取って、当該撮像条件と、前記受付部からユーザが選択した前記領域選択パターンとを対応させて記憶し、次回、前記撮像装置に前記撮像条件が設定された場合、前記記憶しておいた前記領域選択パターンを選定する撮像条件受付・パターン選定部をさらに有し、
前記パターン設定部は、前記撮像条件受付・パターン選定部が選定した前記領域選択パターンを前記画像選択・合成部に設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
撮像装置と、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置とを有する医用撮像装置。
【請求項15】
請求項14に記載の医用撮像装置であって、
前記撮像装置は、被検体に静磁場を印加する静磁場発生部と、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生部と、前記被検体に高周波磁場を照射する送信コイルと、前記被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測する受信コイルと、前記受信コイルが計測した信号に基づいて画像を再構成する画像再構成部とを備える磁気共鳴イメージング装置であり、
前記画像処理装置は、前記計測データまたは前記撮像画像として、前記受信コイルが計測した信号、または、前記画像再構成部が再構成した画像を受け取ることを特徴とする医用撮像装置。
【請求項16】
請求項15に記載の医用撮像装置であって、前記磁気共鳴イメージング装置は、パラレルイメージングにより前記画像を再構成し、
前記画像処理装置の前記領域選択パターンは、前記パラレルイメージングのGファクタマップに基づき前記画像領域が設定されていることを特徴とする医用撮像装置。
【請求項17】
請求項14に記載の医用撮像装置であって、
前記撮像装置は、超音波探触子から被検体に超音波を送信させる送信部と、被検体からのエコーを受信した超音波探触子から受信信号を受け取って受信ビームフォーミングする受信部と、前記受信ビームフォーミング後の受信信号を処理して画像を生成する画像生成部とを備えた超音波撮像装置であり、
前記画像処理装置は、前記撮像画像として、前記画像生成部が生成した画像を受け取ることを特徴とする医用撮像装置。
【請求項18】
請求項17に記載の医用撮像装置であって、前記画像処理装置の前記領域選択パターンは、前記被検体の深さ方向に複数の前記画像領域が設定されていることを特徴とする医用撮像装置。
【請求項19】
コンピュータを
撮像装置によって得られた計測データまたは撮像画像を受け取って、同一の撮像範囲についてそれぞれ異なる画像を生成する複数の画像生成手段と、
複数の前記画像生成器が生成した複数の画像から、予め定めた領域選択パターンに従って、それぞれ異なる画像領域を選択し、選択した前記画像領域の画像を合成して1つの画像を生成する画像選択・合成手段として機能させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズを低減した医用画像を生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(以下、MRIと呼ぶ)装置、X線CT(computed tomography)、ならびに、超音波診断装置等の医用撮像装置では、画像を再構成するためのデータ(あるいは信号)を取得するために撮像に長い時間を要すると、被検者への負担や、被検者の動きによる画像アーチファクトの出現など、悪影響を及ぼす。そこで、撮像手法の工夫によって撮像時間を短縮する高速撮像法が各モダリティにおいて開発されている。
【0003】
例えば、MRI装置では、複数の受信コイルを用いて、k空間をアンダーサンプリングすることで撮像時間を短縮し、受信コイルの感度分布を用いた演算によって画像再構成する高速撮像方法(例えば、パラレルイメージング)などが実用化されている。しかし、MRI装置の高速撮像法では、高速にするために画像に用いるデータが通常より少ないことから、ノイズが生じ、画質が低下する。また、同一撮像面内のノイズ分布は撮像空間に対して一様ではないという特徴を持つ。
【0004】
また、超音波撮像装置においても、感度が不足する深部領域などでは特にノイズが増加する。
【0005】
このような画質低下を解決する手段としていくつかの画質改善技術が開発されている。例えば、特許文献1には、MRI装置のパラレルイメージングのように、空間的に変動(非一様性)のあるノイズを含む再構成画像に対して、画像全体のノイズを低減する技術が開示されている。具体的には、再構成された画像に含まれるノイズの分散を表すノイズマップを生成し、そのノイズマップに基づいて、局所適応的な非線形ノイズフィルタを生成し、生成したフィルタにより逐次的に再構成画像を処理することにより画像全体から非一様なノイズを削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-503903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の画質改善技術では、撮像条件や被検者の状態などにより変化する画像ごとにノイズマップを生成し、ノイズマップにもとづいて非線形ノイズフィルタを生成し、非線形ノイズフィルタを逐次的に画像に適用する必要がある。このため、フィルタ生成のための計算コストが大きくなる。また、生成された非線形ノイズフィルタは、逐次的に画像に適用されるため、フィルタ処理時においても計算コストが大きくなる。さらに、読影者が見る画像は、生成したフィルタによって画質改善された後の画像となるため、フィルタ自体の調整に読影者の好みを反映できないという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、画像内の領域によってノイズレベルの異なる画像から低計算コストでノイズを除去し、かつ、読影者の好みに応じた高画質化を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、撮像装置によって得られた計測データまたは撮像画像を受け取って、同一の撮像範囲についてそれぞれ異なる画像を生成する複数の画像生成器と、複数の前記画像生成器が生成した複数の画像から、予め定めた領域選択パターンに従って、それぞれ異なる画像領域を選択し、選択した前記画像領域の画像を合成して1つの画像を生成する画像選択・合成部とを有する画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像内の領域によってノイズレベルの異なる画像から低計算コストでノイズを除去できる。また、読影者の好みに応じて高画質化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の医用撮像装置の構成を示すブロック図
図2】実施形態1の医用撮像装置の構成と、処理の流れを示すブロック図
図3】実施形態1の医用撮像装置の画像生成器(学習モデル)の学習データを示す説明図
図4】実施形態1の受付部の一例としてスライドバーを示す説明図
図5】実施形態1の医用撮像装置の画像処理装置の動作を示すフローチャート
図6】実施形態1の医用撮像装置の撮像装置としてMRI装置の構成を示すブロック図
図7】実施形態2の医用撮像装置の構成を示すブロック図
図8】実施形態2の医用撮像装置の構成と、処理の流れを示すブロック図
図9】実施形態2の医用撮像装置の撮像装置として超音波撮像装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の医用画像撮像装置について説明する。
【0013】
<<実施形態1>>
実施形態1の医用画像装置は、MRI装置を撮像装置として備える。実施形態1の医用撮像装置について図1図6を用いて説明する。
【0014】
図1および図2に示すように、実施形態1の医用撮像装置は、撮像装置1と画像処理装置2とを備えている。撮像装置1は、MRI装置である。
【0015】
<画像処理装置2の構成>
画像処理装置2は、複数の画像生成器3-1~3-Nと、画像選択・合成部5と、画像記憶部4と、パターン設定部6と、受付部10と、制御部9とを備えて構成される。
【0016】
画像生成器3-1~3-Nは、撮像装置1によって得られた計測データまたは撮像画像(元画像と呼ぶ)を受け取って、元画像と同一の撮像範囲についてそれぞれ異なる画像4-1~4-Nを生成する。具体的には、画像生成器3-1~3-Nはそれぞれ、所定のノイズレベルの画像から、高画質画像4-1~4-Nを生成するように予め構成されている。
【0017】
例えば撮像装置1によって得られた元画像が、高速撮像方法のパラレルイメージングにより撮像および再構成された画像であり、画像の空間的な領域のノイズレベルが例えば3段階に異なる場合、画像生成器3-1~3-3は、それぞれ予め定められたノイズレベルの領域が、ノイズの低減された最も高画質の画像4-1~4-3を生成する。具体的には例えば、画像生成器3-1が、最もノイズレベルの小さいノイズレベル1に対応するように構成されている場合、元画像と同一の撮像範囲の画像であって、元画像内のノイズレベル1の領域に対応する領域のノイズが最も低減された高画質の画像4-1を生成する。このとき、高画質の画像4-1において、元画像内のノイズレベル2,3の領域に対応する領域は、その画質がノイズレベル1の領域に対応する領域ほどには高画質化されていない。
【0018】
同様に、画像生成器3-2は、ノイズレベル2に対応するように構成されている場合、元画像と同一の撮像範囲の画像であって、元画像内のノイズレベル2の領域に対応する領域のノイズが最も低減された高画質の画像4-2を生成する。さらに、画像生成器3-3は、最もノイズレベルの大きいノイズレベル3に対応するように構成されている場合、元画像と同一の撮像範囲の画像であって、元画像内のノイズレベル3の領域に対応する領域のノイズが最も低減された高画質の画像4-3を生成する。
【0019】
パラレルイメージングの再構成処理においては,伝播するノイズ量の指標を表すGファクタの分布情報(Gファクタマップ)に基づいて,画像の空間的な領域のノイズレベルを算出できる。例えば,ノイズレベル1はGファクタの値が1.1以下,ノイズレベル2は1.1から1.2,ノイズレベル3は1.2から2.0など,任意のGファクタの値の範囲をノイズのレベル分けに用いることができる。
【0020】
このような画像生成器3-1~3-Nはそれぞれ、学習済みの学習モデル(例えば、ニューラルネットワーク)により実現することができる。具体的には図3に示すように、撮像装置1によりパラレルイメージング等の高速撮像により得られた撮像画像をデータ分類器により予め定めたサイズの微小領域に分割し、微小領域のノイズレベルを上述のようにGファクタマップに基づいて算出し、ノイズレベル1~Nごとに微小領域を抽出して分類した画像40-1~40-Nを生成する。画像40-1~40-Nは、それぞれノイズレベル1~Nの微小領域画像の集合である。画像40-1~40-Nをそれぞれ、学習モデル(画像生成器3-1~3-N)への入力データとする。
【0021】
例えば、ノイズレベル1の微小領域の集合の画像40-1は、画像生成器3-1の学習モデルの入力として用いる。同様にノイズレベル2の微小領域の集合の画像40-2は、それぞれ画像生成器3-2の学習モデルの入力とする。ノイズレベル3の微小領域の集合の画像40-3は、それぞれ画像生成器3-3の学習モデルの入力とする。
【0022】
一方、それぞれの学習モデルの教師データ(正解データ)としては、撮像装置1において高画質画像が得られる低速の撮像方法(例:フルサンプリングの撮像方法)により得られた画像を用いる。
【0023】
これらの入力データと教師データを用いて学習モデルを学習させ、ニューラルネット内のノードの重み付けを設定しておく。これにより、画像生成器3-1~3-Nを生成することができる。
【0024】
このようにして生成された画像生成器3-1~3-Nは、それぞれ同一の撮像画像を入力することにより、最も高画質になる領域が異なる画像4-1~4-Nを生成することができる。
【0025】
画像記憶部4には、画像生成器3-1~3-Nがそれぞれ生成した画像4-1~4-Nが格納される。
【0026】
画像選択・合成部5は、パターン設定部6から設定された領域選択パターンに従って、画像4-1~4-Nから、異なる画像領域5-1~5-M(ここでは、M=3)をそれぞれ選択し、選択した画像領域5-1~5-Mの画像を合成して1つの高画質画像7を生成する。画像選択・合成部5が選択する画像領域5-1~5-Mは、画像生成器3-1~3-3の生成画像4-1~4-Nの最も高画質の領域である。よって、画像選択・合成部5は、生成された画像4-1~4-Nからそれぞれ最も高画質の領域を選択して合成することにより、画像全体が高画質な画像7を生成できる。画像選択・合成部5は、生成した高画質画像7を表示装置70に表示する。
【0027】
このように、本実施形態1によれば、領域によってレベルの異なるノイズを含むMRI画像から低計算コストでノイズを除去することができる。
【0028】
なお、画像選択・合成部5が選択する領域の数Mは、領域選択パターンに設定されているノイズレベルの段階の数であり、Nと同数以下である。選択する領域の数Mは、領域選択パターンによって異なる数に設定してもよい。
【0029】
パターン設定部6は、領域選択パターンが予め複数種類格納されたパターン格納部8を備えている。パターン設定部6は、撮像装置1から撮像画像(元画像)のGファクタマップ受け取って、Gファクタマップに対応する領域選択パターンをパターン格納部8から選択して、画像選択・合成部5に設定する構成としてもよい。
【0030】
また、受付部10は、ユーザから領域選択パターンの選択指示を受け付けてもよい。この場合、パターン設定部6は、制御部9を介してその選択指示を受け取り、指示された領域選択パターンを選択する。これにより、ユーザの好みに沿った高画質画像7を生成することができる。
【0031】
画像選択・合成部5が、設定された領域選択パターンに従って1つの高画質画像7を生成した後、受付部10がユーザから領域選択パターンの選択を受け付け、パターン設定部6により画像選択・合成部5に設定された場合、画像選択・合成部5は画像記憶部4に格納された画像4-1~4-Nを用いて、設定された領域選択パターンに従って画像を生成する。これにより、画像生成器3-1~3-Nが再度撮像画像から画像4-1~4-Nを生成しなおすことなく、異なる領域選択パターンに従って繰り返し高画質画像7を生成することができる。
【0032】
画像選択・合成部5では,各領域選択パターンの二値化マップを生成し,画像記憶部4から受け付ける画像に対して乗算することにより画像領域5-1~5-3を生成する。それらを同一座標で重ねる(加算処理する)ことで,元画像全体のノイズが除去された画像を生成することができる。このとき,画像領域5-1~5-3の境界で,ノイズ除去性能の差異によって不自然な不連続性が画像に生じる可能性がある。これを避けるために,領域選択パターンは、相互の境界が所定幅で重なり合うように予め設定しておき、画像選択・合成部5では、合成時に境界をなだらかにするために、重なり合う所定幅の領域において、それぞれの画像領域5-1~5-3の画像に重みづけし、重みづけ後の画像領域5-1~5-3を足し合わせる。なお、重み付けの関数は、被写体の撮像領域はすべて1となるような関数が望ましく,raised cosine関数などが利用できる。
【0033】
また、受付部10は、図4のように予めスライド位置ごとにそれぞれ領域選択パターンC-1、C-2、C-3が対応付けられたスライドバー31であってもよい。パターン設定部6は、ユーザがスライドさせたスライドバー31の位置に応じて、その位置に対応付けられた領域選択パターンを画像選択・合成部5に設定する。これにより、ユーザは、スライドバー31をスライドさせながら表示装置70に表示される画像7を見て、所望の位置でスライドバー31を停止させることにより、所望の高画質画像7を表示させることができる。
【0034】
なお、スライドバー31の位置ごとに対応付けられた領域選択パターンは、図4に示したように、ノイズレベルの段階の数(区分数:例えばノイズレベル1と2の2段階)がスライド位置によって変化せず、領域の形状のみが変化するように設定してもよい。この場合、図4に示したように、ユーザがノイズレベルの段階数(区分数)を選択する操作部32を備えることにより、一つのスライドバー31によって、複数種類の領域選択パターンを選択可能になる。
【0035】
ただし、本実施形態はノイズレベルの段階の数(区分数)がスライド位置によって変化しない形態に限定されるものではなく、スライド位置によって、区分数が異なるパターンを対応付けてもよい。
【0036】
また,領域選択パターンを選択するユーザーインターフェースは、スライドバーの形態に限らない。物理的なスライドバー,回転式のつまみなどの形態や,数値を選択・入力するタッチパネルなど、ユーザの操作によって変化の度合いを設定することができる操作受付部であればよく、種々の形態をとり得る。
【0037】
<画像処理装置2の動作>
つぎに、画像処理装置2の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
なお、画像処理装置2は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、画像生成器3-1~3-N、画像選択合成部5、および、パターン設定部6の機能をソフトウエアにより実現する。なお画像生成器3-1~3-N、画像選択合成部5、および、パターン設定部6の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて画像生成器3-1~3-N、画像選択合成部5、および、パターン設定部6の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0039】
画像生成器3は、撮像装置1から撮像画像を受け付ける(ステップS501)。画像生成器3は、受け付けた撮像画像を、画像生成器3-1~3-Nに入力する。画像生成器3-1~3-Nは、対応するノイズレベルに応じて、高画質画像4-1~4-Nを生成し、画像記憶部4に格納する(ステップS502)。
【0040】
パターン設定部6は、撮像装置1からGファクタマップを受け取ってそれに対応する領域選択パターンを選択し、選択した領域選択パターンを画像選択合成部5に設定する(ステップS503)。
【0041】
画像選択・合成部5は、設定された領域選択パターンの各ノイズレベルの領域を、ノイズレベルが対応する高画質画像4-1~4-Nから選択(抽出)する。これにより、高画質画像4-1~4-Nからそれぞれ異なる領域が選択される(ステップS504)。
【0042】
画像選択・合成部5は、ステップS504で選択した領域を合成し、1つの高画質画像7を生成する(ステップS505)。
【0043】
画像選択・合成部5は、ステップS505で生成した高画質画像を表示装置70に表示する。
【0044】
パターン設定部6は、受付部10がユーザから領域選択パターンの設定(変更)を受け付けている場合は、ステップS504に戻り、設定(変更)された領域選択パターンにしたがって、領域を選択する(ステップS507)。
以上のように、本実施形態によれば、領域によってレベルの異なるノイズを含む画像から低計算コストでノイズを除去することができる。しかも、ユーザ(読影者)の好みに応じて領域選択パターンを変更して、繰り返し高画質画像を生成することができる。
【0045】
<MRI装置の全体構成>
つぎに、本実施形態の撮像装置(MRI装置)1の全体構造について図6を用いて説明する。
【0046】
図6に示すように、MRI装置1は、静磁場磁石(静磁場発生部)110、傾斜磁場コイル(傾斜磁場発生部)131、送信RFコイル151、受信RFコイル161、傾斜磁場電源132、シムコイル121、シム電源122、RF磁場発生器152、受信器162、磁気結合防止回路駆動装置180、計算機(画像再構成部)170、シーケンサ140を備える。なお、102は、撮像空間に被検体(被検体)103の撮像部位を載置するテーブルである。
【0047】
静磁場磁石110は、撮像空間に静磁場を発生する。静磁場磁石110は、ソレノイドコイルによって水平方向の静磁場を生成するトンネル型磁石であってもよいし、垂直方向に静磁場を生成する静磁場磁石110を用いてもよい。
【0048】
傾斜磁場コイル131は、傾斜磁場電源132に接続され、撮像空間に傾斜磁場を発生する。シムコイル121は、シム電源122に接続され、静磁場の均一度を調整する。
【0049】
送信RFコイル151は、RF磁場発生器152に接続され、被検体103にRF磁場を照射(送信)する。RF磁場の周波数は、撮像を所望する被検体103の核種の原子核(プロトン等)の核磁気を励起する周波数に設定される。送信RFコイル151としては、どのような構造のものを用いてもよく、例えば鳥かご型のRFコイルを用いることができる。
【0050】
受信RFコイル161は、受信器162に接続され、被検体103からの核磁気共鳴信号を受信する。ここで、本実施形態に係る受信RFコイル161として、複数のコイルユニットからなる多チャンネルRFコイル(アレイコイル)を用いる。これにより、パラレルイメージング法により高速撮像が可能になる。
【0051】
シーケンサ140は、傾斜磁場電源132、および、RF磁場発生器152に命令を送り、それぞれ動作させる。命令は、計算機170からの指示に従って送出する。また、シーケンサ140は、計算機170からの指示に従って、受信器162に検波の基準とする磁気共鳴周波数をセットする。具体的には、撮像時には、シーケンサ140からの命令に従って、傾斜磁場およびRF磁場がそれぞれ所定のタイミングで傾斜磁場コイル131および送信RFコイル151から被検体103に照射される。被検体103が発生する核磁気共鳴信号は、受信RFコイル161によって検出され、受信器162で検波が行われる。これにより、所定の撮像方法を実現する撮像パルスシーケンスを実行する。
【0052】
計算機170は、MRI装置1全体の動作の制御、各種の信号処理を行う。例えば、受信器162で検波された信号を不図示のA/D変換回路を介して受信し、画像再構成などの信号処理を行う。
【0053】
検波された信号や測定条件は、必要に応じて、記憶媒体に保存される。また、計算機170は、予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するようシーケンサ140に命令を送出する。さらに、計算機170は、静磁場均一度を調整する必要があるときは、シーケンサ140を介して、シム電源122に命令を送り、シムコイル121によって静磁場均一度を調整させる。
【0054】
パラレルイメージングを行う場合、位相エンコードを1行おき等にして間引き、撮像パルスシーケンスの実行時間を短縮し、高速撮像にする。画像再構成時には、アレイコイルの感度マップを用いて画像再構成する。
【0055】
<<実施形態2>>
実施形態2の医用画像装置として、超音波撮像装置を撮像装置1として備える。本実施形態2の医用画像装置を図7図9を用いて説明する。
【0056】
<画像処理装置2の構成>
画像処理装置2の構成は、図7図8に示すように、実施形態1の画像処理装置2と同様である。超音波撮像画像のノイズレベルは、被検体の深い領域ほど大きくため、領域選択パターンは、ノイズレベル1が最も浅い領域であり、ノイズレベルが大きくなるほど深い領域を選択するパターンになる。
【0057】
また、実施形態2の画像処理装置2は、撮像条件受付・パターン選定部11を備えている。撮像条件受付・パターン選定部11は、撮像装置1から撮像条件を受け取って、予め定めておいた撮像条件と領域選択パターンの種類との関係に基づいて、受け取った撮像条件に適した領域選択パターンを選定し、パターン設定部6に出力する。パターン設定部6は、撮像条件受付・パターン選定部11から受け取った領域選択パターンを選択・合成部5に設定する。
【0058】
これにより、撮像条件に適した領域選択パターンを設定することが可能になる。
【0059】
また、撮像条件受付・パターン選定部11は、予め定めておいた撮像条件と領域選択パターンの種類との関係のほかに、ユーザが受付部10から領域選択パターンを選択した場合、ユーザが選択した領域選択パターンとその時の撮像条件との関係を記憶する構成にすることもできる。これにより、次に同様な撮像条件で撮像画像が超音波撮像装置から受け取った際には、前回ユーザが選択した領域選択パターンを選択することができるため、ユーザの好みに沿う高画質画像を表示できる。
【0060】
画像処理装置2の他の構成および動作、ならびに、効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0061】
なお、実施形態2の撮像条件受付・パターン選定部11は、実施形態1の画像処理装置2内にも配置することが可能である。
【0062】
<超音波撮像装置の全体構成>
つぎに、本実施形態2の撮像装置(超音波撮像装置)1の全体構造について図9を用いて説明する。
【0063】
超音波撮像装置は、送信部211と受信部212と画像生成部213と送受分離部216とを備えて構成される。送信部211は、送受分離部216を介して、超音波探触子222に送信信号を出力する。これにより、超音波探触子222は、被検体220に超音波223を送信する。被検体220からのエコーは、超音波探触子222によって受信され、超音波探触子222は受信信号を出力する。送受分離部216を介して超音波探触子から受信信号を受け取った受信部212は、予め定めておいた受信走査線に沿って受信信号を受信ビームフォーミングする。画像生成部213は、受信ビームフォーミング後の受信信号を処理して超音波画像を生成する。画像処理装置2は、撮像画像として、画像生成部213が生成した画像を受け取って処理する。
【0064】
図9では,画像処理装置2は画像生成部213の後に配置されているが,画像を生成する前の時系列データを画像生成器1~Nの入力としてもよい。時系列データは,時間が非検体の深さに相当するため,データの時刻によってノイズレベル分けを行う。
【符号の説明】
【0065】
1…撮像装置、2…画像処理装置、3、3-1~3-N…画像生成器、4…画像記憶部、4-1~4-N…高画質画像、5…画像選択・合成部、6…パターン設定部、7…高画質画像、40-1~40-N…所定のノイズレベルの微小領域の画像の集合、8…パターン格納部、9…制御部、10…受付部(UI)、11…撮像条件受付・パターン選定部、70…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9